金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第8回)議事録

平成28年11月2日

【神田座長】

おはようございます。定刻になりましたので始めさせていただきます。市場ワーキング・グループの第8回目の会合になります。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日でございますけれども、国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティーについての4回目のご議論をお願いしたいと思います。

早速、議事に移らせていただきます。このフィデューシャリー・デューティーにつきましては、これまで、金融商品についての顧客が支払う手数料等をめぐる問題、それから、分かりやすい商品説明資料等をめぐる問題を取り上げて、皆様方にご議論をしていただきました。本日は、これらに引き続きまして、利益相反の管理等をめぐる問題をテーマとして取り上げ、皆様方にご議論をお願いしたいと思います。

いつものように、まず、事務局から討議資料についてご説明いただきまして、その後にご質問、ご意見をお出しいただき、ご審議をお願いしたいと思います。

それでは、事務局からの説明をお願いいたします。

【齋藤市場課長】

では、私のほうからご説明させていただきます。資料1をご覧ください。顧客本位の業務運営を図っていく上では、利益相反の適切な管理が重要な課題であると考えられることから、本日は利益相反の管理について取り上げてご説明を申し上げたいと思います。

1枚おめくりいただきまして1ページ目、まずは日本の利益相反管理に係る現行制度に関して、その概略をご説明したいと思います。まず1ページ目でございますが、平成20年の金融商品取引法の改正におきまして、利益相反による弊害の防止等について一層の実効性の確保を図るために、利益相反の管理のための体制整備を法令上義務づけております。具体的には下の条文でございますけれども、概略としては、ここにございますように、利益相反の特定のための体制整備、それから顧客の保護を確保するための体制整備、例えば部門の分離であるとか、取引条件等の変更であるとか、取引の中止あるいは情報の開示などの体制整備、それから3番目として、管理方針の策定、その概要の公表、それから記録の保存といったことを義務づけているところでございます。これは法令には定めておりますけれども、ある意味、プリンシプルベースの規定になっているかと思います。

続いて、2ページ目でございますけれども、この金商法の改正と同時に、銀行法、保険業法も改正されまして、銀行、保険会社等についても利益相反管理のための体制整備を金商法と同様に義務づけているところでございます。

さらにもう1枚おめくりいただきまして、3ページ目でございます。先ほど利益相反管理体制整備義務についてはプリンシプルベースの規制と申し上げましたが、別途、ルールベースの規制というのもあわせて講じているところでございます。こちらにございますように、例えば、投資助言業者あるいは投資運用業者等が自らや特定の顧客の利益を図るため、他の顧客の利益を害する行為などについて、明示的に禁止することで、利益相反防止、投資者保護を図っているところでございます。一例として、下の(参考)の金商法の四十一条の二に書かれておりますけれども、例えばその第一号であれば、投資助言業務に関して、顧客相互間において、特定の顧客の利益を害することとなる取引を行うことを内容とした助言を行うことが禁止されております。例えば値下がりが見込まれる株を一方のお客さんに売り推奨、一方のお客さんに買い推奨するといったようなこと。それから第二号に掲げられているのは、通称スキャルピングと言われておりますけれども、助言を行ったお客様の売買を利用して、自ら、あるいは第三者の利益を図るような行為を行うことというようなことが禁止されていると。このようなプリンシプルベースの体制整備義務と、それからルールベースの特定の取引を明示した形での禁止といったことが金商法の大きなたてつけになっているところでございます。

もう1枚おめくりいただきまして、4ページ目でございます。最初にご紹介したプリンシプルベースの利益相反管理体制整備義務につきましては、その監督指針におきまして、利益相反のおそれがある取引を類型化し、定期的にその妥当性を検証する態勢をとっていることなどを求める他、部門の分離などの管理方法のあり方などについて具体的に定めているところでございます。例えば、下の(参考)における「IV-1-3 利益相反管理体制の整備」の「(3)利益相反管理の方法」というところで、部門の分離による管理を行う場合には、当該部門間で厳格な情報遮断措置が講じられているか。あるいは、ロにありますように、取引の条件若しくは方法の変更又は一方の取引の中止の方向によって管理を行う場合には、親金融機関あるいは子金融機関等の役員等が当該変更などに関する関与を含め、その判断に関する権限及び責任が明確にされているかといったようなことが具体的に定められているところでございます。その上で、マル3にあるように、定期的な検証が行われる態勢となっているか。そして、その上で、(4)にありますように、管理方針の策定及びその概要の公表といったことになっているところでございます。

このような法令、それから監督指針を踏まえて、もう1枚おめくりいただきまして、5ページ目でございます。先ほど申し上げましたように、利益相反管理の方針を定めた上で、その概要を公表するということになってございまして、これが実際に公表されている銀行における利益相反管理方針の概要の例でございます。個社名がわからないように○○と書かせていただいておりますけれども、ほぼその公表されている概要そのものを書かせていただいているところでございます。中身について詳細なご説明は省略させていただきますが、全体としての構成として、1つ目が目的、2つ目、3つ目として管理の対象となる利益相反の類型あるいはその特定方法といったものが書かれています。その上で4番目に利益相反管理の方法が書かれて、その利益相反管理の体制といったものが5番目に書かれて、最後、6番目に利益相反管理の対象となる会社の範囲といったものが掲げられているところでございます。5ページ目は銀行の例になります。

1枚おめくりいただきまして、2番目が証券会社の例でございます。こちらも2番目が利益相反管理対象取引の特定・類型化、3番目に管理方法、4番目に管理体制、5番目にその対象となるグループ会社といったものが掲げられております。銀行と証券会社ではビジネスモデルが違いますので、その対象取引の中身であるとか、あるいは管理方法といったものに若干の違いはございますけれども、全体としての構図は同様なものになっているところでございます。

さらにおめくりいただきまして、7ページ目が信託銀行の例でございます。

さらにもう1枚おめくりいただきまして、8ページ目が生命保険会社の例でございます。どれもビジネスモデルによって多少の違いはございますけれども、全体としての構成は同様なものになっているかと思います。

以上が日本の制度とその現状の概要でございます。

続きまして、9ページ目以降で、では、海外ではどうなのかということについてご説明をしたいと思います。

まず、OECDの金融消費者保護に関するハイレベル原則において利益相反管理についてどのように定められているのかということについて、9ページ目でご説明をさせていただきます。左側に原則、右側がその原則の適用に関する報告書ということで、具体的にどういうことをやることがこの原則に沿うのかということが書かれているのが報告書でございます。

まず、原則4のほうで、利益相反に関しての情報も提供するべきであるということが書かれていて、例えばその具体的な内容として、右側でございますけれども、利益相反を回避できない場合、そのサービスの提供に先立って、利益相反が顧客やアドバイスの内容に与える影響についての情報を提供する義務に服する。あるいは、あらゆる報酬、手数料、その他の利益、また、インセンティブが取引やアドバイス等に与えるあらゆる影響について顧客に情報開示するとされています。

それから、原則6でございますけれども、こちらのほうでは、利益相反を避けるように努めるべきであると。利益相反が避けられないときには、適切な情報開示あるいは内部体制の構築、あるいは当該サービスの提供を回避するべきであると書かれております。例えばその情報開示に関しては、右側にありますように、発行者・提供者、第三者により、仲介者に対して支払われる手数料、その他インセンティブの存在に関する情報をアドバイスや仲介サービスを提供する前に顧客に開示する。あるいは、利益相反を適切に識別し、管理するための方針あるいは手続を実施するというようなことが書かれているところでございます。

具体的に各国でどのようなことが定められているのかということに関して、まずは10ページ目、米国の例でございます。ちょっとマトリックスになってございますが、まず、縦の列に関しては、左側が投資アドバイザーに関する利益相反管理の規定、右側がブローカーに関する規定、横の行に関しては、上が一般的な場合で、下が年金等に係る特殊な場合に関して書かれてございます。

まず、右上でございますけれども、一般的なブローカーに関しては、利益相反について、証券取引所法及び、アメリカでございますので、判例の積み重ねによって解釈がこのようになっているということでございますけれども、基本的にブローカーに関しては、赤字に書いてありますように、利益相反に係る情報の開示義務を負うとされております。

一方、単なるブローカーではなくて、実際にアドバイスを行う投資アドバイザーに関しては、その左上になりますけれども、投資顧問業法、それから判例の蓄積に基づきまして、下に書いてありますように、利益相反取引は原則として禁止であると。利益相反が存在する場合には、その状態を解消するか、少なくとも全ての情報を率直に顧客に開示する義務を負うとなされているところで、ブローカーよりも少し厳しい内容になっているところでございます。

さらにその下、投資アドバイザーが年金等に関してアドバイスを行う場合に関しては、ERISA法あるいはDOLルールで定められているところでございますけれども、ここにありますように、利害関係者と年金プラン間の取引が禁止されるとなっております。利益相反に関する重要な情報を顧客に開示しても治癒されないということで、開示によって利益相反管理が適切になされているとはならないということになっているところでございます。さらに、この状況が最近のDOLの改正ルールの提案にあり、右側でございますけれども、投資アドバイザーではなくて、一定の推奨行為を行うブローカーに対してもこれが適用されるというふうに、今、改正案が提示されて、議論をされているということで、利益相反管理に関する規定に関してはこのような構図になっているとご理解いただければと思います。

一方、EUでございますけれども、もう1枚おめくりいただきまして、11ページ目でございます。

まず、現行の金融商品市場指令(MiFID)でございますけれども、こちらに関しては、左の上にありますように、利益相反防止のため、組織上、運営上の措置を保持し、実施すること。利益相反を特定し、防止または管理するためのあらゆる適切な手段を講じること。その具体的なことが実施指令に書かれていまして、右側にございますけれども、利益相反の類型あるいは利益相反管理方針の記載内容、それから報酬の受け取りが許容される要件かということに関して具体的に定められているところでございます。こちらの全体的な構図は、今の日本の利益相反管理体制整備義務とおおむね似たような内容になっているのではないかと理解をいたしております。

その上で、今、2018年1月に施行が予定されている第二次金融商品市場指令(MiFIDII)ではどのようになっているかということでございますけれども、このMiFIDに加えて、さらに投資会社による独立した立場からの投資助言に関する規制を厳格化しているところでございます。具体的には、独立した立場からの投資助言を行う業者については、利害関係者から提供される金融商品以外の商品も幅広く評価した上でサービスを提供しなければならない。あるいは、第三者からの金銭的・非金銭的な報酬等の原則受領の禁止といったことが規定されているところでございます。このように各国においては利益相反管理に対して少し厳しい規制になっている、あるいはなろうとしているという状況にあろうかと思っております。

以上が国際的な動向でございまして、では、今後、日本についてどう考えるべきかということに関してでございます。まずは、利益相反のおそれがある典型的な取引例に関して、4パターンほどあるのかなと思ったので、それを図示してこちらのほうにお示ししてございます。

まず1番目の例でございますけれども、販売会社が商品提供会社から手数料を受け取るケースでございます。左側は投資信託、右側は保険というものをイメージして書かせていただいておりますけれども、販売会社が運用会社の保険会社から手数料を受け取る場合でございます。下にありますように、利益相反のおそれがある場合というのは、販売会社が、顧客の利益にかかわらず、商品提供会社から支払われる手数料の高い商品を推奨する場合には、利益相反のおそれがあるのではないかと考えられるところでございます。

続きまして2番目のパターン、13ページでございます。こちらは、投資信託と書かれていますが、投資信託以外の場合もあろうかと思います。投資信託の販売・運用が同一グループで行われているケースでございます。マル1のケースと違うのは、販売会社が運用会社から直接手数料を受け取ってはおりませんが、その手数料のやりとりがなくても同一グループにあるといった場合でございます。この場合に、販売会社が、顧客の利益にかかわらず、グループの利益を優先して同一グループ内の運用会社の商品を推奨する場合には、利益相反のおそれがあるのではないかと考えられるところでございます。

続きまして3番目のパターンでございますが、法人営業を行う親会社等と運用会社が同一グループに存在するケースでございます。同一グループ内に法人営業を行う親会社と運用会社があって、その親会社が何らかのリレーションがある企業に対する運用会社の投資、議決権行使に関して利益相反のおそれがあるということで、下の箱にありますように、運用会社が、投資先の企業の議決権行使に当たって、――議決権行使のみならず資産運用もそうだと思いますけれども、顧客の利益にかかわらず、親会社等の意向を優先して行動する場合に、利益相反のおそれがあるのではないかと考えられるところでございます。

それから4番目のパターンでございますけれども、先ほどは同一グループ内にということですが、同一グループではなく同一主体の中に法人事業部門と運用部門を有しているケースでございます。こちらに関しては、運用部門が投資先の選定や議決権の行使に当たって、お客様である年金基金の利益にかかわらず、融資や証券代行、法人営業などを行う法人事業部門の意向を優先して行動する場合に、利益相反のおそれがあるのではないかと考えられるところでございます。

以上のような利益相反のおそれがある取引のパターンを念頭に置いた上で、では、日本の金融機関の利益相反管理についてどのような見方がなされているのかということについて、16ページ目、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議における主な意見をここで掲げさせていただいております。

2.にありますように、運用機関をめぐる利益相反に関して出された主な意見として、運用機関のガバナンスがしっかりしていないケースがあるのではないか。特に運用機関において親会社の金融機関との利益相反がある場合の対処方法について、明確な説明がないケースがある。それから、金融機関グループ内の機関投資家における利益相反は日本に限ったことではなく、こうした類型の利益相反は不可避であると。このことを前提として、利益相反を実質的に排除するためにどのような手続が必要なのかを議論することが重要である。あるいは、不信感を取り除く上で、運用機関のガバナンスを強化することや、金融機関の子会社である場合に独立性を向上させることが必要ではないかというようなご意見がございました。

それから3番目、機関投資家と投資先企業との間に取引関係等があるケースについてでございますけれども、最初のポツですが、日本国内では、信託銀行形態に典型的に見られるように、1つのエンティティ内に運用部門と法人事業部門の両方が併存しているという形での利益相反もあるのではないか。生保等においては、法人取引等がある中、純粋に議決権行使をしにくい可能性もあるが、しがらみを断ち、機関投資家としての責任を果たしてほしい。株式を発行している会社との利益相反が根底にある株主は、純粋に株主としての最終受益者のために議決権行使を行うことは困難であり、例えば、生損保が、顧客に当たる発行会社に対する反対票を投じることができるかは疑問といったようなご意見もございました。最後に、保険会社・信託銀行は、貸し出し業務を行う一方で投資を行っている。信託銀行の場合、貸し出し・年金運用・不動産仲介等を同一の会社で実施しており、利益相反の懸念を持たれるのではないか。生保も同様の問題があるといったご意見があったところでございます。

このような見方がなされている一方で、もう1ページおめくりいただきまして、海外投資家の意見、海外において利益相反管理をどのように行っているかということに関する示唆でございます。ポイントにございますように、独立した監督などの堅固なガバナンス体制や利益相反管理が重要である。あるいは、明確な議決権行使基準を設定し、議決権行使判断を行う独立委員会を設置すべきという意見があった他、運用機関の利益相反管理のため、運用機関に親会社が存在する場合に独立した取締役会を設置している例などが紹介されたところでございます。このような海外の例といったものも参考になるのではないかと思っております。

このようなことを踏まえた上で今日ご議論をいただきたいと思っておりますが、その参考になる論点といったことを18ページ目以降でお示しさせていただいております。

まず1つ目のポツですが、我が国では、運用会社、販売会社の多くが同一グループに属しており、他国に比して利益相反が起こりやすい構造となっていることはないか。これを踏まえると、我が国において家計の安定的な資産形成を図る上で、顧客の立場に立ったアドバイスを行う担い手(独立系アドバイザー等)の育成が重要であるとともに、金融機関側でも真に実効的な利益相反管理を実行することが重要ではないか。既に金融商品取引法等で利益相反管理体制の整備義務などが定められ、業者においても利益相反管理統括部署の設置、利益相反管理方針の策定・公表などの対応がとられてきたが、グローバルな水準で見て、真に実効的な利益相反管理が行われていると考えられるか。

それから、もう1枚おめくりいただきまして、真に実効的な利益相反管理を行うためには、単に利益相反のおそれがある旨の開示にとどまることなく、各主体が自らの実態を踏まえて、利益相反が起こり得る部署・会社間の情報遮断等利益相反を回避するための措置や利益相反が起こり得る取引の回避、中止、内容の変更等、さまざまな手法を適切に組み合わせること。定期的に検証を行った上で、利益相反管理のあり方について不断の見直しを行うことなどが重要ではないか。真に利益相反管理が行われていたとしても、顧客からその取組みが見えていないのではないか。理解を得ていくためには、その取組みについて「見える化」を進めていく必要があるのではないか。その他、利益相反の管理等に関して留意しておくべきことがあるかと。このような論点を掲げさせていただきました。

このような論点も参考にしつつ、今日のご議論をいただければと思います。

私の説明は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

なお、本日ご欠席の永沢委員から書面にてご意見の提出をいただいておりますので、お手元に配付させていただいております。

それでは、今の事務局からのご説明を踏まえまして、皆様方からご質問、ご意見、その他のどんな点でもお気づきの点をお出しいただきたいと思います。どなたからでも。上柳委員、それから黒沼委員の順で。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

質問なのですが、今日いただいた資料の中で、外国の動向、アメリカのDOLのフィデューシャリー・デューティーの新しいルールであるとか、あるいは2018年から施行されると書いてありますけれども、ヨーロッパのMiFIDIIに、大変興味があります。その中でも特に、単なるガバナンスの問題だけではなくて、手数料なりインセンティブの問題について切り込んでいるというところが注目されるのではないかと思っております。単に情報を遮断するとか、あるいはどちらかの利益を優先するというようなことを決めるだけではなくて、具体的な経済的なお金の流れのところを規制しているというところが注目されると思っています。その関係で、11ページのMiFIDIIの、第三者からのあらゆる金銭的あるいは非金銭的な報酬等の受領の禁止ということに、もしこれが施行されると、例えば今日の資料でいうと12ページにあるような、販売会社が顧客からだけではなくて運用会社からもお金をいただくということは、これはもう全面禁止になるのでしょうか。あるいは、13ページのように系列の運用会社が信託報酬をもらうということ、これも全面禁止になるのですか。それとも例外もあるのかなと思いますが、もし今の時点でわかることがあればご教示いただきたい。あるいは、私もDOLの関係などかなり調べてみましたが、まだよくわからないので、これから決まるということなのかもしれないということも含めての質問です。

【齋藤市場課長】

今のご質問に関しては、まず2つございまして、11ページをご覧いただくと、MiFIDIIのほうには独立した立場からの投資助言を行う場合となっておりまして、要するに、「独立した立場からのアドバイスをする人ですよ、私は」という場合には受け取ってはならない。逆に言えば、受け取った場合には「あなたは独立した立場ではない」ということなので、全面禁止かというと、要するに独立した立場の人に関しては禁止されるというような理解をしていただければと思います。

それからもう一つは、右側にありますように、欧州委員会の委任指令のところで、僅少な非金銭的な利益の条件等について詳細に規定ということでございまして、原則禁止ではございますけれども、全くゼロになるということではなくて、その例外規定を設けると。その例外規定は具体的なものとしてどうするのかというのが、まだ詳細には定まっていないという状況になってございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。今後の勉強課題だと思います。12ページ以降のこの類型がアメリカの、今まだ完全にルールが確定しているわけではないと思いますが、新しいERISAのルールと、それからEUというか、ヨーロッパの各国を見たほうがいいのかもしれませんが、でどうなるのかというのは、ちょっと研究課題ですね。それから、ご指摘いただいたフィーとかコミッションについてのルールというのも、12ページ以降の類型で、例えばですけれども、アメリカの新しいERISAのルールでどうなるのかとか、そういうことを整理したほうがいいということはあると思います。今後の課題とさせていただきます。また引き続き皆様方にご議論、ご審議をいただく上で、もし参考になるようなものが作れれば、作っていただくということにしたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは、黒沼先生、どうぞ。

【黒沼委員】

現状認識のための質問なのですけれども、平成20年の改正で金融機関に利益相反管理のための体制整備義務が課されました。これは、当時、金融業はグループ企業として行われているということを前提とした体制整備義務だったと思います。今日、例に出してもらっている12ページ以下の利益相反のおそれのある典型的な取引例というのは、問題があるだろうなということはよく理解できるのですが、ここに例として挙げられている取引は、利益相反管理体制の整備上、利益相反のおそれのある取引として特定され、類型化されるべき取引だと、そういう解釈といいますか、そういうことでやってきたものなのか、それを超えるものなのか。もし従来、利益相反のおそれのある取引として特定されたものであれば、管理体制が作られているはずですが、その管理体制について、例えば監督をしてきて監督上問題があったということなのか、そのあたりのことを教えていただければと思います。

【齋藤市場課長】

まず、ここに掲げられている取引例に関しては、原則として今、黒沼先生がご指摘になったように、今の金商法等に基づく利益相反管理体制を整備する上で利益相反の管理の対象となる取引の中に含まれるものと考えています。

それから、実際どうなっているのかというところでございますが、そこは実際には検査・監督を行っているところが答えるべきことかと思いますけれども、少なくとも法令で定められているものに関して、大幅に逸脱しているような状況にあるということでは必ずしもないということでよろしいかと思います。ただ、法令で定められているミニマムスタンダードを守っていればそれで足りるのか、顧客本位の業務運営をする上で利益相反の管理をどのようにやっていくことが本来の顧客本位の業務運営に資するのかということは、法令のミニマムスタンダードを守っているということだけで全てが解決するものではないのではないかと考えているところでございます。しかも、公表されている内容を超えて色々なことをやっているかもしれないし、ただ、それが実際には顧客のほうには見えていないというようなこともあろうかと思いますので、論点のほうで掲げさせていただいているところでございます。

【黒沼委員】

わかりました。

【神田座長】

よろしゅうございますか。

【黒沼委員】

はい。

【神田座長】

平成20年改正のときはメインの部分の利益相反類型というのは今日ご議論いただく類型ではなくて、銀証分離であったことは確かですね。しかし、金商法上の規定からすれば、今ご説明があったように、これから議論いただくものというのも現在の法体系の中では含まれているという整理にはなるのではないかということですね。

他にご質問、あるいはご意見、その他ありましたら、ぜひお願いします。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

2点、意見を申し上げたいのですが、1つは、多分、この利益相反の問題というのは、ここでご指摘あるようなグループ内で販売と運用をしているというような場合にも非常に問題がある可能性があるというのは確かですが、やはり一番深刻な問題になり得るのは、先ほどの上柳委員のご質問とちょっと関連するのですけれども、独立しているということ、あるいは中立的であるということを標榜していながら、実はその裏で特定の結びつきを持っていて、それが顧客に見えていない。だから、顧客には客観的・中立的なアドバイスだという見せ方をしながら、実は特殊な金銭的なインセンティブに基づいて偏った助言をしているというようなケース、これがやはり一番深刻な問題だと思います。海外ではそういうので問題になった事例があったと思いますし、日本においても、客観的な投資助言をしていると称して特定の業者から手数料を受け取って、事実上、販売代理店みたいなことをしていたということで、行政処分を受けたケースが実際にあったと記憶しておりますが、そういうことがやはり問題になり得るという認識は共有する必要があるのかなと思っております。もちろん、グループ会社の中での利益相反が別に放置しておいていいとか、そういうことを言っているわけではないのですけれども、グループ会社の場合は、逆に、どうせそのグループ内のものばっかり勧めてくるのだろうというような誤解を顧客に持たれているようなケースもあるのではないかなと思っておりまして、つまり、客観的には結構色々なものを推奨しているのだけれども、そこのところが逆に顧客に誤解されているというようなケースもあるのかなと。これが第1点でございます。

それから2番目は、この販売とか推奨とかいう話になりますと、どうしても対面でのやりとりというのが一番ポイントになってくるように思うのでありますが、最近、ネット広告とかネットの画面も随分色々なものが出てきていまして、例えばネット銀行のサイトに行くと、これがお勧めですみたいなのが――お勧めという言い方をしていたかどうかわかりませんけれども、出てくるのがありますよね。具体的な商品の広告に。これなんかは、商品の広告が出てくる順番とか、どこへ出てくるかということが実は非常に顧客に影響を及ぼすのでありますけれども、必ずしも個別に声をかけて推奨しているのではないと。こういうケースでも、一体どういう基準で商品がまさに並べられているのか。永沢委員からのご意見にもありますが、どういうことでそもそもそういうラインナップにしているのか、どういう順番で勧めているのかと、ここが重要だというご指摘がありますけれども、私、対面という場面だけではなくてネットについても非常に重要だと思っておりまして、その点、これは結局、監督でしっかり見ていただくということになるのかもしれませんが、留意する必要があるなと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

上田委員、島田委員の順で。上田委員、どうぞ。

【上田委員】

ありがとうございます。まず、利益相反については、5ページから8ページに、国内の金融機関における各業態にその範囲というものが、最後のところに範囲が明確化されております。この範囲の定義は、私が拝見している海外の事例、特にイギリスのスチュワードシップ・コードもこの辺を明確にするようにというようなことを出していたりするのですが、それと比べると狭くて、グループ内の親会社・子会社に限定しているような気がいたします。これは、金商法とか各業法の解釈をこのように一番真っ黒のところを解釈すればこうなるというところからの帰結なのかなとも思います。ただ、12ページ以下、幾つか類型化されているものを見る限り、グループ内での利益相反のみならず、その取引先ですね、グループ外のお客様間のものも含めた利益相反というものをここで議論していくということであれば、資金を預かっている顧客、アセットオーナーや個人投資家に対する受託者責任と、グループ内の別の部門が持っている取引先企業という収益活動の相手方との間で利益がぶつかる局面が生じるのではないか。そうなると現状の範囲だけでは網羅し切れていないのかなと思います。

ただ、16ページのコメント、私がしたコメントのような記憶がありますが、金融グループ内での利益相反というのは日本に限ったことではないというのは、20年ぐらい前のイギリスの論文を読んでいても出てきますので、そもそも利益相反の完全不可避というのは不可能で、OECDの原則にもありますが、不可避な上でどうするかという議論をやるべきなのかなと思っています。

最後の18ページ以下のところに、グローバルな水準で見て日本は遅れているのかどうかという問いかけがあります。先週、OECDの会合に出てここの議論について問いかけしてみたのですが、まず、日本について利益相反が問題視されるということは実はあまりなくて、基本的にはクリーンで信頼性があるという前提がある。ここの信頼感は我々は自負を持ってもいいとは思うのですが、ただし、海外で議論にならない論点が我が国では発生しているのではないかなと思っております。例えば、大手の運用機関というものが金融グループ内にいまだに大きく存在しているということ。もう一つは、1エンティティの中に法人部門と運用部門が併存しているという形。この2つについては、やはり突っ込まれるとなかなか反論しづらいというところで、問題があるかのごとく言われていると、実際問題あるのかもしれませんが、と思います。

保険会社については、海外からのアンケートの結果で、17ページの上から4つ目の回答者Legal&General Investment Management、これは親会社が保険会社で、回答者は運用子会社になるのですが、ここも数年前に親会社の保険会社の事実上運用資産を子会社に全部移管しているような状況のようです。多分回答したのは私の知り合いだと思うのですが、彼女曰く、現場レベルにおいては、親会社の影響力ってほとんど考えたことがないと。つまり独立の判断で運用しているということなので、ここまではっきり言い切れる状況に日本がなれば別段問題ないのだと思います。そうではないとすれば、そういったところを解決すべきかと思います。

もう一つ、1つのエンティティ内のものとして、法人部門と運用部門の併存、信託銀行形態なのですが、これも日本独自のものでして、なかなか海外の事例を参考にというのは難しいものかと思います。ウォールは多分きちんとあるはずなのですが、現状、アセットオーナーから見ると、ウォールを乗り越えた影響力、すなわち法人部門の影響力が受託者責任を預かっている運用部門に対してあるのではないかと懸念を持たれていることも事実なのです。その懸念に対してどう払拭していくかという仕組みを見せないと、そもそもが利益相反のある組織ですから、いかに信頼できる形にするかと、これが重要なのかなと思います。ということで、基本的に全ての問題、1つのエンティティとか1つの金融グループ内にインベストメント・チェーンの幾つかの機能がもう入り込んでいるということなので、これはある程度透明性を作るプロセスというのを、今までのようなミニマムなコンプラ対応ではなくて説明責任というところで強めに出していかないと、なかなか信頼感を得ることは難しいのかなと思います。

その中でもどんな点があるのかなと考えたものがあって、3つぐらい考えてみたのですが、1つ目が人事・報酬の独立性です。運用会社の社長を親会社から派遣する、これは、グループ経営管理としてグループ内で運用部門という大事な部門を育てていくということで何となくわかるのですが、ただ、それ以外の取締役も全て親会社の出向者であるとか、運用会社でプロパー採用した人が上に上がれない、あるいは外部の人が入らないというのはちょっとどうなのかと思います。また、親会社の業績で子運用会社の職員の報酬が決まってしまうと、誰のほうを向いて運用しているかわからなくなる。これは、言うのは簡単ですけど、結構難しいかなとわかりながら申し上げています。

2つ目が意思決定プロセスの客観性と透明性です。これは、取締役会の中に社外の人を入れる、あるいは、ここの類型にも出ていますが、議決権行使、投資判断、商品開発等において社外の目を入れる、有識者を入れるという形で客観性を高める。さらに、議事録を備置して、当局あるいはお客さん、アセットオーナー等から追及されたときにそれを出せる形にしておく。要は反証をそろえておくということです。これは、やろうと思えばそれほど難しくなくできるのかなと思っています。

最後に、これは別のフォローアップ会議のほうでも議題になっていますが、議決権行使結果の個別開示です。私は実は個別開示の義務化には反対ですが、ただ、運用プロセスにおいて利益相反の影響はないですということを主張するために、議決権行使を個別開示してしまえば確かに反証としては一番強いのかもしれません。そういう選択肢の一つとして、個別開示を一種の戦略として使う運用会社、機関投資家が出れば、これは透明性を高めてやっていますと、利益相反をしっかり管理していますということを見せる、「見える化」という意味では意味があるのかなとも思います。現に組織形態上利益相反は回避できないわけですから、その影響に対する懸念を払拭するという取組みを真剣に考えるタイミングなのかなと思います。

少々長くなりました。申し訳ありません。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、島田委員、どうぞ。

【島田委員】

運用会社と販売会社が同一金融グループに属していることによって利益相反が起こりやすい構造ではないかという指摘については、例えばグループの運用会社の商品を販売することでグループ内の収益の最大化を図るといった点が最もわかりやすく想起されますが、実際にメガバンクや大手証券において系列の運用会社の商品を多数取り扱う状況はあります。一方で競合の金融機関の系列の商品を取り扱わないというのは、ライバルの商品ですから当然のことではあると思いますけれども、そのことによってコストや運用成績などにおいて直接投資家に大きなデメリットがあるとは断定できないように思います。

むしろ、このことの弊害は、同種あるいは類似の投資信託をそれぞれの系列運用会社が作ることで投資信託の本数が増加する。そして、流行が廃れたときに小規模投信が累々と並ぶという原因になっており、これが結果として運用会社の収益を圧迫する。そして、間接的に投資家にそのコストがはね返ってくるという点にあると思います。また、日本の投資信託のコストの上昇については系列の問題ではなく、むしろ系列の販売会社を持たない外資系などの運用会社が進出してきたことで、大手販売会社に自社の運用商品を大々的に取り扱ってもらうために、従来あったものよりもやや高目の手数料率を設定したこと。それを受けて本邦系の運用会社もこのくらいの手数料でもいいのだということで、横並びで料率を上げていき、その連鎖の中で手数料の水準が上昇してきたという歴史があると思います。もちろん、投資対象の幅が海外あるいは新興国等に広がったということも一因ではあります。ですから、系列だから悪い、系列外ならよいとは言い切れないのではないかと思います。そういう意味では、利益相反については類型をもう少し広い範囲で考えて検討していくことが望まれるのではないかと思います。

また、運用会社において系列金融機関への売買発注などの問題は、情報開示によってかなり改善している部分があると思います。ただし、運用商品そのものの構造上、系列ないしは系列外においてもさまざまな収益を生むような商品構成となっている金融商品が存在しないか、例えばファンド・オブ・ファンズにおける運用コストが妥当であるか、あるいは為替取引や金融派生商品の活用頻度、コストあるいは組み入れる証券化商品などに係るコストについて、本当に運用において必要であるのか、そしてそのコスト水準が妥当であるのかということについては、検証を行っていき、必要であれば開示の他、対応を検討する必要があるように思います。金融商品の複雑化において、このような、コストの「見える化」という話がよくありますけれども、コストの「見えない化」によって投資家が必要以上のコストを負っていないか、投資家の信頼を得るためには確認していただければと思います。

それから、独立系アドバイザーがいるとよいのではないかという議論については、長年繰り返されており、まさにそのとおりだと思います。現状では、ライフプランから資産運用までアドバイスできるファイナンシャルプランナーにおいて個別商品のアドバイスはできません。また、金融機関のお客様がアドバイスを受けているのは金融機関の販売担当者で、少し強く申しますと、金融商品を販売するプロではあっても、中立的な金融商品選択のプロではありません。この点については、個別商品まで踏み込んで中立的にアドバイスできる資格制度を検討するか、現状のFP資格における業務の拡大、あるいは証券外務員資格を一定の条件をつけて個人に付与するなど、現在の資格制度を再構築するか、あるいは海外で見受ける例でありますが、同じ系列内であっても金融機関内部において専任アドバイザーと販売員を区別する、あるいは中立的なアドバイザー会社として別立てにするなど、中立的なアドバイザーを育てるということを実現するために何が必要かということを主眼に検討していただければと思います。

その際、中立的なアドバイザーが自立した職業として成り立つためには、プラットフォームなどの環境整備、インフラ整備も必要だと思いますので、ここもご議論いただければと思います。

利益相反管理体制については、それぞれの金融機関がしっかりお取り組みのことと思います。そこで、実際の業務においてその仕組みが有効に機能しているかについては、金融商品や投資、運用に対する私たち一般の人間の信頼を増すためにも、外部が納得できるような説明や開示、検証が行われるとよいと思います。

定期的な検証において不断の見直しが必要という点は、そのとおりだと思います。特に、常に進化する運用手法や金融商品の多様化の中で、利益相反やコストがどんどん深くに潜行して見えなくなってしまうことも懸念されます。そこで、運用や商品の変化のスピードに適応した検証が常に必要とされると思います。販売において収益を得る金融機関と、なるべく安いコストで運用成果を享受したい投資家は、そもそも利益の綱引きをする関係にあると思います。ですから、外部の方々にも納得のいく情報開示や説明を行うよう金融機関がより積極的にお取り組みいただき、分かりやすく説明していただき、情報開示をしていただくことによって、今後、より広く、より多くの方に資産運用や投資に取り組んでいただけると思いますし、また、海外においても日本の資産運用ビジネスがより信頼を得ることができるようになると思います。

もう一つ、最後に、ここの場所でお話をするのは適当ではないかと思いますが、国民の長期積立て投資による資産形成という点では、私たち一般の人間にとっては全く同じ目的であるということで、少し確定拠出年金のお話をさせていただきたいと思います。グループ、系列という点では、運営管理機関と取扱商品の選定、それらのコスト水準について、この論点で指摘されているような加入者との利益相反が顕著に見られる場合が確定拠出年金において存在していると思います。ですから、この場をお借りして、ぜひこの点をご指摘させていただきたいと思いました。今後、NISAでの積立てなどやNISAの恒久化などが実現した場合にも、勤務先企業を通じてそうした投資を行う方たちがどんどん増えてくる可能性もあります。その場合にも確定拠出年金と同様のことが起きる可能性があると思います。ですから、企業と取引金融機関について、加入者や投資家の一人一人の立場で選択の自由があってよいと思いますし、1つの金融機関だけでは競争が起こらない、あるいは比較することもできなくなってしまうので、この点についても今後ご議論をしていただければと思っております。

どうもありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】

このWGで利益相反ということを議論する視点として、こういう問題があることによって日本の国民の資産形成が諸外国と比べるとなかなか進みにくいとか、日本の運用機関の競争力にも問題が生じるという面があるではないかとは思います。従って、このワーキング・グループが結論を出すときに、この問題を何らかの形で組み入れていただく必要があると思います。

その前提で、具体的に利益相反の何が問題かという典型例が4点資料に示されていますので、この点についてのコメントをしたいと思います。14ページ、15ページのマル3マル4、機関投資家、年金等の運用についての議論に関しては、永沢さんのメモにもありましたけれども、運用機関の国内株を含め、運用に関しては、特に大手は厳しいパフォーマンス競争にさらされていることを強調したいと思います。具体的にアクティブ運用の現場では、例えば300とか400銘柄の投資候補ユニバースの中から、ファンドマネジャーが1つのファンドについて100銘柄前後のものを絞り込むわけですが、その際、数人から10人程度のアナリストが徹底的に調べた上でポートフォリオ全体のリスク管理も考慮して投資先銘柄を選定していくわけですね。こうした組織的プロセスに従って売買判断をしていくルールになっています。そのやり方については投資家にもきちんと説明をする、あるいは運用に関する年金コンサルタントに対してもそういう手法を説明し、実績もあることを踏まえてコンサルタントからの推薦も受けられる。このように運用の仕組みというのはかなり確立しているわけです。そういった投資判断の仕組みのあるところで、例えば資料に書いてありますような同じグループ内企業の都合、政策的都合などのよって、社長から「おい、ちょっとこの株やめて、こっちにしておけよ」みたいなこと事は、入ってくる余地は基本的にはまずないと思います。そんなことをやったら、ファンドマネジャーもプロですから、とてもやってられないということになりますし、ファンドマネジャーの報酬は当然運用成績によって決まりますから、結果的に成績が悪化するような投資判断に対する介入ということは、現時点では機関投資家運用の世界ではほとんどないのではないでしょうか。

それから、議決権行使に関しても、確かに多少の噂は耳にすることはありますけれども、例えばアクティブ運用で1つの大手の運用会社ですと、6月の株主総会の場合、何百から1,000という投資先企業の議案に対して決定しているわけです。その場合、一般的には担当部門が一定の公表された議決権行使基準に基づいて事務的に判断をしているのが現実だと思います。おそらく政策判断をしなければいけない、新聞に大きく出るようなM&Aや不祥事があった案件、5件か10件ぐらいのビッグイシューについては、さまざまな政策判断があり得ると思うのですが、それ以外の99%ぐらいについては、現場の担当レベルで行われていることのほうが一般的なのではないかと私は思っております。

そういう意味では、このマル3番、マル4番の利益相反ということに関しては、実態的には必ずしも大きな問題ではないと思いますが、ここでさまざまなご意見が出る、海外からも出る、ことは十分ありうることだと思いますので、そうしたご意見に対して十分答えられるだけの仕組みと、きちっとした説明責任を果たしていく必要があると思います。あるいは、もし不十分な点があれば体制を整える必要がある。つまり、この問題については、マル3番、マル4番に関しましては、ある種のベストプラクティスというのはある程度でき上がっていて、それとの比較においてチェックしていけばいいのではないかという感じがいたします。

それに対して、資料マル1番、マル2番の投信のほうは、これはなかなか問題が難しくて一概に言えない面もあると思います。例えばマル1番の販売会社が手数料の高い商品を中心に売っていくということに関して、自由な資本主義の世界で利益を最大にしていこうと行動すること自体は違法でも何でもない。ある意味では当たり前のことだと思います。ではこれがなぜいけないかというのは色々な考え方があり得ると思いますが、要は、価格が高過ぎる。つまり、価格とベネフィットと比べた場合に明らかにベネフィットが価格よりも少な過ぎて、言ってみれば商品性としてはかなり、言葉はちょっとあれですけど、不当な部分があると。そうすると、なぜそんなものが、一般的には多少あるとしても、長期的にそういうことがあり得るのかという議論もあるわけです。もちろん人間は合理的でない部分もあると思いますから、例えば夢のためにお客さんが高い価格を払っていくということはあるかもしれない。そういう夢を売る商品というのはこの世の中にもたくさんあるわけです。ただ、投信の場合、それでいいのかという疑問は残ります。

結局何が言いたいかといいますと、このマル1のケースというのは、実は理屈で攻めていくとなかなか難しい点があるのかなという感じがいたしまして、むしろどちらかといいますと、今お話ししましたような消費者保護の観点で見るという必要は当然あるかなということですが、一方では、お客さんがなぜこういうことを許容しているか、あるいはこういうことが仮にでも現実にあるとした場合には、なぜ起きているかというと、明らかに情報が余りにも非対称的であるとか、それから、あるお客さんにアクセスする情報あるいは業者が非常に限られているところで、情報が遮断されたところでこういうことが起きるということなので、最終的には、投資家教育の問題ともいえるでしょう。むしろ先程何人かの方がおっしゃった手数料情報の公開を含め、情報をいかに幅広く判断できるような形にするか、あるいは適合性の問題とか、さまざまな施策の合わせ技として対応しいくのかなと思います。一方で、これらの問題に関しては、これまでも法律があり、規制と検査があって、ミニマムスタンダードという形ではおそらく業界としてはもう十分やっているよというご意見も出てくると思います。しかし、何かどうもここから漏れているようなこともあるらしいというところで、ミニマムスタンダードをある程度もう少し上げていくということが、特に適合性とか、リスクの説明という点ではあり得るかと思います。

ただ、将来の国民の資産形成や、運用機関の国際競争力をつけるという観点から、中・長期的と言いましょうか、本格的な議論をすると、やはり米の投信制度のストラクチャーには、今日は深く入りませんけれども、投資家保護の仕組みを含め、法的にはかなり違いがあります。たとえば、英米の投資信託に関しては投資家保護のためのボードというものが存在しておりますが、日本の場合は投資家を保護する仕組みが必ずしもないというようなことについて、今後の課題があろうかと思います。

それから、運用機関のガバナンスのことで一言。前にも申し上げましたけれども、運用会社がグローバルなファイナンシャルグループの子会社の一員としてやっているというのは日本だけの例ではなくて世界中に実例は多くはあります。一方で、大手独立系の運用機関も世界で相当あって、その中に非常に運用成績に優れ、資産も多く集まる成功例もいくつか見られ、独立系一般の評価を高めているという事も言えます。要するに事業として成功する基本的条件は卓越した運用力という事です。一方で、大手のファイナンシャルグループの中にあっても、戦略として高度の運用力を確立していこうというところの中には、海外でももちろん成功の実例があるわけです。ですから、運用機関の株主が大手金融機関であることがいいか悪いかということは、あまり現実的でないと思います。要は株主の戦略の問題でしょうか。

突き詰めますと、投資家の中・長期的な利益を実現するような体制をつくり、運用能力を高めて、最終的にパフォーマンス実績も高くなった結果投資家の資金も流入し、事業も拡大するというビジネスモデルを作ったところが実は成功しているわけです。ですから、運用事業というのはかなり中・長期的な視点を持ってなければ成功しないということは経験的にも言えることだと思います。ところが、特に日本の場合、金融機関の競争が非常に激しいとか、それから金融機関の収益力が欧米と比較しても十分でない、ということがあって、なかなか中・長期的な戦略がとりにくいという現実があります。その結果こういうことが起きている。つまり、利益相反のある意味の根幹というのは中・長期利益と短期利益の志向のコンフリクトではないでしょうか。おそらく現場の方々も何とか中・長期のことも考えたいけれども、背に腹はかえられなくて、当期の利益もある程度上げていかなきゃいけないという、その悩みの中でバランスをとっているけど、多分、海外のより高収益なところと比較するとそのバランスがどうしても短期のほうに偏っているということはあるのかなと思います。逆に言いますと、そういう中でも大手で、特にある程度内容が良好で、収益的にも高いところがより中・長期的な戦略をとっていくことを、例えば今回のWGのようなところで後押ししていくというようなことはあるのかなと思います。逆に、全体に関してそれを進めるというのはなかなか難しいのかなという感じがいたしました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、竹川委員、佃委員、林田委員の順で、竹川委員からお願いします。

【竹川委員】

まず、論点マル1にありましたような、多くが同一グループに属しており、利益相反が起こりやすい構造になっているのではないかという点ですが、同一グループに属していることで、そういった懸念を持たれるということはあるとは思います。そこについてどうしていったらいいかという観点から意見を申し上げたいと思います。

まず、運用会社におかれましては情報開示をしていただきたいということです。現状では、経営のトップ、それからマネジメント層の経歴等をしっかりと公開している会社が少ないと思います。先ほど上田委員のご意見にもありましたが、親会社から社長が来て一定期間で短期的に入れ替わるというような状態もございます。例えば運用会社、運用に関するそういった業務の経験があるのか、ないのか、単にひたすら営業をやってきた方がトップに立たれるのかなど、投資家サイドからみると、どういう方が運用会社のトップに立たれて、どういったことを掲げて経営をしていくのかというところをはっきりと公開していただきたいと思います。また、アメリカなどでは、自社の投信の保有の有無、また、保有する金額のレンジの公表などもしておりますので、投資家サイドと同じボートに乗っているのかどうかといったことも含めて、そういったことも可能な限り公開していくことが必要なのではないかと思っています。

2点目に、販売会社には商品選定の基準については公開していただきたいと思います。どういう基準で商品を選定して販売をしているのか。そこにおいて、例えばグループ内の投信の取扱いの比率等も公開していけば、特に疑念を持たれることもないのではないかと思われます。また、販売する際に、同じアセットクラスの商品についてはきちんと全て提示をした上で投資家に選んでいただくことが望まれます。というのも、私は投資家さんの交流会を主催しているのですが、先日、ある経済評論家さんの本を読んで初心者の投資家さんがある銀行に行って「インデックスファンドに興味がある」と言ったところ、「インデックスファンドというのは相場に応じて短期的に売り買いするものなので、初心者には向いていない」と言われたというような事例もございました。初心者で資産形成のツールとして投信を使いたいと思ってくれた方に対してそういった対応をするというのは、少々疑問を感じるところであります。ですので、なぜ同じアセットクラスの中でその商品を勧めるのか――ちなみに、そこの銀行さんは売れ筋の投信を勧めてきたそうですが、なぜ同じアセットクラスの商品の中でそれを勧めるのかは、きちんと理由も含めて提示をする際には説明をしていただきたいと思います。

販社さんに対してはもう一つ、販売手数料重視ではなくて、これは大分変わってはきていますが、残高に応じた報酬制度、成果主義、成果報酬の制度にシフトをしていくというのが一番いいのではないかと思っております。

そして3つ目、独立系のアドバイザーについて論点のマル1で入っていますが、独立系のアドバイザーについては一括りにするのではなく、議論をする上で、きちんと区分というか、定義をする必要があると思います、というのも、独立系のアドバイザーと一言で言っても、金融商品を販売する人と販売しない人がいるわけで、販売をせずに投資の助言だけをするのか、販売をする人でも、証券外務員資格を持っていてコミッションを取るタイプの従来型の独立系の営業員というタイプの方もいらっしゃれば、アメリカのRIAのように個人向けの一任運用も含めてアドバイスを行って、残高に応じたフィーを取るというような、そういったタイプもあるかと思います。現状として、独立系アドバイザーを増やしていこう、育成していこうといったときに、どのタイプのアドバイザーを増やしていこうと思っているのかをきちんと区分けして考える必要があるのではないでしょうか。現状では、例えば独立系の中立的な立場でアドバイスを行いますよということで独立系のファイナンシャルアドバイザーもしくはファイナンシャルプランナーと名乗っていながら、特定の金融商品を後から販売するということで、苦情が来ているケースもあります。ですので、まず、金融商品を販売する立場なのか、しない立場なのか、販売をしているのであれば、どこの金融機関から手数料を得ているのか、手数料はどの程度取っているのかということは、事前にきちんと公開をしてから販売を行うべきだと思います。最終的には、独立系の営業担当者を増やしていくのであれば、アメリカのRIAの制度であるとか、イギリスのRDRのような制度・枠組みといったものをしっかりと作っていかないと、なかなか育成は進まないのではないかと思っています。普及をすすめるに当たって、制度・枠組みをしっかりと作った上で議論を進めるべきではないかと思っています。

最後に、グループ間の利益相反等々の議論というのは以前から行われていることだと思います。本来はそれに加えて、個人投資家から見て、もっと個性的な運用会社が増えることも大切なのではないかと思います。先ほどの鹿毛委員のご意見にもありましたが、中・長期的に個人投資家のことを考えて、どういう投資哲学で、どういう運用スタイルで、どういう運用をするかをしっかり考える独立系の運用会社がもっと増えることが大切だと考えます。独立系が必ずしもいいとは言えませんが、選択肢が増えることが必要なのではないでしょうか。現状では、起業コストがかかる、その他いろいろ問題もあってなかなか増えていないという現状があります。運用担当者あるいはチームが運用会社を起こせるようなプラットフォームを作るようなことも必要なのではないかとおっしゃる方もいらっしゃいますし、実際に運用に携わってきた方たちが、例えば運用しているファンドを持って独立できるような仕組みを作るといった仕組みも必要かもしれません。いずれにしても、もう少し選択肢を増やす、中・長期で頑張っている運用会社の姿が見えるような形を作っていくとよいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

佃委員、どうぞ。

【佃委員】

ありがとうございます。

何点か質問も含めてコメントさせていただければと思います。まず1点目が、先ほど島田委員からご説明ございました独立系のアドバイザーに関して、18ページ、論点マル1の2番目のブレットポイントのところで、「顧客の立場に立ったアドバイスを行う担い手(独立系アドバイザー等)の育成が重要であるとともに」という点に関してです。私も個人的にはそのとおりだと思いますが、事務局ないし島田委員へ2つ質問がございます。1つ目は、独立系のアドバイザーがインベストメント・チェーンに入ってくることによって、顧客にとってはコストアップ要因になると考えますが、そこのコストベネフィットを現時点でどのようにお考えになられているか。販売チャネルも違えば歴史も違う日本において、果たしてそれが成立するのかどうかというのが1つ目の質問です。

それから、2つ目の質問が、独立アドバイザーについてです。独立系アドバイザーといいながら、独立性の担保をどうするかといった点は非常に難しい話だと思います。日本の場合、販社、特に銀行チャネルの力が強いといった中で、例えば独立系のアドバイザーが真に顧客の立場に立ったアドバイスをする上で、独立性の担保をどうしていくかというのは非常に大事な論点かなと思いますので、このあたりをどう考えておられるかというのはぜひお伺いしたいと思います。

以上が1点目の独立系アドバイザーに関する質問です。

それから2点目が、13ページです。日本では同一グループの中で販売会社と運用会社があるといった話です。日本は欧米と違うところもあるけれども、逆に欧米でも同一グループ内、金融コングロマリットの中に資産運用会社が位置づけられている例があります。例えばそういう資産運用会社を見ると、国内にとどまらずグローバル展開を非常に積極的にされている資産運用会社が欧米の場合は幾つもあります。先ほど竹川委員からお話がありました日本における独立系の資産運用会社を育成していくというのは大事だというのはわかるのですが、一方で、国民の貯蓄から資産形成へということを考えると、キーはやはりグローバルの経済成長を日本の金融資産に取り込むことですので、グローバルに展開できていく力というのは非常に大事だと思います。表では製造メーカーである投資信託会社が商品提供しているように見えるのですが、実はサブアドバイザリーでアメリカの資産運用会社に運用を外注しているみたいな話があって、そのためにインベストメント・チェーン全体でコストがかかっている部分はやはりあると思いますので、日本の資産運用会社を戦略的にグローバルに戦えるような機関にしていかないと、国民の貯蓄を資産形成につなげていくというのは難しいのではないかなと個人的には考えています。

そういった意味で、3点目になりますが、例えばアメリカの資産運用会社のアライアンス・バーンスタインは、バーンスタインとしてディープバリューのエクイティの運用しかやってなかったのが、買収も含めたマルチブランド戦略で、今や色々な広範な顧客ニーズに応えるようになり、非常に成長しています。実は、フランスのAXAグループの子会社です。これは提案ですけれども、幾つかの欧米における金融コングロマリット傘下におけるそういう資産運用会社で大きく発展している企業の事例、ベストプラクティスを研究し、その中でグループとして利益相反管理をどうやっているかといった点も含めて日本にとって参考になる点が多々あるのではないかなと思いますので、その点はぜひともご検討いただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

隣の林田委員、どうぞ。

【林田委員】

ありがとうございます。

利益相反の取引を防ぐために当局も業界も取組みを進めておられて、実際に利益相反取引がどの程度あるのかという点については、私自身もあまり情報を持っておりませんし、皆様のお話からも確たることはよくわからないなというのは感想として持ちました。

ただ、問題点として指摘できるのは、必ずしも業者が顧客ファーストで対応していないのではないかという不信感が一般の投資家などに根強いだろうということだと思います。利益相反の問題を突き詰めていきますと、販売員から管理職、経営陣まで、会社はどっちを向いて仕事をしているのかと。上役の顔色を見ているのか、大口の顧客を見ているのか、それとも一般の顧客を見ているのか、そういった問題に帰着するのかなという気がします。だからといって、何かがんじがらめに規制を強くしていけばいいのかというと、そうなりますと健全な競争みたいなものも阻害してしまうのではないかという気もいたしますので、法律などで微に入り細をうがって規制していくというよりは、むしろ金融機関の方々が顧客優先という原則を肝に銘じて、利益相反をみずから追放していこうというやり方が適切なのではないのかなという、これも感想として持っております。

その際、何か点検すべき項目というのは色々あって、金融商品の仕組み、手数料の水準、運用会社と販売会社の関係性、それから営業スタッフの人事評価のやり方等々、極めて多岐にわたると思います。ですから、全社を挙げてというよりは、もうグループ全体で取り組んでいただきたいということを期待したいと思います。

あと、論点マル2にも指摘がありましたけれども、利益相反を防ぐ取組みの「見える化」というのは大変重要な観点だと思います。ただし、会社にとって何か都合のいいことばっかり「見える化」をしたのでは、その「見える化」の意義自体も薄れてしまうのではないかと思います。改善に努めてはいるけれども、なかなか克服できない課題といったようなものは必ずあるはずです。そうしたものも含めて見せていくということが「見える化」への信頼を高めるということにつながるのだろうと思いますので、各業者の方々には真摯な対応をしていただきたいなという希望を申し上げます。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

私の進行がよくなくて申し訳ありません。佃委員からご質問があったと思いますが、我々全員に向けた質問かと思い、必ずしも事務局向けの質問ではないかなと伺っていたのですけれども、事務局からご発言があればぜひお願いしたいと思います。

【齋藤市場課長】

論点のマル1のところに独立系アドバイザーの育成が重要であるという論点を掲げてある事務局としての趣旨に関するご質問かと思いますが、顧客本位の業務運営というか、家計の安定的な資産形成を図るという意味で、それは一般的に共通する話だと思いますけど、ただ、個々の家計を見た場合には、それぞれの家族構成とか、年齢とか、職業とか、収入とか、将来賃金であるとか、それぞれの家計が置かれている状況というのは様々なので、安定的な資産形成といっても実際にベストな、あるいは今よりベターな資産構成というのは千差万別だと思います。そういう意味で、自分にとってできるだけ今の自分の人生あるいは家族の人生といったことを考えたときにベストな資産形成はどのようにするべきなのかという、その選択肢を与える、あるいは適切な判断根拠を与えるという意味において、情報開示とかいうこと、あるいは利益相反の管理というか、防止というか、の観点から情報をできるだけ出していく、あるいは情報の非対称性を解消していくということは重要ではありますが、それをもってして家計のほうがベストな選択ができるのかといったときに、それを全て個人の金融リテラシーの向上で解決するというのは難しいのだろうと。それはやはりそれぞれの方の金融リテラシーの程度にもよりますし、また、日常生活の忙しさとかいうのにもよると思いますので、やはり誰かアドバイスをする人がいたほうがより最適な選択を行うことに近づくのではないかと。そのときに、必ずしも独立してない人のアドバイスを受けたとしてもそうならない可能性があるので、そういう意味において独立系の、要するにどちらかといえば家計の側に立ったアドバイスができる人というものの育成といったことが1つ、最終的な家計の安定的な資産形成を図る上で助けになるのではないかという観点から掲げているところでございます。

他方で、コストアップ要因になりますけれども、それが果たして成立するのかといったところは、結局のところ、取るフィーに対してどれだけ満足度があるかというような話になっていく、結局ビジネスとして成立するのかというようなことになろうかと思いますし、既にアメリカあるいはイギリスではそういう歴史があるので存在しているけど、日本で根付くのかというようなところは、文化とか国民性とか色々な要素も絡んでくるので、単純に、アメリカにあるから、イギリスにあるから、すぐできるというものではないと思っていますし、また、拙速な制度の枠組みにすると、かえって問題が起きるというようなこともあろうかと思います。ただ、いずれにしても、先ほど申し上げたように、家計の金融リテラシーを補助するような位置づけとして、このような担い手が育成されるということは一つの選択肢ではないかと思っているところでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、神作委員、池尾委員、大崎委員の順で。神作先生、どうぞ。

【神作委員】

ありがとうございます。金融サービスに関連してフィデューシャリーの議論をする意義は、利益相反と開示の2点に大きなポイントがあると思います。先ほど鹿毛委員からご指摘がありましたように、従来、法的な議論においてなされてきた利益相反の範囲よりも、利益相反の射程は相当に広がっているのだと思います。それはどこまで広がっているかというと、おそらく中立的な独立した業者がある行動を行う場合に比べて、あるいは、ある意思決定を行うという場合に比べて、何らかのバイアスがかかったり、インセンティブのゆがみが生じたりしてしまう場合を広く射程にとらえているのだと考えます。特に顧客のベストインタレストという観点から見ると、意思決定や行動にバイアスがかかる場合として、手数料や、あるいは上田委員からご指摘があった、人事とか報酬制度も顧客のベストインタレストという観点から見た場合に金融事業者の行動に影響を与え得るという話なのではないかと思います。したがって、ポイントは、顧客のベストインタレストという観点から、金融事業者の意思決定や行動に何らかのバイアスをかけるようなものをピックアップして、それに対応していくことが基本的な視点であると思います。

第2に、利益相反の中には、本日、プレゼンテーションの中で、例えば資料の3ページにございましたように、非常に深刻な利益相反はルールにより禁止することや、他のアプローチによる法的規制をするということが考えられますけれども、今日、主として議論されている問題は、まさに利益相反管理体制の問題として、つまり個々の金融事業者が自己の意思決定や行動に顧客のベストインタレストという観点から見てバイアスを与え得るようなものとしてどのような問題があるかを把握して、それに対して適切なコントロールをしていくことが重要であると思います。

少し観点を変えて申しますと、金融機関等の本体あるいは金融事業者の本体とかグループ全体で行える業務範囲を拡大してきたのは、日本の金融法制の近時の改革の大きな方向性でありますけれども、このような流れは、顧客の利益につながり得るという理由によって推進されてきたものです。利益相反は確かに理屈の上で生じるが、例えば複数の事業を営むことによって顧客にメリットが生じるはずであるという考え方から、金融事業者本体とかグループレベルでの業務範囲の拡大がなされてきて、さらに提供されるサービスが複雑化してきたという事情があると思います。そのような中で、先ほど述べたような広い意味の利益相反をどのようにコントロールするかという問題で、私は、象徴的だと思っておりますのは、1ページの利益相反管理体制整備義務の中に、法律の文言としては利益相反という言葉は使われておらず、顧客の利益という観点からこの条文が作られている点です。まさにこの趣旨と申しますか、顧客の利益を不当に害さないというのが利益相反管理体制ですけれども、さらに顧客の利益を増進していくためにはどのようにしていくべきかという議論があり、利益相反に対するコントロールは、不利益を防止するという消極的な側面であって、顧客の利益を増進するための方策についてもご検討いただく必要があるのではないかと思います。例えば同一のグループの中である種類の金融商品の組成と販売をしているというのも、確かに利益相反のおそれはありますが、他方で色々なメリットもあると思います。おそらく、不信感が強いというのは、そういったメリットが実感されずに、利益相反の疑いが強調されているという面があるのでしょう。このあたりの問題は、先ほど申しましたように、利益相反の管理とその開示によってかなりの部分が解決される問題なのではないかと思います。同一のグループで組成から販売まで行うことにより、より的確に顧客の利益を把握し、より良い金融商品の組成や販売方法の改善につなげることも可能だと思います。

ただ、そうは申しましても、やはり外形的な信頼性の確保というのは必要だと考えておりまして、永沢さんが本日提出されたペーパーの2枚目の一番最後を拝見しますと、米国ではグループの運用会社の商品の比率は5割を超えることがないように留意しているというプラクティスがあるようです。このような実務もやはり、先ほど、管理すべき利益相反を適切に管理すればむしろ顧客の利益にもつながるはずだということを申し上げましたけれども、しかし、他方で外形に対する一定の配慮というのが必要で、そのような観点からどのように金融事業者の行動や意思決定に顧客のベストインタレストという観点からバイアスを与えるような事項に対処していくかが重要になると思います。

見直す必要があるとすると、例えば利益相反の管理についての体制を作るときに、先ほどの行動や意思決定にバイアスがかかるというところが利益相反管理体制あるいはポリシーを作るというところで入ってきてしまっていると、趣旨が害されてしまうということだと思います。そういう意味では、この利益相反の管理体制あるいは利益相反の管理についてのポリシーを作るときに、まさにこういった意思決定や行動にどのような影響が生じ、どのような点に留意すべきなのかということを中立的・独立的な立場からきちんと作り、それを末端まで徹底していくということが非常に求められていると感じております。

それから、若干論点が外れますけれども、独立系のアドバイザーの育成や発展の重要性というのは、資料にもございましたし、先ほど島田委員も強調されておられたかと思いますけれども、このような観点は重要だと思います。顧客の投資目的や財産状況に照らして賢明な運用をするために、ノウ・ユア・カスタマー・ルールが実効的に遵守され、適切なアドバイスがなされることが、安定的な資産形成に資するゆえんであると考えるからです。他方独立系アドバイザーの方たちが出てくると、今度はそうでないものとの区別というのが顧客からわからないという、鹿毛委員の言葉ですと消費者保護的な問題、混同をどのように防ぐかといった新たな問題も出てき得ると思います。

取りとめのない長い話になってしまいましたけれども、私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

池尾先生、お願いします。

【池尾委員】

事務局資料の18ページの論点マル1の3番目の黒丸ですけれども、現状の取組みというか、対応ということに関して言うと、外形的には必要なことは行われているという話だと思います。ですが、外形的には整っていても実効性に対して疑いが持たれているということは、簡単に言って、制度に魂が入っていないというような懸念があるということですよね。

制度に魂を入れるというのはどういうことかというと、それは、例えばルールとかプリンシプルの内容が金融機関の構成員の人たちの間で内面化されているという状態になっているということだと思いますが、別の言い方をすると、適切なコーポレートカルチャー(企業文化)がちゃんと形成されているかどうかというレベルの話になると思います。それで、適切なコーポレートカルチャー(企業文化)の形成というのは別に精神論ではなくて、本当に適切なコーポレートカルチャーの形成を図ろうとすると、極めて具体的・能動的な取組みが必要になるわけでして、金融機関に関してリスク・アペタイトを巡る議論がありますが、それと基本的に同じような話だと思いますが、ちゃんと文書化するとか、それから、先ほどから出ている人事政策なんかに関しても、コーポレートカルチャー上望ましいとしていることを本当にやった人がちゃんと昇進するとか、報酬をちゃんともらえるようになるという、林田委員とかもおっしゃっていたような話と基本的には同じだと思いますが、例えばちゃんと顧客本位を実践した人が出世するというふうな人事政策になっていない限り、口先だけという話であって、決して文化として定着するということは起こらないと思います。ですので、精神論ではなくて、極めて具体的・能動的な取組みとして適切な企業文化の形成を図っているかどうかというのが問われている問題ではないかと思います。

それで、5ページの銀行の例の中には、下のほうのところで「研修・教育等を実施し、適切な利益相反管理について役職員に周知・徹底すること等を含め」という記述がちょっとあるのですが、他の例にはそういう記述は少なくとも事務局の資料で紹介されている範囲では見当たらなくて、それから、先ほど申しましたように、繰り返しで恐縮ですが、研修・教育等を実施するのは当然ですが、その程度のレベルにとどまる話ではなくて、人事政策とかのレベルから見直すというか、適合的なフレームワークをつくっていくという、そういうことをやってもらわないと多分制度に魂は入らないということで、外形上のルールをもっと整備していくという話は色々ともちろんあり得ると思いますが、私としては、19ページの論点マル2で、本当に重要なことは何かとか、単に留意しておくべきことはあるかということに対する答えは、適切な企業文化の形成を図るということだと。それこそが重要だということですね。そのための具体的・能動的取組みをやっているかどうかをチェックしていただくというのがポイントではないかということです。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大崎委員、上柳委員の順で。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。何人かの方からご指摘があり、事務局資料にも入っている独立系のアドバイザーを育成することは重要である、これは私も基本的な考え方は全く同感ですが、その場合、先ほど竹川委員から少し言及があったかと思いますが、例えば日本とアメリカの制度を比較しますと、アメリカですと、例えば独立してアドバイスを提供し、かつ注文執行にまで関与するやり方とか、あるいは自前の運用商品を提供するというようなやり方とか、多様な独立系のアドバイザーというものが存在していまして、それが結果的に幅広い顧客ニーズに応えていく、多様なサービスの提供ということにつながっていると思います。よくアドバイザーといいますと何か助言をしてフィーをもらうみたいなイメージを持つ人も多いのですが、正直言いまして、金融商品に関して、ただ単に評論的なことを言ってもらっただけで高いフィーを払うという人はそんなに多くないと思います。やはり実践的に実際に商品を買える、あるいは運用商品を提供してくれるというところまで、トランザクションまで行かないと、幾らいいアドバイスがあっても、それに対して少なくともそのアドバイザーの生活が成り立つようなお金を払おうという人は非常に少ないと思います。ですから、その助言という枠組みでこういうことを考えても全然広がりを見せないと思います。

そうすると、日本とアメリカの制度を比較したときに、私は大きな違いだと思っていますのは、日本の第一種金融商品取引業と例えばアメリカにおけるブローカー・ディーラー登録の要件の厳しさの違い、それから日本の投資運用業登録とアメリカにおけるインベストメント・アドバイザーの登録の要件の違い、これは非常に大きいと思っておりまして、日本ですと、資本金5,000万円以上から始まって、さまざまな非常に大きな組織をつくってないと参入できないような要件があるわけです。これについては、数年前にプロ向けファンドの規制の見直しというのが議論されたときに、私は個人的な意見として、投資運用業としての登録を現在のプロ向けファンド業者全体に求めた上で、しかし、参入規制を抜本的に緩くするということをやるべきだということを申し上げたのですが、この独立系アドバイザーについても全く同じでありまして、そうしない限り、広がりはないだろうと思います。例えば投資信託というファンドは、なぜか第一種金融商品取引業でないと売ってはいけないことになっています。他のファンドは第二種金融商品取引業でも売っていいことになっているわけで、その参入要件は極めて、天と地と言っていいぐらい差があるわけで、そのようにしていて投資信託を幅広く推奨するような独立系のアドバイザーを増やそうというのは、これは無理だと私は思っております。

そうすると、例えば既存の金融グループを解体して運用会社を独立させればいいのではないかとか、そういう発想に行きがちかと思いますが、それは先ほどどなたかからご指摘があったとおり、そもそも金融コングロマリットを作っていくことによって消費者にも利益があるという前提でいわゆる業際規制を緩和してきたという歴史があるわけで、それを全くひっくり返すという話になりますので、私はそういう方向ではなくて、真の独立系の新規参入を促していくために、第一種金融商品取引業と投資運用業の参入規制を抜本的に改めるべきだと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

ありがとうございます。委員の方々のお話、全てもっともだと思って聞いておりましたが、ただ、あえて申し上げたいのは、今回せっかく議論していますので、ぜひこれを法令のレベルの改正につなげていくべきだと思っています。それから、その際に、色々論点はあろうかとは思いますけれども、最初の質問にも関連しますが、手数料なりインセンティブ、これまで金商法上も手数料という文言がありますけれども、それとは少し違った意味も含めて取り込んでいくということが重要ではないかと思いました。

利益相反の問題は、この10年ぐらい、あちこちで当局も含めて強調されてきて、それなりに整備してきたのではないかなと思ってきましたが、改めて世界の動向を見るとやはり少しずつ変わってきているなと。私は、どうしても顧客の立場からいって、欧米で何か新しい規制があれば、その辺の一部を取り込めばいいというような言い方をするので、何か便宜的に引用しているような感じもあるのかもわかりませんけれども、それだけではなくて、欧州なり、あるいはアメリカの関係者の人たちがそれなりに色々暗中模索あるいは努力をして、その結果が今回のDOLのガイダンスであるとか、あるいはMiFIDIIに少しずつ結実しているのではないかと思います。それに従うことだけが能ではないと思うのですけれども、ある程度やはり水準が変わってきているのだと。今までどおりでは必ずしも信頼が得られないということを覚悟して、それを中身にも示していくということが重要ではないかと思います。

その際に、手数料であるとか、あるいはインセンティブであるとか、その場合に人事とか報酬までインセンティブの中に含めるのかどうかというのは、これは遠い話かもわかりませんけれども、そのようなことを考えていくときに、最初に質問いたしましたMiFIDについても、ヨーロッパでは、独立と称するのであればこのぐらいのことはしろよというふうになっているのかもしれません。あるいは、アメリカのDOLのルールにしても、フィデューシャリーということであればこのようにしなさいと決まっているのかもしれませんが、日本の場合はずっとご指摘ありましたように、まだまだ残念ながら独立系のアドバイザーがそれほど育成されてない。あるいは、フィデューシャリーの範囲もあんまりはっきりしない。あるいは、金融機関なり、あるいは証券会社が顧客に事実上の勧誘といいますか、投資助言をされていて、必ずしもそれが今まで法律的には投信運用なり投資助言としては捉えられてないという現状があって、それは変わっていくべきだと思います。けれども、現状はそういうものが大勢なので、それを踏まえて日本では規制なり考え方を詰めていくということが必要なのではないか。ということで、その独立の概念を広げたり、フィデューシャリーの概念を広げると言うと乱暴かもしれませんが、実質的にはそのようなことも含めて考えていくべきだと思いました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】

独立性の問題で若干補足したいと思いますが、現在運用会社がその親会社である金融機関との間の独立性ということが問題になっているわけですけれども、現実には親会社だけでなくて、他の一般の販売会社との関係でも運用会社とは力関係が必ずしも十分でないと思います。現場の運用会社の方々の本音を伺ってみると、やはり販売会社の力が強い、なかなか対等の関係になっていないと。親との関係も、ある意味ではこの一部の表れという点もあろうかと思われます。それはもともと、投信委託会社が証券会社の子会社という形からスタートしてきたという、長い業界の歴史もあると思います。

例えば今の投資信託協会という中には、販社と運用会社と両方が入っているというところにも端的に示されていると思います。一般に民間の2つの企業の関係、どちらの力が強いかというと、最終的にはこれは実力の差です。運用会社が本当に誰でも欲しがるようなすばらしい運用商品を継続して供給できていれば、販売会社は「ぜひこれは売らせてほしい」と言って、力関係は逆転するはずです。ですから、やはり実質的な意味で、今、運用機関の力が販売会社の力に及んでない。つまり運用力がまだまだ十分でないというところが本質的な理由ではないかと思われます。

ですから、この利益相反という問題があって、投資家の利益が損なわれているという事の本質も、投資家が期待しているような運用リターンが得られていないというところに最大のポイントがあると思います。ある程度のリターンが出ていれば投資家は満足する。それは、売り方なりその他諸々のことが仮に多少問題があっても、大きな利益相反にはなりにくいのだろうと思います。ですから、問題としては、いかに日本の運用業の運用力を上げていくかという点が別の意味の本質的なテーマで、これまでご当局が努力されてきましたコーポレートガバナンスやスチュワードシップ・コードの問題というような形、日本政府が進めている稼ぐ力を強める施策、こういうことで日本株全体のリターンが上がってくることによって、1つは運用機関の力も上がってくる、パフォーマンスも上がってくるわけでうす。また海外投資の力をつけていくというような問題が1つ隠れているとは思います。逆に言いますと、この運用力強化の問題を除いて外形要因を幾らそろえても、なかなか投資家のベネフィット、投資家のニーズには合うことにはならないというような点もあって、やはりこれも車の両輪の面もあると思います。

それともう一点、親会社派遣の社長の問題です。何人かの方が言われておりますが、運用機関の社長のクオリフィケーションと言いましょうか、適格性と言いましょうか、あるいは適格な人であったら結果的に業績が上がっていくのかというのは、実は非常に難しい問題で、他のメーカーももちろん同じだと思いますけれども、なかなか一概に、こうであればいい、これではいけないというようなことではないのだろうと思います。ただ、1つ言えますことは、やはりマーケットの実務にある程度ご経験がある、言いかえますと、マーケットの株式であれ、債券であれ、マーケットの商品は、とにかく想定外の条件で常に上下しているというようなことをある程度何らかの形で経験されていらっしゃると、そういう経験なり認識というのはやはり望ましいクオリフィケーションの一つではないかなと。逆に言いますと、マーケットのことにどうも今度の社長はあまりわかっていないなということになると、運用部門のモラルが上がらなくなるわけです。運用部門が適正に評価してもらえないのではないかという懸念が出てくるわけです。

補足しますと、世界のどこの会社に行ってもそうですが、運用の専門能力とビジネスマネジメントの専門能力というのはスキルセットが根本的に違います。どちらかというと運用の専門能力というのは、マーケットを見ながら、つまり人間を見ながら戦っているわけではなくて、マーケットの動くものを見ているわけですけど、ビジネスマネジメントというのは本質的に対人スキルセットの問題です。なかなか1つだけ持つのも大変なところ、2つあわせて持つ人というのは世界中でもなかなか難しい。だから、これについてあまり厳格な規定をはめるよりは、とにかく何らかの形で納得性がある、最終的には、投資家サイドからある程度納得されるような社長の決め方が大事なのではないかと思われます。投資家が今度の社長の決め方はおかしいということになると、運用成績がこれからは期待できないなという懸念が出てきますので、先ほどどなたかおっしゃいましたが、それについての説明は非常に大事なことではないかと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。多様なご指摘をいただいて、なかなか今日のテーマは難しいと思いますけれども、私もちょっと一、二感想を述べさせていただきます。先ほどから色々なご意見についてメモをとっていたつもりですが、1つ、今日のテーマとの関係で根本的に難しいところというのは、利益相反管理体制というのは制度もあって、それなりに行われているというご指摘があります。しかし、他方において、前回までを含めて、例えばですけど、手数料が高いとかいうことが言われていて、この関係がどのようになっているのかというのがあると思います。鹿毛委員が第1回目でおっしゃった、企業は利益を上げるのは当然なのだからということは、利益相反管理体制はきちんと行われていて、きちんと色々なことをしているならば、別に手数料が高いことについてそれはそれでいいのではないかとも解釈できると思いますが、端的に、私の理解では、手数料が高いと、その分、顧客の資産形成の額は減るので、これは、私が言っているのではなくてアメリカのDOLがそういうレポートを出していて、1974年以来のERISA法の大改正をやっているわけです。仮に1,000兆円の運用資産があったとして、手数料が1%高ければ10兆円ですから、10年で100兆円。これ、やはりそれだけ年金受給者の資産形成が減るというのを問題視して改正への作業が始まっています。ですから、フィデューシャリー・デューティーとか利益相反管理というのは、それ自体は目的ではなくて手段であって、目的はあくまで、私どものこのワーキング・グループで言えば、国民の安定的な資産形成なのですよね。アメリカもまさにそういう観点からDOLはやっていて、問題はやはり利益相反から生じている。だからそこを直しましょうという話なのですね。

日本の場合には、例として申し上げているだけですけれども、仮に手数料が高いとすると、利益相反管理体制が不十分なのか。もしそうでないとすれば、例えば競争がないからなのかと。もし後者だとすれば、競争を促すような政策を打っていかなければいけませんし、それも同じ商品を大量に作って売るという日本型伝統的な競争ではなくて、違うタイプの競争を促していかなければいけませんし、もしそうではなくて、利益相反管理体制がそれなりには行われているけれども、必ずしも十分でないということであれば、例えば開示が不足しているということであれば、情報開示を進めていくということをしていくと、そういうことだと思います。類型別に整理して考えていかなければいけないということだと思います。

もう1点は、具体的な施策として利益相反管理の局面に関して言いますと、情報開示を進めていくということは既にご指摘ありましたけれども、その他にも幾つかの大変重要なご指摘があって、上田委員から具体的なご指摘というか、提案があって、池尾先生からもご指摘がありましたけれども、もし、池尾先生の言葉で言うと魂を入れるためにコーポレートカルチャーということをおっしゃったと思うのですけれども、そういうところを進めていくとすると、これは結局のところ、運用業者や助言業者、その他の業者のコーポレートガバナンスを改善していくという話をしていくことになるのだと思います。

いずれにしましても、今のままでいいかどうかというところは1つありますし、その原因が利益相反管理体制というものに関係しているのか、今のままでいいのかというあたりも、なかなか難しいところですけれども、たくさんの大変貴重なご指摘をいただくことができたと思います。

まだ若干時間がございますけど、もし何かあれば。鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】

すみません、ちょっと舌足らずでしたので、補足させていただきますけど、私は、手数料は高くていいということを申し上げた趣旨ではなくて、当然、全体としては国民の資産形成のためにはもちろん手数料は少ないほうがいいというような立場ではありますが、ごく一部に、例えば仮にですけど、3%ぐらいの手数料があっても、8%のリターンがちゃんと恒常的に上げられるというようなものであれば、それは妥当なものと言ってもいいのではないかと。ただし、その中身の説明、それから、ちゃんとしたベネフィットと対応というようなことがきちんと説明されてなければ、それはおかしいのではないかと。それは消費者保護の観点からもおかしいのではないか。そういう趣旨で申し上げましたので、失礼いたしました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

他にいかがでしょうか。

【池田総務企画局長】

大変貴重なご意見をたくさんいただきまして、ありがとうございます。

利益相反の問題については、本日、複数の方からご指摘があったように、決して日本だけの問題ではない、それはそのとおりだと私どもも考えています。そういう中で、運用会社などがグローバル展開をしていくことが大きい課題になっていると、そういうご指摘もあり、そのとおりであると考えたときに、欧米での最近の動向などを見ても、やはりそういう日本の金融グループにおける利益相反管理が真にグローバルなレベルにあるのか、グローバルな水準にあるのかどうかというのは、十分な関心を持って取り組んでいく必要があると私どもとしては考えているところです。

それから、同時に、日本特有の問題が存在するというのも事実であり、本日、市場課長からご説明した部分にもそういうものがあると思いますが、そうしたものに関して利益相反管理がきちんとやられているということであれば、それをしっかり「見える化」していくということは重要な課題で、鹿毛委員から99%のケースは問題がないというご指摘がありましたが、我々からすると、大事なのは耳目を集める1%のケースというところがあるとも言えると思っています。

それから、独立アドバイザーの定義あるいは混同防止などの問題、多々あると思いますが、そうしたものがあまり存在していない、あまり影響力が大きくないというのが、我が国の一つの課題であると私どもも考えております。そういったときに、そのような関係の方から我々聞かされることがあるのは、例えば独立の運用会社の方からすると、いい運用商品を開発してもなかなか販路がないという声を聞きますし、また、独立の販売会社の方からは、系列関係があってなかなかいい商品を卸してもらえない、という声も聞くことがあって、そういった方からすると、この利益相反管理の問題というのはそういう問題とも無関係ではないということで、利益相反管理の問題は大変難しい問題なのですけれども、色々な問題につながっている問題であるということは言えるかと思います。ただ、指摘がありましたように、平成20年の法改正も含めて我々も色々な取組みをしてきて今がありますので、これから先、どういったことをやっていくことが真の意味のベストプラクティスを作っていくことになるのか、その辺、さらにご意見を頂戴していければと考えております。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大体予定していた時間が参りましたので、本日は以上で討議を終わらせていただきます。

皆様方には大変貴重なご指摘を多数いただきまして、大変ありがとうございました。本日いただきましたご意見、ご指摘等を踏まえ、今後さらに検討を進めさせていただきたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項等をお願いいたします。

【齋藤市場課長】

次回のワーキング・グループの日程及びテーマ等に関しましては、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

では、本日はこれにて散会いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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