金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第10回)議事録

日時:平成19年5月10日(木)14時00分~16時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 特別会議室

○池尾座長

ご出席予定のメンバーの方はおそろいになったようですので、定刻の一、二分前かもしれませんが、ただ今より我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第10回会合を開催いたしたいと思います。

皆様、ご多忙中のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、初めに本日の議事についてご説明したいと思います。前回の会合におきまして、それまでの会合で出てきた「主な論点」というのを、一応論点整理をする議論をしていただいたところですが、今回以降、しばらくはまだ議論が十分に尽くされていない点や、さらに議論が必要とされる点を中心にもう少し掘り下げるということで、有識者からのヒアリングを行い、議論をさらに深めていきたいというふうに思っております。

それで、本日につきましては、その論点整理として、主な論点にも検討課題として挙げられておりましたクレジット市場について議論を行う予定となっております。テーマはクレジット市場です。それで、本日は、有識者からの意見聴取といたしまして、根本メンバーに加えまして、外部からISDAのCEOのロバート・ピッケルさんと、同じくISDAの東京事務所長の森田智子さんに来ていただいております。それと、加えまして、みずほ証券からチーフストラテジストの高田創さんと、シニアファイナンシャルアナリストの柴崎健さんにもお越しいただいております。皆様、本日はよろしくお願いいたします。

なお、ピッケルさんは所用によりまして、会議の途中、5時ごろ退席されるということですので、本日はISDAのプレゼンテーションとそれに関連してピッケルさんへの質疑応答というのを先に行わさせていただきたいと思います。その後、根本メンバー、高田さん、柴崎さんと続けてプレゼンテーションしていただいて、再び質疑応答、自由討議をするという形の二部構成のような形でやらせていただきたいというふうに思っております。

それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○三井市場課長

まず、初めに、今日メンバーの交代がございましたので、この場を借りてご紹介させていただきます。

平野メンバーに代わりまして、今回より新しくメンバーとなられました國部毅様です。

○國部メンバー

三井住友銀行の國部でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○三井市場課長

次に、配付資料のご確認をお願いしたいと存じます。

ヒアリング用の資料は、資料1-1、1-2、ISDAの方々からの説明資料でございます。それから資料2、根本委員、それから資料3、高田様、柴崎様のプレゼンテーション資料になります。それ以外に、根本メンバーが雑誌に寄稿された論文、それから先月、4月17日、経済財政諮問会議におきまして、山本金融担当大臣がプレゼンテーションに用いた資料を、これは説明は省かさせていただきますけれども、卓上配付資料として配付させていただきます。

それから、今日はプレゼンテーションの一部が英語で行われます。同時通訳ではなくて、発言のたびに日本語を英語へ、英語を日本語へと、こういう通訳を行う方式で通訳を入れておりますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○池尾座長

それでは、初めにISDAのピッケルさん、森田さんからのプレゼンテーションをお願いいたしたいと思います。どうかよろしくお願いします。

○ピッケル参考人

どうもありがとうございます。池尾座長、三井課長、また皆様、本日は業界の代表の方々とこのような席に伺い、日本の市場を重要な金融マーケットにするということで皆様方がご検討なさっている場でISDAを代表し伺うことができ、うれしく思っております。

ISDAが設立されて以来、私どもは、東京は世界の主たる国際的な金融センターであるという確信のもとにやってまいりました。そもそも私はISDA付の弁護士として働いていたのですけれども、その関係上で初めて東京に伺ったのが1989年のことでございまして、ちょうどそのときにボードミーティングを東京で開催いたしました。そして、80年代末以来、東京マーケットの代表の方も私どものボードメンバーになっていただいておりまして、現在は2名日本の方が我々のボードメンバーになってくださっております。

今回は、森田と私が準備申し上げました提出資料をベースにプレゼンをさせていただきます。実は、この資料というのは45分という持ち時間で、ジャカルタで2月に私が行った講演のベースとなったものなんですけれども、ただ今回はとても割り当てられた時間が短いということで、主要な点だけかいつまんで申し上げたいと思います。

まず、「本日の議題」というところで、2ページ目にあるかと思いますけれども、ごくごく概要だけさらわせていただきます。ここで申し上げたいのは、世界的にクレジット・デリバティブが非常に伸びているにもかかわらず、なぜ東京では伸びていないのかということです。本日の進め方としては、始めの部分を私、後半の部分を森田に任せたいと思っております。

次の二、三枚のスライドというのは、ISDAの組織としての概要を示したものなんですけれども、もうISDAができて以来22年たっておりまして、2000年に東京の事務所も設立されております。また、あわせて世界の主要都市にも事務所を置いております。ISDAの主たる使命というのは、店頭デリバティブ市場の健全かつ効率的な発展に向けて様々な活動を行うということであります。あくまでもオフ・エクスチェンジで行う取引ということで、そのために最良執行の促進を目指すドキュメンテーションを徹底していくということと、高水準な商慣行を育成し、かつ、規制当局、市場参加者、また立法者も含めてさまざまな会員を中心とした啓蒙活動も行っております。

今回森田所長より、本スタディグループに出席なさる方のリストをもらいました。拝見したところ、日本の経済界を幅広く代表なさっておられる多彩な方々、立派な方々ばかりご出席なさっているということであります。これを踏まえた上で、私の方からクレジット・デリバティブとは一体何なのかということと、なぜこんなにも世界で急成長してきたのかということを簡単にお話し申し上げたいと思います。

さて、最初のところにクレジット・デリバティブの概要と題したところがございますけれども、ここをご覧いただくとクレジット・デリバティブの内容がわかるようになっております。ただ、次のページに飛んでいただいて、ちょうどそこに黒い四角がついている模式図があると思いますけれども、そちらをご覧いただければと思います。

短く申し上げると、クレジット・デフォルト・スワップというのは、まさに信用リスクを移転するということを意味しております。

まず第一に、もう一方の側にクレジットリスクの保有者がいるわけです。これは融資をしたから、もしくはボンドをホールドしているからということで発生したクレジットリスク保有なのですけれども、そして、それに対してプロテクションを買いたいと思う人がいると、これがバイヤーサイドということです。もう一方では、当該プロテクションを売るセラーサイドというのがいます。この人は、あえてプロテクションを売ることによってクレジットリスク及びエクスポージャーを自分のところに取り込みたいと思っている人です。

もちろん厳密には、当該契約というのは保険契約とは異なるものではありますけれども、一応便宜上、当該取引というのは保険と似ているというふうにお考えいただいて結構だと思います。すなわち、プロテクションを買いたいという人は必ずそれに見合う保険料に相当するようなプレミアムを払わなくちゃいけないということです。

例えば、クレジットイベント(信用事由)が生じたといたします。こちらの図ですと参照組織の方が破綻してしまった場合、プロテクションを買った方はプロテクションを売った方から当該デフォルトに応じて相応のペイメント、支払をもらうということで成立する契約であるわけです。

次のスライドに、簡単に相対する取引相手の両者間のそれぞれの視点から見たベネフィットをまとめて書いております。そのCDSを使うとどういう効果が生じるかということでありますけれども、クレジット・デフォルト・スワップというのは、他のデリバティブ商品と同様に、ポジションのヘッジを効果的に行うことができる、かつその時に自らの持っているマーケットに対しての見方を反映することができるということであります。

次のスライドでは、クレジット・デリバティブがいかに世界的に急成長を遂げていたかということがわかります。クレジットに対して積極的なポジションを取ることができ、また、時に応じて、必要に応じてもしそのクレジットリスクを移転したいのであれば効率的に移転できるということもひとつの要因として、このような急成長を遂げたのであります。

特にこの図の下の方をご覧いただきたいんですけれども、これはISDAがメンバーを対象にして6カ月に1回収集しているデータをグラフ化したものなんですけれども、調査対象機関は90機関ということになっております。その中には日本の金融機関も入っているのですけれども、手順としてISDAの方で公表する情報というのはグローバルベース、トータルベースでしか出しておりませんので、国別の内訳は出しておりません。

また、この下のチャートをご覧いただきたいのですけれども、前年比でずっと見ていますと、毎年毎年前年に対してCDSは倍で伸びているという形にISDA収集のデータではなっております。

なぜこのように急成長を遂げたか、その背後にはいろいろ理由があるわけでありますので、それについて触れてみたいと思います。それは逆に言ってみれば、このクレジット・デフォルト・スワップ、なかんずくクレジット・デリバティブ全体が世界では伸びているのにどうして日本マーケットでは余り伸びていないのかという説明にもつながると思います。一部はグローバルな展開も影響しているけれども、国別、例えばヨーロッパですとかアメリカで特異に見られるような現状があったのでここまで来たということも言えます。

ISDAを中心といたしまして、ドキュメンテーションの標準化もかなり力を入れて進めてまいりました。それも総合いたしまして世界的にビジネスが円滑化したということも言えます。また、アメリカやヨーロッパでは、ヘッジファンドが特にこのプロダクトについて非常に積極的に関与するようになったということも聞いていると思います。また、インデックスなども開発されておりまして、シングルネームクレジットということでは2枚前のスライドで取った数字があったかと思いますけれども、その代わりにクレジットのグループを対象にしてインデックスをつくるといったようなこともやっております。

次に、CDS利用の動機というところに行っていただきまして、下側に12と書いてあるスライドをご覧いただきたいんですけれども、これで世界の状況がお分かりになるかと思いますし、逆に何で日本の状況はそれほど世界並みに伸びていないのかということもお分かりになるかと思います。

伝統的な貸し出し関係ということになりますと、相対で行われるわけでありますから、一方で銀行があって、一方で一つの借り手がいると、ですからシンジケートローンとは違って、常に1対1でやってきたということです。ですから、銀行側にとってみれば、貸し出しをするか否かという可否だけを判断するということであり、一旦貸し出しを決定したら、その貸し出し債権については満期になるまでずっと持ち続ける、ホールドし続けるということが伝統であったと思います。

ただ、最近では、市場の中で銀行側にも新たなオプションが提示されるようになってまいりました。つまり、銀行側から言ってみればお金は貸すと、しかし、貸したそのポジションを売ることができるようになったということであります。つまり、セカンダリーマーケットでは当該ローン債権を売るということが可能になりました。当該市場はアメリカでは非常に流動性は厚くなっておりますし、この頃ヨーロッパでも流動性が非常に増してきた市場です。また、債権を証券化いたしまして、他の債権とバンドリングをしてマーケットで証券化商品として売るといったようなこともできるようになりました。

ただ、このようにレンド・アンド・セルということで一旦貸し出しをして、債権を売り切ってしまうという方式には問題もあるわけです。つまり借り手側にも問題が出てくると。つまり、銀行と借り手の間の関係がこれをもって全く切れてしまうという問題があるということであります。時によっては、銀行側はある借り手とは関係を維持したいと思うかもしれませんし、借り手の方にしても、一体誰からお金を借りているのかはっきりしたいということもあると思います。例えば、何か問題化したときに債権の整理をしたいですとか、もしくはより好ましい条件で借り換えたいといったようなときに、やっぱり誰がお金を貸してくれているのかわからないと困るということです。

クレジット・デリバティブが登場したおかげで、銀行としては従前にはなかった追加的なオプションを手に入れることができたわけです。つまり貸し出しもできる、そしてその債権を維持することもできる、しかし、自らの持っているポジションにヘッジもできるということであります。そのためにこのクレジット・デリバティブのスワップを使うということなんですけれども、それで自分の持っているクレジットエクスポージャーのヘッジができるということであります。ということで、非常にパワフルな代替策が出てきたということで、こういう方法をとれば銀行対借り手との関係についても、それほど重大な影響が出ないで済む、かつ銀行側として見れば、そのリスクに対してヘッジもできるということになります。

このようにパワフルなツールを銀行が使えるようになったということでありますけれども、貸し手である銀行もそれに応じてよりアクティブにクレジット及び貸し手、借り手との関係についてもマネージしていかなくてはいけないということにもなると思います。そして、時によってはもちろんこのCDSを使えば、自らの持っているリスクを他者に移転することができるということでもありますし、今後東京マーケットで見られる当該ビジネスに関しての問題点ですとか見通しについては、私の同僚の森田所長の方に引き継いでしゃべってもらいたいと思います。

○森田参考人

ISDA東京事務所の森田と申します。本日は、このような場にお招きいただきましてお話しをさせていただくことを大変光栄に存じます。どうもありがとうございます。

私の方からは、欧米市場の概観と、今ロバート・ピッケルが話しましたことと照らし合わせて日本でどのように違うのかというような点をお話をさせていただければと思います。

まず、欧米市場の概観なんですけれども、まず社債や融資、それのリスクを移転するツールであるCDSのリンクというのが非常に強くて、相互に影響し合っている、また、言い換えれば、社債の起債がふえればCDS取引が増えて、融資の残高が伸びればクレジット・デリバティブのプロテクションのヘッジが行われるという形に、非常に循環的に、スパイラル的に拡大をしてきているというようなことが言えるかと思います。

また、一方でエンドユーザーの活発な活動という点が欧米のマーケットの拡大に非常に大きな貢献をしておりまして、例えばヘッジファンドですとか機関投資家、あと銀行のローンブックですね、これらが全てお互いの活動が市場に厚みを増すような形で影響し合っているというようなところが言えるかと思います。もちろん日本のマーケットも伸びてはいるんですけれども、伸び率という意味では全く追いついていない状況で、その差は今広がっているような状況になっています。

ISDAでは、毎年日本のクレジット・デリバティブ市場参加者に対して調査を行っているのですが、その中でなぜ日本のクレジット・デリバティブ市場が伸びないのかというような質問を行っておりまして、そちらの回答も参考にしながらスライドの方をつくっておりますので、ご覧いただければと思います。

この中で、一番市場参加者が欠けていると考えているのが市場的な要因になりまして、17ページの方になりますが、市場的要因というのは、クレジット・デリバティブの原資産となる市場、つまり社債の市場がメインになりますけれども、こちらの流動性とボラティリティが足りていないということで、このあたりが一つのネックになっているのではないかというふうに考えている方々が多くあります。この原因としていろいろあるのかと思うのですが、1つは投資家の戦略に偏りがあって、新発した社債を買ってそのまま最後まで持ち切るというようなことが一般的ですし、海外のヘッジファンドが海外で行っているような短期的な売買であったり、バーゲンハンター的なことを行おうとしても、やはり日本の社債市場の厚みが欠けているためにそういった戦略が成立しない、戦略が実践したくても成立しないというような状況にあります。

また、もう一つ、欧米にあって日本に欠けているようなところというのは、例えば投資適格ぎりぎりの銘柄ですとか、投機的階級銘柄を対象にしたクレジット市場、いわゆるハイイールドの市場というのが存在していないということがあります。格付の高い銘柄のボラティリティが低いというのは万国共通なことでありますので、こういったハイイールドのボラティリティというのは市場全体のボラティリティを上げる一つのトリガーみたいなものになりますので、こういったところの発達というのは、今後期待したいというようなところであるかと思います。

もう一つ、市場的な要因としてアンケートの答えで多かったところが、やはり融資のクレジット・スプレッドの低さがあります。これは、日本だけではなくて各国クレジット・スプレッドが低いということは言われているんですが、やはり絶対水準が低いということで、この結果どういうことがあるかというと、銀行がクレジット・デリバティブを用いてヘッジをすると逆にコストがかかってしまうということになって、ヘッジをするインセンティブが働かないというようなことにつながっています。

次のページに行きますと、二つ目の要因として挙がっていたところとして制度的な要因というのがあります。その一つとして会計のミスマッチの問題というのがございます。これはどういうことかと言いますと、ヘッジ対象となる資産、融資なんですが、こちらは取得原価で評価されるのに対して、ヘッジ手段であるクレジット・デリバティブについては時価評価されるということになると、損益認識のタイミングに時差が生じて、金融機関全体としての経済価値が正しく財務諸表に反映されないというような問題がございます。これも日本に限ったことではないので、グローバルな中で問題意識としてあるものなんですが、海外の金融機関がどのように対応しているかというのを見てみますと、例えば管理会計上は、ヘッジ資産についても時価評価を行って、損益認識のタイミングをあわせたり、アニュアルレポートで注釈を付けたりというようなことが行われているのが見受けられます。

もう一つ、制度的要因として、阻害要因ということではないんですが、インセンティブが働かない理由としては、大口融資規制のメリットがCDSクレジット・デリバティブでヘッジした場合には得られないというようなことが挙がっております。

次のページでは、文化的要因が挙げられております。先ほど、欧米の銀行がどのようにクレジット・デリバティブを使っているかについてロバート・ピッケルの方から話がございましたが、ちょっとそちらにつながってくるのかということで挙げております。日本では、傾向としてやはり貸し出しというのが大変重視されておりまして、また、リレーションシップバンキングがまず大事というのが伝統的にございますため、どうしても適正なクレジット・スプレッドが形成されづらいということが、クレジット・スプレッドが拡大しない間接的な要因としてあるのではないかというふうに思われます。

また、一般的に与信審査を行って貸し出しを行ったものを、その後に個別にリスクを外すということが文化的に余り行われてこなかったというようなことがもう一つあるかと思います。

それから、最後に挙げておりますが、クレジット・デリバティブ自体が非常に新しい商品ではありますが、クレジットリスクを取引して、それによってビジネスをするという感覚というのが、まだ欧米に比べて根付いていないのではないかというようなことが言えるかと思います。

また、こういった点については、バーゼル II の導入や、エコノミーキャピタルの配賦というような考え方が導入され、昨今変貌してきている点であると思いますので、今後変わっていくのではないかというふうに思われます。

最後のページに行きたいと思います。

まず1点目、人材的要因があります。これは一般的に言われていることなんですが、欧米に比較して本邦の市場にはクレジット市場に精通した人材、特にアナリストの方やクォンツ、リスクマネジャーの裾野が限られているのではないかということが言われています。もちろんこれは市場の規模が違いますので鶏と卵のようなことでもあるんですが、やはりどうしても専門家が育ちにくい環境というのは一般的にあるのかなと。特に部署間の異動サイクルというのが早いというのがありますので、どうしても専門家が育ちにくいような環境があるかもしれないということが言われています。

次にその他の要因の1点目として、インフラ整備の遅れが挙げられます。クレジット・デリバティブというのは非常に欧米では伸びが大きくありまして、それがきっかけで取引を行った後にそれを電子的にインターネットなりで処理するといったインフラの整備が進んでおりますが、これは取引量が違うので阻害要因ということではないんですけれども、まだ日本ではそれほど進んでいないというような点があります。

その他の要因の2点目として、エンドユーザーのスタンスがあります。欧米を見ますとエンドユーザーの活発な活動というのは非常に大きな発展に貢献しているんですが、こういった点でどうしてもデリバティブということに対する認識というか、なかなかリスクの高いものという認識が一般的にありますのでどうしても積極的に取引をしづらいというのがあります。

最後の点として、クレジット・デリバティブも含め、店頭デリバティブ取引ではISDAの契約書が使われていますが、これは英文によるものになりますので、どうしても分かりにくいというようなことがあって、これはISDAがこれからやっていかなければいけない点であり、投資家層の広がりのためにもそういった教育活動的なことというのは、ISDAの方でも積極的にやっていきたいと思っている点になります。

私の方からは以上になります。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただ今のプレゼンテーションに関しまして、質疑、自由討論を行いたいと思いますので、ご質問やご意見がございましたら、ご自由に発言していただきたいというふうに思います。

それで、ピッケルさんは途中退席されますが、森田さんは最後までおられますので、森田さんへの質問に関しましては今でもなくて後でもできますので、よろしくお願いします。

それでは、どうぞ。

○藤巻メンバー

プレゼンテーションをお聞きしていると、金利スワップが東京で発展していたときと同じような議論というか、プロセスを踏んでいるのかという気がします。クレジット・デフォルト・スワップ、私やったことないので感覚でしかしゃべれないのですが、確かに原資産がない、実需筋でこれを必要としている人が増えないことにはマーケットが大きくならないのはもちろんなんですけれども、その次に、やっぱりスペキュレーターというか、ディーラーというか、リスクテイカーが出現しないとマーケットは大きくなるわけがないのではないかと思います。金利スワップは東京で取引されるようになってから一時死にました。あれは金利スワップでリスクテイクをする人がいなかったせいだと私は思っています。

今、金利スワップ市場が大きくなってきたのは、銀行、その他機関が金利スワップによってポジションテイクをするようになったからだと思います。先ほどロバート・ピッケルさんがおっしゃったように、欧米ではヘッジファンドが使っている。ヘッジファンドは典型的だと思いますけれども、ヘッジファンドではなくてもリスクテイクをする人間がこのクレジット・デフォルト・スワップを使わなければ、決してこのマーケットは大きくならないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○ピッケル参考人

おっしゃるとおりだと思っております。ISDAとしてやっている活動の一つに啓蒙活動というのがございまして、いろんなマーケットの方と会議を開催させていただいたりして、どういうプロダクトのストラクチャーがあるのか、法的な面ですとかドキュメンテーションの詳細ですとか、お伝え申し上げることによってこのマーケットが伸びることができたと思っております。

啓蒙及び教育活動すると申し上げましても、その受け手側にある程度心の準備ができていないと相通じるものがないということになります。やはりビジネスにはリスクがあるんだと、それでは次の段階としてそのリスクをどうやって管理しようといったような思考の展開がございませんとなかなかうまくいかないというふうに思っております。

金利スワップの場合には、やはり関係当事者が金利リスクがあるんだと、だからその金利スワップを利用してリスク管理をしようといったような心持ちがだんだんと芽生えていたがためにここまで来たというふうに思うんです。ただ、クレジットに関してはまだまだそこまでは来ていないというのが私の印象であります。

○池尾座長

ほかにご意見、ご質問。

○國部メンバー

今のプレゼンテーションの中で銀行のビヘイビアについてのコメントもございましたので、銀行の立場から少しお話をさせていただきますと、今、日本の銀行は、バーゼル II のもとで資産効率、資本効率を上げていく、一方で収益力を向上していくということでやっているわけでございます。その中で、銀行が行った与信につきまして、クレジット・ポートフォリオ・マネジメント、CPMとして資産のヘッジ、それから入れ替え等々を今一生懸命注力してやっているという状況でございます。各大手行は、それぞれ専担部署を設けまして、今そういう動きを積極的に行っているという状況でございます。

ただ、一方でやはりクレジット市場が未発達というところがございまして、我々がそのCPM、クレジット・ポートフォリオ・マネジメントをしようとすると、ローンを売買する、あるいは証券化するということになるわけでございますけれども、これにつきましては後ほどの議論とも絡むと思うんですが、お客様から債権譲渡の承諾をいただかなければならず、これが日本の企業においてはまだ銀行とのリレーションからいただけないケースが多いと。

そうすると、今話題になっておりますクレジット・デフォルト・スワップ、これはサイレントでできますので、これを活用していくということになりますが、これにつきましては、まず日本のクレジット・デフォルト・スワップのマーケットが非常にまだボリュームが少なく、また、対象企業が大企業に限られているという状況があるということと、それから、プレゼンテーションの中にもございましたが、会計上の問題、原資産が取得原価で、それからクレジット・デフォルト・スワップが時価評価されるということでございますので、例えばその債務者の状況が改善をいたしますと、クレジット・デフォルト・スワップの方で損が出て、これがP/Lをヒットするというようなことが生じるため、取引がなかなか拡大していないという状況でございまして、この辺は我々も努力をして市場の拡大等に努めていきたい、それが我々の経営改善につながっていく、という理解をしております。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

ほかに、ご意見、ご質問。

ちょっと私から1点ですけれども、先ほどのリスクテイカーが出てこなければという話がありましたけれども、日本市場におけるクレジットリスクの取り手として、潜在的に候補として考えられる主体というのは具体的にどういうふうな主体が候補として考えうるんでしょうかということですけれども。

○柴田メンバー

欧米で起きたことと同じことが起きるというふうに想定しますと、その第一が保険会社であります。特にクレジット・デフォルト・スワップマーケットが欧米において発展した初期段階においては、レンディングのためのリレーションを持っていない、それから、巨大なポートフォリオをマネーでするだけのインフラがないといった特徴を持つ欧州の保険会社が非常に短期間に、しかも迅速にクレジットへのエクスポージャーを獲得するという目的で参加したことがございます。ですから、やっぱり同じことがあるのではないかと。

それから、もう一つは、供給さえ来れば、日本の投資信託市場であるとか、また年金の資産を運用する人たちの方からもまたニーズが出てくるというふうに考えます。

○池尾座長

いかがでしょうか。

○ピッケル参考人

欧米の経験から見ましても、私もそのとおりだと思います。年金基金ですとか保険会社及びヘッジファンド等が主体になれるのではないかと思っています、リスクテイクとして。

ただ、アクティブにクレジットをトレーディングするということが必要であり、クレジットについて適正な価格がつけられるということも重要であるかと思います。これは、鶏が先か卵が先かの話にもなってしまうんですけれども、マーケット自体が非常に大きく、かつ流動性も高いというのであれば、それだけいいプライシングがつくということも言えるわけですし、それだけ私が申し上げたような機関が十分リスクテイクとして入ってくれるということであり、当該リスクを、もしくはクレジットを見まして割安なのか割高なのか判断もしやすくなるということで、それがまた発端となって活発な売買を呼ぶことができるというふうに思っております。

○藤原メンバー

質問ではなく、本邦市場発展における問題点という点に関して少し付け加えたいと思います。私は、今まで米系、イギリス系、フランス系の金融機関で仕事をしてきましたが、ユニバーサル・バンキングはいろんな面でメリットがあると思ってます。ユニバーサル・バンキングを実施している国の金融機関のほうが、クレジット・デフォルト・スワップといったリスクマネジメントを必要とする商品に「低い初期投資コスト」で入っていけると思います。理由は証券と銀行の垣根がないので、この種の商品のリスクを一括して管理ができ、日本の金融機関のように二重の資本投資の必要性がないからです。ちょっと話はそれるのですが、自分が以前仕事をしていたフランスの銀行の頭取と話をしていたとき「銀行業務とは何か」について質問をしたときがあります。その時、頭取はリスクに対するリターンを取ることだと答えました。リスクに対するリターンを取るとき、フランスの金融機関の場合、取るリスクは社債でも融資でもかまわないのです。スワップもオプション買いも同じアカウントでできます。顧客の管理は証券と銀行で分かれてないので、私募債もローンも債券発行も1つの顧客口座でできます。日本のように証券と銀行で口座を分ける必要はないのです。大事なことは格付けのいいほうが安く借りれ、格付けが低いとスプレッドが大きくのってくるということです。顧客のリスクを管理する場合でも、債券市場が堅調で融資より低くお金を借りれる場合は、担当者が1人で融資ではなく債券を勧められるわけです。日本の銀行はどんなにリスク管理が優れていても、銀行業務しかできません。また行員も銀行業務の範囲内での金融商品しか扱えません。日本の金融機関は人件費やシステム投資、また人材育成コストにおいても、欧州の銀行に比べ不利だと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、まだあるかもしれませんが、時間的な関係もございますので、一応ISDAからのプレゼンテーションに関する質疑は以上とさせていただきたいと思います。どうもピッケルさん、ありがとうございました。

それでは、次に根本メンバーとみずほ証券の高田さん、柴崎さんからのヒアリングを行いたいと思います。続けてプレゼンテーションしていただきたいと思いますが、まず根本メンバーからお願いしたいと思います。

○根本メンバー

では、本日は日本の社債市場の活性化に向けた課題につきまして、格付業務を通じて日頃考えていることをご説明したいと思います。資料2を使わせていただきます。

2ページ目をご覧いただきますと、本日の説明の要約でございます。金融市場の国際化といいますと、やはりどちらかと言うと株式の時価総額等をフォーカスされることが多いのですが、私は資本市場がバランスのとれた発展を遂げるためには、現在相対的に遅れた状況の社債市場の活性化が重要であると考えております。そのためには、銀行、投資家等、参加者がリスク・リターンを、先ほどもお話が出たんですけれども、リスク・リターンを機軸とした判断をより徹底する必要があるかと思っております。

本日のアジェンダとしまして、第1に日本の社債市場の特徴、第2に活性化を阻害する要因、3番目に市場活性化のメリット、そして、4番目に今後の対応について述べさせていただきます。

それでは、3ページ目をご覧ください。

日本の社債市場の特徴として、諸外国との比較で規模が劣るということがあります。左の表は、日本、米国の社債発行残高のGDP対比を見たものでございますが、日本については米国に比べて規模が小さく、また、金融危機のときに若干増加したわけですが、その後、景気の回復にもかかわらず伸び悩んでいるということが伺われます。また、間接金融主体の韓国、台湾等に比べても、下の表でございますが、GDP対比での規模が小さく、日本の間接金融主体ということが際立っているということがわかります。

次に、4ページ目をご覧ください。

社債市場の特徴の2としまして、流通市場が未発達であり、参加者が売り買いを迅速に価格変動を伴わず行うことが難しいという点があります。売買高については、社債は国債の1%に過ぎません。また、社債市場を見る場合、市場型間接金融と言われるシンジケートローン、債権の流動化、それから、今お話のCDSなども把握する必要があると思います。これについては、他のメンバーがご説明されているので割愛させていただきますが、シンジケートローンなどは非常に伸びているわけですけれども、やはり多様な参加者、どうしてもまだ相対融資の延長というような特徴もあるかと思いまして、多様な参加者の流通市場というのが育っていないという問題がございます。また、CDSも今お話にあった銘柄とか流動性は限られているため、銀行の多額の貸し出しのヘッジとして機能しにくいという問題があるかと思います。

それでは、5ページ目をご覧ください。

社債市場の特徴の3点目としまして、格付に比べてスプレッドが薄く、スプレッドカーブが平坦であるという点があります。左のグラフは、スタンダード&プアーズが格付をしている5年の社債のスプレッドを日本と米国で比較したものでございますが、日本のスプレッドが非常に低いということが見てとれます。投資家の場合、非常にラフに言えばスプレッドが将来の損失と期待収益を満たしているのかということで購入するわけですが、仮にデフォルト率がグローバルに一定に収斂すると仮定しますと、日本の例えば401kbのスプレッドというのは1年後の倒産確率をカバーできていないということになります。こうしたことから、海外の投資家にとって日本の市場はリスクに見合ったリターンをとれないため、投資のみが非常に少ないものになっております。このようにスプレッドがタイト化しているのは、超低金利が続く中で市場の選別機能が低下しているということ、また、基本的に需要が供給を上回っているということがあるかと思います。その需要が上回っている要因の一つとして、公的な機関、郵貯等が、最近は運用対象を社債等に多様化させているといったこともあるかと思います。

また、市場が政府による銀行の支援とか、銀行による企業の支援などを織り込んでいるために、余りリスクに合ったスプレッドを要求していないというようなこともあるかと思います。

6ページ目をご覧ください。

日本の社債市場の第4の特徴としまして、投資適格の発行体が市場の大半を占めており、先ほど森田様のプレゼンテーションにもあったんですけれども、ハイイールド企業、いわゆるダブルB+以下の企業の起債が非常に少ないということが挙げられます。

左のグラフは、スタンダード&プアーズが格付をしている企業の格付ごとの分布ですが、日本の場合はハイイールドは10%程度でございます。これは他の格付会社の平均でも同じような比率となっております。一方海外では、こうした金利情勢、あるいは投資家のより高いリターンを求める需要もありまして、ハイイールドの発行が増加傾向にあります。

左の下の表でございますが、アメリカにおいては、ハイイールドの発行比率が大変増加している状況です。それから、ここには載せておりませんが、シンジケートローンにおいても格付を付けることがかなり一般的となっているわけですが、その中の3分の2ぐらいがハイイールドのものとなっております。

それでは、7ページ目をご覧ください。

日本でハイイールドに分類されている企業は、現在銀行からの借り入れに依存しているという状況だと思います。最近、中小企業が調達の多様化ということで私募債発行をするケースが増えておりますが、引き受けた銀行が満期まで保有するケースが多いと思います。大体メガバンク1行で2兆円ぐらいの私募債を保有しているのではないかと推定されます。

こうした投資適格に限られるという市場は、リスクの総体的に高い発行体にとって益々市場に出にくいという状況になっているかと思いますし、また、投資家あるいはアナリストといった人たちの分析指標が育たないということになると思います。

一例としまして、アメリカでは、ハイイールドの債券について、デフォルト確率だけではなく、元本の最終的な回収率の見通しをあらわす「リカバリー・レーティング」というのが急速に普及しております。こうした格付は他の市場にも広がっているわけですが、日本では全く普及していないということがあります。

8ページ目をご覧ください。

日本の社債市場の特徴(5)としまして、国際化が遅れているということがあります。図表は日本、アメリカ、イギリスについて、株式、債券の対外投資、対内投資の規模をGDP対比で見たものです。日本では特に債券への対内投資が少ないということがわかります。イギリスの場合ですと、対外投資だけではなくて、同国の市場に流入する資金も大変多額であり、バランスがとれているということがあります。また、下のグラフは、円建て非居住者債、いわゆるサムライ債の発行残高ですが、これも近年低迷しているということがあります。ここには情報開示の壁があるとか、プレミアムがつくとか、そういった問題があるかと思います。

次に、9ページ目をご覧ください。

本日の2番目の論点としまして、このようなデット市場が活性化しない阻害要因は何かという点を挙げてみました。

第1に、デットをオリジネートする銀行の利鞘や信用リスクに対して十分ではないということがあるかと思います。銀行が低利な資金を供給していれば、企業は他の代替手段というのを考える必要はないということは自明かと思います。数年前は、銀行が利鞘改善の目標を立てるというような状況にあったかと思うんですが、最近ではむしろ利鞘が低下傾向にあります。これは今までにもご指摘もあったところですが、預金が貸し出しを上回るというような状況もありますし、競争の厳しさを反映しているということもあります。また、銀行の側で企業に対する融資のシェアとか、残高を重視しているという戦略にも依るかと思います。

第2に、機関投資家の運用手法の遅れがあります。近年改善してはおりますが、やはりリスク・リターンを比較して投資判断を行うというような見方、あるいはポートフォリオ全体をマネージしてリスクを分散化するというような考えは完全には普及していないというふうに言えるかと思います。

例えば、トリプルB以下の社債運用について、対象としない先が多いということも聞いております。その一つの理由としまして、年金積立金管理運用独立行政法人は、社債についていずれかの格付会社からトリプルB以上を取得していることを運用方針としており、それが他の企業年金等にもデファクト・スタンダードとなっているというような面もあるかと思います。

3番目としまして、発行体企業の側で情報開示が消極的だということがあると思います。格付の取得企業というのは全体でも700社にも満たず、余り増えておりませんし、ローンの格付というのも余り取られていません。また、先ほどのお話にもありましたが、債権流動化において、企業の側で情報開示の同意が得られない、あるいは売却の同意が得られないということも制約となっております。その理由としては、格付を取る、あるいはプライシングが明確になることで企業の信用力がはっきりしてしまうということに抵抗が強いということがあるかと思います。また、企業経営者も近年、株式投資家に対しては非常にアピールをされているわけですが、一般債権者へのデットIRというのはあまり浸透していないという状況です。

次に、10ページ目ですが、デット市場の活性化がどのようなメリットをもたらすかということをまとめたものです。大別して投資家、発行体企業、仲介者というグループがあるかと思います。投資家につきまして、まず機関投資家ですが、債券では国債を中心としていたポートフォリオを多様化させて、収益率を高められるというメリットがあります。特に日本の高齢化社会が進む中で、年金、保険といった投資家が負債構造から見て債券というものへの投資を多様化できるというのは非常に全体の経済にとっても大きな意義があることではないかというふうに思われます。

また、個人に関しても、預金、そしてあるいは株式といった若干偏ったバランスシートを持つ方もいるかと思うんですけれども、債券というミドルリスク、ミドルリターンの資産を有することでバランスのとれたポートフォリオを構築できるかと思います。

また、発行体企業にとっては、資金調達の多様化、安定化につながりますし、また、その市場の目というものを通じてガバナンスを向上させることができます。特にハイイールドの市場が発展すれば成長性はある、リスクは高いといった企業にとって調達がより多様化できるというメリットがあります。また、成長力の高いアジアの企業が日本の潤沢な資金を活用できるという点もあります。

仲介者ですが、まず銀行の場合、弊社のグローバルな調査によれば、海外の銀行との比較では、貸し出しの集中リスクがまだ依然として高いという状況にあります、このため、経済が悪化した場合、損失が拡大しやすいと、また、いつかの道を戻るということもないわけではないと思います。しかし、デット市場が流動化することによって、こうした集中リスクを緩和することもできます。また、自己資本比率を改善させるということが可能です。

それから、証券会社にとっては、付加価値の高いビジネスによって収益源も拡大でき、信用力にもプラスとなると思われます。

最後に11ページでございますが、今後の対応策をまとめております。

私は、非常に高い潜在性を持つ日本のデット市場を適正な値付け力、高い流動性、優れたインフラを持つアジアの中核市場に育てる必要があると考えております。そのためには、民間及び官の方でも共通のビジョンを持っていく必要があると思います。また、基本的には銀行、投資家、当局がリスク・リターンを機軸とした判断や行動を徹底させていくということが重要かと思います。

具体的に申し上げますと、銀行につきましては、やはり貸し出しに際して流通市場を見据えた適正なプライシングの適用ということが最も重要かと思います。現在、銀行としても収益性の向上とか効率化というのは図られているわけですが、それが必ずしも現場での評価などに結びついていないという点もあるかと思いますので、業績評価の重点をボリュームから例えば利益率にシフトするといった、そういった転換も必要ではないかと思います。

また、預金に関して、例えば運用する貸し出し、あるいは運用力が伴わない場合は、他の預金をあまりとらない、あるいは他の金融商品などの預かり資産にシフトさせるといったことも効果的ではないかと思います。

それから、投資家につきましては、運用手法の更なる改善、リスク管理の高度化が重要だと思います。これまでにもいろんなご指摘が出ておりましたが、リスク管理のためのシステム、あるいは人材教育などによりリソースを投入するべきだと思いますし、専門性を高めるようなローテーション制度、あるいはリターン向上につながるような報酬制度の見直しなども必要かと思います。

それから、仲介者、銀行、証券などについては、発行体企業に対してぜひ市場の代弁者として情報開示を促すということがあるかと思います。例えば、ローンの流動化にもつながるような情報開示を当初の貸し出しの契約にも入れるとか、そういったようなことが考えられるかと思います。また、ある銀行ではシンジケートローンの際に、発行体企業のIRミーティングなども支援しておりますので、こうしたことも非常にプラスの動きかと思います。

また、投資家の選好度に応じた商品の組成などにも工夫の余地があるかと思います。

それから、以上、リスク・リターンの文化を育てるというのは、主に民間サイドの問題ではあるわけですが、日本において金融機関の行動に非常に強い影響力を持っているのは金融監督当局であられると思いますので、ぜひそれを促すような対応をとっていただければと思います。バーゼル II という環境もございますし、銀行がリスクに対して十分なリターンをとっているのかを検査等でも監督するということも必要ではないでしょうか。それから、銀行には機関投資家という側面もあり、最近オルタナティブなど運用を多様化されているわけですが、こうした多様化の動きを萎縮させるのではなくて、むしろリスクを取る一方、リスク管理をきちんとしているのかということを見ていく、リスク管理の強化を高めるように誘導するということが望ましいかと思います。

また、同時に、日本をアジアの中核市場として育てるための制度設計をぜひ広い視野から立てていただきたいと思います。例えば地方債については、非居住者の利子の非課税措置がとられ、それを契機として海外の投資家が非常に興味を持っているという状況だと思いますが、これを社債にも適用していただければというふうに思います。また、そのほか、決済システムの安定性、会計制度の向上、コーポレートガバナンスなど、市場整備にも継続的に取り組んでいただければと思います。

以上、簡単ではございますが、説明を終わらせていただきます。

○池尾座長

どうも大変ありがとうございました。

それでは、引き続き、高田さん、柴崎さんの方からお願いします。

○高田参考人

みずほ証券の高田でございます。今回はこうした貴重な機会をいただきどうもありがとうございました。

私の方では私と、こちらにおります柴崎の方から20分間近くお時間をいただきましてお話をさせていただければと思います。

今回、クレジット市場ということでクレジット・デリバティブですとか社債市場、もくしは市場型間接金融という形でお話がありました。柴崎も私の方も、もとは銀行に入った身なんですけれども、私もこの90年代以降、銀行の審査部などの立場からクレジットを見て、この10年間は証券会社という市場参加者として見てきました。ちょうど今取り上げられましたクレジット・デリバティブ、それから社債市場に関しましては、我々も問題意識を持って議論してきておりました。ここに証券アナリストジャーナルというのがあるんですが、毎年私もこのメンバーに入っておりまして、ちょうど2年前にローン市場、市場型間接金融を取り上げ、去年はクレジット・デリバティブを、また、今年は資本調達の多様化を取り上げさせて頂きまして、そういう状況の中で、今お話がありましたような制約というようなものもいろいろ議論させていただきました。ただ、我々が持っております実務家としての問題意識から言いますと、確かにそうしたいろんな制約、なかなか伸びづらいという問題もあるんですけれども、どうも単体の議論だけでは済まないファンダメンタルないろんな要因もあるのではないのかというふうにも認識してまいりました。

そういう観点で、こちらの柴崎と一緒に、最近私どもで書かせていただいたのが「金融市場の勝者」という本です。この中の議論を今日は中心としてお話しさせていただこうかと思うんですが、その中心的な議論の中には、バブル崩壊以降の金融市場の変化、中でも銀行を中心とした機能の変化によって、クレジット市場、もしくは単にデットだけではなくてエクイティというものも含めたトータルな調達なり資本市場というものに大きな変化が出てきているのではないかと、そんな問題意識を持っております。我々の問題意識、このバブル崩壊以降の状況というのは、ある面で言えば戦後の第二の財閥解体というような、銀行機能のアンバンドリングという形の中で行われてきたということにあります。そういう状況の中で、国内での第二の財閥解体によって資本家といったリスクテイク主体が不在になってしまった中で秩序、もくしはルールづくりというものにまだ答えが見出せていない部分もあるのではないかと思います。

また、そういうようなアンバンドリング状況の中で生じたこのクレジット市場であるといったことを考えないと、なかなか欧米的な正常な議論というところに行くまでには前提条件が満たされない部分もあるのではないのかと、そんな意識を持たせていただいているということでございます。

こちらのレジュメの1ページ目、2ページ目のところでございますけれども、ちょうどこの1ページ目の図は、今回のこの委員会の第一回のところで使われたというものです。我々もこれを非常に面白いなと思って拝見させていただいていたのですけれども、日本と海外ということでまとめさせていただいたのがこの2ページ目のところです。非常に単純化したものなのですけれども、一言で申し上げれば、日本から海外へは債券、海外から日本へは株というような流れになっています。こうした状況の中で日本のリスクマネーというものがなかなか国内のところで創出できていない、こうした状況というものをどういうふうに考えるのかということ、こうした点も重要なのかというふうに思った次第でございます。

そういう状況というものを考える上での背景、これが3ページ目以降のところで私はここで「銀行解体」なんていう言葉を使わせていただのですが、別にこれは銀行解体というような議論というよりは、金融機能がアンバンドリングしていくというものです。これが90年代以降に起きた実際の姿ではなかったか、また、その前提となりますのは、先ほどリレーションを重視したバンキングという議論もございましたけれども、ある面では戦後、日本の銀行、中でも主力銀行としてのローンのあり方というものが、要はデットもエクイティもある面では資本市場を丸抱えてしていたような状況にあります。よく私どもは、貸し出しの性格が疑似エクイティを帯びているというような議論をしてまいりましたけれども、こうした状況というものがアンバンドリングしていく過程で生じた議論ではなかったのかと思います。これは、バブル崩壊以降の深刻なバランスシート調整が生じる中で起きた現象であったわけなんですけれども、これが4ページ目のところにございますバランスシート調整として事業法人、そして金融機関側両面でのバランスシートの調整と申しましょうか、銀行から言えば、不良債権処理の中で資本にストレスを生じるという姿であったのだろうと思います。

こうした状況というものがマクロ的にどのような形で生じていたのかということの目安といたしまして付けさせていただいたのがこの5ページ目のところの議論でございます。

左側のところ、これは必ずしも自己資本というものではないんですけれども、国民経済計算における正味資産から、資本へのストレス状況というものをある程度の目安として見たもの、これがこちらの左側のところにあるわけでございます。こちらの右側のところにあります資産市場の消失の中で、とりわけ金融機関においてこうした消失度合いが大きかったことが90年代以降の大きな消失の状況ではなかったかと思うわけであります。

また、こうしたバランスシート調整というものの中で、当然のことながら資金の流れというものにも大きな変化がございました。

6ページ目のところでございますが、よく教科書的な議論ではございますけれども、部門別の資金過不足状況を示したものでございます。一般的に私が25年前に銀行に入ったとき、当然銀行というものはここにございます最大の余剰主体である家計からお金をお預かりし、不足セクターである事業法人のところに仲介をするといった金融モデルが当たり前として考えられておりました。しかし、ここにございますように90年代以降大きな転換が生じます。2006年度においては若干の変化はございましたけれども、企業が最大の余剰セクターになってしまっているような状況というものがここ10年近く連続するというような極めて異例な状態が続く中、当然のことながらこうした状況の中でデット市場の縮小というものが続いたわけでございまして、なかなか新たなクレジットというものが出ない中での需要超過と申しましょうか、こうしたものがいろんなところに影響が及んでおりました。

それに加えまして、次の7ページ目のところでございますけれども、ここに非金融法人の財務諸表というものがございます。ここでまずご覧いただきたいのが、真ん中にございます青い丸がついた線でございますけれども、これをいわゆるROAというふうに考えていただくとすれば、バブル崩壊以降低下しておりました企業の収益性はようやく2001年以降改善の途にあるわけでございます。しかしながら、そうした状況の中で調達をしたところへの還元としてデットとエクイティの相対関係というものを、一つの目安としてあらわしたのがこの7ページの図のところでございます。一番上の線がエクイティへの還元、また、一番下の線がデットへの還元というふうにいたしますと、要は株主には還元をしてもデット供給者にはなかなか還元がなされていないような状況のいびつさが生じています。先ほど日本の低スプレッドという議論がございましたけれども、実はこうしたところのマクロ的な状況の中に今の低スプレッドの状況もあるのではないかと思います、そういう面からいきますと、単純に銀行の方でスプレッドを取りたいからというような段階だけでなかなか済まないようなマクロ的な状況というものもあります。またこうした状況というものはこのバブル崩壊以降のデットとエクイティというものの相対関係、バブル崩壊以降のエクイティというようなものが消失してしまった中で生じた姿、こうしたものがとりわけ2000年代以降、極めていびつな形で生じている現象があるということもあるのではないかと思います。しかしながら、こうした状況の中でも着実に市場型間接金融と言われる姿も変化しているのも確かでございます。こうした論点を柴崎の方から多少フォローさせていただければと思います。

○柴崎参考人

みずほ証券の柴崎です。

続きまして、私からはクレジットの市場化について、続いてお話をさせていただきたいと思います。

先ほど7ページ目のところで、高田がデットとエクイティのリターンの乖離といった話をさせていただきましたが、これを少し違った角度から見たものが8ページ目のところになるわけでございます。

これは企業の資金調達の状況を示したものでございますが、ようやく2005年度のところでプラスに転換し、ようやくバランスシートを拡大するという状況になっているわけでございます。しかしながら、これの内訳のところをご覧いただきたいと思いますが、残念ながら借入金の寄与度というのは非常に小さい状況でございます。企業が欲しい資金というのは単純なシニアローンではなくて、場合によってはエクイティ性の資金であったり、またそれ以外のものであったりしているということです。ここでは「エクイティ・市場性」と、こういった言葉をつけさせていただいておりますが、このように企業の資金調達ニーズというのは非常に高度化して複雑になってきているというふうに考えております。

そういった普通のシニアデットだけに資金需要が向かないで、様々な調達をしていきたいと、こういったようなニーズが、結果的には9ページ目にありますように市場化、それから資金調達の多様化の動きに繋がってきています。

ここの右のところには、私どもの造語なんですけれども、市場型間接金融比率をつけさせていただいております。これは企業金融の中で、マーケットでプライシングされているものがどれだけあるかという比率を計算したものでございますが、足元でも2割弱のところ、そして、ここ10年以上右肩上がりに上ってきています。今後もこの動きというのは変わらないというふうに思っておりますし、ここの左のところをご覧いただきますと、これまでデットマーケットが2004年に向けては縮小傾向にあったのが、ようやく実数値で2005年のところからはプラスに転じてきているわけです。デットマーケットが拡大に転換したという変化、これは非常に大きな点なのではないかというふうに思っております。

と申しますのは、先ほどもクレジット市場のスプレッド等々の議論があったわけでございますが、これはあえて申せば、そういうマクロ環境、それからクレジットマーケットが縮小している中で、ある意味では正常でない世界の中で起きてきたものだったのではないかと思います。それがデット市場が拡大に転じつつある中で、今のタイミングというのはそういうクレジットマーケットを正常化していく上で非常に大きな転換点にあると、考えているわけでございます。

再び正常化に向かうクレジットマーケットの中で、私どもは2つの点に注目しています。10ページ目のところでございますが、クレジットマーケットというのは、普通のデットマーケットとエクイティマーケットに分けられます。そして、実は企業のバランスシートというのはデットからエクイティまで非常にシームレスな形でつながれているものだと考えております。その意味では、デットとエクイティというのはそんなに乖離があるという話ではなく、いびつな状況になるということは、これはやはり特殊な状況だというふうに思っているわけでございます。

海外の動きと同じように、日本でもデットとエクイティの2つのマーケットで裁定が働くとすれば、それはここの赤と青の線のちょうど真ん中にありますハイイールドマーケット、そしてその背後にあるM&Aの動き、こういったところが一つの大きな論点になるというふうに思います。

それから、もう一つは、デットマーケットの中でも、先ほどISDAの方々からお話がありましたようにクレジット・デリバティブ、これが原資産と、それからオフバランスの中で相互に依存しながら拡大していく、この2つのバリュードライバーと申しますか、こういったものが拡大していく必要があるのではないかと思っております。

11ページ目のところをご覧いただきたいと思いますが、その2つの点につきまして現状を表したものでございます。

左のところでございますが、これはシンジケートローンと、M&A、ハイイールドのマーケットの金額を示させていただいております。このように、形としてはこれらの市場が同じような方向で相まって大きくなってきています。それから、クレジット・デリバティブ、これも確かにご指摘のとおり海外の動きと比べて小さいですが、伸びという点では高い伸び率を示しておりまして、これはやはりクレジット市場にとって一つ大きな起爆剤になってくるのではないかというふうに思っております。

それから、12ページ目のところでございますが、これは先ほど銀行解体といった話をさせていただいたところでもあります。これをもう少し付け加えますと、やはり金融、日本のファイナンスといったものを考える上では、銀行、保険、証券といった業態だけではなくて、金融と非金融、すなわちノンバンク、もっと言えば事業法人、これとの関係というのも一つの大きな論点になるというふうに思っております。

実際に大企業になりますと、銀行と同じようなファイナンス機能を持っているグループも出てきているということでございますから、そういったものをどう大きくしていくか、そしてこれと従来の金融との競争条件、ステージの議論というのもあるのかと思います。

13ページ目のところでございますが、そういう非金融部分も含めて議論を広げますと、そもそものお金というのはどういう方向性で動いてきて、それがどういうリスク評価になっていくのかといったところが、今後のリスク・リターンの関係も含めて、クレジットマーケットに大きな影響をもたらすのではないかというふうに思っております。

13ページ目のところは、個人マネーの状況を示しております。ご案内の通り、アメリカでは投信、401Kなどを通じてリスクマネーが金融、資本市場に流入しています。そして日本でもようやく2004年度のところから預金が減少に転じて、個人マネーがリスクマネーとして徐々に他の金融商品に流れる状況になってきています。

このように資金調達の状況や個人マネーの流れが変わってくる、こういった中で金融機関のビジネスモデルも変わらざるをえないだろうと思います。

14ページ目の左の図をご覧いただきますと、赤い線が国債の10年金利とオーバーナイトコールレートとの差を示しております。これがいわゆる長短スプレッドと言われているものでございます。それから青い線は金融機関の総資金利鞘を示しているのですが、これら2つが同じような動きをしているということがここからもお分かりいただけるかと思います。これまで日本の金融機関というのは長短スプレッドといった金利リスクを収益の大きな源泉としていたということです。しかしながら、海外の金利の状況を見ましても長短スプレッドが非常に狭くなってきている、そして、日本のマーケットで海外との裁定がどんどん進んでいくということになれば、日本の長短スプレッドも縮んでいくことが考えられます。それであれば、やはりクレジット投資に流れていかざるを得ないというような状況にもあるわけでございます。

15ページ目のところでございますが、そういったような状況の中で、世界に目を移してみると、世界的には非常に流動性が高まってきている、そして、そういった中で海外ではクレジットマーケットが急拡大しています。

16ページ目のところでございますが、左の図には赤い線で日本、それから青い線でアメリカ、緑の線でユーロ圏の社債及び証券化商品の残高、いわゆるマーケット規模をつけさせていただいております。前のページのところでお話させて頂いた過剰流動性でクレジットマーケットが拡大しているというのは、残念ながら日本以外のクレジットマーケットだということでございます。

この背景のひとつには、16ページ目の右にありますように絶対的な成長率、いわゆるマザーマーケットでの成長率、これが大きく違うということがあります。それから17ページ目のところをご覧いただきたいと思いますが、2つ目のポイントとしては、レバレッジのかけ方ではないかというふうに思っております。

ここには金利、クレジット、株式のオフバランスとオンバランスの比率、すなわちどれだけデリバティブでレバレッジをかけているかを時系列で示させていただいております。ここでは急速にクレジットのレバレッジが拡大しているというのがお分かりいただけるかというふうに思っております。これらを踏まえますと、やはり実態経済の動き、加えましてレバレッジをどうとっていくかという、この2つの点で日本のマーケットというのは欧米とは相当大きく違う状況になってしまったといえます。そして、そういったところにある程度収益源を求めていかなければいけないというのが日本の金融機関の置かれた状況なのではないかというふうに思っております。

○高田参考人

最後に若干お話しさせていただこうと思うんですけれども、今申し上げた論点は、日本でもそれなりに市場型間接金融と言われるクレジットの部分は広がってきたのだろうと思います。そういう流れを我々も見極めてきたのですが、しかしながら海外を見ますと、何でこんなに大きくなっているんだろうというくらいの変化が出てきているというのを我々感じております。

そういう状況の中で、例えば18ページ目のところにございますように、当然そうしたところでの舞台で活躍する内外の金融機関のバリューの差というんでしょうか、こうしたものが非常に大きくなってきているというのも我々国内の投資家、もしくは金融機関の者として非常に感じる姿でもございます。確かに不良債権処理を終えて、金融機関の体力も回復してきたわけでありますけれども、収益性というところはこうしたクレジット市場とパラレルになっている部分もあるのではないかというふうに感じる次第でございます。

そういう意味では、最後の20ページ目のところですが、クレジットの問題はまさに金融、もしくはその今回の議論のテーマそのものにあるのではないかと思います。すなわち、銀行がある面では丸抱えしていた姿に大きな変化が生じた中で、もう一つある程度の調整が終わった中での再構成、これをどういうふうにしていくかという点です。それはまさにクレジット市場拡大に向けた金融のイノベーションというのでしょうか、市場型間接金融の担い手として金融の複線化を促す中での投資家の育成という部分もあるんだろうと思います。また一方で、企業側からすれば、統合的な資金ニーズと申しましょうか、すなわちクレジット市場というものは、デットだけではなく、デットもエクイティもシームレスなものでございます。こうしたものを包括して、バランスシート全体のニーズをカバーできる金融システムと申しましょうか、こういう銀行・証券というような壁というようなものだけにとらわれずに、様々な意味での大きな変化というものも必要になってきているのかと思います。

また、そういう点では、金融商品に関しても、非常にシームレスな状況になってきているわけでございまして、そのようなものを取り込む金融商品取引法のような新たな革新も出てまいりました。けれども、そういうものを含めて海外市場との同一競争条件と申しましょうか、こうしたものを取り組むような仕組み、またそれに対応して、我々市場参加者の方のイノベーションと努力というものも必要なのかと感じる次第でございます。

以上でございます。

○池尾座長

大変どうもありがとうございました。

それでは、残された時間は30分ほどに過ぎませんが、本日のプレゼンテーション全体に関連する形でありましたらどのような形でも結構ですので、ご意見、ご質問がございましたらご自由にお願いしたいと思います。

では、江原委員から。

○江原メンバー

私自身は、この社債、公社債市場の活性化でやっぱり一番キーになっているのは流通市場の整備ではないかと思います。もしかしたら、私自身の理解が若干悪かったら許していただきたいんですが、活性化するためには徹底した時価会計の導入というものが必要なのではないかと思います。というのは、公社債を一番多く投資しているのは金融機関でありまして、ここには銀行及び保険会社が主立った対象になるわけですが、あたかも庭の土をほじくって、そこに公社債を入れているようなもので、その間金利がどう動こうと、ないしはクレジットがどういうふうに変動しようと、マチュリティまで持てば値段は変わらないんだという、こういう発想では、出てくるべきものが市場に出てこないということだと思うんです。単純に市場に出すというものが重要ではなく、やっぱりこういう金融機関において明らかに機会コストを払っているんだという、こういう概念がもっと必要なのではないかと思います。

したがって、つい数年前まではBIS絡みでそんなところまで徹底した時価会計の導入をしてしまったらば、自己資本比率的にとても間に合いませんということだったんですが、幸いそこら辺も大分改善してきたところでもあるので、ここで是非とも金融庁の方々がリーダーシップをとって、徹底した時価会計の導入を速やかに導入していただきたいと思います。

○池尾座長

引き続き、柴田メンバー。

○柴田メンバー

本日のプレゼンテーションをいろいろお聞きしまして、やはりこのプレゼンテーションに触れられていないもっと根本的な問題があるというふうにまず感じました。構造問題というふうに言ってもいいのではないかと思います。まず構造問題の第1としては貯蓄の過剰があります。これは地銀さんのバランスシートを見ても、やはり与貸比率の問題があるということで現象面として現われていると思います。物事の根本としてはアジア諸国と共通する貯蓄の過剰があって、大きいテーマとしては、「いかにこの貯蓄を消費ないしは投資へ向けられるか」ということかと思います。

それから、構造問題の第2は、やはり江原委員がおっしゃったとおりで、やはり会計原則の問題があるということです。時価主義、時価会計主義というか、時価会計主義的な要素を導入できるかという命題かと思います。

それから、3番目は、やはり投資家市場の未発達と運用手法の発達不全というものがあります。これを改善するためには、税制を含む改革並びに運用手法の自由化といったものが求められます。ということで、構造問題的にはこの3つが大きいかと思います。他にも要素があるとは思いますが。

概観しますと、いかにクレジット市場を日本において発展させるかという命題ですが、まず、プレイヤーという観点から見ますと、需要家が必要であって、供給者が必要であって、流通業者も必要であって、それを支えるインフラも必要と見えます。この最終需要家は誰かといいますと、保険会社、年金基金、個人、またそれらの資金を運営する一般機関投資家、ヘッジファンド、プライベートエクイティファンドがあります。少なくとも我々ができることは「運用手法を自由化すること」、及びクレジット市場においては「プレイヤーがリスクとリターンを反映したプライシングを行う」ことかと思います。仮にプライシングがリスク・リターンを反映したものである場合には、海外からのクレジットに係る需要も増えてくるということだろうと思います。

供給側の方は事業会社や個人などの借り手です。実は、日本においては事業会社や個人などの借り手の問題ではなく、今現在クレジット資産を所有している銀行さん、この行動パターンをいかに「近代的」なものに変えられるかということがクレジット市場発展のための命題かと思います。近代的という言葉は少しオフェンディングかもしれませんので、言い換えますと、貸し付けをいかにして「保有目的」から「転売目的」へ転換させることができるかということかと思います。これは後ほど少し触れてみたいと思います。

また、流通業者はやはり自然と発生してくると思います。需要家と供給サイドがあれば、仲介業者はでてきます。また仲介業者にとって流通在庫のヘッジのための手段としてのクレジット・デリバティブ市場というのは非常に有用なものでありますし、また、積極的なポジションテイキングを行うという面でも有用なものであります。

また、インフラにつきましては、市場の透明性ということが先ほど根本さんの方からも出たと思いますが、この市場の透明性と公正性の担保が必要であるということで、国際的に通用するディスクロージャーに向けていろいろな努力がなされています。この実行が大事であることと同時に、クレジットに係る種々の統計というものもまた必要になってくるかと思います。

最大の障害となる供給者についての議論でありますが、やはりこの貸し付けをどうすれば「保有目的」から「転売目的」に転換できるかということです。

第一の構造問題、この貯蓄過剰が大きい問題です。

それから2番目は、江原委員からご指摘があったかと思いますが、いかにしてこの貸し付けに時価会計主義的な要素を導入できるかという命題かと思います。会計につきましては、現実に現在は二重原則になってしまっているということで、ローンにつきましては原価主義、ヘッジにつきましては時価主義になっていて、必然的に股裂きにならざるを得ないということかと思います。

少し乱暴な提案かもしれませんけれども、このローンに市場テストを導入できないかというのも一つあるかと思います。例えば、お手持ちのローンの5%を市場で売却することができるかどうかと、そのときの値段というのは一つの市場テストかもしれません。

それから、3つ目は、一連のプレゼンテーションに共通するテーマでありますけれども、金融機関の効率の促進という観点で、「資本効率の促進」というのは大きいテーマかと思います。資本効率につきましては、1つは株式の市場から要求されるROEというものがありますし、もう一つは、自己資本比率に係る規制ということもあります。特に米国のように独自の厳しい自己資本比率規制を行った場合には、転売目的の貸し付けが結果として増えたという事例があります。「資本効率」という視点というのは大事かと思います。

以上でございます。

○池尾座長

どうぞ。

○宇波メンバー

私のところは、たまたま信託銀行ということで2つの立場がございまして、今お話があった銀行という立場で言えば、クレジット市場の発展を阻害しているある一つの要因なのかもしれないのですけれども、もう一方で言いますと、私どもは信託の受託者ということで、流動化型の信託というようなことで金銭債権の信託とかあるいは不動産の流動化を目的とした信託というのがございますけれども、これは非常に伸びており、今年の3月のデータはまだ入っていないんですけれども、恐らく両方合わせて60兆ぐらいになっていると。5年前はこの3分の1ぐらい、20兆ぐらいしかなかったということで言うと非常に足元で増えてきていると。出し手というのは企業が中心だと思うのです。

最初の命題の銀行としてどうしていくかというところは、会計とかいろいろクリアしなきゃいけない問題というのも当然あるのですけれども、私は大きな枠組みの中ではバーゼル II をきちんと進めていく中で、当然我々の行動も変わっていくと思っているのです。バーゼル II の枠組みに沿って自らを変えていかないとそれぞれの金融機関、特に銀行の道というのはかなり厳しいものになっていくと。固有の銀行としてどういう形で生きていくということはまだ提示できるということではないですけれども、大きな枠組みは少しずつ変わっていくのかと。そういう意味では、事業法人的な出し手も、それからローンの出し手である金融機関というものもある程度環境は徐々に整っていくと思います。

私が常に思っておりますのは、一方で取り手ということで先ほどリスクテイクのお話がありましたけれども、保険会社とか、あるいは漠然とした形で年金という言葉でお話が出てくるのですけれども、この点については少し根本メンバーとか、あるいは森田さんにお伺いしたいのですけれども、私どもは一方で年金の運用受託者というような形で運用をいろいろとお手伝いさせていただいている。そうすると、当然、年金基金の投資として、クレジット市場にリスクテイクしていくには一定のパフォーマンス、先ほどまさにおっしゃっていたリスク・リターンのデータというものがきちっと整っていて、一定の投資判断ができるものがないといけないと。欧米でそういったパフォーマンスデータの蓄積がどういった形で速やかに行われていて、投資家のニーズに合っていったのかというような、この辺に関心を持っておりまして、その辺をご教授いただけないかと思います。

○池尾座長

ご事情等おわかりでしょうか。お分かりの範囲でもしお答えいただけることがあればお願いしたいと思いますが、ちょっと難しいですか。

○森田参考人

詳しいところまでお話しできるかどうかわからないんですが、やはり欧米の機関投資家、特に年金を中心とした機関投資家の活動というのは非常にクレジット・デリバティブの市場の伸びに貢献をしておりまして、まずリスク許容度がかなりあると、日本の投資家さんに比べてなのですが、この背景としてはやはりリスク管理のレベルが高いのではないかというのは、想像になってしまうんですけれどもあるかと思います。あともう一つは、ロバート・ピッケルの方からも話がありましたが、日本に比較してインデックスの取引というのは非常に増えてきていて、今では半分近くインデックス取引が行われているんですが、日本ではまだまだシングルネームのものがメインになっているということで、やはりどうしても個別のものよりもインデックスというのは評価しやすいというのはありますので、そのあたりも一つの理由になっているのではないかというふうに思います。

○根本メンバー

海外の年金基金がどういう運用をしているのか、ちょっと私もプロではないので申しわけないんですが、先ほどちょっと触れたように、格付に関しても単なるデフォルトをあらわすものではなくて、リカバリーをあらわすものとか、いろんなタイプの格付が、例えばディップファイナンスの格付とローンの格付とか多様な格付がありまして、それがもとになってどんな資産も先ほどの話にあるように時価評価ができるというような状況にあるかと思います。そういうものが一つのより進んだリスク管理のベースにあるのかというふうに思います。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○柴田メンバー

手短にご質問について申し上げますけれども、私どもはアメリカでハイイールドのアセットマネジメントの会社を経営しております。そのお客様には米国の州の年金でございますとか、欧米の年金というものがあります。ごく日常のこととして、このハイイールド分野へのアセットアロケーションも行われているということでございます。

それから、スタンダード&プアーズやムーディーズさんが「クレジットつまり格付ごとのデフォルト確率」というものをかなり日常的に発表しています。そのデフォルト確率とプライシングとの関係ということでも多くのレポートも出ています。かなり正確な形で、かつ市場の関係者によってシェアできる形で、情報は提供されているということかと思います。

○池尾座長

そのあたりもかなり循環論的というか、鶏と卵的で、時価評価するんだということになると、そのための材料も必死で集めざるを得ないし、それに対してサービスするようなビジネスも育ってくるということで、だから、そういうサービスが出てくるのが先なのか、とにかく時価評価するんだという、何かしなきゃいけないんだという決意というか、意欲の方が先なのかという、ちょっとどちらが本当に先なんだろうという気がいたしますけれども。

○藤原メンバー

ISDAの9ページの資料をみてなぜ2000年以降取引額が急拡大したのかについて考えてみました。私は以前クレジット・デリバティブのポジションを取って仕事をしている人たちと一緒に仕事をしたことがあるのですが、2000年は株価が低迷し、インデックス運用をしているファンドマネジャーたちがネガティブリターンを出していた時期です。一方、アブソルートリターンを目的としたヘッジファンドは、市場が低迷していた2000年以降、デリバティブを使い投資リターンとファンドの獲得額を伸ばしてきてます。だから、この表でも分かるように非常にシャープに右肩上がりをしたのだと思います。2000年以降ヘッジファンドは急拡大していくのですが、法規制などが原因で日本のヘッジファンド市場は未だに小さいです。また、クレジットスワップの市場も他の先進国に比べ小さいです。日本のヘッジファンド市場が今後拡大するとクレジットスワップ市場の取引額が増えることになるのではないかと思います。

○池尾座長

どうぞ。

○佐藤監督局長

森田様のプレゼンテーションの中で、この資料の19ページなんですけれども、日本でクレジット・デリバティブのマーケットがなぜ大きく発展しないかという中の文化的要因の中に、リレーションシップバンキング重視という文化が比較的強くて、貸し出しのスプレッドを拡大しないというのがあるんですが、これは恐らくアンケート調査ですから、森田さんご自身に説明責任があるわけではないと思いますけれども、ここはちょっとどういう意味かなというふうに思いました。

これは恐らく、理念としてのリレバンと、それから現実のリレバンの乖離というところに起因しているのかもしれませんが、理念としてのリレバンは、要するに貸し出し金利のところで値引きをしない、つまり定価販売なんだけれども、そのかわり長期的な取引のコミットメントとか、途中での経営指導とか、ビジネスマッチングのサービスとか、傾いてきたら事業再生を手伝うとか、いわばそういったことを一緒にサービスするということで、そのかわり金利は高めというのが理念としてのリレバンなのですね。

それで、さらに申し上げると、先ほどのカテゴリーの中で、レンド・アンド・ホールドというのがリレーションシップバンキングであるとすれば、その対立概念であるトラングリションズバンキングというのはまさにレンド・アンド・セルですね。CDSはまさにレンド・アンド・ホールをしつつ、信用リスクだけ切り離せるツールですから、そういう意味ではむしろCDSとリレーションシップバンキングというのは、相容れないものというよりは、互いに補完する関係にあるのではないかということで、リレバンとCDS市場の両方の発展を期待する立場からコメントさせていただきたいと思いました。この意味がちょっとよく理解できなかったんですけれども。

○森田参考人

リレーションシップバンキングと言っても、広い意味があると思いますが、ここで言っているのは、融資のクレジット・スプレッドの話が市場的要因のところに出てきたその間接的要因ということで挙げたものです。資本効率を勘案したら貸さないという決断もあるかもしれないけれども、従来のリレーションシップを理由に企業を助けるというような、昔から関係といった部分で適正スプレッドではなくても貸すということがあるのではないかと思われますので、ここで間接的な要因として触れさせていただきました。リレーションシップバンキングとクレデリの関係という意味では、おっしゃるとおり、補完関係にあり、ロバート・ピッケルのプレゼンテーションのところにございますように、リレーションシップを保ちながらヘッジを行うという意味で、クレジット・デリバティブは非常に重要なツールというんでしょうか、手段というふうに考えております。

どうもありがとうございます。

○池尾座長

ここのリレーションシップバンキングというのは、いわゆる総合採算主義みたいな意味で使われているんではないですか。

どうぞ。

○國部メンバー

私が回答しているわけではないのですが、想像するに、今池尾座長がおっしゃられましたように、このリレーションシップを重視して、貸し出しのスプレッドはそう高くせずに、他の為替取引であるとか、他の取引で収益を得て、総合採算を改善するというような意味と、恐らく貸し出しのスプレッドを拡大しようとすると、取引が他の金融機関に行ってしまってリレーションが壊れてしまうというような意味で、回答されているのではないかというふうに思います。

○池尾座長

もう少しだけ時間がありますが、いかがでしょうか、何かご意見、ご質問ございませんでしょうか。

それでは、ちょっと1つ私からお聞きしたいというか、誰にお聞きしたいというわけではないんですけれども、クレジットマーケットということになると、ここでは民間のクレジットの話だけをしていますが、日本の場合の国債ですね。パブリックデットのプレゼンスの異常な大きさみたいなものが、どういう促進要因になっているか阻害要因になっているのかというような論点があるような気がするんですね。それで、貯蓄超過という話もありましたけれども、確かに経常収支は黒字ですから、そういう意味で我が国全体として貯蓄超過国であることは事実ですけれども、民間部分の貯蓄超過は非常に大きく出ているのは、財政赤字というか、政府部門が逆のポジションを取っているということで、日本の政府がきっちりと財政収支をバランスさせられるぐらい増税をすれば民間部門の貯蓄超過はかなり縮小する可能性もあるような気がするんですけれども、それと金利水準に与える影響で、パブリックデットが大きいことによって少なくとも安全利子率については低い方がいいという力が働きやすいと、安全利子率というベースが低くてもクレジットプレミアム自体低くならなきゃならないという理由はないですからちょっと話は別なのかもしれませんけれども、でも何か巨大に発展したというべきなのか、巨大にとにかくプレゼンスとしては大きいパブリックデットの存在というのをちょっとどう考えたらいいのかというのが何か論点としてあるような気がするんですけれども。

○柴田メンバー

この間、マッキンゼーのプレゼンテーションで割と面白いのがありまして、世界中のフィナンシャルストック、金融資産が物凄い勢いで伸びているというので、今大体世界のGDPの3倍ぐらいであると。日本の場合は大体4倍ぐらいでございますけれども、大体あちこちの国で伸びているフィナンシャルストックのかなりの部分が株式であるとか、債券であるとか、そういったものなんですけれども、日本という国はそこで例外として取り扱われていまして、そのフィナンシャルストックの増大の相当部分が実はパブリックデットの増大によるものであるというプレゼンテーションもありましたので、池尾先生のおっしゃるポイントもあるかと思います。

根本的な問題として、それでは「パブリックデットの増加」が「民間セクターのクレジットのクラウディングアウト」に結びついているかというとこれはノーであるということです。これほどたくさんの資金を国が吸収しても、まだまだあり余るだけの金融資産が日本には貯まっているという感じかと思います。

○池尾座長

どうぞ。

○田中メンバー

我が国の金融・資本市場を国際比較するときに、ここにヒッチ(障害)が起きているとか、こういう商品が足りないとか、ここでリスクをとる人がいないというのを個別にいろんな形で取り上げるいというのは別に私は悪い方法だとは思わないのですが、ただ、どこかでしわが寄っているのを下手な仕立屋に任せますと、確かにそこのしわはとるのだけれども別の大きなしわがまたできるんですね。それを繰り返していますと型崩れして着物は着れなくなるというのがあると。だから、下手な仕立屋みたいな話をここでやるのかというのがあるんですね。元々なぜ我々が日本の金融・資本市場をもっと活性化したものにしなければいけないのかという議論に入ったのかというと、それは、これまでの日本の金融システムが20世紀の課題に対して対応するものであって、21世紀の我々が抱えている課題に対応するものになっていないと、組織がそれに対応していないということなんだと思うんです。

端的には、やっぱり1961年と2025年と2つとればいいんではないかと私は思っているのだけれども、国民皆年金になったときに65歳だったわけですね。2025年老人がいっぱい増えたときに85歳になっているわけです。65歳を前提にしたときの年金制度というのは、別にリスクの話をしなくて世代間で少し振ってあげれば老人の面倒は見られるということですから、ある種資金の流れみたいな話を現役世代から退役した人に流すという話だったわけですし、また、そのときは高度成長だったものですから、公的資本が足りないという話ですから、郵貯、特定郵便局をどんどん増やして、そこでデポジットをとって、それを公的な資本形成に回せばいいと、これも資金の流れというのでやってきたわけです。だけど、どうしてもこの2025年、高齢化社会どうやって生きるかということになれば、個々の家計にもう一度元々を考えてもらうと。郵貯ももう一度家計に戻す、家計がもう一度考えて、それを郵便局の窓口を使って配分するかどうかはともかくとして、もう一度家計に戻すということですし、GPIFも、これは独立行政法人で年金を運用しているというのも、もう一度家計に戻すと、家計で取り得る範囲が一体何なのかというのを、戻す中でリスクに対する挑戦の話も出てくるし、ガバナンスを全体として改善しなければいけない、ガバナンスを改善する上において、金融システムもまた大きな効果を持つという話の流れなんだと思うんです。

ですから、ここでこういう金融商品が足りないとか、リスクの取り手がこのマーケットでないとかということを一応チェックする必要はあると思うんですけれども、でもそれは多分全体をよくすることにどうつながっているかを書き切るのはかなり難しい。

たから、根底にあるのはやっぱり今までの金融制度が20世紀の課題に対応した我々の仕組み、だけれどもそれは全然違うんだと。年金の方も本格的な制度改革をしてもらわなければ困るし、郵貯、簡保の話もどこに着地させるかというのはもう一度基本的には家計、郵便局も対家計サービスを通じて自らの行きどころを探ってもらうということではないかというふうに思っているのですが。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

では、ちょっと手短にお願いします。

○高田参考人

先ほどの池尾先生のお話なのですけれども、確かに日本の場合には国債の市場が圧倒的に大きいのが統計を見た上での特徴です。これは従来の経済理論で言えばクラウドアウトしていることに繋がるのだろうと思うのですが、なかなか現実にはそうなっていなかったというのが私どもの認識でございます。公的部門の資金不足が増えているときには、逆に金利が下がっているというような状況もありまして、実務的な認識からしますと、やはり民間の事業法人のところの資金需要の低下というんでしょうか、そこが国債とパラレルというのでしょうか、補完し合っていたような状況ではなかったのかという意識を持っている次第でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、時間が来てしまいましたので、まだまだ議論すべきことはあるかと思いますが、次回以降にさせていただきたいと思います。

それでは、最後に次回の日程につきまして事務局よりご説明をお願いします。

○三井市場課長

それでは、次回、第11回のスタディグループでございます。来週5月16日、水曜日の朝10時から12時の予定でございます。中身でございますけれども、国際金融センターとしての都市インフラ等の物理的な制度インフラ、その他のインフラということに関する有識者からのヒアリングを行うということでございまして、当スタディグループの檀野メンバー、それから、外部有識者として三井不動産の冨川秀二さんからヒアリングを行う予定でございます。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。

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