金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第6回) 議事録

  • 1.日時:

    平成25年10月15日(火曜日)14時30分~16時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○神田座長

それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。

ただいまから、新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの第6回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

早速でございますが、議事に移らせていただきます。お手元の議事次第にございますように、本日は、新規上場に伴う負担の軽減などの項目についてご議論いただくという予定となっておりますけれども、これらの議論に入ります前に、1点補足のヒアリングをお願いしたいと思います。このワーキング・グループの第1回目、第2回目などの議論の際に、ベンチャー企業にはCFOなどの人材が不足しているという旨のご意見をいただいておりました。

そこでこれに関係するわけですけれども、本日は参考人といたしまして、新日本有限責任監査法人常務理事の大下内徹様にご出席いただいております。大変お忙しいところありがとうございます。そこで、新日本有限責任監査法人では所属の公認会計士をベンチャー企業等にCFOとして派遣するなどの取り組みを行っておられるということですので、大下内先生からこうした取り組みについてお話を伺い、自由討議を行わせていただきたいと思います。

その後で2つのテーマ、具体的には、新規上場に伴う負担の軽減、それからもう一つは、上場企業の資金調達の円滑化に関連することでありますが、訂正発行登録書の提出義務の見直し、この2つにつきまして、それぞれ事務局からの説明とご議論をお願いしたいと思います。そういう順序で進めさせていただきます。

それでは早速ですが、大下内先生、まずお話をよろしくお願いいたします。

○大下内常務理事

皆さん、初めまして。新日本監査法人の大下内と申します。

まず初めに、本日このような弊法人に取り組みにつきましていろいろご説明させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。私どもは、今日の資料の下のほうに書いてありますが、グローバルベースでは、このタグラインのところですね、Building a better working worldという形で、また日本の監査法人としましては、「信頼され、社会に貢献する監査法人」、これを経営理念として、理事長の加藤のもと、これを達成すべくいろいろ施策を打ってまいっております。

その中で本日は、CFO派遣のところと、あとは私どもで行っていますEOYというアントレプレナーの表彰制度のところを中心に、状況をご説明させていただければと思います。あわせて最後になりますけれども、我々が今どのような形でいろいろ施策を打っているかの部分について、それを統合的に少しまとめてお話しさせていただければと思います。

まず、資料1-1をごらんいただければと思いますが、実はまた最後のほうにも出てきますが、私どもも監査法人としていろんな目的がある中で、総合研究所、シンクタンクをつくりまして、実は今日も日銀の方がいらっしゃるみたいですが、日銀から市川さんを招聘させていただきながら、いろいろなディスカッションをさせていただいています。

また、経産省OBの小川さんとも、今いろいろ議論させていただいているところですが、1ページおめくりいただきますと、これはもう今さらという感があるかもしれませんが、我が国にとって何が今必要なのかという部分、そのあたりを記載させていただいています。我々も監査法人という立場でいろんなベンチャー企業の育成――育成というとちょっと語弊があるかもしれませんが、いろいろお手伝いをさせていただく中で感じているところですが、やはり今、我が国、日本のさらなる経済発展のためには、成長していくためには、ベンチャー企業もしくはイノベーションの促進を通じて、新たな市場や産業、競争力のある企業を創出する、これが必要だろうと認識しております。

実は今日はお持ちしておりませんが、今年度のロシアでのG20のときにも、アーンスト・アンド・ヤングとしても、今年度、パワー・オブー・スリーとして、官、民間、あとはアントレプレナー、この3つがそれぞれ協力し合い、また利点、強みを生かすことが経済発展に資するのではないかというレポートを出させていただいております。そのような流れを考える中で、我々が日本国内でベンチャー企業をサポートできる部分、すなわち我々職業会計人として、どういう形で社会貢献できるのか。先ほど申し上げましたとおりに、信頼され、社会に貢献する監査法人と、この社会に貢献するという意味で、我々が職業会計人としてできる貢献とは何かというところを、いろいろ考えてまいりました。

今までは、いろんな財務報告のサポートをさせていただくという部分がメーンではあったのですが、もう時代の変遷とともに、我々に求められるミッションというものも変わっているという認識をしておりまして、いかにこの多様化した社会の中で、我々が経験しているものをいろいろ社会の中に還元できるかということを考えてまいりました。

その中でいろいろ考えた部分が、1ページ目の下のところになりますけれども、いろいろと経営者を支えるパートナーとして、CFOの人材を輩出、また我々のほうから提供できるようなシステムといいますか、体制を構築しようというところに、一つの方法として行きついております。

この説明をしたものがこのペーパーになるんですが、2ページあたりはちょっとすいません、少し我々の宣伝みたいなところになっている部分はあるんですが、いろいろこれが監査法人、もしくはアーンスト・アンド・ヤングの他のグループも含めて、どういう形で対応できるかというところを記載してある部分ですが、会計アドバイザリー、税務アドバイザリー等、これはもうこれまでも実施しております。第三者割り当ての中でのバリエーション等も実施しているのですが、Page2の一番左、ここのところで、我々はCFOを輩出するということを新たにつけ加えさせていただいております。

それとあわせて、すいません、4ページのほうが大きくなっていて見やすいかもしれません。すいません、ちょっと飛んでしまいますが。4ページのところです。先ほどの図はどちらかというと我々の視点から図になっておりますが、この4ページは全体の流れの中で、我々がどういう支援チームをつくって人材等を派遣しているかというところで、先ほどの2ページの左上にあったところが右の矢印になります。CFOをベンチャー企業へ輩出させていただくと同時に、支援機関、ベンチャーキャピタルも含め、常駐者を我々から人材を派遣したり、ちょっとここの図にはありませんが、ビジネスマッチング等も考えたときのサポートも、我々のほうでいろいろできないかと考えております。

ベンチャー企業を見ておりますとやはり、技術力があったり、営業力があったり、CEOであったり、そういうテクニカルの部分は確かに強い方がたくさんいらっしゃるのですが、これは私の私見になりますけれども、やはり30名くらい、いわゆる小隊をつくらなきゃいけない、組織化しなきゃいけなくなってきたときに一番不足しているのが、こういうCFOだろうというところで、ましてや私どもは職業的に、いろんな業種に携わらせていただけることができ、また、守秘義務のもとにいろんな会社さんの情報に接することができて、こういう経験をこういう若い、高い志を持って起業している経営者の皆さんのサポートができないかというところで、こういうスキームを考えさせていただいております。

それで、すいません、5ページ、6ページは内容が同じですのでちょっと省かせていただきますが、7ページになります。私どもが支援サービスをさせていただく中での優位性というものは、今話させていただきました、我々が法で許された範囲でのいろんな経験ができるというところ、プラスやはり下の“インキュベーション担当による支援”ということで書かせていただいていますが、それぞれ正直我々は大企業からベンチャーまで、いろいろ対応させていただいているのですが、今回は特にこのインキュベーションにフォーカスをしたチームをつくりまして、当然そういう人材も一定の監査の経験をしてからこういうことを担当しておりますので、そこに特化した人材を派遣する、もしくは担当させるというところで、それぞれの大企業にはないベンチャー企業の方の悩み等に接してくる、また解決してきた人材を、このチームの中に入れて提供させていただくというところを、我々が強く思って実施しているところであります。

一方、そのCFOといいますと、会計監査、いわゆる我々が日ごろ通常実施している業務だけでは実施できない部分が、これは正直あります。ですので、派遣する場合には、ここにちょっと書いてはいないのですが、このメンバーに対して研修を実施しております。我々が自分自身で自分自身を分析させていただきまして、CFOとなるには何が足りないかという部分、このあたりをいろんな方を講師に招きながら、こういう施策に積極的に手を挙げる人材に研修を実施させていただきまして、そのCFOとしての機能を発揮できるように、内部でそういう施策をとっております。

また、2つ目のポチのところになりますが、あくまでこのCFOを派遣した場合であっても、やはりその派遣した個人ですと、個人の能力という部分も限界があります。ただ、一方で我々も6,000人という、グループですと6,000人を超える人材がいますので、これを組織力として発揮するためにバックアップ体制を考えております。

ですから、CFOを派遣して、それがこの派遣した段階では基本的に監査対象になっておらず、法のしがらみ等がまだない状況ですので、我々がその派遣した人材を組織としてバックアップすると、出した人材が100%の知識がないとしても、それは組織として対応することによって企業の発展に資するように、またその個人の実力もついていくようにというバックアップ体制を、組織としてとっております。

それで、すいません、時間も限られておりますので、飛んで10ページで、どういうプロセスで輩出しているかという部分をご説明させていただきます。今、具体的にどういうプロセスで輩出させていただいているかと申しますと、まずこの前段として、CFOのこういう形で協力したいという意思のあるメンバーを募っております。そして、先ほどのような研修を行っていますが、今で20名弱の希望者が現実に出て、研修等も行っております。もう既に数名の派遣先も決まっております。

そういう形でチームをつくった後に、各CEOの方から事業計画の説明を受けております。その中で、後ほどEOYのところでもご説明させていただきますが、革新性、創造性、優位性、成長もしくは成長可能性と言ったほうがいいかもしれません。あとは国際性。我々はこういう観点でベンチャー企業をいろいろ評価させていただいておりますが、このような観点を見て、特にこの近年はイノベーションというところに注目をしながら、当然のごとく反社のチェックもしながら、我々としてこういう支援を行うべきビジネスか、企業かというものを、我々なりの物差しで問題ないような形で判断させていただいております。

その中で、先ほど申し上げましたメンバーの中から候補者を複数名選出いたしまして、CEOの方々に面談をさせていただいております。その中でCEOの方等、また我々の担当責任者等と協議をさせていただきまして、ここでうまく話がまとまりますと派遣をするというような手続になっております。やはり合う、合わない、向き、不向きというものもあると思っておりますので、この辺は一方的なものではなく、協議の中で進めていっているというものが現状になります。

これは、企画から考えますとスタートとしてちょうど1年になります。企画をして、人材を集め、チームをつくり、今、現実的にこういう人材を派遣し始めたというタイミングになっております。

続きまして、資料1-2ですが、これはご存じの方もいらっしゃるとは思うのですが、私どもは、アーンスト・アンド・ヤングとして起業家の表彰制度を実施させていただいております。現在ですと我々の中で、国とするとメンバーシップは140カ国くらいあり、そのうち約60カ国、145の都市で開催しているのですが、いわゆる起業家の精神、それにのっとった方で、2ページのところに書いてあります、先ほど申し上げました5つの観点になるんですが、創造性・革新性、優位性・成長性、国際性、これを中心として、日本IBMの名誉相談役の椎名さんを委員長とさせていただきまして、最終的に表彰をしております。

我々、アーンスト・アンド・ヤング、新日本監査法人としては、あくまでこういうアントレプレナーの方のモチベーションアップという部分を強く思っておりますので、私どもはあくまで事務局に徹し、審査員の方々にこういう観点で評価をしていただいて表彰します。その中の日本代表1名は世界大会へ出ていただき、その世界大会の中でまた、アーンスト・アンド・ヤングのワールドワイドでのチャンピオンと決めるという、かなり大きな制度になっております。

それで、今我々が考えておりますのは3ページになりますが、従前はやはりベンチャー企業が中心ではありました。ただ、今、やはりこのような経済環境のもと、アントレプレナーイコール単純なベンチャー企業というわけではなく、第2の創業であったり、私どももレポートを出させていただく予定になっていますが、100年企業であったり、日本の中にいろんな強みがあるところもありますので、これを3つのカテゴリーに分けて表彰させていただいております。

いわゆる上場企業、National Entrepreneur、あとはAccelerating部門、Challenging Sprit、ほんとうのスタートして間もない会社を、それぞれのランクでそれぞれ表彰しながら、それぞれのレベルでのモチベーションを、我々でエンカレッジできるような、勇気づけできるような形の表彰制度にさせていただいております。おかげさまでグローバルではもう30年を超えます。それと、日本としても13年目になるのですが、認知度も高くなりまして、非常に多くの企業の方に立候補していただいております。

それで、今年度は昨年以上に表彰する対象を増やさなければならないような形になるのと同時に、また4ページのところへ今年度の年間スケジュールを書かせていただいておりますが、東名大以外の各地方からの立候補も、今、数多く出てまいりまして、確かに、今、上場企業の半分が地方から出ているという状況を考えても、この地方の重要性、また地方の経済の活性化というものも、我々は一応考えておりまして、各地区からこのような形でセミファイナリストを選ばせていただいて、最終的には今11月29日を予定しておりますが、日本の最終の評価、大会を決めさせていただきまして、そこで1名、また世界大会へ出るアントレプレナーの方を決定させていただくという手続を、今踏んでいるところであります。

これら、こういう形でいろいろやらせていただいていますが、資料のぺらの1枚、1-3というものがございます。これがいろいろ我々が考えているそのサポートの体制を、簡単に図示したものであります。先ほど申し上げましたCEOの派遣は、一番上のピンクのところに書いてあります。

この部分につきましては、その人材を出すために、実はその1つ前で、ビジネス感覚を得るということを目的としまして、日本CFO協会のプログラムにより、これは我々で言うシニアレベルという、現場をベースに3年から5年、8年まで行くかなというような若手の人材を、企業の現場へ出させていただいて、実務経験を積ませていただいております。これは70名くらい、本日現在出ていることになっております。

そのほかに、我々は監査をする中でのリスクアプローチの中で重要な部分、ビジネスの理解、ビジネスリスクの対応、この部分をさらに強化すべくというところで、法人内ではこの丸の中に書いてありますが、業種別検討会というものを行っております。この中から我々のノウハウを各現場に出る人材、もしくはCFOになる人材にもこういう提供ができています。

逆に言いますと、これが先ほど申し上げましたとおり赤のところの人材が出ても、それをバックアップする体制はきちんとできており、それとこの夏に創立しましたEY総合研究所というシンクタンクもつくり、さらにこのビジネス感覚、経済感覚というものをサポートできるような体制をとらせていただいています。

そのほかに、実はここで紹介し切れてはいないのですが、今日の委員の方でいろいろご協力いただいている方も多いんですが、同じような目的として、CEOのネットワーク、CFOのネットワーク、監査役のネットワーク、それぞれをベンチャー企業を対象としまして、ネットワークという形で我々のノウハウを提供する、もしくは既に上場されている経営者の方のセミナーを設けましたりという形の、そういう機会を設ける施策をとっております。

また、1つ我々も力を入れているところとして、女性経営者のネットワークもつくっております。それで、今年ちょうど1年になるのですが、ウィニング・ウィメン・ネットワークという形で、まず日本のネットワークをつくり、これは実はEYとしてはもうグローバルなネットワークもできておりますので、その中にもこういう人材を派遣し、いろいろ面談したり、もしくはビジネスのマッチングを図ったりというところを今図っているところでございます。

あとはMITが主催して、我々が後援させていただいておりますが、それこそ企業様同士のビジネスマッチング、また、今ちょうどプロセスを踏んでいるところですが、やはりこれから日本経済が元気になっていくためには雇用というものが、特に先ほど申し上げました地方の首長さんと会うと、ほんとうにこの雇用というものは切実な問題だという形で話を受けております。

いろんなところで売上等で表彰されるケースは多いんですが、ベンチャー企業を対象とした雇用に着目した表彰というのは、まだ日本では少ないのかなというところがありますので、今雇用創出ランキングという形で、来月くらいになると思いますが、応募していただいた企業様をランキングをつけて公表し、客観性を持った数値で一定の会社様にはそれを表彰させていただく、そういう形で今、いろいろなサポートを考えている、また実際に実行しているところです。

おかげさまでこのような形のもので、いろいろご評価いただいて、いろんなところから声がかかって、今いろんな施策を実施させていただいているのですが、やはり我々も単純な営利企業ではございませんので、これらいろんな施策を、さらにいろんなニーズがあると思いますので、我々が職業会計人として何ができるかというものを今後も継続して、我々ができること、それを発揮させていただくことで、日本のさらなる経済発展というところへ貢献できればと思い、今実施しているところですので、こういう場でちょっとふさわしくないかもしれませんが、何か我々に要望等あれば言っていただければ、ほんとうに前向きにいろいろと考えていきたいと思っておりますので、またご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いしたいと思います。

すいません、ちょっと長くなりました。

○神田座長

いいえ、どうもありがとうございました。

それではちょっとここで時間をとらせていただいて、若干自由討議をさせていただきたいと思います。今いただきましたお話についてのご質問、ご意見、それからリスクマネーの供給全般にかかわることでも結構かと思います。ご発言をいただければと思います。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。大変興味深いお話で、また監査法人は財務、会計の知識の豊富な人材がいらっしゃるので、こういうことをやっておられるというのはなるほどなと理解できたんですが、他方でちょっと気になりましたのが、確かにご発言の中でもございましたが、実際にCFOを派遣する先というのは、まだ監査の対象になっているような会社ではないということなので、いわゆる監査とこういった支援との利益相反の問題というのは、その場ではあまり意識されないのかなと思ったのですが、しかし立派なCFOが行かれて立派な仕事をされればされるほど、その後会社が立派に成長してきて、監査対象になるようなときに、言ってみれば大変立派な先輩が、しかも監査法人の組織を挙げての支援のもとでつくり上げた体制に対して、白紙で見て監査を厳しくやっていくということが、どうなんだろうか、ほんとうにできるんだろうかと、ちょっと気になったものですから、その辺についてのお考えなり、どういった対応をやっておられるかというのを教えていただければと思いまして。

○大下内常務理事

ただいまのご質問につきましては、今現在、先ほど申し上げましたとおり、まだ始めて1年、実際ちょうどスタートしたところですので、現状そういう事実はないのですが、我々が考えているところとしましては、最終的にもしその状況で監査に第三者性、独立性が問題になるのであれば、そこはやはり監査はしないという結論になるかと思います。

もしくはその前に、これは特に私の強い希望ではあるんですけれども、これはちょっと語弊があるかもしれないのですが、シンプルに監査だけをやる監査人になるために公認会計士になったのではないと思っている人材が非常に多いと思うんです。

やはり監査というものは、公認会計士になって当然にできる業務の一つではあるのですが、全てではないという形で今考えている若手も非常に多くなっておりますので、そういう人材がほんとうに会社のほうへ移籍して、そういう形に持っていけるような、強いて言えば米国まで、急にああいうシステムまで持っていけるかどうかはわかりませんが、そういう形で公認会計士という資格を持って経験を持った人材が、一般の事業会社の中で、といいながら、正直大企業はかなり優秀な経理財務の人材がいらっしゃるので、なかなかそこはいろんな動きの中で、正直日本はまだ、米国等と比べるとおくれているという感はあるのですが、一方で、ただこういうベンチャーであったり、若い会社であれば、まだまだ本来であれば多分ニーズはあるんだろうと考えておりまして、個人的な希望としては、できればそういう形でそういう会社をさらに大きくするような業務に携わってほしいと思っています。

ただ現実的にはやはり、戻ってくるというケースもあると思いますし、そのまま派遣という形で進むという形もあるかとは思いますが、それはその場その場でのルールに従って、独立性の違反にならないように、我々が一番守らなきゃいけないところですので、必ずしも監査が欲しくてやっているというよりは、やはり、経済発展のために我々に何ができるかという観点で業務をさせていただいておりますので、その場その場、そのときそのときのルールに従った形でこの施策を実行していきたいと、今現在私は思っているところです。

○大崎委員

ありがとうございます。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、福田先生。

○福田委員

大変有益なお話、ありがとうございました。非常に有益な試みだと思うんですけれども、契約の形態ということに関してちょっとお伺いします。日本でリスクマネーの供給する人材が不足しているというときに、一つの大きな議論としては、リスクを気にしないでどんどんやれる人材が不足しているということも一つあると思います。現在の契約の形態では、例えばEYグループなどが何かリスクを負う形の契約になっているのか、あるいは派遣されたCFOという方が何かリスクを負う形になっているのかということです。

あるいはこの報酬があらかじめ固定されていて、EYグループは何のリスクも負っていない形になっているのか、事業が仮に失敗した場合に、どういう形でリスクが分担されているのかということを、ちょっと教えていただけるとありがたいです。

○大下内常務理事

その点に関しましては、今現在の契約はおっしゃるとおりに固定で、その人件費相当額、監査法人から支払っている金額よりは安くなりますけれども、そこからいただくという形になっておりますので、スタート時点のところでは、おっしゃるとおりのリスクをあまりとっていないとご指摘されるとおりかとは思っております。

先ほど申し上げましたとおり、さらにここから転籍という形になった段階で、その人材はリスクをとるという形になると思っていまして、我々もこういう人材、若手に最初からなかなかそこまで、強制は少なくともできませんので、今数名決まって、出る段階にはなっているんですけれども、そこの段階では正直まだ、リスクをとるというよりは、法人対法人の契約でスタートするという形になっております。さらなる発展ができるような形に、責任者としては持っていきたいなと思っています。ただそれにはいろいろ、越えなければならない壁はあると思っていますので、一つ一つクリアしていきたいなと考えているところです。

○福田委員

どうもありがとうございました。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、永沢委員。

○永沢委員

せっかくの機会ですので、今日はとても興味深いお話をいただきましたので、いくつかお伺いさせていただきたいと思いますが、このアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーですが、13年の実績があるということですが、日本ではどのようなところが選ばれているのかということをまずお聞かせいただきたいと思っております。

それからもう一点、やはり起業の段階では、本業に忙しいときと思いますが、これに応募して賞を得ることによって、例えば出資が得られるとか、何らかの信用が得られるとか。何かメリットがあるのかどうか。以上の2点についてお伺いしたいと思います。

○大下内常務理事

ありがとうございます。このEOYは、2001年からのそれぞれの年度のチャンピオンの方が、今手元の資料にございます、その中で、昨年、これは会社ではなくて医療法人の徳真会という歯医者さんの会社が初めてなったのですが、それ以前は、一昨年はフェローテックという、これはかなりアメリカで大きくやられている会社、山村さんです。それでそのもう一年前は、眼鏡のジェイアイエヌ、JINS眼鏡のPCとかやっている、あの眼鏡をご存じかとは思うんですが、あのJINSの田中さん。その1年前が東洋システムの庄司さん。その1年前がウェザーニューズの石橋さん等。後ほどできればリストにしてお渡ししたいとは思います。

そのほか、最終的な日本代表にならなくても、それぞれのランクといいますか、カテゴリーのところで決めておりまして、昨年まで二十数名、昨年で言うと24名がセミファイナリストという形で日本の最終の決戦の場に挑んでいるという形になっております。

その中で、各カテゴリーのもとで大賞等特別賞も含め、いろいろ各賞を我々のほうから提供させていただいて、最終的にそれぞれのカテゴリー大小抜きにして、先ほどの5つの観点で大賞というか、日本代表という形で選出させていただいておりますが、私どもがいろいろフォローさせていただいた中で、実はこれはもうここ数年、BSのほうになりますが、テレビ放映もされておりまして、特集が組まれたり、その辺の知名度が上がるというのは受賞者の方にはあるのではないかなと思っております。

一番私どもがよく聞く声、我々に逆にお礼をしていただくのは、どちらかというと資金調達云々というよりは、いろんな人と出会える機会が増えたと、特に日本代表の方ですと、当然世界大会に行きますので、行ってみると、私もちょっと野球をやっていたからなんですが、甲子園みたいなものなんです。各県で代表になって来るような形、各国の代表が集まってくるという形ですので、一応そこで世界一を決めるんですけれども、そこはもうほんとうにそういうアントレプレナーの志を持った人材が集まって、すぐビジネスマッチングが始まったり、どういう考えでビジネスをしているのかというところのコミュニケーションがとれたり、非常に今まで自分がやってきたことのさらなる上のレベルのビジネスの展開ができる可能性をいただけたということを、よくお聞きします。

ですので、これはたくさんの方を表彰させていただいておりますが、それが表彰されることによって、即資金調達云々ということはないのかもしれないのですが、ただ少なくとも、これは我々が審査に一切かかわらず、ほんとうに事務局に徹して、椎名委員長をはじめとするビジネスマンの方が評価をしているということですので、特にこのごろやっと知名度も上がってきて、そういうやり方でやっているという部分の認識がされたことで、ある程度のビジネス界の中での評価も得られているんだろうとは想像はしていますが、1件1件はさすがに聞いておりませんので、ただいろんな機会をいただけたというお話を伺うことがありますので、それなりに忙しい中でも、自分が評価される、やってきたことを評価してもらえたというところの部分に関しては、あまりネガティブな、忙しい中でという形のコメントはいただいていないというのが、正直全て話を聞いているわけではないのですが、私どもが聞いている限りでは、そういうコメントをいただくケースが非常に多い状況になっております。

○神田座長

どうもありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。ほかにいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。それでは先に進ませていただきたいと思います。

どうも大下内様、ありがとうございました。

それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。次は、新規上場に伴う負担の軽減がテーマということになります。まず、事務局からのご説明をお願いします。

○油布企業開示課長

企業開示課長の油布でございます。よろしくお願いいたします。

お手元の資料2-1という横の資料をご説明させていただきます。この資料2-1、これは新規上場に伴う負担の軽減ということでございまして、新規上場企業を対象とした施策ということでございます。

表紙をおめくりいただきまして1ページ目、これは確認的にということでございますけれども、新規上場に伴う開示の義務がどうなっているかということです。新規上場企業は、上場時に公募または売出しということで、有価証券届出書を出した上で資金調達をするわけでございます。そして上場後に最初の事業年度末が来まして、ここで1年間の財務諸表等を含みます有価証券報告書、それから内部統制報告書、これを提出する。これが1年ごとにやってくるということでございまして、ここに書いてございます有価証券届出書、有価証券報告書、内部統制報告書、これらはいずれも公認会計士の監査が必要というものでございます。

2ページをおめくりください。この資料2-1で大きく2つについてご説明いたしますが、まず1つ目が、新規上場企業の上場時の負担軽減のうち、有価証券届出書にかかわるものでございます。資料の2ページ目から6ページ目までがその関連の資料でございます。

まず問題意識といたしまして、最初の丸のところです。新規上場しようとする企業は、上場時に行う募集・売出しのために必要となる有価証券届出書において、※を打っておりますが、過去5年間分の財務諸表の記載が求められております。※のところにありますように、この過去5年間分の財務諸表のうち、直近の2年間分は公認会計士の監査が要るということでございます。これは昭和46年の制度で導入されて、その後維持されてきているものでございます。

2つ目の丸ですけれども、新規上場のコストを低減させるという観点から、有価証券届出書で記載が求められている財務諸表の年数を限定することができないかということです。

3ページをおめくりください。これはファクトのご説明でございますが、そもそも有価証券届出書はということでご説明させていただいております。

大きく2つのパートからなっておりますが、まず1つ目の黒いポチですけれども、有価証券届出書の記載内容ということで、第一部「証券情報」、第二部「企業情報」とありまして、この企業情報の中に右のほう、※を打っておりますが、経理の状況、これを記載することになっております。そこで、この経理の状況の中で、過去2事業年度の連結、それから単体の財務諸表をつけると。これについては公認会計士の監査証明が要るということでございます。そのほか第三部に「特別情報」というのがございまして、この中で過去5事業年度の単体財務諸表のうち、第二部に掲げたもの以外のものということで、古いほうから3年分、単体財務諸表をつけることになっております。これについては公認会計士の監査は不要でございます。

2つ目の黒いポチのところ、これは後でもう一度出てまいりますが、この有価証券届出書に添付書類ということで、定款その他を添付する仕組みになっております。

4ページをごらんいただきたいと思います。具体的な検討ということでございますが、1つ目、丸のところです。新規上場のときに提出されます有価証券届出書に記載する財務諸表については、現時点で以下の状況が見られるということで、マル1からマル5まで掲げてございます。

まず、マル1でございますが、そもそも新規上場でない、通常の上場企業が募集または売出しで資金調達をやる場合には、有価証券届出書を提出するということですが、この場合には、実は組込方式、あるいは参照方式と言われておりますが、直近の有価証券報告書を活用する、そのまま組み込んだり、あるいはそれを参照してくださいと、そういうやり方をすることが認められております。その有価証券報告書には、過去2年間分の監査済み財務諸表の記載で足りるということになっております。

また、注に書いてございますように、当然ではございますが、設立後5年に満たない企業が上場する場合、過去5年分の財務諸表はございませんので、この場合もそうした状況で、有価証券届出書を出すことを認めております。

マル2でございますが、実際に投資者の方が手にすることが多いのは、むしろ目論見書と言われるものでございます。新規上場に伴う募集の際交付される目論見書には、実は過去2年分の財務諸表のみが記載されているということです。

そしてマル3でございますが、新規上場企業に投資する投資者の方、これは上場前の過去の業績ばかりではなく、むしろ将来性を重視して投資される場合も多いと考えられます。この点につきましては、平成15年以降、ご案内の方も多いかと思いますが、リスク情報、あるいはMD&Aと書いてありますManagement Discussion & Analysisということで、経営者自身が財政状態や経営成績を分析する、こういう定性的な情報の開示の充実が図られておりまして、将来情報についてはかなり広く提供されるようになってきているということでございます。

それからマル4として、これは6ページをごらんいただくとおわかりになりますが、過去5年分の記載を求めている国は、主要国には現状ないということ。

そしてマル5ですけれども、今般、アメリカのJOBS法で、これは新興成長企業に限定した措置ということでございますけれども、過去2年間分の財務諸表の記載で足りるという簡素化が図られまして、国際的な状況にも変化が生じてきているのではないかということでございます。

5ページをごらんいただきますと、以上を勘案しとございますが、有価証券届出書に記載する財務諸表については、過去2年間分の財務諸表の記載のみ、これは監査証明が必要ということでございますけれども、これを求めることでどうかということでございます。

下にバーで書いてございますが、もちろん新規上場企業が自主的に過去5年分を添付したいということを妨げる必要はないと思いますので、こうした場合には、先ほどご説明いたしましたが、有価証券届出書の中の添付資料という形で提出していただくことでどうかと考えております。

6ページが主要国との比較でございます。アメリカ、それからヨーロッパやシンガポールなどについて記載されてございますが、そもそも米国では、従来から新規上場企業は、バランスシートでは過去2事業年度、それからPLでは過去3事業年度分ということになっておりましたけれども、これが右側にありますようにJOBS法で、過去2事業年度分の監査済みで足りることになったということでございます。EUその他を見ていただきましても、5年分を求めている例はないということでございます。

7ページをごらんいただきたいと思います。ここからはもう一つの項目のほうでございますけれども、新規上場後の負担の軽減といたしまして、内部統制報告書関連でございます。

問題意識といたしまして、1つ目の丸です。上場企業は、各事業年度ごとに内部統制報告書の提出が求められるということでございまして、これには公認会計士による監査を受けることが必要となっております。

2つ目の丸ですが、これは新規上場企業といえども例外ではございませんで、やはり各事業年度ごとに公認会計士の監査を受けた内部統制報告書の提出が必要となっております。

3つ目の丸でございますが、新規上場のコストを低減させるという観点から、内部統制報告書の提出に係る負担を一定期間軽減することができないかということです。

8ページをごらんいただきたいと思います。これもファクトの確認でございまして、内部統制報告書について記載させていただいております。

1つ目の丸でございますが、内部統制報告書は、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制について、経営者が評価し、その結果を記載した報告書ということです。注1にございますように、平成20年4月1日以降の事業年度から導入されております。

2つ目の丸ですが、具体的にはということで、マル1マル2マル3と掲げてございますが、大きく分けて2段階のステップがございます。

まず1つ目、内部統制を整備・運用するという責任自体は、経営者が免れるものではございませんけれども、その経営者が、財務報告に係る内部統制について、年1回の期末の時点で全社レベル、あるいは業務プロセスレベルで、その内部統制の有効性を評価するというのがマル1です。

続きましてマル2ですが、その有効性の評価の結果を記載した報告書、これが内部統制報告書でございますが、これを経営者が作成・開示するということです。

その後が大きな2つ目のステップでございまして、この経営者が作成・開示いたします内部統制報告書については、公認会計士が、内部統制の有効性の評価結果を適正に表示しているかどうかについて監査を行う、こういう形になってございます。

9ページをごらんいただきたいと思います。具体的な検討でございますが、この経営者による内部統制の有効性の評価と、それから経営者による内部統制報告書の作成・開示、これをどうするかということでございますが、これはマル1にまず掲げさせていただいております。上場会社の場合、企業自身が作成する財務報告に基づきまして、広く株式などが売買されるということを踏まえれば、上場会社である以上は、経営者がその評価を行い、その評価結果を報告するのは必要ではないかと考えられるということでございます。

マル2でございますが、米国で今般、新興成長企業に限りまして、緩和策がとられております。ただこれも、内部統制の監査を免除しているだけでございまして、内部統制の経営者による評価ですとか、経営者によります内部統制報告書の提出義務自体は維持されているということを踏まえますと、この点につきましては、経営者によるそもそも内部統制の有効性の評価を行うことや、内部統制報告書の作成・開示を行うことを免除するのは、必ずしも適正ではないのではないかということでございます。

では、ということでございまして10ページになりますが、一方で、この経営者が作成いたしました内部統制報告書に係ります公認会計士の監査につきまして、3点ほど記載させていただいております。

1点目、まず新規上場企業の場合は、そもそも上場の際に取引所から内部管理体制も含めまして厳格な、いわゆる上場審査を受けております。これにパスしたものが上場が認められるということになっているわけでございます。

マル2でございますが、内部統制の監査報酬、これはもちろん事業形態や規模によっても違うと思いますけれども、一般に中小クラスの上場企業の場合には、年間監査報酬額の2割程度を占めていると言われております。ただ、新規上場企業の場合は、やはり他の上場企業と比べまして、財務負担能力が相対的には低いと考えられるということであります。

マル3ですが、先ほど少し申し上げましたが、最も厳格な内部統制報告で知られておりますアメリカで、上場促進のため、新興成長企業を対象にして、内部統制監査を免除する措置が講じられたということでございまして、以上を勘案いたしますと、新規上場の後、一定期間に限り、内部統制報告書に係ります会計士監査を免除することが考えられるのではないか。

注に書いてございますが、この監査を免除いたしましても、当然上場企業ですので、財務諸表の監査は受け続けることになります。その際には、財務諸表監査の前提条件の確認ということで、公認会計士から内部統制の整備・運用状況についても確認は受けるという形になります。

最後にこのバーのところに書いております、一番下ですけれども、もちろん新規上場企業が自主的に内部統制報告書の監査も受けたいというのは妨げる必要はないだろうということでございます。

11ページをごらんいただきますと、この内部統制報告書の監査を一定期間、仮に免除するといたしましても、その一定期間をどの程度とすることが適当かということでございます。

まず、先に11ページの一番下の注をご紹介いたしますが、実はアメリカで今般とられましたJOBS法では、新規上場後5年間の免除とされております。ただ、その間に免除対象企業が成長いたしまして、免除基準、これは売上高10億ドル未満などといった基準がございますが、これを超えた場合には監査義務が復活するという形でございます。

我が国については何年が適当かということで、ちょっと11ページのバーのところ、真ん中をごらんいただきますと、新規上場を行った企業につきまして、内部統制環境とかかわりが深い売上高、従業員数、役員数を確認いたしました。これは平均値でとりますと大きなところに引きずられますので、中央値ベースでとってみたものですけれども、上場後3年の間いずれも、上場時から比べて変化率が5割を下回っております。つまりこの間は、多くの新規上場企業で、企業状態、内部統制環境にそれほど大きな変化は生じないというデータが出てございます。このことから、3年間の3回免除としてはどうかということを書かせていただいております。

12ページが、今申し上げましたデータでございまして、上場直前期、上場前を100とした場合に、それが1年目、2年目、3年目にどう推移していっているかということで、3年目までの間はいずれも150%の中におさまっております。

13ページをごらんいただきたいと思います。ただもちろん新規上場企業であれば、どんな会社でもということかどうかということでございまして、やはり新規上場企業とはいえ、その規模に照らして、市場への影響エトセトラで、影響が大きいと考えられる企業については、内部統制を非常に厳格に見る必要性が高いと考えられることから、そういった大きな企業はこの免除措置の対象外とすることが適当ではないか。

その際の具体的な基準でございますが、下半分に書かせていただいております。公認会計士法に大会社等という概念がございます。これは、こういう大規模な会社、大会社等につきましては、監査人の独立性などを強化して、監査をしっかりやっていただく必要があるという観点から、有価証券報告書を出していない企業であっても、有報提出会社と同様の厳しい手順、規律を求めている、そういう基準でございます。

具体的には、こういう大会社等の監査を行う場合には、非監査業務と監査業務を同時に受託するということができなくなったり、あるいは主任の会計士さんに強制的にローテーションがかかる。あるいは監査するときにそもそも1人の公認会計士ではなくて、複数で監査をするということが求められる、そういう基準でございます。

この公認会計士法の大会社等の基準は、資本金100億円以上、あるいは負債総額1,000億円以上ということになります。仮にこの基準をそのまま活用することになるとどうなるかということでございますが、私どもで、これは記載してございませんが、平成22年から東証に新規上場した企業について実際に当てはめを行ってみました。東証1部、2部、マザーズに新規上場した企業はこの間に77ございましたけれども、このうち7社が免除基準に触れるということで、監査の免除が該当しないということになります。この7社の中にはご案内のように、JALですとか、大塚ホールディングスですとか、サントリーですとかそういう、皆さん通常非常に名前をよく知られた大きな企業が含まれているということです。

14ページになります。これはややテクニカルな点になりますが、今、資本金で100億円、負債総額で1,000億円という基準を申し上げましたけれども、一定期間の免除期間のうちにこの基準を超えてしまったらどうするかということでございます。これについては、基準を超えたので公認会計士の監査義務を復活させるということも考えられるかとは思いますが、マル1マル2で2つ書かせていただいております。

まず1点目、もしそういう制度にしたといたしますと、基準の到達が視野に入った新規上場企業が、監査の負担を避けるという意味で、資本金や負債を抑制するおそれがあるのではないか。これは括弧の中に書かせていただいておりますが、このワーキングでは、新規・成長企業へのリスクマネー供給、その施策をご議論いただいているということでございますが、むしろ、こうした企業の増資などを抑制するインセンティブになってしまわないかという懸念があるということでございます。

それからマル2は、一定期間の軽減措置でございますので、いずれにせよ、もし3年間ということにいたしますと、4年目からは内部統制報告書に係る監査は通常どおりかかるということでございます。

これを踏まえますと、あえて免除期間内に基準を超えたとしても、それを補正する措置を講じる必要性は乏しいのではないかということを書かせていただいております。

あとは、資料のご紹介だけでご説明は割愛させていただきますが、日本公認会計士協会から参考資料という縦の資料でございます。今申し上げました2点目、内部統制報告書の負担の軽減に関しての意見をいただいておりますので、席上配付させていただいております。ご説明は割愛させていただきます。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ただいまの事務局説明には、大きく分けて2つの事項が含まれていたかと思います。有価証券届出書に関することが6ページまで、7ページ目から内部統制報告書に関する事柄ということかと思います。皆様方には一括してご質問、ご意見をお出しいただければと思います。資料のどの点でも結構ですので、どなたからでもご自由にご発言をお願いいたします。いかがでしょうか。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。私は、今ご説明いただいたというか、ご提案いただいた内容で大変結構なんじゃないかと思います。多分ちょっと気になる点というのは、この参考資料でお配りいただいている、公認会計士協会さんから内部統制監査について免除するということに基本的には反対だという、この意見についてどう捉えるかということだと思うんですが、この会計士協会さんの意見の中にも、例えば事業規模が大きい会社をどうするんだということが指摘されていて、その点は今の事務局のご説明では、言ってみればもう、配慮されているわけですよね。

そういうことでもありますし、この点についてはもう前々からベンチャー企業の関係者の間で、費用負担が大変だという声が大きかった問題でもありますので、私は事務局提案のような内容を、ぜひ実行していただきたいなと思う次第です。

内部統制監査そのものについて、むしろ私が気になっていますのは、この本題とは関係ないといえば関係ないんですけれども、日本の内部統制監査においては、大変残念なことでありますが、事後的に虚偽記載等が実際に行われていたということが明るみに出て、内部統制は有効であったという内部統制報告書が訂正されるという事態が、今日に至るまで、そんなものすごく多い数ではありませんけれども、散見される、この点が非常に問題だと私は思っておりまして、形式的に監査を行うかどうかということよりも、ぜひ有効性評価について、もっと厳しくきちっとやっていただきたいなと、こう思う次第であります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。静委員、それから平田委員の順で。

○静委員

ありがとうございます。私も大崎委員と基本的に同じ意見でございます。内部統制報告書の見直しでございますけれども、内部統制がIPOの一番の障害になっているという話を、少なからぬベンチャー企業の経営者の方、あるいは関係者の方から伺っております。したがいまして、今回、資料にありますように、その監査だけでも猶予ができるということであれば、それなりにIPOの促進効果が望めるのではないかと思いますし、規模が小さい会社限定、しかも上場後数年間限定ということであれば、問題も少ないのではないかと思います。

1点だけ気になるところを申し上げますと、10ページに軽減して良い理由がみっつ書いてありますが、その冒頭のところに「取引所から厳格な上場審査を受けていること」が掲げられています。確かに厳格に上場審査をしておりますが、上場審査では、どちらかというと、上場後に適時開示がしっかりできるかというところに主眼を置いております。もちろん財務諸表の信頼性という視点でも審査していますが、それはどちらかというと、資料の一番下の括弧の注にありますように、企業が財務諸表監査の前提条件の確認のために公認会計士から内部統制の確認を受けていることを前提にして、上場審査でもそれをレビューするような意味合いで一定の確認をするという性質のものでございます。したがいまして、これがあるから内部統制の監査が要らなくなるというのは、少し言い過ぎになるのではないかと思います。

全体の説明として、上場審査でももちろん見ておりますが、公認会計士による財務諸表監査も行われ、あるいは証券会社の引受審査も行われていて、その結果かなり多面的かつ客観的な目で内部管理体制を確認しているので、小さな規模の会社については多少内部統制の監査を猶予しても支障がないと理解するのが必要なのではないかと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

では、平田委員、それから岡野委員、安達委員の順で。平田委員、どうぞ。

○平田委員

まず有価証券届出書の件でございます。過去2年分の監査済みの監査報告書で足りることとすべきではないかというご提案について、私は賛成でございます。過去にジャスダックの上場審査を行っていた経験からは、手間暇とコストをかけて、直前2年分よりも前の3年分の財務情報を金商法ベースの財務諸表に作成し直し、有価証券届出書に掲載したとしても、それを誰が見るのかという問題は、これまでもあったのではないかと思います。

一方で、その他の情報を最近、4ページに記載がありますとおり、リスク情報やMD&A等、開示の充実が図られている点に関しては、そのとおりだと思いますけど、もう少しいろいろなことが書けるという意味では、例えば米国の自由書面目論見書のようなものの導入も検討してもよいのではないかと思っております。それは上場前のIPOだけではなくて、上場後のIPOで使用される目論見書としても、有用性があるのではないかと思いますので、ご検討いただけるとありがたいと思います。

一方で、内部統制報告書の件に関しましては、まさに大崎委員や静委員がおっしゃったとおりかと思っておりますので、ご提案に賛成でございます。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

岡野委員、安達委員の順で、岡野委員、どうぞ。

○岡野委員

私も事務局からの提案に賛成ということで、若干意見を述べさせていただきたいと思いますが、やはり若干上場を予定している企業等に個人的なつてもあって、いろいろヒアリングをしてみたんですけれども、財務諸表の提出の年数については、直接的に非常に助かるという話が多かったのと、あとは内部統制報告書の監査については、大体その監査報酬全体の2割ぐらいを予定していると、既に監査法人と話し合われているということなので、この情報どおりだと思います。

小さい企業の場合は、数百万円ぐらいでございますけれども、やはりコスト負担が軽減されるというのは、直接に業績に影響があるというよりも、会社の内部において、非常に上場というのはお金がかかるという議論がされやすいので、そうした部分に対して説得をするという意味でも、非常にこれはポジティブなお話になるのではないかという意見がございました。

ただ、もちろんそうしますと、かなり大きな規模の会社にとっては、あまり大きなインセンティブにはならないのかなということでございますし、またやはり組織が複雑化している場合には、どうしてもそうしたきちっとした監査体制は必要だということだと思いますので、やはり事務局から提案されていますように、大会社については監査を求めるということでよろしいのではないかと思います。

ただ、その観点として、複雑性ということも考慮し、もうちょっと実務のところと照らしてみて、ほんとうにどの程度のところで線を引くのがいいのかというところについては、少しご検討されたらよろしいかなと思っております。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは安達委員、どうぞ。

○安達委員

ありがとうございます。ベンチャーキャピタル業界を代表して、アメリカでこのJOBS法成立に向けてのタスクフォースが約2年前に発足し、それと連携して私自身がかなり力を入れて、日本版JOBS法の導入をこの1年お願いしてまいりました。先ほど来、各委員の方々の非常に力強いメッセージをいただき、非常にありがたいことと思っております。この内部統制報告書にかかわる負担を軽減する措置を一定期間、ぜひ今回導入して頂きたいと思っています。

過去どんなことがベンチャー企業家で起こったかといいますと、例えばJ-SOX導入直後、もともと日本全体の景気が後退局面ではあったと思いますが、日本で上場は非常に難しいということで、韓国、台湾等、アジアの取引所で上場しようという動きが活発化しました。この内部統制だけが全ての理由ではないと思いますが、非常に負担が重いことで日本市場が敬遠されたことは否定できません。

ただ、現地にはそれぞれまた別のいろいろとハードルといいますか、問題があって、必ずしも成功事例は多くありませんが、加えて静委員がいらっしゃいますが、東証さんの力強い営業力もあったかと私は思います。結局海外上場は余りなかったのですが、ただこの傾向は、どこかのタイミングで株式市況等の問題が起こったりした場合、やはり日本の市場ではなくアジア市場、場合によっては欧米市場に行くということは十分想定されますので、ぜひアメリカのJOBS法に倣って、これは取り入れてもらいたいというのが私のお願いです。

それから加えて、どうしてもまだベンチャー企業は人材面で非常に脆弱、リソースが非常に少ないものですから、こういう場合になりますとどうしても外部専門家に依存する傾向があり、よくあるパターンとしましては、コンサルタント契約を締結する、またはそのコンサルタントに推薦された人を採用するということで、かなり重複すると思われるコストがかかってしまいます。結果的にはかなりの事務負担もかかっています。その面からも若手起業家の上場に対するモチベーションがさらに高まると私は思いますので、ぜひこれは今回お願いしたいと思っております。

○神田座長

ありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

幾つか初歩的な質問をさせていただきます。

2ページ目ですけれども、かつて昭和46年の証取法の改正のときに、5年と定めて導入されたということですが、そのときはなぜ5年とされたのかというところがもし分かればと思いました。それが第1点でございます。

それから2点目といたしましては、先ほど平田委員から、誰も特にこの情報を見ていないというお話がありましたが、この情報がなくなって、例えばアナリストなどは困らないのでしょうか。これはこちら側に座っていらっしゃる委員の中からご回答いただける方がいらっしゃるかとは思いますが、投資家が最終的に、この前の3年分がなくなることによって困ることはないのかどうかという点を確認させていただきたいと思います。

それから前後して恐縮ですが、一般素人の目からしますと財務諸表は毎年つくられているのに、何がどう負担なのかというところがよく見えてきません。おそらく様式に従って作成するとか所定の計算式に入れて開示する等の追加作業があるのかもしれませんが、もう一段詳しく、何がどう負担なのかということをご説明いただけたらと思います。

それから第4点目ですが、6ページ目ですけれども、監査済みを2年としているんですから、合わせて2年とするのが都合がいいのだということはわかるんですが、国際的に見ると、3年が多いように思えます。規制の強化を望むものではございませんが、2年とするという提案は、監査証明を2年とするからそこに合わせるのという理解でいいのかという点が質問でございます。

それから最後、内部統制監査に関して、先ほど大崎委員からのお話はあったことに全く同意です。投資家は会社を通じて2割増しの報酬を監査法人に支払うようになっていることになるわけですが、内部統制監査の有効性というものを投資家はまだ十分に実感できておりません。投資家がなるほど内部統制監査は有効なものであると思えるように、しっかりやっていただきたいと思います。これは意見でございます。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは事務局からお願いします。

○油布企業開示課長

それでは、現時点のお答えできる範囲でお答えさせていただきます。

この昭和46年のときになぜ5年だったかというのは、実は私どものほうでも調べてみたんですけれども、ちょっと現時点まではっきりしたのはわかりませんでした。この46年の改正のときは、粉飾決算みたいなものがわりと社会的に問題になった事件があって、それも踏まえてちょっと一連のディスクロージャーの強化が図られた中で、この制度も5年ということで導入された状況だったようでございます。

それから2つ目のご質問で、アナリストさんが困らないのかという点は、むしろ私ども当局サイドよりも、市場参加者の方でどなたか補足内容をおっしゃっていただけたらと思いますけれども、私どもが若干アナリストさんのお話を伺った際には、上場前の状況の古いデータの、しかも単体の財務諸表は、一概には言えないんですけど、それほど重視されているとは思わないというご意見はお伺いしたことがございます。

それから、3点目のこの財務諸表を過去5年間分つけるということが、どうしてそんなに大変なのかというご指摘でございます。これも一概にはおそらく申し上げられないとは思いますけれども、新規創業間もない企業などが成長して、ようやく上場に至ったというようなケースを想定してみますと、確かに会社法の規定に基づきまして、単体の財務諸表はつくらなければいけないということになっております。

ただ、この際に公認会計士さんの監査も経ておりませんので、どの程度しっかりとしたものがつくられているのかというのは1つあるんだろうと思います。ただ、これを今回上場するからということで、有価証券届出書につけて開示することになるわけですけれども、その際には、公認会計士の監査こそ必要ありませんが、数字自体が間違っていると、例えば虚偽記載というような罰則もかかりますし、相当会社としても責任を持った数字を記載する義務が出てくるわけでございます。

そういう意味で、過去会社法の要請に基づいてつくっておりました単体の古い財務諸表も、1からというとやり過ぎかもしれませんが、かなり1からに近いところから数字の洗い直し、精査作業をされた上で、新たにこの財務諸表を添付すると。場合によってはおそらく数字が変わってくるということもあるんだろうと思います。精度ですとか正確性という意味で、それが変わってくるということがおそらくあるんだと思われますので、そういった作業がおそらく発行体、新規上場企業の側からすると、相当な負担にはなっているということではないかと考えております。

それから、主要国の例を見まして3年の例も多いというご指摘でございまして、6ページの資料でございます。おっしゃるとおり、過去3事業年度分にしているところ、香港ですとかEUですとか、多いわけでございます。この点につきましては、むしろご議論を賜ればと思っておりますが、おそらく選択肢としては2つあり得るんだろうと思っております。

1つは、私どもが提案させていただいたように、監査済み2年とするということでございます。そのかわりに、そもそも会計士の監査が必要ない、古いほうから3年分は記載を要しないというやり方でございます。

他方で、監査済み3年というのも選択肢としてもちろんあり得ると思っております。いろいろご意見賜ればと思いますが、その場合には、古いほうの財務諸表が2年間分要らなくなるわけですけれども、新たに現状2年分でよいところを3年分、公認会計士さんの監査で見てもらわなければいけないということで、これはこれで監査の実情に照らしますと、相当準備する発行体企業は大変だろうと思いますし、それからチェックをされる公認会計士さんも負担が増えるということにはなろうかと思います。

特に1年目、2年前、3年前と見ていきますと、古い財務諸表を監査するほど、一般的には大変になります。時間がたっておりますので。その辺との比較考量をしながら、どちらがいいんだろうかということではないかと思っていまして、事務局の提案では両方考えたときに、決め手はもちろんないんですけれども、単純に監査が要らない古いほうからの3年分を不要とすることでどうかという提案をさせていただいているところでございます。

○神田座長

大崎さん、どうぞ。

○大崎委員

すいません、私、勝手な都合でもうすぐ退席させていただかなきゃいけないので、ちょっと1点だけ今のお話に関連して申し上げていきたいんですが、もちろん各国で3事業年度分というのがあることは承知しておるわけですけれども、それを3にそろえるというのは絶対反対でございまして、今現在2年分の監査で済んでいるものを3年に増やすということになりますと、コストを減らすどころか大幅に増やすことになるわけでありまして、そのような改正をする意義は全くないと思います。

日本はいろんな意味で規制が厳しい、特に金融関係の規制が厳しいというのは、誤解も含めていろんなところから指摘を受けているわけです。それに対して現在安倍総理も、世界で日本を一番ビジネスのやりやすい国にするなんていうことをおっしゃっているわけで、このことぐらい各国よりは少し、比較表をつくると緩そうに見えるというのがあってもいいんじゃないかと私は思う次第です。

○神田座長

ありがとうございました。

どうぞ、前川委員。

○前川委員

少し意見を申し上げさせていただきたいと思います。新規上場の負担の軽減の中で、5年間を2年間に短縮するという考えのところ、大変ありがたいなと思います。実務を考えていくときに、市場がグローバル化しているため、発行体、海外企業も含めてでありますが、どこの市場を調達市場として選択しようかということが企業行動の重要な意思決定となりつつあります。

例えば、海外の企業が東京には上場しないんだけれども公募増資や売出しをする、POWLという調達方法がありますが、こういったものについて、日本は5年間用意しないといけないという話になると、いきなり腰が引けるというのが実態です。

また、サムライ債について、日本のクレジット市場や環境が非常によくなってきているので、日本で調達をしようという海外の企業が出てきたときに、これもまた5年間かという話になっています。ここについては海外の事例に即し、その期間を短縮していただくというのがよかろうと思います。

また、これから出てくることで、まだ実際多く出てきているわけではないんですが、デュアル・リステッド、つまり同時に、日米で上場していこうという企業などが出てくるといったことも想定されましょうから、そこについては米国のJOBS法に倣いながら、それに平仄を合わせていただくということがありがたいなと考えます。

それともう一点ですが、先ほど永沢委員からのご質問で、アナリストなどが困らないのかといったことでありますが、実態面で言うと、おそらく困ることはないのかなと思います。実際、将来の業績をきっちり評価していくことに主眼が置かれ、過去についてどうだといったことについては、もちろん会社法上の開示については非常に重要な参考情報として扱いますし、また、目論見書のハイライト情報で今までのように5年間というのを継続して載せるといったことになりましょうから、全く開示がなされなくなりブラインドになるといったことはないのではないかなと思います。

それともう一つ付言をしますと、内部統制について言うと、皆様が議論されてきたことについて全く同意いたします。問われていくのは実質ということでございまして、取引所の上場審査あるいは証券会社の引き受けの審査というプロセスの中で、そこがきちっと担保されているかどうか、評価されているかといったことが、より問われるんだろうなということで、業者としてきちっと襟を正し、そこについて踏み込んで、引き受けの審査をするといったことになるのかなと私は考えております。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかに。神作さん、どうぞ。

○神作委員

ありがとうございます。私もこの資料で提案されている内容は、ぜひ前向きに検討していただければと思いますけれども、資料について若干ご質問させていただきたいことがございます。

新規上場後の負担の軽減というところでございますが、11ページを開きますと、内部統制環境とかかわりが深い事項として、売上高、従業員数、役員数の3つが指標として取り上げられ検討がなされておりますけれども、2ページ先の13ページに行きますと、結局のところ資本金と負債の額の基準という別の基準で免除を認めない場合が、画されており、売上高、従業員数および役員数のいずれの基準も採用されてはおりません。これに対し、11ページの注を拝見しますと、アメリカでは売上高基準が採用されているようです。

このことについてどのように考えるのかということなのですけれども、資本市場という観点からすると、資本金や負債の基準にするというのは、要するにエクイティやデットの所持人に注目するということですから、たしかに規模を測る基準としては非常に合目的のようにも思います。他方で、市場全体への影響ですとか社会への影響ということを考えると、資本金や負債の基準だけではなく、先ほど検討された売上高、従業員数および役員数といったさらに多様な基準を採用することも考えられるかと思います。

また、参考資料で公認会計士協会が作成した文書の中では、事業規模のほかに組織の複雑性ということも指摘されていまして、組織の複雑性という観点からはおそらく、従業員数とか役員数というのは効いてくると思うのですが、免除を認めない場合の基準について、規模という点からは一定の配慮がなされていると思うのですけれども、組織の複雑性という観点からは、必ずしも十分な配慮がなされていないように思います。どのような考え方に基づいて、資料に記載された免除を認めない場合の基準をご提案されたのでしょうか。

逆に申しますと、組織の複雑性については、適切な基準をなかなか見つけるのが難しいというご判断があったのか、このあたりのご検討の経緯についてお教えいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

○神田座長

ありがとうございます。

事務局、お願いします。

○油布企業開示課長

ありがとうございます。先生から先に、終わりのほうでちょっと答えをおっしゃっていただいたようなところもあるんですけれども、実はこの複雑性ということで私どもいろいろ考え、事務局として勉強させていただいたときに、1つは連結財務諸表と単体財務諸表の関係といいますか、連単倍率のようなものもあり得るかなということで、いろいろと勉強はしてみたところでございます。

単体でその会社しかないというようなところは、当然連単倍率以前の問題ですけれども、新規上場企業でも、場合によっては子会社や持分法適用会社というのを抱えている例もあり得るというところで、子会社やそういう持分先が多いと、基本的には発行体グループの内部統制を見る際には、作業も複雑になりますし、評価もなかなか簡単にはいかないということで、一言で申し上げると子会社や持分先を持っているような企業は、この内部統制環境は、総じて言えばちょっともう一段高い視点から、本来であればチェックをすることが望ましいんだろうなということで、実は連単倍率などもいろいろと考えてみたところでございますが、なかなか法令上の基準として、実は連単のその倍率などを基準にしたものが見当たらないということが1つございまして、連単の倍率ということになりますと、通常一番使われるのは、連単の売上高の倍率が多いかと思いますが、一般的に売上高で比較しますと、本体でやっている事業と子会社でやっている事業とは全く種類が違ったりしますと、連単倍率というのはかなり業種によって大きくなったり小さくなったりする傾向があるのは、ご理解いただけると思います。

つまり親の本体のほうの売上げは、実はそんなに要らないというか、売上げは小さい、利益で勝負しているような事業をやっている、そういったところが、例えばリテールですとか薄利多売の商売をやっている子会社を抱えているとすると、その連単の倍率というのはやっぱり大きくなります。

その逆の場合は小さくなるということで、連単で仕組むということも検討いたしまして、もう少し私どもでも事務的に追加で検討してみたいと思いますが、そういったやや難しい事情があったものですから、今回の提案からは既存の基準をそのまま使うというのは、ある意味で簡単ではあるんですけれども、確かに一つのそれでワークしているという基準の先例になりますので、現に存在している、この公認会計士法の基準のほうでご提案をさせていただいたということでございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。山下委員、どうぞ。

○山下委員

先ほどから議論に出ておりますが、今回の事務局の提案については、特に違和感はないかなと思っております。

私ども業者としては、先ほど前川委員からの説明もありましたけれども、いわゆる引き受け責任といいますか、責任を負っているわけでございまして、過去2年の届出書あるいは内部統制報告書に基づいて、必ずデューディリジェンスのプロセスを行っております。そこで何らかの形で違和感がある、あるいは過去2年以上どうしてもさかのぼる必要があるということが出てくれば、それは我々の責任として、当然さかのぼるということもあり得るんだろうと思います。

通常IPOの引き受けに関しても同様のプロセスをとりますので、事務局の提案の形で、きちっとした責任を果たせるんではないかなと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

どうぞ、武井委員。

○武井委員

最後の「大会社等」の部分についてコメントします。私も事務局原案のままが良いと思います。二点ありまして、第一にこの定義は、上場する前に、該当するかしないかが会社側に事前に明確に見えていないと困る基準だと言えます。第二に、先ほど事務局からもご説明がございましたが、何か会社が上場前に順調に成長したらかえって該当してしまうような、一種の逆インセンティブを生む基準としないほうが良いと思います。そうじゃないと、今回の規制改革の効果がきちんと出ないと思います。連単倍率とか従業員数とかを基準に含めてしまうと、今の二点から懸念があります。大会社等の基準をあまり複雑にしても事前明確性に欠けますし、また何か原案と異なる代替的な基準を探しても、今の原案より何かよほど良い効果が生まれるわけでもないと思います。なので、事務局原案の資本金と負債額というシンプルな基準で行くのが良いのではないかと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

本日はもう一つテーマをご議論いただきたいので、もしよろしければそろそろ、もう一つのテーマに移らせていただきたいと思います。今のテーマにつきましては、非常に貴重なご指摘、あるいはもう少し詰めた検討をというご指摘も多数いただきましたけれども、まあ、大体資料にある線で、大きな方向感はお出しいただけたのではないかと思いますので、本日いただきましたご指摘、ご意見を踏まえて、さらに先に進ませていただきます。

それでは、本日のもう一つのテーマであります、今度はちょっと局面というか、想定されるのは、新規上場ではなくて上場企業全般にかかわることないのですけれども、上場企業の資金調達の円滑化ということに関するテーマであります。訂正発行登録書の提出義務の見直しであります。事務局からのご説明をお願いします。

○油布企業開示課長

それでは、資料2-2をご説明させていただきます。これは新規に限らず上場企業全般に対する施策でございます。

1ページ目をごらんください。問題意識というところでございます。発行登録制度、これは1つ目の丸のところに書いてございますが、将来、有価証券の募集・売出しを予定しているような企業が、その募集・売出しを行うたびに有価証券届出書を提出するのではなく、マル1予め募集・売出しに係る一定の事項を発行登録しておく――発行登録書を提出しておくということです――ことにより、マル2で、実際にそのマーケットの環境などを見ながら発行条件を決めた後に、簡易な発行登録追補書類というのを提出すれば、即時に有価証券の発行ができる制度でございます。我が国では、特に社債などについては大変広く使われております。

2つ目の丸でございますが、現行制度では、定期的に提出されることがおのずと明らかな継続開示書類、具体的には有価証券報告書と四半期報告書でございます。これについても、その提出の都度、この発行登録を訂正するという意味で、訂正発行登録書の提出が求められております。この点につきまして見直しを図り、発行登録制度による資金調達の円滑化を図れないかということでございます。

若干補足で申し上げますと、発行登録書は、実は個別の財務諸表、貸借対照表や損益計算書がついておりません。これにつきましては、既存の既に提出されている書類を参照してくださいということで、その参照先が記載されているわけでございます。具体的には、当企業の有価証券報告書、これは119期の有価証券報告書を例えば6月30日に提出しておりますとか、それから四半期報告につきましては、第120事業年度の第1四半期報告書、これを何月何日に提出しておりますとか、そういうことを書かせる、直近の四半期報告書と有価証券報告書を提出したものを書いていただくという形になっております。で、そこを参照していただく、こういうスタイルになっているわけでございますが、これが四半期報告ですともちろん四半期ごと、有価証券報告書は年1回新しくなりますので、新しいものが出るたびに、今の記載を訂正発行登録書ということで、訂正してもらっている状況でございます。

2ページをごらんいただきますと、検討というところでございます。そもそもそうした書類が提出される都度に訂正発行を求めておりますのは、発行登録書が参照しております企業情報、これが更新されましたよということを投資者に知らせるということで、古い情報に基づいて判断することを防止する趣旨でございます。

2つ目の丸ですが、ただ一方この点につきましては、現段階の状況に照らしましたときに、3つ書かせていただいております。

1つ目は、制度そのものが導入されました昭和63年当時と異なりまして、インターネットあるいはEDINETが整備されておりまして、投資者の方が一番新しい継続開示書類にアクセスするということは、格段に容易になっていると考えられます。

それから2つ目の丸ですが、では実際にその継続開示書類をどこでチェックするかということですが、開示書類は現在全て、インターネット上のEDINETという金融庁のシステムで提出することとなっております。訂正発行登録書を確認しようという方も、このEDINETを見ることになります。その際には同時に継続開示書類、これは直近のものが出ておりますので、それについても確認することができるということであります。

それからマル3でございますが、有価証券報告書と四半期報告書はいずれも1年ごと、あるいは四半期ごとに出るということが、はっきり法令上明確にされておりますので、あらかじめいつごろ出るんだなというのを予測することが可能であるということでございます。

この3点を踏まえると、有価証券報告書と四半期報告書について、新しいものが出されるたびに訂正発行登録を求めている、こういう必要はないのではないかということでございます。

ただ、3ページでございますが、「ただし」ということで、一定の簡易な補完措置をとることを考えてみてはどうかというご提案でございます。

1つ目の丸でございますが、その訂正発行登録を今般免除することに当たりましては、1点目は、投資者が、定期的に出るということが明らかになっております「継続開示書類」の具体的な提出時期を知ることができるように、そもそも最初の発行登録書にそれぞれの法定提出期限を記載しておいていただく。これは例えば有価証券報告書ですと、会計年度末が何月かということで具体的に何月に出てくるかが違いますので、それをあらかじめ書かせておくということでございます。

2つ目の丸、これは担保措置でございますが、万一そういう法定の提出期限、四半期であれば45日、有価証券報告書であれば3カ月でございますけれども、その期限内に出せなかった場合には、逆に訂正発行登録を出してもらう、そういう義務を課すということで、古いものを参照しないように補完措置が図れるのではないかと考えております。

2つ目の丸のところ、これは「なお」ということでございまして、こういうあらかじめ出ることが明らかな有価証券報告書、それから四半期報告書と異なりまして、臨時報告書が出る場合にも発行登録は訂正をする仕組みになっております。ただ、これにつきましては、定期的に出るものではありません。まさに臨時報告書でございまして、あらかじめ提出が予測できない。

それから2番目といたしまして、このページの上のほうでご説明したような補完措置が取り得ないということでございますので、臨時報告書については現状どおり、臨時報告書を出すたびに訂正発行登録をしていただくということで、それが適切なのではないかと考えている次第でございます。

ご説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは皆様方からご質問、ご意見等をお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

機動的な資金調達を確保するために、この制度の改善を提案していただきまして、事業会社といたしましては大変ありがたく思っております。訂正発行登録書の趣旨に鑑みますと、定期的に提出されていることが明らかな継続開示書類の提出に際して、常に訂正発行登録書の提出義務を課すというのは不合理であると常々考えておりまして、提案されているように、投資家法とのバランスをとった提出義務の見直しについて、賛成いたしたいと思っております。

その上で、実務上2点ほどご要望したいことがございます。機動的な資金調達を実現するという観点から、社債の発行残高管理も可能となるように、発行登録書の更新の際に、更新前の発行残高を引き継ぐことができないかということが1点目のご要望でございます。

それからもう一つは、発行登録は1年、あるいは2年ごとに更新が必要であるわけですけれども、有価証券報告書を継続的に、かつ適正に開示しているということを前提条件に、有効期間の延長をご検討いただければと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。特にご発言ございませんでしょうか。ご発言がないというのは賛成という意味でよろしいのでしょうか。

どうもありがとうございます。それでは、あまりご意見がないというのは基本的に賛成であると受けとめさせていただきたいと思います。

外が暗くなっておりまして、台風も近づいているようですので、本日は予定より少し時間が早いのですけれども、このあたりとさせていただきたいと思います。

なお、いつものことで恐縮ですけれども、後で追加のご意見、ご質問を思い浮かばれることがあると思いますので、ご要望等を含めまして、事務局宛てにぜひメールなどでお寄せいただきたいと思います。

次回ですけれども、次回も新規上場に限らず、上場企業全般の資金調達の円滑化ということに関連したテーマとして、1つ目が、特に周知性の高い上場企業についてという論点、2つ目が、募集・売出しに係る勧誘規制、この2つの論点について、皆様方にご議論をお願いしたいと思います。本日は大変貴重なご意見を多数お出しいただきましてありがとうございました。

最後に事務局から、事務連絡をお願いします。

○油布企業開示課長

それでは次回のこのワーキング・グループの日程でございます。後日事務局からもご案内させていただきますが、今月25日金曜日の10時からとさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課・企業開示課(内線2638、3665)

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