金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第5回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年12月2日(金曜日)17時00分~17時36分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは、予定の時間になりましたので始めさせていただきます。本日は、いつもよりやや遅めの時間の開始ということで、大変恐縮でございますけれども、ただいまから、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第5回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には、いつも大変お忙しい中を、また、今日は大分寒い感じがいたします中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

それでは、早速、議事に入らせていただきます。お手元の議事次第にございますように、本日は、事務局から本ワーキング・グループ報告(案)をご説明いただきます。そして、それについて、皆様方にご議論をいただくという手順で議事を進めさせていただきたいと思います。

それでは、早速ですけれども、事務局から報告(案)の説明をお願いいたします。

○読上者

では、報告(案)を読み上げさせていただきます。


金融審議会金融分科会インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ報告(案)~企業のグループ化に対応した制度の見直しについて~

  • はじめに

    インサイダー取引規制は、インサイダー取引に関する社会的関心の高まりや、英米等における規制強化の動きを踏まえ、昭和63年の証券取引法改正により制定されたものである。

    その後、独占禁止法改正による持株会社の解禁や連結ベースのディスクロージャーへの移行、商法改正による金庫株解禁等に伴い、逐次、インサイダー取引規制に係る手当てが行われてきた。

    しかしながら、近年、企業の合併・再編が進み、子会社や関連会社から構成されるグループ経営が一般化してきている実態を踏まえると、現行のインサイダー取引規制は、企業が円滑なグループ経営を行っていく上で、必ずしもこれに十分に対応した適切なものとなっていない部分がある。

    当インサイダー取引規制に関するワーキング・グループは、こうした問題意識を踏まえ、本年7月から○回にわたり審議を行った。

    本報告書は、当ワーキング・グループにおける検討結果をとりまとめたものである。今後、関係者において、本報告書の趣旨を踏まえ、適切な制度整備が進められることを期待する。

  • I .純粋持株会社等に係る重要事実

    • 1.インサイダー取引規制の対象となる重要事実

      インサイダー取引規制は、上場会社等の会社関係者が、その職務等に関し、上場会社等の業務等に関する未公表の重要事実を知りながら、当該上場会社等の株券等の売買等を行うことを禁止している。一般に、重要事実とは、上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に影響を及ぼすべきものとされている。

      • (1)「軽微基準」

        金融商品取引法(金商法)は、上場会社等の意思決定に係る事実、及び、上場会社等に発生した事実について、投資者の投資判断に影響を及ぼすべき性質の事実を列記した上、当該事実に該当する場合であっても、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして定める基準(軽微基準)に該当するものについては、規制対象となる事実から除外することとしている。

        これは、投資者の投資判断に影響を及ぼすべき性質の事実であっても、類型的にその影響が軽微と認められるものについては、それを知った会社関係者による株券等の売買等が行われても、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼を損なうことが少ないことから、そのような取引を禁止するまでの必要性がないとの考慮に基づくものと考えられる。

        現行の軽微基準は、上場会社等に係る事実に関し、上場会社等の単体の売上高や純資産額等との対比で一定水準未満の影響しか生じない事実について、類型的に投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものと定めている。

      • (2)「重要基準」

        決算情報変更に係る事実についても、投資者の投資判断に影響を及ぼすべき性質の事実とされており、売上高等の予想値等に関する差異が投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして定める基準(重要基準)に該当するものが重要事実に該当することとされている。

        また、現行の重要基準は、上場会社等の単体の売上高、経常利益、純利益、剰余金の配当について数値基準を定めるとともに、連結グループでの売上高、経常利益、純利益についても数値基準を定めている。

    • 2.純粋持株会社等に係る軽微基準等

      • (1)純粋持株会社に係る軽微基準等

        いわゆる純粋持株会社は、事業を営む会社の株式を所有することを通じて、専ら当該事業会社の経営管理及びこれに附帯する事業を営む会社であり、その収益は、自らの固有事業がないため、子会社からの配当や経営指導料など、グループ会社からの収益に依存していると考えられる。

        このため、純粋持株会社に対する投資者の主たる関心事項は、一般的に、連結決算、連結グループ各社の事業展開やその結果としてのグループ全体の今後の見通し等であり、純粋持株会社の単体決算の状況についてはさほど関心が高くないとの指摘がある。

        加えて、純粋持株会社の売上高はグループ全体の規模に比して小さなものとなり、事業会社の売上高と比較すると軽微基準等の水準が低くなるため、両者についてインサイダー取引規制が必ずしも中立的ではないとの指摘がある。

        このような純粋持株会社については、連結ベースの数値との対比で一定水準未満の影響しか生じない事実であれば、類型的に投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なもの(重要ではない)と考えられることを踏まえ、軽微基準等について、連結ベースの計数を用いることが適当である。

        (注)なお、決算情報変更に係る事実のうち、剰余金の配当に関するものは、グループとしての株主への配当は純粋持株会社から行われるものであるため、引き続き、純粋持株会社の単体を基準とすることが適当と考えられる。

      • (2)純粋持株会社に類する会社に係る軽微基準等

        上述の収益・規模、投資者の関心事項に関する純粋持株会社の特徴は、純粋持株会社以外の会社であっても、自らの固有事業が副次的なものに止まり、グループ会社からの収益に依存している会社(純粋持株会社に類する会社)について当てはまると考えられる。

        このため、上述の純粋持株会社に加え、純粋持株会社に類する会社についても、軽微基準等について連結ベースの計数を用いることが適当である。

      • (3)連結ベースの計数を用いる会社の範囲

        軽微基準等について連結ベースの計数を用いる会社の範囲については、投資者の投資判断が基本的に連結ベースの計数について行われるかどうかで画されることが適当である。

        これについては、上場会社等におけるグループ会社からの売上高(収益)の依存度に基づいて定めることが適当であると考えられる。具体的には、上場会社等の単体の売上高のうち、グループ会社(関係会社)からの収益(主として配当や経営指導料等)の占める割合が一定基準を上回るような上場会社等を対象とすることが考えられる。

        この点、「投資者は、連結財務諸表を作成している事業会社一般について、投資判断に当たり連結ベースの情報を重視しているので、それらの会社全体について、軽微基準等を連結ベースの計数とすべきである」との指摘がある。投資者の意識の変化等を踏まえながら将来的には見直しを行っていくこともあり得るが、単体の財務情報についても開示対象とされており、個別財務諸表の有用性も指摘されている現状においては、上述の範囲での見直しを行うことが適当である。

        なお、「グループ会社(関係会社)からの収益」の「上場会社等の単体の売上高」に占める「割合」の算定に際しては、上場会社等が製品・商品を製造しその子会社が販売会社である場合等があることを踏まえ、「グループ会社(関係会社)からの収益」からグループ会社への製品・商品売上高を除くこととすることが適当である。

      • (4)収益依存度の水準

        現行の軽微基準等は、売上高に10%未満の影響しか及ぼさない事実であれば、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微(又は重要でない)としている。

        一方、関係会社からの収益が大宗(80%以上)を占める会社については、関係会社からの売上げとその他の売上げを比較すると、関係会社からの売上げは配当や経営管理料等となっている一方、その他の売上げは不動産賃貸収入といった副次的なものが多いといった傾向にある。

        また、関係会社からの収益依存度が特に高い会社については、年度毎に大きく変動するような場合は少ないものの、その時々の特殊要因によって一時的に変動が生じる可能性もある。

        これらを踏まえると、上場会社等における関係会社からの収益依存度の水準は80%以上とすることが適当である。

        この点、「より低い水準とするべきである」との指摘があるが、収益依存度が80%未満の水準の上場会社等においては、上場会社等が必ずしも副次的なものにとどまらない重要な事業を自ら行っている傾向にある。このような上場会社等について投資者の投資判断が当該上場会社等の単体の数値に影響を受けないとは言い切れないものと考えられる。

  • II .企業の組織再編に係るインサイダー取引規制の適用関係

    • 1.はじめに

      会社が組織再編を行うに当たっては、事業譲渡や合併、会社分割、株式交換・株式移転が主要な手段となる。現行のインサイダー取引規制は、上場株券等に係る「売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け又はデリバティブ取引」(売買等)を対象としているため、組織再編に際してどのような手段を用いるかによって次のような相違が生じており、会社が選択する組織再編の手段に対するインサイダー取引規制の適用関係が中立的でないとの指摘がなされている。

      • 事業譲渡は個々の権利義務を承継させる行為(特定承継)であるため、「売買等」に当たり、インサイダー取引規制の規制対象である一方、合併や会社分割は権利義務を一括して承継させる行為(包括承継)であるため、「売買等」に当たらず、対象ではないと解されている。

      • 組織再編の対価として上場株券等を割り当てる場合において、新株発行によるときは所有権の移転ではないため、「売買等」に当たらず、インサイダー取引規制の対象とならない一方、自己株式の交付によるときは既発行の上場株券等を移転させるものであるため、「売買等」に当たり、対象となると解されている。

    • 2.組織再編による保有株式の承継

      • (1)規制対象の見直し

        会社が組織再編により他の会社に承継させる資産に上場株券等が含まれる場合、当該承継は、特定承継・包括承継のいずれの手段であっても、上場株券等を他の会社に承継させる点で、上場株券等の取引としての性格をも有するものと考えられる。

        また、組織再編の当事者が、取引関係等に基づき承継資産に含まれる上場株券等の発行者に関する未公表の重要事実を知っていた場合には、その重要事実は組織再編の両当事者にとって外部情報となる。そのため、重要事実を知っている一方当事者が他方当事者に対しその情報を積極的に伝えない限り、当該他方当事者が把握することは難しい。

        こうした中、組織再編の一方当事者が、上場株券等の発行者に関する重要事実を知りながら、組織再編により上場株券等を承継させ、又は承継した場合について、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼を損なうおそれがある点で、特定承継と包括承継とを区分する必要性は必ずしも高くないと考えられる。

        これらの点を踏まえると、事業譲渡による場合と同様に、合併や会社分割による上場株券等の承継についても、インサイダー取引規制の対象とすることが適当である。

      • (2)適用除外

        組織再編に際しての上場株券等の承継をみると、特定承継・包括承継のいずれであっても、次のような場合については、類型的にインサイダー取引に利用される危険性が低いと見込まれることから、組織再編の性質に鑑み、インサイダー取引規制の適用を除外することが適当と考えられる。

        • マル1承継資産に占める上場株券等の割合が低い場合

          一般に、合併や会社分割、事業譲渡の承継資産に占める上場株券等の割合が低い場合、上場株券等の取引としての性格は必ずしも強くないと考えられる。すなわち、当該上場株券等に関し、投資判断に重要な影響を及ぼす未公表の事実が生じていたとしても、承継対価全体に及ぼす影響は小さく、また、その情報を利用して不公正な取引を行うために組織再編を行うことはコストが過大であるため、インサイダー取引に利用される危険性は低いと考えられる。

          この場合における承継資産に占める上場株券等の具体的な割合については、以下の点を踏まえ、「20%未満」を基準とすることが適当と考えられる。

          • 会社法上、組織再編は会社の基礎的変更に当たるため、原則として株主総会の特別決議が必要とされている。その一方、会社分割や事業譲渡による承継資産が総資産の20%を超えない場合には、分割会社や譲渡会社における株主総会決議は不要とされている(簡易手続)。

            これは、組織再編を行おうとする会社にとって基礎的変更とはいえない組織再編については、株主総会決議を要求する必要性が乏しいためと解されている。この考え方を敷衍すると、組織再編による承継資産のうち上場株券等の割合が20%未満であれば、承継資産全体にとって重要性が低いものと考えられる。

          • 承継資産の大宗(80%以上)が上場株券等以外の場合には、仮に当該株券等の発行会社の株価に大きな影響を与えるような重要事実が生じていたとしても、承継対価全体に与える影響は必ずしも高くない。

        • マル2最終の取締役会決議後に重要事実を知った場合

          一般に、取締役会において、承継対価に関する事項を含む合併契約や会社分割契約、事業譲渡契約の締結についての最終決定がなされ、当該決定に基づき合併契約等を締結する場合には、仮に当該決定後に未公表の重要事実を知ったとしても、そのこととは無関係に上場株券等の承継が行われることになるため、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼を損なうおそれは小さいと考えられる。

          また、組織再編は、当事者間において長期間の交渉やデュー・デリジェンス等を積み重ねた上で合意に至ることを踏まえると、取締役会で承継対価に関する事項を含む合併契約等の締結についての最終決定がなされた後においてもインサイダー取引規制を適用するならば、かえって円滑な組織再編に支障を生じさせることにもなりかねない。

          なお、取締役会決議を経ずに組織再編が行われる場合もあり得るが、取締役会決議が行われる場合には、議事録が作成され、事後的に当該決議があったかどうかを検証することが可能である一方、取締役会決議以外の最終決定の場合は、当該決定を行った時点の特定が困難であり、類型的にインサイダー取引規制の適用を除外することには馴染まない。これらを踏まえると、適用除外の対象は、取締役会決議が行われた場合に限定することが適当と考えられる。

        • マル3新設分割による承継の場合

          新設分割は、共同新設分割の場合を除き、分社化の機能を有するものであり、基本的に第三者との取引の性質を有しないため、インサイダー取引規制を適用する必要性は低いと考えられる。

    • 3.組織再編の対価としての自己株式の交付

      • (1)組織再編の対価に関する特徴

        組織再編について、その性質をみると、通常、組織再編においては会社間で権利義務を承継させる点に主眼があり、新株や自己株式の割当てはその対価と位置づけられる。この点、未公表の重要事実を利用して上場株券等の売買を行う点に主眼があり、そのことにより利益をあげる典型的なインサイダー取引とは性質が異なると考えられる。

        また、組織再編の局面に限定して検討する限り、仮にその対価に関し不正があったとしても当事者間における損害賠償等の問題であって、有価証券の売買等を行う市場取引とは関係性が高いとは考えられない。このため、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼を確保することを目的としたインサイダー取引規制の対象とする必要性も必ずしも高くないと考えられる。

        また、組織再編においては、通常、当事者間におけるデュー・デリジェンスのプロセスにおいて、会社の事業や資産負債の状況について精査されるなど、自己株式の価値が慎重に吟味されることが一般的と考えられること、さらに、組織再編は原則として株主によるチェックを経て実施されることも踏まえると、未公表の重要事実を利用した不公正な取引が行われる蓋然性は類型的に低いと考えられる。

      • (2)規制対象の見直し

        上述の組織再編の対価に関する特徴を踏まえると、合併、会社分割、株式交換及び事業譲渡を行う際に、その対価として行う自己株式の交付及び交付された自己株式の取得については、新株発行を行う場合と同様に、インサイダー取引規制を適用しないこととすることが適当と考えられる。

        なお、当ワーキング・グループでは、組織再編の局面に限定してその特性等に着目した検討を行ったものであり、組織再編以外も含め、一般に新株発行と自己株式の交付に係るインサイダー取引規制の適用関係をどのように整理するかについては、その性質や利用実態の異同、他の規制との関係等を踏まえながら引き続き検討されるべき課題である。

  • III .発行者以外の者が行う公開買付けに関する公表措置

    • 1.はじめに

      現行の公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制では、公開買付け等事実の公表措置として、

      • マル1公開買付開始公告や公開買付届出書の公衆縦覧等がされたこと

      • マル2公開買付け等事実を2以上の報道機関に公開し、12時間が経過したこと

      • マル3上場会社等が、金融商品取引所の規則で定めるところにより、公開買付け等事実を金融商品取引所に通知し、当該金融商品取引所において公衆縦覧に供されたこと

      の3つの方法が定められている(金商法第167条第4項、金商法施行令第30条)。

      このうち、マル3の方法の利用は、発行者による上場株券等の公開買付けの場合に限定されており、発行者以外の者による上場株券等の公開買付け(以下「他社株TOB」という。)やこれに準ずる買集め行為に関する公表方法として認められていない。これは、他社株TOB等の場合には、上場会社等以外の者が公開買付者等となる場合があることを踏まえたものと考えられる。

    • 2.現行制度の問題点

      他社株TOBにおいて、上場会社が公開買付者又は公開買付対象者となる場合、実務上、当該上場会社は金融商品取引所の適時開示ルールに基づき、TOB開始(公開買付届出書提出)前日以前にTDnet(適時開示情報伝達システム)により、その決定事実又は賛同表明を公表することが一般的とされている。

      しかしながら、上述のとおり、この公表は、インサイダー取引規制上の公表措置に該当しないため、当該上場会社は、当該公表後であってもアナリスト等へ説明することができず(注)、かえって会社の情報開示を妨げているとの指摘がある。

      また、実務上、インサイダー取引規制における公表措置の検討に当たっては、金融商品取引所における適時開示制度との整合性の確保が大切であるとの指摘もあった。

      (注)仮に当該上場会社がアナリスト等へ説明を行った場合、当該アナリスト等は「第一次情報受領者」として、インサイダー取引規制に服することとなる。

    • 3.上場会社による他社株TOBについて

      公開買付者が上場会社である場合には、金融商品取引所の規則に基づき、当該金融商品取引所へ公開買付け等事実を通知することができるため、これを公表措置として認めることが適当である。

      なお、インサイダー取引規制に関する公表措置は、当事者が利用可能な手段・方法で行うものであり、公開買付者が上場会社である場合と上場会社以外の者である場合で公表措置の利用範囲が異なることはやむを得ない。

    • 4.上場会社以外の者による他社株TOBについて

      上場会社以外の者が他社株TOBを行おうとする場合には、上場会社の場合と異なり、その者自身が金融商品取引所の規則に基づいて当該金融商品取引所に通知をすることはできない。

      ただし、当該上場会社以外の者は、公開買付対象となる上場会社との合意の下、当該上場会社に、金融商品取引所へ両者の連名による通知をさせることが考えられる。

      この場合、通知を受ける金融商品取引所は、当該通知内容について当該上場会社を通じ一定の管理を行うこととなるため、公表内容の正確性は基本的に確保されるものと考えられる。(なお、仮に金融商品取引所に対し、公開買付者の決定内容と異なる虚偽の通知が行われた場合には、当該決定内容が公表されていないため、引き続きインサイダー取引規制に服することとなる。その態様によっては風説の流布等に該当する場合もあり得ると考えられる。)

      これらを踏まえると、上場会社以外の者による他社株TOBについても、上述のような上場会社を通じた金融商品取引所への連名の通知・公衆縦覧がなされる場合には、これをインサイダー取引規制に関する公表措置として認めることが適当である。

      なお、現行のインサイダー取引規制においても、法定開示書類の公衆縦覧や報道機関への公開など、公表方法の選択が可能であり、本件について特に公表方法の相違を利用した不適切な行為が行われるおそれは必ずしも高くないと考えられる。

    なお、以上の他社株TOBに関する公表措置の見直しについては、公開買付けに準ずる買集め行為に係る公表措置としても同様の見直しを行うことが適当である。


以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、今、読み上げていただきました報告(案)につきまして、皆様方からご質問やご意見をいただきたいと思います。どなたからでも、どの点でも結構でございますので、よろしくお願いいたします。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

今までの議論を適切に反映していただいていると思います。これで問題ないと思います。特に5ページの収益依存度水準80%につきましては、若干不安があったので、いわゆる上場持株会社を全部当たってみましたが、これで、おそらくは当分の間、大丈夫だと思いますので、この水準で構わないと思います。

それから、7ページの承継資産の上場株券の割合20%につきましても、これでやむを得ないと存じます。

また、本質的にはやはり連結ベースで考えていただきたいということに変わりはございません。4ページでございますが、投資者の意識の変化等を踏まえながら将来的には見直すということでありますが、今後は企業会計審議会で行われる議論になるかと思いますが、単体財務諸表の開示の方法が、かなり変わってくると思われますので、その際には、もう一度、こちらでご議論願いたいと存じます。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。田中委員、どうぞ。

○田中委員

今までの議論をよくまとめられた、いい報告(案)だと思います。

3番目の他社株TOBに関しましては、現状の問題点をよく認識していただいており、それに対する適切な対応がとられたと思います。ありがとうございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。静委員、どうぞ。

○静委員

2点ほど申し上げたいと思います。

まず、全般の話ですが、今回のワーキング・グループでは、組織再編のようなテクニカルなテーマもかなりあったのですが、基本的な考え方にかかわるテーマもあったと思います。特に4ページの、軽微基準等の連結化では、非常に難しい問題にチャレンジされたと思います。このワーキング・グループの中でも、いろいろな議論がありましたし、正反対の意見もあったと思いますけれども、そのおかげで議論も深まりまして、当初の想定よりも踏み込んだ改善ができたと、前向きに評価をしたいと思います。将来の本格的な検討に期待をしたいということを、1つ目として申し上げたいと思います。

もう1点は、11ページのあたりの他社株TOB関係でございます。前回、私から、法令化に当たっては、取引所の実務ですとか、報道機関の実務に配慮した整理をしていただきたいということをお願いしたわけでございますけれども、その部分にも大変よく配慮された案を考えていただいたと思います。事務局のご努力に敬意を表したいと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかに、いかがでしょうか。ご質問、ご意見等、ほかにございませんでしょうか。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

2度目となりまして恐縮です。報告(案)の中身についてではなくて、今後の進め方についてでございます。おそらく、この報告(案)を反映するための、金商法の改正が必要になる部分もあるかと思いますが、法改正まで至らなくても、解決できる部分があると思います。当然のことながら、府令や省令の改正は、法改正に合わせて行うのが、通常なのですが、別々に考えられるところもあるとすれば、法改正を待たずに、できるところは進めていただければありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますか。せっかくお集まりいただいているのですが…。小林委員、どうぞ。

○小林委員

前回、私から、他社株TOBにつきまして、実務的な観点から感じる点を少し述べさせていただいたところでございますが、この報告(案)につきましては、実務的な点についてもご配慮を大変頂戴したと思っておりますので、大変ありがとうございますということでお礼を申し上げたいと存じます。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

何か蛇足になりそうな発言ですけれども、全体として、意見としては、今まで申し上げてきたとおりです。収益依存度の基準として80%というところがありますけれども、これはほかの法制と見比べたときに、基準なり、あるいは比較対象になるものが必ずしもありません。金商法の体系で言えば、10%という基準がありまして、これもどこまで立法事実に基づいている基準なのかという議論はあるとは思いますけれども、1つの基準にされてきたことについて、少し違った数字になったのかなと私は思っております。

ただ、出していただいた資料の統計を見ますと、大きく言って、いわゆる純粋持株会社に近い類型と、それから、事業会社がそのまま親会社になっていて下にそのほかの子会社があるような類型と、かなり両方に、きれいに分かれていたと認識いたしましたので、こういう数字というのもあり得るかなということで、さらに法制化されるときには、きちんとした検討が必要なのかなと思いました。

あと、それぞれの論点について、法律事項と、政令、省令の分類といいますか、どういうレベルで対応するのか、事務局でお考えがもしあれば、方向性を教えていただけるとありがたいです。

以上です。

○神田座長

ありがとうございます。方向性というか、何が法律事項で、法令改正が必要かということについて、事務局からご発言があればお願いします。

○増田市場機能強化室長

はい。現在、検討しておりますところで申し上げますと、1番目の純粋持株会社の関係につきましては、府令改正を考えてございます。

それから、2番目の組織再編に係る部分の見直しにつきましては、法律改正を考えさせていただきたいと思っております。

最後の3番目の他社株TOBにつきましては、現在、政令改正を検討したいと考えてございます。

以上でございます。

○神田座長

よろしいでしょうか、以上のようなことですけれども。

○上柳委員

ありがとうございました。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

そうしましたら、本日も貴重なご指摘を幾つかいただきまして、大変ありがとうございました。

お手元の報告(案)につきましては、皆様方からご賛同いただいたということかと思いますので、これで取りまとめをしたいと思います。もう一度、事務局と私でてにをはを確認させていただきたいと思いますので、そこの作業はご一任をいただいて、その上で、公表ということにさせていただきたいと思います。その前に、てにをはを確認させていただきましたものを皆様方に内容を確認していただき、その後に公表をさせていただくということにし、さらに年明け以降に開催が予定されております、金融審議会の総会に報告をさせていただくことにさせていただきたいと思います。

以上のような手順で進めさせていただいて、取りまとめ、公表、そして、総会への報告に進みたいと思いますけれども、ご了解いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○神田座長

どうもありがとうございます。

それでは、以上をもちまして、このワーキング・グループの審議は一段落ということになります。事務局からごあいさつをいただけるということですので、よろしくお願いします。

○森本総務企画局長

総務企画局長の森本でございます。ただいまワーキング・グループの報告をおおむね取りまとめていただきまして、大変ありがとうございます。

今回、審議をお願いいたしましたインサイダー取引規制に係る検討項目というのは、私、インサイダー取引規制ができたときに、ちょうど証券局の流通市場課におって、直接、担当していたわけではないのですが、過程を知っている者としては、我が国のインサイダー取引規制というのは、やや特有の構造がとられておりまして、これをどう評価するかというのは、なかなか難しい論点だと思うのですが、そういう構造のもとで、これまでいろいろな積み重ねがなされてきて、しかし、一方で、グループ経営の進展でありますとか、組織再編がさまざまな手法でなされる、あるいはTOBが活発に行われるといった新しい状況に適応していかなければいけないということで、大変難しい検討をお願いしたと考えております。

そうした中で、皆様の、今申し上げましたような制度的な制約も十分ご配慮いただいた上で、理論面と現実面をよく両方お考えいただいた、大変いい結論をいただいたと考えております。

また、なかなか割り切りにくいところもあったと思いますが、数字という形で類型化も示していただきまして、我々としては、より現実に合った、しかも運用しやすい制度になったのではないかと考えております。

今後は、皆様にお示しいただいた方向性に沿って制度化を、阿部委員のご指摘もありますが、なるべく可能な範囲で早めに進めていきたいと考えておりますので、引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。これまで、本当にありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

このワーキング・グループは、初回の会合が本年の7月8日でございまして、それ以来、本日まで5回の会合を重ねてきたということになります。一応、与えられた問題ないし課題に対する答えは、ワーキング・グループとしては出すことができたと思いますので、本日、そういう意味での区切りを迎えることができました。言うまでもなく、これはメンバーの皆様方の大変活発なご議論、それから、建設的、前向きなご議論の賜物でございまして、私からも、厚く御礼申し上げます。

また、これに懲りずにといいますか、これで終わりではございませんので、いろいろな場で、また、いろいろな点につきまして、引き続き、皆様方にご意見を伺い、ご指導をいただきたいと思いますので、どうか引き続きよろしくお願いいたします。

それでは、本日は以上をもちまして終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線3607、2622)

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