金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第3回)

日時:平成19年3月1日 14時30分~16時30分

場所:中央合同庁舎4号館9階 特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻になりましたので、ただいまより我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第3回会合を開催いたしたいと思います。

皆様には、ご多忙中のところご参集頂きまして誠にありがとうございます。

それでは、最初に、本日の議事についてご説明したいと思います。

本日は、前回に引き続きまして、日本の金融・資本市場の国際化に関して、有識者からのヒアリングを行う予定になっております。

本日のヒアリングですが、スタディグループの鈴木メンバー、矢野メンバー、それから、前回ご説明したとおり、東京証券取引所からヒアリングをさせていただきたいと思っております。東京証券取引所からは飛山メンバーに加えまして、土本上場部長にもお越しいただいております。どうかよろしくお願いいたします。

それで、初回のときにありましたが、これはスタディグループなので、事務局も大いに発言したいという意向があるということで、今日は最初に、事務局からのプレゼンテーションが少しございます。

それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○三井市場課長

お手元に資料が5部ございます。資料1、2、3、それから4-1、4-2でございます。資料1が事務局、それから2から4-1、2までが今日のプレゼンターの方の資料でございます。ご確認頂ければと存じます。

なお、毎回で恐縮ですが、ご発言やプレゼンテーションされる方は、マイクにお近づきの上ご発言頂ければ幸いでございます。

以上でございます。

○池尾座長

それでは、最初に事務局からのご説明を聞きたいと思います。それで、事務局からの説明に対しまして、ご質問とかご意見が当然あるかと思いますが、全体のヒアリングを終わった後でまとめて質疑を行いたいと思いますので、少し我慢をして頂きたいというふうに思います。

それでは、佐藤監督局長、お願いいたします。

○佐藤監督局長

監督局長の佐藤でございます。冒頭、10分程度お時間を頂きまして、これまで2回の当スタディグループで出ました金融行政のあり方に関する点について、補足的な説明をさせて頂きたいと思います。

2点ございまして、1点は、プリンシプル・ベースとルール・ベースの監督という議論。もう一つは金融行政、行政処分についての基準等でございます。

お手元の資料1というものをお開け頂ければと思います。表紙をおめくりいただきますと、プリンシプル・ベースとルール・ベースの監督という紙がございます。ご案内のとおり、プリンシプル・ベースというのは重要な幾つかの原則を示した上で、金融機関の自主的な取り組みを促すという手法でございますが、経営の自由度の確保といったメリットがあるのだろうと思います。

他方で、ルール・ベースにつきましては、かなり詳細なルールを設定いたしまして、個別事例に適用していくということで、金融界にとっての予見可能性が向上する、あるいは行政の恣意性を排除すると、こういった趣旨が込められているのかなというふうに思います。

そこで、現在の金融庁の考え方でございますけれども、金融庁発足以来、明確なルールに基づく透明・公正な金融行政を徹底するという努力を重ねてきておりまして、その意味で、ルール・ベースに重点を置いているというとらえ方が可能かと思います。

他方で、検査マニュアル、監督指針等で、あらかじめ基本的な考え方をお示しして、金融機関の自主的な取り組みを促す、またそれを尊重するという点では、プリンシプル・ベースの考え方も取り入れているということが言えるのではないかというふうに思います。

私どもといたしましては、ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督というのは、二者択一といった性格のものではなくて、相互補完的なものではないかというふうにとらえております。

例えば、そこにございますように、ルール・ベースの監督が有効な分野といたしましては、行政権限に基づいて不利益処分を行うといった場合、さらには不特定多数の市場参加者に共通のルールを適用する場合がございます。こういった場合にはやはりルール・ベースが必要ではないかということでございます。

また、プリンシプル・ベースの監督が有効な分野といたしましては、金融機関の経営管理、リスク管理、コンプライアンス遵守、こういった態勢整備を促す場合でございます。ここは金融機関自身の自主的な努力が重要でございますし、そこで自主性を尊重するということが1つの柱になっているわけでございまして、ここではプリンシプル・ベースというのは非常に重要であろうというふうに思います。

また、新しい金融商品や取引手法が出現するということで、あらかじめすべてのこういった事態を予見してルールで定め切るということは不可能でございますので、そういったケースについてはこのプリンシプルが存在しているということが大きな役割を果たすのではないかというふうに思っております。

そこで重要になりますのが、自主規制機関の役割ということでございまして、自主規制機関による自主規制ルールの策定であるとか、あるいは業界内におけるベストプラクティスの確立といったことが、このプリンシプル・ベースの監督の実効性を高める重要な役割を担うものというふうに思っております。

最近の典型的な事例といたしましては、次のページでございますが、昨年、「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」というのを金融庁の方で開催させて頂きまして、ここで論点整理をして頂きました。これは、昨年の6月でございます。そこにございますように、「証券会社が、法令の形式的な遵守にとどまらず、市場仲介者としての機能を積極的に果たすための自主的な取り組みを行うことが強く期待される」ということでございまして、「証券業協会の自主規制機能の活用や、証券会社の自己規律を高めるための基準の整備がそのための方策として考えられる」と、こういうレポートをお出し頂いたということでございます。

これを受けまして、証券業協会の方で、各種の具体的なテーマについての取り組みをして頂き、その成果が順次あらわれているということでございます。つい先般でございますけれども、証券会社による引受審査のあり方、あるいは話題になっておりますMSCBの引受けのあり方、こういった論点がまとめられたということでございます。

次のページは、今の市場仲介機能の懇談会についての基本的な枠組みでございますけれども、投資家にせよ発行体にせよ、このマーケットに参入してくるに当っては、ほとんどのケースで証券会社が仲介をする、あるいはアドバイスをする、こういう役割になっておりますので、証券会社の機能として、発行体の不正行為に対するチェック機能、投資家の不公正取引に対するチェック機能というものが重要でございますし、また最近は、証券会社自身が自己勘定で大規模な取引をやっておりますので、市場プレイヤーとしての証券会社も、利益相反の防止など、自己規律の維持が重要であります。

それから、次のページに移りまして、2つ目の論点でございます。金融上の行政処分についての考え方でございます。基本的な考え方は、透明・公正な金融行政、あるいはその中で利用者保護と市場の公正性の確保と、こういったことを行政目的として行っているということでございますが、そこの基本原則のところにございますように、内外無差別を大前提といたしまして、客観的な事実に基づいて公正・厳正な処分を行うという考え方でございます。

次のところに幾つか手続、手法についての点が書いてあります。まず、1つは事前にルールや解釈を明示するという枠組みでございます。先ほど申しました検査・監督上の着眼点や行政処分に関する事務の流れといったものを、監督指針や検査マニュアルといったもので定めて、広く周知をしているということ。

それから、さらには、いわゆるノーアクションレター制度におきまして、民間企業等が新規に事業や取引を具体的に始めようとする際に、当該具体的行為が不利益処分の対象になるか等について照会を受け、回答を行っております。さらには、ノーアクションレター制度を補完するものとして、一般的な法令解釈に係る書面照会手続というのも導入しておりまして、いわば個別事例から離れた一般的な、抽象的な法令解釈についても照会可能というふうにいたしております。

もう一つ大事なことは、デュープロセスの遵守ということでございまして、行政処分を行うに当りましては、行政手続法にのっとり、聴聞または弁明の機会の付与を行っておりますし、またその前段階といたしまして、金融機関からの求めがあれば意見交換を行うと、こういった手続を用意しているところでございます。

次に、透明性の確保ということでございますけれども、行政処分につきましては、財務の健全性に関する不利益処分など、公表によって対象金融機関等の経営改善に支障が生ずるおそれのあるもの、これを除きまして、他の金融機関における予測可能性を高め、同様の事案の発生を抑制する観点から、原則公表をいたしております。その際には、原因となった事実関係及び根拠となった法令・条文等を必ず明示するということをやっております。さらには、行政処分事例集といったものをまとめまして、半年ごとに公表しているということでございます。

その次、具体的な行政処分の基準でございますが、以下のような点を勘案して、その内容を決めているということでございます。

大きな1つ目のグループは、処分対象となった行為の重大性、悪質性ということでございます。まず、公益侵害の程度。例えば、経済合理性から考えて損失先送りの目的にしか使えないような金融商品を販売することによって、会計処理あるいは開示の適切性を損なうといったことをやっていた、公益を著しく侵害していたというようなことがないかということでございます。

2つ目は利用者被害の程度ということで、広範囲にわたって多数の利用者が被害を受けたのかどうか、個々の利用者が受けた被害がどの程度深刻かといったことでございます。

3つ目は、行為自体の悪質性ということで、例えば利用者から多数の苦情を受けているにもかかわらず、引き続き同様の商品を販売し続けるといった悪質なものであったかどうかといったことでございます。

次に、当該行為が行われた期間や反復性ということでございまして、その行為が長期間にわたって行われたのか、それとも短期間のものだったのか。反復継続して行われたのか、1回限りのものか。過去に同様の違反行為が行われたかどうかといったような点でございます。

その次に、故意性の有無でございますが、当該行為が違法・不適切であるということを認識しつつ故意に行われたのか、それとも過失によるものであるのか。

さらには、組織性の有無ということで、当該行為が現場の営業担当者個人で行われたものなのか、あるいは管理者もかかわっていたのか。さらには、経営陣の関与があったのかどうかといった点でございます。

次に、隠蔽の有無でございますけれども、問題を認識した後に隠蔽行為はなかったかどうか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったのかどうかといった点でございます。

最後に、反社会的勢力との関与の有無ということも掲げてございます。

2つ目のグループは、この行為の背景となった、経営管理態勢及び業務運営態勢、これらの適切性を見るということでございます。代表取締役や取締役会の法令等遵守に関する認識や取り組みは十分であったか。内部監査部門の体制は十分であったか、機能していたか。さらにはコンプライアンス部門、リスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。また、現場の業務担当者の法令遵守の意識はどうであったか、社内教育が行われていたのかどうかといった点でございます。

3つ目のグループは軽減事由ということでございまして、以上のほかに、行政による対応に先行して、金融機関自身が自主的に利用者保護のために所要の対応に取り組んでいるといった軽減事由があるかどうか、こういった点を勘案するわけでございます。

さらに、これ以外に考慮すべき要素がないかどうかということを吟味し、その上で改善に向けた取り組みを金融機関の自主性にゆだねることが適当かどうか、改善に相当の取り組みを要するために、一定期間業務改善に集中・専念していただく必要があるのかどうか。

こういった点を検討いたしまして、最終的な処分内容の決定を行っているということでございます。

庁内のこういった作業に当りましては、次にございますチェック体制も構築をいたしておりまして、公平性を欠くことがないよう、過去の処分事例等を勘案するといったことに加えまして、複数の課室において慎重にチェックを行う。また、法令等遵守調査室といった機能を使ってチェックを行うといったことを行っております。

それから、事後のフォローアップでございますけれども、行政処分の目的はあくまで金融機関の財務の健全性、業務の適切性の確保ということが主眼でございますので、業務改善計画の提出を求めまして、フォローアップをするということが非常に重要でございます。この改革努力の効果というものが将来にわたって持続的に発揮されるということが重要でございまして、そういう意味からフォローアップを行うと、こういった流れになっているということでございます。

私からは以上でございます。ありがとうございました。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、次にヒアリングを開始したいと思いますが、まず、鈴木メンバーからお願いいたしたいと思います。15分程度でお願いいたします。

○鈴木メンバー

トヨタ自動車の鈴木でございます。こういう機会を頂きまして大変ありがとうございます。

とは言うものの、実はいろいろと取りまとめをしているプロセスで、この会の趣旨と今日話させていただく内容は大分違うなということを感じてまいりました。今日は、私どもは製造業でありますので、製造業の国際化がどういう状況にあるのか、さらにはそういう中で、金融・資本市場とのかかわりを持つ部分、そういう点でどういうことに困っている、ないしはどういうことを期待している、その点を率直に話をさせて頂くということで説明にかえさせて頂きたいと。そういう意味では、日本の金融・資本市場の国際化とちょっと離れるかもしれませんませんが、お許しを頂きたいと思います。

お手元に簡単なレジュメと、さらにその後ろに参考資料を用意させて頂いています。まず、お手元の資料の2ページをごらんください。製造業にとりまして国際化とは、簡単に言えばグローバルに事業展開して、物の製造・販売を行っていくことだと考えています。トヨタの場合、そういう意味での国際化が進展しだしたのは1970年代後半からであります。

そのときも、いわゆる石油ショックの時代でありまして、アメリカで小型車ブームになりました。その対応をトヨタ、ないしは日本の自動車業界は、日本からの輸出を伸ばすという形で市場の需要に対応いたしました。ただ、それがすぐに、割と短期間で貿易摩擦、さらには自主規制というところまでつながりました。そういうものをトリガーに、実は現地生産の本格化が始まりました。さらに、1985年だと思いますが、プラザ合意以降の円高の急進展、これが国際化を急加速させています。また、最近では、日本の市場が伸び悩むというのがもう10年続いています。そういう中で、成長を海外に求めるということで海外ビジネスが急展開しています。

その状況を、資料の後ろから2枚目に参考資料でお付けしてあります。ちょっとご覧頂きたいと思います。参考資料マル1の左上のグラフをご覧ください。トヨタ自動車の20年間の販売の状況です。販売台数ですが、現状、トヨタの売っている車のうち8割は海外、2割は国内であります。20年前には、海外販売比率は約5割でした。生産台数につきましても、80年代の日米貿易摩擦やプラザ合意を経まして、90年代の円高という外部環境も後押ししました。そのときに、トヨタはもう内外に、需要のあるところで車をつくるということを宣言いたしました。ある意味これを基本ポリシーとして海外生産を拡大したという状況にあります。

トヨタがニューヨーク、ロンドンに株式を上場したのが1999年でした。関係は明確ではありませんが、これを機に海外生産、海外販売がさらに一段と拡大しています。

さらに最近の動きですが、ここの表にはありませんが、トヨタは従来、日本から輸出するか海外生産、そのところで売るものを用意する、これが軸でした。最近、1つはIMV(International Innovative Multi Purpose Vehicle)と呼んでいますが、多目的車やSUB(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、こうした車の一部を外・外で動かしています。タイ、インドネシアで生産してそれを世界中に出すと。今までそういう動きはしていませんでした。日本から出すか、需要のあるところで作る。それを今、外・外の動きが1つには盛んになってきました。要は、何をどこで作るのが一番効率的か、それを追求して外・外で車が動くという状況まで出てきました。その結果、海外生産の比率は20年前は約10%でした。現状は約5割まで海外生産が伸びてきています。

一方で、自動車事業ということで、どこも同じとは限りませんが、トヨタは自動車に関連する金融事業を行っています。トヨタ車を買っていただくお客様に販売金融、割賦であったりリースであったり、その資金を融資すると。いわゆるリテール・ファイナンス・ビジネスでありますが、これも積極的に海外販売の増加に呼応して展開してまいりました。10年前には10カ国程度で行っていましたが、現在、30カ国以上で販売金融ビジネスを行っています。

それに伴いまして、金融事業のアセットも急速に拡大しています。左下の総資産の推移、06年3月末の総資産を見て頂きますと、トヨタ自動車のトータルアセットは28兆7,000億であります。そのうち、自動車事業のアセットが17兆、金融事業が11兆。トータルの総資産の約4割が金融ビジネスの資産であります。ただ、収益の割合でいきますと、06年3月期の営業利益のうち、金融部門から出てきているのは1,500億で、約1割弱であります。

次に、参考資料のマル2をご覧頂きたいと思います。これは、トヨタ自動車のバランスシートであります。06年3月末のトヨタ自動車のバランスシートです。私ども、事業セグメントとして大きく自動車と金融でセグメンテーションしまして、ディスクローズも分けてやっています。それで、トヨタのB/Sを金融と自動車事業、ざっくり分けてみますとこの表のようになります。

まず、アセットの方ですが、先ほど言いましたように、11兆円の金融資産があります。ここにはいわゆる手元流動性的なキャッシュはありません。自動車事業で手元流動性としてキャッシュ、すぐに換金できるという意味でキャッシュですが、3兆円持っています。この3兆円のうち2兆円を国内で運用し、1兆円は海外で運用しています。

負債・資本の方ですが、有利子負債は多くが金融事業の外部資金調達ですが、トリプルAという格付けを最大限活用するため、ほとんど社債、デットで行っています。いわゆるデットで資本市場から調達するというのが現状です。その結果、昨年度1年間の社債発行額は約2兆円、社債CPの発行残高は今8兆円になっています。この負債10兆円のうち、8兆円が社債CPの発行残高であります。大変大きな規模になっています。しかも、毎年約1兆円、このビジネスは伸びています。

そのCPの発行市場ですが、実は金融事業は、ビジネスそのものがほとんど海外で行われています。そういったこともありまして、米国やユーロ市場などの海外市場での調達が約9割となっています。ここのB/Sにはありませんが、むしろP/Lの方ではありますが、一方トヨタは自動車事業で、ドルのエクイバレントにしますと年間約400億ドルぐらいの為替が発生しており、これを外貨入金します。それに伴ういわゆる為替のエクスチェンジが発生しています。そのほとんどは東京外為市場で行っています。

このように、資金の運用や調達、さらには為替といった取引を通じまして、グローバルに金融・資本市場取引に密接なつながりを持ってビジネス展開がされています。

元の資料の2ページにお戻りください。このように、国際化、海外でのビジネスが大きく拡大してきていますが、ただ、製造業でこのグローバル化を進めるには、何よりも国際競争力があるかないかです。その力がないと、単に海外に行ってもビジネスは伸びないということで、何よりも国際競争力を確保することが重要だと考えています。

その競争力確保の地盤は、私どもはマザーマーケットである国内市場にあると思っています。国内市場できめ細かなCS(カスタマー・サティスファクション)活動を行い、顧客の要望にこたえるにはどういう商品がいいのか。技術改革やコスト低減といった、いわゆる競争力の源泉、そこは国内で培われてきたというふうに考えています。

ご承知のとおりだと思いますが、自動車産業の競争力の決め手は商品開発力です。他に先んじて先端技術が取り込めるのか、それが一定の品質が確保されているのか、コスト競争力があるのか。その競争力を培う源泉が、実は私どもは日本にあるというふうに考えています。日本の自動車市場、ご承知のように、もう20年、30年、すごい競争をしています。そういう中である意味鍛えられ、商品開発も行ってきました。

先ほど、キャッシュが3兆円あると言いましたが、そのうちの1兆円は、実は毎年研究開発費に使われています。1兆5,000億円ぐらいが設備投資です。1兆5,000億円の設備投資は、さすがに最近は海外での需要が多くなっています。ただ、約1兆円、8,000億円から9,000億円の研究開発費はほとんど日本で発生しています。ハイブリッドシステムや燃料電池等のいわゆる先端技術の開発は、すべてと言っていいと思いますが日本で行っています。

そういうふうに、日本で競争力をつけて、その上で海外市場での生産販売を拡大すると。そこでボリューム効果、スケールメリットを目指すと。この循環が国際競争力の向上につながっているというふうに考えています。

これが、金融・資本市場に置きかえて同じことが言えるのかどうか。実はここはよくわかりません。ただ、国際化の源泉となる国内の金融・資本市場の基盤がきちんと確立されるということがあって金融・資本市場の国際化も成り立つのではないかというふうに考えています。

国際化の源泉となる国内の金融・資本市場の基盤の確立という点で言いますと、市場のわかりやすさという点が1つのキーファクターではないかと思っています。そのためには、資金・資本・税務・保険市場のいわゆる可視化、見える化ができ、スリムかつ平易な金融・資本市場になれば、ないしはそういうことを備えた金融プラットフォームが構築されることが、まず国内の金融・資本市場の基盤確立に必要ではないかと思っています。

わかりやすさということで1つ例を挙げますと、先ほど400億ドルの外貨入金があると申しました。昨日も今日も為替が動いていますが、ヘッジは行っています。ここにお見えになる皆さんからも、いろいろなヘッジの商品をご紹介いただいています。デリバティブに絡むものが多いです。

デリバティブという言葉は、自動車では割とよく使っています。同じプラットフォームで上のモデルだけを変える、これを自動車でもデリバティブ・プロダクツと言っています。ただ、自動車のデリバティブは実はよく見えます。一方、私どもにご紹介いただくデリバティブ商品は、実はなかなかよく見えない。それで、私どもがやっている為替のオペレーションは極めてシンプルです。通常の先物予約か、もう一つはプットの買いとコールの売りをセットしてゼロコストをつくる、ないしはプットの買いだけ。この3つしかやっていません。もっと本当にかっこいいヘッジ商品がありますが、わからないから使えないというのが実態です。

企業、特に製造業の金融部門というのは、実は大変な臆病です。私、この仕事をもう二、三十年やっていますが、プラザ合意からずっと実は臆病に縮こまって仕事をしてまいりました。

先ほど言いましたように、自動車の競争の決め手は商品開発力です。ある意味、商品で市場リスクを負っています。モデルチェンジして当らなかったら、それが3つ、4つ重なったら赤字になります。そういった意味合いからいきますと、商品で市場リスクを負っている会社が、金融でリスクは基本的には負えません。昔、トヨタバンク、トヨタ銀行とか言われましたが、僕は違いますと。トヨタのプロダクツは自動車だけですから、自動車ではリスクをとります。これは市場で戦うわけですから。ただ、金融ではリスクはとりません。ですから、難しい運用はしませんし、難しいデリバティブは使いません。

手元資料の3ページをご覧ください。あとは、日本の金融・資本市場の国際化とはほとんど関係なく、実は、製造業が特にグローバル展開していく上で、グローバルな金融・資本市場に対するお願いであります。

やはり1番は、規制緩和の進展だと思っています。日本は、基本的には外貨送金やそういう関連ではもう実質的にほとんど規制はない市場になっていると僕らは見ています。ただ、日本の市場の規制緩和だけではもちろん不十分でありまして、お金が動くわけですから、どちらかで規制があれば規制があったのと一緒になります。もちろん、製造業にとりましては、例えば現在日銀の動きやそういう動きの中で、金利水準のソフトランディングとか市場の流動性、通貨の安定性、こうしたことが何よりも重要です。

例えば自動車事業は、海外展開しようとすると多くの部品を海外で調達しないと意味がありません。そうすると、物流ネットワークや販売ネットワークを作ります。その構築には、ノウハウの蓄積も含めて大体数年かかります。為替が一時的にどちらかに振れるということで、海外の工場や流通ネットワークをたたんで日本に戻ってくることはできません。そういった意味では、その国の経済・金融の発展に応じて製造業が出ていった国で規制が少なくなっていくという形が大変望まれるところであります。

それから、先ほど少し触れましたが、グローバルに活動しますと、国際間の資金決済が発生します。その流れも実は余りスムーズではないと言えます。2003年にトヨタはグローバル・ネッティングを導入しました。欧州・アメリカでは割といい形で進展しましたが、アジアでは実は相殺決済が認められない国が多くあります。個別決済をせざるを得ないと。個別決済ではいわゆるネッティングはできないわけです。

殊に規制緩和も、日本の企業・金融のグローバル化には、特に海外諸国がきちんとついてきてくれるかどうか、ここが重要なポイントになると思っています。CMS、キャッシュマネジメントシステムを導入していますが、海外にお金を送るときの、例えば簡素化も望まれるところであります。

次に、グローバル展開をサポートする金融プラットフォームについて少し触れたいと思います。グローバル展開しますと、進出国で資金調達やグローバルな情報ネットワークの整備が大変重要になってきます。特に日本はアジアに対してもう一段リーダーシップを発揮していただくと大変ありがたいと思います。

地政学的にはもちろん大変優位な立場にあるわけで、例えば、アジア域内のあらゆる情報が真っ先に日本に入るような金融経済、政治のネットワークの構築が期待したいところであります。その結果として、日本の金融・資本市場の国際的プレゼンスの向上や拡大が図られるのではないかと、そういうふうに考えています。

また、これもお願い事項で恐縮ですが、企業のグローバル化、金融・財務の高度化に伴いまして、実は私どもが負っているリスクが大変複雑化してきております。先ほどのデリバティブ商品はそういうリスクに対応した商品でもあるわけですが、このリスクコントロールのニーズに対して金融技術のスキルやノウハウ、それを身近に国内で製造業に教えて頂きたいと。ないし教えて頂いて使えるようにして頂きたいと。これもお願いしたい点の1つであります。

それから、市場の透明性に関して1つお願いしたい点があります。株式交換による三角合併が認められるようになりますが、その審査基準の明確化とか実質株主の明確化、さらには海外株式の保有に係る法整備なども進めて頂きたい点であります。

最後に、お手元資料の4ページに、金融・資本市場の国際化を進める上で、我々製造業が期待することとあります。大上段に構えて恐縮ですが、先ほど来申し上げましたように、日本の金融・資本市場はかなり規制緩和も進んでいると思います。国際的に見ても自由に動きやすい市場だというふうに感じています。製造業として、実はそこに求める点は、今縷々申し上げましたが、実は本質的には余りありません。求めたいのは次の2点だと思います。

1つは、製造業、海外にどんどんまだこれからも行くと思います。そうした製造業が海外でいろいろなビジネス展開をするにあたり、金融ビジネスの分野でも皆さんに一緒に海外で仕事をさせて頂くとありがたいなと思っています。製造業が海外に出て行きますと必ずお金が動きます。ぜひともそこを基点に、日本の製造業と金融が一体になって海外で仕事ができればなと思っています。

2つ目は、先ほど来申し上げていますような、国際的な規制緩和の進展に向け、日本の当局にリーダーシップを発揮していただければというふうに考えています。

雑駁な説明で恐縮ですが、以上です。

○池尾座長

どうも大変ありがとうございました。

では、次に矢野メンバー、お願いいたします。

○矢野メンバー

企業年金連合会の矢野でございます。企業年金連合会の年金資産は今13兆円ほどあるのですが、その運用責任者をやっております。それから、厚生省で年金制度の企画・立案に携わったことがございますので、そういった年金の立場から金融の国際化問題について、考えていることを申し上げたいと思います。

金融・資本市場の国際化というのは、年金にとっても非常にありがたいことでございまして、多様なサービスあるいはコスト削減といったことが期待できるので、国際化が進展すると非常にありがたいという立場でございます。

資料に沿ってご説明申し上げたいと思います。

まず、1ページですけれども、この金融の国際化ということを考える場合に、どういった視点からこの問題を考えたらいいのかということですが、まず1点は、市場や投資家保護の重要性について、改めて再確認する必要があるのではないかということです。

この点は、ここにお集まりの方はとっくにご承知のことで、とかく申し上げることはないのですが、日本社会の一般のイメージとしては、株式市場は余りイメージがよくないのですね。これは、博打場とは言いませんけれども、非常にリスクの多いところで、まともな人が手を出すところではないというイメージがまだあるのではないか。

あるいは、投資家についても非常にイメージが悪いわけでして、一般の方は投資家といいますとハゲタカファンドだとか村上ファンドだとかをイメージされる方が結構いらっしゃるのではないか。つまり、額に汗して働かない代表的な人という見方がされているのではないか。したがって、なぜ投資家を保護しなければならないか、疑問を持つ人も多いと思います。

ところが、実際は、この注のところに書きましたように、日本の公的年金、それから企業年金の積立金は約300兆円あります。これは、市場で運用されておりまして、国内市場の10%を若干超えるぐらいの比率を占めているわけです。したがって、金額で見ますと60兆円前後ぐらいになっております。それから、株式投信も最近非常に増えております。60兆円というような数字が先般示されましたが、この中で日本株というのは大体4割ぐらいと言われておりますので、20数兆円が国内の株式市場で運用されているということでございます。つまり、年金や投信を通じて、国民すべてが実質的には株主なのです。国民の老後は市場にかかっていると言えるのではないかと思います。

それから、もう一つは、金融の国際化といった場合に、いろいろな考え方があるわけで、例えば東京に金融特区を作れとか、あるいは、英語力が非常に重要なので、金融機関の検査の対象にしたらどうかというご意見もあるようです。

そういうことも結構なのですが、やはり一番の基本というのは株主・投資家にとって魅力ある市場を作ること、信頼される市場を作ること、私はこれが一番の基本ではないかと思います。これが実現できないと、いろいろな対策を講じたとしても結局根なし草になってしまうのではないかということです。逆に、魅力ある市場、信頼される市場を作ることが、ひいては我が国金融・資本市場の国際化とか、あるいは競争力の強化につながっていくのではないかと思います。

そこで、具体的に魅力ある市場をつくるためにはどうしたらいいのかということで幾つか考えてみたわけですけれども、その前に、これまで我が国の株式投資の収益率がどうであったかということを振り返ってみたいと思います。2ページでございます。

これはもうご承知のとおり、バブルが崩壊して以降、株式市場は90年代を通じてマイナスリターンだったわけです。さらに、2000年から3年連続で大きく暴落していったということで、日経平均が7,000円台まで下落したのはご案内のとおりです。そういう中で、企業年金は株式市場の暴落の影響をまともに受け、3年連続マイナス運用に陥ったということで、00年から05年度の間に364基金も解散したのです。多い年には90ぐらいの基金が解散していったということでございます。あるいは代行返上も850基金を超えております。あるいは給付の切下げということで、これも00年度から05年度の間に約850の基金が給付切り下げをやったわけです。だから、日本のサラリーマンの老後というのは、株価暴落で本当にひどい目に遭ったわけです。私どもの連合会も2兆円の不足金を抱えて、本当に潰れる寸前まで行ったということです。

2003年から株式市場も回復に転じまして、最近、配当を増額する企業が増えております。そうは言っても、ROE、あるいは配当性向などで見ますと、欧米企業に比べまだまだ見劣りがします。それから、90年以降、株価が上がった会社を調べた資料を見たのですが、これは去年の9月末のデータなのですけれども、東証一部上場の約1,000社のうち、90年レベルから株価が上がった会社はまだ4分の1程度ということです。あるいは、企業不祥事が続発しているというのはご案内のとおりでございまして、そのたびに株価が暴落して、年金も被害を受けるということがあるわけです。

したがって、「貯蓄から投資へ」が進まないというのは、国民の賢明な選択だったと思います。、株式投資というのはリスクが大きいわけですから、単年度で見ると収益がマイナスになっても、5年、10年単位でみればリスクに見合って預貯金とか債券を上回るリターンが得られるのだということが実績で示されれば、国民こぞって株式投資を始めるわけでして、「貯蓄から投資へ」が実現できる。だから、貯蓄から投資へ促すためには、株式投資の魅力を増すのが基本ではないかということでございます。

そこで、3ページでございますけれども、そのためには企業に頑張っていただくのが第1です。企業が業績を上げて、株主価値を向上させていただくというのが、魅力ある市場であるために一番大事なことでございます。

日本の企業は、そういう点では一言で言うと儲からないわけでして、儲からない企業はこれは企業ではないわけですから、業績を上げ、株主価値向上に向けた努力をお願いしたい。そのためにはコーポレートガバナンスを充実するとか、事業計画や配当政策を含む資本政策などについて説明責任を果たして頂くことが重要ではないかということです。

第2は、機関投資家の受託者責任ということでございます。日本企業が長期に亘って業績低迷を続けた、あるいは株価の低迷が続いた、この一因は、機関投資家、株主が沈黙していた、企業に対し、ものを言わなかったということも大きいのではないかと思います。

機関投資家には、委託者のための忠実義務、あるいは注意義務といった受託者責任があるわけですから、問題企業に対してはものを言う、議決権を行使したり、企業と対話をするということが大事だと思います。最近は、機関投資家のそういうものを言う活動もふえてきていますけれども、まだまだ不十分ではないかと思うわけです。

魅力ある市場になるための第3は、税制措置です。これは先般もご意見が出ましたけれども、税制の優遇は不可欠だということです。株式投資に対する税の優遇については金持ち優遇だという声がよくあるわけですが、先ほど申し上げましたように、年金とか投信を通じて国民すべてが今や株主なのです。そういうことから、株式の譲渡益、配当課税については、10%の税率を恒久化していただきたいということです。

第4は、投信の改革ということです。投資信託が、昨今非常に増えております。トータルで70兆円を超えていると聞くわけですが、30年ぐらい前からいろいろ言われている問題が残されているのではないかということです。

1つは、ファンドが本当に多いのです。今、3,000本もあるそうですし、大手の運用機関では300本もやっているということで、次から次へと新しいファンドが設定されている。これでは選択に迷うし、ファンドの乗り換えを勧められる場合も結構あると聞きます。長期的な視点にたったファンドの設定や運用が望まれるということです。

投信の手数料につきましては、平均すると約1.2%の運用手数料と2%弱の販売手数料があるわけですが、年金の運用手数料は0.3%とか0.4%でございまして、投信の大体3分の1から4分の1ぐらいです。ところが、20年ぐらい前はむしろ投信の方が安くて年金の方が高かった。そういうことで、手数料も考えなければいけない点ではないかと思います。

信頼される市場のために何をなすべきかという点については、4ページでございますけれども、まず第1に市場ルールの見直しです。これは上場とかその後の増資だとか、社債の発行とか、いろいろあるわけですけれども、市場ルールについては投資家保護の徹底を図って頂きたい、あるいは国際的な整合性を図って頂きたいということでございます。

私どもの株主の立場から見ますと、第三者割当て増資、MSCBの発行、親子上場といった市場ルールは資金調達が優先されていて、既存の株主の利益はどこまで考えて頂いているのか、疑問をもたざるを得ないわけです。こういった問題については、いま東証の方で「上場制度総合プログラム」の整備という形で検討されている。あるいは先ほどご説明がごありましたように、金融庁の懇談会の報告に基づいて証券業協会で検討されて、つい最近報告が出されましたけれども、こういった努力を引き続きお願いしたいということです。

第2に、証券取引所のあり方。これも皆さんご案内のとおりでございまして、システム障害を起こし、その後抜本的な構築を図るということで、今進められております。システムの再構築には、非常に期待しているわけでして、証券取引所のシステムが国際競争力の源泉として決定的に重要ではないかと思います。

それから、自主規制部門の独立性の強化。これも、自主規制法人と市場運営会社に分けて、持株会社の傘下に両者を置くことが決まっていますので、こういった方向で自主規制部門の強化をお願いしたいということです。

それからコーポレートガバナンスについては、もっと証券取引所にリーダーシップを発揮して頂きたい。新興市場のあり方については、投資家保護の観点に立って品質管理を徹底するという方向で検討をお願いしたいということです。

第3に、規制、監視・取り締まり体制のあり方です。この問題につきましては、当局もいろいろご努力をされていることは承知しておりますが、まだまだ問題があるのではないか。

たとえば、グレーゾーンというのは、本来あってはならないと思うわけで、グレーンゾーンを狭める努力がもっと必要ではないか。規制がありながら具体的なルールが必ずしも明確ではないため規制が十分機能してない。それが市場に対する不信につながっているのではないかということです。さらに、監視・取締機関の強化、連携などを進めて頂きたいということでございます。

信頼される市場のための第4は、公認会計士・監査法人のあり方です。これは今度の国会で法案が提出されるということで、大いに期待していますが、選任する側の意識改革とか制度改革も必要ではないか。そのため、監査法人の選任や報酬の決定に当たっては、企業経営者に監査役会等の意見を尊重することを求めるべき、ということでございます。

第5は、人材養成、投資教育です。日本は富の蓄積が遅れましたので、資産運用文化の発展が遅れたわけですけれども、昨今、運用機関の若手人材が育ちつつあります。ただ、視野が短期的、同調的な運用といった問題も指摘されています。、学校における投資教育、大学における専門教育の充実などが 必要だということです。

続いて、年金改革の問題です。年金は、先ほど申し上げたように大きなボリュームの積立金がありますが、市場活性化のために年金のお金を活用するというのは本末転倒だと思うのです。ただ、公的年金がスリム化される中で、企業年金とか個人年金の育成を図っていかなければいけない。あるいは公的年金の積立金につきましても、加入者、受給者の利益の最大化を図る観点から、さらに改善・工夫していかなければいけないのではないか。そういった改革が最終的には市場の発展、活性化にも寄与するのではないかということでございます。

そういった点からしますと、確定拠出年金制度は非常に大きな課題を抱えています。日本の確定拠出年金制度は、5年前にできたわけですが、制度発足に当り年金なのか貯蓄なのかという議論が行われ、貯蓄優遇制度を設けることについては問題だということで、非常にこじんまりした窮屈な制度としてスタートをせざるを得なかった。そういうことで、ここに指摘したような拠出限度額の引き上げ又は撤廃、マッチィング拠出、専業主婦や公務員の加入といった点について、改善を図っていく必要があるということです。

7ページに、日米の制度の比較を載せておりますが、これを見ましても、日本の確定拠出年金制度は米国の100分の1以下で、発展の可能性を秘めていると思います。

それから、公的年金の運用改革も大きな課題だと思います。これは、厚生年金、国民年金合わせますと150兆円の積立金があるわけでして、そのうち110兆円がこの年金積立金管理運用独立行政法人で運用されています。これは世界最大の断トツの年金基金です。基本ポートフォリオはここにあるようなポートフォリオになっており、この基本ポートフォリオは、長期的なリターンを最大化するという観点から見直す必要があると思います。

実は私が厚生省年金局長のときにこのポートフォリオを取りまとめたわけですけれども、何しろ当時公的年金の積立金を株式市場で運用するということについて非常に反対が強くて、必要最低限にとどめざるを得なかったという経緯がございます。そういうことから、この基本ポートフォリオの見直しは、大いに検討に値すると思います。

また、この法人の専門性の向上とか体制整備を図る必要があるわけですが、これは独法の規制が非常に厳しくて、人件費を減らさなければいけない、あるいは一般管理費を減らさなければいけないとか、そういった規制の中で人材の確保や体制の整備が十分進まないといった問題がございます。

さらに、いずれ150兆円にもなるファンドを1つの法人で運営して、効率的な運用ができるのかという問題もあるわけで、運用の多様化を図ったり、競争原理を導入するため、ファンドを分割することも大いに検討に値する問題ではないかと思います。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

では、最後に、東京証券取引所、飛山メンバー及び土本部長よりお願いいたします。

○飛山メンバー

東京証券取引所の飛山でございます。本日は、東証の外国株市場につきまして説明をさせて頂きたいと思います。

資料の1ページ目に説明の項目を掲げておりまして、まず1点目としまして、外国市場の基本構成でございます。具体的には対象企業でありますとか上場形態などがいかがなものかというものを概括しまして、2点目として上場会社数の推移、投資主体の状況という2つの観点から、外国株市場の特徴を分析しております。それから、3点目として、その分析結果を踏まえまして、30年前と異なる現状に沿った新しい基本コンセプトをご紹介したいと思います。最後に、市場の活性化に向けたこれまでの東証の取り組みを紹介するとともに、今後の上場外国会社数の増加に向けた基本認識、スタンスについて、幾つかの提案も含めまして説明させて頂きたいと思っております。

まず、2ページ目のところでございますけれども、東証の外国株市場の基本コンセプトであります。東証に外国株市場が開設されましたのは、30年以上前の1973年、昭和48年であります。昭和45年に我が国居住者によります外国証券投資が解禁され、一連の外国証券投資に係る環境が整備されまして、最初は本邦内の証券会社を通じて、指定された外国の投資対象市場で行うこととされた外国株への投資を、個人を中心とする一般の投資家にとってより身近にするとともに、外国企業に日本市場での資金調達の場を提供することを目的として開設された市場であります。

そのような環境の中で設立された市場でありますので、この表のとおり、上場対象の企業としましては、個人にもなじみのある欧米の大型企業、いわゆるブルーチップ企業が中心でありまして、それらの企業は母国市場への上場に加えまして、東証にも上場するという重複上場形態であったわけです。

東証の上場の場合、今はやっておりますPOWLというものとちょっと違いまして、日本円での売買が可能であり、さらに適時開示も含めた情報開示は日本語で行われます。それから、株主総会での権利行使も確保されるということで、日本の特に個人投資家にとりましては、安心して投資できる市場になっているというふうに考えております。

また、上場物件は原株でありまして、本邦内に原株を輸入するのではなくて、本国内にて保管した上で、本邦内決済機関における口座振替によって決済が行われるという形をとっております。

3ページ目にまいりまして、外国株市場の分析ということでございます。まず、上場会社数の推移について、外国株市場の開設から現在に至るまで、3つのフェーズに区分しまして、各フェーズにおける現象とその主な要因をまとめました。

まず、マル1のところでございますけれども、市場開設後の約10年間は、いわば外国株市場の萌芽期とも言える時期でございまして、先ほど申し上げましたとおり、日本人による外国の証券投資が解禁され、関連する諸制度が整備された期間でありますので、上場会社数は20社に満たないところでずっと推移したわけであります。

マル2のところでございますけれども、その後のバブル経済の生成期におきましては、上場会社数の数は増加の一途をたどりまして、1991年には127社、ここが最高でございますけれども、そこまで達したというわけでございます。

この背景としましては、日本での知名度の向上でございますとか、日本での事業展開を図るということを目的とした上場に加えまして、日本経済が活況を呈した中で、東証が一時時価総額ベースで世界最大級になったということもありまして、世界最大級の市場に上場をするという、東証への上場自体を目的とする外国会社が増加したということも挙げられるわけであります。

言いかえますと、日本との事業上の関係が希薄な外国会社による上場が相当数あったと言ってもいいのではないかと思っております。例えば、アメリカでは民間の事業となっておりますごみ回収事業を行っている会社とか、それから、アメリカの地方の電力会社の上場というのはこの事例としてとらえられると思っております。

さらに、そこにあります二重監査の廃止でございますとか、有報提出期限の延長、それから発行登録制度の導入といった法制面での整備が進みまして、上場外国会社数が増加をしたというふうに考えております。

その後、マル3でございますけれども、バブル経済が崩壊しまして、東証から上場企業の撤退が相次ぐようになります。現在では、そこにありますとおり、25社になっているというわけであります。日本経済がスランプに陥ったことによりまして、世界最大級マーケットへの上場を目的としていた外国会社、言いかえますと日本との事業上の関係が余りなかった外国会社の多くが撤退していったというふうに見ております。

さらには、IT技術の発達等に伴い、上場会社による上場戦略が変化しまして、サテライト市場――本国市場と重複しての東証上場でございますので東証市場がサテライト市場ということになりますけれども――における上場を廃止し、本国市場へ売買を集約する流れが加速したということや単に資金調達だけを目的とするPOWLというような資金調達形態が活発に行われたということも上場撤退の理由として挙げられると思っております。

加えて、世界的な企業再編ブームが起きておりまして、東証の非上場の外国会社が東証上場の外国会社を、TOBとか合併とかにより廃止に至ってしまうというケースが、ここ10年ほどで急速に増えておりまして、約100社ほど上場外国会社が減っている中のうちおよそ30社がそのような理由によるいわばテクニカルな上場廃止ということでございます。

それから、その下の※印のところでございますけれども、バブル経済の崩壊後に撤退が相次いでおりますが、上場維持コストが高いことが原因であるということが多く言われます。確かに撤退表明の際に、上場維持コストの高さを理由としてというのが非常に多かったのも事実ではありますけれども、このような現象は本国市場にも加えて東証にも重複上場する、いわば先ほど言いましたサテライト上場の場合におきましては、経済状況にかかわらず、いずれの時期におきましても認められる傾向でありまして、サテライト上場の場合には、上場後の一定期間を経過しますと売買が本国にシフトしまして、日本における株主数が減少しがちでありまして、その結果、上場の費用は固定的費用で構成されておりますので、上場維持コストという意味合いから、株主1人当りの費用が増加してしまうというのが実態となっております。これは、東証市場だけの現象というよりも、サテライト上場ということであれば、他のマーケットにおいても同様であろうというふうに思っております。

4ページ目でございますけれども、これは外国株市場を投資主体の状況から見た分析であります。棒グラフの左側は外国株式、右側は国内株式でありますけれども、これを対比してみますと、大きく2つの特徴が挙げられると思っております。1つ目は、そもそも個人を対象にした市場コンセプトであったということから、外国株投資については、結果として個人投資家の比率が非常に高くなっているということでございます。

2つ目の特徴としましては、近年、外国人の比率が増加傾向にあり、2003年にはゼロ%であったものが、2006年には45.6%にまで上昇しております。これは、2004年10月に東証で初めての単独上場企業、今までのサテライトつまり重複上場ではなくて、東証だけに上場するという新華ファイナンスという会社でございますけれども、それが上場した時期に符合します。この場合、東証はいわばメインマーケットになりますので、東証でしか売買できませんものですから、外国人も東証市場にに参入してくるということが考えられるということであります。

こうした分析から得られるものということでまとめたものが5ページでございます。まず、1つは、先ほども申し上げた上場会社数の推移というところから考えますのは、上場後の株主数が、放っておけば減少するというサテライト市場の性質を踏まえますと、日本に対する積極的なコミット、例えば本邦内での幅広いIR活動ですとか、さらには我々も含めます証券関係者による市場定着に向けた取り組みでございますとか、それから、売買面や営業面での対応が十分でない場合には、やはりサテライトマーケットである以上、結果として流動性の低下、株主数の減少、本国への還流を招きまして、ひいては上場撤退につながるということであろうと思っております。

そして、もう一つの、投資主体の状況から得られるものが、当然かもしれませんけれども、サテライト上場ではなくて、東証への単独上場であれば投資家数の拡大が図られ、流動性も高くなるということでございます。

こうしたことを踏まえて考えましたのが、次の6ページのところで、東証外国株市場の新基本コンセプトというものであります。まず、新しいコンセプトを立てる際の基本観でございますけれども、私ども東証としましては、アジアにおける地位の確立を目指しまして、香港でもシンガポールでもない存在感と独自性のある外国株市場を構築していきたいということであります。これによりまして、良質で多様な投資対象を提供することになりますし、国の施策でもあります貯蓄から投資への流れを促進していくものであると思っております。

先ほど説明しました、これまでの市場に対する分析を踏まえますと、2つのキーワードがあるのではないかと思っております。1つは、日本に対する積極的なコミットということです。外国株市場の特徴・性質を踏まえますと、関係者の協力はもちろんでありますけれども、上場会社による日本における広範なIR活動が重要であるというふうに思われますが、会社が本邦内でIRにコミットできるのは、何らかの形で日本とのつながりとか縁を有している会社ではないかと思っております。

こうしたことから今後のことを考えますと、今後は成長著しいアジア近隣諸国の会社が日本市場との結びつきを強めていくということが想定されますので、このような地域からの上場会社であれば、東証市場での末永い定着が期待できるのではないかというふうに考えております。

2つ目のキーワードとして、IT、情報伝達技術の進歩でございますとか、株式上場の本国回帰を踏まえた場合、重複上場だけでは東証市場における流動性は余り期待できないということを踏まえまして、東証単独上場を促進するという必要性が出てきます。

この2つのキーワードを踏まえて、開設して30年以上経過しました外国株市場の基本コンセプトを修正すべきという結論に至りまして、従来は欧米、ブルーチップの重複上場で個人中心というものであったものを、アジアの、規模は小さくても成長性豊かな企業が東証へ単独上場し、機関投資家も対象とするというものに転換を図ったという次第であります。

当面のプロモーションはこのコンセプトに沿って展開していくということでありますけれども、もちろん従来型の欧米のブルーチップ・重複上場をやめるというものではなく、このような企業の上場も諸手を挙げて歓迎していくということには変わりないわけであります。

最後に、4番目として、東証外国株市場の活性化に向けたこれまでの具体的な取り組みについて書いております。上場会社の撤退が相次ぐ局面において、東証としても手をこまねいていたわけではありませんで、我々のできる範囲で、細かいことも含めましてやってており、そのことを示したのが7ページの表でございます。

ご覧のとおりでありまして、関係者の皆様方のご要望などを踏まえまして、東証への提出資料の英文化でございますとか、手数料の引き下げでございますとか、上場制度の売買・決済制度といった制度の対応といったことはもちろんのこと、プロモーションの面でも積極的な対応を行ってきておるところであります。

2000年以降のところでは、特に中国向けのプロモーションに力を入れてきておりまして、2000年に上場誘致の専門グループを社内に設置して、2004年には中国語に堪能な中国の証券ビジネスに精通した人材を採用してプロモーション活動を積極的に展開したというわけでございます。

ちなみに、2002年以降、我々が主催するだけではなく、中国の政府関係機関が開催されるものの枠を頂いて説明をするセミナーも含めて、約40回以上中国国内で東証上場の促進のセミナーを開催しております。昨年だけでも10回を超えるセミナーに参加し、東証の上場促進の勧誘をしているわけでございます。また、個別会社に対して、昨年だけで約40社の企業を訪問しております。なかなか成果があらわれないのが現状でございますけれども、そういう努力をしているということでございます。

最後、8ページ目でございます。今後の取り組みでございまして、これまで同様上場促進に向けた制度の改善を継続していくという所存ではありますけれども、そうしたことに加えまして、東京市場の国際化のための東証上場外国会社数増加を目指すためには、やはりプラス要因を作っていかないとだめだということで、つまり、外国会社にとって東証上場にこんなメリットがあるということを示す必要があるというふうに考えております。

そのための提案の1つとしまして、日本の産業構造を活性化するために三角合併の議論がなされているところでありますけれども、東証に上場する外国企業を増やすという観点からは、さらに東証の上場のメリットを高めるという観点から、東証に上場している外国企業であれば、三角合併スキームを利用できる要件を、海外に上場しているだけの企業よりは優遇するということも有効な方策ではないかというふうに思っております。

また、これが実現されますと、アジア・ベンチャー・単独の形態のみならず、欧米・ブルーチップ・重複の上場外国会社を増やす契機にもつながるというふうに考えております。

さらに、昨今、POWLを含めまして、外国株への投資手段が多様化する中、適切な会社情報の開示でございますとか、コーポレートガバナンスが確保されている東証の上場というのは、投資家にとりまして極めて安心感のある投資対象が得られるというふうに思われます。

一方、会社にとりましても、上場審査において適切な情報開示が行われる会社かどうか、テストに合格して東証に上場ということになりますので、テストを受けていない、あるいはテストを無視した企業と差別化が図れるということになりまして、このように、「東証上場は会社として質の良さを示すということなのですよ」というようなことを、これは欧米主要国もそうでございますけれども、行政当局も参画して頂いて、プロモーション活動でアピールしていくことができれば、より効果的な誘致につながるのでないかということに思っておりまして、是非ご協力をお願いしたいというふうに考えております。

以上、早口で駆け足で恐縮でございますけれども、東証外国株市場を説明させていただきました。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、残された時間は質疑応答と自由討論に移りたいと思います。

最初に、事務局からの説明がありましたし、それから今お三方からプレゼンテーションを頂いたわけですが、これらに関連いたしましてご質問とかご意見がございましたら、ご自由にご発言いただきたいということで、挙手をして頂くかネームプレートを立てておいて頂ければ、順番に発言していただくということで。

柴田メンバー。

○柴田メンバー

幾つか申し上げたいことがあるのですけれども、矢野委員のおっしゃったことだけに最初は絞って申し上げたいと思います。

まず、確定給付年金という世界でございますけれども、厚生・国民年金が150兆円、共済年金が50兆円、したがって公的年金が200兆円になろうかという状況でございます。現に、世界最大級の年金基金と言われているアメリカのカルパース、カリフォルニアの州の職員の年金でございますが、これが大体22、3兆円あろうかと思います。すなわち、カルパースの8倍、ないしは9倍という大きさを持つ巨大な年金基金が今目の前に誕生しようとしているということでございます。

この年金基金につきましては、100年もつ年金制度というふうにいわれておりますが、基本的には100年後に完璧な世代間扶養というふうに移行する、世界でも珍しい概念で走っているということです。修正賦課方式という言葉を使っていると思います。

そこで、少し考えてみますと、現在日本の国家予算は83兆円前後ということでございまして、仮にこの200兆円の資金が5%のリターンを生むと、中長期のリターンでございますが、こうなりますと10兆円なのですね。この83兆円という金額に対して、この10兆円のインパクトは非常に大きいということでございまして、それは国家財政にそのまま行くわけではございませんけれども、国家の潜在的な財政負担を軽減する要素にはやはりなろうかと思います。

ところが、この独立行政法人は非常に大変な制約下に置かれているということでございまして、例えばリターンのターゲットは3.2%前後、インフレーション後で1.1%回すということで、元本がなくならなければいいといったような制約を受けて運用しているわけです。

一番大きい制約は、やはりガバナンスの姿であるかもしれないということでございまして、基本的には今、議会に対して責任があるような気がいたします。ただ、欧米におきましては、こういった公的な年金は、年金の受益者に対する受託者責任というものを全うするような建てつけになっている場合が多うございます。これは、どの国でも例えば市場環境がうまくいかないというときに、野党に立った側の政党が必ずパフォーマンスについて質問をして政争の具になるということがありまして、世界の知恵といたしましては、議会に対する責任は消えませんけれども、基本的には公的年金のガバナンスについて、年金の受益者に対する受託者責任を第一義に考えるような仕組みになっているようでございます。これは知恵ではないかと思います。

2つ目は、やはり規模そのものが制約になるかということでございまして、100兆円とか200兆円という金額になりますと、少し動いただけで、自分の注文でマーケットを動かしてしまうという意味でマーケットインパクトが非常に大きい。結果として、いわゆるパッシブな投資、インデックスベースの投資に行かざるを得ないということでございます。

また、昨今、アメリカの年金及び欧州の年金が投資を増やしておりますオルタナティブ投資にいたしましても、やはり1件500億円とか、数百億円の投資しかできないわけでございまして、この100兆、200兆という金額の前では、やはり埒があかないということでございます。

したがいまして、先ほどの矢野委員のご発言の中にございましたけれども、運用面だけは何とか分割をすることで自由な運用を可能にして、その分割された運用主体の間で資産の分散もできれば、お互いの切磋琢磨という意味での競争原理を導入するということも大事ではないのかと思います。現在、規模自体がこの独立行政法人から運用の自由を奪っているということもあると思います。

また、第3に人材でございます。今、確か100名程度でおやりになっていらっしゃると思いますが、これはカルパース等々の諸外国の例に比べて、圧倒的に少ないということでございます。今、国家的にはいろいろな独立行政法人にしても人数を減らすようにとか、そういったことがあると思うのですが、恐らくこの分野に限っては人数を増やして、もう少しプロの雇用を容易にするということも必要なのではないかと思います。

また、待遇でございますけれども、民間のプロが喜んで参加したくなるような待遇を可能にするということも大事だと思います。これは、1億円、2億円というお金を払えという話ではなく、現実的にはやはり公的な場所に勤めるということにはそれなりのプレステージがありますので、民間より少し安いお金で可能かと思いますが、やはりいい人を雇うだけの報酬も必要なのではないかというふうに思われます。

最後になりますが、やはり計画経済的に何%株式、何%債券というふうにがんじがらめに決められている現状からは開放してさしあげないと、この独立行政法人のご苦労は変わらないのではないかと思います。

同じく、年金の方でございますが、確定拠出年金についての議論です。やはり日本は、アメリカ及びオーストラリアから学ぶ必要があるということでございまして、アメリカの確定拠出年金につきましては先ほど矢野委員の方からございましたので、手短にオーストラリアのシステムというのをご紹介申し上げたいと思います。

現在、セーフティネットとして国家が面倒を見る年金というのが一番下にございます。建物の一番下、基礎でございます。その上に2階目がございまして、この2階のところには雇用者が被雇用者の給料の9%に相当する金額を払い込むという仕組みでございます。この9%を払い込むときに、オーストラリアにおいては、たしか15%だったと思いますが、税金がかかります。従って、拠出時に国家に15%のお金が入るということですが、そこから生まれる果実については、今度は税金が15%しかかからないということでございます。

3階建ての建物の3階には、個人のマッチング拠出的なものがございまして、これも上限5万オーストラリアドルだったと思います。これも拠出をするときに税金がかかるわけでございますが、リターンについては税金は15%しかかからないということでして、これは非常に大きく成長をしているということでございまして、投資信託の残高でいきますと、今、オーストラリアの残高は恐らく日本の残高に匹敵するところまでここ数年成長してきているということでございます。

先方は2,000万人の国、我が国は1億2,000万人の国でございますので、このインパクトの大きさというのは大きいということを申し上げておきたいと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

金融・資本市場改革という話と公的年金制度のあり方というのは、実は裏腹の問題だということは、私も認識はしているつもりなのですけれども、どういう形で議論をするかというのは非常に難しい問題ではないでしょうか。

はい、田村政務官。

○田村政務官

今のは貴重なご意見ですけれども、この場というよりももう一つ、今度、内閣府の方で経済財政諮問会議の専門調査会で、国の資産債務改革の専門調査会がありまして、この年金の問題を、野村先生と関先生と翁先生、メンバーでいらっしゃいますけれども、アジェンダとしてしっかり扱うことになっていますので、今日のお話も活用してしっかりやりますので。一言だけ。どうも。

○池尾座長

矢野委員、もし何か追加で補足されることがあるようでしたらお願いします。

○矢野メンバー

第1点、受託者責任の問題ですけれども、これはおっしゃるとおりでして、最終的には加入員・受給者に対して責任を負うわけですから、加入員・受給者の利益を最大化するという基本的な視点でこの運用問題を考えるべきだと思うのです。それが、私が年金局長をしているときもそうだったのですが、株が下がると国会に呼びつけられて叱られてばかりいたわけでして、この運用問題がややもすると政争の具にされてしまうということでございまして、これは排除する必要があるということで全く同感でございます。

2つ目は、年金積立金管理運用独立行政法人の規模が大きいということが運用の制約になっているということはおっしゃるとおりでございます。この点につきましては、スウェーデンの国の年金は市場で運用しているわけですが、その場合に、スウェーデンの積立金というのは13兆円ぐらいしかないのですけれども、ファンドを5つに分割して、競争原理を取り入れて運用しているということでございまして、こういった点は我が国においても非常に参考になるのではないかと思います。

それから3つ目に、人材の養成・確保という点ですけれども、現在、年金積立金の管理運用独立行政法人の役職員は約80名です。これは世界的に見ますと、第2位の年金基金がオランダのABPという年金ですけれども、これは積立金が20数兆円です。それから、3位がカルバース、これも20数兆円の規模です。、ところが、カルパースですと運用だけでも200名ぐらいいます。ABPは400名ぐらいいるということを聞いておりまして、しかもみな運用のプロです。

日本の場合は、これまで役所からの出向者が中心であったわけですけれども、これではいけないということで、今、人材の確保を図っています。しかし、いかんせん独立行政法人としての規制があるものですから、給料を上げてはいけないとか、人件費を減らせとか、一般管理費を減らせということを言われています。やはりこういった点を緩和して頂かないと、せっかく独法になって国の規制から離れて柔軟な運営をと言っているのに、現実は全く逆行しているわけです。そういうことで、なかなか人材を増やす、いい人を集めるということが現状では難しいということを聞いております。

それから、、私のレジュメには移転問題と書いておったのですけれども、これは昔、竹下内閣のときに、特殊法人は東京から出ていけということで、当時の年金福祉事業団は神奈川県に移転するということに決まりました。この方針がその後も引き継がれて、年金福祉事業団の後身である年金積立金管理運用法人は平成20年度末には神奈川に移転しなければいけないと法律に書いてあるわけです。

一方で東京に金融特区を設けて、金融を振興しようというときに、世界最大、断トツの年金基金を東京から出ていけと言うわけですから、これは本当に国の政策としてちぐはぐです。こういった点も一つ一つ見直していただかないと、金融の国際化と言ってもなかなか実現は難しいなと感じております。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続きご意見をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

はい、どうぞ。

○柴田メンバー

今度は角度を変えて、東証の国際化というところに焦点を当ててみたいと思います。

私は、個人的な体験として、東証上場が非常に盛んであったときに、若い担当者としてこの東証上場のいろいろな事務手続をやった人間でございます。そのときの感覚を申し上げておきたいと思います。

まず、やはり世界のブルーチップの会社であっても、第1に日本語での書類の要求をする、第2に日本の会計基準との違いを当時は説明させられたということでございます。加えて、いろいろな軋轢がそれぞれの発行体との間にあったということです。

まず、言葉の問題について申し上げますと、一般的には日本語に訳すことの手間と費用がかかるから、外国の会社はそれを好まないのだということでございますが、実際に仕事をした人間の感覚といたしますと、自分が理解できない言葉の書類に、場合によっては刑事責任を負うような義務を負わせるようなものに自らの署名ということをする、これには物すごい恐怖感があるということでございます。ですから、せめて現在の世界の金融の共通言語である英語による書類を正本として、それに対する署名を求めるということは必要なのだろうと思います。

2つ目は、今後は問題は少なくなっていくと思いますけれども、やはり日本という島国の独特の企業会計原則との整合性について、今は求められていませんけれども、やはりそういったことを一々説明しなければいけないというのが大変でございました。

これを一言で、毒舌であるというそしりを覚悟して申し上げますと、当時日本の東証が行っていた国際化というのは、「世界の東証化」をねらったものであったということです。世界に東証のスタンダードを押しつけたいと。それで良いならば来てくださいということをねらったわけです。ここにはやはりどうしても無理があったというふうに思います。現実に、アメリカに上場するヨーロッパの会社は英文の書類だけでオーケーだし、現実に例えばルクセンブルグのように基本的には英語を母国語としていないような国の証券取引所においても、英語の書類でオーケーであるということでございますので、民族主義を振りかざした途端に、その国の資本市場は国際化できなくなるということかと思います。

以上でございます。

○藤原メンバー

藤原です。

鈴木メンバーの資料の最後から2ページ目の参考資料マル1と、資料4-1の3ページ目の両方を見ながら申し上げたいと思います。

トヨタの数字は86年からか06年まで。それで、東証の外国株式市場の分析は84年から2006年まで。同じ20年間で1つは右肩上がりで、1つは右肩下がりになっております。

それで、鈴木メンバーの説明で非常に感心したことは、CS活動が大事であると。顧客の要望にこたえる。商品開発を大事にする。キャッシュ3兆円のうち1兆円を毎年研究開発費に使うと。私は、トヨタを1984年からカバーしていますが、最初のときにトヨタは国内市場に出てこられなかった。その当時はNTTとか東京都とかが国内市場では有名で、トヨタは新参者みたいな感じの印象があったのです。

それから、私はトヨタの方とロンドンでお話ししたときに、どうして格付けを取ったのですかみたいな感じで話をしたときに、もう海外で格付けを取って、市場を大きくして海外からやっていかなければいけないみたいな話があったのです。

だけれども、ある意味で日本のある部分のところは世界一になり、世界一のものづくりをし、いまだに3兆円のキャッシュの1兆円を研究開発費にすると。もう一方で金融の世界で生きていていつも言われるのが、金融業に関しては、日本では新商品が生まれないと。新商品はイギリスのシティで生まれ、日本には投資家がいてと。これを何とかしたいと。

私は、ずっと金融に何十年もいて、同じ日本人で、1つは世界一のものをつくり、もう一つの金融、私が属しているところは世界一のものをつくれない。みんな高校のレベル、大学のレベルは同じで、なぜこんなに差が出てくるのだろうと。

で、今日の発表で、私は柴田委員と同じように若いときに、――若いときは投資銀行の人はみんなこれをやらされるのですけれども――イギリスの上場がいいのかルクセンブルグの上場がいいのか。イギリスは魅力がないから、という感じでお客さんに言われていました。そのときに日本は全部翻訳しなければいけないし、という感じで言われた。

そのときに感じたのは、みんな日本の資本市場を大きくしたい、それは大蔵省の人たちもそうだという思想がある。ただ、仕組みの、外部環境がどう変わって、それに対してどうと、今のビジネスモデルに合わないのではないかというのに気がつくのが、非常に金融に関しては遅かったのです。

それで、ここからはちょっと言いづらいことなのですが、ここは意識的か無意識的かわかりませんが、私もコーポレートガバナンスの話というのはもう90年代の初め、80年代の終わりにIR活動をロンドンでやっているときは、企業の経営者は株主のため、そのためには透明性をという感じでいろいろ言われていたのですけれども、何かを決めるときになると、日本の例えば金融機関は株主よりも大蔵省のために動いていたし、大蔵省に言われればという感じで、結構日本ではコーポレートガバナンスの部分が役所もかかわって、株主でもないのに株主の代わりに、ここの企業が不正をしたからこの頭取は辞めなければいけないと。

それで、その親切さが、国際化の場合でも、イギリスとかフランスとかが非常に変わっていくときに、日本は親心で子供をもうちょっとこうした方がいいと言ってアドバイスをしたのだと思いますが、それが逆に親が心配し過ぎてひ弱な子供に育ったというような感じのところがあるようでございます。それで東証の外国株式市場の場合は、例えば外国からの上場を増やすためにはどうしたらいいのかとか、東証は何かしたのか、その辺がよくわかりませんのでそこを説明してもらいたいというのが1つです。

あと、きょうの東証外国株式市場のお話でちょっと気になったのは、例えばイギリスの場合は、その市場が国際的にどれぐらいの力があるのかというときに、上場企業の時価総額がGDPに対する比率がどれぐらいなのかというのを指標の1つに使います。だから、今日の説明では外国会社は余りサテライトで上場してくる必要はないような印象を受けましたが、もしそれが国際競争力を指標の1つになると、やはり外国企業が、それもブルーチップの大きいところが東京市場に上場してもらっている方が、その指標では上の方に行くのではないかと思うのです。

だから、もちろん、自国の市場に上場しないで日本に来るということは、そこのマーケティングというのは非常に大事かもしれませんが、私は日本の企業が目の前にある国内の市場に上場しないで海外に行くというのは、具体的にイメージとして湧かないところもありまして、東証外国株市場の場合にこの25に下がったのを右肩上がりに上げるという戦略はどういう感じなのかというのをお伺いしてみたいと思いました。

以上でございます。

○池尾座長

どうぞ。

○飛山メンバー

127から25に下がってくる過程におきましても、これは従来の、先ほど言いましたブルーチップ・欧米・重複上場という基本コンセプトの中で、上場の促進ということで海外に出向いていろいろ企業を上場してくださいということで、証券会社にもお願いしながら、私どもも独自にいろいろやっていたわけです。

いかんせん、このときには、今言いました理由で、企業自身もサテライトということで、経営の効率化を図らなければいけない、それほどの費用はかけられないということで、なかなかそれが結びつかなったということです。

先ほど言いましたとおりで、分析をしてみた結果、やはり東証をメインマーケットにしてくれるような会社、特にアジアのところを見てみますと、アジアでは資金需要の旺盛な会社が非常に多いものでございますので、そういったところを育てて、これは日本の投資家に提供するわけでございますので、それはちゃんとしたディスクロージャー、ちゃんとしたコーポレートガバナンスを前提にして上場して、そういうものを売買してもらうという形で、先ほど言いましたような基本コンセプトを改めて上場促進したいというふうに考えたということでございます。

○鈴木メンバー

藤原さんのご発言と若干絡んで、一つ、商品開発でトヨタがいろいろと、確かにおっしゃるよう毎年8,000億円、9,000億円とお金を使っているのです。僕は立場上、ちょっと使い過ぎだと実は怒っているのですが。藤原さんがああいうことをおっしゃると、うちの技術屋がまた使うのではないかと思うのですが。

ただ、トヨタはそこに確かにお金を使ってきたのですが、冒頭申し上げましたが、一番トヨタがやろうとしてきたことは、実は、工場は海外につくっても研究開発とかそういうのは日本でやろうと。日本に実は人材がいるという判断をしました。それはトヨタにいるのではなくて、日本にいるのです。日本にいるから、その人たちが頑張れば日本が研究開発、商品開発に一番強い地域だと、こういう前提を置いてビジネスを進めたということです。

特に、自動車は実は昔は鍛冶屋と言われていたのですが、今見ていただくともう鍛冶屋ではないのです。エレクトロニクス、コンピュータ、センサー、カメラ、こういうものの塊なのです。実はトヨタだけではとても作れないのです。さらに最近は、バイオエネルギーが入ってくる、ナノテクが入ってくる。そうすると、実は言ってみれば国の総合力の勝負になってきます。ですから、そういうところでトヨタは日本で研究開発ができ、さらには人材もいたと。それが1つの結果としてこういう結果になった理由かなということです。

トヨタだけがうまくやったというふうに持ち上げて頂いた感じがしたので、日本のおかげだと思っていますので、そういう意味では、僕は日本は依然としてポテンシャルのもの凄くある地域だと思っています。

○池尾座長

はい、どうぞ。

○木南メンバー

いろいろお話を伺って、いろいろなことを勉強いたしましたが、東証によるプレゼンテーションに関連して、6ページに書いてあることを前提にお尋ねしたいと思います。

本国上場ストラテジーというのがあると。アジアの発行会社を前提にされているということなのだと思うのですが、そのところで、また、本国回帰が必ず起こるはずだと思います。本国回帰が起こらないように引きとめる策はあるのか。それが、一応会議のテーマにもなっている金融・資本市場の国際化というのですか、やはり本国の方がいいやと思わせない方策は何かということは何だろうかなということについてお聞きしたいと思います。感想めいた質問になってしまいましたが。

もう一つは、最初に監督局長の説明なりトヨタ自動車の説明があったのですけれども、やはり規制というのはビジネスの種だと思わないといけないです。規制があるからビジネスの種が生じていると。例えば、排ガス規制がある。それとか、今だったら温室化対策のためのCO2の規制がある。これによって新製品の需要が出てくる。こういうことによって、規制があるとそれがビジネスのチャンスになっているわけで、金融庁が主体となっている規制の中にも、ビジネスの種があるのだとおもっているのですが、それに取り組んで商品を開発されるというようなことがどこで行われているのかなというのが、商品開発との関係で感想めいたことで思いました。

それくらいのことをまず申し上げたい。

○飛山メンバー

単独上場でも、本国に上場されれば回帰してしまうのではないかということですが、株式のような現物の売買の場合、やはりその本国で活躍しているわけですので、上場がその国でも行われますと、どうしてもその本国に回帰するというのはやむを得ない現象だと思っております。デリバティブの場合はそうでもないのですけれども。

但し、そうは言いましても、やはり初めに流動性をつくってしまえば、そのマーケットがメインマーケットになってくるということもありますので、そういったことで単独上場によって初めに流動性をつけてしまえると考えられます。

それから、もう一つは、やはり日本と非常につながりのある企業で、どちらかというと本国がどちらかというのが意識の薄いような会社をなるべくもってきたいというふうに考えています。なかなか難しいのですが、そんなことでございます。

○佐藤監督局長

規制等の関係でございますけれども、私どもが考えている規制というものが、それぞれの目的を持っていることは、ご案内のとおりでございます。金融機関の財務の健全性を維持するとか、利用者を保護するとか、あるいは市場における公正性を確保すると、こういったことのために規制を設けているということでございますけれども、そういった規制に対していかに効率的・効果的にコンプライアンスを維持して商売をやっていくかというのは、まさに民間の金融機関の方々の創意工夫によるところということでございますので、それをビジネスの種にしていただくというようなエネルギー感のある業界であっていただきたいというふうに思います。

最近の例ですと、今度3月末から適用されますバーゼル II 、新しい自己資本比率規制などについても、かなりビジネス化している方々がいらっしゃるやには伺っております。

○飛山メンバー

先ほど柴田さんから頂いた質問に対してでございますけれども、最初の頃は日本語での開示をやってくださいとか、それから、日本の会計基準に直してくださいとかということをお願いしておったのですが、これはもう大分いろいろ変わってきまして、東証に出していただく書類につきましては、つまり上場審査の書類でございますが、これは英文で構わないということにしておりますし、それから、法定開示の部分についても一部は、日本語で補うような形にしておけば、英語でよくなることになっており、大分進歩してきております。それから、会計基準についても今はもう本国基準でいいというところが増えてきております。まだちょっと国際会計基準が認められるには至っていないという問題があるわけですけれども、そんなことで進んできておりますので、そこはちょっと柴田さんがやっておられたころとは大分違っているということを認識して頂きたいと思っております。

○若松メンバー

今のと若干関連するのですけれども、6ページの東証さんの新基本コンセプトに、「今後、アジアの成長豊かな企業を」というのがあります。聞くところによると地理的に日本に近いにもかかわらず、アジアのこうした企業が東証よりも欧米での上場をしたがる傾向があるという指摘もあります。現状はどうなのかということと、これを進めるに当って、何か欧米市場と比べて、アジアの成長豊かな企業を東証で上場してもらうに当って、今、大きな壁とか課題みたいなものが残っているのか。その辺をご説明して頂けたらと思います。

○飛山メンバー

私どもだと、2000年以降中国を上場促進のためにぐるぐる回っているという話を差し上げているのですが、そういうことで回っていたときに感じますのは、外国企業が東証に上場して資金調達とかができるということを知らなかったという会社が実は多かったということです。

それで、こういう話を差し上げていくと、「ああ、そうですか。じゃ、東証の上場も検討してみましょう」ということになることもあるわけです。東証に対する認識が、我々の努力も足りなかったこともあるのですけれども、違っていたためになかなか東証に来なかったというわけです。

ただ、中国企業であれば、我々としても何でもいいから持ってくるというわけに参りません。日本の投資家に投資対象を提供するわけでございますので、財務会計もしっかりしているとか、コーポレートガバナンスもしっかりしているということでないといけないと思っています。会社にしてみると、そういったことでちょっと手間がかかっているということでございます。

○柴田メンバー

一言だけ申し上げますと、そういった小さい会社のファイナンスが日本で行われるというはいいことでございますので、それを否定するものではありませんが、もう一つ大きな会社が、やはりなかなか日本に来たがらないということ自体が、今の日本の市場の問題になっているというふうに思います。

例えば、今、米国と欧州との間で盛んに会計原則の収斂をめぐって作業が進んでいるということでして、横から見ておりますと、欧州は米国を優先し、米国は欧州を優先し、日本はその蚊帳の中には完全に入り切れていないという現状があると思います。

なぜ欧州の当局が米国の当局に対して発言力を持ち得るのかということですが、これはやはり米国の企業が欧州の複数の証券取引所に自らの株を上場して、しかもファイナンスをして、継続開示を行っているということでございますから、言うなれば人質の数が圧倒的に違うということだと思います。やはり小さい会社の上場のプロモーションも大事でございますけれども、何とか大きい会社にとって日本の市場が魅力あるようなものになってほしいというふうに思います。

○藤原メンバー

先ほど、質問するのを1つ忘れましたので。

飛山委員への質問ですけれども、なぜシンガポールがあれだけ海外企業で上場企業が多いのに、日本が少ないのかと。その辺の理由は何なのか。それで、どこを日本が直したら25が例えば50になるのか。それとも、そういう25を50にするというのは間違った戦略目標なのか。質問です。よろしく。

○飛山メンバー

それらの国においては市場に対するコンセプトがちょっと違っているものがあるのだろうと思っているのです。例えば、シンガポールにしてもロンドンのAIMにしても、中国の企業は非常に多く上場しておりますが、それらの市場の考え方というのが、何と言いますか、言い方が難しいのですけれども、開放主義的な考え方で、余り取引所が会社の内容そのものを審査するわけではなく、ある程度の数値基準に合致していれば上場できてしまうというものですから、他国の市場のことでいい悪いではなく、我々とは基本的なコンセプトが異なるという感じがしている。

今いろいろ中国企業の不正会計が問題になっている事例もあるわけですけれども、私どもは、やはり東証に上場してもらう以上、中国企業といえどもそういったことでも困るなと思っていますので、ある程度会社の内容をきちんと見てやっていくべきだと思っております。

それからもう一つは、シンガポールにしてもロンドンにしても英語圏でございますので、英語のままでいけるわけですが、それがちょっと日本の場合にはそういうことにはいかない。英語での開示ではなくて、日本語に置きかえなければいけないと、それが厄介だなという問題があるのだと思っております。ただ、やはり日本にいる投資家に投資対象として提供する以上、開示が全部英語でいいのかとかとか、中国の会計基準みたいなのでいいのかということがあり、そこはなかなかそうもいかないのではないかという感じもしているということで、単に上場会社数だけを比較するのはちょっと難しい判断だなと思っております。

○小足メンバー

東証の方のプレゼンの中で、皆さんご指摘の6ページのところの、「アジアの成長性豊かな企業」への基本コンセプト、こういう視点自体は非常に重要で、かつ今回の議論のテーマにかなっているというふうに思います。

特に、ストックすなわち上場という観点でその取引を含めた市場をとらえられるという議論が今回多いのですけれども、上場以前にも、日本の1,500兆円という金融資産を海外の企業の資金調達も含めてどのように呼び込むかというような観点でいくと、上場に至る以前でも、資料の方ではPOWLのご紹介もありましたように、非上場での資金の供給の仕方という意味で、ほかの経済成長戦略大綱等でもご指摘がありますけれども、例えば預託証券のようなそういう日本でまだ定着していない、スキーム等についても今後官民挙げて研究していくような努力も必要ではないかと思います。

もう一つは、我々日本の金融機関等が欧米の金融機関の先進的な金融技術等を吸収していくように、日本の中にもすぐれた金融制度があるとすれば、これからアジア諸国に対して日本で定着したような、もしくは存在感のある金融制度を、いわば官民挙げてアジアにも啓蒙――啓蒙という言葉は語弊があるかもしれませんが――もしくは広げていくようなことで、アジアマーケットというのを日本のいわば指導力を発揮できるようなマーケットにする、そういった非常に大がかり、もしくはかなり長期にわたるような努力になるかもしれませんが、こういった努力も考えていくべきではないかと思います。

○翁メンバー

1つ質問なのですけれども、資料1で金融庁の監督手法についてというところで、ノーアクションレター制度の利用実績がそれほど伸びていない。結構アメリカなどではこのノーアクションレター制度を活用して割と新規業務が新しく広がっていくという動きがあるわけなのですが、金融庁はこのノーアクションレターの実績についてどう考えておられて、例えば運用上こういった工夫ができるのではないかというようなことをお考えなのかどうなのか、そのあたりをお伺いしたいのです。

○佐藤監督局長

資料1の、「金融上の行政処分について」という3枚紙の1ページ目、下の方の注1でございますが、利用実績はご指摘のとおり平成13年7月の制度導入以降現在までに25件ということで、件数的には多くないということでございます。

いろいろな理由があろうかとは思いますけれども、ノーアクションレター、ご案内のとおり、個別の新しい事業、個別の新しいビジネスについて照会を受けるというシステムでございますし、一般的には照会の内容及び結果というものについて、一定の前提に従って公表するという仕組みでございます。したがいまして、公表することによっていわば先行者利益と申しましょうか、そういうものが失われるといったことも判断の材料にはなっているのではないかというような気がいたしております。他にも理由はあるのかもしれません。

そこで、そこに書いてあるわけでございますけれども、ノーアクションレターを補完するものとして、一般的な法令解釈に関する書面照会という制度もつけ加えているということでございます。そこの注2にございますように、このノーアクションレターとの違いは、個別具体的事例から離れた、一般的抽象的な法令解釈についての照会を可能としたということ。それから、個別事業者に加えて事業者団体が照会することを可能とした。あるいは弁護士等の代理人が照会することを可能としたということでございます。こちらの方については、利用実績がまだ出てきてはいないのですけれども、こういった制度がある程度ノーアクションレターを補完するような形で機能していってもらうといいなというふうに思っています。

とりあえず、現状はこんなところでございます。

○池尾座長

そろそろ時間が来てしまいましたので、あとは特にということが、ご発言があれば承ります。一応よろしければこれで終わりにしたいと思いますが、一言だけ感想を申し上げたいと思います。

東京証券取引所に上場する限りは、日本の個人投資家が投資するに値するものでなければならないという飛山委員の意見は、私もそのとおりだというふうに思いますので、日本の個人投資家が安心して投資できるための情報開示その他のことは、やはり必要になると思うのです。

それはそうだと思うのですけれども、ではそれとは別に、参加者をプロに限ったような、そういう別途のマーケットを東京に創設することは可能性として検討しなくていいのかどうかという、そういうイシューはあるように思いました。

それでは、事務的に次回等のことについて説明を頂きたいと思います。

○三井市場課長

次回、第4回のスタディグループは、3月6日火曜日、10時から12時の予定で開催したいと存じます。内容でございますけれども、KKRアジア会長のデレック・モーン氏、それから、在日米国商工会議所のチャールズ・レイク氏、それから、欧州ビジネス協会(EBC)のお三方にプレゼンテーション、ヒアリングをお願いしたいと考えております。

なお、そのプレゼンテーション自体は一部英語で行われますけれども、当方で同時通訳をご用意する予定でございます。

○池尾座長

それでは、どうもありがとうございました。これで本日の会合は終了とさせていただきます。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

サイトマップ

ページの先頭に戻る