金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(第6回)議事録

1.日時:

平成24年11月12日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○洲崎座長

それでは、ただいまより、保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ第6回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、沖野委員、川島委員がご欠席となっており、また、後藤委員がおくれてご出席のご予定です。

それでは、議事に移らせていただきます。

本日は、前回のワーキング・グループの最後にご案内したとおり、第3回のワーキング・グループにおいて議論いたしました「保険商品サービスのあり方」について、論点の整理を含めた議論をしていきたいと思います。

それでは、事務局より資料の説明をお願いします。

○伊野保険企画室長

それでは、資料のご説明をさせていただきます。

資料1、説明資料となっている紙をごらんいただきたいと存じます。1ページでございますが、第3回にご議論をいただいた部分と重なっておりますので、第3回に頂戴いたしました主なご意見をまとめさせていただいた上で、それを踏まえた論点を事務局として整理させていただいております。順次、項目ごとにご説明をいたしたいと存じます。

まず、業務範囲規制のあり方についてでございます。主な頂戴したご意見ですけれども、業務範囲の拡大に前向きなご意見として、上から3つほど挙げてございます。今までのように厳格に考えず、もう少し考え方を緩やかにして、利用者利便に資すると考えられる、保険業に近しいものについては認めてもいいのではないか。保険会社が資産を有効に活用することにより、事業の効率性向上、財務の健全性につながり、しかもそれが国民経済にとってプラスになるものは、柔軟に認めてもよいのではないか。今の段階で具体的なニーズがあるものはどんどん認めていくべき。挙げられたもので、何か問題がありそうなことは特にないように思われるので、これは積極的に認めてもいいのではないかといったご意見です。

次の2つが保育所の関係でございます。保険会社の本来業務であるコンサルティングセールスや、不動産の運用・開発の2つの観点から、共働きが一般化している現代におけるニーズへの対応として、保険会社が保育所事業者と連携して不動産活用することは、保険会社の本来的な業務と一定の親近性が認められるのではないか。保険会社が既に保有している不動産の有効活用を行い、消費者の信頼を既に獲得している高い専門性を有している保育所事業者との提携を伴う事業展開であれば、保険会社全体へのリスク波及の程度はおおむね限定的になるのではないかというご意見がございました。

次の2つは総論的な部分でのご意見ということだと理解しておりますが、業務範囲規制は、リスク管理の観点からの規制と考えられるが、業務範囲規制によってリスク管理を行う必要は必ずしもないのではないか。また、諸外国では、基本的に子会社の業務内容は何でもできることにしておいた上で、問題があればやめさせることができるという法制になっているのが一般的。長期的には我が国の子会社業務範囲規制のあり方自体をもう少し見直してもよいのではないかといったご意見を頂戴いたしました。

こうしたものを踏まえて、論点を以下で整理させていただいております。保険会社及び子会社の業務範囲については、これまでよりも範囲を拡大し、保険会社や子会社において現に提供しているサービスと関連性や類似性がある業務や、一体的に提供される場合に利用者利便に資するものについては、本来業務との親近性、リスクの同質性、本体へのリスクの波及の程度を勘案し、本来業務との親近性がきわめて高いものについては本体業務とし、それ以外については、子会社の業務として認める方向で問題はないかといった論点かと存じます。

次に2ページでございますが、保険商品の内容についてでございます。具体的には不妊治療に関する保険サービスについてでございますが、いただいた主なご意見ですが、不妊という事由が発生した人すべてが不妊治療を受けて保険金を請求するとも限らないし、様々な観点から恣意性が働くこともあり得る。また、不妊治療を何度受けるか、多様な不妊治療の手段の中でどの不妊治療を受けるかといったことについても、契約者の意思が異なり得る。こうした諸観点から、リスクをどのように管理し得るかということに十分留意した上で商品開発していくことが肝要。2つ目ですが、モラルリスクに配慮する必要はあるが、複雑かつ難しい保険はトラブルになりやすいので、顧客にわかりやすい商品設計や説明が必要ではないかというご意見を頂戴いたしました。

これを踏まえて下の論点でございますが、不妊治療に関する保険サービスの提供を行うに当たっては、モラルリスクに配慮した商品設計にする必要がある一方で、支払い事由が契約者にわかりやすいものとする必要があるが、商品設計上どのような工夫ができるのかといったことが論点になろうかと考えられます。

後ほど、梅﨑オブザーバーから考えられる商品性についてご説明をいただけると存じますので、それを踏まえてご議論をお願いできればと存じます。

次に3ページでございます。再保険、共同行為についてでございます。いただいた主なご意見としましては、新規リスクとしては、新規技術、ITであるとかネットワークであるとか、人の移動に伴って生じる従来なかった感染症のリスクといったものが考えられる。例えば、リスクがどこまで広がるのか技術的な知見が全くないといった場合に、それを小さい所帯でデータもなかなか積み上がらないまま取り組むよりは、リスクをシェアしつつ、まずはより早く着手してより早く大きなデータベースを構築するということが考えられる。本来は損保会社がリスクの管理の高度化・健全化の維持を図りつつ、公正な競争を通じて切磋琢磨することが大原則であるが、蓄積データを全く持ち得ないような新規リスクについては、消費者等にとって保険カバーが不可欠であり、また社会経済活動等の観点からも我が国の在り方に支障を来すような事象であり、保険会社個社では引き受けられない場合、新規リスクに関して迅速、円滑に対応できるような、期限つきの共同行為を可能とする制度を検討することは考慮に値する。新規リスクについては、期待保険金支払額が分からないので、共同で保険を引き受けることによりリスクを分散し、データが蓄積され期待保険金支払額が分かってくれば、各社毎に保険を引き受けるようにして公正な競争につなげていくことは、合理的な考え方ではないか、こういったご意見を頂戴しました。

論点としましては、新規リスクに備える観点から、共同行為の要件を緩和することについてどう考えるか。また、新規リスクの範囲などどのような条件の下であれば緩和してよいと考えるか。その他、留意するべき事項はあるかということでございます。

本件につきましても、後ほど村田オブザーバーからご説明があろうかと存じますので、それを踏まえてご議論いただければと存じます。

次に4ページでございます。現物給付型保険及び保険金の直接支払いサービスについてでございます。いただいたご意見としましては、まず現物給付に対するニーズとしましては、例えば、老後のライフプランを考えるに当たり入居施設等を検討する際に、施設の永続性、継続性を考えると、保険会社による現物給付へのニーズは間違いなくあり、今後さらに大きくなると思われる。

次に、直接支払いについてでございます。保険会社がサービス提供事業者に対して費用を支払う、それによって顧客の事務負担を減らすということは、現在の枠組みのもとでもやろうと思えば可能ではないか。現物給付として考えられているものの中にも、保険金の直接支払いのスキームとして解決できるものがあると思うということで、保険金の直接支払いのスキームとして、いろいろと対応可能なのではないかというご意見を頂戴いたしました。この留意点としまして、3つ目でございますが、保険会社とサービス提供者との間に直接の関係ができると、保険会社とサービス提供者が組んで、提供できるサービスをコントロールするといったことも考えられるので、保険会社とサービス提供者との間の関係がどういうものかということを十分検討することが重要ではないかというご意見を頂戴いたしました。

次に、サービスの質の確保についてでございます。保険加入後の社会情勢等の変化により、保険の加入時と給付時に契約者が求めているサービスが大きく乖離してしまうといったリスクも考える必要がある。こうしたリスクに十分に留意し、管理するための手段を考える必要があり、例えば、保険期間の短期化等を含めた様々な手段が考えられるのではないか。保険給付として現物給付を提供するとした場合、サービスの質の監督がどうなるのかということは平成20年保険法検討当時から議論されていていたが、そこをどうするのかということも保険監督の観点からきっちり考えておかなければならないといったご意見を頂戴いたしました。

5ページに、引き続きまして選択制についてでございます。まず選択制のメリットとしまして、現物給付で特定の業者に必ず依頼される場合には、価格の適正性が問題となる可能性があるが、契約者が給付方法を選択出来るのであれば問題ないと思う。保険金の支払いと現物給付の選択を認めることで顧客保護が図れるのではないか。現状の要望を見ると、一律に現物給付しなければいけないものは少ないので、選択制で現物給付があり得るという方向で議論を進めてはどうか。これに対して留意点でございますが、例えば葬儀保険について、給付方法を選択する権利を持っている保険契約者が亡くなり、保険金の受取人が認知症状態になっているような場合、どのように対応することができるのかという問題が生じる。最後の選択方法や手順に関して議論する必要がある。選択制にしたとしても、契約者側が現物給付を選択したとき、サービスの質が自分の想定していたものと異なれば、その部分で契約者側もリスクをとることになる。その点は顧客にとって問題がないとはいえないというご指摘をいただきました。

次に、価格変動リスクについてでございます。金銭給付との選択制になると、保険会社側は顧客が現物給付を選択する可能性がある以上は現物給付をする義務を負い続けなければならない。それは特に老人ホームの入居権のようなことを考えると、相当長期間、何十年にもわたってそういう義務を負うことになり、そのリスクを適正に算定することは困難である。平成20年の金融審では、ここの監督が相当難しいのではないかということで、保険業法上、現物給付保険というものを積極的に押し進める、認める方向には進まなかったのではないか。少額短期保険業協会から発表されたような、少額でしかも短期の保険商品であればインフレリスクの管理は比較的しやすいのではないか。あるいは、保険会社が有料老人ホームを保有することができれば、それほどインフレリスクはないのではないか。商品設計について、色々なアイデアがあると思うが、やはり長期の保険というのは考えづらい。例えば、20年後に有名な老人ホームのこの部屋に入りたいというようなものは無理な話であり、会社としてリスクの取れる範囲のものを現物で提供するというイメージではないかといったご意見を頂戴いたしました。

以上を踏まえまして、6ページ以降で論点の整理をしております。まず、第3回のときに現物給付型保険と直接支払いとの違いは一体どの辺にあるのかというのをよく整理してほしいというご指示をいただきましたので、その点について整理をさせていただいております。

箱の中でございますが、現物給付型保険は、保険会社が保険契約において予め定められた特定の物品・サービスを契約者に提供することを契約するものである。現行法上生命保険では認められておりません。一方、直接支払いサービスは、予め定められた保険金の支払いであり、付加的なサービスとして支払先を契約者からサービス提供者に変更するものであります。このため、現行法の下でも禁じられておりません。このような現物給付と直接支払いの性質を踏まえると、以下のような相違点があると考えられます。

まず、価格変動リスクについてでございますが、現物給付の場合、基本的には、仮にインフレが発生して当該サービスにかかる費用が当初の予想よりも上昇したとしても、保険給付として予め定められた物品・サービスを提供する必要があるため、インフレのリスクは保険会社側が取ることになります。一方、直接支払いの場合は、あくまで保険金の支払いが契約内容であり、付加的なサービスとして支払い先を契約者からサービス提供者に変更しているに過ぎないことから、インフレリスクは契約者が取るということになります。逆に、支払われる保険金額がサービス費用を上回る場合は、保険会社が契約者に差額を払う必要が生じてまいります。

差額の取り扱いでございますが、上記のように、純粋な現物給付であれば、あらかじめ契約で定められたサービスを提供するものであることから、費用に差額が生じるということは、概念上存在しないと考えられます。一方で、直接支払いは、保険契約に支払先をサービス提供者に変更できるというサービスが付加されているものですので、差額が生じる場合は、必ず差額を支払う必要が生じます。逆に、サービス提供額が保険金よりも高い場合というのは、契約者は不足分を支払っていただく必要があるということになると考えられます。

7ページでございます。サービス提供者の選択についてでございますが、現物給付の場合は、提供されるサービス内容があらかじめ保険契約により定められておりますので、サービスの選択ということは生じないと考えられます。一方、直接支払いの場合は、ここに書いている二つのケースがあるかと考えられます。一つは、保険会社が提携する会社のサービスを契約者が選択した場合に、直接支払いを行うといったケース、もう一つは、事後にサービス提供者の同意を得れば、直接保険金をサービス提供者に支払うことを可能とするといったケース、この二つが考えられると思いますが、いずれにしても、契約者は保険金を金銭で受け取る選択をすることができます。

以上のものを8ページで表にまとめております。左側が現物給付型保険、右側が保険金の直接支払サービスということで、真ん中の欄に現物給付型保険だけれども、金銭での受け取りも選択できるという選択制のものを入れております。概要、保険給付の内容は、ここにも書かれているとおりでございまして、予め定められた物品・サービスを提供するのが現物給付型、直接支払サービスは、予め定められた額の保険金が給付され、支払先をサービス提供者に変更できるといったもので、真ん中の選択制は、予め定められた物品・サービスか、一定額の保険金の選択が可能というものでございます。給付の内容としましては、基本的に今申し上げたことと同じでございますが、選択制の場合、どちらかを顧客が選択するということで、一定額の保険金というところで注1を書いております。これも前回の宿題で、そもそもインフレに連動するような保険金の設定というのはできるのかということでございましたが、注1にありますように、例えば、消費者物価指数など、一定の客観的な指標に連動して保険金額を設定して、保険金額が変更されていくような商品設計というのは可能であろうと考えられます。

次に、保険の価格変動リスクへの対応でございますが、これも先ほどご説明したとおりでございますが、現物給付では予め定められた物品・サービスの支給ということで、価格変動は保険会社側がリスクを負うということでございますが、保険金の直接支払は保険金額は一定ということになります。選択制の場合は、現物給付を契約者が選択すれば現物給付と同じですし、保険金を選択すれば直接支払と同じということになります。差額につきましても、先ほどご説明したとおりでございます。物品・サービスの選択可能性ということでございますが、現物給付は、選択可能なサービスの内容は、契約時に特定されているということ、直接支払の場合は、理論上は保険事故発生後に契約者が自由に選択することは排除されておりません。

すみません。注2を飛ばしてしまいました。注2、注3と下の脚注でご説明したいと思いますが、注2のところで、現物給付型につきましては、概念上、差額は発生しないということにしておりますが、一方で、実際に物品・サービスの提供に要した費用が保険契約時の想定よりも一定程度少なかった場合に、当該差額を例えば配当等の形で、顧客に支給するような商品設計も排除はされないのだろうと考えられます。

次に、注3でございます。直接支払の物品・サービスの選択可能性、右下の欄のところの関係でございますが、商品設計上、直接支払サービスの提供を、あらかじめ、約款等において保険会社が指定する者から物品・サービスを購入した場合に限定することも想定できるのだろうと、先ほど二つのケースがあると申しました。そこの関係でございます。

次に、9ページでございますが、現物給付と直接支払いの主な論点についてということで、論点を整理させていただきました。以上の整理によれば、保険会社が保険給付として予め定められた特定の物品・サービスを提供する義務を負うものが現物給付であり、特定の物品・サービスの提供義務を負わず、金銭での給付が可能な場合は、直接支払いと整理されると考えられます。このような現物給付の性格を踏まえると、以下のような項目が論点になると考えられます。

まず、直接支払いについてでございますが、保険給付の一部として、金銭給付に代えてあらかじめ定められた種類のサービスをサービス提供者を通じて提供するような場合でも、契約者が金銭給付による給付か物品・サービスによる給付かの最終的な選択権を有し、保険契約時には、保険給付として支給される物品・サービスの具体的内容までは約束せず、種類等のみを定め、保険金額の範囲内でのサービス提供を行うに留まるような場合には、直接支払いとして整理をしてよいかということでございます。

米印にありますが、契約者側にサービスの提供と金銭給付の選択権がある場合でも、保険会社が一定のサービスをそのサービスを提供するためにかかる費用に関わらず提供する義務を負う場合は、現物給付型の保険として整理することになるのだろうかということもあろうかと思います。

次に、価格変動リスクについてですが、現物給付を認める場合、将来的な価格変動のリスクを予測した上で、サービス水準とこれに伴う保険料を決める必要がありますが、特に長期にわたる契約の場合は、この予測が非常に難しいと考えられるため、保険期間を制限することにより、こうしたリスクに対応できるのかどうかといった点があろうかと存じます。

次に、10ページ、現物給付のサービスの質の確保でございます。商品設計の段階で、保険サービスの内容についてどこまで具体的に決定する必要があるか。保険契約時点から保険事故発生までの間に、社会変動に伴い、契約者に対するニーズの変化によって、契約者が現物給付を望まなくなる可能性に対しては、金銭給付との選択制を認めることにより、対応することが可能か。また、物品・サービスを給付した後に、サービス内容等に問題が発覚した場合どのような対応が可能か。現物給付を認める場合、保険料に見合った適切なサービスを契約者に提供することを担保するためには、保険会社にはどのようなことを求めるべきか。商品認可やその後の監督を適切に行う必要があるが、どのようにすれば適切な審査・監督が可能かといった論点が考えられます。

最後に、保険会社本体による物品・サービスの提供についてでございます。直接支払いと整理できるものについてでも、物品・サービスによる給付を保険会社本体が直接行う場合には、そうした行為は法制上現物給付と整理せざるを得ないと考えられますが、保険会社による物品・サービスの提供と保険会社の業務範囲規制との関係をどう考えるのかといった論点があろうかと存じます。

以上でございます。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。それでは続きまして、梅﨑様より、「不妊治療に関する保険サービス」及び「現物給付型保険及び保険金の直接支払いサービス」に関して、第3回の議論を踏まえた補足説明をお願いします。

○梅﨑オブザーバー

明治安田生命の梅﨑でございます。本日は新しい商品サービスのイメージとして、現物給付型保険と不妊治療を保障する保険の具体的な内容についてテーマを頂戴いたしております。

生保業界といたしましては、少子高齢化社会におけるニーズの多様化を踏まえて、これからご紹介するような商品・サービスを提供できることが望ましいと考えております。しかし、既にこれまでの議論を踏まえますと、なかなか実現が簡単でないということも十分承知いたしております。

本日は、事務局から、議論を進めるためにもより具体的な商品イメージをということでお話をいただいておりますので、まだアイデアレベルではございますけれども、お配りしてあります資料に沿ってご報告させていただきます。

それでは、今のご紹介と順番は逆になっておりますが、初めに現物給付型保険についてお話をさせていただきます。資料を、1枚めくっていただきまして、1ページ目をごらんください。第1回のワーキングでもご説明いたしましたけども、近年の少子高齢化に加えて、子供を持たない共働きの夫婦とか、未婚者の増加といった家族のあり方が多様化するとともに、就業形態等のライフスタイルも多様化してきている現状でございます。これによって備えるべき将来のリスクも多様化し、それに伴って生命保険に対するニーズも多様化してきていると認識しております。これらのニーズにお応えするため、付加価値のある商品やサービスを提供することが、生命保険会社に求められているものと認識しております。

しかし、現行生命保険会社がご提供する定額保険については、金銭給付に限定されております。現物給付を認めていただくことによって生命保険から得られる給付についても、お客様がそれぞれのライフプランに応じて多様な給付の中で選択できることになります。現物給付型保険のご提供は、消費者の利益に資することになると考えております。

生命保険会社が保険給付を現物で行うことによって、お客様にもたらされるメリットとしては、こちらに掲げている3点が考えられます。まず1つ目は、介護とか医療に関するサービスを受ける際に、お客様が自ら事前に費用を工面することなく、キャッシュレスで対応できるというメリットです。2つ目は、お客様が個別事業者との間でサービス内容を決定したり、費用を支払ったりすることへの対応、それから保険金を請求するといった手続、これらの煩雑な手続をなるべく簡素化させることが可能になるというメリットでございます。次に3つ目ですが、事前に準備することが可能なリスクについては、金銭だけではなくて、サービス内容をあらかじめ決めておくなど、具体的な形をもってリスクに備えておくことができるというメリットでございます。

次のページをお願いいたします。私どもが提供いたします保障分野ごとに現物給付で対応できる具体的なニーズの例についてご説明申し上げます。まず、死亡保障分野でございますけども、残されたご遺族に死後の面倒をかけないよう、あらかじめご自身の葬儀を準備しておきたいというニーズがあります。このニーズに対しては葬儀サービスの現物給付が考えられます。

次に、介護保障分野でございますが、加齢によって身体機能が低下しても可能な限り自立し、住みなれた地域社会の中で家族とか隣人と暮らしていくことを希望されている方も多いようですが、そういった方につきましては、居宅生活を支援してくれる充実した介護サービスを受けられることをお望みで、そういったサービスをあらかじめ確保しておきたいというニーズがあると考えられます。このニーズにつきましては、介護サービスの現物給付が考えられます。

一方、要介護状態となっても、みずからの在宅介護や介護施設の入居手続について、ご家族に面倒をかけたくないという方や、身内からの介護は期待できない単身の方などにつきましては、ご自分が健康なうちに将来入居する介護施設を確保しておきたいというニーズをお持ちであると思います。このニーズに対しては、老人ホームの入居権という形の現物給付が考えられます。

今、申し上げました具体的にニーズにつきましては、これらを裏づけるデータを資料の10ページ以降に載せておりますので、ごらんください。

まず、葬儀の事前準備につきましては、10ページでございますけども、準備すべきと感じるが、準備していない方の割合が約35%となっております。

次に、介護につきましては、11ページになります。これらのデータによりますと、今後も65歳以上の高齢者の単独世帯は増加することが予想されます。また介護に関する不安としては、家族に負担をかけることを挙げていらっしゃる方が多く、また自分の介護を望む場所としては、自宅や施設を希望される方が多いようです。

これらのデータからも、現物給付型保険による葬儀とか、介護関連サービスの事前準備について潜在的なニーズが一定程度存在することが推測されます。

それでは、資料に戻りまして3ページをお願いいたします。現物給付につきましては、保険法の制定過程におきましても、将来における価格変動リスクとか、サービスの適切な履行や質の保証等の課題が指摘されておりました。また、第2回、第3回のワーキング・グループにおきましても、委員の皆様から想定されるリスク等についてご指摘をいただいております。

そこで、これまでの議論やご指摘を踏まえて考えられる対応策について、述べさせていただきます。想定されるさまざまなリスクへの対応策といたしましては、現物給付のみを保険給付とする商品ではなくて、金銭給付、すなわち所定の保険金の支払いを受けることも選択できるようにすること、それから、保険期間を短期化することで対応できるのではないかと考えます。また、個別のリスクに即して申し上げますと、給付の根拠となる法制度の変更、それから、給付の対象となるサービスの価値の上昇や下落については、保険期間を短期化することによって制度変更や価格変動の影響を極力回避することが可能となります。また、契約締結後の消費者ニーズの変化によって現物給付が不要となった場合であっても、金銭給付との選択制とすることによって、お客様の利益を損なうことなく対応できると考えております。さらに、現物の金銭価値について保険金額を上限に設定することによって、保険料の算出や積立金の管理において通常の保険契約と同様の対応が可能となると思います。

なお、本日、事務局から現物給付型保険における現物給付とは、価格変動にかかわらずあらかじめ定められた物品・サービスが支給されることであるとのご説明がございました。これに従いますと、現物の金銭価値につきまして、所定の保険金額を上限に設定する保険は、現物給付型保険の定義に該当しなくなりますけども、ここではこの上限設定することを現物給付型保険の価格変動リスク抑制の1つの方法として一応説明しております。

続きまして、次ページ以降、アイデアベースで、まだ正式な検討は行っておりませんが、具体的な商品の概要についてお話しいたします。

まず、葬儀サービスの現物給付を定期保険に組み込んだ例でございます。例えば、保険金額300万円の現物給付型定期保険において、保険契約締結時に300万円を上限とする葬儀サービスの提供を行うことを保険契約として約定するという商品になります。遺体搬送とか通夜、告別式の施行、それから埋葬手配などの葬儀サービスのほかに、祭壇とか棺とか、あと骨つぼ等の葬儀用品のランクをあらかじめ決めておくことを想定しております。被保険者がお亡くなりになった際は、その葬儀を故人があらかじめ決めた内容に従ってとり行うという内容になります。サービスの提供は、保険会社から委託を受けた葬儀社が行うと考えております。なお、一般的な葬儀費用として想定される金額は、平均的な死亡保険金額と比較して少額でございますので、定期保険特約として別枠でご提供するということも考えられます。

次に、5ページをごらんください。こちらは介護サービスの現物給付を介護保障年金保険に組み込んだ例でございます。被保険者が所定の要介護状態に該当した場合に、介護サービスを提供するという内容になっています。例えば介護年金の月額を10万円とする介護保障年金保険におきまして、月額10万円を上限とする介護サービスの提供を行うことを保険契約として約定するという商品になります。なお、介護サービスの対象としては、介護保険制度の対象給付とならない上乗せ・横出しのサービスを想定いたしております。

被保険者の要介護状態によって必要とされるサービス内容は異なってまいりますので、個別、具体的なサービスの内容を契約締結時に確定するということは困難です。そのため契約締結時には一定範囲のサービス内容を約定し、要介護状態該当時とか、その後の一定期間ごとの見直しの際に、お客様ご自身で必要なサービスを選択していただくということを想定しています。

なお、お客様に介護メニューを提示し、介護サービスを行うのは保険会社から委託を受けた提携先の介護事業者になると考えております。

次のページをお願いします。こちらは、有料老人ホームの入居権の現物給付を養老保険に組み込んだ例です。ここでは保険期間の短い一時払養老保険を例として考えています。被保険者が所定の年齢に到達した場合に、老人ホームの入居権の付与を行うというものです。例えば満期保険金を1,000万円とする現物給付型一時払養老保険の場合、現物給付する入居権の価格、つまり有料老人ホームの入居に際して必要となる前払い金に相当する部分を上限として、この場合は1,000万円を上限として保険契約時に約定することになります。契約締結後の契約者のニーズや居住地など、生活環境の変化を考慮しますと、特定の施設への入居権をあらかじめ決めておくことは、現物給付時の実際の希望とのミスマッチを招くことが懸念されます。そこで、契約締結時には前払い金の支払いが設定した金額以下の施設に対する入居権を付与することについて約定することとし、満期時に契約者が希望する具体的な施設を選択していただくことを想定いたしております。

次に、資料7ページをごらんください。こちらは有料老人ホームの入居権の現物給付に加えて、その後の居住についても介護保障保険に組み込んだ例です。この介護保障保険は、被保険者が要介護状態に該当した際に、介護給付金が一時金として支払われ、その後に終身にわたって介護年金が支払われる商品です。被保険者が所定の要介護状態に該当した場合、有料老人ホームの入居権とその後の居住について現物給付を行うという形になっています。

この商品例と6ページでご紹介した商品例との違いは、この商品の現物給付が入居時に必要な前払い金に相当する入居権の付与だけでなく、毎月の支払いが必要な施設の家賃等の部分にも対応することによって、施設の居住そのものを現物給付する点にあります。

なお、契約締結時における一定の給付範囲の設定や保険事故発生時に被保険者が希望する具体的な施設を選択する仕組みにつきましては、6ページの商品と同様と考えていただければと思います。

次のページをお願いします。ここでは現物給付型保険と保険金の直接支払いスキームとの関係について整理いたしました。この点につきましては、事務局で先ほどご整理いただいておりますので、詳細な説明は省略いたしますが、直接支払いスキームでは、サービス提供に関する内容を保険契約に盛り込むことができないことが基本的な相違点だと考えております。

よって、現物給付につきましては、サービス提供に関する履行責任が保険会社にあり、保険会社による確実なサービスの提供が期待できることが特徴として挙げられます。一方、直接支払いスキームについてのお客様のメリットとしては、資料にも記載させていただきましたとおり、事前に治療費等の費用を工面することなくキャッシュレスで対応できる点が挙げられます。しかし一方で、直接支払いスキームを個別商品に導入するに当たっては、保険会社として混乱なく円滑に実務が行えるよう、サービス提供事業者等と事前に連携することが不可欠だと考えます。そのためには事業者にとってもメリットのある実務となるような配慮が必要かと思われます。よって、商品化の検討に当たっては、まず対象となる範囲が限定されるような一部のサービスに限って検討することが考えられます。

最後に不妊治療につきましてご説明いたします。次のページをお願いいたします。公的医療保険制度が適用されない不妊治療にかかわる医療費は高額です。そのため、その費用の一部については、厚生労働省が自治体を通じて助成を行うという制度があります。ただ、治療を受ける方にとっては、大きな負担を強いられている状況に変わりはございません。私どもが考える商品のイメージは、これもアイデアベースにすぎませんけれども、医療保険とか医療系の特約の中に特定不妊治療給付金を設定し、被保険者が疾病を直接の原因としない所定の不妊治療を受けられた場合に給付金をお支払いするという内容のものです。対象となる不妊治療としては、生殖補助医療として保険適用外となっている人工授精、体外受精、顕微授精が想定されますけども、ほかに治療法がないことが条件となります。また、ご加入いただく際は、最低限今まで不妊治療を受けたことがあるかどうかとか、現在不妊治療中かとか、さらに医師から不妊治療を勧められたことがあるかどうかといった内容についてお答えしていただくことが必要と考えております。不妊治療中や過去に不妊治療を受けられた方については、ご契約をお引き受けすることができないことになると思っております。また、不妊治療のみを目的としてご加入されることのないよう、契約締結後一定の期間は保障の対象外とすることや、給付金を受給できる被保険者の方の年齢に一定の制限を定めることも考えられます。

商品化に当たっては、適切な危険選択や保険料の算出といった課題について十分な検討が行われることが必要と考えています。特に、費用が高いことを理由に現在治療を断念している方が、この保険に加入したことを契機として治療をご検討になることも想定されます。そういった方々の人数の予測はかなり難しいと思っております。モラルリスク対策に加え、これらの方々を含めた正確なデータの把握が、実際の商品化において大きな課題であるということを認識しております。

以上をもちまして、私からの報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○洲崎座長

ありがとうございました。それでは続きまして、五十嵐様より、「現物給付型保険及び保険金の直接支払いサービス」に関して、第3回のご議論を踏まえた補足説明をお願いします。

○五十嵐オブザーバー

少額短期保険協会の五十嵐です。既に第3回のワーキングの際に、私どもとしましての現物給付についての考え方はご説明したところでございます。本日も資料の7というところに当日の資料がございますので、重ねての説明は省略させていただきますが、改めてポイントだけもう一度申し上げますと、少額短期保険につきましては、名前のとおり少額で、かつ短期間の保険ということもありますので、今までの議論の中で出てきたインフレリスクであったり、あるいは長期にわたるサービスの質の確保といったところの課題は比較的クリアしやすい、そういった制度かなと考えております。

あわせてご案内のとおり、少額短期につきましては非常にいわゆるユニークで、ニッチな商品がたくさんございます。こういった商品の場合は、お客様自身が金銭の給付ということではなく、むしろサービスとか役務の提供をそもそも目的としてご加入されるというケースもたくさんあるかと思いますので、こういった少額短期の保険の特性から考えますと、現物給付というものが非常に親和性が高いのではないかなということをお話し申し上げました。

具体的な例としましては、先ほどの生保協会さんの例の中にも入っていますが、いわゆる葬儀保険といいますか、葬儀サービスを現金給付にかえて受け取るということが、例えば少額短期においても非常にわかりやすい例かなということで挙げさせていただきました。

本日は、それに加えまして、その他実際の少額短期保険の商品の中でどういう可能性があるのか、あるいは、どういったニーズがあるのかということをまとめたのがお手元の資料の3というところになります。

1枚めくっていただきますと、この中に実は次のページから後ろにかけて幾つかの具体例を書かせていただいております。ここには例えばペット保険とかレスキュー保険というように、必ずしも第1分野の商品ということではなく、現在、少額短期で扱っている、一般的に少額短期の中でも取り扱いのある商品を分野にかかわらず挙げさせていただきました。既に前回の議論の中で第2分野については現物給付が可能であると、それから、第3分野においても実損を填補するタイプのものであれば可能であるという解釈もございますので、そういった意味で言いますと、既に現行少額短期として販売している商品の中でも現物給付に移行できる可能性のあるものも当然あろうかと思います。そういった部分をお手元の資料の中では、それぞれの囲みの右の上のところに丸とか三角とかバツという印をつけさせていただいていまして、これがそれぞれの保険のたてつけ上どの分野に属するのか、それから、それが現物給付として考えるときに丸なのかバツなのか、あるいは微妙な三角なのかというのを私どもなりの解釈で、丸、バツ、三角をつけさせていただいております。

ちょっとそういう前提で資料にお目通しいただきたいと思いますが、まず1つ目のペット保険のケースです。2ページに戻りますね。ペット保険は、物保険ということで第2分野になりますので、これについて、ペットが病気やけがのときに動物病院の窓口で、いわゆる窓口精算をする。お客様は特にお金の支払いをしないということは現行でもおそらくできるのかなと考えております。

実際にまだ少額短期の保険会社でこういうサービスをしているところはないわけなのですが、窓口での精算によって利便性が向上するかなと考えております。これがケースの1です。

ケースの2がレスキュー保険、これは例えば山岳登山とかをしていたときのレスキューの費用を補填する保険ということで、実際にこれに近い商品もございます。この場合も、お客様は遭難されてレスキューの到着を待たれているわけで、お金の振り込みを待たれるわけではありませんので、いわゆるレスキューの活動費用がそのまま保険として適用できることが望ましいと考えています。こちらの保険も分類的には第2分野と考えられると思いますので、実際には特に法律の手当をしなくても丸印がつくものかなと考えております。

1枚めくっていただきまして、次は介護保険のケースです。介護保険なのですが、先ほどの生保協会様の論点とはまた別な切り口になるかもしれませんが、実際に介護状態になられた方が、例えば食事とかデイケアサービスを受けるときの費用、これを少額短期保険の商品によってカバーするというものがございますが、これを現物で給付するという考え方がとれないかということでございます。これもお客様は現金ではなく、サービスを得たいということからこの保険に入られるケースが多いかと思います。

この保険の場合は、介護保険というものを損保の実損填補と考えるのか、あるいは第3分野の保険と考えるのか、その考え方によって現物給付が可能なのか可能でないのかというところが議論が分かれる可能性があるのかなと思いまして、ここについては三角というのをつけさせていただいております。

それから、その右隣の葬儀保険ですが、こちらについては前回もお話を申し上げたとおりでございます。死亡による保険ですので、第1分野ということになりまして、現行では現物給付が認められていないということでございます。ただ、お客様の中では、前回のお話の繰り返しなりますが、身寄りのない独居老人の方がおられて、その方はお金を金銭として給付することではなく、葬儀が滞りなく施行され、大家さんとか、そういった近隣の方にご迷惑をかけないということがご本人のお望みであり、そういうものに少しでもニーズに近づけるために、こういったことができないかなというのが前回のお話でもございました。

それから最後に、4ページ目のケースの5というところですが、これが今のケースに近いわけなのですが、孤独死対応保険という、ちょっと言葉が適当かどうかわかりませんが、これについては、現行少額短期保険会社の中で家財保険を販売している会社さんが、家財保険の1つの保障項目として、万が一、独居老人の方がその居室内で死亡されたときに、主に大家さんがこうむる部屋の汚損の保障ですね。こういったものに対応するという保険がございます。これも金銭ではなく、物件の清掃とか、あるいはご遺体の葬儀施行といったサービスで提供することで、いわゆるワンストップのサービスができるのかなと考えています。ただ、この場合は、ご死亡に伴う保険ということで第1分野と考えると、また問題が出てくるかもしれませんし、また第2分野のあくまで損害保険であると考えればできるという解釈もあるのかと思いまして、ここでは三角とつけさせていただいています。

いずれにしましても、ここで言う現物給付という考え方は、先ほど来の議論の中で言う直接支払いという考え方でカバーできる部分が多々あろうかと考えております。これは前回のときにもお話し申し上げたところでございますが、お客様があらかじめ選択をして、サービスとして提供してほしいということの場合に、それを現物で提供するということであれば、私どもの中で、今日こういった例示をさせていただいたものの幾つかはカバーできるのではないかなと考えておりますので、本日の議論の中で現物給付と直接支払いというところの論点の整理が深まっていただければと考えております。

以上です。

○洲崎座長

ありがとうございました。それでは続きまして、村田様より、「共同行為」に関して第3回のご議論を踏まえた補足説明をお願いします。

○村田オブザーバー

日本損害保険協会、村田でございます。

それでは、損害保険における共同行為の必要性について説明させていただきます。1ページをごらんください。ここに掲げておりますのは、第1回のワーキング・グループの資料の抜粋でございます。保険会社が引き受けたくても引き受けが難しいリスクに対応する方法として、まず個々の保険会社が担保力を高め、創意工夫を凝らすこと、2番目に保険会社が共同することで引き受け能力を補完、拡充すること、そして、それでも不足する場合には、官のサポートを得ながら官民協働で引き受けスキームを整えることなどを申し上げております。第3回のワーキング・グループにおいては、共同行為制度の条件を緩和して、新規リスクについて期間限定の共同行為を可能にすることによって、保険契約者等の利便の向上に資する制度の導入を提案させていただきました。

2ページ目に移らせていただきます。言わずもがなかもしれませんが、損害保険は、企業活動や国民生活の安定のためにさまざまなリスクを引き受ける役割を負っております。これまでに経験したことのないリスク、あるいは想定すらしていなかったリスクが新たに重要なリスクとして認識された場合、そうした新規リスクに対する保険カバーをいち早く開発し、提供することがお客さまの期待にかなうものと思います。また、リスクが存在し続ける限りにおいては、持続的・安定的にカバーを提供することも求められると思います。

しかし、経験のない新規リスクであるがゆえに、リスクの大きさがわからない、リスクが現実化する頻度がわからない、したがって、どれぐらいのカバーをどういった保険料で提供すればよいのかわからないという問題が生じます。

その難しさ、深刻さの度合いによっては、保険会社が単独で引き受けたくても引き受けられないという状況が生じ得ます。こういった場合、保険会社が活用すべき統計が存在しないとか、過去の統計が役立たないという問題を早期に解決する手だてを講じることが有効な解決になるため、共同することが解決策の1つになり得ると考えて、提案をさせていただきました。

次の3ページに参ります。ここでは、この後ご説明申し上げる議論の枠組みといいますか、全体図を示しております。新規のリスクに関するお客さまのニーズにお応えするには、リスクの大きさが不透明である、あるいは大き過ぎるとか、リスクが現実のものとなる頻度や規模が予測しがたいといった要因を保険会社にとって受容可能なレベルに緩和することが必要になります。

一番左側の矢印は、再保険の活用ということを示しております。保有リスクの規模を一定程度に圧縮すれば足りるということであれば、これも1つの解決策となります。ただし、新規リスクにおいては、そもそも保有リスクがどれだけあって、再保険によってどれだけ圧縮できているのか、あるいは、再保険のコストが吸収できるのかといった不確実性が大きいのが通常かと思います。

そこで、このようなリスクに対する保険ニーズに接した場合には、マル1マル2マル3の矢印が示すように、必要となるデータの蓄積をサポートするような仕組みがあれば、適切なリスク管理のもとで各社が持続的・安定的に保険カバーを提供するステージにより早く到達することができると考えています。安定に至ったステージの後では、各社が競争し合うことになると思います。

4ページをご覧ください。これは前にお出しした資料の抜粋ですけれども、現行の制度は、ページの下半分の点線で囲った2箇所のとおりで、上の第1号の共同行為では、対象事業が限定列挙されております。一方、下の第2号については保険料率を除外しております。したがって、新しいリスクに対する保険商品については、その初期段階においてもデータを蓄積して分析する取り組みは、保険会社が個々に行うことが必要になります。

これに対して共同行為を認めた場合に、どのような効果が生じると考えているか、次の5ページで改めてご説明申し上げます。ぐるりと反時計回りに回る形にかいておりますけれども、ページの左半分は、共同行為がない場合の限界について記載しております。マル1マル2マル3は、3ページの矢印の番号と同じです。これらにおいて共同することによって、保険料水準の設定に際して必要となる統計データをより短い期間で蓄積することができるということを述べております。まず、マル1のリスクの測定・区分の問題については、共同することによって保険会社が参照するデータが共通の尺度で測定されたものとなり、その統計としての価値がより高くなります。お客さまにとっても保険カバーの供給がより持続的・安定的に得られる結果につながるものと思います。

2番目のマル2のところは、引き受け条件と書いておりますけれども、元受保険契約の引き受け条件を統一的な枠組みに沿ったものにすることで、自社が抱える集積リスクと再保険カバーの内容がより確実にマッチしたものとしやすくなります。リスクの分散・平準化といった保険会社のリスク管理を早い段階からより有効に行えると思います。

マル1マル2を前提とすると、マル3に掲げる問題点、すなわちリスクを過大評価したり、あるいは過小評価してしまったりという誤り、あるいはぶれを排除しやすくなり、保険料の水準もおのずと合理的なところに収れんしていくものと思っております。

このように、新規リスクに対する保険カバーの提供のごく初期の段階を、期限つきの共同行為の制度によってサポートしていただくことで、企業活動や国民生活に重大な支障を来し得るリスクがその後持続的に保険でカバーされることに早くつながると思います。私ども保険会社が経済や国民生活の安定、そして活力の向上をお手伝いするという役割を発揮しやすくなる、お客さまのお役に立てることになると思っております。

次の6ページに移ります。これも以前に掲載させていただいた資料ですので、手短に申し上げますが、中ほどの長丸で囲っているところが仕上がりのイメージです。2号の共同行為は全ての事業が対象ですけれども、元受料率に関する行為は対象とされていませんので、新規リスクについて今申し上げたような効果を発揮させるというところまではできません。

ページの最後にありますお客さまにとって期待される効果を、より大きく我が国経済や国民生活の安定・発展を損害保険によって支えるためには、先ほども申し上げておりますが、表の中の条件緩和のイメージに記しましたとおり、1号の共同行為の対象として新規リスクに関する事業を追加していただくというのが1つのソリューションだと考えております。

今まで知られていない、あるいは私どもも承知していないリスクで、保険会社単独で引き受けたくても引き受けられないリスクが生じたとしても、お客さまが必要とする保険カバーをよりマーケットに早く出していく、お客さま、保険会社双方にとって持続的・安定的な形で供給されるようにするための方策について、以上、私どもの考え方を改めて整理させていただきました。

7ページ、8ページには、以前にもお示ししました資料を添付させていただいておりますが、こちらについてはご説明を省略させていただきます。

以上でございます。ありがとうございました。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局説明やオブザーバーの皆様からのご説明を踏まえまして、議論に移りたいと思います。

まずは資料1、事務局からの説明資料でございますが、この資料1の1ページにございます「業務範囲規制のあり方」について、ご意見・ご質問をお願いできればと思います。錦野委員。

○錦野委員

ここにつきましては、前回の第3回のときも大分議論で進んだと思うのですけれども、私自身としましては、まさに結論、この「論点」に書かれてある、これまでよりも範囲を拡大し、現に提供しているサービスと関連性や類似性がある業務、一体的に提供される場合に利用者利便に資するものについては、一定、本来業務との親近性、リスクの同質性、本体へのリスクの発揮の程度を勘案し、どんどん認めていってもいいのではないかと思います。

それで、保険会社本体に認めるものと子会社に認めるものについては、一応区分けをして、本体に認めるものについては少し厳格にというイメージ感で見ていくと、ここに示されている考え方にまさに賛成でございます。

○洲崎座長

資料1の1ページにございますご意見だけを今読みますと、積極的に何でもかんでもとも読めるような感じもするのですが、これはおそらく8月24日の第3回のワーキングで、これはたしか本日の資料5としてお手元にございますかね。資料5の7ページですね。ここに要望のあった業務の具体例が挙げられておりますけれども、このあたりを念頭に置いて8月24日には議論していたと思います。この資料5の7ページに挙がっております業務は、今の保険業法施行規則、あるいは監督指針等でできるようにはなっていないのだけれども、しかし認めてあげたほうが保険会社の業務はやりやすいだろうなというものが例として挙げられており、それを受けて業務範囲規制のあり方について8月24日の議論があったということですので、このようなご意見があったからといって、あらゆる問題について何でもかんでも認めるというご趣旨のご意見ではなかったと私も理解しております。しかし、そういうものとして読めば、この8月24日にいただいたご意見は合理性があるご意見であったのかなと私も考えております。

ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。

それでは続きまして、本日の資料1の2ページにございます「不妊治療に関する保険サービス」、それから資料2の9ページでございますね。ここにございます「不妊治療に関する保険サービス」についてご意見・ご質問をお願いできればと思います。それでは、水口委員。

○水口委員

不妊治療に関する保険考察に際しては、モラルハザードを回避する直接的な手段を見つけることは容易ではないとは考えております。危険選択、プライシングに有用なデータの蓄積、それから発生率の算出などについて課題があると思っております。

例えば、なかなか妊娠しなくても、何年間も医療機関で受診しないままの人が相当数いるかもしれないと思っておりますし、原因が特定できない不妊に悩む人が、みずからの意思で治療を受けるタイミングを決定して、医療機関を訪問して、それから診察、診断を受けて、さまざまな選択肢から特定の治療方法を決定するケースも想定されると思います。

こうした実情を勘案した上で、いかに危険選択を行えるか、またプライシングに有用なデータが蓄積し得るかなどについて、十分な考察をすることが妥当なのではないかと思います。

例えば、あまり現時点において有用なデータ蓄積がないとすると、仮に不担保期間を設けるとしても保守的な対応となることも想定されると思います。短期間ではなくて、相当の期間を置くとかという話になると、例えばですね。

実務家からのご説明があったように、不妊治療の保障を医療保険などの一特約として位置づけることで、不妊治療だけに焦点を当てたモラルハザードは発生しづらくなるということとか、また支払い制限期間とかを設定する、また保険金支払い上限回数に加えて、支払い総額の上限を設けることなどで、保険会社にとっての支払い負担を一定額まで抑制することは可能ということも想定できるかと思います。

いずれにしても、不妊治療を保障することが保険の概念にフィットするかというと、一定の疑問が現状では残るような気もいたしますが、契約者の期待を裏切らないように配慮しつつも、リスク対比で適切なプライシングを可能とするための措置のあり方について十分検討した上で、不妊治療にかかわる保険サービスのあり方について考察していくことが妥当であると考えます。

以上です。

○洲崎座長

丹野委員。

○丹野委員

この不妊治療を保障する保険というのは、今不妊に悩んでいらっしゃるご夫婦は実はたくさんいらして、今、非常に妊娠年齢が上がっているものですから、30代後半から40代にかけて不妊治療を実際に受けていらっしゃる方は実はたくさんいらっしゃると思うんです。ただ、たくさんいらっしゃるのだけれど、これはいわゆる健康保険がききませんので、全くデータをどうやってとるかというのが非常に難しくて、そもそもこういう不妊治療を保障する保険が出ましたというと、わーっと世間の注目を浴びるとは思うんだけど、では、ほんとうに支払い要件にはまる人がどの程度いるのかというのも非常に難しくて、例えば今、別の話題になっている介護保険の話、公的な介護保険にのせている民間の保険会社の介護保険の話も、介護保険、介護費用保険という名目でたくさん出たときには、契約者側の認識と実際に支払える支払い要件のギャップがすごくて、非常にトラブルが多かったのですね。介護保険認定のかなり上のほうにならないと上乗せ・横出しは払わないのですけれど、そういうふうに全く思っていなかったので、介護保険認定だけ受ければみんなもらえると思っていて、非常に苦情があったというのがございます。ですから、そういう意味では、そこを踏まえてこれを単品でやらないで、ほかの医療関係の特約に薄めていくといいますか、そういうことをなさるというのはスキルとしてありますけど、例えばこれ、女性専用にするのか、男性も入れるのかとか、非常に難しい論点をたくさん抱えつつあるものだと思いますので、世の中の関心は非常に高いけれど、それに適切に応えていくシンプルな保険にしていただくことがほんとうに可能であれば、ぜひお願いをしたいと思いますけれど、そこら辺は慎重に判断をしていただきたいと思います。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

私も、以上お二人の委員と基本的には同じで、原則として民間ができることは民間がやるべきだとは思うんですけども、この不妊治療の場合は、リスクの保険可能性が相当に制約されることが予想されます。医療保険に組み込んだ場合に何とか吸収できるのかもわかりません。しかし吸収するということは別の言葉で言うと、内部移転するということで、難しいところがあります。不妊治療は、少子高齢化において喫緊な課題でもあるので、こういう場で発言すべきかどうかわかりませんけど、社会保障で基本をやっていただいて、それに対して民間が何かお手伝いできることがあればするような形をとるのが自然ではないかと、私は思っています。

以上です。

○洲崎座長

確かに民間保険でやろうとすると、給付反対給付均等原に従わなければいけませんから、リスクの高い人ほど保険料が高くなる、あるいは、引き受けることができないということになりますけれども、ニーズが顕在化した人ほどこの保険が必要だと考えるでしょうから、逆選択を防止するというのは非常に難しいと思うのですね。最後の9ページの資料の危険選択のところで、既に不妊治療を受けている方はもとより、過去に不妊治療を受けられた人については、多分、告知義務を課してイエスの答えをされた人については引き受けないという扱いをされるのかなとは想定しておりますけど、しかし、ここで告知義務違反があったのかどうかを判断するというのは非常に難しいと思いますね。実際には治療を受けていても治療を受けていないということで、告知義務違反の形をとりながら契約を締結され、何年かしてから不妊治療を受けて保険金を請求してこられるという場合に、告知義務違反であったということを保険会社で証明して支払いを拒むというのは、非常に難しいのかなということを想像すると、難しいのではないかなという気はいたします。

この保険を実際に販売するとすると、そのあたりの高いハードルを何とか越していただかないと難しいのかなという気もいたします。もちろん販売される保険会社でもそういう技術的な問題をクリアされない限りは、幾ら世間で話題として取り上げられたからといって、それで売るという判断はされないと思いますし、きちっとそのあたりは考えて商品の開発はされるだろうとは思うのですけれども、このワーキング・グループのご意見を伺っていると、何となくハードルが高いなという感じがやはりいたしますね。山下委員。

○山下委員

そういうことだと思うのですが、仮にこれを認めるとした場合に、どういう制度的なルールになってくるかというと、保険の種類として第3分野のところへこういう給付をするものが挙がってくると思うのですが、保険の設計について、どういう合理性を確保していくかというあたりになると、これを認可するかどうかのそこしか押さえるものがなくて、保険会社がみな慎重に合理的な設計をして抑制的にやっていただければ、それでいいかと思うのですけども、そうでない保険会社が認可を申請してきたときに、そこら辺をうまく不認可ということを言えるのか。制約を設けて認めるということがどうしても必要のように思えるのだけど、それをどういう枠組みでつくるかというのを考えると、なかなか難しそうな気もします。

例えば、監督指針でこういう内容の設計をするようなことは普通は書かないでしょうね。

○洲崎座長

監督指針で、不妊治療保険について、仮にこれを認可してほしいのであれば、こういう内容で持ってきてくださいということを書いているかということですね。従来の監督指針で具体的な保険の内容についてある程度枠をはめるということは特にはしておりますかね。

○小原保険課長

すみません。確認したわけではございませんが、こういう商品はこういうところに着眼をして、モラルリスクの排除に努めることとするという記述はおそらくあまりないのではないかと思います。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

今ちょっと、でも、不妊治療というのは大事だなと思って考えたのですけども、先ほどの村田さんから新しいリスクに対してプーリングという形で期待保険金コストを確定していくということが提案されたのですけども、もし民間がこのリスクをカバーできるとしたら、1社1社で不妊保険を出す前に、プーリングする経験をとおして、期待損失コストを確定していけば、民間でもできるかなと思います。これは、たまたま今日一緒のテーマだったものですから、結びつけて考えたのですけど、そのあたりについてはいかがでしょうか。

○洲崎座長

はい、石川様。

○石川オブザーバー

お答えになっているかわかりませんけれども、先ほど先生から、社会保障制度がまずあって、それを補完するべきものではないかというご発言がありました。この件については説明がなかったかもしれませんけれども、厚労省で特定不妊治療費助成制度というのがございまして、資料の9ページの米印のところに、人工授精、体外受精、顕微授精と3つ掲げてあるうちの後段の2つは、厚労省の助成制度の対象になっていると認識しております。

そういった意味では、社会保障制度の補完というところの意味合いは持つことができるのかなと一定程度考えています。ただいずれにしても、やっぱりデータとしてはあくまでもこの制度にのった人たち、これは所得制限もあるようでございますので、潜在的にほかに何人いるかということはやっぱり問題になると思いますので、依然としてプライシングのところは難しいかなとは考えておりますけども、一定程度、社会保障制度の補完という意味では、そういったことが考えられるのかなと考えております。

○洲崎座長

吉野会長。

○吉野会長

保険の専門ではないのですが、やっぱり新しい商品を開発していただくということは非常に重要なことだと思うんですけども、それをいろいろ規制で、逆の見方ですけども、やると、新商品開発ができないと同時に、またそれを自由にしてしまうといろいろ問題があると。それから、こういう商品の場合に実用新案とか特許ということが金融商品に関してあるとすれば、先に行った保険会社の方がわりあい最初の利益というのを得ることができて、開発のインセンティブになると思うんですけど、ですから、そういう意味では共同行為というのは逆で、みんなでそれをプールしていきましょうというわけですから、別にどこかが自分の新しい商品を開発して、それで利益を得るというのとはちょっと逆になると思うんですけども。

それからもう一つは、新商品が開発されたときに、それを区分経理とか、あるところでうまく本体とは違う形でそこだけでしばらくの間やって、それでそれがうまくいくようになれば、普通の商品と同じようにするということは可能なのでしょうか、制度上ですね。そうすると新しい商品が出てきたときに、それぞれ区分経理しながら保険料をいつもそれぞれ見て、そして、ある程度それがデータがそろってうまくできたところで既存の商品に入れるとか、何らかの形をしませんと、全て認可認可でいったときに、いろいろなアイデアが出てきたときに、一々それでやっていくと金融庁も大変でしょうし、業界の方も新しいイノベーションというのができないような気がするのですけど、ちょっと大きな問題だと。

○洲崎座長

保険の場合は、多分区分経理というのはちょっと難しいかなと思うのです。この保険を売って、保険会社として責任を負った以上は、この部門にあるお金でしか保険金は支払いませんということはできないと思うのです。その部門の財産がゼロになってしまったとしても、保険会社として責任を負った以上は、保険会社の財産全体で面倒を見なければいけないということになると思いますので、ある部門だけを使って試験的に保険を売ってみて、うまくいかなければさらに保険料を上げるとかということはできないのだろうと思いますね。

それと今のお話あるいは先ほどのプーリングの話も、保険会社全体として損が出るか出ないかという問題かと思うのですけども、やはりモラルハザードの問題があるということは、現在はまだ不妊の問題は出てきていないけども、将来、自分がそういうことになるかもしれないという自分のリスクを真面目に考えて保険料を支払う人と、実際にもう不妊のリスクは顕在化しているのに、それこそ告知義務に違反して保険に入る人の間の不公平が生じないような形の保険というものを、やはり設計していただかなくてはいけないと思うのです。幾ら保険会社全体としてマイナスにならない、損が出ないような保険であっても、その中で個別的に見ると損する保険契約者と損しない保険契約者が最初から出てくることがわかるような保険を設計することは、やはり問題があると思いますので、そうならないような保険の設計を何としても考えていく必要があると思いますし、認可するときにも難しいかもしれませんけれども、そのあたりはしっかりと見ていただく必要があるのだろうと思います。錦野委員。

○錦野委員

確かに、これ、非常にニーズは高いのですけれども、一方でモラルリスクですよね。多分2つの意味があると思うのですが、1つは逆選択といいまして、既にリスクがある方がこの保険に加入してきてしまう。もう一つは、必要な治療の程度というのがなかなか客観的にわかりづらいかもしれませんので、契約者の意向によってものすごく治療がかさんでしまう場合とそうではない場合があって、不必要な治療かどうかの判断がつきにくいという2つの意味があるのかなと思うのですが。前者については、ほんとうにこの生保協会さんのレジュメの9ページに書いていただいているように、年齢に一定の制限を設ける。では何歳までかなかなか難しい問題ですが、そこは合理的な、例えば20歳までなのか、25歳までなのか、あるいは18歳までなのか、今わかりませんけれども、そういう合理的な制限を設けて何とかクリアできる問題ではないかな、と思います。

おそらくこれは医学的な問題とも絡むのでしょうけど、告知だけではなかなか対応しづらいところがあるのかなと思います。あとは待機期間ですね。これをうまく利用することによって何とかクリアできないか。あるいは、例えば団体保険みたいな形で全員加入にさせてしまうと、個々の被保険者の逆選択というのをなくすという意味で、団体で引き受けるみたいなものも1つの考え方かもしれないな、と思いました。

それからもう一つは、必要な治療か不必要な治療かというところの見極めなのですけれども、これが医学的に見極められるのであれば、それにこしたことはないのですけども、それがどうしてもできないと、あるいはわかりづらいというのであれば、これも生保協会さんの中に書いていただいていることとつながるのかもしれませんが、キャップをつけて上限を設けるとか、そういうやり方で何とかクリアできる問題ではないか、と思っております。

以上でございます。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

どうもありがとうございます。先ほど吉野先生のお話についていうと、新商品だけをやる子会社をつくって、うまくいかなければ潰すことにすれば何とかなる話であろうと、丹野委員に怒られそうな気がしますけれども、それはそれで可能なのですが、そのような対応が可能であるからといって、不妊治療をカバーすることに全面的に賛成かというと、やはりなかなか難しい問題があるように感じております。今、錦野先生からご指摘がありましたように、1つのやり方としては、例えば契約締結から5年間は使えませんということにすれば、今すぐ不妊治療を受けたいと思っている人の加入という逆選択は回避することができると思います。しかし、この場合、5年後に不妊治療を受けるかもしれないことに配慮して加入しようとする方がどれだけいるだろうかという問題があるように思われます。みんな、将来がんにかかって死ぬかもしれないということは何となく考えるわけですが、自分のところが不妊治療を受ける必要があるかもしれないということは、最初から考える方はおそらくあまり多くはないだろうという気がいたしますので、そうすると、どれだけ使えるのかわからないような仕組みになってしまうのではないかなということを若干懸念はしております。

また、錦野先生がもう一つおっしゃられたことで、選択をさせるのではなく、全員加入にするのがよいのではないかという点ですが、それはおっしゃるとおりなのですが、それはまさしく公的医療保険が果たすべき役割であるようにも思われます。多くの人は、合理的に考えて、なかなか保険に入ろうとは思わないリスクがあり、ただそれでも一定数の人にとってはどうしても治療が必要になってきてしまうというのであれば、今の財政状況からは難しいことは承知の上で申し上げますと、不妊治療が少子高齢化という社会問題への対処でもあるということを踏まえると、やはり第一には、米山先生が先ほどおっしゃられたように公的保険で賄うべき部分であるように思います。先ほど明治安田の石川さんからご発言がありましたけれども、厚労省が助成しているというのは、まさにその一部であって、ただ当然それは予算の限界がありますから、限定はついているのでしょうけども、では、国の予算で賄い切れない部分を民間でできるのかというと、それは結局同じことでありまして、やはり基本的には国でやるべきことのような気がしております。これは実は不妊治療の問題だけではなくて、非常に難しい難病ですとかで公的医療保険には入らないような治療についても、これも民間でできるかというと、できないという同じような話があるわけで、ここで言っても意味がないのかもしれませんが、そういった民間の医療保険と公的な健康保険の役割分担というものを考える中で調整されるべき問題の1つなのかなということを感じております。あくまで感想でございます。

○洲崎座長

阿部委員。

○阿部委員

かなり異なる観点から申し上げます。国全体として少子化対策に取り組まなければいけないというときに、もちろん国による社会保障制度、医療給付で対応するのも大事なことかもしれないのですが、民間でできることがあるという人がいるのだったら、認めてもいいのではないでしょうか。非常に難しい仕組みになるかもしれないけども、事業者のほうでできると思われるのであれば、やってみればいいのではないかと思います。

○洲崎座長

よろしゅうございますか。

それでは、次の問題に移りたいと思います。資料1の3ページ、「再保険、共同行為」の問題、これについては日本損害保険協会から資料4でもご説明いただきましたけれども、「再保険、共同行為」についてご意見・ご質問をお願いできればと思います。水口委員。

○水口委員

ありがとうございます。既に事務局の資料で私の意見に言及していただいているので、繰り返しになってしまうところもあるのですけれども、データ蓄積のないような新規リスクというものに対して、それなりに我が国にとって必要不可欠なものであることなどを要件と考えることではどうかとは思います。先回、当トピックについて議論したときにも、一定程度、実務家の方からお話をいただいたと思うのですが、どのようなことがスキームの対象となり得るのかということについて、さらに具体的にイメージを与えてくださるようなお話があるかどうか、ちょっとお伺いしたいところであります。よろしくお願いいたします。

○洲崎座長

村田様。

○村田オブザーバー

前回もいま一つ歯切れが悪くて失礼いたしましたが、ひと月、ふた月たったいまも、新しいアイデアをお示しできるというわけでは、正直言ってございません。前回のご議論では、例えばパンデミックだとか、サイバーだとか、ITとかということまでは申し上げました。私の文系頭で想像したものを、理系の学者の先生から、それはもうあると言われたことがありまして、想像力の範囲でそれ以上のことを申し上げるのは必ずしも適切でないと思っています。

ただ、例えばパンデミックを例にとりますと、我々は損害保険ですので、カバーできる範囲は第3分野に限られません。営業休止など、いろいろな波及的な経済損害が起きることも想定されますが、経験がない新規リスクについては、どこまでの損害が実際に起きるかはわかりません。それから巨大地震のように、あるいは大規模テロのように、どうしようもないほど大きなリスクだとみんながわかっているリスクについては、たとえ共同してもカバーを提供できないと思い至るのですけれども、そこまでの規模のリスクは想定されないもの、あるいは一定の適切なコントロールは期待できるものもあり得ます。病気の場合、人間は一生懸命自分を守りますし、人は逃げ出すこともできます。財産は逃げずに残るとすると、全部なくなってしまうかもしれませんし、営業はとまってしまうかもしれませんが、コントロールはできるでしょう。このように、一定のコントロールは期待できるとしても、派生して起きる損害まではよくわからない、よくはわからないけれども、大地震のように何兆円にも及ぶことはないだろうという中間的なものというのがあるのだろうと思います。今はパンデミックをトリガーとした波及的な経済損害を例にとってお話をしましたけれども、パンデミックが果たして適切な具体例になるかどうかというのは、正直言ってわかりません。わからないからこそ新規リスクという切り口で議論をさせていただいているとも言えるのですけれども、具体的なリスクでなく、イメージで申し上げることをお許しいただけるのであれば、あることをトリガーにして、いろいろな波及的な経済損害が起きていくけれども、どこまで広がるか、損害の大きさがわからない。しかし、ものすごく巨大ではない範囲におさまるだろうから、共同すれば何とかおさまりがつくと思われる。しかし、損害の程度も頻度も想定できないために保険料の水準が決められない、一人で飛びおりるわけにもいかず、なかなか手がつけられないということが、論理的には考えられます。共同行為を行って保険会社どうし話し合えばすべて解決するのかとか、常に共同行為を認めていいのかということになれば、それは別の問題を来しますし、ことはそれほど単純ではないのもよく承知しておりますけども、中途半端な大きさで、しかもよくわからないリスクで、値段も決められないけど、でも社会的必要性はあるというときに、共同して話し合って、いち早く態勢を整えて保険カバーを提供して、軌道に乗せたら普通の競争のステージに移るというイメージを持ってお話を申し上げました。本来具体例がとても大事なのであって、抽象的で申しわけありませんけれども、このようなイメージを持っていただければと思います。

○水口委員

ありがとうございました。

○洲崎座長

水口委員、よろしいですか。

○水口委員

概念的には資料に書いていただいたとおりだと思うのですけれども、ありがとうございます。

○洲崎座長

仮にパンデミックリスクを考えた場合のユーザーですね。保険契約者になるような人というのは、具体的には、一般企業全てなのか、あるいは、わざわざそのために保険料を払おうとするには、やはりそのリスクが我が社にとっては大きいと考えるような、そういう企業になるのかなという気もするのですけれども、そのあたりのところ、何かございますでしょうか。

○村田オブザーバー

パンデミックが適切な例かどうか自体もひとつの論点だと思うのですけれども、ご承知のとおり、損害保険は、トリガーは病気であったり、人の生死であったりしても、被保険利益としてはいろいろなものを想定することができます。例えば企業が営業できない、そもそも会社に来られないということになった場合に、当該企業が営業休止になるだけではとどまらずに、波及的にいろいろな損害が発生することもあり得ます。そうした損害について、責任がどこまで及んでいるのか、という問題もおそらく生じるでしょう。つまり命がけで会社へ来てまで事業を続けるのは危ないから、サービスの提供をとめたというような場合、その結果として第三者が損害を負うなどいろいろな影響が生じますでしょうから、そうするとそこから債務不履行や不法行為などの責任をどうとるのかという問題も起きてくるでしょう。ただ、その答えは我々自身もわかりません。したがって、企業をユーザーとする責任保険や費用保険を例にとって考えた場合でも、どう設計してよいか、なかなかわからないということが言えると思います。

損害保険ですから、費用も含めて被保険利益としてはいろいろなものを対象に設計できますので、ニーズがあれば設計してみようという話が通常起きますけども、リスクをどう整理していいのかがわからないと保険設計にも至らないことにもなり得ます。

○洲崎座長

つまり、従来ある費用保険とか利益保険の担保項目として新たにパンデミックリスクとかというものを例えば入れると。そういうリスクが我が社にとって非常に大きいと思う人は、特約でそういうリスクも担保してもらう。ただ、そういう特約の保険をつくろうとすると、1社だけではできないから共同行為が必要だと、そういうイメージですか。つまり新たなパンデミックリスク保険という商品を考えるというよりは、従来ある保険でも新たなリスクに対応するためには、この共同行為として認められる必要があるという、そう考えればよろしいですかね。

○村田オブザーバー

既知の疾病を前提にした費用保険を設計しているものが既にあるかもしれませんが、その点については、申し訳ありませんが正しく承知しておりません。ここでは、むしろ広範に、未知の疾病とか未知の問題が発生してしまったときに、それにどう対処するかということが問題の中心です。パンデミックに限らず一般論としても、費用の損害を発生せしめる、未知で不定型な事象があったとしても、それがコントロール可能であるか、既知の分野と同じものであれば、費用保険の設計はできるだろうと思います。反対に、今まで経験したこともない病原体ですとか、新しいIT技術のもと経験したこともない事象が起きているという場合ですと、新たな保険商品としても費用保険としても設計は難しく、なかなか一人ではできませんという問題になります。未知の事象については保険の設計が難しいといっても、先に述べましたように、既知のものとか既存のものと似通ったものであれば、対処する余地はあるのだろうと思いますので、どんな場合でも共同しなければ対応できない、ということでもありません。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

私、先ほどプールのことに関連させて申し上げましたので、そのことについて補完的な発言をさせていただきます。

先ほどは不妊治療のところでプーリング、すなわち保険会社による共同行為というのは許容されるべきではないかと申し上げました。もともとこういう新規リスクは、損失の分布がわからなかったり、分散がわからなかったり、基本的には分布がわからない場合、あとモラルハザードとか逆選択の経験がない場合、こういった場合にある程度何かやってみないといけません。個社の経験だけでは分布が十分にわかりませんから、保険料が計算できません。また、モラルハザード、逆選択があるので、相当の付加保険料をつけないと売れない、そういう状態の場合に、まさに不妊治療がそういう状態だと思うんですけども、各社が共同して運営することによって、ある程度大数の法則がきき、ある程度モラルハザード、逆選択の経験値を蓄えるとことが大事です。それによって完全かどうかはわかりませんけども、不妊治療に関する統計データを業界が共有したところで、初めてちゃんとした競争が始まるものと思われます。つまりいろいろなパラメーターがわかって、その時点でわかればプールは必要ないですから、その蓄積したデータに基づいて各社が個別に健全な競争をすればいいのではないかと、そういうイメージで申し上げました。

その意味では、不妊治療というのはひょっとしたらこの新規リスクプーリングに合っているのかなと思いまして、私から言うのは何かちょっと変かもわかりませんけども、そういった発言を申し上げました。

以上です。

○洲崎座長

阿部委員。

○阿部委員

損害保険協会さんの資料を前回と今回拝見して、格段にわかりやすくなったというのは変なのですけど、何のために期限つきの共同行為を認めて欲しいのかということについて、要は必要なデータを蓄積するためという目的は明確になったと思います。新規リスクというのは何が起こるかわからないから新規リスクなので、それはいろいろと考えたとしても定義できないと思いますが、それを全体で共同して引き受けて、ともかくわかるまでデータの蓄積をしたいというニーズがあり、その間の期間限定だということであれば非常に筋が通ると思います。そして、必要なデータが蓄積できたら、その後は個々の事業者間の競争に移るということであれば、何の問題もないと思いますので、ぜひこれは進めていただきたいと思います。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

ありがとうございます。今の阿部委員の発言にも関連してなのですが、この問題は結局データが十分にとれていないというところに一番大きなポイントがあるのであって、それをとりやすくするためにどうするかというお話かと思うんですが、そうすると新規リスクという名前のつけ方が果たしていいのだろうという気が若干しておりまして、リスクの中身自体は知っているのだけれども、ただデータがとれていないのだという領域が果たしてないのだろうかというと、それなりにあるのではないか。先ほどの不妊治療も、概括的にはそういう分野があるということはわかっているわけですが、ただ、そのデータが十分にとれていないという場合ではないかと思います。ほかにも損害保険分野でもいろいろあるのだろうと思います。今回新規リスクという形で損保協会さんがご提案されたのは、EUがそうしているからということかと思いますが、資料の4の一番最後の8ページ目のEUの定義を見ると、新規性をかなり厳しく書いてあるような気もして、データをとりやすくするということを念頭に置くのであれば、ここまで限定する必要があるのかなという気もしまして、あえて新規リスクに限定するというよりは、情報、データ蓄積に向けた共同行為をどれだけやりやすくするかという観点からアプローチされたほうが、本来の目的には近づくのではないかなと思います。業界がそれでいいというのであれば、あえて広げろという趣旨ではないのですけれども、そこはもう少し柔軟に考えられてもいいのではないかなという気が若干いたしました。

ただ、それとの関連で、結局データを蓄積してどうするかというと、最終的には保険料の水準を設定したいというところについて、5ページにどういう効果があるかということは書かれているわけなのですけれども、1つわかりやすいなと思いましたのは、みんなで競争し合って過小な保険料になると、結局その分野が発展していかずに途中でついえてしまうかもしれないので、それはある程度は余裕を持ってやりましょうということで、これは共同行為になじみやすいような気もするのですが、保険料の水準を高目に設定し過ぎると、みんなが買ってくれないかもしれないという方については、それが共同行為の必要性とどうつながるのだろうかということが問題となるかと思います。独禁法が問題としているのは、共同行為をすると基本的に値段は上がるということだと思いますので、共同行為をすると大き目な安全率を設定しなくなるのだということを主張されているのか、それとも、先ほどちょっとおっしゃっておられたように、それはどうせわからないのだから、決めるのであればみんなでそろえて決めましょう、そのほうがいろいろ進めやすいですねというレベルのお話なのか、どちらでしょうか。この問題は、最終的に公正取引委員会にいって調整するというお話になるのだとすると、ここの理論武装が本来一番大事なのではないかという気がいたしますので、その辺もう少しお考えをお聞かせいただければと思います。

○洲崎座長

次回以降の宿題ということでも結構でございますけれども、なかなか難しい質問かと思いますけど。

○村田オブザーバー

申し訳ありません。次回までには用意しておきます。

○洲崎座長

よろしゅうございますか。

もう一つ大きなテーマが残っております。それでは最後に、資料1でいいますと、4ページ以下ですね。それから資料2と資料3でもご説明いただきました「現物給付型保険及び保険金の直接支払いサービス」についてご意見・ご質問をお願いしたいと思うのですが、事務局からの資料1では、現物給付型保険と保険金の直接支払いサービスというように2つに明確に分けて、主な相違点としてこういうものがあるということの整理もいただいたのですけれども、資料2と3で言っている現物給付型保険というのは、先ほどのご説明をいただいた限りでは、どうやら事務局で整理していただいた直接支払いサービスも含む意味で現物給付型保険というのをこの資料で書かれているのかなと理解しましたが、そういうことでよろしゅうございますかね。そういう前提でご議論いただければと思います。水口委員。

○水口委員

介護ニーズが高まる中で、一般論としましては、保険会社が介護ニーズに応えることが消費者利便に資することでありましょうし、さまざまな形態によるニーズへの応え方が存在し得るのではないかと考えております。特に現物給付型保険を考える際には、当該商品の特性が保険会社の健全性の観点から保険会社がさらされ得るリスクの特性と、そのリスクの抑制手段のあり方などについて十分考察がされたものであるのに加えて、消費者利便にかなっていて、消費者に誤解を与えない、わかりやすい商品であることが期待されるところだとは思っております。

今日、事務局からご説明いただきました直接支払いについてですが、実務家からご説明あったように、現物給付型保険の商品特性については、保険期間の短期化とか金銭給付との選択制とか、保険金額の範囲内に限定した現物給付を付与することを約定することとか、現物給付の対象を汎用的なものにすることなどは、保険会社の健全性の観点から当該商品に内在するさまざまなリスクの抑制に向けて相応に有効な手段であると考えております。

一方で、消費者の視点からすると、実務家からご提示いただいた商品を現物給付型商品と銘打つことについては、消費者が物品とかサービス給付を選択した場合に、その価格変動リスクをみずから負う商品特性であるということを正しく理解できるような商品説明を行うことが必ずしも容易でなくなってしまうことも懸念されるのではないかと思います。

その点、事務局でお示しいただいた現物給付型保険と保険金直接支払いサービスの定義を定着させて、その定義に基づいて商品説明を行うほうが、価格変動にかかわらず、保険会社が保険給付としてあらかじめ定めた特定の物品・サービスを提供する義務を負っていると誤解せずに、消費者が商品特性を正しく理解しやすくなる素地ともなり得るのかなと思います。

それから、先ほど事務局から現行法についてもご説明いただきましたが、現時点において実務課が提供可能と考えていらっしゃる商品特性に対応する監督の視点からも、このような現物給付型保険、保険金の直接支払いサービスという定義を持つことで、留意すべき要因が類型化、明確化されて有用であるという観点もあるかなと思います。

また、契約者側に物品・サービスの提供と金銭給付の選択権がある場合でも、保険契約者が選択すれば、価格変動リスクにかかわらず、保険会社があらかじめ定めた物品・サービスを提供する義務を負う場合はそこに焦点を当てて、現物給付型の保険と分類されることは妥当なのではないかと思います。いろいろな観点があると思い、このような見方もあるのではないかと思ってお話しさせていただきました。

以上です。

○洲崎座長

神戸委員。

○神戸委員

今回、梅﨑様から具体的に商品の概要例を出していただきましたので、非常に議論がしやすくなったと思うのですが、実際にお客様の対応をしている中で私どもが感じておりますのは、やはり介護関係のニーズがある方は、将来への不安感をお持ちで、現物給付型の保険が出てくるというのは、大変メリットが大きいと思っています。

今回の実例では、おそらく4番目が一番ニーズが大きくて、あと2番目、3番目、1番目という順番なのではないかと思います。既に現金給付型の保険がいずれのニーズに関しても存在していますので、現物給付型の商品が出てくれば、生活者はサービスを買うという感覚で商品を選ぶことになるのではないかと思います。そのサービスというのも、結局、安心感につながるものということが一番求められると考えられますので、そのサービスを提供するところは単なる提携先ではないほうがよろしかろうと。子会社の業務範囲にもかかわってくる問題といえるでしょうが、単なる提携先以上に関係が密であるところがサービスを提供することにならないと、購入者の安心感にはつながりにくいと思います。

既に存在する現金給付型の保険と比較して、これはあくまで私見ですが、若干保険料は高目でも、おそらく生活者は現物支給型の保険を選択する可能性が高いと思います。インフレリスク等、いろいろ心配される部分もあると思うのですが、逆に保険会社側さんはサービスを提供する事業自体の継続性も勘案して、保険料の水準を設定されるということも、できるのではないでしょうか。サービス自体を買うという観点から、顧客側、生活者側はおそらくこの商品を見るだろうということを前提に、商品の認可は考えたほうがいいと思います。

サービスを買うということになると、保険の存在自体をご本人以外の方が知っていないとまずいような場面というのが出てくると思います。たとえば亡くなられたときに、通常、保険会社に連絡するよりも先に葬儀が行われてしまう場合も多いと考えられますので、選択的に受け取れるということを誰が認識しているのかという問題とか、前回も認知状態という話を出しましたが、要介護状態になった方が選択可能な状況にあるのかないのかなど、もしも保険会社さん側がこの保険を販売するのであれば、保険自体の存在を本人が身内の人に伝えておくという必要性が高いと思われるのですが、そのあたりの工夫をしておかないとトラブルのもとになりかねないと思います。

ニーズは非常に大きいと思われますので、その辺のところも含めて考えられた商品が出てくると、生活者にとって大変利便性が高まるのではないかという意見です。

以上です。

○洲崎座長

今回、生命保険協会と少額短期保険協会からそれぞれ具体例を挙げて説明していただいたのですが、私の頭で理解できたところによると、依然としていずれのサービスも別に現物給付保険という形で設計しなければ販売できないようなものではなくて、直接支払いサービスでみんな対応できそうに思えるのですが、直接支払いサービスではなくて、現物給付保険でなければ対応できないというものがあるのか、あるいは、現物給付保険のほうが望ましいというものがあるのかどうかについて、いかがでしょうかね。梅﨑様のご説明のときにも、現物給付型保険よりも、むしろ現金支払いサービスに含まれるのではないかという留保つきでご説明をいただいたとは思うんですけれども。

○梅﨑オブザーバー

すみません、さっき私から説明させていただきましたのは、金額の上限ですね。そこを設定するということが現物給付の定義にはそぐわないということであれば、直接支払いのスキームという話になるのかなと思っています。

○洲崎座長

結局、提供すべきサービスが将来10年後、20年後にそのサービスのコストがどうなるかにかかわらず、保険会社が責任を持ってそのサービスを提供するのではなくて、要するに10年後、20年後にこれだけの金額までしか、この金額以内のサービスしか提供できないですよということだとすると、それは現在の金銭で支払う定額保険と変わりはないような気はいたしますね。後藤委員。

○後藤委員

ありがとうございます。幾つかお伺いをしたいことがあるのですけれども、まず今ご指摘の現物給付型と構成しつつ、その金額に上限を付すると、それはそれでリスクを抑えられるという面はあるかと思うんですけれども、そのときに例えば老人ホームに入るのが5,000万円かと思っていたら、1億円かかるようになってしまいましたというときに、そのときには5,000万円を払っておしまいということなのか、それとも1億円の場所は用意してあげるのだけれども、差額は払ってねということなのでしょうか。いずれであっても保険会社のインフレリスクはなくなるのですが、先ほど神戸委員のお話にありましたように、契約者の側には将来どこかに入れるようにしたいというニーズがあるのだとすると、前者ではこれには対応できなくて、差額が出るのだったら、自分で払うから、どこか用意してくれという話はあるのかもしれません。これを前提とすると、保険会社が負う義務の形としては、前者が唯一の形ではないような気もしましたので、ちょっとお伺いしたいというところでございます。

同じような話は、直接支払い型の場合にもあり得るような気がしまして、直接支払い型の場合、おそらく現実的には保険会社があらかじめ提携したリストの中から、ここだったら簡単にできますよということで案内することになるのかなという気はするのですけれども、そうすると、その場合には、まず、そのことがいつまでちゃんと確保されるのだろうかという問題があるかと思います。生命保険協会さんの資料の8ページには、そのようなサービス提供に関する事項は保険約款には規定されないということが書かれているのですけれども、ただ、もし老人ホームであれ、介護サービスであれ、そういうものをリストの中から選べますよということを売りにした商品をつくるのであれば、そのリストを提供して、この中から選んでくださいということが簡単に撤回されたら、おそらく困るだろうと思いまして、保険約款に書くべきことなのかどうかはさておき、選べるようにしますというのはおそらく契約内容にはなっていないといけないのかなと思います。それは、例えばポイントサービスとかについて、このサービスは内容が急に変わったりやめたりすることがありますとしておけばいいというのは、おそらくちょっと違った次元の問題であるのかなという気がいたしまして、そこはサービス提供者をあっせんしますということが、契約内容になっているという理解でいたほうがいいのではないかなという気がするので、この現物給付型と直接支払いスキームの整理がこれでいいのだろうかというのは若干疑問があるところではございました。

また、同じような話なのですけれども、そうすると、契約者からすると、保険会社がつくってくれたリストから選ぶのだから、そんなに変な業者はまざっていないだろうという信頼はおそらく発生するのだろう、それはどういう保険会社かにもよりますけれども、しっかりしたところに頼んでいるのだから、変な業者を選んでいないはずだという信頼はおそらく一般にはあって、その場合、保険会社が給付内容の保障をしているわけではなかったとしても、例えば旅行会社が海外のツアーを頼むときに、自分で運送人として運送債務も負うということにはならないまでも、ちゃんとした運送人を手配する義務は負っているという議論はあるわけでして、それを同じように、どういう業者を手配するかというところに一定の注意義務は信義則上おそらくあり得るのだろうなという気がいたします。そうすると、この直接支払いスキームと現物給付型保険の差はだんだん接近していってしまうわけですけれども、申し上げたかったのは、直接支払いスキームというものをとれば、保険会社の義務は急に思いっ切り小さくなって、何でも自由に変えられるというわけではないのではないかなと、これを売りにした商品をつくるのであれば、そこはやはりある程度の義務は、給付そのものではないにしても、一定の義務は果たさざるを得ないという理解で商品を設計されるとよろしいのではないかなと思ったので、申し上げさせていただきました。ありがとうございます。

○梅﨑オブザーバー

すみません。説明が不十分だった点があったのかもしれませんが、直接支払いスキームという形で物事を進めようとすると、さっきお話があったとおり、保険会社側は将来的にどこか会社側の都合でそのサービスはやめるとか、そういう話につながりかねないなということもございましたので、我々の整理としては、そのあたりも含めて現物給付として選択制だったり、上限を設けたりということで、保険会社がサービスの履行についてある程度の責任を負うということで、そういう形があるのかなと思って整理いたしました。今般の整理に従えば、直接支払いスキームでもそのサービスの履行についてある程度の責任を負うという形でやるのだという整理であれば、直接支払いスキームでサービスを提供することになるのかなと思っております。

○洲崎座長

石川様。

○石川オブザーバー

若干補足ですけれども、もともと第1回目、プレゼンテーションさせていただいたときを振り返りますと、現物給付保険は明確に認められていませんというのは周知の事実だったわけですけれども、保険金の直接支払いというのが認められるのかどうかというのがよくわからなかったというのが私どもの問題意識の発端です。まずもって、直接支払いというのが現行法制上認められるのかどうかというのを明らかにしていただくこと自体でも非常に価値があるのかなと思っているというのが1つです。

それから、先ほどの老人ホームの入居権のお話ですけれども、リスクへの対応はいろいろな方法があると思っていますが、私ども全国展開している保険会社が老人ホームを全て今ご用意できるかというと、なかなかそれは難しいのかなと正直思っております。

そこは先ほどの私どものプレゼンの中の3ページですけれども、対応案の一番下のところに現物給付の対象を汎用的なものに設定するというのがございまして、やはり、ある程度汎用的なものでないと保険の給付として設定できないというのは、私ども、十分認識しておりますので、リスクへの対応という意味では汎用的なもの、あるいは10年、20年後ということではなくて短期的なもの、そういったいろいろなリスクへの対応というのを組み合わせながら商品化できるものをやっていくということなのだろうなと思っています。

○洲崎座長

広い意味での保険サービスの一環なのだけども、狭い意味での保険契約には入っていないものの代表的なものとして、自動車保険におけるロードサービスというのがございまして、ロードサービスというのは、むしろ損害保険分野の現物給付保険として構成することもできると思うんですけれども、現在は形式上は保険約款の中ではロードサービスのことは書かれていなくて附帯サービスとされています。でも、保険に加入する人にとっては、保険料が同じだったらロードサービスがいいほうを選ぶということで、実は保険の選択においてはかなり大きな要素になっていると思うのですけれども、ただ、これが認可のときにどう扱われているかというと、少なくとも約款にはこれは入っていないし、保険料率の審査においてもこれは考えておられないのかなという気はするのですね。

現物給付型か直接支払いか、つまり支払うのは金銭だけれども、その附帯サービスとしていろいろ紹介しますよというのがついていた場合にも、狭い意味での保険契約には入らないかもしれないけども、保険会社が提供するサービス、つまり広い意味での保険会社との契約内容には入ってくるということになるのではないかなと思います。ロードサービスの場合と違って難しいのは、自動車保険は短期ですから、やめたいと思えば例えば1年後まではやりますけども、その先はやめるということが可能なのかもしれませんが、生命保険とか介護保険とか長期のものだと、一旦サービスの内容として附帯サービスをつけてしまうと簡単にやめられない、これは後藤委員が先ほどご指摘になったとおりだと思うんですね。

ですから直接支払いスキームでやれば、それで物事が全部うまくいくというか、簡単になるということではなくて、広い意味での保険会社が提供するサービス、つまり契約内容に入りますと、簡単にやめるということにはいかなくなるような気がいたしますので、そういう問題はあると思いますね。山下委員。

○山下委員

後藤委員がさっき指摘されたこととか、今、州崎座長がご指摘になったような問題で、資料1の9ページでも、直接支払いについての説明で保険給付の一部として直接支払い方式として位置づけるべきものが整理されているのですけれども、保険給付の一部にしてしまうと、やっぱりまずいのでしょうね。だけれども、州崎座長のご理解だと、狭い意味での保険給付とは別に、やはりサービスを提供することを約束するものというご理解なのでしょうか。

○洲崎座長

保険を。

○山下委員

私は、もう一つのあり方として、リストアップされたものから、あっせんだけはするけれども、ほんとうに提供することまで保険会社が約束しているわけではないという、そういうものもあり得るのかなと思ったのですが。

○洲崎座長

あっせんすることの約束ですね、確かに。ロードサービスの場合とはそれはやはり違うと思いますね。

○山下委員

そこは違うのですかね。

○洲崎座長

ただ、あっせんするだけですよと言って、ほんとうに魅力的なサービスになるのかというと、そこは問題で、さらに踏み込んだ約束をされる可能性があるので、そういう約束をしてしまうとすぐにはやめられませんよということを申し上げたかったということです。ですから、山下委員のご質問にお答えするとすれば、あっせんの約束ということを私は考えていたということでございます。

○山下委員

例えば最初は業者をリストアップしたけれども、これは業者との関係ですから、いつそちらのほうが倒産するかもしれないし、あっせんをする提携関係が切れるかもしれない。それはそれでしようがないということで、実際たとえば要介護状態になったようなときに利用可能なものからあっせんされますという程度のものだという程度のことになるのでしょうか。

○洲崎座長

そうですね。

○山下委員

そういうことにすれば、実際上の問題はあまりないと思いますね。ただ、それが実際の保険契約として売れるのかということになると、それをほんとうに認めるか、そのあたりをどうするかという話だと思います。

○洲崎座長

そうですね、はい。加藤委員。

○加藤委員

今ご議論になった保険給付の一部としてというところですが、私としては、やはり保険給付の一部として認めるという事務局の整理のほうがよろしいのではないのかと思っております。確かに、老人ホームの20年先の入居権という話になると、それをどうやって事業として20年先まで担保するのだ、難しいというイメージが先行してしまいます。ですが、例えば在宅介護サービスですとか、先ほど話に出た自動車保険におけるロードサービスとその後の修理工場選択をセットにすることにより、より効率的、お客様にも満足して頂きながら、修理代も一定安くおさめるという形での工夫など、いろいろなイノベーションの余地が出てくると思います。老人ホームの入居権ということにこだわってしまうと、それは確かに難しいという議論はよくわかるのですが、もう少し短期であれば、現物給付も一部として認めることによってイノベーション、商品開発していく余地というのは、分野によっては広がっていくのだろうと思っています。そういった意味で、附帯的なサービスの斡旋という範囲で、提示されたアイデアは十分カバーできるという議論で止めることなく、直接支払いの一部、保険給付の一部としての現物給付も認めるという考え方は大事である思います。

○洲崎座長

錦野委員。

○錦野委員

今の加藤先生のお話とちょっと重なるかもしれないのですけれども、生保協会さんの出していただいているレジュメの1ページに、現物給付のメリットというのがあると思います。それで、キャッシュレス、手続の簡素化、この2つは直接支払いでもクリアできる問題かなと私は思っております。それ以上のニーズがあるかどうかというところの判断で、私も必ずしも現物給付を是が非でもという意見ではないのですけれども、現物給付を認めるメリットがあるとすれば、3番のところに書かれているのですが、現物によるリスクへの備え、例えば、一般の顧客からすれば保険会社というのはやはり信頼が置けるところだから、そういう人とサービスの内容ですとか、質についても約束をしておきたい、そういうニーズが仮にあるのだとすれば、それに応えるというのはまさに現物給付で、そのニーズがあまり高くないとか、あるいはサービスという形で、例えば何か事が起こったときに、保険事故が起きたときにあっせんするだけでも足りるのだとか、あるいは今あるロードサービスみたいに、保険約款には書いていないのですけど、サービスとして提供する程度で足りるのであれば、現物給付という概念は認める必要もないのかもしれません。また、そうではなくて、やはりそういう利用者側のニーズ、まさに信頼の置ける保険会社とサービスの内容ですとかについてまで約束したいというニーズがあるかないか、そういうところの話かなと思います。

自動車保険のロードサービスでもそうなのですけれども、サービスといいますと確かに柔軟ですから、インフレリスクとか、そういうところは結構クリアできるのかもしれないのですけれども、ちょっと不明確なところは残ってしまうような気が私はいつもしているのです。サービスというと、それは約束の内容なのかどうなのか。別にロードサービスについて契約書があるわけではありませんし、では、その内容を自由に保険会社が変えられるのかどうか。今の日本で営業している保険会社の中には自由に変えられるから、いきなりそれをやめようなんていうところはないのだと思っていますけれども、仮にそういう会社が出てきた場合に、そういうことをしてはだめですよと言えるのかどうか。それは行政的に言えるのかですとか、裁判の中で利用者が勝訴できるのかどうかとか、いろいろな局面はあるのですけど、そういうところで、やっぱりサービスといいますと不明確なところが残るところは否めないのだと思います。そこをよりかちっとした形で、保険会社と顧客との間の約束という形にするのかどうか、そういうところの話かなと思いました。

以上でございます。

○洲崎座長

保険会社が何かの給付をするということを約束すればそれが保険給付になりますが、ここまでに出されている例で、保険会社がする約束として考えられているのは、先ほど山下委員がおっしゃったように、将来、事が起こったときにあっせんするという約束をするだけの商品を考えておられるのかなという気がしたのですけれども。それ以上のまさに、将来、事が起こったときに、介護サービス、あるいは老人ホーム入居サービス、そこまで約束されているというものではないような気がするのですね。そうするとやはり、それは保険給付そのものではないような気がするのですけれども。そして、そこを保険給付として何か約束した途端に、保険監督、あるいはそもそも商品認可をするときに、このサービスを約束して、10年後、20年後にちゃんと債務が履行できますかということを監督しなければならなくなりますので、そういう認可、監督ができないとなると、そもそも商品として売ることもできないということになってしまいますので、保険給付に入れた途端に非常に難しくなってしまうということはあると思うのですね。かとって、保険給付から外してしまえば、何でもできるかというと、そこもまた難しいというところですので、なかなか議論が先に進まない。

時間がかなり超過しておりますが、先ほど手を挙げた方についてはご発言いただきたいなと思いますが、それでは、神戸委員。

○神戸委員

実際にご相談にお見えになっているお客様の中で、やはり多いご心配というのは、有料施設に入居したときに、そこの経営の永続性がどうなのかという部分だと思います。インフレのリスクを保険会社さん側に負ってもらいたいというニーズは感じません。安定して経営が行われるような施設に入居したいというニーズが強いわけですから、業者をあっせんだけして保険金を直接支払い、あとはうまくやってほしいというスタイルでは、おそらく顧客側のニーズには応え切れていないと思います。保険会社が保険金を施設に対して直接支払う場合でも、安心できる施設に対して支払って、足りない分だけ顧客が出してよというスタイルは、納得感があると思うのですが、一応一定の基準を満たす施設にとりあえず入れますというだけでは、不安感は残るでしょう。

以上です。

○洲崎座長

丹野委員。

○丹野委員

時間が押しているので、簡単に。

先ほどのお話でいうと、ここに生保協会さんのペーパーで、キャッシュレス、手続の簡素化、現物によるリスクの備えとありますけれど、キャッシュレスと手続の簡素に関してそれほど巨大な消費者ニーズがあるとは到底思っていないのですね。払ってもらえれば便利ではありますけれどというのはあります。現物によるリスクの備えに関しても、それほど強い消費者ニーズがあるだろうかと考えると、必ずしも多くないのではないかと思っていまして、特に先ほどおっしゃっていた汎用性の話がありましたね。汎用性の話でいえば、全国各地の地域特性、今例えば生保協会さんは4つのモデルを出していますけれど、例えば早期のように一過性のものであれば、1回やってしまえばおしまいでしょうけど、あとは事実上いわゆる継続的サービスなのですよ。継続的サービスについて、例えばそれを各地域において必ず5,000万円なら5,000万円の保険金に相当するものを全部チョイスができるかとか、全部手当ができるかという意味では、必ずそれは約定ですから提供しなければいけないのだろうけれど、それは非常にまず困難だろうということと、それから、継続的なサービスは主観的な評価が非常に高いので、顧客側の主観的な評価が高いものに対して、生保協会さんのペーパーだと、委託先としてと書いてあるので、質の維持や評価にたえましょうという話なのだろうと思うんですけれど、そういうことがほんとうに可能だろうかと考えたときに、直接支払いならまだしも、現物給付に関するこういう保険を仕組むということはどうなのだろうかと、ちょっと慎重に考えなければいけないのではないかと。むしろ定額の保険金をきちんと支払ってもらえば、お金という普遍性、ほんとうはインフレとかデフレがありますけれど、その普遍性において消費者が求めるものに合致するのではないのかなと思っていますし、それから、これをやることが生命保険業の新しい分野として非常に発展するのだとか、そういう必然性が非常にあるものだというなら、よくわかるのですけど、これをしなければならない必然性もあまり私からはわからないので、とりあえずの感想で言うと、ちょっと慎重にと思わざるを得ないと思っています。

○洲崎座長

瀧下オブザーバー。

○瀧下オブザーバー

1点は、今、保険会社が現物給付していいかという議論をしているのですけども、仮に法改正して現物給付を認めるとした場合、どういうたてつけにするのかわかりませんけども、場合によっては現物給付をするものは保険会社であるという論理も出てきてしまうと思うので、その辺1つ、考えておく必要があるのではないかというのと、なぜかというと、座長がおっしゃられたロードアシスタンス、ロードサービスですね。EUではあれは保険なのですね。認可を受けた人でないとロードサービスできないとか、フューネラルプランというのもの一定の条件のもとで保険とみなされる場合もありまして、現物給付を行うものが保険なのかどうかというのは、世の中にいっぱい現物給付を行うあらかじめ定額を受けてやる商売はいっぱいありますので、その辺との仕切り、特に葬祭業者の何とかプランですね。あれと保険会社がやるのはどう違うのか、その辺非常に難しい点だとは思います。

それと、直接支払い制度なのですけども、以前も申し上げたように、支払い指図というのは普通に行われていて、自動車保険の治療費、あるいは修繕費は直接病院あるいは修理工場に直接、これはほとんど全て支払われておりますので、直接支払いサービスというのは一体どういうことなのか、ちょっといまいち理解できない。生命保険でも支払い指図で誰にでも払える話だとは思います。

以上です。

○洲崎座長

ありがとうございます。先ほど石川様からお話がありましたように、そもそもこのスキームは現物給付保険でしかできないのか、それとも直接支払いサービスでもできるのか、そのあたりもわからなかったところをこのワーキングでそのあたりをはっきりできればということで、これを論点として出されてきたということです。そして今お話を伺っている限りでは、直接支払いサービスという形でも、むしろ対応できそうな感じです。ただ、直接支払いという形をとった場合にも、いろいろ問題はあるかもしれませんが、むしろこの先は直接支払いサービスという形をとった場合に、どういう問題が出てくるか、それに対してどういう対応が可能かということを主として検討していただくほうが、今のまま現物給付型か直接支払いかという概念的な議論をするよりも先に進みやすいかなと、私、今日の議論を聞いてそう感じました。よろしゅうございますかね。

それでは、本日ご議論いただきました項目につきましては、皆様のご意見も踏まえまして論点を整理した上で、次回引き続き議論していきたいと思います。

最後でございますが、次回は保険募集・販売ルールのあり方にかかる議題のうち、第4回のワーキング・グループにおいて議論を行いました「保険仲立人・乗合代理店に係る規制」及び第5回のワーキング・グループにおいて議論を行いました「保険募集に係る行為規制のあり方」について、再び議論していきたいと思います。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室(内線3571)

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