金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第7回)議事要旨

1.日時:

平成23年11月11日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

3.議題:

保険会社のグループ経営に関する規制の在り方について

  • 保険契約の移転に係る規制の在り方
  • 保険募集の委託の在り方

4.議事内容:

  • 「保険契約の移転に係る規制の在り方」及び「保険募集の委託の在り方」に関して、事務局からそれぞれ資料に基づいた説明を行った後、討議。

  • 討議における主な意見等は以下のとおり。

「保険契約の移転に係る規制の在り方」

  • 異議の成立要件を5分の1よりも引き下げること自体は結構だが、引き下げすぎることにも問題はあり、その水準について結局、なかなかベストな解は見出しがたい面がある。認可申請にあたって、異議の主な理由等を提出させ、必要な場合に当局が移転計画の修正を求める、としたときに重要になってくるのは、当該修正によってどれだけ契約者の利益が守られるのかということである。異議を述べた契約者の保護にとって有効な、当該修正等のありうるべき形が検討されれば良いのではないか。異議の主な理由という点については、移転先におけるサービスの低下や支払余力の懸念等の項目で該当するものがあったら丸をつけ、ほかにもし特別な事項があれば契約者に書いてもらう等、実務上の工夫レベルの問題も含めて異議を述べにくくならないような対応を検討して頂きたい。
  • 異議を述べた契約者の数や理由だけではなく、当該保険契約の移転に係る必要性の程度も、当局が判断する際の観点に加えることが必要ではないか。
  • 少数意見の異議申立に関しては、インセンティブな制度設計に少し気をつけなければいけないのではないか。少数意見の主張者の納得感を得られる形を考えるため、例えば異議申立の審査後も合理的な根拠があると信じている少数意見に対する、再審査制度のようなものとの二段構えとするのも1つの方法と思われる。
  • 移転の結果、最善の選択とは言えない状態になったことに基づいて、移転対象契約者がもう一回入り直すことを考えたいという場合のニーズに応えるものであり、解約控除なしで解約できることが積極的に得をすることにはつながらないと考えられる。当初の移転計画に異議を述べた人がいたという事実が、当該計画が修正された場合、どのような扱いを受けるのかが決まっていないと、議論が進まないのではないかという懸念。
  • 機会主義的な行動によって生じる問題を回避するために、移転対象契約者全員に解約控除なしでの解約を認めた場合、最終的に解約を申し出てくる数が分からず、非常に不安定な制度になって、実務的には難しい面もあるのではないか。
  • 破綻時に移転させられた契約者においては、「保険会社のブランドや看板を信用して入ったのに、こんなことをされるのはけしからん。」という旨のクレームが非常に多い印象。そもそも消費者側から見ると、合理的でない行動をしているのは保険会社であるため、異議のある契約者には解約控除なしで解約ができるという程度のインセンティブが残されていることも1つの選択肢ではないか。
  • 異議の成立要件の緩和、必要な場合の移転計画の変更及び解約控除なしの解約については、対応が可能と考えている。一方で再保険については、同一の保険種目で異議のあった一部のみを移転元に残し、個別再保険を手配することになるため、事務的にもシステムコスト面でも対応は難しい。
  • 契約者は会社を選んで保険に加入していることを考えると、保険会社のリストラクチャリングの一環としての保険契約の移転は、容易に認めるべきではない。それでもあえて移転をするのであれば、再保険を含め何らかの形で移転元会社がバックアップするような仕組みが必要。大きな保険会社ほど、異議の成立要件に係る水準を幾ら引き下げても、実際はその水準まで異議を集めるのは困難。また、具体的な水準を定めるのも難しい。解約控除なしの解約については、解約が多い場合に移転先会社の収支に影響を与えるほか、例えば病気等で再加入が困難な契約者の契約や、貯蓄性の高い保険における高予定利率の契約が解約されず、移転先会社にリスクが濃縮される懸念がある。
  • 保険会社においては、解約控除なしでの解約が多いことにより移転先に一定のリスクが濃縮される等、起こり得る事態をしっかりと予測した上で保険契約の移転に臨む必要。契約者の意思を無視した制度設計がされる改正になることを危惧している。
  • 解約控除なしの解約については、ルールとしての妥当性に加えて、技術的に対応可能か、精査する必要。異議の成立要件を変えることは、慎重に考える必要があり、現行法の破綻時の契約条件の変更を伴う場合の10分の1を維持する限りは、平時について要件を緩和したとしても10分の1までと思われる。
  • 解約控除なしでの解約については、一定以上発生した場合、保険会社の経営に影響を及ぼしたり、ポートフォーリオ自体の収支のバランスをかなりゆがめたりしてしまうリスクがあり、かなり限定的に活用すべきではないか。
  • 解約控除なしでの解約が多過ぎて経営に甚大な影響が及ぶような場合は、保険契約の移転をやめれば解約できないこととすればよく、保険会社に、そのような後戻りの道を残しておくことは十分意義があることではないか。
  • 意に沿わない形で移されることが嫌でやめるという契約者からすれば、早期解約の場合であろうと、低解約・無解約返戻金型の保険であろうと同じことになり、解約控除なしでの解約に関しては、なお一層の精査が必要ではないか。
  • 会社が変わることは、一部の契約者の期待を裏切るのは確かであるが、保険で一番大事な保険負債を確実に履行することを重視し、幹として考えるべき。
  • 保険契約において約束された給付の確保がされるという客観的なバックアップが十分された上で、保険会社や保険商品を選ぶという保険契約者の意思決定の尊重は残さざるを得ないというのが一般的な考え方ではあるが、それを具体的にどこまでどのような形で行うのかが問題なのではないか。
  • 移転対象契約者に帰属させる剰余の一部は、移転先会社に移転後、リスクバッファーとして活用しつつも、配当可能と判断されるタイミングにおいて、契約者に還元することも考慮する余地があるのではないか。相互会社から株式会社へ契約が移転される場合、移転元会社において、過去の寄与分に応じ契約者が喪失する社員権の対価を支払うことによりキャッシュアウトが発生し得る。これに伴う移転元会社の健全性や支払余力などについて、十分に考察するべきではないか。
  • 今までの包括移転の利用例を見ると、外国会社の撤退時に使う例も少なからずあるため、この場合の異議申立手続きの方法として、原則どおり個別の通知とするか例外とするのか扱いを明確にした方が良いと考えている。
  • 将来収支分析に加えて、経済価値ベース評価も視野に入れた責任準備金の適切な算出の適切性を確認することも有り得るのではないか。移転元会社及び移転先会社の支払余力の変化について、規制当局が確認するプロセスの中で経済価値ベースの資本の十分性についての評価を視野に入れて判断することも、考察に値するのではないかと考える。
  • 個別通知について、中には様々な事情で届かないことも実態上出てくるため、合理的なきちんとした努力をしている場合には良しとするという理解で良いか。
  • 残余財産請求権と配当請求権があるという意味において、社員権自体は所有権であり、現実には有配当契約にその所有権が存在するという意味で、無配当契約とは観点が異なってくるのではないか。
  • 個別通知をしないで保険契約の移転に係る規制の見直しを行うということは、消費者側として受け入れられず、あくまで合理的な範囲で通知を出すということに当然されなければ困ると思われる。
  • 本規制が制定された約100年前とは通信手段等の状況も変わっており、保険会社においては、コストをかけても必要な通知を丁寧に行うべきと考えている。
  • 責任準備金の適切な算定に関する経済価値ベースの評価は、相当幅が生じ得るもの。したがって、規制として具体的にどのような経済価値ベースの評価を行うのか確定していない現状では難しい。第1回目のフィールドテストの結果が公表されたところだが、今後更に検討が進み、規制の方向性が見えてきた段階で、はじめて経済価値ベースによる判断が可能になると考えている。

「保険募集の委託の在り方」

  • 再委託について、現行の業務の代理や事務の代行を使って代理店の教育・管理を他の保険会社に委ねる場合と同様に認可制とすることは非常に結構であるが、規制のアービトラージを防止するために認可の要件等もできるだけ揃えるべき。新しい保険商品の追加等があった場合に改めて得る必要がある認可については、例えば再委託者において当該新しい商品の知識を持っている人間がいるかというポイントに絞ったものにする等、効率的な制度とすれば良いのではないか。
  • 販売代理については、募集品質の確保や仕組みの適切な運用をしっかり担保したうえで活用することが前提であり、再委託者が商品内容に加えて、委託者の商品であることや加入後の事故処理の手続き等をしっかり説明する必要がある。グループ内のガバナンスをしっかりしていくという現在の流れの中で、相当程度募集品質も担保されていくのではないかと考えている。
  • 新しい体制では、ある程度実績を積んで、どのように実行されるか見る必要があり、監督官庁はしっかりと確認し、保険会社は実際に、本来あるべき販売体制を構築できることを示していただきたいと思う。
  • 今回仮に再委託を認可という形で認めることとした後、不都合が生じていないかきちんと監督していくことが必要。
  • 同一グループの保険会社間での再委託が、認可の対象とされたことは理解できるが、保険商品は、銀行商品と比較しても複雑。仮に再委託を同一グループ内の保険会社間に限って認めるとしても、元受が生保、再委託者が損保のような生損クロスの場合は、元受会社による代理店の適格性審査や、業務指導、研修を義務づけるべき。また、生保同士、損保同士であっても、少なくとも商品については、開発した会社が再受託者を教育・指導すべき。現在の銀行法においても、再委託では、所属銀行による再受託者の教育が求められており、預金や為替等の銀行商品よりも複雑な保険商品であれば、直接の教育の必要性は更に強い。
  • 再委託に際し、何か特定の形式を当てはめるのは、その後の組織の発展を阻害することにもなるため、あくまで実質的にしっかりと監督機能が果たされているかという点に重点を置き、枠組みとしては柔軟に考えられるべきではないか。
  • 保険会社が、どのような商品をどのような態勢で扱っていくかを最初から決めるのではなく、実態も含め、認可の中で監督官庁が個別に判断することが適当と考えている。
  • 再委託に特有の事項として委託が二段階に構成されるため、当該商品にかかる情報がきちんと提供される仕組みがしっかりと構築されていることが重要と思われる。場合によっては、委託者と再受託者との間で直接必要な情報をやりとりする仕組みも有り得ると考えられるが、基本的には二段階でいくことが想定され、各段階で適切な情報提供等が行われる形になっていれば良いという考えでチェックしていくということか。
  • 基本的に、自分より大きなものや遠いものにはコントロールが効かないのが世の中の常であり、現実には直接商品の情報提供や指導がなされないと、元受から再受託者へコントロールが効かないのではないのかという懸念が残るのではないか。
  • 委託者の関与については、もう少しポイントを具体化していった方が建設的な議論になると思われる。すなわち、再受託者がしっかり対応できていない場合については、委託者の再受託者に対する直接の教育などを制度として確保するよりも、事実上例えば委託者が教えに行くようにし、それでもワークしなければ、委託者はその再受託者による保険募集を止めさせるべきである。また販売方法等の質問について、再委託者が再受託者にしっかりと回答してくれないので、再受託者が元々の委託者に直接聞きたいという場合については、委託者にどのような対応を要求するかを考えるべきであろう。
  • 新しいチャネルで販売するときや新しい商品を販売する際に、保険の募集時又は支払時において常に存在している詐欺や不正な請求等を、うまく排除ができるのかという観点が必要ではないか。慣れないものを売る際、契約者保護の観点とあわせて、その引受会社は、後からその保険金の請求が想定以上に出てしまうというリスクもコントロールをする必要があると思われる。
  • 所属保険会社と再委託者の両方が金融ADRを持つ場合、金融ADRを再委託者に業務委託させる場合の両方について、検討させてもらえばありがたい。保険会社が会社として募集に関する苦情を受ける場合、所属保険会社と再委託者のどちらが窓口になるべきなのかという整理がまだ残っているのではないかと思われる。
  • 再委託という形で、契約の締結過程に別の主体を関与させたことで、注意義務が分担され、ひいては責任の在り方としても分担となるのはあるべき姿ではなく、むしろ契約締結過程に関与させた以上は、委託者と再委託者との内部的な求償問題は別として、基本的に責任を負うべきと思われる。仮に、例えば委託元は情報を出していたのに、再委託者においてきちんと情報が伝わっていかなかったという場合でも、なお連帯して契約者に対する責任を負うべきではないか。
  • 顧客が損害を被った場合、委託者には十分な情報提供をしなかった点での義務違反があり、再委託者にも十分な情報を得ないままに売ってしまった点で帰責性があり、結局、顧客からはおそらく両方に行けるということになるのではないか。委託元では情報を出していたとしても、最終的に伝わっていなければ、十分な監督をしていなかったと評価されることがあり得るのではないか。
  • 実際の訴訟において、保険会社にどのような管理態勢があり、そこにどのような不備があったかを契約者側が具体的に立証するのは、困難だと思われる。現行の保険業法第283条は、保険会社側の抗弁として構成されていると思われるが、今回、同じようなことがなされるという理解で良いのか。

以上

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