金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第6回)議事要旨

1.日時:

平成23年10月31日(月曜日)10時00分~12時10分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

保険会社のグループ経営に関する規制の在り方について

  • これまでの議論の整理
  • 保険契約の移転に係る規制の在り方

4.議事内容:

  • 「これまでの議論の整理」として論点が集約されてきた項目に関して事務局から、「保険契約の移転に係る規制の在り方」に関して事務局及び実務メンバーから、それぞれ資料に基づいた説明を行った後、討議。

  • 討議における主な意見等は以下のとおり。

「これまでの議論の整理」

(外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制)

  • 海外子会社の業務範囲規制については、買収時点には適用せず一定の猶予期間を設けた上で猶予期間の終了時に当該規制を適用することが妥当。買収業務範囲以外の会社の保有を可能とする猶予期間は3年か、やや長目に考えても5年ぐらいまでが許容範囲ではないか。現地で競争力を発揮するのに必要な業務範囲外の子会社については、十分なリスク管理ができるという前提で保有し続けることも選択肢として、保険会社にその旨、説明責任を負わせることも考えられるのではないか。
  • 猶予期間については、5年あると非常に使い勝手が良く、特段の事情がある場合には、期限を延長する追加的な条項があると、ある程度強く交渉が可能となり非常にありがたいと考えている。
  • 一定期間内に売却を義務付けることと、競争力確保のために必要である業務を行う子会社を一定の規制の下で保有し続けることの2つの選択肢を認める場合は、売却の期間についてそれほど猶予をしなくて良いかもしれないが、後者に関する「一定の規制の下」は非常に重要な問題。保有し続ける必要のある当該事業子会社については、特にリスク係数を高く見る方法も、可能性の1つとして考えられるかもしれない。経営が悪化した場合、重要な子会社の方が普通の会社よりも融資を引き揚げられない等のリスクがあるという説明が可能と思われる。
  • 世界中どこであっても、現地の国と我が国の監督官庁の間での円滑なコミュニケーションが可能であるとは一概に言い切れないという可能性も含んでいるという意味であれば、リスク係数を高く見ることについては、非常に理解できる。
  • リスク管理が過度になると、業況が良好な会社であっても低く評価され、理屈が通らないのではないか。
  • 我が国における保険会社の実力を測定する指標の中に、法制との違いから偶然保有できた会社を取り込まないと、当該実力が測定できないというのは奇妙であり、それであれば子会社規制全般に影響するのか、議論をはっきりさせざるを得ないのではないか。
  • 保険業法の規定に適合しない子会社に関しては、リスク係数を上乗せすることよりも、子会社管理の方法について、金融庁が保険会社に対して報告をさせることの方が、むしろ子会社の事業リスクの法人格を越えた波及の防止という子会社業務範囲規制の根拠に合っているのではないか。
  • 財務の健全性のような適切なリスク管理を押さえた上での一定の規制については、新たに追加的な財務規制を課すことよりも、報告義務であったり、当該期間を超えて保有を認めるという与えたオプションの廃止であったり、という程度のもので良いのではないか。
  • 保険業法に適合しない会社については、例えば5年が1つの保有期間の目途。それを超えた場合、例えば、毎年、売却計画の進捗状況について保険会社と当局がコミュニケーションを取ること等が追加的規制の内容であり、それ以上に過度で、永続的に保有することを前提とするような重い規制は必要ないのではないか。
  • まず、現在問題となっている外国保険会社買収時の課題の解決をお願いしたい。また、当該国の社会環境や現地での競争力から継続保有しなければビジネスが成立しないものが存在する可能性もあり、一定の制限を加えつつ継続保有を可能とするスキームも考えていただければ、ありがたい。
  • 日本の保険業法に適合しない子会社の例の現状として、タイの大手社がグループ内に自動車修理会社を持っているという事例がある。

(保険会社の子会社等への与信に係る大口与信規制)

  • 保険会社が本来業務として習熟している保険事業に限定して早急に大口与信規制の適用外としたら良いのではないか。また、万が一のための保障を提供する保険事業にとって、相応に高い信用力評価は競争力の源泉の1つでもあり、保険グループの経営の実効性の向上に向けた債務保証の活用についても大口与信規制の適用外とすることが良いのではないか。
  • 実態として債務保証が活用されるケースがあるので、与信全体が大口与信規制の適用除外になると非常にありがたい。
  • 様々なケースがあり、段階的に出資比率を引き上げていく場合等も含めて考えていただければ、ありがたい。
  • 最終的にはもう少し精査が必要であるが、大口与信規制の対象資産から保険子会社を除外する方向性は、良いのではないか。

(保険募集の委託の在り方)

  • 再委託者をグループ内の保険会社に限定して、銀行法を参考とした形で委託者による再受託者に対する監督や賠償責任にかかわる懸念を相当まで払拭できるという前提で、示された枠組みによって再受託者たる保険募集人に対する適切な管理を行うことが可能という考え方もできると思われる。ただし、留意すべき事項が幾つかあるため、同一グループ内の保険会社が再委託者として機能するのに十分な体制を有しているかを認可事項として確認するプロセスを持ってはどうか。委託者による募集方針等に基づき、再委託者による再受託者の指導監督状況について、検査・監督の対象とすることも適切ではないか。
  • 生損保を跨る再委託は、問題が大きい。そもそも、現行実務上も保険会社が他社商品を扱う際には相当なエネルギーを使い慎重に対応している。復代理の解禁については、慎重に考えて頂きたい。保険商品は、銀行と違って生損保とも複雑であり、例えば自動車修理工場の保険代理店が突然ペット保険を扱うことには違和感がある。元受によるきちんとした商品説明の教育等が重要。支払問題も根本的な部分は募集にあった。元受と個々代理店の間に直接の委託契約がない中では、最低でも、銀行法の規定と同様の、委託者による商品教育、代理店のチェック体制及び管理・監督の義務化ということは避けて通れない話。十分にご留意頂きたい。
  • 他人の保険商品をよく理解していないまま売ることによって、不払い問題のようなことを起こさないための対策として、再委託者になる中核的な会社で、リソースがあるところにおいて、その下にある再受託者の代理店業を監督することがうまく機能すれば、それが一番効率的かつ実効的なシステムではないか。再委託者を適切に監督する仕組みを備えることを加えた上で、事務局の提案に賛成したい。再受託者において問題がある場合に対処するため、再委託者と委託者の間及び再委託者と再受託者の間の2本の契約で、同様のものがしっかりと整備されることを確保していくことが必要。
  • 委託者と再委託者の大小については、何か法的に規制できる訳ではなく、事実上逆転することも有り得る。募集人による適切な説明が行われなかったために生じたトラブルが現実にはたくさんあり、委託者が代理店に関与しないで、その募集行為を行うのは非常にリスクが高いと思われる。トラブルを起こす前に、委託者の商品を再委託者が理解して、しっかりと自分の代理店に教え込まなければいけないという流れの担保を、契約者保護の観点から、ぜひお願いしたい。制度的に募集人の品質向上が担保されないと、懸念が払拭されないのではないか。
  • 保険契約者は、再委託者であるきちんとした保険会社と交渉でき、再委託者が存在する特殊な関係の中で募集が行われているということを納得して契約をするなら、それはそれで大丈夫なのではないか。グループ内でしっかりと管理ができているという前提のもとでは、例えば包括的な許諾を認める等柔軟な制度設計についても、保険会社の経営の自由度を上げようという趣旨からするとふさわしいのではないかという印象。
  • グループ経営を効率化したいというニーズに照らした場合、中核会社である再委託者に一元的に教育の体制を組ませることが前提にあると理解。再委託と保険契約の一部移転をセットで考えた場合、兄弟会社はスリムな組織となる一方、募集、商品開発、支払査定及び苦情処理については中核会社が行うということが顕在化する問題として有り得る。グループの中にあるそれぞれの保険会社の全体像をどう描くかを視野に入れ、募集でどこまで外すかという視点が必要であり、ペーパーカンパニーのような兄弟会社がたくさんできるようなことに大きく道が開けるような全体の法制であっては困る。
  • ペーパーカンパニーのような保険会社まで認められることは、かなりハードルが高い話であって、募集の問題と支払の問題とでは、随分異なるのではないか。
  • 今回の制度の変更は、グループ経営を完全にインテグレーションするか、個別に行うかという選択肢に加えて、その中間形態を認めようという問題ではないか。消費者にとって非常に不利になることがなく、選択は企業に任せるという変更ならば、余り後ろ向きに考えなくても良いのではないか。
  • グループ内に限定する限り、ガバナンス又は連結上の規制監督上の問題であり、再委託によって必ずしも契約者のリスクが上昇するものではないと考えている。あくまで販売に関しての委託であれば、グループの効率経営に資するツールの1つになるのではないか。
  • 最終的に何か問題が起きてから、委託者と再委託者の両方が損害賠償責任を負うからよいということではなく、事前に万全を尽くすことが保険会社としての務め。元受による再委託の許諾については、包括的な許諾で足るのか疑問。中核会社にとって重要な代理店もあり、元受にとって問題であっても、中核会社の指導・監督によって対応できるのかも疑問。代理店と元受の間でトラブルが起き易いのは、商品と手数料の問題であることも踏まえ、最低でも、銀行法と同様の、委託者による再受託者に対する商品の教育や管理を義務化すべきではないか。
  • 委託者が再委託者の代理店のリストを見せてもらっていわば○×を付けていくことが包括的な手続として認められた場合、○×を付けていくことによって再受託者を選別することが十分できるのではないか。再委託に係る論点と、保険会社が代理店をコントロールできなくなることへの対処をセットにして論じることが妥当かどうか、少し疑問がある。法律的には、再委託者のお得意先である代理店であっても、委託者の個別の判断で保険募集の再委託を止められるようにしておく、いわば最後のセーフティネットを委託者と再委託者間、再委託者と再受託者間の双方の契約に入れておくこととすれば十分ではないか。
  • 委託者である保険会社が、自社の販売方針に見合った再委託者である保険会社の代理店を選別したり、問題がある代理店をその対象から外したりすることが可能な形にしていくということがあれば良いのではないか。
  • グループ会社という状況で、委託者である保険会社において、再委託者である中核保険会社とは異なる独自の経営方針があることは、少し想定しがたい。募集、支払い及び商品設計のトライアングルの一角を大きく動かすことについて、実効性を期待するのは無理ではないかという印象。
  • 中核会社で再委託者である保険会社が、委託者である保険会社に対して再受託者となるべき自社の代理店を示し、事実上委託者が拒否できないことが起こり得るのは、現状の業務の代理・事務の代行においても同様であるため、むしろ当該再委託者に対して責任を追及しやすくなるように再委託という形をとったほうが良い。グループの中でも連携をとって、一番リソースのあるところに、募集部門、支払部門及び商品開発部門の連携を監督させていくことが、現実的かつ効率的な今後のグループ経営のあり方ではないか。
  • ほとんどの保険契約者は、勧められたものにおとなしく入ると思われ、支払い時にトラブルになったり、商品が契約者の期待に合わないものになったりして、後で消費者利益が阻害される可能性があることから、委託者である保険会社が作った商品を、代理店が顧客に対して正確に説明できた上で勧められるかが非常に心配。保険の商品の難解性、複雑性から言っても、代理店に商品教育を適切に行えるのは作ったところ以外にあり得るのだろうかと思われる。
  • 当局における監督も、保険会社の健全性及びガバナンスの面で、個社を見ると同時にグループ全体を見ていくという方向に動いており、再委託に係る仕組みができた場合に、グループの中でも緊張感を持って取り組んでいくことは間違いないと思われる。

「保険契約の移転に係る規制の在り方」

  • 移転先会社が新たに保険リスクを引き受けるので、移転契約に対応するリスクバッファーとしての剰余の一部も移転先会社に移されることが適切ではないか。剰余の全てが必ずしも直接的に還元可能な形で、相互会社は保険契約者に、株式会社は会社に、それぞれ帰属するものではないのではないか。株式会社において、消滅配当を伴う商品の設計を阻むような規定はないと認識しており、残っている剰余は移転元会社に残すことを条件として制度を策定することには、少し無理が生じ得るのではないか。
  • 同一グループ内でも、一部移転を繰り返し、望ましくない契約の母集団だけを存置した会社を、会社売却等の手段で最終的にグループ外に移転する方法も考えられるため、グループ内・外共に網をかける議論が必要。公平性の確保の観点からは、移転後のサービスや支払余力に関する情報開示だけで十分と言えるのかが、議論のポイント。
  • 移転先における、将来合理的に期待される配当原資の確保については、移転元に積んであった責任準備金を移して、移転先において将来きちんと配当が発生できるような基礎的な条件を整えてあげるべきという趣旨であれば、非常に結構と思われる。移転元に契約を残す形で、包括移転を企図している保険会社の効率化が実現できるのか、留意する必要。
  • 募集人に対して、保険募集時に保険契約を他の会社に売る可能性があることを言わせなければならないような保険会社の保険には、だれも入らないのではないかという気がするが、そのようなことを超えてもなお契約の移転を行おうとするメリットが、どれだけ保険会社側にあるのかが、未だによく分からない。例えば解約控除なしでの解約を認めることも1つの方策ではあるが、公平性の阻害や再加入困難性に係る問題についても、ぜひ検討頂きたい。
  • 異議を申し立てた契約を移転元に残し再保険を活用する場合、個別契約について、再保険と、一部業務の出再先への委託を組み合わせて対応することになるのだろうが、実務としては複雑過ぎて、ワークしにくい印象を持っている。
  • 得意としている会社に保険契約を寄せていった上で、そのメンテナンスに係るサービス水準を維持する手法として、将来、保険契約の移転は必要。規制上のアビトラージを防ぐ観点で、相互会社の契約が株式会社に移転される場合にも、相互会社の株式会社化における社員権の喪失の対価としての株式又は現金の交付と同じような形を担保しなければ、株式会社化等ではなく、包括移転が使われてしまうことのリスクがあるのではないか。
  • 異議を申し立てた契約を移転元に残すことは無理があるため、現行制度を前提に、移転対象契約者の5分の1超という異議が成立する水準をかなり下げることによって納得性が得られると思われる。
  • 異議がある契約者は、不利益が生じないような解約方法を選べることも含めて検討すべきであり、保険会社はそのような対応も行う覚悟を持って、リスクを取ることが必要。
  • グループ内での保険契約の移転によって、グループ全体の支払余力は変化しないということは、誤解を招きやすいことが非常に懸念される。移転先の会社の支払余力が「十分」であることについて、どのような基準があれば満たされるか、リスクバッファーの部分をどのような手当をするか、という問題が一番重要ではないか。グループ外に移転する場合、契約が守られるかどうかを審査基準の中で見ていかなければいけないという問題が残っていると思われる。

以上

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総務企画局企画課保険企画室(内線3557)

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