金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    平成26年10月29日(水曜日)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

予定の時間になりましたので、決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ第3回会合を開催いたします。皆様ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

それではまず、前回までの会合に欠席された委員と、本日の参考人のご紹介を事務局からお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

金融庁信用制度参事官の佐藤でございます。それではまず、前回までの会合にご欠席された委員の方をご紹介申し上げます。

ちょうどあちらのほう、滝島委員と長楽委員の隣にお座りになっております田邊委員でございます。

【田邊委員】

三菱商事の田邊です。よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

また、本日は参考人といたしまして、日本銀行より臼井智博様、三菱東京UFJ銀行より、前回もご出席いただきました森剛敏様、また蔵納淳一様にご出席をいただいております。

また、向かって、私の右手のほうでございますが、麗澤大学の中島真志様。

【中島参考人】

中島です。よろしくお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

そのお隣、デロイトトーマツコンサルティングの伊藤薫様。

【伊藤参考人】

伊藤でございます。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

参考人の皆様には、後ほどご説明をいただく予定となっております。

私からは以上でございます。

【岩原座長】

次に、前回皆様からいただきましたご質問について、柏木委員からご説明をいただけるということでございますので、お願いいたします。

【柏木委員】

三菱東京UFJ銀行の柏木でございます。前回のスタディ・グループの自由討議の中で、日本国内における外貨プーリングに関する規制と、それを踏まえた統括会社設置場所の動向についてご質問をいただきましたので、口頭で恐縮でございますが、お答え申し上げます。

まず、規制に関しましては、日本国内で外貨によるプーリングを行うことについて、外貨であるという理由での規制は特段ないとの認識でございます。個別行のお話になりますが、私ども三菱東京UFJ銀行でも、日本国内で外貨プーリングのサービスをご提供してございます。ただし、米ドルやユーロ等の国際的に流通している通貨以外の通貨に関しましては、対象通貨国側の規制や、東京市場における資金のアベイラビリティーなどの問題から、実現できない場合が考えられるとは思います。

次に、統括会社をどこに設置するかに関しては、個別企業様の状況により異なると思いますが、一般には、まず、今申し上げました対象となる通貨のアベイラビリティーといった、通貨ごとのマザーマーケットがどこかという観点がございます。それから、各国の法制や、特に預金利子にかかわる源泉税などの税制、それからオフィスを設置することのコストといった各国インフラの観点があると思います。加えて、自社の各地域子会社がグローバル展開の中のどこにあるかといった状況ですとか、時差等を加味した管理上の観点も考慮して決めていると思われます。

以上、簡単でございますが、ご回答させていただきます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。後ほどまとめてご質問、ご審議いただく時間を予定しておりますが、ただいまのご質問につき、今ここでご質問されたいということがあればお願いいたします。よろしいですか。

それでは、議事に移らせていただきます。

本日は、まず播本オブザーバーから、我が国の決済システムについてご説明いただきます。続いて中島参考人から、我が国の決済システムの課題について、伊藤参考人から、国際競争と決済インフラ改革の課題について、それぞれお話をいただき、その後、一括して自由討議を行います。本日の議事はこのような流れで進めたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、播本オブザーバーから、時間の関係もございますので、恐縮ですが15分程度でお話をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【播本オブザーバー】

日本銀行の播本でございます。私からは、我が国の決済システムの概要と潮流というタイトルで、資料1に沿ってお話ししたいと思います。これまでの会合では資金決済に関するご議論が多かったように思いますので、少し資金決済にウエートを置いてお話しさせていただきます。

まず1ページでございます。資金決済に用いられる、いわゆるお金の主要なものには、銀行券や貨幣といった現金、それから個人や企業が金融機関に保有している預金、また金融機関が日本銀行に保有している当座預金といったようなものがございます。このグラフは日本銀行のマネタリーベースからとったものでございまして、銀行預金には一部、定期預金なども含まれており、決済に用いられる要求払い預金だけではございませんけれども、それぞれのボリュームの大体のイメージはつかんでいただけるのではないかと思います。ご覧のように、国や日本銀行が発行する現金や日本銀行当座預金は、重要な、アンカー的な存在ではありますけれども、これらとの対比で銀行預金のボリュームは大変大きいものとなっております。

次に、2ページの左側のグラフでは、銀行預金を用いた決済サービスのうち、主なものの取り扱い金額の推移を示しております。先般、参考人のご説明でも、クレジットカードや電子マネーの利用が増加しているといったご説明がございましたけれども、取り扱い金額ベースで見ましても、これらの伸びが見てとれます。他方、銀行振り込みを見ますと、この支払い手段としての利用につきましては、例えばインターネットショッピングではクレジットカードが主に利用されているとか、公共料金の支払いについてもクレジットカードの利用が増えているといった指摘もございますけれども、取り扱い金額ベースで見ますと、ご覧のように趨勢としては堅調に推移しております。

また近年、情報技術の進歩を取り入れましたさまざまな新しい決済関連のサービスが登場しておりますけれども、決済に至るまでのプロセスに分解してみますと、右側に掲げたイメージ図にもありますように、例えばスマホを用いたクレジットカード決済ですとか、新たな資金移動業者の登場など、特にアクセスチャネルや支払い手段のレベルで、ノンバンクが提供するサービスを中心にイノベーションが進んでいると言えるかと思います。

ただ、例えばスマホを用いたクレジットカード決済ですとか、電子マネーによる支払いにおきましても、企業が売上金を収納する際には、最終的には、その企業の銀行口座への入金のために、インフラとして振り込みが用いられるという面もございます。さらに、決済手段としての銀行預金という意味では、さまざまな支払い手段によって何らかの形で利用されております。こうしたことを踏まえますと、我が国決済の高度化といったことについて考える際には、こうした銀行預金の決済機能をいかに活用していくかといったことも重要な観点の1つと言えるかと思います。

続きまして、3ページから4ページにかけましては、大変基礎的なことにはなりますけれども、銀行預金を用いた決済の仕組みにつきまして、図を用いて、簡単に触れさせていただければと思います。

まず、銀行振り込みでございます。ここでは、全国銀行内国為替制度のもとで行われる他行間振り込みの決済につきまして、A銀行に口座を持つ支払人が、B銀行に口座を持つ受取人宛ての振り込みを依頼したというケースを図で示しております。

依頼を受けましたA銀行は、支払人の口座から資金を引き落とした上で、B銀行に、全銀システムを経由してデータを送信いたしまして、これを受けたB銀行は、立てかえ払いの形で、ほぼ即時に受取人の口座に入金いたします。こうしてA銀行はB銀行に対して支払い債務を負うことになりますけれども、全銀ネットでは、参加金融機関に生じた債権債務を当日中に引き受けまして、全てをネッティングすることにより、金融機関ごとの受け払い差額、勝ち負け尻を算出して、日銀ネットに通知いたします。これを受けて日銀ネットでは、負け銀行、ここでいうとA銀行でございますけれども、その当座預金口座から全銀ネット口座への振替、また全銀ネット口座から勝ち銀行、ここでいうB銀行への振替を行い、決済を終了させるといったフローになります。

続きまして4ページは、日本円の外国送金でございます。我が国では外国為替円決済制度のもとで行われております。ここでは、左上に示した海外にいる支払人が、自らが口座を保有するA銀行の海外拠点に対しまして、右側に示したB銀行の海外拠点に口座を保有する受取人X、あるいは、その下にありますB銀行の日本拠点に口座を保有する受取人Yに宛てて円の送金を依頼するケースを図示しております。

支払人から依頼を受けましたA銀行の海外拠点は、支払人の口座から円資金相当のドルを引き落としまして、これを受けて日本の拠点では、日本の拠点にある海外拠点の口座から相当額を引き落とした上で、日銀ネットを通じてB銀行へ、日銀当座預金の振替を行います。その後、B銀行におきまして、受取人が国内拠点に口座を持っていれば、そのYの口座に入金いたしますし、海外の受取人Xの場合には、国内拠点にある海外拠点の口座に入金し、これを受けて海外拠点が受取人Xの口座に入金するといった流れになります。

なお、この図では、海外と国内の銀行は同一の銀行の海外拠点と国内拠点としておりますけれども、海外の銀行がコルレス先である日本所在の銀行に決済を依頼するといったことも広範に行われております。

この他にも、資金あるいは証券の決済にはさまざまな仕組みがございまして、これを次の5ページに、簡単にまとめた図をお示ししています。

ご覧のように、図の左側の取引の約定や照合、また中ほどの清算、右側の決済といった一連のプロセスが、それぞれ多様な当事者により担われております。中でも資金、証券の清算機関でございますとか、資金決済機関、証券の振替機関といった主体は、決済のインフラとして重要な機能を果たしております。時間の制約もございまして、詳しいご説明は割愛させていただければと思いますけれども、資金決済につきましては、先ほど出てまいりました資金清算機関としての全銀ネット、また決済機関としての日銀ネット当座預金系がございます。このほか手形、小切手につきましては、各地の手形交換制度がございます。また、下のほうに参りまして、証券取引やデリバティブ取引の清算機関といたしましては、日本証券クリアリング機構、ほふりクリアリング、東京金融取引所がございます。また、証券の決済につきましては、図の右下でございますけれども、日本国債の振替決済を行う日銀ネット国債系のほか、株式、社債等の証券の振替を行う証券保管振替機構がございます。

なお、日銀ネットは、金融機関や各種インフラの間の資金、証券の決済を行う立場にございますけれども、ご覧のように、そうした主体などを通じまして、消費者、企業に奉仕する立場でもございます。したがいまして、私どもが、自らのシステムやサービスをどのように向上させていくかといったことを考える上では、こうしたエンドユーザーの決済に対するニーズにも強い関心を持っております。

ここで、6ページに行かせていただきまして、我が国の決済システムのこれまでの発展の経緯について、若干振り返らせていただければと思います。

決済には安全性が求められるということは言うまでもございませんけれども、いかに安全であっても使いにくいシステムというのは、決済がそこから逃げていってしまうために、かえって金融システムの安定を損なうといった考え方から、効率性あるいは利便性もまた重要な要素と考えられてまいりました。この点、1970年代から80年代にかけましては、金融の自由化、国際化、また日本国債の発行の増加などを背景といたしまして、従来の手作業による方法では大量の決済を処理することが困難となりましたために、金融機関において決済処理のオンライン化が進展し、全銀システムや日銀ネットが稼動を開始したのもこの頃でございます。これらは安全性の向上に資する面はもちろんございますけれども、効率性の飛躍的な向上に貢献したと言えます。

続く90年代から2000年代は、金融システム不安などを背景といたしまして、オンラインを活用したさまざまな決済リスク削減策が実現いたしました。例えば、右側にございますような、国債と資金の同時受け払いを可能とする、いわゆるDVP化でございますとか、1億円以上の大口取引の即時グロス決済化、RTGS化がございます。また、CLS銀行の設立を通じた外国為替の同時決済化などが導入されたのもこの時期でございます。さらに、先般の国際金融危機を契機に決済インフラに対する国際基準が見直されるなど、国際規制の強化も図られております。安全性といいましてもさまざまな意味合いがございますけれども、この時期は決済リスクの削減という意味での安全性強化に向けた取り組みに重点が置かれていた時期と言えるのではないかと思います。

そこで、続く足元の状況でございますけれども、あえて一言で申し上げますと、一段のグローバル化ですとかIT化の進展を受けまして、決済リスクの削減だけではなく、効率性あるいはユーザー利便の向上といったことにも重点を置く取り組みが見られていると言えるのではないかと思います。例えばASEAN+3におきまして、域内決済システムの相互接続に向けた検討が始まっておりますけれども、これは決済リスクを削減するという面があるのはもちろんのことでございますが、クロスボーダー取引の円滑性向上を通じまして、域内市場を活性化することを主眼とするものでもございます。また、全銀協と全銀ネットにおかれまして、国民生活の利便性向上等の観点から、全銀システムのあり方につき検討を進められております。さらに、後ほど触れさせていただきますけれども、新日銀ネットの全面稼動に向けた作業が行われていますほか、その稼動時間の延長も見込まれております。

7ページに参りまして、我が国の今後の決済の高度化の方向性も、こうした経済活動のグローバル化、IT化に伴う企業や家計のニーズの多様化といった環境変化に応えていくということが出発点になろうかと思います。

まずグローバル化につきましては、言うまでもございませんけれども、我が国の企業の海外進出や金融機関の海外での取引の増加に伴いまして、例えば現地通貨の調達ですとか国境を越えた送金、あるいは担保の差し入れを円滑に行いたいといったニーズが現れております。これへの対応として、例えば決済システムの稼動時間を拡大することや決済システムへのアクセスのグローバル化といったことが挙げられるところでございます。また、IT化に伴いまして、例えば企業におきましてはITを利用してSTP化を推進したいですとか、消費者が時間や曜日を問わずお金の受け払いを安全、便利に行いたいといったようなニーズが出てきております。これらに関しましては、先ほども申し上げました、全銀システムのあり方に関する全銀協、全銀ネットのご検討の中で、全銀システムの稼動時間拡大、また金融EDIの活用につきまして、産業界とも連携されて検討を進められているところでございます。

次に8ページでございますけれども、このように我が国の決済がグローバル化、IT化への対応を求められている中にありまして、日本銀行が提供する金融機関に向けた決済サービスももちろん、そうしたニーズに対応していく必要を認識しております。この点、日本銀行の決済サービスに利用するシステム、今まで日銀ネットというふうに申し上げてまいりましたけれども、こちらは稼動開始から20年以上を経まして、従来のシステム基盤を維持したままでは最新の技術進歩を円滑に取り入れることが困難になり、また、かえって費用もかさむといったような課題が生じておりました。そこで現在、新日銀ネットとして、新しいシステムの構築作業を行っております。その一部は本年1月から稼動しておりますけれども、金融機関間の決済など主要部分を含めた全面的な稼動開始は、来年10月を候補といたしております。

新日銀ネットの開発に際しての基本コンセプトは、主に3つございます。1つ目は最新の情報処理技術を採用すること、2つ目は変化に対して柔軟性の高いシステムを構築すること、3つ目はアクセス利便性を向上することでございます。最後のアクセス利便性の向上は、特に金融取引のグローバル化などへの対応を主眼とするものでございます。具体的には、XML電文を採用し、また国際標準であるISO20022に対応することなどを通じまして、内外の決済システムや金融機関との接続性を改善することでございます。また、稼動時間の大幅な拡大が可能となるシステム基盤を採用することを内容としております。

日本銀行としましては、この新日銀ネットの機能を活用しながら、金融機関に対する中央銀行としての決済サービスの高度化を図っていきたいと考えておりますし、利用先の金融機関におかれましても、こうした機能、これを利用した日本銀行のサービスを有効に活用していただきたいと考えております。例えば日銀ネットの稼動時間が拡大することによりまして、海外の主要市場の決済時間帯とのオーバーラップが広がり、金融機関による日本円や日本国債のクロスボーダー取引の決済を夜間の時間帯に行うことも可能となります。日本銀行では、利用先の金融機関や業界団体との協議会におきまして、そうした有効活用の方法について議論を行いまして、その結果を踏まえ、まずはアジア、欧州午前中までのカバーということを念頭に、午後9時までの拡大の方針を決めておりまして、協議会におきましては、中長期的にはさらなる拡大といったことも視野に入れた議論を続けております。また、ASEAN+3の域内の決済システムの相互接続に向けた検討につきましては、日本銀行としては、新日銀ネットの、他の決済システムの接続性改善といった特性を生かしまして、具体的な検討を行っていくことを考えております。

最後になりますが、9ページには、今後の課題を記載させていただいております。今、新日銀ネットについてお話ししましたけれども、決済全体の今後の課題について考える際にも、どのようなサービスを提供するか、また、それを支えるシステムはどうあるべきかといった視点が必要ではないかと思っております。

まず、決済サービスのあり方につきましては、グローバル化、IT化を背景としたエンドユーザーのニーズに対応したサービスを提供していく必要がございますけれども、その際には、さまざまな決済関連サービスの競争を通じまして、イノベーションの促進を図ることが望ましいと考えております。

次に、決済サービスはシステムを通じて提供されるものでございますので、決済を担うインフラや金融機関においては、その実情に応じてシステムを高度化していくといったことも課題となるところでございます。その際は、情報技術革新の成果を生かした効率性、安全性の向上を図るとともに、将来的なニーズの変化にも柔軟に対応できるような基盤の整備を行う必要があるのではないかと思っております。

さらに、決済の高度化といった観点からは、個別の金融機関でございますとか決済のインフラなどの取り組みだけではなく、決済に関与する幅広い当事者の合意形成や標準化を図る必要がございます。例えば金融EDIの利用促進には、産業界、銀行界一体となった取り組みが必要でございますし、クロスボーダー決済の円滑化のための取り組みにおきましても、合意形成や標準化の視点が重要となってまいります。さらに場合によっては、関係当局による制度上の制約の点検、またその除去に向けた取り組みも必要になるかと思います。

この点、決済システムには、いわゆるネットワークの外部性の問題があり、個別の金融機関あるいはインフラにおいては、新しい決済サービスの提供に際して、経営判断のすくみのようなものが生じ得るといったことも言われます。こうしたこともありまして、決済の高度化に向けては、当事者の合意形成や標準化について何らかの公的な後押しが必要な場面もあるかと思います。ただ、そうした公的な関与に際しましては、イノベーションが行われやすい環境を整える、といった視点が重要なのではないかと考えております。

いずれにいたしましても、決済の高度化につきましては、システムの見直しを含めまして相応の期間が必要になりますので、中長期的な視点からの検討が欠かせないと考えております。

以上、駆け足になりまして恐縮でございますが、私からの発言を終わらせていただきます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。後ほどまとめてご質問、ご審議をいただく時間を予定しておりますが、取り急ぎ今ご質問されたいというようなことがございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。後でまとめてということでよろしいでしょうか。

それでは続きまして、中島参考人から、恐縮ですが15分程度でお話をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【中島参考人】

麗澤大学の中島でございます。私は日本銀行に長く勤務いたしまして、その後、BISなどを経て現職ということになっております。本日は、資金決済面での課題、リテール決済の高度化ということでお話をさせていただきます。

前のスクリーンのほうに出ておりますので、そのスライドと手元の資料を半々に見ながら聞いていただければと思います。

リテール決済の高度化に関して、中心的な役割を担っております全銀システムの関連の課題について話をさせていただきますが、今日は主に6つ用意いたしました。国際標準化、金融EDI、国際的なリンク、携帯番号による送金、それから決済時限のマルチサイクル化、ガバナンスの見直しということで、盛りだくさんなので15分にはおさまり切らないかもしれませんが、なるべく手短にやりたいと思います。

まず3ページですが、現在稼働しておりますのは第6次全銀システムでございまして、2011年11月から稼働しております。同システムについては、全銀協から3つの特徴があるということを発表しております。1つ目は、国際化・標準化への対応を行ったということ、2つ目は顧客ニーズへの迅速・柔軟な対応ができるようなシステムにしたということ、それから3つ目は、決済リスクの削減、業務継続体制の強化をしたということで、なかなか画期的な決済システムができたということで、みんな喜んだわけです。ところが現状を見てみますと、このうち目玉になっておりました国際標準化の部分で、XML電文の採用、それからEDI情報の拡充というところが実は全くできておりません、というところから話を始めさせていただきたいと思います。

国際標準化ですけれども、第6次全銀システムができたときは、電文フォーマットにXMLベースのISO20022電文の利用ができるようになったということで、大々的に打ち出したわけです。この点は国際的にも認知されておりまして、海外でも、全銀システムはISO20022に対応済みということで認識されております。ところが実際には、その新メッセージを採用している採用行は1行もないというのが現状であり、事実上は、従来型の電文、国内標準による決済システムになっているということです。つまり、実質的には国際化、標準化への対応というのは全く行われていないという状況でございます。国際標準を入れたけれども、誰も使っていないということです。

では、なぜその新フォーマットの導入が進まないかということなのですけれども、これは、新電文の利用が任意という位置づけになっていることが理由です。つまり、新電文を使ってもいいと、使うことができるというようなたてつけになっているので、参加行は旧フォーマットをそのまま使い続けることに何の支障もないので、なかなか移行が進まないということになっております。現在使われております全銀フォーマットなのですけれども、実は1970年代から使われておりまして、かれこれもう40年以上も前のものになっております。したがって、もはや賞味期限切れの標準ではないかなと思われます。有名なのが、送金人のところが片仮名半角しか使えないという点です。そのほかにもいろいろ、海外との接続性に難があるとか、外資系企業にとってはいろいろ障害があるということが言われております。この点については、後ほどデロイトの伊藤参考人のほうから補足していただけると思います。

したがって、この新旧電文の併用を認めている限りは、なかなかこの新電文への移行は進まないのではないかと思われます。個別行では、これまでどおり旧電文が使えるのであれば、わざわざコストをかけて新電文にする必要はないわけで、インセンティブがまったくないということでございます。したがって、やはり旧電文の利用期限、ここでは「エンド・デイト」と呼んでいますが、このエンド・デイトを設定する必要があるのではないかと思います。利用行にとって、いつまでに新フォーマット対応をすべきかということが示されないと、なかなか移行は進まないのではないでしょうから。

実は、同じような事例が海外にもあります。前回、SEPAについて、この研究会で発表があったと思うのですが、欧州では各国に20以上の全銀システムのような小口の決済システムがありまして、各国がそれぞれ、ばらばらのフォーマットで決済をやっていましたので、これはいけないということで、まずSEPA標準という、ISO20022標準のフォーマットをつくりました。2008年~09年にかけてつくりましたが、利用は任意ということでありましたので、ECBなどが一生懸命導入を働きかけたのですけれども、各銀行での導入は遅々として進まなかったということがございます。

結局、欧州委員会が、ついに業を煮やしまして、EUのレギュレーションを作りまして、法律でこのエンド・デイトを設定いたしました。当初、今年の2月までということでやっていたのですが、どうも間に合いそうもないということで、半年ほど延期されまして、今年の8月1日にエンド・デイトを迎えて、旧スキームが禁止されたということで、めでたくこのSEPAが実現したということになっています。

我が国はどこの状態にあるかというと、ちょうど「導入が任意であったことから、導入は遅々として進まず」と、まさにこの状況にあるわけです。したがって、SEPAの膠着時と全く同じ状況にありますので、法律なのか何なのかわかりませんけれども、やはりエンド・デイトについての何らかの強制力があるものをつくらないと、これから10年たっても20年たっても、現在の旧フォーマットがずっと続けて使われるという状況になるのではないかと思います。

通常、新旧フォーマットが併存するという状況は、コ・エグジスタンスと言いますが、4~5年程度を設けるのが普通でございます。国内でも、ほふりが今年の1月に新しいネットワークを導入いたしましたが、そのときに、旧ネットワーク、古いフォーマットは2018年までということで、5年の猶予期間を置きまして、この間に新しいフォーマットに移行するという方針でやっております。全銀システムの方は、更改サイクルが8年ごとになっていますので、次の第7次全銀がスタートするのが2019年の秋口ということになりますので、この辺が1つの目途になるのかなと考えています。いずれにしても、各銀行でシステム的な対応が必要なだけに、エンド・デイトを早目に示し、ある程度の強制力を持つような形で打ち出して、参加行の対応を促していかないと、全銀システムの国際標準化というものがなかなか進まないのではないかと考えています。

ここまでが国際標準化への対応ということでございます。

2つ目の金融EDI対応ということですけれども、ご存じのようにEDIというのは、「エレクトロニック・データ・インターチェンジ」ということで、送金指図に明細データを添付して送るということです。つまり、請求書番号とか発注番号とか、送られてきた金額の中身を示すデータを一緒に送るというものです。今、企業は、1億円の入金があっても、何の1億円なのかということがわからない状態なので、そこの照合が非常に大変だというふうに伺っております。したがって、EDIを導入するメリットは、銀行にとってメリットがあるというよりは、最終ユーザーであります企業にとって、決済データと請求データを照合するという意味でのメリットが大きいということです。現在は、入金の照合作業がかなり大変なことになっているということを伺っていますので、後ほど牧野委員の方から補足していただければと思います。

このEDIについてスライド10の図で見ますと、左側が現状のEDIなしの状態ということで、買い手のほうから銀行に支払指図が行って、それが、全銀システム経由で相手行に行って、それで入金指図が来るということですけれども、銀行からの入金通知には何の入金かということは全く書いてありません。このため、ほかのデータと突き合わせをするために、手作業でかなり大変な作業が行われている状態でございます。右側が、EDIがある状態ですけれども、今度は、送金の依頼と決済の明細データが一緒に、銀行経由、それから全銀システム経由で相手行に行って、受取り手に行くということですので、受け取った企業では社内システムとの間で自動的なマッチングができて、非常に効率性が上がるものと見られています。

EDIについては、米国が実は進んでおりまして、ACHという、全銀システムにあたるところが90年代から金融EDIのサービスを行っております。今、最大で80万文字の明細データが添付できるようになっております。フォーマットが2つありまして、80文字のファイルを1個だけつけられるというのと、最大9,999個までつけられるものと2つありますが、いずれも着実に利用が拡大してきておりまして、相当企業のニーズが高いものと見られます。実際、スライド12で数字を見ましても、青い棒グラフのほうが1個だけつけられるもので、これが年間で5億個ぐらいです。それから、緑の棒グラフのほうが複数個つけられるものですが、これが12億個ぐらいということで、いずれも、折れ線のほうで見ていただきますと10%から15%ぐらいの高い伸びで毎年きておりまして、相当企業のニーズが高いと見ることができます。米国の企業にこれだけEDI利用のニーズがあって、日本の企業にはニーズがないというのはちょっと考えにくい話なので、日本の企業でも潜在的には相当ニーズがあるのだと思います。ただ、日本ではまだ銀行が、あるいは決済システムが、それに対応できていないので、ニーズが表に出てきていないということではないかと思います。

これがアメリカの状況でございまして、EUにつきましても、先ほど話が出ましたSEPAの中で送金標準を策定しておりまして、その中で140文字の明細データというのを送付できる、あるいは受取ることが金融機関に義務づけられており、8月1日から全金融機関で対応可となっております。アメリカでもう既に進みつつあり、欧州ではこれから進むということで、金融EDIが世界の流れになってきていますので、日本でも早急に対応していったほうがいいのではないかと思われます。

では、全銀システムの対応はどうなっているかということなのですが、先ほど第6次全銀システムのところで申し上げましたが、EDI対応しましたということで華々しく打ち上げたのですけれども、140桁のEDI情報を複数個、大体30個ぐらいつけることが可能になりました。従来はマッチングキー方式ということだったので、20桁しかつけられなかったので、それに比べるとかなり、格段の進歩ということでありました。ところが、EDIの機能は、仕向銀行と被仕向銀行の両方が、XMLベースの新電文を使っていないと、このEDIの電文を送ることができないということになっております。しかし、先ほど見たように新フォーマットの採用行が今ゼロでありますので、EDI対応も全く行われていないという状況になっております。したがって、このEDI対応という意味から見ても、エンド・デイトをつくって、新フォーマットのほうに各銀行が移行するような形にしていかないと、EDI対応は日本の中では進まないということでございます。

もう1つの課題が、実はこのEDI対応は、140桁掛ける複数個というのは、封筒、つまりデータの量を決めただけでございまして、その中身に、手紙をどういうふうに書くかということの標準を決めないといけません。そのEDIのフォーマットというのを決めないと、使われない可能性があるということです。今、EDIフォーマットの国内標準づくりということで一部動きがありますけれども、実はアメリカのACHのほうでは、「STP820」というEDIフォーマットを使っておりまして、これによって先ほどのように相当な数のファイルが送られているということです。これはわずか10項目のみで、顧客名とか請求書番号等しか入っておりません。各業界の特殊事情等を入れていくと、どんどんこの標準が複雑になってしまいますので、なるべくシンプルなフォーマットで、とりあえず照合ができればいいというふうに割り切ってやったほうがいいのではないかなと思います。

ここまでが2つ目の課題でありますEDI対応ということでございます。

3つ目が国際的なリンクの構築ということで、小口決済システム同士が国際的にリンクを作っていくという動きがここにきて出てきております。これを進めているのが「IPFA」という団体でございまして、送金手順を標準化して、ACHをリンクして、クロスボーダー送金、海外向けの送金を効率化しようという動きです。アメリカのFedとドイツのEquensというところがこれまで主導してきております。2009年に構想が発表されて、もう半年後にはこのIPFAというアソシエーション(協会)ができて、構想から1年後の2010年の10月にはアメリカと欧州の間でリンクが構築されて実際の送金が行われたということで、非常にテンポが速く進んだプロジェクトでございます。

現在IPFAには27のメンバーが入っておりまして、プライマリー・メンバーというACHの運営主体とか個別行が17、それから、アフィリエイト・メンバーといいまして、決済協会やシステムを提供するベンダー等が11先、入っています。日本からもNTTデータ経営研究所、富士通が、主に情報収集ということで参加されています。

IPFAでは、小口で、急がない海外送金を、安く、標準化して行うことを目指しています。例えば、3日以内に入金というぐらいのペースの送金を考えています。それについてIPFAがルールとかスタンダードをつくりまして、ポイントは、共通部分に、先ほどから話が出ておりますISO20022という国際標準を使うというところです。従来の海外送金はコルレス関係に基づいて、個別行間で行われるため、どうしても複雑な処理が必要で、コストが割高となっていました。このIPFAのリンクを使いますと、ACHが間に入って、処理が共通化されるということで、安価な海外送金が実現できるということです。

これを図で見たのがスライド20です。左がユーロ圏で、右が米ドル圏といたしますと、左の顧客のほうから自分の銀行に対して送金依頼をすると、それが自国のACHに行きます。ACHとACHの間は先ほどの20022のフォーマットで行って、アメリカのACHからACHのメンバー行に行って、顧客に行くという形になります。この真ん中の四角の部分がIPFが規定するエリアということで、ここを標準化した形で行おうということです。

これをもうちょっと詳しく見たのがスライド21で、左側がEquens、右側がFedACHということですが、送金人が、送金銀行に送金を依頼すると、国内フォーマットでEquensに行きます。Equensはそれを20022にコンバージョン、翻訳してあげます。FedACHは、そのコンバージョンした20022を受け取ったら、それを今度は再コンバージョンということで、国内のフォーマットに変えてあげます。それを国内の銀行に送って、受取人に行きます。こうした仕組みで、共通言語の部分にISO20022を使うことができるようになったことで、いろいろなACHの間のリンクが可能になったということです。

実は、今申し上げたEquensとACHのところはメッセージのフローでございまして、送金の電文がこういう形で行き来します。その裏では、お金のやりとりをしないといけないので、そのための「決済エージェント」がおります。Equensの裏にはDZ Bank、それからFedACHの裏にはBNY Mellonと銀行がありまして、それぞれが口座を持ち合って資金の決済をしております。ただし、これまでは小口のものを1件1件やっていたのを、例えば1日分を1,000件とか、まとめてできますので、効率化された形で資金決済も行われるということです。

FedとEquensのリンクでできることは、アメリカの銀行からは欧州の22カ国に、米ドルやユーロの通貨を送ることができます。逆に欧州の銀行は、アメリカの全ての金融機関にドル建ての送金ができます。こういう形で、対象通貨について割安な送金ができるようになっています。IPFAはこれから対象を拡大していく予定であり、近々イギリスとカナダのリンクが予定されておりますし、その後も南アメリカとかブラジル、オーストラリア、インド、シンガポールといったところにどんどんリンクを拡大していく予定になっております。

問題は、日本がこういうところに入らなくていいのかという話なのですけれども、スライド25は、もし入ったらという、実現したらの図なのですが、このうちEquensとFedACHの間にはもう既にリンクができているわけです。ここにもし全銀システムが入って、Equensとリンクをつなぎ、FedACHとリンクを結べば、ユーロとドルと円という3大通貨の海外送金が相互間で、安価に行えることになるということになります。それから、全銀システムは、もしアジアのACHとも結べば、アジアの送金のハブとなっていくことも可能ということでございます。

リンクのために必要となるのは、コンバージョンの機能です。国内フォーマットとISO20022のコンバージョンのところが鍵になるわけですが、第6次全銀システムでは旧フォーマットと新フォーマットが両方使えるようにしましたので、実はその間の相互交換機能を既に持っております。したがって、これのコンバージョン機能の部分はあまり大きな対応は必要ないのではないかと見ております。もし国際的なリンクができれば、銀行にとっても小口の、手間ばかりかかるようなところが効率化されるということもありますし、ユーザーにとっては手数料の引き下げになります。特に海外送金は手数料が割高だという批判が多いものですから、この辺が銀行として対応できるということではないかと思います。繰り返しになりますが、このフォーマットのコンバージョン機能が鍵なのですが、この機能が既にあるということであれば、あまり大きな対応をせずに、大きなメリットが見込めるのではないかということでございます。

それから4番目は、携帯番号による送金です。これがイギリスで最近始まりまして、英国決済協議会というところがプロジェクトを進めてきましたが、一言で言うと、携帯番号を使って相手に送金することができるということです。相手の口座番号がわからなくても、携帯番号がわかっていれば、個人間で送金ができるということです。裏では、口座番号の代理(プロクシー)として携帯番号を使うというような仕組みになっておりまして、中央には両方のひもづけの対応関係を登録した中央データベースがつくられています。イギリスの大手9行が既に参加しております。

このサービスは、Paymというサービスで、「ペイエム」と読みます。今年の4月末からサービスが開始されておりまして、100日後に100万人が既に登録しております。個人間の送金ですので1日の送金の上限が250ポンドということで、4万円程度になっています。利用は、まず準備段階として、取引銀行に自分の携帯番号を登録して、それからモバイルのアプリケーションをダウンロードしておきます。実際に送金するときは、そのアプリケーションからログインして、送金金額を入力して、自分の登録している住所録から相手先の携帯番号を選んで、「Send」という送金ボタンを押すと、送金ができるということです。

全体のイメージを見たのがスライド31であり、個人から銀行に送るときは、携帯番号で送金の相手先を指定します。中央に、携帯番号と口座番号のひもづけのデータベースがあって、そこで読みかえをします。そこから先は普通のインターバンクの送金として決済が行われる仕組みになっておりまして、当初の銀行への送金指図の部分だけ、ある意味で携帯番号がかわりに使われているというような形になっております。

モバイルペイメントは、実はその前にスウェーデンが導入しておりまして、「Swish」という仕組みを入れております、2012年に、大手6行が協力して導入しています。スライド32の右側が画面なのですが、一番上が相手の携帯番号です。真ん中に金額が入って、下にメッセージが入れられます。そうすると、「先日の会費です」とか「ありがとう」とか、そういうメッセージつきで相手に送れるという仕組みになっております。こちらも1年で50万人以上がアクティブに利用ということになっていまして、スウェーデンは人口が960万人なので、そのうち50万人というと5%以上ということで、日本で言えば600万人以上が使っているというようなイメージのサービスになっております。

実は、こうした欧州の動きを見て、アメリカが動き出しておりまして、昨年Fedが、決済システムの改善に向けたコンサルテーションペーパーというのを出しております。この中にはいろいろ入っているのですが、最重要ポイントは、「ユビキタス・ニア・リアルタイム・ペイメント」というものを導入しましょうと言っています。これはどういうことかというと、「ユビキタス」ということで、誰でも利用できるサービスにします。また「ニア・リアルタイム」ですから、リアルタイムに近い送金で、しかも受け手の銀行口座を知らなくても送金できるというようなことが書いてありまして、これは、ほとんどPaymのイメージに近いものと思われます。Paymとファスターペイメントを合わせたようなものをつくろうとしているのかなという感じがいたしました。

実はアメリカでは既にこういうサービスがありまして、「clearXchange」と言いますが、携帯とかEメールのアドレスで送金ができるというサービスがあります。ただし、これはバンカメ、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴの3行の顧客だけの間ではできるということになっていまして、実際にはどうもあまり使われていないようです。今回Fedのペーパーで、わざわざ「ユビキタス」というふうに謳ったのは、こういう一部行だけのサービスということではなくて、米国民が誰でも使えるサービスを作るよということを意図したものと思われます。

翻って、我が国の現状をみますと、ドコモの携帯送金とか、じぶん銀行の携帯番号送金とか、実は一部の銀行とか携帯同士であれば、すでに同じようなことができることになっております。ただし、先ほど見たようにユビキタスではないのです。一部の、特定の利用者しか使えません。それから、携帯業者中心の対応になっています。海外の動きは、銀行部門が業界として携帯番号を使った送金を可能にしようということなので、ちょっとアプローチが違っています。

このモバイルペイメントができるようになると、我々個人の生活は相当便利になるのではないかなと思われます。特に一番使えるのが、複数の人間で食事をしたり飲み会をしたときに、後で割り勘というのをしないといけないのですが、なかなか端数の処理が難しいとか、1万円しか持っていないよとかいう人がいたりして、いろいろ大変です。モバイルペイメントを使うと、割り算をして、例えば6,520円とかというのを即時に送るという形で、割り勘が非常に簡単にできるようになります。私なんかも学生と飲み会が多いものですから、非常に便利になるのではないかと期待しています。

こうしたモバイルペイメントは、イギリスが既に対応しており、先ほど見たようにアメリカがこれからやろうとしています。そうなると、日本はではやらないのかという話になると思いますので、今から考えておいたほうがいいのではないでしょうか。

先ほどのFedの小口決済改革についてみると、一番上が今申し上げたユビキタスで迅速な電子決済というものですが、そのほかにもいろいろな項目が入っております。どうも今年の年末ぐらいに、「ロードマップ」(いつまでに何をやるか)が出る予定ですので、このスタディ・グループでも議論を進める上でよくフォローされていくとよろしいのではないかと思われます。

それから、決済時限のマルチサイクル化ということですが、全銀システムは現在、小口について、1日に1回のネット決済ということを夕方にやっておりますが、最近、世界的にはこれをさらに上回る動きになっていまして、小口決済をマルチサイクルで決済していこうという動きになっております。イギリスのファスターペイメントは1日に3回、ユーロ圏のSTEP2は1日に5回、それから、今年できましたシンガポールのFASTは1日に2回、オーストラリアもそちらの方向になっています。どうも最近できたものはいずれもマルチ決済ということになっていまして、1日に1回の時点決済が時代遅れになりつつあるのかなという感じがいたします。もちろん小口なのだから1日1回でいいじゃないかという議論もあると思いますけれども、海外では小口も含めて、リスクを削減するために2回とか3回とか5回といったようになっていますということを申し上げておきたいと思います。

最後に、全銀ネットのガバナンスという話なのですが、これまでいろいろ申し述べたように、いろいろな課題があるように思うのですが、なかなか改革というものが進む形になっておりません。課題としては、私は2つあると思うのですが、1つは組織形態の問題ということで、「資金決済法」のときに全銀ネットという形で独立した組織になったのですが、ちょっと改革が中途半端かなという感じです。もう1つがガバナンスの問題で、ちょっとボードメンバーの見直しが必要ではないかなということです。

全銀ネットの組織形態ですけれども、改革前は、スライド39の一番左のような形になっておりまして、全銀協の活動の中で事務委員会というところが方針を決めて、事務方が運営するという形でやっておりました。この体制では、全銀協の中では1行が1票を持つような体制になっておりますので、大手行も1票、地方金融機関も1票ということで、全体の合意を得るまでに時間がかかるということが指摘されています。それからもう1つは、会長行が輪番制でございまして、毎年変わります。このため、事務委員会の責任者も毎年変わるために、中長期的な改革や戦略的な意思決定が行いにくいということがあります。

以前にこういう金融審議会のワーキンググループで議論したときに、こういう体制はまずいのではないかという話になりまして、「資金決済法」をつくるときに「資金清算機関」という規定を入れていただきまして、独立した機関にすべきだという法律をつくりました。その結果、現行の「全銀ネット」という組織ができたのですけれども、これが全銀協の100%子会社みたいな形になっておりまして、結果的には全銀協の影響を100%受け、事務委員会の影響・指揮下にあってやっているということで、一応組織としてはできたのですが、実質はあまり従来と変わらない状況にあります。本来は、スライド39の右側のような、各銀行が利用量に応じて株主になって、その代表が、大口ユーザーを中心にボードを構成していくような形がいいのではないかなと思います。これが組織形態の問題でございます。

もう1つがガバナンスという話なのですけれども、全銀ネットは、先ほど申し上げたように資金清算機関として業務を行っています。実は証券のほうでも証券清算機関というのがありまして、清算機関としては同じ位置づけでありまして、具体的にはJSCCとかJDCCとかというようなものですけれども、この2つの清算機関、資金清算機関と証券清算機関を比較すると、大きな違いが2つあります。

1つは、専任とか常勤がいるか、いないかという話で、JSCCなどでは、社長や常務、取締役が専任で、常勤になっておられます。したがって、こういう方がフルタイムで、このJSCCの経営、運営を考えておられるということになっています。一方で全銀ネットのほうは、役員の全員が本職を持っているという状況でございまして、頭取とか社長とかなんですが、つまり役員の全員が社外取締役という形になっておりまして、私はあまり、他にはこういう組織を見たことがないのですが、ガバナンス上、これで本当にいいのだろうかということがございます。

もう1つは、ボードメンバーの問題なのですが、JSCCのほうは、銀行とか証券会社の取締役、執行役員、それから部長クラスなど、実務的な布陣でやっておりますけれども、全銀ネットのほうは、メガバンクと地方銀行の頭取、社長がずらりと並んでいるということでありまして、端的に言って、ちょっと偉過ぎるのではないかというのが印象でございます。はたして実務的な議論がこれでできるのだろうかということでございます。

この偉過ぎるという点につきましては、実は「FMI原則」(金融市場インフラのための原則)というのがございます。これはBISが作成したグローバルスタンダードでございまして、決済システムとか清算機関が守るべき原則ということになっています。その中で、原則の2というところにガバナンスというのがありまして、これを見ますと、ボードメンバーは、適切な能力とインセンティブを持つ人でなくてはいけないとか、FMIに関して実務的な知識を備えたメンバーでなければいけないとか、その役割に十分な時間を充てることができないといけないというようなことが書いてございます。要は、偉い人を役員にすればいいというわけではないということがこの趣旨でございまして、きちんと実務的な知識のある人が実務的な議論ができる形でボードメンバーをやってくださいという形になっております。この趣旨から見て、現状の全銀ネットのボードメンバーの構成は、FMI原則に対しては違反ぎみであるものと思われます。これは、どこかで見直しをしたほうがいいのではないかなと考えております。

ちょっと駆け足でいろいろ申し上げましたが、最後に申し上げたいことが2つあります。1つは、国内の見直しを行っていく上で、やはり海外の動きをよく見ていかないといけないということです。海外は、大口決済の改革が一段落しまして、小口のほうに改革の勢いが移ってきており、まごまごしていると立ちおくれて、ガラパゴス化みたいなことになりかねませんので、注意していく必要があると考えております。足元では先ほどのFedの改革が動き出していますので、この辺をよくフォローしていかないといけないということだと思います。

2つ目は、先ほどガバナンスのお話を申し上げましたが、なかなか自主的に、どんどん改革の動きが出てくるような体制になっていないので、金融庁ですとか金融審議会、あるいはこのスタディ・グループみたいなところで大きな方向性を出していっていただくと改革が進みやすいのではないかなというふうに思いますので、期待しておりますので、よろしくお願いいたしますということでございます。

以上です。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。後ほどまとめてご質問、ご審議いただくことを予定しておりますが、今取り急ぎご質問されたいという方があれば、どうかお願いします。よろしいですか。

それでは、後ほどまとめてご審議いただくことにいたしまして、続いて、伊藤参考人、やはり15分程度でよろしくお願い申し上げます。

【伊藤参考人】

デロイトトーマツの伊藤でございます。最初に少し自己紹介をさせていただきます。

邦銀で16年ほど市場業務を中心に経験をした後、ゼネラル・エレクトリックという会社のトレジャリー組織立ち上げに合わせ入社いたしました。昨年の2月末に退職するまでの13年間、その組織に所属しておりました。GEという会社は、ご存じのように金融機関並みのトレジャリー・マネジメント・システムをグローバルに展開しております。私の役割は、アジア・パシフィックのトレジャリーオペレーションの統括でした。13年間のライフタイムワークとして、日本を含めたアジアのローカル決済制度下にある銀行取引を、GEが構築した一元管理システムに、いかに接続するか苦労してまいりました。もし、お時間をいただけるのであれば、1週間でも続けて寝ずにお話しさせていただくことは、山ほどあるのですが、今日は限られたお時間ですので、ポイントを絞ってご説明申し上げます。また、本日はあくまでも事業法人の目線としてプレゼンをさせていただきます。では、お手元の資料を使ってお話しさせていただきます。めくっていただきまして、3ページのところでございます。

決済制度がどういう問題を抱えているのかということからお話しします。以前は、日本の企業は、基本的に国内完結型のビジネスモデルであったと思うのですが、現在は、先進的な外資企業と同様に、多くの国でビジネスを行う企業が増えてまいりました。その中で、海外を含めたグループ財務を一元的なシステムで管理で行うというニーズが出てきております。そこに幾つかの障害があります。その一つとして、やはり日本の閉鎖的な国内決済制度があります。居住者と非居住者という区分をする決済の仕組みを維持し続けており、居住者用の国内決済制度に比較して、非居住者及び外為を決済する外為円決済制度は、サービスの品質や手数料など、かなり劣っているというようなことがあります。一方で、先ほど中島先生のお話がありましたが、海外では国を超えた決済標準化とかいうものが進んでおりますし、ご存じのように、中国などはオフショア人民元を利用して、人民元による国際的な決済制度を構築し、日本を超えていこうとするような動きがあります。日本の現在の決済制度は、円の国際化を阻害する要因になっているのではないかと考えております。

めくっていただきまして、4ページに行きます。少し細かいところに入ってまいりますが、国際標準のインフラとしてSWIFTがありますが、日本の国内決済制度には、SWIFTとの連携がないという点があります。取引明細の取得ということから申し上げますと、国内決済用の全銀やANSERフォーマットにて直接、取引明細を取得したいと要求した場合、基本的には銀行のEB・IB、もしくはマルチバンクのソフトによって、個別のPCにしか受けることができません。数年前に、NTTデータが開発しましたeBAgentがXML対応しており、ようやく一元管理システムのサーバーに取得することが可能となりましたが、導入・運営管理費が非常に高額で、誰にでも気軽に導入出来る仕組みではありません。銀行から自社の一元管理システムのサーバーに取引情報を取得する場合には、SWIFTMT940というものが一般的ですが、これに対応したサービスを行っている銀行からしか受けられません。また、海外に比して、MT940の手数料が割高であるという印象があります。後ほど細かく申し上げますが、全銀システムでのフォーマットというものが、SWIFT、いわゆる国際標準のフォーマットとはどうしても違うものですから、STPで支払い指図を送ることができないという部分があります。

もう1つは、対非居住者円取引については、外為円決済制度で決済されます。これも後ほど、どのぐらい国内のものと違うのかというところでご説明申し上げますが、1980年に対外取引原則自由化、98年に事前登録が必要なくなるというようなことを経ているにもかかわらず、私の銀行員時代の記憶が正しければ、非居住者と居住者の支払いを分ける仕組みをそれ以降もそのまま残しているということだと思います。日本は居住者と非居住者を決済において分けている非常に珍しい国ではないのかなと思っています。この外為円決済制度については、SWIFTで送金指示をしたものがそのまま使えるというところが、また、不思議なところであります。

めくっていただきまして5ページのほうなのですが、全銀フォーマットとSWIFTフォーマットの相違する部分だけ例示させていただきました。先ほど中島先生がご指摘されましたように、全銀フォーマットについては半角片仮名英数字、SWIFTは大文字英数字でございます。SWIFTは、FileActという機能を利用すればどのような言語ファイルも添付して送付することが可能です。銀行支店番号も、全銀コードの銀行コード、プラス支店番号対、SWIFTコードと言われる銀行コード、国番号、都市コードの8桁というものが大きく違います。全銀で厄介なのは預金種目で、当座を「ト」、普通を「フ」というような形で入れなければいけない点です。これはもう外国人には全く理解できない部分であります。SWIFTについては、預金種目を入れることも可能ですけれども、これは必須でない場合があります。受取人口座、先ほどご説明があったのであまりくどくどは言いませんが、片仮名で入れます。SWIFTであれば英数字という形になります。この送金の場合につきましても、ご存じだと思うのですが、全銀については必須項目が全部合致しないと送金が出来なかったり、一部、銀行によっては違いがあるのですけれども、必ず送金人に確認をして、確認ができないと送金ができないというようなことに対して、先進的な他国についてはもう少し柔軟な対応となっています。また、SWIFTフォーマットでほぼ、決済にかかわる必要項目を埋められ、必要に応じて、備考欄に情報を付加するというようなことで、STPに送金ができるようになっています。海外から日本の国内決済制度にSTPで送金を行う仕組みとして、事前に受取人情報を登録するサービスや、予め決められた変換表に基づいて取引銀行が支払い指図を国内向けに変換するようなサービスがありますが、利用は限定的であり、汎用的に、誰でも常に使えるような形にはなっていないというのが現状です。

ですから、実際にSWIFT経由で、国内決済制度に直接接続が可能となる工夫として、5ページの下の枠内に一つの参考例を記載させていただきました。ただ、こういう仕組みをつくるときに各銀行に負担を強いるというのは、やはり問題が大きいと思います。全銀や地銀共同センターが代表して取り組みを行うことが良いと思います。お隣の韓国などはそういう形で対応していると伺っています。

めくっていただきまして、6ページに、受払いが居住者・非居住者という組み合わせによる違いを説明しております。居住者間の送金は、申し上げるまでもなく全銀で行えますし、外為法上の報告は不要です。当然ながら、SWIFTフォーマットでの支払い指図は使えません。居住者・非居住者間の送金の場合には外為円決です。非居住者間の送金は外為円決ですが、外為上の報告においては対象外となります。

非常に問題なのは、外国人から見ますと、非居住者か居住者かというのを見分けるのが非常に難しく、結局、プロセスを海外に集約しても日本人がいなければ、判断が出来ないような形になっているかと思います。

続きまして、7ページです。日本の企業様も国内においては、この絵のように一元的な仕組みで、キャッシュマネジメントを行っていると思うのですが、同じようなことを、海外に構築しようとすると、手間のかかる全く別物を作らなくてはいけないというのが現状だと思います。グローバルに展開する企業にとっては、一元的なシステムを利用し、同じつなぎ方でどの銀行にも電子的に支払い指図ができ、取引情報を取得出来るというのが理想形です。GE在籍時、そもそもアジア・パシフィックを統括している日本が何故GEのシステムに直接つながらないのか?と、本社から毎年のように問い続けられておりました。それをいかにつなぐかというのが大きな課題でありました。

めくっていただきまして、システムの話から規制の話に移らさせていただきます。ご存じのように、外国為替及び外国貿易法に基づく報告書というのがございます。そこに書きましたとおり、報告対象というのはいろいろな項目がございます。報告を失念した場合には、ペナルティーとして罰金か禁錮刑という対象になっております。定められた期限内に報告する場合には、この外為法のいわゆる管轄の財務省ではなくて、銀行を経由して業務を委託している日銀に報告を行うことになっております。日銀のホームページには外為法に関するQ&Aという、非常に細かく、分厚い資料がありまして、正直、全部理解するというのはもう至難の技です。また、近年、ウェブでの報告という形も用意されてきてはいるのですけれども、基本的にペーパーでの報告とそれほど負担に違いがなく、ペーパーでの報告が未だに中心との理解です。これだけ膨大な量のペーパーを集めて、果たして統計するほどの必要性があるのかということは、ちょっと伺いたいなというふうに常々思っておりました。

事業法人の立場から言いますと、取引の形態というのは数多くあります。GEのときに実施しましたのは、非居住者との取引パターンというのを5、60想定しまして、これが外為法上のどのような報告が必要なのかということを、外部の弁護士事務所を使って調査し、200ページぐらいの参考資料を作成させられました。

複雑な取引を分解し、複雑な報告体系を理解する必要がありました。例で書きましたが、米国内のUSドルのキャッシュプールに、日本国内の居住者が非居住者の口座として参加している場合でも、報告の対象になります。また、企業にとっては資金効率化を図るために、ネットの支払いとかペイメントファクトリーというようなものを仕組むのですが、参考例をご覧いただきますように、ネットで払っても報告はグロスで行わなければならないとか、非居住者が代行して支払いを行ったということになると、この支払いについては、何らかに基づく契約について支払いを行っているので、報告の対象となるということでございます。また、報告上の問題ではないのですが、当事者間で資金決済なされず、ブック上の処理の場合、ディームド・ローンとみなされるリスクもあり、グループ取引の効率化を図るには、様々な問題に直面してしまうというのが実態でございます。

ページをめくって下さい。先程申し上げた全銀の国内決済と外為円決というもののサービス比較ということでお話しさせていただきます。全銀については、数百円の送金手数料が送金時にかかります。入金手数料は無しと記載しましたが、正確には仕向け銀行と被仕向け銀行で折半する形で、そこで入金手数料は賄われているとの理解です。事業法人から見て、カットオフは午後3時ぐらいであり、外為法上の報告は無論、不要です。外為円決済制度を利用した送金は手数料が数千円かかりますし、カットオフは、ほぼ午後1時前後です。この決済制度は、別途入金手数料がかかります。これは、銀行との交渉次第ではありますが、送金額の0.05%、端的に言いますと、1億円支払うということになると5万円取られます、5億円だと25万円取られるということになります。これは、外国から資本金などを送金する場合には厄介です。海外にある本社とかに説明し、理解させるのが非常に難しかったと記憶しています。当然、外為法上、取引の金額や種類によって様々な報告があるのですが、あくまでも居住者側に報告の義務があるということでございます。

ちょっと駆け足でご説明させていただきましたが、最後の11ページに、こういう高度化とか国際化というものを議論するときに、本当に最終エンドユーザーである事業法人とかの声を聞いているのかと、必要性を聞いているのかというのは、非常に大きな問題なのではないかなと思います。幾ら良い仕組みをつくったとしても、手数料が高いとか、いわゆるサービスとして、外国送金を依頼するのに1日前に出さなければいけないとかといった使い勝手の悪さなど、ほんとうに最終ユーザーにとってのニーズに応えているのかということは、ご検討していただかないといけないのかなということだと思います。あとは、もう何遍も繰り返していますが、国内で完璧な決済制度をつくってきたことは間違いないですし、この制度はすばらしいと思うのですが、ただ、それは国内で全て完結する閉鎖的な観点に基づいていると思います。これからは、いかにして外とつなげていくかというところをご検討いただければというふうに思います。

もう1ページめくっていただきましたところは、ちょっと今日の趣旨とは違うのですが、いずれCMSというものを議論されるときのためにご参考までに、取り上げさせていただきます。日本を金融センターにというような発想があると思うのですが、金融機関ばかり集まっても仕方がない話であって、事業法人の中心にならなければいけません。日本に本社がある会社が何でシンガポールに財務統括センターをつくらなければいけないのかと、日本にそういう統括センターを持ってこようということを強く考えています。ここに記載しましたノーショナルプールというのはあくまでも一例なのですが、各国でやっているものをまねしようではなく、まだ取り組んでいないのだから日本で先に取り組もうという例です。また、いずれ機会があれば詳しくご説明しますが、今ある、世間で言われている擬似的なノーショナルプールとは違い、参加している企業の預金と借り入れをネットできるノーショナルキャッシュプールというのを日本で可能に出来ないかと考えます。日本が財務センターとして魅力的な国になったら良いと思っております。

ちょっと駆け足でお話しさせていただきましたが、以上で終了させていただきます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。

それでは、自由討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願い申し上げます。

柏木委員、その後で小野委員、お願いします。

【柏木委員】

柏木でございます。全銀システムのお話が多かったので、たくさんあるのですけれども、時間の関係もありますので4点に絞ってコメントさせていただければと思います。

1つは、金融EDIの活用の検討状況でございますが、全銀ネットでも問題意識を持ってございまして、今年の4月に、先ほど日銀の方からもお話ありました「全銀システムのあり方に関する部会」を立ち上げて、金融EDI情報の活用についての検討を進めているところでございます。前回ご説明いたしましたように、概要はそのとおりなのですが、今、伊藤様のお話にありましたようにユーザーの声をきちんと聞くというのが大事だと考えておりまして、産業界全体のニーズをしっかりと踏まえた仕組みにしようということで考えております。

EDI情報自体は業界ごとに活用されている事例も多いようですので、それを決済にも活用することについて、個別企業のニーズだけではなくて、業界のニーズを把握するということで、現在アンケート調査等を実施しているところでございます。また、11月には実際に流通業界と共同して実証実験を行って、金融EDI活用による企業の売掛け債権と振り込み情報の突合について、先ほどお話がありましたような、確認作業がどれぐらい効率化するのかということも検証していきたいと思っております。これが1点目でございます。

2点目は、海外の動向をよく見ていくべきだという中島先生のご指摘は、そのとおりだと思っておりまして、例えば携帯電話番号による送金ですとか、全銀システムと海外の接続に関してご説明いただきまして、ありがとうございました。全銀協でも同様に、海外の情報を適宜収集して把握するように努めておりまして、そうした事例も踏まえて、例えば稼働時間の延長を今検討しているという経緯にあります。ITが進んでいきますので、新しいサービスは今後いろいろ展開が予想されるわけでありますけれども、国ごとに商習慣とか歴史、事情が異なりますので、日本のお客様にどのようなニーズがあるのか、あるいは実現に対してどのようなコストがかかるのかというのをしっかり見きわめて、検討していきたいと思っております。

それから3点目、これは簡単にですが、これも中島先生のお話の中で、全銀システムは1日1回のネット決済ということで、マルチサイクル化が必要ではないかというお話がありました。トレンドとしてはそういうことも認識しているのでありますが、全銀ネットの決済は1日1回ではございますが、各金融機関では必要な担保を積んでいる、充当しているという状況でございますので、現時点で決済リスクが高いというわけではございません。また、1件1億円以上の取引については、取引ごとにやっているということでございます。

最後に、全銀ネットのガバナンスについてのお話、ご指摘もありましたので、簡単に触れさせていただきます。全銀システムは、年間約2,700兆円の為替決済を取り扱って、約1,400もの金融機関が参加している、世界にも類を見ない巨大なシステムでございます。社会的な影響及び銀行業務への影響も極めて大きいということで、システム更改を行う場合も巨額な投資が必要でございまして、そのような重要な判断を迅速かつ確実に行うためには、各銀行のトップである頭取レベルのコミットが必要不可欠であると考えております。

一方、全銀ネットの内部において、専門知識を持つ理事行の実務担当者、これは次長クラスから成る検討部会がございまして、原則週1回、諸課題について意見交換しているということでございまして、各行とも、その理事である頭取クラスの役員に、逐一報告するという体制が確立しております。そのため、迅速な意思決定を阻害するということはなく、また専門的な観点も損なわれているとは、現時点で考えておりません。以上を踏まえて、全銀ネットのガバナンスは効果的に機能しているものと考えておりますけれども、中島先生はじめ外部の方の意見も参考にしていきたいと考えております。

以上でございます。

【岩原座長】

それでは、小野委員、お願いします。

【小野委員】

参考人の先生方、ありがとうございました。

最初に、中島先生にお伺いしたいのですけれども、資料の11ページで、アメリカのACHの金融EDIについてご説明いただきました。大変興味深く伺ったのですけれども、まず事実として、ACHを使った決済件数のうち金融EDIを使っているものがどれぐらいの割合あるのかを教えてください。それから、この金融EDIサービスというのは全ての銀行が対応しているものなのか、それとも提供している金融機関もあれば、そうでない金融機関もあるのかというのが2点目になります。

3点目は、お話の中で、全銀システムの金融EDI対応がなかなか進まない場合はエンド・デイトを決めてやってはどうかというようなお話がありました。もしアメリカのケースで全ての銀行が対応していない場合、特にエンド・デイトがあるわけではないのだと思うのですけれども、資料12ページで示されているように、アメリカで金融EDIが伸びているドライバーになっているのは何だとお考えでしょうか。以上が、中島先生に対する質問です。

それから、伊藤参考人に対するご質問なのですけれども、資料の8ページで、日本の外為法に基づいていろいろな報告負担があって大変だというお話をいただきました。具体的に3つほど事例を挙げられているのですけれども、ほかの国ではこれらのことをやろうとしたときに報告義務がないという理解でよろしいのでしょうか。あと、これは事務局の方に対するご質問になるかもしれないのですけれども、おそらく何らかの理由があって規制をしているのだと思うのですが、どういう根拠に基づいて報告が必要だというふうにお考えになっているのかを教えてくださいというのが2点目です。

【岩原座長】

それではまず、中島参考人、お願いします。

【中島参考人】

ご質問ありがとうございます。ACHのトラフィックのうちEDIがついているのは、現時点では2割から3割ぐらいのイメージだと思います。それから、全ての銀行がやっているかというと、やはりこれは銀行側も対応が必要なので、アメリカの場合は8,000とか、中小の金融機関が結構たくさんありますので、そういうところはやっていなくて、やはり大手を中心に、そういうシステム対応力があるところがやっているということだと思います。

それから、ドライバーは何かということですが、一番は企業側のニーズが大きいと思います。効率化のニーズが大きいということだと思いますし、あとは、銀行側がそれに応じてだんだん対応が今進んできているということ、両面で伸びてきているということだと思います。

【岩原座長】

よろしいですか。

【小野委員】

仮にニーズが大きいとすると、それなりに金融機関としても手数料が取れるとかということはあるのでしょうか。

【中島参考人】

はい、当然これはサービスですから、手数料を取ってやっていると思います。その水準とかは、私はちょっと存じ上げません。

【岩原座長】

それでは、伊藤参考人。

【伊藤参考人】

報告につきましては、完全にないとは申し上げられないと思います。ただ、国によって、事前に申請、承認をしなければいけないという部分があったり、国際収支統計上必要だという場合に報告をされるという国はあると思うのですが、例えばアメリカとかヨーロッパにおいて、これほど細かく報告をしなければいけないというものはないです。かつ、申し上げたとおり、ペナルティーがついていますというような形の報告体系というのは日本だけなのかなというところでありまして、先ほどおっしゃったように、なぜここまで細かい報告が必要なのかというのは、常々我々としても疑問に思っていたというところです。

【岩原座長】

どうぞ。

【松尾総務企画局企画課長】

その点につきまして、金融庁というよりも、私は前職が財務省の国際局為替市場課長で、国際収支を担当しておりましたので、お答えさせていただきますと、そういう意味で国際収支統計をどこまできちんととって、IMFとかの観点から見ると、国際収支統計は経済の体温計みたいなもので、そういう意味で、ある意味かなり正確に国際収支をとろうという動きが世界的にある一方、その中で日本も正確な国際収支がかなり迅速に出ている国の一つであるので、経済の体温がすぐわかるという意味での、国際収支をとるところの必要性と、あと、わかりやすく言うとどこまで報告をラフにできるかという、そのバランスということが問題であろうかと理解しています。

【岩原座長】

よろしいですか。

それでは、翁委員、どうぞ。

【翁委員】

ご説明ありがとうございました。中島参考人にちょっとお伺いしたいのですけれども、先ほどのACHのEDI利用のところで追加的にご質問したいのですけれども、こういった産業界の潜在的ニーズを顕在化させるような仕組みとして、何かACHは工夫をしているのか。例えば意思決定のところに産業界の人を入れているとか、何かそういうような仕組みをつくっているのかどうか、どこがそういった日米の、産業界のニーズを顕在化させるというところの違いと感じておられるかということを1つお伺いしたいのと、それから、先ほどご説明がありましたけれども、このACHはこういうものを入れるに当たって、全ての参加者の合意形成というのを必要としているのか。そういう意思決定の仕組み、参加者が非常に多いわけですけれども、できるところから進めていくというようなやり方をとっていますが、そういうことについての意思決定の仕組みについて、何か示唆がありましたら教えていただきたいです。

【岩原座長】

中島参考人、お願いします。

【中島参考人】

産業界のニーズという意味では、ACHは毎年1回、関係者を全部集めて、ACHの最近の動向等について、イベントやセミナーを、大々的にやっておりますので、そういうところで、産業界も含めていろいろ意見交換する場を持っているようでございます。

それから、ACHの参加金融機関ですけれども、中小もかなり多いので、ここはガバナンスが問題になってくるところだと思うのです。ACHで、ボードメンバーでこういうふうにしましょうということを決めれば、それは機関決定になるわけですから、中小が反対とかそういうこと、多分中小の代表も入っていると思うのですけれども、それで物事がどんどん進んでいくという形になっていくのだと思うのです。先ほど、全銀ネットのほうは必ずしもそういう形で、ほんとうに実務に詳しい人たちがボードメンバーとして物事を決め、それが組織の決定として反映されるような形になっていないので、もちろん先ほどの柏木委員の話みたいに、その下でいろいろやっているという話かもしれませんけれども、そういうところがガバナンスがきちんとなっていないような気がして、先ほど申し上げたということでございます。

【岩原座長】

ほかに。

山上委員。

【山上委員】

今の翁先生からのご質問に、補足させていただきますと、手前どもはIPFAという、今のACHの関連しているクロスボーダー送金の団体に加盟しておりますので、今のような民間のニーズを取り入れる仕組みについて、補足的に申し上げます。

実は、ACHの団体でNACHAという、「ナチャ」というふうに言うのですけれども、全米のACHの協会組織がございます。この中にペイメンツ・イノベーション・アライアンスという組織がございまして、これはサービス提供者であるACHもそうですし、金融機関も入ってございますし、あと事業会社も入っており、この中で、どのようなサービスが将来望ましいかという議論がなされております。このNACHAという団体は、今は国内向けにそのようなアライアンスをつくっているばかりではなくて、グローバル・ペイメンツ・フォーラムという、一部、中島先生のご説明の中にもFedGlobalというイニシアチブについてのご説明が若干あったかと思うのですが、Fedのファンドトランスファー、送金に関して、さらに国際的に受け入れる国を増やすための動きをNACHAがサポートしているようなところもありまして、国内向け及び海外向けに、そういった組織を持っているようでございます。

【岩原座長】

はい。牧野委員。

【牧野委員】

今までとてももやもやしていたものが霧が晴れたようなお話を聞かせていただいたような気がして、コメントという形で発言させていただきます。

金融EDIのところなのですが、弊社はコンシューマー事業、ビジネスをやっておりまして、デリバリー等についてはもう既に、二十数年前からEDIというのをやっていて、そういう形でスーパーとか、そういったところでやっていたのですけれども、この決済については銀行等のバーチャル口座というのを使いながら、マッチングをやっていたのですが、それであっても、やはり70数%というのが限界というふうに聞いておりますけれども、そういう形でマッチング、あとのところは手作業でやるといったところがありましたので、先ほどのような形でもうちょっとEDIがつながれば、よりそのパーセンテージが上がって、手作業が減ると思います。実際のところ、先ほど柏木委員からもありましたように、我々も実験というのに一緒に参画させていただいているようですので、そこも進めていけたらと思います。

もう1つなのですが、実はSEPAで、ちょっと先日、欧州系の、ドイツ系の銀行の日本の支社長と話していまして、そこでSEPAをやってどうだったのというような質問をしたときに、苦笑いをちょっとされていたのですけれども、手数料という面では、銀行にとってみたら、がくっと下がって大変だったということは事実だと思います。ただ、とてもよい仕組みをつくれたと思うよという形で言われていたのがすごく印象的で、我々もできたらそういう形のような仕組みができたらなというようなことを思いました。

以上です。

【岩原座長】

はい。ほかにいかがでしょうか。

蔵納参考人。

【蔵納参考人】

三菱東京UFJ銀行の蔵納と申します。いろいろご説明いただきまして、ありがとうございました。私も金融EDIの話について、全銀ネットの会合などに出席しておりまして、おっしゃるとおりの問題意識を持っております。

その中で、忘れてはいけないのは、特に金融EDIにつきましては、我々金融界だけが一生懸命その仕組みをつくってもうまくいかないということは、おっしゃるとおりでございまして、同じ問題意識のもとにアンケート等も実施させていただく、実証実験も実施させていただくということだと思っています。一方で、実際のベネフィシャリーは誰なのかといったことを冷静に考えてみたときに、例えば、お話に出ていたとおり売掛金の消し込みが特に非常に大変であると。今バーチャル口座のお話もございましたとおり、そうなのですが、実際にXMLとかEDIの情報を添付して送る人というのは送金する側であり、ベネフィシャリーは受け取る側、売掛金を消し込みする側ということで、では、今までやってきたその仕組みを変えるためのシステム投資を、送金される方がどのように受け止められるのかといった、こういうネットワーク全体の話をきちんと踏まえて議論していかないと、多分この仕組みはうまくいかないのではないかというふうに問題意識を持っています。

ですので、そういった点も含めて、産業界とともに、これをどういうふうに進めていくのかといったところをしっかりと議論して、手数料の話も、投資のところも含めて、国としてどうするのかという議論をしていく必要があるのではないかというふうに捉えております。

【岩原座長】

はい。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

3人の参考人の方々、今日はどうもありがとうございました。特に中島様のお話に関係しまして、質問というよりも事務局へのお願いになるかと思いますが、中島様のお話を伺って感じたこと、一消費者としてお話を伺って感じたことと、それから、お願いをさせていただきたいと思います。

私は専門的なことはわかりませんけれども、先ほどの中島様のお話をお伺いしておりますと、一面的な理解かもしれませんが、日本の銀行が行動を起こさないことによって、それは銀行にとっては新たなコスト、負担が発生しないということではあるのですが、一方で、ユーザーにとっては不便とか、本来日本の企業が備えていかなくてはいけない国際競争力というものを備える機会を失わせているのではないかなというふうに、お話を伺いながら感じたわけでございます。

中島様は全銀ネットに関して、資料の42ページで、自主的な改革の動きは出にくいというふうに書いていらっしゃいます。柏木委員のほうからいろいろな取り組みをされているというお話はあったのですけれども、これからの回のどこかで全銀協様には、この自主的な改革に関して、中島様から今日ご提言ありました問題について、もう少し詳しくご説明いただく機会をもっていただけたらと思います。

以上でございます。

【岩原座長】

はい。今の永沢委員の問題提起に対して、柏木委員や、銀行界の方から何かございますでしょうか。

森参考人、どうぞ。

【森参考人】

森でございます。中島先生のほうからご指摘があったガバナンスの話でございますけれども、特に40ページの証券の清算機関で、私は運営委員会の委員を努めておりまして、実際的な審議はそういう委員会のほうで終了しているということでございまして、確かに実務的というよりも、そういう頭取クラスが入っていない、役員会になってはいないのですけれども、実質的には、証券の清算機関においても、そういう実務担当のところでいろいろ審議された事項を最終的に取締役会に上げて、議決をして、ガバナンスとしては保っていただいているということで、全銀協のフレームワークとそんなに大きく齟齬はないと考えております。確かに出席している人が頭取ではなくて、役員クラスであるという、そこら辺の違いかなということで、実質的には、JSCCにしても、JDCCにしても、取締役会の資料も全部見ていますけれども、基本的には委員会で審議した以外のことというのはほとんど議論されていませんので、そういった意味では、ガバナンスといった意味では特に差はないというふうに思っております。

それともう1つ、伊藤参考人からお話があったSWIFTですけれども、確かにSWIFTはグローバルに使われて、利便性が高いのですが、日銀の播本オブザーバーからもご説明がありましたが、アジアの決済インフラをつなごうというプロジェクトがありまして、そこで接続インフラとしてSWIFTの話も出るのですが、SWIFT自体は従量制でございまして、かなりコストが高いことから、なかなかアジアの各国も入れたがっていないという問題がございます。

確かに利便性が高いというのとコストというのが裏腹でございまして、1つの良い例は、例えば中島先生からお話がありましたけれども、証券保管振替機構はISO20022を今年1月に導入されて、そこはSWIFTも使えるような仕組みにされています。ところが、SWIFTはコストが高いということで、日本の金融機関といいますか、証券会社も含めて誰もSWIFTは使っていないということでございまして、ですから、それがもろ手を挙げて全部良いということではなく、メリット、デメリットを十分しんしゃくした上で導入を考えていかなければいけないと思っております。

もう1つ言うと、例えば中国の新しいCNAPSにしても、SWIFTの利用は断念していますので、必ずしもSWIFTが全てバラ色で、いろいろなものを提供してくれるわけではないということです。フォーマットは確かに、ご指摘のとおり、グローバルな流れでISO20022、そこの流れで、日本はきちんと着実に乗ってきていますので、そこら辺はもっと利便性が高いものをつくっていかなければいけないなと感じています。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

連続で申しわけございません。自主的な改革ができていないのではないかということに関しまして、私どもの考え方を2点ほど申し上げたいと思います。

1つは、外部の知見を取り込むという観点が大事だというお話が前段あったかと思うのですが、全銀でも全銀ネットの有識者会議というのを適宜開催しています。直近では、内国為替の利便性を向上するために、銀行振り込みをはじめとする決済に関する一般消費者及び企業のニーズを吸収して、テーマを選定して、有識者からヒアリング行いながら、外部の方々の知見を生かしていく仕組みを構築しているということがございます。

例えば、今申し上げましたように、今年4月に立ち上げました「全銀システムのあり方に関する部会」、これは自主的に、当然、全銀の中で立ち上げたわけでございますが、その中で金融EDIについても、中島先生ご指摘のような問題意識を銀行自身も持って、どうやって金融EDIを日本の中で企業と一緒に使っていくかということを考えております。ただ、これは先ほど蔵納参考人からも申し上げましたけれども、銀行だけがやりますといってできるような話ではないので、産業界ともよく連携しながら、あるいは関係省庁と連携しながら進めているということでございます。そういう意味では、自主的にそういうことに取り組んでいるということでございますので、必ずしも我々が何もしないでいるというようなことではないことは申し述べさせていただきたいと思います。

以上でございます。

【岩原座長】

何かそれについてのコメントとかご質問とかはありますでしょうか。

中島参考人、どうぞ。

【中島参考人】

ガバナンスに差がないという話がありましたけれども、繰り返しになりますけれども、常任の役員がいらっしゃらないという点で大きな違いがあるのだと思います。それから、頭取クラスが全部ボードメンバーになっているということで、そもそも1回会議をやるための調整コストがものすごい大変だということも聞いておりますので、本来ボードで決議をとってやるという意味では、もう少し身軽な体制で、実務者が集まって決めるような体制がよろしいのではないかなと思います。

それから、やっていますというところで、どうも全銀協でやっています、全銀協でやっていますという話があるのですが、資金決済法のたてつけでは、全銀ネットという新しい資金清算機関ができて、そこが全銀システムのあり方を決めますということになっているので、やはりその中で委員会をつくるなり有識者を呼ぶなり、そういうことをして、そちらで決めるような体制にしないと、いつまでたっても母体は全銀協ですということで、そこにちょこっと子会社的に全銀ネットがついているという体制はあまり好ましくないのではないかなというふうに考えております。

【岩原座長】

はい、柏木委員。

【柏木委員】

訂正させていただきます。先ほど言った有識者会議というのは全銀ネットの中の話でございますし、専門知識を持つ実務担当者の検討部会、これも全銀ネットの話でございまして、もし全銀協と私が申し上げたとしたら、それは間違いでございまして、訂正させていただきます。

【岩原座長】

よろしいですか。

河野委員、どうぞ。

【河野委員】

皆さんのご発言をよく伺わせていただきました。私もほんとうに主婦ですので、感想だけ申し上げたいと思います。

私の身の回りにもApple Payの話ですとか、いろいろ新しい決済の仕方が聞こえてまいります。今のお話をずっと伺っておりますと、日本の決済の仕組みというのが、昔から岩盤のように非常に守備的であって、確かにそれは成功し、しっかりとした形をつくり上げてきているんだと思います。ほとんどミスもなく、間違いもなく、安心して決済ができるという点では。ただ、先ほどからいろいろお話を伺っていますと、やはりこの全銀ネットのことなのですけれども、一般消費者のニーズ、それから事業者の皆さんのニーズをしっかり酌み取ってというお話をしていますが、相変わらずその検討の場は全銀ネットの枠内から出ないで、そしてトップの方、イノベーションの意識をどれだけ持っていらっしゃるかわかりませんけれども、そういった方が集まってやっていらっしゃるということに対して、今後に向けてほんとうに積極的な行動がとれるのかどうかというのは、私自身は先ほどからのやりとりを伺っていて、ちょっと危惧を感じたところでございます。

世の中的には非常にいろいろな決済の方法がどんどん出てきている、消費者の周りにもいろいろあると、そのことに対して、もう少し日本のしっかりした機関である全銀ネットが前向きに取り組んでいただきたいと思いますし、どれだけの投資コストがかかって、どんなふうな形で進めていかなければいけないかというのは、ぜひ今回のこのようなスタディ・グループで先行きの方向性を見せていただければと思っております。

【岩原座長】

はい。ほかにいかがでしょうか。

山上委員、どうぞ。

【山上委員】

今日の参考人の皆様からのご説明、大変ありがとうございました。それから、委員の先生方からのいろいろなコメントを少しずつ、私なりに咀嚼してみますと、イノベーションというものをこれから醸成していくというような、組織というとちょっと言い過ぎかもしれないのですけれども、入れ物が、日本銀行のプレゼンの一番最後のページに書かれていたかと思うのですけれども、中長期的な視点が必要だというような課題のご提示があったかなと思っております。一方で、中長期的であるということに加えまして、同じページの真ん中ぐらいに情報技術の革新についても触れていただいているのですが、そういうものの革新のスピードがかなり速いという状況を踏まえますと、多分継続的にそういうものを見ていく入れ物も、あわせて視点として重要ではないかなというふうに感じております。だとすると、諸外国でこのような決済の改革を推進していく組織というのがどのようなものがあるのだろうというのを一考察してみるのも、客観的に物を見るという意味でいいのかなというふうに思っております。

ちなみに、私が存じ上げている範囲で1つだけご紹介いたしますと、英国では、いろいろな物議がございますけれども、ペイメンツ・カウンシルというようなたてつけのものがございまして、以前ご紹介いただいたファスターペイメントのスキームというものにつきましても、今日の中島先生のご説明にございましたPaymについても、そのカウンシルの中での検討を経て出てきたものというふうに理解しておりまして、そういうものについて、どういうたてつけで、どんな方々がどのようにかかわっているのかということについても一考してみる価値があるのかなと考えております。

以上です。

【岩原座長】

はい。ほかにいかがでしょうか。

戸村委員、その後、森下委員、お願いします。

【戸村委員】

ありがとうございます。東京大学の戸村です。日銀の播本オブザーバーにお伺いしたいのですが、伊藤参考人のプレゼンテーションにあったように利用者目線というのがすごく大事で、森参考人のほうから途中でお話がありましたが、決済のビジネスというのはどうしても従量制の課金になってしまって、そうするとどうしても重くなって、グロスのフローに課金がかかって重くなると思うので、モニタリングがその点必要かなと思うのですが、その点、日本銀行のほうで決済ビジネスのプライシングに対してどのようなデータ収集の取り組みをされておられるのか。されておられないのかもしれませんが、その辺の現状を、もし可能でしたら伺いたいと思います。

【岩原座長】

播本オブザーバー。

【播本オブザーバー】

決済関係の個別の事業者や金融機関、決済インフラ等について網羅的に手数料をリサーチするというようなことはしておりません。ただ、先ほどの決済に関するいろいろな改革を行っていく上で、コストをどのように回収していくかというのは重要な視点であろうかとは思っております。

【岩原座長】

はい。森下委員、どうぞ。

【森下委員】

教えていただければと思いますが、伊藤様の御発表の10ページで、非居住者円預金については、別の、外為円決済になっているというお話があったと思いますが、これは何らかの歴史的な経緯があり、今でも、例えば非居住者円預金が受け皿になっているときには、どうしても外為円決済制度を使わなければならない何らかの物理的な制約があるのか、そうではなく、例えば技術的には全銀システムに乗せた、より簡易な決済といったようなものも可能なのかもしれませんけれども、別の理由でそうなっているのかという点について、もしおわかりでしたらお教えいただけますでしょうか。

【岩原座長】

伊藤参考人、お願いします。

【伊藤参考人】

正確なことは存じ上げていないのですが、基本的にこの報告をしなければいけないという部分での義務というのはあるかと思うのですけれども、支払いの方法について、国内決済制度をとって支払っていけないということはないと認識しております。ただ、非居住者に向けた支払い、もしくは非居住者から居住者に向けた支払いというのを実際に起こしますと、返金されてきます。これは非居住者の送金なので、これは外為円決済制度でお願いしますということで戻されるというのが実態で、私も何遍もそういう経験はいたしました。

【森下委員】

ありがとうございました。

【岩原座長】

そもそも何で外為円決済と全銀システムというのがあり、さらに日銀ネットがあって、日銀ネットだって付記電文をつければ普通の送金にも使えるはずで、さっきの全銀システムの場合、1億円以上と未満では扱いを分けているという話がありましたけれども、なぜそういうすみ分けが何で起きていて、それぞれの間のサービスが違っていたりするのか、それは合理的かといった問題がありうるように思います。

このスタディ・グループでは、海外と比較して、このような点で日本は何か違っているのかもしれないということを考えるのも非常に大事かと思います。

【中島参考人】

その点、ちょっとよろしいですか。

【岩原座長】

はい。中島参考人、どうぞ。

【中島参考人】

もともと何で外為と全銀が分かれたかというと、外為法上の要請があったということなのですね。外為法上で国内の資金と海外の資金を峻別しなさいと、少しでも海外に属するものは外為を通じてやりなさいという法律のたてつけ、そういう規制があったわけです。98年だったと思いますが、そこの方針ががらっと変わりまして、原則自由ということになったのですが、そのとき、その上部構造は変わったのですが、決済の部分は手つかずで、そのままになっているということだと思います。

海外の例を見ますと、通常、決済システムというのは、大口と小口というふうに分かれているのが普通で、海外と国内と分かれているのは非常に珍しいケースです。それは外為法上そういう必要が当時はあったということで、そういう内外の区分けが行われて、それがずるずると残ってきているということなので、もしこういう場で、いや、それはもう要らないのじゃないかということであれば、大口と小口にすっぱり分けるということでも本来は支障はないんだと思います。

【岩原座長】

そういうものは一度つくられてしまうと、金融界の中で一度つくったシステムは、銀行の中でも外為の担当の人はずっとそこでということですみ分けができてしまっていて、それがそのまま続いているのかもしれません。改めて本当に、利便性を高め、よいサービスを提供するにはどうしたらいいかという観点から、この際いろいろ見直していくこともあり得るのではないかと思います。SWIFTについても、もう古い情報ですので今は違うかもしれませんが、フランスはSWIFTを国内送金にも使っていたみたいですし、いろいろなあり方があり得るのではないか。そういうふうに、もう一度視野を変えて、日本の決済をよくするにはどうしたらいいかということで考えていただければと思います。

それから、中島参考人が提起されたガバナンスの問題は、役員がどのレベルが出ているかということもありますけれども、むしろ、全銀システムが全銀協の影響下にあって、その全銀協が、利用量に応じた発言権ではなく、1行1票主義で、いわば中小の意見が多数派を占めるような意思決定のあり方であることが、現状を変えにくくしているような面があるのではないか、といった御疑問が大きいのではないかという感じがします。そういうことを含めて、いろいろこの場で検討させていただければと思います。

ちょっと出過ぎたことを言ったかもしれませんが、いかがでしょうか。ほかに何か。

森参考人、どうぞ。

【森参考人】

先ほどの外為と全銀に関しては、まさに外為法があったから分かれたという経緯でございますし、現状でも、先ほども事務局から説明があったような外為法に基づく報告に関して、いろいろなリクワイアメントがありますし、その精緻なデータを求められたりしているというところでございまして、そういった意味では取り扱いの性質が全然違うということがバックグラウンドにありますので、一緒にしてしまえばほんとうに楽なのか、コストが安くなるのか、いろいろな観点もありますけれども、実務的なところや、当局のレギュレーションなどの背景があります。

もう1つは、やはり外為に関しては、他国も多分同じだと思うのですけれども、基本的にはコルレス送金などを使って、いろいろな、ストレートスルーではないようなオペレーションがまだ介在しているというところもあるので、そういった意味では、コストという面でやはりある程度割高になっていて、手数料的には国内より、見劣りしているところはあると思いますけれども、外為円決済のところはやはり、そういった意味ではまだ法律的な縛りもあるので、一長一短に、簡単に1つにということはなかなか難しいのかなと思っております。それも含めて、当局の方や立法された方などと協議を進めながら、より効率的、合理的な運営のやり方があれば検討することはできるのかなと思っています。

【岩原座長】

はい。松尾企画課長、どうぞ。

【松尾総務企画局企画課長】

国際収支上の報告と決済制度というのは直接、私がやっておりましたが、関係はそれほどなかったと記憶しております。

【岩原座長】

そもそも規制が何のために必要で、どこまで合理的なものかということも多分考えていかなければならないのではないかと思います。ほかに特にご発言ないでしょうか。

なければ、そろそろ時間でございますので、自由討議を終わらせていただきたいと思います。

本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえまして、引き続き検討を進めていきたいと思います。なお、次回は、決済関連金融業務とCMSを含むシステムの高度化について、関係者からヒアリングを行いたいと考えております。

最後に事務局のほうから連絡事項がございましたら、お願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私のほうから日程について、既にご案内しているとおりでございますが、確認のため、もう一度ご連絡申し上げます。

次回、第4回の会合は11月6日木曜日、16時から18時までで行うことを予定しております。それ以降につきましては、第5回が11月18日火曜日、16時から18時まで、第6回が11月27日木曜日、10時から12時までということで予定をしております。会議室等につきましては、また決まり次第ご連絡を申し上げます。

事務局からは以上でございます。

【岩原座長】

それでは、以上をもちまして本日のスタディ・グループを終了させていただきます。

どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3558、3560)

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