金融審議会総会(第15回)議事録

日時: 平成14年11月18日(月)10時34分~12時02分

場所: 中央合同庁舎第四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 貝塚会長

ただいまから、金融審議会総会を開催させていただきます。皆様、ご多忙中のところご参集くださいましてありがとうございます。

本日は、10月30日に公表されました「金融再生プログラム」や現在開会中の国会に提出されました決済機能の安定確保ならびに金融機関の組織再編のための法案について、報告していただきたいと思います。

なお、議事は公開となっておりまして、報道機関の方などのために後ろの方の席を確保しております。

総会の開催に当たり、竹中金融担当大臣及び伊藤金融担当副大臣からご挨拶をいただきたいと思います。

まず、竹中大臣からご挨拶をお願いします。

○ 竹中金融担当大臣

おはようございます。

金融担当大臣の竹中平蔵でございます。金融審議会第15回総会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

本来でしたら、こういう機会をもっと早く持たせていただきたかったのですが、ご挨拶が遅れましたことをお詫び申し上げたいと思います。

金融担当大臣の就任に当たりまして、総理からは、この平成16年度までに不良債権問題を終結させるようにという大変重い宿題をいただきました。この総理のご指示を踏まえまして、10月30日に「金融再生プログラム」という形で当面の基本的な方針を公表させていただいたところでございます。また、この国会には、決済機能の安定確保ならびに金融機関の組織再編のための法案を提出いたしまして、今、ご審議いただいております。

法案につきましては、後ほどまた事務的に説明させていただきたいと思いますが、「金融再生プログラム」について、簡単に概要をぜひ申し上げておきたいと思います。

このプログラムは、平成16年度に不良債権問題を終結させるという総理のご指示に基づきまして、3つの柱、新しい金融システムの枠組みをどのようにするのか、新しい企業再生の枠組みをどのようにするのか、新しい金融行政の枠組みをどのようにするのかという観点から、包括的な政策の強化を行って、もって不良債権処理の強力な推進を図るというふうにしております。

特に、主要行の不良債権問題の解決に向けまして、その資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化などについて政策を強化して、平成16年度には、主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させ、問題の正常化を図りたいというふうに思っているところでございます。

このプログラムを速やかに実施に移せますように、11月中を目途に工程表を作成して、公表する予定でございます。現在、その具体的内容について検討を進めているところであります。

また、これに合わせまして、「改革加速のための総合対応策」を着実に実施するということで、日本経済の再生を図るとともに、雇用、中小企業等のセーフティネットに万全を期したいというふうに思っております。

いずれにしましても、金融庁としましては、「金融再生プログラム」を着実に実施していくとともに、この国会に提出しております金融関連の2法案の早期成立を希望しているところでございます。金融行政をさらに強化していく中で、この金融審議会にもさらに新しい役割が期待されてくると思います。委員の皆様におかれましては、今後とも引き続き金融行政についてご理解、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げたいと思います。

簡単でございますが、ご挨拶とさせていただきます。

ありがとうございます。

○ 貝塚会長

ありがとうございました。

次に、伊藤副大臣からご挨拶をお願いいたします。どうぞ。

○ 伊藤金融担当副大臣

どうもおはようございます。

ただいまご紹介いただきました、このたび内閣改造によって内閣府の副大臣として金融問題を担当させていただくことになりました伊藤達也でございます。竹中大臣を補佐いたしまして、金融システムの安定化、活性化のために全力を尽くしてまいりたいと思いますので、委員の先生方のご指導のほど、どうかよろしくお願い申し上げます。

先ほど、竹中大臣からお話がございました「金融再生プログラム」につきましては、これを着実に実施することにより、主要行の不良債権問題の解決に向けて取り組んでまいる所存でございます。また、その実施に当たっては、日本企業の根幹を占める中小企業の金融環境が著しく悪化することのないよう各種のセーフティネットを講じることとし、関係省庁と連携を強化しつつ、中小企業への円滑な金融の確保について配慮していきたいと考えております。

次に、決済機能の安定確保ならびに金融機関の組織再編につきましては、関係法案の成立に向けて、竹中大臣とともに全力で取り組んでまいりたいと思っております。

また、証券市場の構造改革につきましては、9月9日の当審議会総会において「証券市場の改革促進プログラム」などについて説明させていただいた後、証券市場改革の進め方について皆様にご議論いただきました。その後、金融分科会第一部会及び公認会計士制度部会、それらの配下に設置されたワーキング・グループにおいて、その具体化について年内を目途に取りまとめいただくべく、積極的にご議論いただいているところでございます。

今後とも、金融行政の責任者の1人として、時代の変化に的確に対応し、機動的かつ総合的な政策の遂行に精一杯取り組んでまいりたいと考えておりますので、委員の先生方からご指導・ご鞭撻を賜りますよう重ねてお願い申し上げまして、ご挨拶に代えさせていただきたいと思います。

どうかよろしくお願い申し上げます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。ここで、カメラは退出をお願いします。

(カメラ退室)

○ 貝塚会長

腕章を巻いた金融庁の広報のカメラの人が、1人だけ残られます。

それでは、議事に入りたいと思います。

まず、事務局から、主要行の不良債権問題の解決を通じた経済再生として10月30日に公表されました「金融再生プログラム」について、その後決済機能の安定確保ならびに金融機関の再編のための法案について報告していただきたいと思います。

なお、質疑応答・自由討議につきましては、事務局からの報告が終わりました後で行わせていただきたいと思います。

では、まず「金融再生プログラム」につきまして、監督局の中原参事官から報告をお願いします。どうぞ。

○ 中原参事官

中原でございます。

恐縮でございますが、着席してご説明申し上げます。

お手元の配付資料をご覧いただきますと、「金融再生プログラム」という資料がございます。また、その少し後に「改革加速のための総合対策」という資料がございます。まず、その「金融再生プログラム」について、概括的なご説明をした後、事務局から読み上げ、必要な補足をさせていただきます。また途中、関連する範囲において「改革加速のための総合対応策」についても言及させていただきたいというふうに考えております。

さて、「金融再生プログラム」につきましては、先ほど大臣の挨拶の中にもございましたとおり、主要行の不良債権問題を通じた経済再生という基本的考え方のもとに取りまとめたものでございます。日本経済の重しとなっている不良債権問題を解決する、それとあわせて、経済社会の活性化を目指したさまざまな前向きの構造改革を進めていく、これが昨年6月に閣議決定されましたいわゆる骨太の方針に折り込まれている構造改革の言わば車の両輪という関係になっているわけでございまして、その前者を取りまとめたものが「金融再生プログラム」でございます。

全体の構成を概観いたしますと、先ほど大臣から話がございましたように、大きく3つの構成に分かれておりまして、1つがまず新しい金融システムの枠組みでございます。それから、2つ目が新しい企業再生の枠組み、大きな3つ目が新しい金融行政の枠組みでございます。また、その3つ目の新しい金融行政の枠組みの中が、3つの主要な部分に分かれておりまして、資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化、そういう考え方で整理されているものでございます。

それでは、まず事務局の方から主要な部分を読み上げまして、その上で補足的にご説明をさせていただくという手順にいたしたいと思います。

○ 山沖調査室長

調査室長の山沖です。それでは、こちらから読み上げます。

「金融再生プログラム――主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生――」。

日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復し、世界から評価される金融市場を作るためには、まず主要行の不良債権問題を解決する必要がある。平成16年度には、主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させ、問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指す。そこで、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化などの点について、以下に示す方針で行政を強化する。

1.新しい金融システムの枠組み。構造改革を加速するための新しい金融システムを構築することを目的に、以下の措置を講ずる。(1)から(3)まであります。

(1)安心できる金融システムの構築。国民が金融機関に対する不安を抱くことなく暮らせるようにすることを目的に、以下の措置を講じて安心できる金融システムを構築する。

(ア)としまして、国民のための金融行政。金融行政が護るべき対象は、預金者、投資家及び借り手の企業や個人など国民であることを確認する。

(イ)決済機能の安定確保。決済機能の安定確保を図るために、その全額を保護の対象とする「決済用預金」を平成17年4月に導入する。それまでの間については、不良債権処理の加速等の政策強化を進める中で、預金者にいたずらに不安を与えることのないよう、ペイオフの完全実施を延期する。

(ウ)モニタリング体制の整備。金融庁内に「金融問題タスクフォース」を新設し、平成16年度には不良債権問題を終結させるという目標の達成に向け、その状況をモニタリングする。

(2)です。中小企業貸出に対する十分な配慮。主要行の不良債権処理によって、日本企業の大宗を占める中小企業の金融環境が著しく悪化することのないよう、以下のセーフティネットを講じる。

(ア)中小企業貸出に関する担い手の拡充。中小企業の資金ニーズに応えられるだけの経営能力と行動力を具備した新しい貸し手の参入については、銀行免許認可の迅速化や中小企業貸出信託会社(Jローン)の設置推進などを積極的に検討する。

(イ)中小企業再生をサポートする仕組みの整備。実態に合わせて中小企業の再生をサポートできるよう、信託機能やデット・エクィティ・スワップ等の活用など、金融上の仕組みの整備を検討する。

(ウ)中小企業貸出計画未達先に対する業務改善命令の発出。健全化計画における中小企業貸出計画に関する重度の未達先に対しては、原則として業務改善命令を発出し、軽度の未達先に対しては、即時に改善策の報告を徴求する。

(エ)中小企業の実態を反映した検査の確保。中小企業の実態を反映した的確な検査等を確保する。また、借り手企業に対し、金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)の趣旨・内容を周知徹底する。

(オ)中小企業金融に関するモニタリング体制の整備。金融機関による不当な「貸し剥がし」等が発生しないように、モニタリング体制を強化するほか、必要な場合には効果的な検査を実施する。

マル1「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の創設。中小企業が、今回の一連の措置や金融検査マニュアルなどを理由に、金融機関から貸し渋り、貸し剥がし等の不当な扱いを受けた場合に、金融庁に直接通報できるよう、ファックスやEメールの受付窓口を金融庁内に設ける。

マル2「貸し渋り・貸し剥がし検査」の実施。「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」によって通報された内容を吟味した結果、重大な問題があると判断される場合には、その金融機関に対して報告を徴求するほか、必要があれば検査を実施し、適切な行政処分を行う。

(3)平成16年度に向けた不良債権問題の終結。金融機関の不良債権問題の解決に対して政府が積極的に関与するとの立場から、以下の措置を講ずる。

(ア)政府と日銀が一体となった支援体制の整備。個別金融機関が経営難や資本不足もしくはそれに類似した状況に陥った場合等には、以下に示す「特別支援」の枠組みを即時適用し、万が一にもシステミックリスクが発生し、または経済が底割れすることのないよう、政府・日本銀行が一体となって万全の対応を期す。

マル1日銀特融による流動性対策。万が一金融危機のおそれが生じた場合には、金融庁は責任をもって適切な対応を取るとともに、日本銀行に特別融資等必要な措置を要請し、一体となって万全の危機管理体制を整備する。

マル2預金保険法に基づく公的資金の投入。必要な場合には、現行の預金保険法に基づき、速やかに所要の公的資金を投入する。

マル3検査官の常駐的派遣。「特別支援」の対象となった金融機関(「特別支援金融機関」)の取締役会や経営会議などに、検査官を陪席させることを検討する。

(イ)「特別支援金融機関」における経営改革。「特別支援金融機関」においては、経営を改革し、早期健全化を行う。

マル1経営者責任の明確化。「特別支援」を受けることとなった金融機関を代表する経営者については、責任の明確化を厳しく求める。

マル2適切な管理方法。「特別支援」を受けることとなった金融機関においては、「新勘定」と「再生勘定」に管理会計上分離し、適切に管理する。

マル3事業計画のモニタリング。「金融問題タスクフォース」は、「特別支援金融機関」の新しい経営陣による事業計画をチェックしてその妥当性について金融担当大臣に助言するほか、その履行状況をモニタリングし、金融担当大臣に報告する。なお、上記適切な管理方法を適用した後も黒字体質に転換しないなどにより必要と思われる場合は、適切な措置を金融担当大臣に進言する。

(ウ)新しい公的資金制度の創設。金融システムの安定に万全を期しつつ、不良債権問題を終結させるため、迅速に公的資金を投入することを可能にする新たな制度の創設の必要性などについて検討し、必要な場合は法的措置を講ずる。

2です。新しい企業再生の枠組み。構造改革を更に加速するため、以下のように、新しい企業再生の枠組みを可及的速やかに実現するということで、(1)から(4)までございます。

(1)「特別支援」を介した企業再生。「特別支援金融機関」は、新しい経営陣の下で知恵と工夫を活かし、企業再生を図るため、以下の点に関して経営努力を傾注する。

(ア)貸出債権のオフバランス化推進。破綻懸念先以下債権等について、RCCや企業再生ファンド等に売却することによって、企業再生のプロセスを加速する。その際、RCCによる買取に関しては、必要に応じ財政的措置についても検討する。

(イ)時価の参考情報としての自己査定の活用。破綻懸念先以下債権をRCCに売却する場合には、「特別支援」の枠組みの下で十分な引当を積んだ自己査定であることを前提に、RCCの買取価格である時価を判断する際の一つの参考情報として採用することを検討する。

(ウ)DIPファイナンスへの保証制度。法的整理手続に入った企業について、当該「特別支援金融機関」がDIPファイナンスを担う場合において、再生可能な部分を甦生させるための信用保証制度について検討する。

(2)RCCの一層の活用と企業再生。以下の点に配慮しつつ、RCCへの不良債権売却の促進や企業再生ファンドの活用、再生対象企業に対する政府系金融機関による支援など、企業再生を促進する枠組みを早急に整備・活用する。

(ア)企業再生機能の強化。企業再生機能を強化するため、RCC内における企業再生部門の強化等を検討する。そのための人員確保や政策投資銀行、国際協力銀行などを活用した企業再生ファンドの拡充、企業再生のノウハウを有する商工中金等との連携強化などについては、積極的に対応する。

(イ)企業再生ファンド等との連携強化。RCCは、購入した債権に関しては回収・売却を加速するとともに、企業再生ファンドなどへの橋渡しを果たすことにより回収の極大化を図る。このような観点から、購入して短期間で回収できない案件については、原則として、売却する方向で早急に検討する。

(ウ)貸出債権取引市場の創設。RCC及び政府系金融機関等は、保有している貸出債権の売却を加速することによって、日本における貸出債権の取引市場の創設に努力を傾注する。その際、RCCの貸出債権毎の採算についてより機動的な対応ができるよう、総合的に検討する。

(エ)証券化機能の拡充。RCCは、自らが保有する大量の貸出債権を対象ポートフォリオとした証券化の機能を強化し、実際に資産担保証券の売却を進める努力を継続する。

(3)企業再生のための環境整備。企業を再生する環境を整備するため、政府が目指すのは企業淘汰ではなく企業再生であるとの認識の下、経済産業省、国土交通省などの関係府省との連携をこれまで以上に強化し、以下の施策を講じる。

(ア)企業再生に資する支援環境の整備。不良債権の最終処理と企業の早期再生を支援するとともに、中小企業への円滑な金融の確保に努めるため、税制、投融資制度、商法の特例などについて、実現可能なものから出来る限り早く整備を行うよう、関係府省に要請する。

(イ)過剰供給問題等への対応。過剰供給問題や過剰債務問題に正面から取り組むべく、産業・事業分野が供給過剰になっているかどうか等について政府としての指針・考え方をまとめるとともに、安易な企業再生に政府の「お墨付き」を与えることのないよう適正な基準を定めることを関係府省に要請する。

(ウ)早期事業再生ガイドラインの策定。企業が自ら事業再生に着手するよう、「早期事業再生ガイドライン」の策定作業を早急に進め、関係者間のコンセンサス形成を図るよう、関係府省に要請するとともに、金融庁も検討に参画する。

(エ)株式の価格変動リスクへの対処。金融機関保有株式の価格変動リスクは、金融機関経営の大きな不安定要因となっており、その存在は企業再生プロセスに不測の影響を与えかねないことに鑑み、日本銀行による金融機関保有株式の買い取りの円滑な推進を期待する。

(オ)一層の金融緩和の期待。企業再生のプロセスを支えるため、一層の金融緩和が行われるよう日本銀行に期待する。

(4)企業と産業の再生のための新たな仕組み。企業・産業の再生に取り組むため、新たな機構を創設し、同機構が再生可能と判断される企業の債権を金融機関から買い取り、産業の再編も視野に入れた企業の再生を進める必要がある。このため、政府が一体となって、速やかに所要の作業準備が進められるよう要請する。

○ 中原参事官

今の項目でございますけれども、「改革加速のための総合対応策」の中に関係する記述がございますので、こちらをあわせてご紹介いたしたいと思います。

「改革加速のための総合対応策」の方、全部で12ページの資料でございますが、その中の2ページでございます。2ページといっても、表紙等がついておりますので、4枚めくっていただくと出てまいりますが、そこの大きな2番が産業・企業再生への早期対応という項目でございまして、そこでもう1枚めくっていただいて3ページをご参照いただきますと、マル1が「産業再生・雇用対策戦略本部(仮称)」の設置でございます。政府は、不良債権処理を加速し、産業再生と雇用対策を一体的に推進するため、既存の「産業構造改革・雇用対策本部」を抜本的に改組し、総理を本部長とする「産業再生・雇用対策戦略本部(仮称)」を設置すると。同本部は、過剰債務問題、過剰供給構造等に対応するため、産業再編や早期再生に関わる「基本指針」を策定し、企業・産業の再生を強力に推進するというものでございます。

その次のマル2が、先ほど「金融再生プログラム」で言及がございました「産業再生機構(仮称)」の創設でございます。企業再生に取り組むための新たな機構(産業再生機構(仮称))を預金保険機構の下に整理回収機構と並んで創設する。同機構は、「基本指針」に従い、金融機関において「要管理先」等に分類されている企業のうち、メインバンク・企業間で再建計画が合意されつつある等により当該機構が再生可能と判断する企業の債権を、企業の再生を念頭に置いた適正な時価で、原則として非メインの金融機関から買い取る。再建計画及び買取価格等の適正性を担保するため、機構内に有識者からなる「産業再生委員会(仮称)」を設ける。

機構は、再生企業への追加融資や出資、信託、保証機能等を備える金融機関とする。機構の設立及び運営は、金融界や産業界に相当規模の専門家の派遣を要請するなど、可能な限り民間部門の人的・資金的な支援を得て行うとともに、政府として、関係省庁からの出向や機構の資金調達に対する政府保証の付与など、所要の人的・財政的支援を行う。

機構とメインバンクで企業の債権の相当部分を保有し、強力に企業のリストラ・経営再建を推進する。企業再生策の作成は、メインバンクの情報、ノウハウ、資金、人材を最大限活用する。機構は、政府全体の協力を得て、業界内での再編なくして再生不能と考えられる企業について、機構内に集積された情報を踏まえ、「基本指針」に従い、産業の再編も視野に入れた企業の再生策を樹立・実行する。政策金融機関の出融資も活用するというような記述が、あわせて書いてあるところでございます。

では、またプログラムの方に戻らせていただきます。

○ 山沖調査室長

それでは、7ページの方を見ていただけますでしょうか。7ページの一番上、3.新しい金融行政の枠組みというところでございます。構造改革を加速するための金融行政の新しい枠組みを構築することを目的に、以下の措置を講ずるということで、(1)から(3)までございます。

(1)資産査定の厳格化。金融機関の資産査定については、これまでにも増して厳格化を図るため、以下の施策を講ずる。

(ア)資産査定に関する基準の見直し。資産査定の基準については、市場評価との整合性を図るため、以下の措置を講ずる。

マル1引当に関するDCF的手法の採用。主要行において要管理先の大口債務者については、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式を基礎とした個別的引当を原則とし、早急に具体的手法を検討する。

マル2引当金算定における期間の見直し。主要行において、暫定的に定められている1年基準及び3年基準について、米国等の扱い等を踏まえ検討を行う。

マル3大口債務者に対する銀行間の債務者区分の統一。主要行について正常先でない大口債務者の債務者区分に関しては、適正な資産査定を実施している先にレベルを揃えるための具体的な仕組みを導入する。

マル4デット・エクィティ・スワップの時価評価。株式を上場しているなど合理的に株価を算定することが可能な大口貸出先向けのデット・エクィティ・スワップに関しては、取引の時期を問わず、時価評価を適用することを検討する。

マル5再建計画の厳格な検証。再建計画の進捗状況や妥当性を継続的に検証することを目的とした専門家を含む検証チームを設置する。

マル6担保評価の厳正な検証。鑑定評価を担保評価に用いている場合には、原則として独立した不動産鑑定士による法定鑑定を用いる方向で検討する。

(イ)特別検査の再実施。平成15年3月期について、リアルタイムの債務者区分の厳格な検証を継続する形で、特別検査の実質的な再実施を行う。

(ウ)自己査定と金融庁検査の格差公表。これまで実施された金融庁検査を基に、主要行の自己査定と検査結果の格差について集計ベースで公表する。自己査定と検査結果の格差については、今後定期的に公表する扱いとし、各行に格差是正を求める。

(エ)自己査定の是正不備に対する行政処分の強化。正当な理由がないにもかかわらず自己査定と検査結果の格差が是正されない場合には、当該行に対し、業務改善命令を発出する方針を明確化する。

(オ)財務諸表の正確性に関する経営者による宣言。資産査定を含む財務諸表が正確であることに関し、代表取締役に署名を求めることを検討する。

(2)自己資本の充実。金融機関の自己資本については、資本の質の実態を見極めつつ、真の充実を図るため、以下の施策を講ずる。

(ア)自己資本を強化するための税制改正。金融機関の自己資本を強化するため、以下の措置を関係府省に強く要望する。

マル1引当金に関する新たな無税償却制度の導入。破綻懸念先以下の債務者に関しては、金融庁の監督と検査の下での自己査定の結果を以って無税対象と認定する制度の導入を要望する。また、部分直接償却により企業会計上損失が確定した場合についても、例えば、無税償却に係わる担保処分要件の緩和等特段の配慮を求める。

マル2繰戻還付金制度の凍結措置解除。欠損金の繰戻還付について、凍結措置の解除及び期間の延長を要請する。

マル3欠損金の繰越控除期間の延長検討。現行5年となっている繰越控除期間の延長を要請する。

(イ)繰延税金資産に関する算入の適正化。繰延税金資産については、その資本性が脆弱であるため、自己資本比率規制における取扱いについては、会計指針の趣旨に則ってその資産性を厳正に評価するとともに、算入上限についても速やかに検討する。

(ウ)繰延税金資産の合理性の確認。主要行の経営を取り巻く不確実性が大きいことを認識し、翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しいことを理解した上で、外部監査人に厳正な監査を求めるとともに、主要行の繰延税金資産が厳正に計上されているかを厳しく検査する。

(エ)債務者に対する第三者割当増資部分の検討。債務者が引き受けている第三者割当増資部分に関しては、実質的な迂回融資になっていないかなど、資本としての適格性を念入りにチェックする。

(オ)銀行の自己資本のあり方に関する考え方の整理。今回の一連の措置で整理し切れなかった論点については、金融庁としての見解を引き続き検討し、今後の自己資本比率規制の見直しにつなげる。

(カ)自己資本比率に関する外部監査の導入。自己資本比率規制上の自己資本比率の算定を外部監査の対象とすることについて、法令上の手当を含めて検討する。

(3)ガバナンスの強化。金融機関経営におけるガバナンスを強化するため、以下の施策を講ずる。

(ア)外部監査人の機能。資産査定や引当・償却の正確性、さらに継続企業の前提に関する評価については、外部監査人が重大な責任をもって、厳正に監査を行う。

(イ)優先株の普通株への転換。政府が保有している銀行の優先株の普通株への転換については、期限の到来、経営の大幅な悪化など諸条件に該当する場合には転換する方向で、運用ガイドラインを可及的速やかに整備する。

(ウ)健全化計画未達先に対する業務改善命令の発出。健全化計画等の未達に関しては、その原因と程度に応じて必要性を判断し、行政処分を行うとともに、改善が為されない場合は、責任の明確化を含め厳正に対応する。

(エ)早期是正措置の厳格化。早期是正措置における現行区分のあり方を含め、各区分における措置の内容を厳格に見直す。

(オ)「早期警戒制度」の活用。自己資本比率に表されない収益性や流動性等、銀行経営の劣化をモニタリングするための監督体制を整備する。

最後に、4番です。今後の対応。主要行を対象とした以上の措置を速やかに実施に移せるよう、本年11月を目途に作業工程表を作成、公表する。また、関連する諸制度の整備に努める。

また、中小・地域金融機関の不良債権処理については、主要行とは異なる特性を有する「リレーションシップバンキング」のあり方を多面的な尺度から検討した上で、平成14年度内を目途にアクションプログラムを策定する。

以上です。

○ 中原参事官

今、紹介いたしましたとおりでございますが、先ほど大臣から発言がございましたように、作業工程表の作成、公表につきまして、現在、庁内で作業を進めているという状況でございます。

以上、紹介いたしました「金融再生プログラム」は、冒頭にも申しましたように不良債権問題を解決することで、我が国の金融システム、金融行政に対する信頼を回復し、経済再生を図っていくという位置付けのものでございます。そのための政策強化を、包括的に整理したものでございます。

それから、先ほど関係部分を紹介いたしました「改革加速のための総合対応策」につきましては、そうした不良債権問題を解決することで経済再生を図っていく中でのいろいろな痛みを最少にしながら経済の活性化をより強力に推進する、そのために関係省庁・機関が一丸となって取り組むための総合的な対策というものでございます。内容の紹介は、省略させていただきます。

以上でございます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

引き続きまして、決済機能の安定確保ならびに金融機関の組織再編のための法案について、総務企画局の河野信用課長から報告をお願いします。どうぞ。

○ 河野信用課長

信用課長の河野でございます。いつも、委員の皆様方には大変お世話になっております。

それでは、着席いたしまして失礼いたしますが、時間の関係もございますので、私ども、今臨時国会におきまして提出させていただきました2法案の概要を、簡単に説明申し上げたいと思います。

この2つの法案は、いずれも10月25日の閣議におきまして決定され、同日、国会へ提出されましたものでございまして、現在、衆議院の委員会におきまして審議中というものでございます。

お手元の資料でございますけれども、2つ大きな束がございますが、クリップで留めさせていただきましたものが2つお手元にあろうかと思います。片方が、「決済機能の安定確保策」ということで、いわゆるペイオフ関連の法案の概要から始まっておりまして、ずっと後に金融担当大臣談話というものをお付けつけしてございます。もう片方のクリップ留めの方が、いわゆる金融機関組織再編特措法、合併等の組織再編を促進するための特別措置法案の概要がやはりまずございまして、あと簡単な図とやや詳し目の概要もお付けしておりまして、あとそれぞれの法案につきまして、いわゆる5点セットと申します条文そのもの、その条文の前に要項などもついておりますが、こういった資料をお配りしてございます。いずれも、一番最初にございますこの概要に沿いまして簡単に説明申し上げたいと思います。

まず最初の法案でございますが、決済機能の安定確保策でございますけれども、これは金融機関の破綻時におきましても、決済を円滑かつ確実に完了することを可能とする措置を講ずることにより、決済機能の安定確保を図るというものでございまして、具体的には、金融機関破綻時に全額保護されます預金、決済用預金というものを創設し、その要件等を定めまして、それを保護する措置を講じますとともに、仕掛かり中の決済の結了を可能とするため、預金保険法等の一部を改正するというものでございますが、すなわち2つ柱がございまして、1つは決済用預金というものを設けること、それからもう一つは、仕掛かり中の決済の結了を可能とする措置を講ずること、この2つが柱になっております。

(注)といたしまして、ペイオフにつきましては、決済機能の安定確保のための制度面での手当を行い解禁の準備を整えるが、その実施は17年4月からとし、そのための所要の規定を整備とございます。これにつきましては、考え方を別途この金融担当大臣談話というところに整理してございますので、このクリップ留めの一番最後にその1枚紙をお付けしてございます。読み上げはいたしませんけれども、簡単に申し上げますと、このペイオフ問題につきましては、まず冒頭、この紙にございますように、9月30日に総理から、構造改革を加速させるための政策強化を行うと。それによりまして、政府・日銀一体となってデフレ克服に取り組み、平成16年度には、不良債権問題を終結させる考えであるということを発表しておりますが、これに沿いまして、3段目をご覧いただきますと、こういった政策強化を行う中で、ペイオフにつきましては、決済機能の安定確保のための制度面での手当を行い、解禁の準備を整えるが、その実施は金融システムの安定確保の観点から、不良債権問題が終結した後の平成17年4月からとしたいと。そのための所要の法律案を臨時国会に提出ということでございます。

なお、4段目のところにもございますように、これによりまして金融システムの安定に配慮しつつ、不良債権処理を加速するということでございますけれども、同時に中小企業金融等金融の円滑化に万全を期するというものでございます。

それでは、最初の紙に戻らせていただきまして、この法案の中身のまず第1の点は、預金保険法の目的に「破綻金融機関に係る資金決済の確保」というものを加えることでございます。これは、やはり決済機能の安定確保という観点から、まずこの預金保険法の目的の中に明確にこれを謳うということを行うものでございます。現行法は、「預金者等の保護」を図るということが当然書いてございます。

次に、第1の柱と申し上げました決済用預金につきましては、次の3つの要件を満たす預金につきまして、これを「決済用預金」と定義いたしまして、各金融機関は営業年度毎に当該預金に係る保険料を納め、破綻時には機構がその全額に相当する額の保険金を支払うというものでございまして、これは決済用預金の全額保護という規定になりますが、この3つの要件は、すなわちその契約又は取引慣行に基づき為替取引等に用いることができるものであること、つまり通常必要な決済サービスを提供できること。それから、その預金者がその払戻しをいつでも請求することができるものであること、すなわち要求払いであること。それから、利息が付されていないものであること。この3つの要件が満たされるものを決済用預金としておりまして、各金融機関は、預金保険機構に対しましてこの決済用預金にどの預金が当たるかを届け出るということにしてございます。

1枚おめくりいただきまして、第2の柱につきましてはこちらにございますが、仕掛かり中の決済の履行確保ということで、金融機関が破綻前に依頼を受けた振込などの取引に関しまして、その仕掛かり中の決済というものに係る債務等につきましては、これは決済用預金に係る債務等とみなすという格好で全額保護の範囲に含めると。

あと、その下2項目につきましては、これはその仕掛かり中の決済が円滑に結了するために必要な法的手当を行うものでございます。これは、機構は、仕掛かり中の決済の結了のために必要があると認めるときは、必要な資金を破綻金融機関に対して貸付けをすることができることとすると。それから、金融機関間の決済システムにおきまして仕掛かり中の決済を結了することができるよう、倒産手続における相殺禁止等の例外として、機構がこういった貸付けをいたしましたときには相殺ができるということにしております。このような手当を行うことによりまして、仕掛かり中の決済というものが金融機関の破綻時においても円滑に結了させることができるというものでございます。

その他、金融機関におきましては、破綻した場合に決済用預金の円滑な払戻し等を確保するための措置を講じなければならないというような規定も入れてございます。

施行期日につきましては、施行日は平成15年4月1日と。

ただし、先ほど申し上げましたような考え方に基づきまして、ペイオフそのものにつきましては、これは平成17年4月からとしたいということでございますので、施行後2年が経過するまでの間は、現在と同様、流動性預金の全額保護ということを規定しております。

ただ、逆に申しますと、先ほど申し上げました2つの柱のうち、この仕掛かり中の決済の履行確保につきましては、平成15年4月1日から施行ということでございます。

1枚おめくりいただきまして、この決済用預金の中身と、それからその考え方を簡単に図にしてございます。詳しくは申し上げませんが、一番下の預金保護の姿という部分をご覧いただきますと、今後、平成15年4月から17年3月までの2年間といたしましては、定期預金等はもう既に合算して元本 1,000万円までとその利息が保護範囲となっておりますが、当座預金、普通預金につきましては、これを全額保護すると。

ただ、決済用預金という概念ができますので、この普通預金のところに利息なしと利息ありの2つに区分されておりますが、利息なしの部分が本来の決済用預金でございますけれども、この利息ありの部分は、この間、決済用預金とみなすという規定でございます。17年4月以降は、まさに決済用預金そのものの全額保護といったものが恒久措置となりまして、すなわちこの金利ゼロの普通預金、これを含めて当座預金も当然入りますが、こういったものにつきましての全額保護を決済機能の安定確保という観点から継続するとともに、その他の預金につきましては、合算して元本 1,000万円までとその利息を保護するというものでございます。

簡単でございますが、以上が第1の法案でございます。

第2の法案につきましては、お手元のもう一つのセットをご覧いただきたいと思いますが、金融機関組織再編特措法。これは、目的といたしまして金融機関等の経営基盤の更なる強化を図るため、金融機関等の組織再編成を円滑化するための特別措置を講ずるという特別措置法案でございます。

これは、主として地域金融機関の再編等を通じまして、こういった金融機関の経営基盤が今後、中・長期的に強化されていくことを念頭に構成されております。

それでは、どういった支援措置を講ずるかということでございますが、全体といたしましては、もちろんこれは、こういった金融機関がまず自主的に合併等の組織再編――合併等の「等」につきましては、例えば会社分割でございますとか営業の全部譲渡または一部譲渡も含まれております。子会社化、関連会社化も含めて、こういった組織再編をまず自主的に決めていただく。これを決めていただきますと、この以下の支援措置が受けられるという構成をとっておりますが、まず第1の柱は手続の簡素化でございます。

これを逐一説明するのは、ちょっと時間の関係で省略させていただきますが、例えば営業譲渡の際の根抵当権の譲渡手続におきましては、民法によりますと元本確定前の譲渡においては根抵当権設定者の個別の承諾が必要であるという規定がございますが、これにつきましては特例を設けまして、新聞広告等で代替できるようにしたいと。

それから、2番目の優先出資の発行限度に係る特例につきましては、協同組織金融機関が優先出資を用いて資本の充実を図ることが容易になりますよう、普通出資の口数の2分の1までという現在の発行限度の規定、これを普通出資の口数と同等までということで特例を設けさせていただきたいと思っておりまして、この点は、既に商法ではこれに匹敵する規制緩和が行われておるという前提でございます。

3番目は、信用金庫等の持分の消却に係る特例。これは、現在、信用金庫及び労働金庫につきましては、脱退する会員の持分を買い取ることにはなっておりますが、それを消却するという規定がございませんので、この消却ができることとすると。これは、やはり商法上、株式消却の制度というものは既にございます。

その他の特例につきましても、これは信金、信組等につきまして銀行並みに簡素化するということで、簡易合併といった制度あるいは債権者異議の催告の特例ということで、いずれも総会等の重たい手続につきまして、関係者の権利保護に配慮しつつ緩和するといった考え方でございます。

2番目の柱は資本増強でございまして、これは預金保険機構に新たな勘定を設けまして、資本増強を一定の限度の中で行うことができるものとするものでございます。

まず、合併等によりまして、自己資本比率が低下するような場合に、その低下した自己資本比率を回復するために必要な金額について、優先株式等により資本増強とございますが、しばしば、特に自己資本比率が比較的高い金融機関が比較的低い金融機関と合併いたしますときに、高い方の金融機関において自己資本比率が低下することを懸念し、そのことが合併等の障害になっているというヒアリングの結果がございます。それを受けまして、そういった場合にその自己資本比率が低下しないようにする、その限りにおいて預金保険機構がその資本増強をすることができるということにいたしまして、そういった合併等への障壁を除去いたしますとともに、融資対応力につきましても、これは低下しないように配慮するという考え方でございます。

2番目の信金中金等を通じた支援につきましては、同じような考え方ではございますが、現在、協同組織中央金融機関、信用金庫であれば信金中金でございますが、ここが既に会員の信金等から優先出資等を引き受ける資本増強制度を持っております。その持っております制度を活用する観点から、信金中金等が会員の信金等から引き受けた優先出資等を今度は信託等をいたしました場合に、その信託受益権等を買い取ることで預金保険機構が間接的に支援するという道を開きたいということでございます。いわば間接支援方式と呼んでおります。

(注)にございますように、それから先ほど申し上げましたように、このために預金保険機構に新勘定を設けまして、その借入れに政府保証枠1兆円を予算要求中でございます。

第3の柱は、預金保険の保険基準額に係る経過措置ということでございますが、合併あるいは営業(事業)の全部譲渡を行いました場合に、1年間に限りまして、その預金保険の保険基準額を「 1,000万円×合併等を行った金融機関の数」とするというものでございますが、この趣旨は、合併が突然起こりますと、定期預金等につきまして現在預金分散を図っておられる預金者が、また急激な預金分散を図らなければならないという懸念を持たれる場合がありますし、また金融機関においても、そういった懸念もあって合併等に踏み切ることを躊躇する場合もあるということで、1年間に限った経過措置といたしまして、言わば預金者のための熟慮期間といたしまして1年間こういった特別措置を講じ、例えば2つの金融機関が合併いたします場合には 2,000万円といったような保険基準額を適用することで激変を緩和するということでございます。

ちなみに、こういった類似の措置は、アメリカ、韓国にも例がございます。

その下に、経営基盤強化計画とございます。これは、以上の中で、特に資本増強等の支援措置を受けますに当たりまして、合併等を行う金融機関が収益性の向上等について記載しました計画を出していただいて、これにつきまして主務大臣が認定するというチェックをかけるということでございます。ちなみに、この計画は、平成20年3月31日までに提出できるという時限的なものとなっております。

主務大臣は、この計画が円滑かつ確実に実施される等の要件に適合すると認めますときには認定を行いまして、またその計画内容は公表し、その履行状況はフォローと書いてございますが、報告徴求等によりましてしっかりと監督していくという格好でもって支援措置の適用を受けられるということにしてございます。

施行日といたしましては、この法律はやはり金融機関等ができるだけ早く合併等の準備に入れるよう、これは経営基盤を1日も早く強化していただくという趣旨でございますが、平成15年1月1日より施行ということを目指しておりまして、ただし合併の日から適用されます預金保険の保険基準額に係る経過措置、それから預金保険機構による資本増強等につきましては、予算の関係もございますので、平成15年4月1日、すなわち新年度から施行という考え方をとっております。

以上、駆け足でございましたが、これが第2の法案の概要でございまして、なおそれを図式化したものも後ろにお付けしてございますので、適宜ご参照いただければと思います。

それでは、私の説明は以上とさせていただきます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま事務局から報告がありました金融再生プログラム、金融関連2法案を含めまして、何かありましたらご自由にお願いいたします。

全体の構成は、私の理解では、金融再生プログラムというのは主要行に対するある種の措置でありまして、それからあとの金融関連2法案は地域金融機関を中心とする、それから元来前に議論したことのある決済用預金の取扱いに関するもの、そういうふうに一応理解してよろしいでしょうね。

ということで、もしご質問等ございましたら、どうぞご自由に発言してください。

岡部委員、どうぞ。

○ 岡部委員

金融再生プログラムですけれども、これからまだ詰めなければいけない点があると思うんですけれども、詰めれば固まるものと、詰めようとしても決まらないものと両方含まれているのではないか。特に、この自己資本充実に絡んだ無税償却で税制改正の問題、これは要望なんですね。要望というものを、こういうプログラムに盛り込むということがあっていいのか。しかも、今の段階で既に財政当局あるいは政府税調の方かどうか知りませんけれども、もう早くも拒否反応を示しているということであって、これから詰めれば固まるものとそうでないものが混在しているという点で非常に不安定にしているのではないかという点。

それからもう一つ、産業再生機構ですけれども、産業再生と金融再生、これを一体でやらなければいけないというのは理念としては誰もがよく分かることなんですが、実際にどう進めるかというのは非常に難しいということも、これはみんな理解していると思うんですけれども、下手をすると、うまい運営をしないと産業再生ではなくて産業保護機構になってしまって、これは不良債権の塩漬けで、不良債権処理が進まないモラトリアム国家になってしまうという心配があると思うんですけれども、これは今の段階で非常に基準作りが難しいというふうに言われていますが、これは果たして透明で公正で中立的な基準というものができるのかどうか、この点をちょっとお聞きしたいと思います。

○ 貝塚会長

ただいまのご質問に関しては、こちらはどなたがお答えになるのかアクションをと言ってはなんですが、もしよければ担当大臣あるいは総務企画局長。

○ 藤原総務企画局長

最初の税制の関係でございますけれども、これにつきましては、もう既にご案内のように、この再生プログラムに基づきまして、私どもとしまして税制改正要望を主税局の方に出しております。これにつきましては、自民党の方からも部会から要望が上がって、今ご議論いただけるというふうな状況になっております。

○ 貝塚会長

それから、先ほどもう一つのご質問、産業再生と金融再生の相互関係ないしは、必ずしも金融庁の所管でもないんですが、何か事務局の方で特段ないでしょうか。

○ 大藤企画課長

では、事務局の方から。

現在、その問題についてどういう形で進められているかということについてご報告させていただきますと、既にご承知かも分かりませんけれども、11月8日に、内閣府に産業再生機構――仮称でございますが、この設立準備室が設置されておりまして、今後、同準備室を中心に、金融庁も含めまして政府一体となって検討が進められるということになっております。また、11月12日には、内閣総理大臣を本部長といたします産業再生・雇用対策戦略本部が設置されておりまして、今、岡部委員からご指摘があったような点も十分認識しながら検討が進められていくものというふうに考えております。

以上でございます。

○ 貝塚会長

ほかにご質問、ご意見どうぞ。

太田委員、どうぞ。

○ 太田委員

特別支援行というものに対する誤解が、世の中に満ちているというふうに思っております。誤解なのか、あるいは私が誤解しているのか分かりませんが、ここは丁寧に説明する必要があると思います。長銀、日債銀と同じようなことになるのか、そういうことではないのか、マーケットの関心というのは専らそこにあるわけで、自分が持っている株がゼロになってしまうのかしまわないのか、それによって銀行に対する株の売り圧力というのは随分変わってくるのだろうというふうに思います。もしそういうことでないのであるなら、もうちょっと丁寧に、しかも繰り返し当局として説明していく必要があるというふうに思います。これは、要望であります。

それから、この特別支援ということになった場合に、今まで言っている中小企業に対する貸出枠とか、そういうものはどういうことになるのでしょうか。中小企業にこのくらい貸さなければいけないということは継続されていくのでしょうか。一方で不良債権の処理をしろと言いながら、やや危なっかしいかもしれない中小企業に対する融資枠をはめるということに大変な矛盾があるように私は感じているんですが、その辺はどういうことになるのでしょうか。

それから、株価対策で株式の価格変動リスクに対する対処というのが6ページにありますが、ここにあるのは日銀による金融機関保有株式の買い取りの円滑な推進を期待するという日銀に対する期待だけが書いてあるわけですが、そのほかに何かする必要があるのかないのか、そこの議論はどういうふうになっているのでしょうかということです。

それからもう一つ、ついでにというのは申し訳ありませんが、岡部委員もさっき指摘されましたように、金融庁部分については実施するということになっている。それから、特に財務省向けには要望ということになっている。この実施と要望、もし要望が聞き入れられないような場合に、この金融庁部分の強化の実施というのは一体どういうことになるのでしょうか。こんな疑問がわきましたので、ちょっとご質問いたしました。

○ 貝塚会長

ただいまのご発言は、ご意見と、それからご質問と両方ありまして、ご質問の方は株価の話、それからこれは中小企業金融ですかね、これもご意見というふうな感じもあるんですが、中小企業金融と、この全体としての再生プログラムとしてのある種の対立関係といいますか、その辺はどういうふうに考えておられるのかと。

○ 太田委員

これは質問です。

○ 貝塚会長

最後は、岡部委員がおっしゃった点と同じですが。

はい、局長。

○ 藤原総務企画局長

順不同ですが、株価の方を。

○ 貝塚会長

はい、株価の方ですね。

○ 藤原総務企画局長

株価の話でございますが、これは日銀の株式買い取りのことを書いておるわけです。これは、ストレートに株価という話ではないのだと思いますが、反射的な株価のあれだと思いますけれども、前国会で、今、継続審議になっております株式買取機構の持ち合い解消のための銀行株の買い取りというのが、明日また参議院の方で継続審議になっておりましたのでご審議されて、そちらの方も成立に向けて動き出すというような状況になっております。これは、政府ではありませんで議員立法の話ですのでここには書いておりませんが、国会の方の話でそういうこともやっております。

○ 中原参事官

今、委員のお尋ねの中で、早期健全化法に基づく中小企業貸出と、それとプログラムにおける特別支援との関係についてのお尋ねがございました。

プログラムにおける特別支援銀行、これにつきましては、基本的には経営難あるいは資本不足、それに類似した状況におきまして、日銀特融あるいは預保法102条に基づく資本注入、こういったものの対象になった金融機関を念頭においておるわけでございます。

これとは別に、現在、早期健全化法に基づいて資本増強が行われた銀行につきましては、同法とこれを受けた告示等に基づきまして、中小企業貸出について、計画上目標設定をして、そのきちんとした履行を求めていくという制度になっておるわけでございます。今申しましたように、制度的には早期健全化法に基づく制度として今後とも運用していくと。他方、特別支援行につきましては、いわば危機対応としての所要の制度を講じていくと、そういう考え方でこのプログラムは整理されているところでございます。

○ 貝塚会長

ほかにご意見ございませんか。

成川委員。

○ 成川委員

2つばかり質問と、あと1つは考え方をお聞きしたいと思います。1つは、公的資金の投入については、現行の預金保険法に基づいて必要な場合は速やかにという方針が書かれておりますが、もう一方では新しい公的資金制度の創設ということで、不良債権処理問題を終結させるためにはこの新しい公的資金制度についても法的措置を検討するというお考えなんですけれども、この考え方がどういうところでどう違うのか分かりにくいところがあるので、その新しい公的資金制度というものはどういう性格のものとしてお考えなのかという点を、1点質問したいと思います。

もう1点の質問は、最後の今後の対応のところで、これは主要行に対する計画ということですけれども、中小地域金融機関の不良債権処理についても、この平成14年度内を目途にアクションプログラムを策定するというふうなことを示されているわけですが、これはいろいろ検討した上でということなんですが、どういうふうな今後のスケジュールの中で、平成14年度、どの辺で出されるというふうなお考えなのか、その辺について2つ目のところをお伺いします。

3つ目ですが、私の考えでは、今回の不良債権の問題につきましても、今のこのデフレの進行の中で、不良債権の資産査定の厳格化をする中で不良債権が増えた、あるいは新しく不良債権になってきた、こういうことがあると思うんですが、このプログラムによってどこまでしっかりこういう対策をとって、本当に平成16年度、主要行について半分程度に下げられるのか。今のようなデフレが続き、また経済状況も非常に思わしくない中では、いわゆる新たな倒産等が起きて、それが不良債権化する、あるいはデフレによって売上なり担保物件が下がるということでの不良債権の発生も予測されるんですけれども、その辺の関連性についてどのようなお考えなのか。これは、先ほどあった総合対応策というところで両面を考えておられるのかと思うのですが、ちょっと一読した限りでは、必ずしもはっきりそういう今後の新しい不良債権発生に対してこの金融再生プログラムがどれだけ効果的に対応できるのか、私としては余り読み取れなかった。その辺は、どのようにお考えなのかお聞かせいただきたい。

以上です。

○ 貝塚会長

3つご質問があって、1つはこの新しい特別支援、それと従来のある種の金融機関に対する支援措置との差異は、どういう違いがあるのかということですね。

○ 藤原総務企画局長

ご案内のように、現在、預金保険法の102条でいわゆる金融のシステミックリスクにつながるような危機、要するにそういう措置を講じなければ、地域あるいは国の経済等、あるいは金融機関に重大な影響を与えるというような場合の規定がございます。それにつきましては、ここに書いてありますように、そういう事態に至りましたら果断に対応するというふうに従来から申し述べてきているところであります。

他方、今、成川委員ご指摘の4ページの上から3つ目、(ウ)の新しい公的資金制度の創設というところのくだりだと思うんですが、そういうものとは別に、もしそれ以外に迅速に公的資金を投入することを可能にするような新たな制度の創設の必要性、そういうものがあるかないかということについてまず検討し、もしそういう必要性がある場合は法的な措置を講ずるということでございまして、まさしくこれは、今何か予断を持ってこういうときというのはありません。したがって、これからそういう場合があり得るというご意見もありますので、そういうものを踏まえまして、検討を進めていくというようなことだと思っております。

○ 貝塚会長

あと、2番目は中小金融。それから最後はデフレ対策との関連で、これはなかなか難しい問題でありますが。これは、答えるというのも結構これが答えられれば、日本経済は――これはちょっと私が答えるのもあれなので、どなたかもし――大臣。

○ 竹中金融担当大臣

はい。2つ目のリレーションシップバンキングをどういう形のスケジュールでやっていくかというのは、大変重要な問題だと思っております。まさに工程表の中で、いつごろまでにどういう場で議論を進めていくかということをはっきりと明示できればと思っておりまして、今、事務的にそのことを詰めているところでございます。

3番目のデフレと不良債権問題のリンクの問題、これは多分、経済財政政策担当大臣としてお答えしなければいけない問題だと思うんですが、ご承知のように、今年の4-6月期のGDPの成長率というのは、年率換算で4%でありました。7-9月期のGDPの実質の成長率というのは、これまた年率換算すると3%成長ということでありますので、実は実質成長率そのものは、日本の潜在成長力から考えても決してそんなに低くない、むしろ数字そのものはそこそこ高い。

しかしながら、この1年半の経済運営を振り返って、やはり予想以上に厳しい現実が1つある。それは、まさにデフレの進行であるということだと思います。実質GDPはそこそこ増えているんだけれども、名目GDPとのギャップが他所より大きくなっている。

結局のところ、デフレになるので不良債権が増える。しかし、不良債権が存在しているから金融仲介機能が低下して、つまりマネーが増えないことによってデフレになっていっているという非常に厳しい現実がある。その悪循環を断ち切らなければいけない。だからこそ、この不良債権処理を加速させなければいけないというのが、まさに小泉総理の決断であったわけであります。結果的には、やはりマネーが増えるような状況にしたいということになります。

どういうシナリオで、それを半減することができるのかということでありますが、金融再生プログラムで示されたシナリオにのっとって、これは大変しんどい過程かもしれませんが、不良債権問題を粛々と解決に向かわしめる。一方で、経済全体の運営としては、これは小泉内閣になってから、「改革と展望」というマクロ経済と財政を一体化したシナリオを示すようにしております。その中で、ご指摘のような問題がどのようにマクロ的に整合的に解決できるかということを、今、見直しているところであります。

私は、基本的には、この問題に関しては、今後どの程度不良債権が新規に発生するかを踏まえて達成可能な目標であるというふうに思っておりますし、そういうマクロ運営が可能なように、来年度の先行減税をどのようにすべきかというようなことも、今、経済財政諮問会議で非常に詳細に詰めた議論をしているところでございます。

○ 貝塚会長

原委員、どうぞ。

○ 原委員

消費者の国民の立場ということで、意見と、それから質問ということで発言させていただきます。

竹中大臣とは、ちょうど去年の春先に、物価安定政策会議でインフレターゲット論のあの話をさせていただいて、あのとき私としては、物価はもう少し構造的な分析が必要なんだというふうなお話をちょっと申し上げて、あのころもうちょっと早くにいろいろな対策がとられていればというふうな感じもいたしますけれども、ちょっとそれは前置きで、今日の議題なんですけれども、今回、この一、二カ月ですが、国民とか消費者の関心が非常に高いテーマで、誰もがこのことを、今、話題にしているというふうな状況にあります。

何が関心かというと、やはり不良債権処理と同時に金融行政のあり方、金融システムのあり方というところにみんなの関心があって、不良債権処理については本当に総合的に、それから抜本的に取り組んでいただきたいということになるんですが、金融行政とか金融システムについて、なぜこういうことになってしまったのかというところに、非常に不信感というものがあります。

私どもとしては、やはり経営の失敗という場合には退場してもらう。そのためのルール作りこそやっていただきたいというふうに考えております。ただ、そのときの方向性として、今はかなり強権的に行政が出てこざるを得ないというふうなところがありますけれども、以前のような監督行政に戻るということを期待しているわけではなくて、もう少し金融システム自体が自律的に働いていくということを望んでいて、それは意見ということで述べておきたいと思います。

そういうことは、今回のこの再生プログラムにも随所に盛り込まれてはいるんですが、ただ具体化が図られるものと、それから書き込まれているけれども、これから具体化を考えなければいけないものとが混在しているというのは確かで、ここにあるものですぐにできるというのは、この間も発表されました実際に自己査定と金融庁検査の格差の公表ということで、大変興味深く拝見いたしました。私どもはちょっと別途に、全然別なんですけれども、金融トラブル連絡調整協議会というところで、自分たちの紛争処理をどうやっているかのモデル案を作ってやっているんですが、ここも自己査定結果というのを出してきたんですけれども、やはり 1.5倍ぐらい甘いというような大変似通った印象を持っておりまして、金融機関独特の雰囲気があるのかなというふうな感じはしております。

ですから、この自己査定と金融庁検査の格差公表とか、それから財務諸表の正確性に関する経営者による宣言とか、こういうところはすぐにでも具体化してできるかと思うんですが、中に随所に盛り込まれています検証チームによる検証だとか外部監査ですね。

例えば、外部監査については、自己資本比率に関する外部監査の導入とかガバナンスの強化のところでの外部監査人の機能とか、こういう形のことが盛り込まれているわけですけれども、これを一体誰が担っていくのか、そこが十分手当されるような状況にあるのかということですね。この担い手が登場してこない限り、どうしても行政が出ていかざるを得ないということがありますので、ここについて何かある程度の具体性を持たせるような試みというのがスタートするのかどうか、これは質問でお聞きしたいと思います。

それからもう一つ、質問と意見なんですが、今回も流動性預金ということで、普通預金の部分は、普通預金の中も決済性の預金と流動性預金ということに分かれていくということなんですが、やはりこういった情報が消費者へまだなかなか伝わっていないというところがありまして、今後、例えば10ページにありますけれども、健全化計画の未達先に対する業務改善命令とか早期警戒制度とかと書かれていますけれども、こういったところも、実際におやりになったことをある程度、国民に、消費者に正確に情報提供していただきたいというふうに思っております。この1、2年、本当にスポーツ紙の夕刊にすごい見出しが躍っておりまして、消費者側も本当の情報とか正確な情報というのは一体どこにあるのかというところが、たくさん情報が氾濫している割にはきちんとした情報が非常に不足しているというふうに感じておりますので、その情報提供のあり方についてもぜひご検討いただきたいというふうに思います。

長くなりましたけれども、以上です。

○ 貝塚会長

ご質問の方は、外部監査人というのを具体的にどういう形でうまく定着させるのかということのようですが。

○ 原委員

はい、そうです。

○ 貝塚会長

大久保審議官。

○ 大久保審議官

外部監査制度のあり方につきましては、公認会計士が非常に大きな役割を担っているわけで、そのあり方につきましては、かねてから公認会計士審査会、あるいは金融審議会の公認会計士制度部会で非常に精力的にご検討いただいております。

その検討事項の中には、監査の実態面のあり方もありますし、より幅広い制度的な問題もございまして、例えば独立性の問題ですとか、あるいは監査法人のあり方というような問題もございますし、そもそも公認会計士の数が十分なのかどうかというような問題もございます。それから、公認会計士自体をどのように監督していくべきかというような議題もございまして、これらの論点につきましては、現在、公認会計士制度部会で非常に精力的にご議論いただいておりまして、加古委員を初めご参加の委員の皆様には非常に積極的にご参加いただいておりますけれども、これにつきましてできるだけ早く草案を得まして、私どもとしても、法改正が必要な部分については、通常国会に提出させていただくよう努めたいというふうに思っております。

○ 貝塚会長

ご質問あるいはご意見、高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

2点申し上げます。意見と質問が混在すると思いますが、質問につきましては、ぜひ大臣にご回答いただきたいと思っております。

まず、決済機能の安定確保についてなんですけれども、流動性預金の全額保護を2年延長する、ペイオフの全面解禁を遅らせて、その間に決済用預金の導入に向けて所要の施策を講じる、金融機関もそれなりの準備をしていくという流れかと思うのですけれども、そこで疑問に思いますのは、決済用預金というのは、そもそも来年4月にペイオフを解禁するということを前提に、この審議会で極めて短期間に検討したものだというふうに私は思っております。当会議でも、この預金に関しては異論が非常に多く唱えられたのに、時間切れで決まったような経緯があったと思います。ですので、決済機能の安定確保ということであれば、これではない選択肢がいろいろあるではないかということなわけなのですけれども、2年遅らせてもなおこれを導入するという形で進めるのかどうかということについて、ぜひご意見をお伺いしたいと思います。

私の意見としましては、以前にも申し上げていますけれども、消費者側からの金融機関の選別が進みにくいと。金利がゼロであっても、決済用でない預金を新しい決済用預金に預ける人が現実にかなり出てくるかもしれないので、それが2点目に質問したい「金融再生プログラム」と整合しているのかということに関して疑問を持っております。先の内閣府の国民生活動向調査でも、元本保証以外の金融商品には関心がないという方が79%という数字が出ているわけでございまして、金融再生との関係で言えば、国民がリスクをとっていく、国民にリスクが移転するということが当然ながら目指されていると思いますので、そことこの決済機能の安定確保と決済専用預金との関係が私はちょっと理解できませんので、その点について教えていただきたいと思います。

加えて、ペイオフにつきましては、2年延期して、国民の方は今まで来年だと思って金融機関の選別を進めたり、自分の資産の預け分けとかをいろいろやっていたわけなんですけれども、これが2年遅れることによって、国から国民へのメッセージというのはしばらく何もするなということなのか、様子見をせよということなのか、今までどおりおやりくださいということなのか、ここが非常に分かりにくくなっているのではないかというふうに思います。特に、銀行だけではなくて、生命保険会社に関しては、選別を進めていきますとセーフティネットの欠陥が露呈してしまうという状況にもありますし、例えばソルベンシー基準などの厳格化を行えば、もう国民の方はすぐに選別してしまうという状況にもなると思いますので、その点についてお答えいただきたいと思います。

2点目は、「金融再生プログラム」についてです。今回、国民のための金融行政だということを高らかに謳っていただいているわけなのですけれども、私は金融審議会で何度も申し上げてきていますが、預金者、投資者、既に借りている人というのも大事ですけれども、これから投資取引を行おうとする個人といいますか、そういういわゆる広義の消費者、現在行っていないけれども、直接金融ですとか市場型間接金融の方に入っていこうとする消費者に対しての施策というのが何ら具体的に書かれていないということも非常に残念に思うわけなんですが、その点についても今後どうされるのか。今回、工程表には入ってこないのかもしれませんけれども、工程表に入らないのだとしたならば、ほかにどういうふうに消費者保護とか消費者教育なり紛争処理なりを、金融庁として進めていくのかということに関してお答えいただきたいと思います。

以上です。

○ 貝塚会長

もし蝋山さんがおられれば、かわっていただかなくてはいけないのですが、本日はご欠席ですので、要するに平たく言うと、今までいろいろ金融審議会である種のスケジュール的に前提としていたことがあって、その中での決済用預金。それと、今回は先に延ばしてしまうという部分が2年間。その間のそこのところがどういう考え方のもとで整理されてきたのか、これは結構難しい話ではないかと思うんですが、要するに非常に分かりやすく言えば、竹中大臣に、従来の路線と今回延ばしたということと、それから新しい決済用預金を作ったということとはコンティニューするかというか、その辺のあたりはどのようになるでしょうかというご質問だと思うんですが、いかがですか。

○ 竹中金融担当大臣

2問ということで、実は3問ご質問があったのでありますけれども、実はここの審議会の報告等々を読ませていただいて、この決済性預金の導入をということに基づいて私も一生懸命国会答弁をしておりますもので、確かにいろいろなご経緯はあったというふうに聞いております。

ただ、これは非常に表面的なお答えに聞こえるかもしれませんが、やはり私自身も日本の決済のシステムというのが本当に銀行預金に極めて依存していると、私自身が海外に住んだときの経験からしても、やはり銀行での預金を通した決済が日本では95%を占めている、諸外国の中で比べても日本とドイツが突出している、中でもやはり日本が高い。そういう事実の中、こうした形でのシステムを準備しておくというのは、私はやはり意味があるのだろうと、そういうご意見も踏まえて先般の答申になっているのであろうというふうに理解しております。

もし、こういうものが必要ないということであれば、これはまさに消費者が選別すればいいことでありますから、私は1つの現金にかわる、そういった決済の新手段を用意しておくことというのは意味があると思います。決して、蝋山先生のナローバンク説に100%賛成ということではないかもしれませんが、これは私はそういう考え方がやはり適切であろうというふうに思いまして、法案を予定どおり提出させていただいて、今、審議していただいているということであります。

ペイオフについては、国民へのメッセージが分かりにくいというご指摘に関しては謙虚に耳を傾けて、いろいろな機会にいろいろな考え方をぜひ申し上げたいと思います。

ただ、我々にとって重要なのは、やはり金融システムを改革して強くしていくことであって、その結果としてペイオフというのは必然的にその条件が整っていくわけであります。金融を改革しないでペイオフを延期するというのは最悪の選択で、これはそういうことではない。国民へのメッセージとしては、金融をしっかりと改革していく、それも物すごい決意で改革していくんだということは、この金融再生プログラムでまさに示したつもりであります。この点を、ぜひさまざまな機会でご説明させていただきたいというふうに思っております。

もう一つ、これから参入する人たちが大事なんだというご指摘は、私もそのとおりだと思います。これは、これから投資家として参入する人、これから借り手として参入する人、さらにはこれから貸し手として参入する人もあるのだと思います。貸し手の新規参入については、それを積極化することが金融システムの強化につながると思っておりますので、再生プログラムにはかなり明示的に書いております。ここで投資家と言うのは、これは決して今の投資家を守るとは書いていないわけで、これは将来の潜在的な参入者に対してもすべて適用されることでありますから、その意味では、新規のとは書いていませんが、そういうことは中身には実際に盛られていることだと思っております。

一方で、消費者保護の観点というのは、これはこれでまた非常に大きな課題でありますので、これは内閣府の方でも、今、消費者保護の見直しについて、これは委員にもご参加いただいていると思いますが、そうした中で連携を強めながら、引き続き検討していくべき重要な課題であると思っております。

○ 貝塚会長

時間が大体経過しまして、ほぼ予定の12時近くなりましたが、何か特にこの点、要望あるいはご質問ということはございませんでしょうか。

○ 原委員

もちろん内閣府の方で、消費者保護基本法の35年ぶりの抜本的改正作業に入っておりますが、私ども金融審議会、ここでの流れとしても、4年かけて消費者保護の見地から横断的、包括的な金融サービス法の制定ということでずっと議論を重ねてきておりますので、ぜひここの場も主導権を持って対応していただきたいと思います。

○ 貝塚会長

ほかにございませんでしょうか。

多少、私自身の個人的な感想ですが、現在、非常に日本経済また日本の金融システムはある意味でやや危機的な状況にあるというのは間違いないので、そこでどういうふうに対応するかという対応の仕方が、実を言うと、今までいろいろ対応してきたわけですが、その路線、それぞれの考え方がかなり錯綜して見えにくいというのが多分そういう点で、今後とも、もともと元来もっと早くすべきことであったというのは、私は昔から金融制度調査会などに関係しておりますので全く責任がないわけでもないのですが、過去の金融行政あるいは金融政策、その他の要因が非常に絡んで、もちろん最終的には政治の問題でもあるんですが、そういうこともあって、今、非常に困難な状況にあるということだそうでありまして、何とかしなくてはいかぬという点で、遅きに失した点もたくさんあるというふうには思っているのが、正直なところの個人的な感想です。

今日は、そういうことでいろいろご意見がございまして、委員の方々のご意見を、政府におかれましても参考にしていただきたいと思います。

これで、本日の議事を終わらせていただきます。

それから、本日の模様につきましては、私から記者レクを行うということになっているのですが、どういうふうに記者レクをともやや思うんですが、ざっくばらんなところの感想も述べさせていただきたいと思います。

本日は、お忙しいところどうもありがとうございました。

以上

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