金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    平成25年6月26日(水曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○神田座長

おはようございます。それでは、予定のお時間になりましたので、始めさせていただきます。

ただいまから新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの第1回会合を開催させていただきます。皆様方には大変お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

申し遅れましたけれども、私は、金融審議会会長、同金融分科会会長である吉野直行先生からご指名をいただきまして、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます東京大学の神田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

まず最初に、このワーキング・グループについて一言ご説明させていただきたいと思います。

このワーキング・グループでございますが、本年6月5日に開催されました金融審議会の総会と同金融分科会の合同会合におきまして大臣から諮問をいただきました。それは、新規・成長企業へのリスクマネー供給のあり方等について調査審議を行うということでございまして、そのために設置されたものでございます。

諮問の内容は、お手元の資料2にありますが、これに沿って新規・成長企業へのリスクマネー供給のあり方などについてご検討をしていただきたいと考えております。

本日は、寺田副大臣に、お忙しい中、ご出席いただいておりますので、ここでご挨拶を頂戴したいと思います。副大臣、よろしくお願いいたします。

○寺田副大臣

ただいまご紹介にあずかりました担当副大臣の寺田でございます。今日は皆様方、お忙しい中、まことにありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。

ご承知のとおり、安倍内閣の、所謂「3本の矢」が放たれたわけであります。1本目の矢、2本目の矢に続きまして、先々週の金曜日、6月14日に3本目の矢の成長戦略が放たれました。

私も内閣府副大臣といたしまして、規制改革会議をはじめ、―今日は創業ワーキングの大崎座長、当金融審のメンバーとしてもお越しいただいておりますが―議論に参加させていただき、規制改革会議、そして経済財政諮問会議、また産業競争力会議、この3つのエンジンで濃密かつ活発な議論を行い、我が国の持続的な成長戦略の樹立、そして、「日本再興戦略」として取りまとめを行うことができたわけであります。

その具体の中身については、もう既に報道等でご承知の方も多いかと思います。いわゆる今後の成長が期待できる分野を中心としたニューフロンティアの開拓でありますとか、あるいは産業、企業の新陳代謝の促進とともに、大変重要なテーマとして浮上したのがリスクマネーの供給、成長戦略のいわば入り口の部分といたしまして、そして資金面について、とりわけ規制改革会議で大崎座長のもと、創業ワーキングで濃密な議論を行いました。

規制改革会議のほうは、岡議長のもとで4つのワーキング、環境・エネルギーワーキング、医療ワーキング、雇用ワーキングとともに創業ワーキングで、いわゆるクラウドやビッグデータの問題、あるいは農業の競争力強化の問題とともに、まさに当金融審の所掌事項でもあります成長マネーの供給について議論を行い、14日に規制改革推進計画として、クラウド・ファンディング、また、さまざまなニューマネー促進のための上場基準の見直しの問題、あるいは開示基準の見直しの問題、大量保有報告をはじめとします今の金商法上のさまざまなワークロード、いわゆる事務負担軽減の問題、あるいは虚偽表示に対する無過失責任の見直しの問題などについて閣議決定し、具体的なやり方については当金融審のほうに委ねられたところであります。6月5日に麻生大臣のほうより諮問を行い、神田座長のもと、当ワーキングが運営されることとなりました。

私のほうから1つだけ具体の数字をちょっとご紹介させていただこうと思いますが、成長マネーの供給という点では我が国が極めて弱い分野、おそらく、いろいろな産業分野、また日本を構成する基盤において一番弱い分野であると言っても過言ではないと思いますが、例えばベンチャーキャピタルによります年間投資額は、アメリが2.3兆円であるのに対し、日本ではわずか1,240億円と桁が全く違うわけであります。

いわゆるエンジェル投資につきましても、アメリカのエンジェル投資額が1.5兆円程度と言われているのに対しまして、我が国で、いわゆるエンジェル税制を活用した個人投資家の投資額は年間約9.9億円であります。全く桁違いの雲泥の差があるわけであります。

さらに、ご承知のとおりアメリカではJOBS法の制定によりまして、クラウド・ファンディングについての制度設計と制度整備もなされたところであります。これは、日米のさまざまな社会の違い、文化の違いなどもあるわけであります。

昨日、ちょうど官邸のほうで再チャレンジ懇談会が開催され、私も参加させていただきましたが、何度失敗しても立ち上げる、再チャレンジが容易な環境が諸外国では整備されているのに対し、我が国の場合は、いろいろな要因で、そうした再チャレンジが、これは起業の世界においてもしかりでありますが難しい。個人保証の問題もございます。さまざまな論点が昨日も官邸の場で議論されたわけでありますが、とりわけ上場前の段階での成長企業へのリスクマネーの供給強化の取り組みをこれまで以上に幅広く展開していこうということで、この議論をスタートしていただきたいと思います。

また、その際にはリスクマネーの出口、EXITの道を拡大する観点から、新規上場時や上場後の資金調達の制度整備についても引き続き努めていく必要があるかと思います。この点についてもご議論を賜れば、まことに幸甚に存ずる次第でございます。

今日は、こうして梅雨の大変うっとうしい雨の中ではありますが、ぜひとも明るい明日を切り開き、成長企業へのリスクマネーの道を切り開く、当ワーキングの議論は、極めて注目されており、また、大変重要なものであると認識いたしております。

先般、私も経団連が主催いたしました外国人のエコノミストとの意見交換の場にも出てまいりましたが、海外からの熱い目、視線も大変に注がれているわけでありまして、ぜひとも濃密かつ活発な議論を私のほうからお願い申し上げる次第であります。よろしくお願いいたします。

○神田座長

大変どうもありがとうございました。

それでは、恐縮ですが、カメラの方は、ここまでということにさせていただきます。

(カメラ退席)

○神田座長

それでは、本日はこのワーキング・グループの初回ということでもございますので、ワーキング・グループにご参加いただくメンバーの皆様方をご紹介させていただきたいと思います。お手元に名簿をお配りしておりますけれども、メンバーのご紹介を事務局からお願いします。

○栗田企業開示課長

総務企画局企業開示課長の栗田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、当ワーキング・グループのメンバーの方々をご紹介させていただきます。座席順にご紹介させていただきます。

メンバーの皆様の右側から、出雲充様でございます。

○出雲委員

出雲でございます。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

安達俊久様です。

○安達委員

よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

上柳敏郎様です。

○上柳委員

上柳でございます。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

大崎貞和様です。

○大崎委員

大崎でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

岡野進様です。

○岡野委員

岡野でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

黒沼悦郎様です。

○黒沼委員

黒沼でございます。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

静正樹様です。

○静委員

静でございます。よろしくお願い申し上げます。

○栗田企業開示課長

田邊栄一様です。

○田邊委員

田邊と申します。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

永沢裕美子様です。

○永沢委員

永沢でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

原田喜美枝様です。

○原田委員

原田でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

平田公一様です。

○平田委員

平田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

福田慎一様です。

○福田委員

福田です。

○栗田企業開示課長

前川雅彦様です。

○前川委員

前川です。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

山下幹夫様です。

○山下委員

山下でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

吉野和雄様です。

○吉野委員

吉野でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

次に、オブザーバーの方々をご紹介申し上げます。

法務省民事局の坂本参事官です。

○坂本参事官

坂本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

日本銀行企画局の野村審議役でございます。

○野村審議役

野村でございます。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

全国銀行協会から三井住友銀行投資銀行統括部の野田部長でございます。

○野田部長

野田でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

第二種金融商品取引業協会の島村事務局長です。

○島村事務局長

島村でございます。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

また、本日はご欠席でございますけれども、当ワーキング・グループのメンバーとして、神作裕之様にもご参加いただくことになっております。

それから、武井一浩様につきましては、都合がつきましたら後ほどご出席になるということでございます。

それから、本日は、参考人といたしまして早稲田大学大学院商学研究科ビジネススクール教授の長谷川博和様にもご出席いただいております。

○長谷川参考人

長谷川です。よろしくお願いします。

○栗田企業開示課長

事務局につきましては、時間の都合もございますので、お手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。

○神田座長

どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

次に、議事の進め方についてご相談というか、ご確認をさせていただきたいと思います。

このワーキング・グループですが、原則として公開ということにさせていただき、議事録も公表というふうにさせていただきたいと思います。したがいまして、皆様方には、公表を前提としたご意見、ご発言をいただければと思います。最近の金融審議会のワーキング・グループのやり方だと思いますけれども、このワーキング・グループにつきましても今申し上げたような形で議論を進めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。

それでは、本日の議事に移らせていただきたいと思います。お手元の議事次第にありますように、本日は、まず事務局から諮問事項に関する現在の制度等について説明していただきます。そこで質疑応答をさせていただきます。

次に、ヒアリングをさせていただきたいと思います。本日は前川委員と長谷川参考人からお話をいただきます。続けてお二方からお話をいただいて、その後で皆様方にご審議をお願いしたいと思います。

本日の議事は、今申しましたような流れで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、まず諮問事項に関する現行制度等につきまして、事務局から資料に沿ってご説明をお願いします。よろしくお願いします。

○古澤市場課長

市場課長の古澤でございます。よろしくお願いいたします。

資料の3につきまして、前半の部分を私のほうから、後半の部分を企業開示課長のほうからご説明させていただきたいと存じます。

お手元にございます資料の3、先ほど寺田副大臣からご紹介ございましたように、新規・成長企業へのリスクマネーの供給ということで、まず現状の整理をしております。

一番右側の取引所市場、そこに上場会社で3,545社という数字がございます。ここにつきましては注の2のとおり、米国では、New York Stock Exchangeで約2,300、NASDAQで約2,600、合わせて5,000社弱ですので、日本においても経済規模から比してそれなりの上場企業数があるということでございます。

それに比しまして、それに至るまでのプロセスに問題があるのではないかという問題意識です。例えば、ベンチャーキャピタルの規模をどう考えるか。グリーンシート、そこに昨年末時点で38銘柄とございますが、足元、これが37銘柄になっています。2004年には96銘柄ございましたので、こういう傾向になっているところをどう考えるか。エンジェルにつきましても、先ほど副大臣からご紹介があったとおりの状況です。

次のページですが、やや視点を変えましたイメージ図を準備いたしました。一番上に新規・成長企業、それから大企業、こちらに対する資金、資本の流れをどう考えるかです。

この図の1つのポイントが担い手のところです。真ん中ですが、一番左の電子掲示板事業者で、現行でも2項有価証券につきまして一定の資本の流れが見られるところでございます。あと、右側につきましては、証券会社が担い手であり、取引市場、グリーンシートを通じた一定の資金の流れ、循環があるところです。

右に矢印の中の途中が米印になっているかと思いますが、現在、証券業協会の自主規制によりまして、グリーンシート銘柄、厳密に申しますと店頭取扱有価証券を除きましては、非上場株式の取扱いは一般投資家向けについては禁止されております。

この担い手の問題をどう考えるか。真ん中のところで点線で紹介させていただきますけれども、証券会社が担うべき面をどう考えるか。それから、電子掲示板の事業者、いわゆるポータルの事業者の方々も含めてどういう役割を担っていただくかが1つのポイントかと考えております。

もう一つおめくりいただきまして、これも副大臣からご紹介がございました、これまでの議論の経緯です。

3月に産業競争力会議で麻生大臣から表明があり、その後、規制改革会議の創業ワーキング、そして、その議論が答申、それから金融審議会における諮問、そして、先ほどございました規制改革実施計画の閣議決定に至っております。

あわせて、日証協では、市場関係者から本件につきましてのニーズの把握、課題の洗い出しの作業を現在行っていただいて、まさに取りまとめ作業中と伺っております。

諮問につきましては、その次のページにございます。大臣の諮問事項は4つございまして、新規・成長企業へのリスクマネーの供給、事務負担の軽減、それから開示制度の見直し、その他、近年の金融資本市場の状況に鑑み、必要となる制度の整備についてです。

閣議決定の中身につきまして、ポイントを紹介させていただきます。5ページ目以下でございますけれども、規制改革実施計画ということで、①リスクマネーの供給ということで、我が国の閉塞感を打ち破る起爆剤としてのリスクマネーの供給の促進というところがうたわれ、6ページでございますけれども、クラウド・ファンディングの活用、新規上場の企業情報開示の合理化、グリーンシート制度の見直し、プレ・マーケティングなどの概念整理といった項目が掲げられ、これらについては、平成25年度検討・結論とされております。

7ページでございますけれども、これは、14日に閣議決定された成長戦略の中でも掲げられております。後半の文書だけご紹介させていただきますが、市場関係者などのニーズや投資家保護に配意しつつ、制度改正が必要な事項について、金融審でご検討いただいて本年中に結論を得るとされたところでございます。

次に、個別の課題につきまして、クラウド・ファンディングからご紹介いたしたいと思います。

問題意識は、新規・成長企業へのリスクマネーの供給の促進で、そこにございますように株式形態を含めてということで問題提起をいたしております。株式形態を含め、インターネットなどを通じた資本調達の枠組みが整備できないかというところが問題意識でございます。

12ページに、まず現状のクラウド・ファンディング、この言葉の定義と意味自体がこれからご議論いただく1つのポイントかと思います。ここでの整理はそこにございますように、クラウド・ファンディングにつきましては、一般に新規・成長企業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額ずつ資金を集める仕組みと言われているところでございます。寄付型、購入型、投資型と、今のところ便宜上、整理しているということでございます。

3つ目の丸でございますけれども、現状、日本においては金銭によるリターンを伴わない形態での取扱い、したがって、寄付型と購入型が取扱いの中心となっておりまして、投資型は限定的。それから、投資型の出資の形態でございますけれども、商法上の匿名組合契約によるものが中心ということで、株式形態は取り扱われていないと認識しております。

その点、もう少し補足しているのが次のページです。寄付型、購入型、投資型ということでございます。

寄付型につきましては、我々のメンバーがいろいろウェブサイトで探してみたものですので、必ずしも網羅的な調査というわけではございませんけれども、ウェブ上で見る限り、ウェブサイト上で寄付を募り、寄付者向けにニュースレターを送っているというようなもので、資金提供先といたしましては被災地、途上国の個人、小規模事業といったもの。資金調達規模は、1件当たりのものつきましては、せいぜい数万円規模といったものが中心のようでございます。1人当たりの投資額も1口1円からといったものもあるようでございます。

真ん中の購入型になりますと規模がやや大きくなりまして、概要でございますけれども、前払いで集めた代金を元手に製品を開発し、購入者に完成した製品などを提供する。被災地支援事業、それから、障碍者支援事業、音楽・ゲーム制作事業といった事業者個人に資金を提供し、規模はやや大きくなりまして、大きいものでは数百万円程度、1口の額は1,000円程度から集めているというものでございます。

投資型につきましては、運営業者を介して投資家と事業者の間で匿名組合契約を締結し出資を行うということで、これにつきましては第二種金商業の登録が必要ということでございます。事業は、音楽関連、被災地支援、それから食品、酒造、医療品などといった事業でございます。資金調達規模もさらに大きくなりまして、数百万から数千万、1口1万円程度ということでございます。

米印でございますけれども、この世界のやや外でございますけれども、匿名組合契約に基づいて出資を募って貸付けを行うというものもございますが、本件につきましてはリスクマネーの供給ということでございますので、ちょっと検討の外と申しますか、視野には入れるんですが、ちょっと性格が違うものと、とりあえず紹介にとどめております。

14ページからは金商法との関係の整理です。先ほどご紹介した匿名組合契約を用いたクラウド・ファンディングのスキームにつきましては、二種業の登録をしているところでございます。下にございますけれども、現行制度のもとでは株式のクラウド・ファンディングを取り扱う場合というのは実例がございません。

我々の整理といたしましては、プラットフォーム運営業者の行為は、株式を取り扱う場合1項有価証券の募集・私募の取扱いに該当いたしまして、第一種金商業の登録が必要ということでございます。

さらに、非上場株式の取扱いということでございますので、先ほどご紹介いたしましたように、グリーンシート銘柄を除いて、原則として一般投資家に対する投資勧誘というのは日証協のルールの中で禁止されております。

さらに、米印で開示規制につきましてご紹介させていただきますと、株式募集の総額が1億円以上の場合については、事業者のほうで、原則として有価証券届出書の提出が必要となってございます。1億円未満でございましても1,000万円を超えるものにつきましては有価証券通知書の提出が必要というのが開示規制ということでございます。

諸外国の状況ですが、15ページ、16ページ、この調査も出所はそこにございますCrowdfunding industry reportという任意の形で、コンサルの協力を得てCrowdsourcing.orgというところが任意に調査しているものですが、それによりますと2011年度で14.7億ドル、12年、推計でございますけど、28.1兆ドルのファンディングボリュームがある。世界市場と書いてありますが、ファンディングボリュームの統計でございます。

調査対象452で、内訳は、北米191、欧州182。ちなみに日本につきましても調査対象として3件ほどあったと、このレポートの中では紹介されております。

クラウド・ファンディングの最後の点でございますけれども、米国のJOBS法の規制の概要でございます。

まず、投資の出し手のほうの規制、それから募集の総額についての規制というのがございまして、募集につきましては、全投資家の総額で年間100万ドルということ。それから、各投資家につきましては、年収ごとに区分しており、年収10万ドル未満については2,000ドル、年収5%のいずれか大きいほうを超えないこと。ちなみに、年収10万ドルを超えた場合には10万ドル、それから年収10%、いずれも超えないといった規律になっております。

それから、次のファンディング・ポータル。ファンディング・ポータルと申しますのは、この米国のJOBS法では、クラウド・ファンディングの枠組みに基づいて、他人の計算で有価証券の募集・売出しを市場仲介者として行うものと定義されているようでございますけれども、そのファンディング・ポータルにつきましてはSECへの登録義務、SECによる調査・監督が及ぶということ。それから、自主規制機関に対する登録義務、開示義務。それから、詐欺のリスクへの対応を講じる義務といったものが樹立されるとともに、最後のポツでございますけれども、投資アドバイス、推奨、ファンド・証券の保管、それから、運用、その他についての禁止行為がかかっているということでございます。

発行者につきましては、SEC、投資家、ファンディング・ポータルに対しての情報提供、それから事業報告書、会計書類についてのSECへの提出義務といったことでございます。

ただし、米印にございますように、JOBS法は2012年4月に成立してございますけれども、実際にはSEC規則というのが策定されておらず、これにつきましては未施行という状態になっているということでございます。

以上がクラウド・ファンディングにつきましてのご紹介であります。

駆け足で恐縮ですが、次、グリーンシートにつきましても現行の制度につきまして、ざっとご紹介いたします。

ページで申しますと18ページですが、先ほどご紹介いたしましたように、グリーンシート制度は、近年、制度利用企業が減少、現行37銘柄になっており、売買も低迷しております。要因としては、もともとグリーンシートは平成9年に始まったわけですが、その後、東証のマザーズが平成11年だったと思います。それから、名証のセントレックスも同年で、新興市場における取引所の上場基準が引き下げられているといった環境変化があったことが指摘されているかと思います。

他方、地域の新規・成長企業の資本調達ニーズには的確に応えていく必要がある。上場市場ほどの高度な流通機能を必要としない、しかし、換金ニーズは存在する、こういうものをどう取り扱うかといったところが1つの論点かということです。

その際の切り口として、1つの例としてご紹介させていただければと思いますが、地域に根差した企業につきましては、その地域の株主や企業をよく知る株主による保有を念頭に置いて資本調達や換金の場を提供するという枠組みができないか。この新しい枠組みにおいては、地域に根差した企業の株主は、企業になじみがあるということと、それから、高度な流通機能が求められていないということを踏まえまして、信頼できる仲介業者の関与を前提として、より簡易な手続での資本調達を可能にするといったことがポイントかと考えてございます。

以降は、現行制度の紹介でございますけれども、19ページにございますように、グリーンシートの銘柄につきましては、平成9年7月に、もともと気配公表銘柄制度ということでスタートいたしまして、現行、以下にございますような区分、エマージング、オーディナリー、それから投信・SPCといった区分で運営されているということでございます。

20ページにございますが、今、足元37銘柄、24年末が38銘柄、3月末で37銘柄といった状況でございます。

それから、21ページでございますけれども、売買代金もそこにございますように、減少、低迷しているという状況でございます。

22ページにございますように、平成9年にグリーンシートが創設され、その後、平成11年に名証セントレックス、マザーズの創設等、新興市場が整備されてきているといった状況でございます。

最後に、23ページでございますけれども、金商法の平成17年4月の証取法の改正で、この立てつけの基本ができております。金商法では、取扱有価証券ということで、金商法の67条の18の4号で、認可協会がその規則において売買、その他の取引の関与を行うことを禁じていない株券等ということで、日証協のルールで行う枠組みを、この金商法の中に取り込んでおります。

金商法では、そこにございますように、気配・取引内容の日証協への報告、日証協による公表、それから、インサイダー規制が規定されております。

日証協規則では、右側にございますように、店頭取扱有価証券の内側にグリーンシート、それからフェニックスといったものを規定しており、有価証券報告書提出会社、または上場会社並みの開示が行える会社が発行する株式等ということで、これらについては取扱会員、証券会社による継続的な気配の提示、それから、発行会社による適時開示義務というものを掲げております。

この証取法の平成17年4月の改正の中で、あわせて適時開示制度の整備やそれまでリージョナルといった銘柄がございましたが、それが廃止されたといった経緯がございます。

ちなみに、これも日証協規則の世界ですが、証券会社がグリーンシート銘柄の投資勧誘を行う場合につきましては、一番最初に証券会社が審査を行って、銘柄が適当かどうかを判断して日証協に届け出る。それから、説明としては、会社内容説明書の交付説明というのが投資勧誘に当たって行われるといった枠組みが定められているところでございます。

簡単でございますが、グリーンシートについては以上でございます。

その次は、その他の課題ということで、25ページでございます。担い手の問題と申しましたけれども、それを含めた、人材面を含めた問題意識の紹介でございます。ここにつきましては、後ほど前川委員、それから、長谷川参考人からもお話があるかと思いますので、25ページ、26ページにつきましては割愛させていただきまして、最後、市場課関係といたしましては、29ページの新興市場の株主数基準についてご紹介させていただければと思います。

ここにつきましては、29ページにございますように、各取引所のルールで一定の流動性を確保するという観点から、取引所の定める上場審査基準において株主数、流通株指数といった基準が定められてございます。このうち、例えば株主数基準につきましては、上場時までに300名以上となる見込みのあることといった基準がなされているわけでございます。ただ、ここにつきましては、やや多過ぎるとの指摘もございます。

具体的に、各取引所の規定ですが、30ページにございますように、現行、マザーズが300人以上、JASDAQが300人以上といったところでございますけれども、国内でも必ずしも300人以上になっているわけではございませんし、海外の基準を見ましても香港、シンガポールあたりは、ごらんいただいているような状況になっている。こういった状況を踏まえて、どういうふうに考えるかといったところが論点かということです。

市場課担当は以上です。

○栗田企業開示課長

続きまして、企業開示関係についてご説明させていただきます。詳細につきましては、今後の審議の中でおいおいご説明させていただきますので、本日は一通りの問題意識ということでご説明させていただきたいと存じます。

まず、31ページでございますが、新規上場に伴う事務負担の軽減ということでございます。32ページの問題意識にありますように、現在、新規上場しようとする企業は、有価証券届出書におきまして直近5年分の財務諸表の記載が必要になっております。それから、上場会社は、事業年度ごとに内部統制報告書を提出しないといけないわけですけれども、この内部統制報告書は公認会計士等の監査証明を受けないといけないということでございます。

以上につきまして、例えばアメリカのJOBS法を参考にして新規上場のコストを低減させるという観点から、内部統制報告書の提出に係る負担を一定期間軽減するということとか、有価証券届出書において提供が求められている財務諸表の年数を限定するというようなことは考えられないかということでございます。この点につきましては、ちょっと飛ばしていただきまして35ページでございますけれども、米国のJOBS法におきましては手当てがなされておりまして、財務諸表の記載年数については新興成長企業は2年でよい、それから、内部統制報告に関する監査につきましては上場後、最長5年間免除されるという制度が創設されているということでございます。

続きまして、上場企業の資金調達の円滑化でございます。37ページ、まず上場企業の資金調達に係る期間の短縮ということでございまして、現在の制度におきましては、上場企業が公募により有価証券を発行して資金調達を行う場合には、有価証券届出書の提出がまず必要になります。有価証券届出書を提出してから7日間を経過するまでの間、これは投資家の熟慮期間という位置づけになってございまして、この間に勧誘はできますけれども、投資家に有価証券を取得させることができないということになってございます。

これを少し簡略化する制度として発行登録制度というものがございまして、あらかじめ発行内容を登録しておいて、その後、発行を具体的に決定したら即座に有価証券を発行できるということになっております。この発行登録制度におきましては、登録の際に発行予定の有価証券の種類とか発行予定額の記載が必要になってございます。現在、株価は比較的堅調でございますけれども、株価が非常に不安定な時期などにおきましては、株式でどれぐらい調達するということを発行登録しただけで株価が下がってしまうというような問題が指摘されているところでございます。

そういうような点を踏まえまして、ある程度周知性の高い企業につきましては、有価証券の発行決議、届出書の提出から実際の発行までの期間を短縮する余地はないか、それから、有価証券の種類、発行予定金額などの記載を行うことなく発行登録を行えるというような制度が考えられないかということでございます。

この点につきましてはちょっと飛ばしていただきまして、41ページ、42ページにこれも米国のほうで既に先行している制度がございます。42ページのほうにWKSI、Well-Known Seasoned Issuerという制度を紹介させていただいておりますけれども、これは一定の要件を満たしている大きな企業、時価総額7億ドル以上というような企業につきましては、かなり簡便な取扱いを認めております。

42ページの2つ目の丸のWKSIの効果というところですけれども、届出前の勧誘規制の不適用ですとか、発行登録の即時効力発生、さらに、発行登録の際に募集総額の記載を不要とする、発行登録により募集する有価証券の種類を事後的に追加しても即時に効力を発生できる、あるいは登録届出書の記載事項を簡素化できるというようなシステムがございます。このようなものを参考にして、日本についても投資家に周知されているような一定の企業については簡略な取扱いができないかということを検討したいと考えております。

続きまして、それに関連する問題といたしまして、43ページ以降、募集・売出しに係る勧誘規制ということがございます。先ほど少し申しましたように、有価証券届出書を提出する前に取得勧誘をすることは現在禁じられております。ただ、だんだん発行期間を短くしていきますと、どうしても事前の市場のニーズの調査が必要になってくるわけですけれども、この市場ニーズの調査と勧誘の境目が必ずしも明確ではないということで、ここを明確にして有価証券の募集とか売出しを検討する企業、あるいは証券会社が届出前にここまではやっていいというような行為を具体的に明らかにすることはできないかということが問題意識でございます。

この点につきましてはめくっていただきまして46ページで、これも例えば米国におきましては、基本的な枠組みは日本と同じで、届出書を提出しなければ勧誘を行ってはいけないことになっているわけでございますけれども、届出前にやっていい行為というのがセーフハーバールールとして幾つか具体的に規定されているということでございます。こういう点も参考にしながら日本でもやっていいこと、悪いことを明確化できないかというふうなことを検討課題として挙げてございます。

それから、49ページに飛んでいただきまして、大量保有報告制度の見直しということでございまして、現在、一定以上の株数を保有する方に大量保有者として大量保有報告書の提出を求める制度がございます。この報告書は、変更報告書とか訂正報告書とかも含めると年に1万を超える数が出てくるわけでございますけれども、これを提出する方の事務負担が大きいのではないかということが指摘されております。日本の大量保有報告制度の基本的枠組みというのはアメリカとかイギリスとほぼ同じになっておりまして、その点、日本の規制だけが著しく厳しいということではないんですけれども、個別に細かいところを見ていきますと、かなり厳しくなっているところがございますので、そういうところを中心に見直しができないかということでございます。

具体的に申し上げますと、53ページ目以降でございますけれども、例えば企業が自己株式を取得する場合、これも大量保有報告の対象になるわけでございますが、企業の自己株式の取得につきましてはほかにも開示制度がございますので、その重複感があるのではないかという指摘がございます。それから、個人の方が大量保有報告を出す場合もございますけれども、その際かなり詳細な事項の記載を求められておりまして、個人のプライバシーとの関連から言ってもちょっと過剰ではないかというご指摘がございます。

それから、その下、短期大量譲渡報告でございます。これは短期間に大量の譲渡を行った場合は、いわゆる肩がわりが行われたかどうかということを投資家が判断できるように、どういう方にどういう対価で売ったかという報告を求めているわけでございますけれども、これも極めて少額の株式を買われた方の名前まで全部出すという点で過剰なところがあるのではないかというご指摘があるところでございます。

それから、その他のところでございます。現在は大量保有報告を金融庁に提出するとともに、発行者に対してもその写しを送付する義務がありますけれども、その義務が必要なのかどうか。あるいは訂正報告書の公衆縦覧期間は受理してから5年間ということになっておるわけでございますけれども、訂正報告のもとになっている報告自体が既にもう消えてなくなっているのに、訂正報告だけが残っているという事態が現在ございまして、そこまでする必要があるのかというような問題意識でございます。

最後に、57ページ、58ページでございます。流通市場における虚偽記載等に係る賠償責任ということでございまして、現在の制度では、有価証券報告書等の重要な事項について虚偽の記載があった場合におきましては、当該書類を提出した会社は一定の方に対して過失の有無に関係なく損害賠償責任を負うということで、無過失責任が規定されておるわけでございます。この点につきましては、上場企業のほうも内部統制などに相当コストをかけてやっておられるということも踏まえると、一律に無過失責任というのがほんとうに妥当なのかどうか、この点について検討する必要はないのかということでございます。

めくっていただきまして60ページ、最後のページでございますけれども、例えばEUでは、この点、過失責任になっております。それから、米国では、欺罔の意図というものが必要ということになっておりまして、日本のほうが発行企業にとってはかなり厳しい規制になっているということで、この点についてどう考えるかということをご検討いただきたいというふうに考えております。

私からは以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。本日はちょっと予定が盛りだくさんで、この後、二人の方からお話を伺うことになっておりますけれども、今の事務局からの説明につきまして委員の皆様方からご質問、ご意見ございましたら、ここで少しだけ時間をとってお出しいただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構です。いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

1つ質問なんですけれども、アメリカのJOBS法という新しい法律ができて、今、SECで規則の検討中と伺っているんですけれども、どのあたりが規則策定上の論点になっているか、遅れているというふうに評価するのかわかりませんが、問題となっている点とか、ご案内であれば教えていただければと思います。

○古澤市場課長

報道ベースになりますが、2つございます。1つは、ページで申しますと、16ページでございますけれども、実務に即して細かい論点を詰める必要がある事項が相当ございます。例えば、ファンディング・ポータルについて新たにどういうふうに登録させるか、それから開示義務をどうするか、そういったところが1つの背景かと思われます。

もう一つは、当局として、投資家の保護と申しますか、通常想定していないような利用のされ方をするおそれがないかといった点について、様々な面からチェックする必要があるといった背景もあるのかと思います。そういった2つの面があるのかと思いますが、報道ベースでございますので、それ以上は不明です。

○神田座長

ありがとうございます。また、必要に応じて調査もしていきたいと思います。いかがでしょうか、ほかに。どうぞ、岡野委員。

○岡野委員

グリーンシート銘柄についてなんですが、20ページに登録されている銘柄数の推移がございますが、ピークの96から現在37ということになっているわけですが、この退出した理由というんでしょうか、どういうような形のものが多かったのかということについて把握されておりましたら、ご説明いただきたいんですが。

○平田委員

その件につきましては、私の方から簡単にご説明します。指定の取消しについては、取引所に上場した会社数よりも、みずからプライベート化する会社のほうが圧倒的に多く、その理由としてはグリーンシート銘柄の指定継続のための各種コスト負担が大きいことや、流通されないにもかかわらず適時開示が求められることに対する実質的な負担が多いなど、制度的な制約が厳しいということで退出した企業が多いというふうに理解しております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。福田委員、どうぞ。

○福田委員

非常に丁寧にご説明いただきまして、ありがとうございます。ただ、全体を考えると、最初はすごく大きな問題意識があって、リスクマネーをどうするかと。日本の経済成長戦略に非常に大事な大きな話から始まって、ただ、だんだん小さくというと語弊がありますけれども、そういう方向に話が進んでいく感じの流れがあったという印象を持ちました。成長マネーができていない理由というのは、もちろん制度的な制約もありますけれども、構造的な問題もかなりあって、そういう意味では金融庁だけで取り扱える問題かどうかという問題があるかもしれませんが、日本経済が抱えている構造的な問題というのも背後にはかなりあります。要するに規模が全然違うわけです。

そうすると、制度がちょっと違うということだけが原因でないのは明らかです。もちろん制度の問題は非常に重要ですので、そちらも取り組むと同時に、やっぱりもう少し構造的な問題も、この会を通じては取り扱うような方向性も考えていただきたいと思います。

○神田座長

大変ありがとうございます。大変重要なご指摘で、制度だけでなく、今おっしゃったような点もぜひ皆様方にご議論いただければありがたく思います。

それでは、原田委員、どうぞ。

○原田委員

ご説明ありがとうございました。福田委員のご発言に関連したことになるかと思うのですけれども、ご説明いただいた資料の中ではクラウド・ファンディングに重点が置かれていたかのように思っておりますが、クラウド・ファンディングは直接投資ですし、それ以外にもリスクマネーの供給ということでしたら間接的な投資、非上場の会社に投資をしている投資信託などもありますので、必ずしも直接投資に限定せず、リスクマネーの供給を広い意味で捉えるということも考えたほうがいいのではないかなというふうに思います。

クラウド・ファンディングといいますと、先ほど15ページのところでもご説明いただきましたが、やはり定義があやふやでまだ固まっていないところがありますし、第二種金商業者として登録を受けて業務をやっているところもあれば、そうでなくやっているところもある。小口投資のスキームということであれば、もう少しその辺のあやふやなところを明確にしてから議論を進めるといったことも必要ではないかなと思います。

以上になります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、田邊委員。

○田邊委員

いろいろご説明ありがとうございました。福田委員のご意見には大変賛成です。ただ、私の理解としては、それでもとにかくできることは全部やろうということなのだと思います。マグニチュードが大きいものも、小さいものも今回の議題は見ていますけれども、クラウド・ファンディング、それからグリーンシートとかがあり、グリーンシートは、地方の企業というか、地方でお金を集めていくというコンセプトで、これは別々ですけれども、クラウドというのは非常に広くできる。一方、グリーンシートの方は、地方の企業を対象にしたというのは狭いところであって、これが両面でいろんな投資家を集めていくということは、コンセプチュアルにはよくわかります。特に地方について、地方の企業、あるいは地方の再生とかいうキーワードからも、地方を切り口にした資金調達の円滑化というのは理解するんですけど、現実的に仕組みで入れようとすると、地方の上場なんかもうなくなってきている中で、地方という概念がどのようにこういう法律的な仕組みの中で整理されるのか。地方の投資家からお金を集めるってなかなかなじまないのかなと思うんで、コンセプチュアルにはすごく賛成なんですが、どんなふうに仕組みが出来て、効果があがるのか、アイデアがあれば教えていただきたいなと。

○神田座長

どうもありがとうございます。何か、この時点でコメントがあれば。

○古澤市場課長

先ほどご紹介いたしましたが、日証協において証券関係者からニーズがどういうものがあるか、どういうことが考えられるかという議論がなされておりまして、私がご紹介するのがいいのか、平田委員か、大崎委員にお願いするのがいいのかもしれませんけれども、まさに田邊委員からお話のありました地方の概念をどう考えるか、さらにそれを拡張できないかといった点をご議論されていると伺っております。そういった議論も受けとめながら、この検討を進めていければと思っております。

○神田座長

ありがとうございます。次回以降、また証券界のほうからご報告いただけると思います。

平田さん、どうぞ。

○平田委員

リスクマネー供給に関しては大賛成ではありますが、一方でクラウド・ファンディングのような比較的新しいといいますか、未成長な企業に対する資金供給ということを考えると、どうしても個人投資家の資金供給というところが重点として出てくる。規制緩和をして非常にやりやすくする、あるいは、いろいろな手法を導入するということは大賛成でございますが、一方で、今、社会的な問題として未公開株詐欺の問題というのが非常に広く、深く問題となっているということがありますので、やはり、その辺の視点も入れながら議論していっていただけるとありがたいなというふうに思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

それでは、とりあえず先に進ませていただいて、また後でまとめてご発言いただいてもと思います。

それでは、続きましてヒアリングに移らせていただきたいと思います。本日は前川委員と長谷川参考人からお話をいただくことになっております。続けてお願いしたいと思います。

まず、前川委員からお話をいただきたいと思います。大変恐縮ですが、15分程度でお願いできればということで、どうかよろしくお願いいたします。

○前川委員

前川でございます。よろしくお願いします。

私が今日少しお話をさせていただく領域につきましては、今日のご説明のところで、いわゆるその他と書いてある部分が主になってまいります。事実の確認という意味で、成長企業、殊に新規上場、IPOに係る仕事を実務としておる責任者という観点から、そこを中心にお話をさせていただきたいと思います。

1ページ目をあけていただきたいのですが、ベンチャー企業の成長のステージというふうに書いております。実はここで申し上げたいのは、IPOと一番下の段に書いてある過去の公開基準から、ずっと左に現在の公開基準が左にずれてきている。実はここが重要な論点の1つであろうかと思います。

冒頭、米国では5,000社上場があり、日本には3,500社があって、遜色がないというのは、実はここの部分に大きくよっているということです。日本のマーケットは、若く元気な会社をできるだけ早いうちに上場させていこうというのが証券会社の中にもあり、地域にもあり、国にもあり、取引所にもある。こういったところで、かつ市場が比較的透明性が高いといったことを海外から認知されているので、実は上場された会社さんが海外に展開するときにバリアが非常に下がるという特徴があります。ここは日本特有の発展段階を遂げてきたことではないかなというのが、まず冒頭のところです。

そこで、今度は、左にずれていただきたいのですが、プライベート・エクイティの領域のシーズと言われるところ、つまり、起業の段階で事業計画をつくり、新しい技術や製品を開発するといったところは、実は我が国では、結構、お金がいろんなところでつきます。アイデアや製品ができたところで人を雇い、設備投資が要るといったところでPLが赤くなります。ここのところからお金が足らなくなります。ここの領域が主にベンチャーキャピタルです。ここがストレーターとしてのベンチャーキャピタル、殊にGPを担うベンチャーキャピタルにお金が回っていないという問題意識が我々の非常に大きなところであります。

緑の線で示したPLががくんと下がっていくわけでありますが、ここがいわゆるデスバレー、死の谷と言われるところです。ここの幅は、我が国は比較的狭いのではないかと思っていますが、ここに資金投下をしていく仕組みをぜひ持っていく必要があるだろうというのが論点の1つです。

もう一つ、事業計画やシーズをつくり出す担い手であります。これは笑い話みたいな話でありますが、ある金融機関の調査では、日本の子供たちにアンケートをとりますと、男の子ですが、第1位になりたいのがサッカー選手、第2位が野球選手、第3位は何とすばらしいことに科学者というふうになってきています。これは、スーパーコンピューター「京」があり、iPSがあり、「はやぶさ」がありといったことで、非常に元気の出る一方で、社長になりたいというのは18位です。これは、笑えない話でありまして、米国を見ますと、5本の指に常にCEOになりたいと。つまり、そういう人たちが人材として配置されてくる企業は健全だと私どもは思っているわけであります。そういったことを狙っていくのが大事なことなのだろうと思います。

次のページ、3ページ目をごらんください。これは、復習になりますが、1983年以前は、新規上場は、年間20社といった状態です。実は増えてきたのが1984年から1990年にかけてです。ここは何かというと、1983年に日証協の店頭取引の市場ができたといったところで、大きな規制の改革があったということです。

そして、経済が落ち込んだ2000年にかけて社数が非常に減るわけですが、実は98年12月に公開基準の大きな緩和ができたこと、99年にマザーズができたこと等を含めて市場の大幅な規制緩和が起きて、ここで社数が増えるわけです。

2007年にリーマンショックが起きて、そこでがくんと減って、その後、22社、37社、48社と増えてきているわけですが、おそらく今年は60~70社に増え、100社といったところが射程に入ってくる時期が来るといいなというのが私どもの思いであり、そういうふうなことで業務をしております。

これは、実は海外も同じようなことが起きておりまして、2002年にワールドコムの粉飾決算というのが出ており、米国もここで大きく減っています。そして、日本では、ベンチャーブームに非常に大きな水を差してしまったのが、2006年1月にライブドアショックがあった、こういったことであります。そこから、ベンチャーブームがまた起きて市場が活性化している現在、同じ轍を踏まないといったことが非常に重要な論点だろうと思います。

4ページ目をおあけいただきたいのでありますが、ここはディールサイズ、新規上場のときに調達する金額のことをディールサイズと言っていますが、見ていただきますと、大体半分ぐらいが10億円ぐらいまで、非常に小さなIPOとなっております。

実はアメリカでは、NASDAQという市場があるわけでありますが、10億円未満の調達というのは本年はゼロであります。2012年に至りましては1件であります。香港では20%ぐらいがこれぐらいの量になっています。お隣の韓国で言うと、日本と同じような比率になっている。これは、頭の中に入れておいていただきたいのですが、実は10億円という比較的小さな金額でIPOをして、そこで成長する。

先ほどからJOBS法の話が出ておりましたが、実はその法律の背後にある精神というのは、新規上場が雇用の担い手になるという論点であります。東証で上場された会社さんを1年後、2年後、我々は調査していますが、飛躍的に雇用が増えております。つまり、業容を拡大されているというトリガーにIPOがなっているということです。

1990年に上場されました幾つかの会社さん、例えば国内の流通でありますと、ヤマダ電機さんは、現在、2万人でありますし、ソフトバンクさんやファーストリテイリングさんも同じく2万人。つまり、上場した時点では3桁の会社さんが、そうやって雇用を吸収していく、大きくなっていく、そういうようなことがあるわけであります。

その次のページを見ていただきたいのですが、2011年まではJASDAQが多かったのですが、2012年はマザーズがJASDAQの上場社数を超えて、手を挙げてくる第1番目の市場になってきたということです。

実は今、我々がパイプラインとして携わっている会社さんの中で言うと、ほとんどの企業はマザーズを目指していくのではないかと思います。マザーズのコンセプトは、言うまでもなくデスティネーションの市場ではなく、いずれほかの市場に移っていくというコンセプトがはっきりしました。かつhigh-growth and emerging stocksであります。つまり、世界を見据えて挑戦していこうという会社さんが現場のところで大きく増えてきたという意味では、非常に心強く思っているということです。

あと、上場した後に我々はインタビューを必ずするようにしておりますが、IPOで何を期待しますかという質問で言いますと、資金調達という声も一定程度あるのですが、リーマンショック以後、上場を目指す会社さんは資金調達がなかなか困難な状態の中で上場されていきました。上場後でおっしゃられていることは、実は資金調達がよかったというよりも、ビジネスチャンスの拡大やクレジットが上がったとか、あるいは海外に出ていくときの足がかりになったという別の答えが返ってきている。これは、我々にとって、意外な論点でありました。

ここからまたさらに上場していくことで、あるいは2012年に上場された会社さんの幾つかが、また次のファイナンスへ、あるいは次の市場へといったことで、チャレンジを大きくしていこうという流れは、2000年代の初頭のITバブルのころとは明らかに違う流れだと思います。ここは、私ども、意を強くしているところであります。

次、7ページ目をごらんください。代表的市場のIPOの動向ですが、実は韓国、香港、中国といったのはIPOの社数が大幅に減少しております。ここは、何かというと会計周りの不祥事が各国で明らかになったということは皆様ご承知のとおりですが、こういったことがあったにもかかわらず、日本は逆行高で増えてきているということであります。

こういった諸外国の規制強化の反対の裏側で、日本の中で今年60~70社、そして、100社へ増えていく。粗製乱造しないということは今後も必要な視点であろうし、東京が持っている強みというのを維持・強化しながらベンチャーを増やしていくということが重要なのだろうというふうに考えています。

次、8ページ目を見ていただきますと、やはりヨーロッパはユーロ危機の影響があり、ディールサイズに占める割合で言うと9.9%、1割を切っている。アジアと北米というのが新興市場、特にベンチャー目指す会社さんの目指されているところなのかなと思います。この状況は今年も続く見込みであります。アメリカと、特に今年は日本が、サントリーさんのような会社さんが上場して世界を目指すといった観点もありますが、こういう意味で日本が非常に強くなっているということであります。

10ページ目は、雑感も含めてでありますが、ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会というのが2008年にありまして、松田先生がおまとめになられたところで言うと、こんなことが日本の中で足らないのではないかということが列挙されております。

ここについては、私ども非常に共感するところでありますが、今回、この中で特に指摘しておきたいのは、資金力に乏しいベンチャーキャピタルといった論点は、先ほど2兆に対して1,000億円というお話が寺田副大臣のほうからありましたが、まさにそうでありまして、ベンチャーキャピタルと私どもはいつも手を組んでディールをつくっていくわけでありますが、そこにお金が回らない、もっとお金があればというお話で、GPを担えるような有力なベンチャーキャピタルにどうやってお金を回していくかということは喫緊の課題の1つだと思います。

もう一つが、先ほど申し上げました担い手の問題であります。大学を含めた、そういったところで、要するに若者よ、立ち上がれというインスパイアをしていくような仕組みが、今、個者の努力で行われています。会計事務所、証券会社、あるいは政府、取引所、もちろん協会もそうでありますが、いろんなところで、いろんな取り組みをやって増やしていこうということがあるのですが、ある意味、ジャパンコンソーシアムといったものをつくりながら、要は日本のベンチャーを育成していくようなプラットフォームをつくっていくというのが今回のワーキングの1つの論点であろうというふうに考えています。

ここで少し蛇足的に指摘しておきたいのが、担い手という意味で言うと、どうやら我が国の中で言いますとCFOが不足しているという声が大変大きく聞かれてきます。CFOが不足しているというのは、いわゆる事業計画の落とし込みであったり、事業戦略だったりといったものをきっちり書くフィナンシャーがベンチャー企業の中にいない。ここは公認会計士協会さんを含めたところで、どう連携していくか。金融庁さんは管轄であるわけでありますから、こういったものを育てていく仕組みをどうつくっていくかという論点はあろうかと思います。

もう一つ、実は日本の大企業に、例えばベンチャーとアライアンスを組んで案件を持ち込んでいこうとしますと、中央研究所だったり、あるいは事業性という壁があるのでしょうか、そんなことはないという意見はもちろんあるのですが、お声としてベンチャー側から聞こえてくるのは、大企業に持ち込みました、しかし、議論していただいたところ、何でうちではこれができないのだといった話になって、大企業さんがご自身でやられてしまう、などという話です。

つまり、大企業のコーポレートベンチャーが最近、大変増えてきているのですが、これは大企業が設備投資の代替としてベンチャーとどう組むかという視点があります。ここは、大企業との連携をどう考えていくか、大企業のコーポレートベンチャーをどう育てていくかという論点があろうかと思います。

すみません、時間がもうなくなってまいりましたので、早く進めます。

11ページ目が、先ほど申し上げましたサポートメニューをどう拡大していくかということであります。

12ページ目で日本と米国のベンチャーを比較してみました。日本は長引くデフレという観点もあって、特に低迷していたわけですが、これからこの1,240億円が飛躍的に増えることを望んでいるのと同時に、EXITの状況を見ていただきたいのですが、2007年は3分の1がIPOで出られました。ただし、2010年に至ると経済が非常に悪かったこともあり、買い戻し等があったわけであります。米国の場合は何かというと、EXITでIPOは2割、売却が8割です。つまり、M&A、ベンチャーキャピタルを挟んで行われていく、こういうような流れがあるといったことをご指摘しておきたいと思います。

最後、少し主な論点の整理という意味で言うと、栗田課長からお話もありましたが、IPOを促進していくという論点では、おそらく会社さんが実務をやっていてのところで言うと、新興市場にいる間は例えばJ-SOX、内部統制の見直しを米国並みに緩和していただけないだろうか、という点です。これがあるから上場しないということはないのですが、これによって財務のところで多くの雇用をつくらないといけないという声があったり、IPOの準備に時間がかかってしまうという声があります。

こういう意味で、要は内部統制の見直し、あるいは開示期間の短縮、今は5年間の財務諸表を届出書の中に書くわけでありますが、これを米国並みのような緩和が考えられないだろうか。あるいはエンジェルのところでありますが、これは手続の問題、あるいは税制の問題と両面でありますが、IPOで資金が手元に入った大金持ちが我が国も当然出てくるわけであり、そのお金が資本市場にもう一度環流してくる流れをつくっていくのは当然のことだろうと思いますし、株式で直接投資する場合もありましょうし、そういった人たちがベンチャーキャピタルに資金を流していくところでも例えば税制の恩典とか、そういったものを考えていただくことは可能ではないでしょうかということであります。

あと、もう一つは切実な問題でありますが、アメリカは5,000社ほどがバイアウトファンドによって非公開になる。それがまたどんどん出てくるという流れが出ます。ここで論点になってくるのは、のれんの問題であります。IFRSを適用していただきますと、こののれんを最後のボトムラインで評価しなくていい。日本の機関投資家の場合は、こののれんをどうしても引いてバリュエーションするという傾向がありますので、例えばIFRSを未公開会社に適用していくということでも、産業の新陳代謝、企業のイノベーションというのは進むはずだという我々の考え方があって、ここに書かせていただきました。

続きまして上場企業という観点では、IPOとは直接関係ないのですが、ここは建株会社、特に上場会社の資金調達に係る期間の短縮とか、今日も論点になっておりました届出前勧誘に関する整理に関連してお話を少しさせていただきたいと思います。

15ページになりますが、ここの表で見ていただきたいのは、しっかりとした大きな会社さんは、いわゆるIR、コーポレートの動きで言うと、適時開示、法定開示、その他カンファレンスの参加等、実はIRという作業、あるいは開示を含めたものがほぼ通年どこの期間も入っている、こういう状態になってきました。つまり、事業会社さんがどんどん開示をして、要は投資家に開示をしていくことで資本市場の健全な発達と自社の資本コストを下げていく、こういう両面で積極的にされているわけでありますが、米国ではWKSIというクライテリア、セーフハーバーのルールを入れて、届出前勧誘のルールについて幾つかの整理をされている。

一方、右側を見ていただきますと、未公開会社のIR、当然、適時開示や法定開示の義務はないのですが、ホームページで一定の開示をやっていたり、あるいはそういう会社がIPOに踏み切っている。非常に大きな日本の未公開が世界と勝負をするというときにグローバルにプレIPOロードショーというものをやっていきたい、というニーズがでてきます。我が社が上場企業としてどうなのだろうと判断していくために、いろんな意味で投資家とコミュニケーションしていく。投資家目線で我が社がどう見えるのだろうといったことをヒアリングしたい。そういった趣旨でプレIPOロードショーなるものをやっていくわけでありますが、ここにおいても届出前勧誘のルールの観点から、半年前から1年前とかにやるわけであります。

そうしますと、今我々が上場するべきかどうかという上場のタイミングの判断においては、なかなか判断がしづらい、という制約が出てくる。こういった観点から、日本の発行体による内外の株式の投資家に対する情報発信や訪問のルールの整備が必要と思われます。また、最近、サムライ債、海外の金融機関などが日本の市場で債券を発行したいというニーズが非常に増えてきております。これも我が国の資本市場にとっては大変喜ばしいことであります。これは、おそらくヨーロッパのユーロ危機の問題などがあるのでしょうが、そういったことからサムライ債を企図した場合に、ここでも届出前勧誘の論点が出てくる。これについて言うと、日本の大手の機関投資家が参加することによってディールができる、1,000億になる、参加しないとディールサイズが小さくなるといったときに、投資家に対してどういうふうな情報発信をしていけばいいのだろうという論点があろうかと思います。

最後のページになりますが、そういった届出前勧誘に該当しない情報発信、言ってみますと日本版セーフハーバーのルールのようなものを考えていったときに、1つには定常性、レギュラトリーという観点でありましょう、こういったものをやっている会社についてはどうなのだ、やっていない会社についてはどうするか。時期について定期制でやっているものはどうなのか。発行者の規模、アメリカでは流通株式7億ドル超といった発行体を非常に優遇するようなルールをつくっていますが、我が国ではどうなのだろう。あるいは発信者、これは主に会社さんでありますが、証券会社、我々にとってはアナリストの問題がありまして、ここについて本会議で整理していただき、大きな会社さんも、あるいはベンチャーもどんどん日本から世界をめがけて飛び出していく会社が増えていくように、ぜひ議論いただけたら幸いであります。

時間が若干オーバーしまして、すいません。

○神田座長

どうも限られた時間で大変貴重なお話を多数いただきまして、ありがとうございました。

それでは、続きまして長谷川参考人からお話をいただきたいと思います。本日は大変お忙しいところ、わざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○長谷川参考人

早稲田大学の長谷川と申します。よろしくお願いいたします。

1ページ目をお開きいただきます。私は、いろんな立場の顔を持っておりまして、1つ目は野村総合研究所におりましたので、いわゆる証券業界の立場はわかっているつもりであります。

2つ目の顔は、ベンチャーキャピタルを経営しておりましたので、いわゆるベンチャーキャピタルとしての立場はわかっております。

3つ目は、私のベンチャーキャピタルはすごくアーリーステージ、創業間もない会社に投資をしておりましたので、多くのベンチャー企業の役員とか経営側におりましたので、ベンチャー企業の立場はわかっているつもりであります。

4つ目として、今、大学のビジネススクールで教えておりまして、先ほど前川委員からありましたように、若い方をインスパイアするという意味で、大学生並びに大学院生を鼓舞するという立場の仕事をしております。

5つ目としては、ちょっとここに書いていませんが、私は公認会計士でもありまして、いわゆる公認会計士としていかに財務諸表を適正に開示していくかということについてもわかっているつもりであります。

6つ目としては、今、経済産業省で新事業創出支援者会議という、いわゆるワーキング・グループが開始されておりまして、今そこの座長をさせていただいておりまして、経済産業省、あるいは金融庁としてどのように新規事業を起こしていったらいいかということをわかっているつもりであります。

最後に、7つ目としてファミリービジネス研究所というのをやっておりまして、いわゆる日本の地方を中心とした老舗企業、2代目、3代目、そういった会社の研究を深めております。これは後でも申し上げますけれども、JOBS法に代表される、リスクマネーの提供の新しいやり方というのを踏襲するのも大事なんですけれども、アメリカで起こったことを日本で導入するだけでなくて、日本初というか、世界から日本の独自性というか、日本のリスクマネーの世界への発信という意味でいくと、日本に脈々とある地方のファミリービジネスをリスクマネーの供給拠点として考えてもいいのではないかという観点で、今研究をしております。そういった観点から、今日はご発言をしたいと思います。

次のページをお開きいただきたいと思います。これは、事務局のほうでもご説明をいただいた図でございますけれども、私はJOBS法というのは総論として大賛成でありまして、これはぜひ導入したいと思っております。その中で私が読んでいる限りでは、マスコミではクラウド・ファンディングにJOBS法がフォーカスされておりますけれども、もう一方としてエマージング・グロース・カンパニーという定義を明確にされて、このエマージング・グロース・カンパニーに対して開示の問題点とか、恩典を与えていくということで、つまり、明確にこれから伸びようとする会社にリスクマネーを提供して、かつ開示の問題をしていく。日本語として新興成長企業というふうに訳されているのですが、私から言うとぴんとこない。エマージング・グロース・カンパニーという迫力が伝わるような言葉にしたいと思っています。このエマージング・グロース・カンパニーというものを日本でも概念の中に入れて、今回の議論をしていただきたいと思っています。

いろいろあると思いますが、経験から言うと、私は、この2ページの表を見て思ったのが3つありまして、やっぱり1つはお金の問題、新規成長企業に対してリスクマネーを提供するというのはほんとうに必要で、特に適切なタイミングで適切なお金が出るのが一番大事です。先ほど規模感の話がありましたけれども、企業の成長段階のそれぞれのタイミングにおいて必要なお金が出るというのも大切であって、規模が大きければいいという問題ではないと私は思っています。例えばベンチャーキャピタルは、この図で言うと後ろのほうに書いてありますが、ベンチャーキャピタルも決して後半だけではなくて、ほんとうにアーリーからでもいい会社であれば出資しようという気持ちもあります。

2つ目の観点は、さりながら企業成長するためにはお金も大事ですけれども、お金だけではない。そういう中で、今、スタートアップアクセラレーターとか、インキュベーターとか、いわゆるスタートアップした会社を支援する仕組みがアメリカで続々起こっていまして、それを導入する形で日本でも起こってきておりますけれども、お金以外の面で支援する仕組みが大事だと思っています。

先ほどご質問の中にありましたけれども、やはり何と言っても新規企業、あるいは成長企業にとって一番うれしいのは売上です。資本金とかエンジェルマネーを出してもらうことも大事ですが、やっぱり一番欲しいのは売上だと思うんです。この売上を拡大するためにどうしたらいいかというときに、大企業の方々のご支援というか、いわゆる大企業の方々の懐を広くするということがないと売上はなかなか上がらないと思います。

3つ目として指摘したいのは、やはりリスクの出し手を明確にすべきです。とかくクラウド・ファンディング、エンジェル、ベンチャーキャピタル、取引所など、適切なリスクの出し手が適切な段階で企業に資金を出すのが大切だと思っています。例えば規模の問題もさることながら、リスクがとれる期間の長さが大事だというふうに私は思っております。例えばベンチャーキャピタルというのは通常10年のファンドですので、10年以上のリスクというのはやっぱりなかなかとれないです。クラウド・ファンディングにしても、エンジェルにしても、ベンチャーキャピタルにしても、公開した取引所にしても、やはりリスクがとれる適切な組織が適切なリスクをとっていく。特にとれる期間の長さというものについて考えるべきではないかと思います。

冒頭、クラウド・ファンディング、賛成です、ぜひやりましょうと言いましたけれども、ぜひこの委員会でご議論いただきたいことは、なるべく規制を多くしない観点で議論ください。危ない面はたくさんありますけれども、だからといってたくさんの規制をしますと、本来の趣旨がなくなってしまうのではないでしょうか。ちょうどエンジェル税制を始めたときに私も絡んでいましたが、たくさんの懸念があるので、たくさんの規制が入ってしまって、エンジェル税制の活用事例が低迷した状況になっております。決してリスクの取り手がいないわけじゃない。でも、やっぱりエンジェル税制としては使われていないという意味では、規制はなるべく必要最低限にしていただきたいと思っております。

3ページお願いします。私の仮説ですけれども、ベンチャー企業、あるいは上場を目指す企業ばかりでなくても、新規創業企業も含めて、リスクの取り手はベンチャーキャピタルだけでは無理で、やっぱりエンジェルとか、大企業のリスクマネーを出さなきゃいけない、あるいはファミリービジネスも広めて考えるべきではないかと思います。例えばエンジェル税制は現在個人のみですが、法人にもぜひエンジェル税制の適用ができるようにすることも必要かと思います。

2つ目として大企業側でもグローバル競争下、自前だけでは全ての事業開発、特に新規事業の発掘は無理で、ベンチャー企業との連携、あるいはM&Aで事業開発をしたいと本気で思っています。最近、特に大企業の新規事業セクションは活発です。

それから、起業家、アーリーステージのベンチャーキャピタル、それからミドルステージのベンチャーキャピタルはエンジェル、クラウド・ファンディング、あるいは事業会社、それぞれが役割分担してイノベーションを起こしていく。誰か一人が頑張ればいいという話ではなくて、いろんな取り巻く方が連携を持ってやるべきだと思っています。

大手企業は、起業家とかベンチャーキャピタルとの連携を求めているけれども、出会いというのがまだ弱いと思っております。

次の4ページをお開きください。私が始めた経済産業省におけるワーキング・グループの活動を少しご紹介したいと思います。名づけて伯楽作戦と呼んでおりまして、一言で言えば創業する会社、あるいはベンチャー企業を育てるためには、早い段階でトップクラスの専門家がその企業を支援する方式をとる必要があります。名馬を育てるためには伯楽が要るということで、伯楽とセットでお金を出すべきなんじゃないか。ベンチャー企業とか、つくったばかりの会社に直接お金を出すのもいいんですけれども、やはりセットでやるべきではないかと思っております。

これから始めていこうというベンチャーキャピタルにはお金がなかなか集まらない。伝統と経歴のあるベンチャーキャピタルにはお金が集まりますけれども、スタートではなかなか集まらないので、やっぱり経験を積むという意味でも今回の新事業創出支援事業を通じて経験を踏んでもらう。打席に立ってもらう。打席に立ってバットを振って実績を作らないとお金は集まらないということもあって、この新事業創出支援事業を始めております。

5ページ、お願いします。やっている内容は、トップクラスの支援者によるシードステージの支援で、非常に大事だと私が思っているのは経営理念とかビジネスモデルをつくるところ、プルーフ・オブ・コンセプトをつくるところ、試作品をつくる、市場調査をするところ、このような目的のお金がない状況です。大企業に持っていっても、コンセプトはわかったけれども、デモを持ってきてよと依頼されるが、今、3Dプリンタが発達していますが、デモを持っていく、このお金がないのです。こういった試作品をつくるお金とか、ビジネスモデルが非常に幼稚であるということについてサポートする仕組みをつくっていこうということを考えています。

そのコンセプトは、6ページ目でございまして、オープンイノベーションを進めていくべきだと思っておりまして、繰り返しになりますが、異質なものを融合するところからイノベーションは起こるというふうに私は確信しておりまして、この異質なものの融合の仕組みをもっともっと活性化しないと日本の成長企業は出ないと思っています。

2つ目はスケールということで、どうせやるなら大きな成長を目指すということで、先ほど雇用創出という役割もあるというお話もありましたけれども、ぜひともボーングローバルで、世界をある程度意識したターゲットにすべきだと思っています。

3つ目は、やはり社会的意義のあるビジネスであるべきです。自分さえ儲かればいいというのは、やるべきではないと考えております。

8ページに飛んでいただきたいと思います。私が強調したい点は、Fail Fastでありまして、大企業の方と議論すると、ここが一番問題になります。新規事業は大企業においても、ベンチャーキャピタルが投資しているところでも8割失敗します。うまくいって2割ぐらいなので、失敗する確率のほうが高いのです。でも、失敗することから得たもののほうが大きいものです。失敗したらどうしようとか、そこでリスクを誰がとるのだというよりも、リスクがとれる人がリスクをとるべきだ、だからFail Fast。でも、どうせ失敗するなら早い段階で失敗しないと難しい。

要するに50歳超えてから失敗するとすごく影響額が大きいので、やはり早い段階で失敗を前提としていくべき。小さく早く、それから失敗から何を学んだか。早く修正する。それから、出雲さんもそうだと思いますけれども、ネアカで、忘れやすくて、よく眠れる、という要素が必要です。逆に言うと、ネクラで、じめじめと覚えていて、全然眠れないというのは経営者に向かないと私は思っています。それから、個人保証の撤廃というのは、今動きつつありますが、当然モラルハザードには気をつけながらも、そういったFail Fastの概念を支援するのが大事だと思っています。

9ページをお願いします。冒頭、1つのリスク提供先としてファミリービジネスがあるというご提案をしました。早稲田大学の中に国際ファミリービジネス総合研究所という研究所をつくりまして、またファミリービジネス学会をつくりまして研究をしておりますが、ここに書いてあるのはケロッグ大学のジョン・ウォードという先生が書いているスリー・サークル・モデルというもので、ファミリービジネスの中ではバイブルでございます。

オーナーシップとファミリーと経営のビジネス、この三者が一体となっていく。ある意味でいけば、ファミリーが新規事業の発掘のためにパトロン、エンジェルになる。あるいはアーリーリスクをとる。なぜならばファミリーというのは、社長になったら、30年間、次の息子に譲るまで30年間リスクがとれるんですね。地方においては相当な資産をお持ちの方もたくさんいて、世界のファミリービジネスの研究会においても物すごく評価されております。そういった意味で、日本が世界に冠たるファミリー大国であるとの意識を持ちながら、ファミリービジネスの研究を私としては進めていくつもりでありますけれども、こういった点も1つあると思います。

最後、10ページでございますが、EXIT(出口)の問題は絶対必要です。リスクマネーを提供するという以上は、やはりボランティアでは長続きしませんので、EXITは議論の上、絶対しなければいけないと思っておりますけれども、そういう中ではM&A市場の活性化というものを促進すべきと思っております。M&Aされる相手は、投資ファンドよりも、できたら大企業がM&A先、EXIT先であったほうがいい。株式市場だけではなくて、新規事業として何かチャレンジングをしたい大企業のセクションにM&Aとして売却していく。そういった意味では、コーポレート・ベンチャー・キャピタルという仕組みも今後より研究していくべきではないかと思いますし、M&Aをするときにのれんの償却というのが今、非常に重いのが課題です。そういった点についても、全面廃止とは言いませんけれども、先ほど定義しましたエマージング・グロース・カンパニーに限るとか、そういう前提を置くとしても、のれんの償却というものについて何か手を打たないと、Jカーブで赤字が大きいベンチャー企業がEXITをするというのは難しいと思いますので、そういった点についてもご検討いただくべきだと思っております。

私からは以上です。

○神田座長

限られた時間の中で大変貴重なお話を多数いただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、前川委員と長谷川参考人からいただきましたお話について、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。先ほどの事務局からの説明への追加でのご質問等でも結構でございます。

最初に副大臣からご発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○寺田副大臣

ありがとうございます。大変貴重なプレゼンをお二人からいただきました。ありがとうございます。

前川さん言われた99年のマザーズ創設の4年前の95年、私も証券市場課で、マザーズの前身の「特則」市場、これの制度設計、御社はじめ多くの証券界の方々、また投資関係の方々とも制度設計したことを思い出すわけでありますが、まだまだこんなもんじゃないだろうと言って当時スタートし、デスティネーションじゃないと言われた、まさにそのとおりではないかと思います。

今回、政府の成長戦略の議論でも、本来はここまでやるべきかどうかこれまで踏み出せなかった分野まで官が出てきてまして、ほんとうに民間の投資マネーがシュリンクしているのが現状なんですね。例えば官民ファンドもそうであります。クール・ジャパンファンドをつくる、国土交通省の官民ファンドができる。あるいは先ほど長谷川さんにご説明いただいた新事業創出事業にしても、あるいは先導的官民連携事業にしても、今回、全て成長戦略の中身に入っておりますが、本来は民間がやるべき分野を民間があまりに出ないんで民間を引き出す意味で官が出張って、フィフティー・フィフティーのマッチングファンドであれ、あるいはリスクマネー以外のレンディングの分野であれ、ここまで官がやるのという声が上がるところまで実はやっているんです。

地域も相当なニーズとシーズがあります。私の地元の広島県でも、あまりに民間の投資マネーの動きが鈍いんで、県が投資ファンドをつくって、イノベーション機構をつくって50億円規模でありますが、co-financeの形、あるいは協調投資の形でスタートしているのが実態でありまして、相当なニーズやシーズがあるのになかなか出てこない。1,550兆円の個人金融資産というのはまさに寝ている、スリーピングの状態であるのが現状かと思います。

お二方の目からごらんになって、例えばでありますが、先ほど事務局ペーパーの6ページ目に8項目の具体の閣議決定した中身であります。クラウドから大量保有報告制度の報告義務の簡素化まで8項目出ておりますが、例えば、これをやれば投資マネーがかなり出てくるであろうと思われる項目は何か。あるいは、この8項目以外であっても結構であります。やはり何かが足りないから全く出てこない、これだけ官が頑張っても出てこないというのが現状だと思いますので、ぜひお二方のご所見をお伺いできればと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、前川委員から。

○前川委員

ありがとうございます。ここに掲げられた8項目については、ぜひご検討いただきたいなと思います。

それに加えというお話でさせていただけるとありがたいのですが、創業していく人に、先ほど長谷川さんからもお話がありましたが、創業時から合理的にビジネスを組み立て持ち上げていく、要するにいろんな知恵や、あるいは技術やお金といったところの支援で本格型のベンチャーとして持ち上げていくところのスタートアップが、この国は非常に脆弱だと1つ思います。そこは、大学の中にも基礎技術があるということは多く言われているのですが、それを産業化という前に事業化するための仕組みが非常に脆弱だというふうに考えています。

そのうちの1つが先ほど申し上げたCFOだろうというふうに思っています。CFOは換金ができるという意味ではなくて、まさにCEOの右腕となって、例えば公認会計士から飛び出して事業会社に入り、そこで一緒になって会社をつくっていく。言ってみると本田宗一郎さんがおられたときの藤沢さんのような人たちがどう見ても不足しているなというふうに思います。

そこを、例えばではありますが、先ほどオールジャパンコンソーシアムという大変僭越な言葉を使いましたが、私どもや会計事務所、あるいは国やさまざまなベンチャーキャピタルが入り、そこでビジネスプランをたたいていく。そして、ネットワークを持っている上場企業に売り上げをつくるべく働きかけていくといった仕組みがあれば、かなり多くの会社さんが立ち上がってくるという確信を持っています。

なぜ、このようなことを申し上げるかというと、2000年当初のときの、言葉を選ばずに申し上げますと、一種の拝金主義やモラルハザードといったものが今のベンチャーの諸君には見られません。つくっているところから世界を、と言っています。これは、インターネットが発達したり、SNSのプラットフォームができたりといったことで、あるアイデアがいきなり世界に販路を求めて、できるような環境が出てきているので、ここに日本の得意とするものをレバレッジをかけて入れていく。

そのためには2つありまして、1つが大学の教育のようなところで、ぜひ東京大学を出た優秀な皆さんがベンチャーを目指すんだという社会を考えたいというふうに思いますし、言ってみると、そこにはリベラルアーツとしてベンチャーの教育を入れていたり、あるいは会計士の皆さんで事業会社に入りたいといったところ、一種のバンクのようなものをつくって人をマッチングさせていったり、あるいは起業したところからIPOを見据えたようなプランニングを作成したりといったことができればいいなというふうに私は考えております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

長谷川先生、いかがでしょうか。

○長谷川参考人

私も6ページの項目についてはぜひ各項目とも実現していただきたいなと思っていまして、特にこの項目だけというものはあまりなくて、複合的なことではないかというふうに思っております。

これ以外ということで2点あると私は思います。1つは、やはりリスクに対するケアのところをもっと強化するということで、冒頭、副大臣がおっしゃったように、そういうプログラムがスタートされているようですけれども、やはりベンチャー経営者、創業した人に対する尊敬を増やすということと、ハイリスク・ハイリターンだというイメージを覆すことです。決して独立するとか、チャレンジングするというのはハイリスク・ハイリターンではないのだという雰囲気の醸成を強化すべきだと思っています。

例えばよく笑い話を言っているのですが、うまくいった会社の表彰コンテストはあるのですけど、失敗コンテストとか、大失敗した人をたたえるぐらいの、そういうのもあってもいいと言ったりしていますが、とにかく意識の面で創業するということの積極性を高める。逆に言うと、それのハードルを下げるということの啓蒙が絶対必要で、それは大学も役割を持っていると思いますけれども、日本全体として活動が必要と思います。

2つ目としては、やはりリスクがとれる人にリスクマネーを出してもらう。繰り返し言っておりますが、そのときに相続ともっと絡めるのは必要かと思っています。最近、教育資金1,400万円ということを打ち出すだけで、あれほどのお金が世の中から出てくるわけですから、そういった意味で、いわゆる新規・成長企業にリスクマネーを提供する。これについては相続において何らかの措置があるというような形になれば、相当なリスクマネーが出てくるのではないかと私は思っておりまして、そういった点についても検討すべきです。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、委員の皆様方。既に手が挙がっていますが、順番で言うと大崎委員、上柳委員、安達委員の順で、大崎委員からどうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。3点お伺いしたいんですが、まず最初に前川さんにお伺いしたいんですけども、IPOをどうやったら活発化できるかというのは、随分長い間議論してきて、私もそれにはいろいろ関与してきたんですが、以前は取引所の上場審査に対する厳しい見方というか、ちょっと慎重にやり過ぎじゃないかというような意見を割とよく聞いたように思うんですが、その点について、静さんもおられるんで、もしかしたら若干おっしゃりにくいことがあるかもしれませんが、前川さんのご所見をお伺いできればというのが第1点でございます。

第2点は、長谷川さんにお伺いしたいんですけれども、長谷川さんの最後のほうの8ページに書いておられたことで個人保証の撤廃が重要だ、これ、私、全く賛成なんですが、もう一つ似たような話で、私が結構ひっかかっていますのは、ベンチャーキャピタルがベンチャー企業の株式に出資するときに、経営者による買い戻し契約をつけさせるケースが多いというようなことを聞くのです。これも個人保証と似たようなもので、ある種の出資する側のモラルハザードを呼ぶんじゃないかというような気がしていまして、この点について、長谷川さんとしてはどうお考えかというのを教えていただければと思います。

3つ目は、お二人、あるいはどちらかにお答えいただきたいんですけれども、先ほどの寺田副大臣のお話との関連で私が思いましたのは、まさにおっしゃるとおり1,500兆円の個人資産が寝ている、そのとおりだと思うんですが、寝ている場所は今、銀行の預金という形で寝ているわけですね。これを動かす上で、銀行が何か果たすべき役割というのはあるというふうにお考えかどうか。これは、もちろん預金者保護ということも非常に重要ですんで、あまり安直なことは言えないと思うんですけど、何かご所見があればお伺いしたい。

以上、3つでございます。

○神田座長

どうもありがとうございます。

では、前川委員、お願いします。

○前川委員

ありがとうございます。上場審査については、やはり静さんおられますので、なかなか申し上げにくいところがあるのですが、非常にフレキシブルにお答えいただいて、企業の実態に合わせて変革をということが、この数年間、漸次なされており、上場審査部の皆さんとの会話の中で大きな変化があったということは事実であります。そこがあったがゆえに、ここ数年間、上場企業は急速に増え出したといったことについては誇るべきものだと思います。

一方で、これは、私が申し上げるべきことではないのかもしれませんが、緩くなり過ぎないという視点は、多分、大事な視点だろうと思っておりまして、先ほどの品質ということであります。個人投資家に自己責任を問うていくという話もありましたし、昨今起きているのは海外の市場でいろんな不祥事が起きているなど、どう担保していくかという視点は絶対に外せない。社数だけを増やすという論点でないといったことについては、もちろんそうでありますし、そうだと思いますが、そこについては一方の問題としてあるのだろうというふうに思います。

そして、最後の銀行のところでありますが、やはり銀行さんと証券会社は、役割という意味で言うと、決済の担い手であります銀行さんとリスクマネーの担い手である証券会社というのは一定程度役割が変わっていくべきものなのだろうというふうに思います。

ベンチャーキャピタルのお話を申し上げましたが、大手メガバンクさんは傘下にベンチャーキャピタルを既にお持ちになられています。それはそれで一定のアクティビティーをお持ちになられてやられているので、そこについてはぜひ業態の拡大ということでありますが、実は先ほど寺田副大臣のお話の中であったところで、どうやったら増えるだろうという話で言うと、一番即効性があるのは、例えば、でございますが、先ほど官が出張ったというお話がありますが、官のお金を民にどう回すかという観点で言うと、直接、非常に小さなスモールキャップにお金を入れていくのではなく、例えばベンチャーキャピタルに、大量の資金を中に入れていくというのは1つのアイデアではなかろうかと思います。

一方で、GPが担えるベンチャーキャピタルがお金がないと言っています。そこに一定の基準を入れ、今、1,250億円を何とか5,000億円にしなくちゃいけないというふうに問題意識を考えていったときに出てくる行動はおのずと決まってくる。そこに資金が投下されてくると、彼らはIRRを25とか30というハードルレートを決めて投資していくわけですから、そこで一緒になって事業を立ち上げEXITを迎えるというようなことでありますから、資金をほんとうにハンドルするところにお金を与えていくというのが1つの考え方ではなかろうかというふうに私は思います。

大崎さん、よろしいでしょうか。

○大崎委員

ありがとうございます。

○神田座長

ありがとうございました。

長谷川先生、いかがでしょうか。

○長谷川参考人

まず、ベンチャーキャピタルの買い戻し条項についてのご質問でありまして、これは、ちょっとご説明させていただきますと、ベンチャーキャピタルが初期に投資をするときにベンチャー経営者に対して、あるいはベンチャー企業側に対して投資契約書を結びます。投資契約書の中に投資してからある一定の期間内にもしEXITができなかった場合には、会社並びに経営者に買い戻しを要求するという条項が入っているということについてだと思います。この買い戻し価格について、以前は投資原価、または一定の金利を乗っけた、いわゆる利息をつけたような金額で買い戻すことを会社側だけではなくて、創業者にも要求する、いわゆる個人保証のようなケースは見受けられました。

ただ、これは、後で安達委員からもぜひコメントいただきたいと思いますけれども、現時点ではほぼなくなってきているという認識です。これは、規制の問題というよりも、そういうベンチャーキャピタルはベンチャーキャピタルの風上にも置けないということであって、いわゆる市場から抹殺されるというような意味合いの規制です。業界はクラブディールでございまして、私は、今回のこととも絡みますが、金融庁として規制するということもさることながら、やっぱりプロフェッショナルとしてのクラブの中で二度と仕事ができなくなるガバナンスというあり方もある意味必要と思っています。少なくともそういう形で、今は買い戻し条項が入っているケースは少ないと思います。

むしろ、私は違う観点ですけれども、先ほど言ったようにアーリーのところにお金が入らないがゆえに、比較的ちょっと変わったエンジェルとか、変わったアクセラレーターが数百万円というお金で持株の30%とか、40%と物すごく高いシェアを最初にとってしまうケースを問題視しています。ほんとうに何も知らない、要するによちよち歩きの子供みたいな方に数百万円出資するというと、何でも言うことを聞くみたいな感じです。後から見ると、この将来有望な会社の30%とか40%というシェアを早い段階で割り当てている問題のほうが深刻であると思っています。

2つ目のご質問の銀行との関係は、総合的に銀行というところが個人に対してであろうが、法人に対してだろうが、顧客の総合的満足度を上げるという意味でいくと、従来の貸し付けと増資、エクイティとデットという二者で議論できないフェーズに当然入っていると思います。例えばクラウド・ファンディングとか、エンジェルといったときには、当然、銀行も避けて通れないファクターだと思いますし、今日の議論ではあまり出てはいませんが、グローバルという視野が必要だと思う。海外のお金が日本のエンジェルとして投資する、あるいは日本のファミリービジネスが海外にお金を持っていくというようなインアウト、アウトインというグローバルなお金の流れが、これからますます広がってくると思います。そういったときに銀行というものの役割がより増える。当然、証券会社もグローバルな意味でのインアウト、アウトインのお手伝いはできると思いますが、いわゆる銀行の役割として、そういったグローバルなリスクマネーの提供者の紹介は十分できる。

それから、先ほど最後に申し上げましたEXITですね。大企業にベンチャー企業とか新規事業を売却するといったときの仲介業務というのは、当然、証券業界もやっておりますけれども、銀行もすごくいろんな企業をご存じですので、グローバルな意味でのEXIT先を見つける、という意味で、銀行との関係はもっともっと深まると思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、上柳委員。

○上柳委員

時間も押しているようなので、長谷川さんに1問だけお願いしたいと思うんですけれども、パワーポイントの3ページの3つ目のポツのところに、「現状には問題あり」と書いてあるんですけれども、この問題の中で特に大手企業、あるいは、ファミリービジネスの人たちがベンチャーと連携するときに障害になっている金融庁関係のといいますか、あるいは法律的な問題点としてもしお考えのところがあれば、後でも結構ですけれども、ご指摘いただければと思います。

私自身は、規制については、特に個人向けについては今回、MRIの事件で1,000億円とかお金が動いたらしくて、これは、クラウド・ファンディングの去年の数字と似たようなところまでいっているわけですけれども、すごく心配しているんですが、そちらはやはり規制をお願いせざるを得ないと思うんです。法人についてはいろいろ工夫の余地もあるかなと思っていて、特に大企業なり、ファミリービジネスとの関係で問題点、もし今お考えがありましたら教えてください。

○長谷川参考人

特にいわゆるレギュレーションという観点からの問題は、さっきののれん代ぐらいのところ以外では特に明確なものはありません。やはり一番ポイントは、大企業側からすればベンチャー企業と連携するときの意識の問題ですね。先ほど前川委員のほうからもありましたけれども、ノット・インベンティッド・ヒアというか、自分の研究所でやっていないことを外から知恵を受けるということに対する拒否感の問題とか、あるいは契約をしなきゃいけない、その契約に対する温度差の問題ですね。契約でベンチャー企業を縛れば縛るほど、ベンチャー企業のよさがなくなっていくものですから、そういったところの温度差が問題です。かといって大企業の場合、契約なしで進むことはできないので、そういったところのモデル契約を明確にする必要があります。

そして、強いて挙げれば、冒頭言いましたように、失敗する確率が8割であるということに対する社内的な承認の問題ですね。えてして失敗は早く出るのですね。成功は後で出るのですね。そういった意味で、最初に続々失敗するから、何やっているんだという声が出ます。そういった意味では、コーポレート・ベンチャー・キャピタルのような仕組みも含めて、そういった承認プロセスの問題も必要かと考えております。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

安達委員、どうぞ。

○安達委員

ありがとうございます。時間も限られていますので、簡潔に申し上げます。先ほど来、各委員の方々、参考人の方にご意見をいただきまして、まさしく、これはベンチャーキャピタルのための会議ではないかと私は思って聞いておりました。非常に心強く思っております。

ご指摘のとおり資金調達は非常に厳しい状況が続いています。1,240億円という金額はGDPのたかだか0.02%ですね。これは、アメリカとの比較で見ましても1桁違っております。長谷川参考人は5,000億円とおっしゃいましたけれども、私としては何としても1兆円ぐらいの規模にしたいと思っています。

そのために、もちろん規制緩和は非常に大事です。ただ、規制緩和だけでは実現できないことも沢山あります。それをこの場でぜひ議論していきたいと思います。たった今、副大臣が退出されましたが、当協会と日本ニュービジネス協議会及び日本ベンチャー学会、3団体が共同で、この2月から3カ月かけて提言書をつくりました。これを皆さんに次回お配りしたいと思います。この中に私どものリスクマネー供給に関する要望事項が全て入っています。ぜひご参考にしていただきたい。

ただし、これは、我々投資家の視点から書きましたので、当然、各界の皆さん、有識者の方々含めご意見いただいて、これをどうブラッシュアップして具体的に政策として実現していくかということをぜひこの場で議論いただければと存じますので、よろしくお願いしたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、福田先生。

○福田委員

時間が限られているので手短に。リスクマネーには、お金の出し手の問題と取り手の問題と両方あると思うんです。出し手の問題では、副大臣がおっしゃられたように、日本経済全体としてお金はあるわけですよね。お金はあるんだけれども、リスクマネーには回っていないということが大きな問題だと思うんです。ただ、そこでは構造的な問題もあって、その資産が高齢者にかなり偏っているということが、まず日本のお金の流れの構造的問題です。なおかつ、その構造的問題は、これからもますます極端になっていくことが予想されます。これから30年後には高齢者の人口が4割になるというのが日本経済の流れですので、今まで以上に、その構造が極端なものになっていく。高齢者のお金というのは、基本的にはリスクマネーには向いていないと思います。余命そんなにない人がリスクをとって投資するということでは通常はないので、そういう意味で安全資産としての銀行預金にお金が集まるのはやむを得ない面はあるんです。けれども、長谷川先生は非常に重要なことを幾つかおっしゃっていると思うんですが、方策はないわけではないと思います。

1つは、ご指摘のあった相続税で、それをリスクマネーへの投資に優遇するということになれば、お金をリスクマネーに使おうということにもなり得る1つの方向だと思います。あるいは他人に対してはなかなか投資できないけど、自分の家族なり、長谷川先生の最後のところにもファミリービジネスという話ありましたけども、自分のお子さんなり、お孫さんなり、それに相当するような人であれば投資してもいいというようなお金としては使えるという余地はあると思います。

実際ある経済学者の先生で、お子さんがベンチャーを起こされたときに、かなり出資されて成功されたという例もあります。高齢化時代の日本という特殊な構造の中で、金融資産をどういう形で、なかなか難しいけれども、極力リスクマネーに回していく試みというのは、長谷川先生がおっしゃられているように非常に大事なことだというふうに思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。時間が来てはいるのですが、せっかくですので、もしご発言があれば伺いたいと思います。

山下委員、どうぞ。

○山下委員

手短に。事務局説明資料の中の6ページのところなんですけれども、こうした規制改革については、1つ、先ほどから話もちょっと出ておりますけれども、ぜひクロスボーダーのリスクマネーを供給するという観点も非常に重要だと思いますので、そこについても考慮したものを今後考えていきたいというふうに思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

武井委員、どうぞ。

○武井委員

長谷川さんがおっしゃったことにも絡むんですけども、ベンチャー投資の活性化のためには、EXITの多様性も重要で、多様性の一つとして種類株式の状態のままでの上場という論点もあると思います。長谷川様がたしかどこかのご論文で、種類株の上場の規律が厳しいのではないかと指摘されていたかと思います。上場のところをもう少し緩和する、すなわち上場するに当たってどこまでの支配権を失わないとリスクマネーをもらえないのかという話にもなるわけで、事業を行う側の立場からしても、上場制度という受け側の柔軟性と多様性というのも結構重要だと思うのですが、その点に関して何かご意見があれば、お伺いできればと思いまして。

○長谷川参考人

この点は話し出すともう1時間ぐらいかけないといけないポイントかと思うのですが、私もいろんな論文を書かせていただいている中で、やはり種類株でベンチャーキャピタルは投資をして、当然、リスクはとろうと思うのですけれども、とれるリスク、とれないリスクがございますので、種類株を活用してリスクをとっていくというのは欧米では当然だと思っております。私どももベンチャーキャピタルとしては種類株の投資を始めております。

ただ、EXITするときに種類株のままで上場できるかという問題、種類株の構成比、上場するときに普通株に転換する条件をどのようにするか、普通株と種類株を同時期に発行した場合の価格差についての税務的許容範囲の明確化、などの点については、まだまだ改善すべきポイントがたくさんあると思っております。

ただ、やはり冒頭繰り返しになりますが、では、エンジェルだったら無限のリスクをとるべきかとか、そういう問題にもなってきますので、1つは、リスクの取り手といったときに、種類株のような、ある一定の限定したようなリスクの取り方というのはもっともっと研究すべきと思っております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。既に予定の時間を5分超過しておりますので、ほかにもまだご発言あるかとは思いますけれども、また次回以降、活発な討議をお願いできればと思います。本日はこのあたりとさせていただきたいと思います。

本日は、限られた時間でございましたが、大変貴重なご指摘を多数の方からいただきましたので、本日いただきましたご説明とあわせて、今後の具体的な検討に当たっての参考とさせていただきたいと思います。

1点お願いなのですけれども、集まって議論する時間というのは限られております。したがいまして、皆様方には、追加でのご意見、あるいはご要望、先ほどアメリカのJOBS法がどうなっているかとか調べてほしいことなどがありましたら、この会議の外で事務局にお電話でもファクスでも電子メールでも結構ですので、ぜひお寄せいただきたいと思います。そういうこともうまく使って、ここで集まってご審議いただく場をできるだけ有益というか、実りあるものにさせていただきたいと思っております。

次回ですが、関係者をお呼びしてリスクマネーの供給のあり方等について、さらにヒアリングを行うということで予定させていただきたいと思います。

最後に、事務局からご連絡がありましたらお願いします。

○栗田企業開示課長

次回の日程でございますけれども、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

○神田座長

どうもありがとうございました。本日は時間を延長して申しわけございませんでした。

以上をもちまして終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課・企業開示課(内線2638、3665、3802)

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