金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第17回)議事録

日時:平成20年12月4日(木曜日)14時00分~15時58分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻になりましたので、出席のご予定で、まだお見えになっていないメンバーの方もおられますが、ただいまから我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第17回、再開してから2回目だと思いますが、の会合を開催いたします。皆様には、本日はご多用のところをご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

それでは早速ですが、本日の議事に移らせていただきます。いつものことですが、本日の議事も公開で行わせていただいております。

本日は、「上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方について」の第2回目の審議ということになります。それで、前回は上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方につきまして、ヒアリングなども交えて幅広くご審議いただいたわけですが、その中で提起された論点を含めて、3つの論点に整理をさせていただきたいというふうに思っておりまして、1番目が市場におけるエクイティ・ファイナンスやグループ化等をめぐる論点ということです。後でご説明いただく、論点メモのところに出ていると思いますけれども。

それから2番目が、取締役や監査役などのガバナンス機構ですね。内部的なガバナンス機構をめぐる論点、それから3番目が機関投資家による議決権行使や会社と投資家との間の対話の充実など、投資家行動等をめぐる論点という、そういう3つに大別できるのではないかということで、今後、順次議論させていただきたいということで、本日はこのうち1番目の市場におけるエクイティ・ファイナンスやグループ化等をめぐる論点について、ご審議をいただきたいと思います。

それで、上場会社等のコーポレート・ガバナンスをめぐっては、いろいろなところでいろいろな問題関心とか、立場から議論が行われているわけですが、この金融審議会のスタディグループでの議論は、いわば一番包括的な観点から議論をするということになるかと思います。

そういたしましたら、まずは事務局から基本的なご説明をいただいて、それから今いろいろなところでいろいろな形の議論が行われていると申し上げましたが、東京証券取引所でも議論をされておりますので、事務局の説明の後、飛山メンバーからご紹介いただくということでお願いしております。

それでは、事務局から、説明をよろしくお願いします。

○池田市場課長

では最初に、私の方から、本日の論点についてご紹介をさせていただきたいと思います。

お手元に、資料1と資料2を事務局から配付させていただいております。それから、1枚追加で絵を配付させていただいております。その3種類の資料でご説明させていただきたいと思います。

まず、論点メモの資料1をご覧いただきたいと思いますが、初めのところは総括的なことが書いてございますけれども、昨年の12月の市場強化プランでは、内外の投資家が安心して投資できる市場を構築するために、資金調達者自ら、ガバナンスの向上等を通じて説明責任を果たしていくことと併せて、取引所が上場企業のガバナンス水準を向上させるための取り組みを進めていくことが重要だということを記載させていただいております。

東京証券取引所では、2004年に上場会社コーポレート・ガバナンス原則を取りまとめられ、さらに2007年に企業行動規範を策定されております。さらに今、池尾先生からもお話がありましたように、東京証券取引所の上場制度整備懇談会、これは神田先生が座長をされていると理解しておりますけれども、そちらの方で企業行動規範の拡充など、コーポレート・ガバナンスの強化に向けた検討が進められているということでございます。こうしたものをどう評価し、その中で他の市場関係者あるいは市場参加者、さらに行政当局において、どういうことに取り組んでいくべきかということが論点になろうかと思います。

1枚おめくりいただきまして、2ページでございますが、前回のご議論等を踏まえまして、先ほど池尾座長からもお話がありましたように、上場会社のコーポレート・ガバナンスをめぐる論点としては、この上にありますマル1マル2マル3と3つに大別できるのではないかと考えております。1つは市場におけるエクイティ・ファイナンスやグループ化等をめぐる論点、それから2番目にガバナンス機構をめぐる論点、3番目に投資家行動等をめぐる論点ということで、本日は、このうちの1番目の論点を中心にご議論をいただきたいというふうに考えております。

別途1枚追加で配付させていただきました絵がございますが、頭の整理といたしましては、このガバナンスの問題については、上場会社サイドの問題、投資家サイドの問題、それが対峙している市場での問題ということで、大きく括ることができるのではないかと。

かつ、こうしたものについて、具体的に規律づけをしていくといったときに、法制、これは会社法であったり、開示規制などの金商法の領域のものもありますが、そうした法制の問題、それから取引所でのルールの問題、さらに金融庁が監督機関として出している監督指針、あるいは証券業協会なり投資信託協会などの自主規制機関が出しておられる協会のルール、こうしたものでいろいろな形で規律づけがされてきているということかと思います。

今ご紹介がありましたように、上場制度整備懇談会では、この取引所ルールのあり方について検討がされておりまして、この状況については、後ほど飛山専務のほうからご紹介をいただきたいと考えております。

このスタディグループとしましては、こうした領域の問題について、会社法制の問題については、このスタディグループの取りまとめに際しましてどういったところまで言及させていただけるかというのは、江原参事官なり岩原先生のお許しをいただいて、どこまでその整理ができるかということはあろうかと思いますけれども、スタディグループでの議論自体につきましては、市場あるいは上場会社等に係るガバナンスの観点から、できるだけ広い構えで議論をいただいていってはどうかと考えているところでございます。

論点メモに戻っていただきまして、2ページからでございます。そういうことで、本日はエクイティ・ファイナンスの問題と、グループ化の問題を中心に論点を整理させていただいておりますが、エクイティ・ファイナンスをめぐる観点としましては、3の(1)として、新株式の発行、それから次の3ページをご覧いただきますと、MSCB等の発行、株式等のキャッシュアウトの問題、主にそういった3つの問題について整理をさせていただいております。

それぞれについて、若干事例をご紹介させていただきたいというふうに思っておりまして、資料2の3ページをご覧いただきたいと思います。

新株式の発行に関して3つほど事例を用意させていただいておりますが、事例1-1のケースをまずご覧いただきたいと思います。このケースは、A社が転換社債型の新株予約権付社債を海外の投資会社Bに第三者割当の形で発行を決議いたしました。この発行株式数は、発行済株式総数の4割弱に相当するという、かなり支配権に影響を及ぼすような大規模なものであったと考えられます。

こうしたものについて、A社の株主は裁判所に対して発行差し止めの仮処分を申し立てたということでございます。論点としては、特に有利な条件ではなかったのか、あるいは著しく不公正な方法であったのではないかということが争われましたけれども、申し立てが却下されたということでございます。

これについては、有利な条件の判断において、コントロールプレミアムのようなものが勘案されていないのではないかといった議論や、支配権をめぐる争いが発生しているという挙証責任を、弱い立場にある少数株主に負わせているのではないかといった議論が出されているということと理解しております。かつ、この事案は、最終的に注のところにありますように、払込期日に払込みがなされずに、発行が中止されてしまったということで、果たして、もともとこの海外投資会社のBの実態はどういうものだったのかという問題が提起される部分があって、柴田委員のご論考では、実体があるかないかが不明なファンドに対する転換社債発行を裁判所が認めた茶番だと記載をされていたかと思います。論点としましては、こうした大規模な第三者割当増資が取締役会決議のみで行われていることをどう考えるか、あるいはそうした割当先あるいは資金使途等についての開示が十分に行われていたのかというような論点があると考えております。

次に6ページですが、2番目の事例として、類似の事例ではありますが、A社が海外投資会社Bに第三者割当増資を決議いたしました。規模としては、発行済株式総数の約10割に及ぶものでありました。このケースも、最終的には第三者割当増資が中止をされております。その過程におきまして、A社は第三者割当増資についての公表内容を自発的に修正するというようなステップもございましたけれども、最終的に増資を中止していると。その際のA社の発表では、取引所から調達資金の具体的使途、割当先の選定理由等に関して、追加開示の要請を受けていたことが公表されておりまして、取引所からの追加開示の要請の中で増資が取りやめられた事例ということが言えるかと思います。

それから、9ページでございます。これは若干論点を異にする事例かと思いますが、A社においては、定時株主総会の2日後に大規模な公募増資が決議され、発行済株式総数の3割強に及ぶものでありました。増資発表後に株価は3割弱急落をしたということで、定時株主総会の直後にこうした発表が行われたということで、裁判で争うという動きもございましたが、下にありますように、直前の株主総会で説明が行われていないということについて、株主への情報提供等の観点からどう考えるかといった問題が提起された事例であると理解しております。

第三者割当増資の関係では、11ページでございますが、先ほど来、取締役会決議でこうした大規模なものが定められたということを申しましたが、法制的にはご案内のとおり、我が国では、有利発行や不公正発行といったケースを別としますと、取締役会決議でこうした大規模なものでも第三者割当増資の実行が可能であります。諸外国を見ますと、ヨーロッパなどは原則株主割当であって、それ以外の場合はそもそも株主総会決議が要るとか、米国の場合でも、支配権の変更につながるような新株発行の場合は、株主総会の承認を求めることが一般的ではないかと理解しているところでございます。

以上を踏まえまして、論点にお戻りいただきまして、2ページでございますけれども、市場におきましては、前回の飛山委員からのご紹介もありましたが、大規模な第三者割当増資というのが、かなり頻発している状況にございます。こうしたことが、取締役会決議のみで行われることについて、どう考えるか。

それから2番目ですけれども、こうした第三者割当増資等における開示の内容、タイミング等についてどう考えるか。さらに、そうしたルールの整備に加えまして、当局や取引所における執行面の強化についてどう考えるか。さらに、一定水準を超える希釈化や問題になる割当先を伴うような第三者割当増資については、取引所が審査を強化していくべきだという指摘があろうかと思いますが、そうしたことについてはどう考えていくか。その際、企業再建などの場合には、こうした第三者割当増資の利用が必要な場合も存在するという議論がございます。このあたりの仕分けをどう考えていくかといった論点があるかと思います。

次にMSCBの関係ですが、これについては資料2に戻っていただきまして、12ページをご覧いただきたいと思います。

事例2-1ですが、このケースでは、A社がMSCB、いわゆる転換価格修正条項付の転換社債を発行しました。MSCBですが、下に若干説明をつけてございますが、この転換社債の転換価格を、発行後のそれぞれの時点での株価の時価をベースに算定し直すという条項がついているということでございます。このケースでは注2にございますように、毎週の時価から10%ディスカウントした価格で、転換価格が修正されるという条項になっていたということでございます。

この割当を受けましたB社は、結果として全額を株式へ転換した。この分量は、発行済株式総数の約3割に相当したということでございます。

ただ、3番目の○にありますように、A社の株価は一連のプロセスの間に、約3割下落を示したということで、注2にありますように、こうしたMSCBが発行された中で、株式への転換、空売り、こうしたものの組み合わせによって、適正な相場形成という流通市場の機能を損なったのではないかというような指摘がございます。

したがいまして、視点としましては、第三者割当増資一般の議論に加えまして、2番目になりますけれども、こうしたMSCBというのは、所有者に転換売却のインセンティブを与えるメカニズムを持っている商品であって、適正な相場形成という観点からは問題があるのではないかという指摘があると理解をしております。

同様の事例が14ページにございます。これはMSワラントという形で出されたものでございますが、このケースではこうしたもので資金調達をした後、当社は民事再生手続を開始したという事例でございます。

さらに、16ページでございます。これはMSCBそのものではありませんけれども、A社はB社に対して、新株予約権付社債を発行いたしましたが、同時にスワップ契約を締結して、A社はB社に対して社債により調達した金銭を引き渡して、B社はA社に対して改めてA社の株価に応じて一定の計算式で計算した額を徐々に引き渡すというスワップ契約が結ばれたということで、A社の株価の次第によっては、B社からA社に実際に引き渡せる額が小さくなるという可能性があるというメカニズムでございました。

この件については、このスワップ契約の締結について適切な開示が行われていなかったのではないかという論点があることに加えまして、A社の株価が下落して、最終的には資金調達が3割強しかできなかったということで、この下の論点の2番目ですけれども、社債権者に株式売却のインセンティブを与えるメカニズムを持っている等の面では、MSCBと極めて類似した経済的性質を持っているということがあろうかと思います。

18ページ及び19ページでございますけれども、MSCBについては、最初の事例が数年前に発生した以降、先ほどのような市場にゆがみを与えかねないという観点から、証券業協会あるいは東京証券取引所で、こうしたMSCBに関する開示の充実、あるいは新株予約権の行使の制限などのルールを定め、実施してきているところでございますけれども、必ずしも先ほどのような視点からのプリンシプルにはなっていないということで、最後のケースなどはMSCBに形式上当たらないがゆえに、ルール上は違反にならないという結果になっていたのではないかと考えられます。

それで、論点の3ページにお戻りいただきたいと思いますが、こうしたMSCBの発行について、株主権利の保護の観点、あるいは2番目にありますように流通市場の機能を損なう面があるのではないかという点、さらに3番目で取引所や証券業協会でルール整備をされてきておりますけれども、経済的にMSCBと類似したスキームが種々あり得る中で、現状、十分なプリンシプルの確立が行われているかといったことが論点になろうかと思います。その他、MSCBをめぐる開示、発行手続についてどう考えていくかということがあろうかと思います。

3番目にキャッシュアウトの関係でございます。事例は、20ページをご覧いただきたいと思います。幾つかのキャッシュアウトの事例を並べておりますが、事例3-1は、A社が10株を1株とするような株式併合を行い、それと組み合わせて、有利発行の条件で大規模な、併合後の発行済株式の約30倍に当たる第三者割当増資を発行することを決議いたしました。この2番目にありますように10株を1株に併合いたしますので、10株未満の株式を保有している人は端株になってしまうわけですけれども、約8割の株主が結果として端株になり、株主としての地位を失うという結果になるということで、取引所では公表措置ということで問題点を指摘したということでございます。

にも関わらず、本件については、その後この会社の定時株主総会で、3分の2以上の議決を持った特別決議で承認され、実行されたということでございます。その間、株価は5割強の下落を示しまして、注にありますように、先ほど申し上げた8割の株主は株主の地位を失うわけですけれども、その際の端株の買い取りの代金は、この下落後の株価を基準とした価格にならざるを得なかったということであります。また、この件については、こうした元株主が端株代金の交付額について争う手段が、法制上、十分存在しないのではないかといった指摘も見られたところでございます。

視点としましては、2番目、3番目にございます。1つは、こうしたキャッシュアウトで株式市場から閉め出されることについて、流通市場の観点からどう考えるかということ。それから、本件は取引所が公表措置を講じたにも関わらず、こうした決議が実行されたということで、会社のいろいろな機構の役割がどう果たされたのかという議論があろうかと思います。

次に21ページですが、同様にキャッシュアウトの事例です。まず、投資ファンドBがA社の公開買付を行い、発行済株式総数の9割強を取得しました。その後、A社は株主総会で発行済普通株式すべてに全部取得条項をつけ、同時に全部取得条項付株式を取得し、これと引きかえに端株株式を交付するという特別決議をしたということでございます。

ちょっと説明が下に加えてありますが、全部取得条項と申しますのは、株主総会の特別決議で、発行会社がその条項がかかります株式の全部を取得できるという内容の株式でございます。普通株式をこうした取得条項付の株式に変えたということでございます。

かつ、2番目の注にありますように、本件では全部取得に当たって、投資ファンドB以外の株主が受領する対価について、その受領する対価が1株未満の端数になるように設計することによって、結果、B以外の株主はキャッシュアウトされる仕組みになっていたということでございます。

本件については、この対価について裁判上の争いがあるということでございます。冒頭で申し上げましたように、本件は公開買付で9割強を取得した上で行われた事例ではありますが、法令上は先ほどありましたように、3分の2以上が取得されていれば、同様な行為は一応可能であるということではないかと理解しております。

資料の23ページに飛んでいただきまして、キャッシュアウトに関して、私どもの理解しているところを整理したものであります。今申し上げたように、日本では原則3分の2以上の賛成でいろいろな形でキャッシュアウトの道があるということかと思いますが、諸外国を見ますと、細かくはご説明いたしませんが、85とか90とか95とか、ルールとしてはもう少し高い水準をベースにキャッシュアウトの要件が定められていることと理解しております。

論点に戻っていただきまして、3ページの下であります。株式併合と新株予約権発行の組み合わせ、あるいは種類株式の活用ということで、上場会社の既存株主がキャッシュアウトを強制されるというケースがある、こうしたことについて、どう考えるかということ。それから、その際の要件としては、原則3分の2の賛成で実現できるということかと思いますが、こうしたことについてはどう考えるか。その他キャッシュアウトをめぐる開示や手続、それから最初のケースでは、取引所が公表措置を講じたにも関わらず、そのまま実行されてしまったということで、取引所のそうした措置の実効性についてどう考えていくかという論点があるかと思います。

すみません、時間が押してまいりましたが、次にグループ化についての論点でございます。24ページにケースが掲げてありますが、A社とB社というのがあって、この間で経営統合の合意が発表されました。これに関して、C社という会社が別途あって、この経営統合の交渉差止めの仮処分申し立て等の争いがあったと。要するに、A社をめぐって、B、Cが競合状態にあったということかと思います。

そうした中でB社は、A社の完全子会社であるD社、これはA社グループの中核会社でありますが、このD社が発行します優先株式を引き受けるという形での資本支援を決定しました。下の注にありますように、その内容としては、重要事項に対する拒否権等のかなり強い効果が付与されていたということでございますが、本件では、D社において株主総会の特別決議が必要になりますが、D社はA社の完全子会社でありますので、株主はA社だけなので、これは100%の賛成で成立をしているということでございます。

したがいまして、下にありますように、こういう重要子会社の買収等について、持株会社の株主が関与することなく実行されてしまうことについて、この上場会社である持株会社の株主の権利保護という観点からどう考えるかという問題が提起されたと理解しております。

25ページは、ちょっと細かく書いてありますが、ポイントはA社を中心とする持株会社グループで、子会社のB社において損失が膨らんでいると見られるという報道があり、そうした中でA社はそうした報道を否定し、その後の業績予想等でも当期純利益の見込みを発表したということでございますが、その後の第3四半期決算あるいは通期の決算でB社の評価損を公表し、その額が次第に拡大したというようなケースでございます。こうした持株会社による企業集団全体のリスク管理、あるいは開示というものについて、持株会社の株主の権利保護という観点から、どう考えていくかという問題が提起されていると理解をしております。

論点の紙にお戻りいただきまして、企業集団におけるガバナンスの1番目でございますけれども、企業のグループ化が進展している中で、コーポレート・ガバナンスに係る原則は企業集団レベルにおいても適切に確保されることが重要だと考えられるわけですが、現状等についてはどう考えるか。それから、子会社が行う重要行為に関する、親会社株主の関与権限は十分と言えるかどうか。それから、子会社の業務執行に関する、親会社役員等による管理の現状をどう評価するか。その上で、子会社の業務執行またはそれに対する管理に関して、親会社株主による監督権限は十分なものと考えられるかどうかといった論点があろうかと思います。

それから、5ページでございます。企業集団の関係については、親子上場の問題が、前回のスタディグループでも提起されていたかと思います。

東証を例にとりますと、全上場企業のうち、親会社が上場している企業の割合が10.8%と、かなりの数の親子上場会社が存在しているということかと思います。この親子上場については、前回もございましたけれども、親会社と上場会社の少数株主の間には潜在的な利益相反関係があって、必ずしも望ましい上場政策とは言えないという指摘が一方であるかと思います。

他方、その親会社が存在して子会社の流通株式が少数株主権であるという場合でも、それを取引したいというニーズがある以上、親子上場自体を否定することは適切ではないのではないかという指摘や、子会社の独立性が確保され株主の平等原則が維持されている限りにおいては、親会社と他の株式の間に利益相反の関係は必ずしも生じないのではないかといった指摘もあると理解しております。以上を踏まえて、親子上場の是非、あるいは親子上場が行われている場合の子会社の独立性確保、あるいは親会社による権限濫用の防止等についてどう考えていくかといったことがあろうかと思います。

その他の論点としまして2つほど書かせていただいています。株式の持合い、これも前回議論がございましたが、株式持合いは90年代以降減少傾向にありましたが、最近になって増加傾向にあるという指摘がある。これについては、会社資本の空洞化、あるいは株主総会による監視機能の形骸化等の指摘があります。

それから、前回飛山委員からのご説明の中にありましたが、今日の資料でも28ページにつけておりますが、エーザイの開示事例についてのご指摘がございました。株式の持合いに関する開示の充実についてどう考えるかといった論点があろうかと思います。

最後に、買収防衛策の関係を書いてございます。買収防衛策などをめぐります細かな議論は、金融審議会でも公開買付制度等ワーキングといった場がありまして、そちらの所掌に属するかと思います。したがいまして、このスタディグループでこの点についての細かな議論は避けるべきかとも思いますけれども、コーポレート・ガバナンスの関連で総論的な論点を整理させていただいております。

上場会社において、買収防衛策を導入している会社数が増加しています。買収防衛策は、株主が買収の是非を判断するための時間、情報、あるいは買収者、被買収者間の交渉機会を確保することを目的としていて、必ずしも発動することが目的ではないという指摘がございますが、現状、我が国では現実に発動されている例もあるというご指摘もあります。こうしたことについてどう評価していくか。

さらに、現実に企業買収等の局面において、自らの経営方針について、株主、投資者に対して説得的な形で説明が行われているかといったことも論点になろうかと思います。その他、こうした上場会社による買収防衛策の導入・発動についてどう考えるかといったことが論点になろうかと思います。

すみません、予定の時間をちょっと超過しましたが、よろしくお願いいたします。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして東京証券取引所の飛山メンバーから、ただいまの事務局からの説明に関連して、上場制度整備懇談会での検討状況について、ご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○飛山メンバー

東証の上場制度整備懇談会でも、コーポレート・ガバナンスの議論を行っておりますので、その進捗状況を報告させていただきたいと思います。

2ページ目をご覧いただきたいと思いますが、上場制度整備懇談会といいますのは、東証の上場制度の整備につきまして、多様な利害関係者の意見を踏まえて透明性の高い検討を行うということを目的としまして、2006年9月に設置されたものであります。座長は東京大学の神田先生に、また委員の方々には他方面の方々にお願いをしておりまして、本スタディグループの一部のメンバーの方にもお願いをしているというところであります。

今年のテーマでございますけれども、春頃にいつも重点テーマを定めておりまして、東証では上場会社のコーポレート・ガバナンスの向上というものを、今後の日本の証券市場の健全な発展のために大きな鍵の一つと考えておりまして、2008年度の上場制度整備の実行計画におきまして、重点項目として位置づけております。

3ページ目をご覧いただきたいと思います。上場制度整備懇談会におけますコーポレート・ガバナンスの向上に向けました環境整備に関する議論は、先般の投資家アンケートにおきまして投資家から要望が大きかった2つについて優先的に取り組むということにしておりまして、1つ目は投資家が安心して投資できる環境の整備、それから2つ目は会社と上場会社との対話の促進とその環境の整備について、現在議論をしているところであります。

4ページ目をご覧いただきたいと思います。投資家が投資をする上で、その投資の安心を脅かすものとして認識されている事項は、投資家としての権利が尊重されていない場合、これは突然自分の持っている権利が縮減される場合などが該当します。それから自由に売買できる機会が会社の意思で奪われてしまうというような場合、自ら投資判断をするための十分な情報が提供されていないという場合に、投資家はその投資の安心を脅かすものとして考えているということであります。

これらの状況は、具体的には主にそこにあります第三者割当、株式併合、MSCB、買収防衛策、MBOに表れておりまして、現在これらの問題の対応策について、集中的に議論しているところであります。

5ページをおめくりいただきたいと思います。第三者割当でございますけれども、これは先ほど池田課長の問題の指摘と、重複する部分がございますけれどもご容赦いただきたいと思います。

問題意識としましては、まず既存株主の議決権の希釈化を伴うことが挙げられます。過去の株式併合の結果、発行済株式数の4倍以上の授権資本額を持つに至った会社が、これを利用して300%を超える希釈化を行う事例も見られました。実際には10株を1株に併合しまして、発行済の株式数を下げてしまうと。授権枠はそのままでございますので、その枠が随分広がって、その差を利用して第三者割当を行うという事例でございます。

欧米では、金融庁さんの資料にもありましたけれども、一定以上の第三者割当には一定の制限があるとか、株主割当が原則でありますし、そうしたことから日本の第三者割当は外国の投資家から見ますと非常に強い批判にさらされているということであります。

先ほど申し上げました議決権の大幅な希釈化が行われる例では、経営陣が恣意的に大株主を選択するということが結果としてできますことや、それから反社会的勢力との関係を持つような第三者割当など、第三者割当の結果、上場適格性があるとは到底言えないような会社に変わってしまうということなども、問題意識の一つとして挙げられております。

東証では、上場会社の企業行動規範としまして、流通市場の機能及び株主の権利の尊重義務というものを定めてはいるわけでございますけれども、これは総則規定のようなものでございまして、これに基づく措置というものは予定されておりませんので、効果的に度の過ぎた第三者割当を抑制するということが難しい状況となっております。

今年の10月に、大幅な希釈化を伴う第三者割当を行おうとした事例があったわけですけれども、その場合でも上場会社に直接措置をするということはできなかったために、やむを得ず全上場会社に通知を出すという形で、株主の持分割合の著しい希薄化を伴うエクイティ・ファイナンスは、仮に法令に違反するものでないとしても、株主の権利を損なうおそれがあるものであることから強く憂慮しているということを表明するとともに、流通市場の機能及び株主の権利について、十分ご配慮いただくということをお願いしたものであります。

結果として、この第三者割当はなされませんでしたので、そういうことは起こらなかったということでございます。

上場制度整備懇談会では、こういった問題に対してどのような対応ができるかと検討を開始しておりまして、その中で出た意見が、5ページの下のほうに書いております懇談会における意見というものであります。

まず、第三者割当は必ず議決権割合の希釈化をもたらすものであることから、上場会社が他の代替手段がないか慎重に検討し、第三者割当を選択するような場合には投資家に十分な説明をする必要があるという意見でありますとか、さらに進んで、大株主に変動がある場合など一定のものについては、何らかの株主の納得性を増すための手続が必要であるという意見。これは、例えば監査役会の意見でございますとか、社外取締役の意見を付してくれというようなことでございます。それから上場適格性を喪失するような悪質な事案につきましては、上場廃止も含めて抑止する手段を検討すべきであるという意見などをいただいております。

具体的な対応でございますけれども、そのレベル感は、投資家へのアカウンタビリティ、説明を十分にすればいいんじゃないかというようなものから、より強い規制、例えば上場廃止まで考えたらどうかという幅のあるものでありますので、今後さらにその検討を進めたいと思っておりますけれども、何らかの対応が必要であるという点では、概ね共通しているというふうに考えております。

なお、規制の方法としましては、一方で第三者割当が機動的な資金調達手段として有用であるということを踏まえますと、各社の事情を考慮せずに数値基準で何%以上を一律規制するとかというようなことは望ましくないというような意見もいただいております。

6ページ目をご覧いただきたいと思います。株式併合ですけれども、例えば株式併合の結果、先ほど池田さんから説明がありましたとおり、8割以上の株主が株主としての地位を奪われましてキャッシュアウトされてしまうというような悪質な事例が見られたわけであります。

少数株主の配慮が著しく欠けているということから、私ども東証としてみますと、何らかの対応をとりたいというところでありますけれども、一方で株主総会の特別決議を得ているということから、どこまで対応をとることができるのか大変難しいところで、頭を悩ませているところであります。現状では、流通市場に混乱をもたらすおそれのある株式併合につきましては、企業行動規範の中で禁止しておりまして、違反行為については、公表措置をとることができることとなっております。実際、昨年この問題が起きたときに、公表措置をとって流通市場から見て望ましいことではないという形で投資家に注意を促したわけでございますけれども、その公表措置を全く会社側は意に介さないということで、さらに有効な措置が必要ではないかというようなご議論をいただいております。

懇談会において出た意見としましては、そこにありますとおりで、合理的な理由なしに多数の株主としての地位を奪うものは市場の信頼性に影響が大きく、株主総会の承認を得ているということを踏まえましても、何らかの手当てが必要ではないかということに集約できるかと思います。具体的には、どのような対応が必要かということは、どこで線引きするかということも含めてレベル感がいろいろありますので、今後の検討事項となりますけれども、やはり形式的な基準等で画一的に指定するというのは、望ましくないという意見をいただいております。

次にMSCB、MBO、買収防衛策の導入・発動についてでありますけれども、これらにつきましては、前回の懇談会では問題点の頭出しにとどまっておりまして、実質的な議論を行っておりませんので、問題意識ですとか、今後の検討事項についてのみ紹介をさせていただきます。

まずは、MSCBの発行についてでありますが、問題意識としましては、既存株主の権利が著しく希薄化されるおそれがあること、さらに、株価下落を誘引しやすいのではないかということであります。現在の東証における規制は、先ほど金融庁さんからもご説明いただいたとおりでありますが、MSCB発行時に尊重すべき事項を企業行動規範として定めておりまして、その違反行為については公表措置をとり得るということが明記されております。

今後の検討事項としましては、企業行動規範違反に対する処分が公表措置では実効性として問題があるのではないかということもありまして、違反に対する措置を再整理するとともに、株主保護の見地から、MSCBの発行時における何らかの株主の納得性を増すための手続の要否について議論していくということになっております。

7ページをご覧いただきたいと思います。MBOでありますが、企業の買収者である経営陣と株主との間で利益相反がありますし、また情報も経営陣に偏在しているために、株主が経済的損失を被りやすいのではないかという問題意識であります。これを規制しようとしましても、会社側は既に上場を取りやめるということを前提にしている企業でありますので、なかなか有効な実効性を持つ規制ができないということで、これらの問題についての対応が難しいという一つの理由となっております。

それから、現状では適時開示義務を除きまして、特段の規則を定めておりませんで、せいぜい再上場してくるときの審査におきまして、市場利用目的の健全性でありますとか投資者保護の観点から、MBO時の諸事情についても確認をするということにとどまっております。今後、株主の納得性を増すための手続の要否でございますとか、株主の利益を著しく害するような問題になるMBOを行った会社の場合の対応策について、検討していきたいと思っております。

それから、買収防衛策につきましては、発動されますと株主が自由に売却できるという市場の大原則が害され、株主への影響が大きいということは問題意識としてあります。東証における規制としましては、適時開示のほか買収防衛策の導入時において尊重すべき事項を企業行動規範に定めておりまして、違反行為については公表措置が明示されております。今後、企業行動規範違反に対する措置の再整理、それから株主の納得性を増すための手続の要否について検討していただくということになっております。

最後に8ページ、その他でございますが、今年の上場制度整備懇談会の議論の対象とはなっておりませんけれども、子会社の上場については昨年から今年にかけて対応をとっておりますので、説明をさせていただきたいと思います。

問題意識としましては、子会社上場は、投資家に新たな投資物件が提供されるなど、一定の意義がある一方で、親会社と子会社との利益相反のほか、中核事業を担う子会社を上場させるような場合には、新規公開に伴いまして利得を二重に得るのではないかという問題点が挙げられます。このような問題意識に基づいて、東証では昨年6月に子会社上場についての考え方を公表しておりまして、子会社上場には一定の意義があることから、一律的に禁止するのは適当でないと考えている反面、必ずしも望ましい資本政策とは言い切れないと考えていることを明らかにしております。併せて、新規に上場を目指す子会社及びその親会社に対しましては、子会社上場の特性を十分に考慮した上で、上場に関する方針を決定することでございますとか、株主の権利や利益への一層の配慮や積極的なアカウンタビリティの遂行について要請しているところであります。

さらに、中核的子会社につきましては、他の取引所とも協力しまして慎重な対応を行うということについて、昨年10月に表明をしております。その他、開示の側面からのアプローチとしまして、支配株主を有する会社につきましては、支配株主との取引を行う際にどのように少数株主を保護するか、その基本方針をコーポレート・ガバナンス報告書の中で開示することを、今年の7月より求めることといたしました。

なお、子会社上場の際には、通常の上場審査の観点に加えまして、親会社からの独立性についても審査を行うこととしておりますし、併せてコーポレート・ガバナンス、開示の適正性の各審査項目においても、親会社との関係について確認しておりますので、新規上場で上場当初は親会社からの独立性は一定程度保たれているというふうに考えております。

しかしながら、あくまでもそれは上場時における審査でありますため、その後、既上場会社に対して開示以外にさらに規制を求める必要があるのか、あるとすれば、どのような対応をとるのが適切かということについては議論の余地があるというふうに考えております。

以上が、上場制度整備懇談会におけます議論の状況などでありますけれども、まだ本格的に議論が始まったばかりでありまして、多くの部分は今後の議論に委ねられております。東証では、今後は事例研究等も進めながら上場制度整備懇談会において、さらなる議論を進めてまいりたいと考えておりますし、その際、このスタディグループでの議論も参考にさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

それでは、残りました時間で自由討議をいたしたいと思いますが、できましたら論点メモ1に沿って議論をさせていただきたいと思います。

それで、本日は市場におけるエクイティ・ファイナンスやグループ化等をめぐる論点ということで、論点メモ1の前半部分の1、2があって、それから3の「エクイティ・ファイナンス等をめぐる論点」というところ、4ページの頭までを前半、あとは4以下の4と5のところを後半とし、一応ちょっとご自由に議論していただきたいとは思いますが、前半と後半に分けてなるべくご意見を出していただきたいというふうに思います。最初、論点メモの1から3あたりのところで、何かご質問を含めてありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ。

○藤巻メンバー

池田課長の事例等で、いつも第三者割当増資と株主の関係、株主総会ではなく取締役決議で行うことをどう考えるかという点についてのコメントなんですけれども、この前もちょっと申し上げたかもしれないんですけれども、日本の取締役会は決して株主の代表になっていないと思うんですね。やっぱりどちらかというと、経営者の代表みたいであって、一方、アメリカの取締役会というのは、株主の代表だと思うんですね。

規定でどうとらえているかはともかくとして、実際問題、アメリカの場合は取締役会自身が株主の代表になっていると思うんです。なぜかといいますと、経営者、会長等は物すごいストックオプションとか、ボーナスも大体、自社株でもらっていて、経営者でありながら、きっと個人株主としては最大の株主だと思うんです。でありますから、取締役会で出す結論というのは、きっと自分の損になるような判断はしないんじゃないかということで、少数株主であっても取締役会の判断をある程度信頼があるんじゃないかなと私は思うんですね。

例えば、この前リーマンもつぶれましたけれども、リーマンの会長が自分の財産はほとんどなくなっちゃったがごとく、彼にとってみると、その取締役会で決めたことを間違えてしまうと自分の財産をなくすことになりますし、それからMSCBの発行にしても自分が大損してまでやるのかなと、そういう判断をするのかなということがあります。ですからアメリカでも日本でも同じように新株発行は取締役会の決議ということであっても、大きい差があるのではないかなと感じています。

これはちょっと話がずれてしまいますけれども、ヘッジファンドでも同じで、ヘッジファンドにお金を入れるかどうかというのは、基本的にはそのマネージャーが自分のお金を入れているかどうかということ、要するに投資家が泣いてマネージャーが笑っているんじゃ困るということで、基本的にヘッジファンドと運命共同体になるところにお金が集まると思っています。今の日本の現状では取締役会は経営者の代表であって、別に株価が下がってもせいぜい首が飛ぶぐらいであって、うまくいけば自分の地位が上がり、その一方で、株主は大損する可能性があるということで、経営者と株主の利害がかなりアメリカの会社と差異があるんじゃないかなと、その辺が割と本質的な大きい問題かなと考えています。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

藤巻メンバーがおっしゃったような違いがあるとして、なのに日本では取締役会決議だけでできるというのは、いかがなものかという。

○藤巻メンバー

それは、結論はそうなんです。

○池尾座長

他にご意見いかがでしょうか。

柴田メンバー。

○柴田メンバー

いわゆる第三者割当のファイナンスという形を見るときに、幾つかのスレショールドがあり得えます。本来は一番高いスレショールドであるべきもの、つまり支配権の移転を伴う場合、ここが日本の場合は自由度が高過ぎる。その下のスレショールドで、例えばいろいろあると思いますけれども、ブロッキング・マイノリティー、つまり3分の1以上のポジションを第三者割当を通じてとること、これもできる。これらの重要なスレショールドを第三者割当という手段で簡単に破ってしまえることは、いかがなものか。やはり国際的な資本主義の原則であるところの「少数株主の保護」という観点から見ますと、株主が持っているコントロールプレミアムというものに相当する経済価値、それが突如奪われてしまうということはおかしい。これについては何らかの法律上の手当て、ないしは上場規則上の手当てが必要なのではないかなという感じがいたします。

取締役会だけで何らかの形の転換社債を出して、その転換社債がすべて株式に転換されると、なぜか株主が知らない間にどこかの会社の子会社になってしまうことがありうる。これはどうも健全とは思えません。

別の観点、透明性とかディスクロージャーの議論ですが、割当先の正体がわからないというのはやはり正常ではありません。割当先、特に新たに支配権を新たに持つような人たちの正体がわからないようなファイナンスがまかり通り得る、これには少し疑問を持たざるを得ないということであります。

こういった場合には、一般的にプライベート・エクイティという投資家が割当先として登場することが多いわけです。そのプライベート・エクイティの投資家というのは、ジェネラルパートナーがいて、リミッテッドパートナーがいてという形式で、このリミッテッドパートナーには、大体が年金基金であるとか、大学のエンダウメントと言われる基金であるとか、ごく例外的にお金持ちの個人が入っているわけですけれども、もともと正体が明らかなる人たちです。

多数の個人が入っているプライベート・エクイティというのもあるにはあるんですが、この場合はフィーダー・ファンドという形できちんとした運用会社がお金をまとめてから、それをまとめてプライベート・エクイティに出資するという仕組みになっています。なぜならば、プライベート・エクイティというのは、10億ドル集めたといっても、10億ドルのコミットメントを集めただけであり、いざ個別の投資を行ったときに初めて、「今般2億ドルの投資をしましたのでコミットメントの2割を出していただきたい」とお願いする仕組になっています。出資コミットメントの履行を求めることをキャピタル・コールといいます。出資コミットメントの履行能力については、年金の投資家ならば信用できるし、また、大学のエンダウメントならばその支払い能力に信頼の念を置くことができるけれども、個人の場合はどうなるかわかりませんので、先にお金を集めておくということです。そういった意味で、このGP、LPそれぞれ信頼できる人中心の仕組みであるわけですから、そこで何かの陰に隠れる必要は全くないわけだと思います。特に何らかのスレショールドを超えるようなボリュームの割当先については、透明性を要求して何ら問題が起きるものではないというふうに思います。

それから、ファイナンスの点につきまして、いつも議論になるところがこのMSCBでございまして、これは大変難しい問題であるということです。どういうことかと申しますと、通常短期間に数百億円ないしは数千億円のエクイティ・ファイナンスが可能な会社は、それを行うだろうということです。また、転換社債を発行して、わずか一週間程度のオファリング期間で全部消化が可能な会社はそれを実行するのだろうと思います。しかし、流通市場における取引のボリュームの関係等々の課題があるときに、短期間には消化できないというようなケースもあります。例を申し上げますと、財務諸表の中のバランスシートの整理がやっと終わって、これから成長へ舵を切るというような企業再生のケース、それから短期間に大きな設備投資を行わないと技術革新の波に遅れてしまうというようなケース。少しリスクが増えるわけですが、この場合にはやはり前向きの意味で、MSCBのようなエクイティの調達の道は残しておかないといけないと思います。

短期に株式を市場が消化するようなエクイティ・ファイナンスでも、MSCBのように株式の消化期間が長期に亘るような場合でも、両者に共通するのは引き受けた人は売却をしたいというインセンティブが働きます。つまりエクイティ・ファイナンスにせよMSCBにせよ、どちらも株価にはマイナスの影響はあり得るということかと思っています。株式売却のインセンティブは、短期エクイティ・ファイナンスにも長期エクイティ・ファイナンスにも共通です。プロの世界で影響が少ないように努力をしているにもかかわらず、影響が出る場合もありますので、難しいとは申しますが、基本的にはいろいろな方策をとって、健全なるファイナンスの形の一つの手段として考えることは重要なのではないかというふうに思います。

例えば、発行株式数の3割をやらせていいのか悪いのか、また10割やらせていいのか悪いのかという議論があると思いますが、これは一律に決めるわけにはいかないという要素が高いかと思います。もちろん経営権の移動を伴わないことが条件となります。すなわち、市場における流動性が高い場合、それからマーケットが本当に壊れていないような場合には、3割5割でも逆に株価が上がることもあるということでありますし、また昨今のように市場全体が下がっているときには、過去の取引高に対してのどの程度の流動性があるという前提に基づいて行った計算が、発行決議後3日たつと変わってきているということもあります。そこを防ぐことは難しいところがありますが、やはり悪用がない限りという条件をつけて、こういったものの道も残しておくのがいいのではないのかなとは考えます。

以上でございます。

○池尾座長

あらゆる手段は、別に手段それ自体が悪さをすることはなく、使う人が悪さをするのであって、どんな手段でも使う人が悪さをしなければいいということにはなるわけです。でも、アビューズされやすい手段、余りに乱用されやすい手段というのはやはり問題かと。

どうぞ。

○江原メンバー

2つの点に関してコメントさせていただきます。1つは、第三者割当の件、あともう一つはスクイーズアウトの件ですね。

第三者割当の件に関しましては、確かに支配権を含む移動というものが急に起きてしまう。これは、一株主としては深刻な問題というのは、私自身もそれは感じます。一方で逆に、たまたま私どもはプライベート・エクイティという業務をやっているわけですが、逆にそういうふうな案件に乗るかもしれないという立場から、ないしはそれを依頼してくる企業の方々の考え方という観点からお話ししますと、非常に多いケースというのは何らかの形で大きな課題を持っている会社のケースでございます。

昨今でも、いろいろな不動産絡みだとか、ないしは金融機関絡みでいろいろそういう話が出ているわけで、じゃ、そういう案件に助け船だということで参加してくれという、こういう話ですよね。我々どもが入らせていただくというときには、新しい株主としての責任もやっぱりあるわけですね。しかしながらコントロール抜きで入っていくのかというと、これは大変躊躇します。ということは、極端な話、その案件は見送りということになるわけですね。では、対象になっている会社にとってそれは好ましいことなのかというと、やっぱり会社の存続というふうなものの選択肢が非常に限られてしまうという、こういう現象が起きるんだと思うんです。

したがって、これは株主保護という観点からすれば、確かにそのマジョリティを一晩にして他の人がとってしまうというのは問題だということは、これは確かにそうではあるものの、やはりきちんとその対象になっている企業が、自分らがそういうことが必要なんだ、またはそういうことが起きてもやむを得ないような状況なんだという、この辺の開示をもっとしなければいけないんではないかなと。これは言うはやすしで、実を言うと、会社側からすればそれをやれば何が起こるかとよくわかっているわけですよね。株価がもっと安くなってしまうということなので、なかなか難しい問題だと思います。

第2点目、これはスクイーズアウト、キャッシュアウトの件ですね。これは明らかに日本においては、法的な処置がきちんとできていないところから来ると思います。私どもも、この端株の制度というのを活用して過去やらせていただいたことがあります。これは、確かに我々の判断では合法だとは思いつつも、はっきり言って邪道だなというのが我々の見解ですね。85%でも90%でも構わないんですが、やっぱりそういうのは明確なガイドラインというものがあれば、もっとまともなやり方というのがあるんではないかなと。

一方で今、日本において何が問題かというと、100株ないしは1,000株を持っている本当の少数の株主の方が、必要以上な権利というものを主張していらっしゃるという、こういう問題なんだと思います。そういう方々を束ねても、多分に10%にいくというのはそう簡単ではないと思うので、私は90%というのが一つのいい数字ではないかなと。そこはもうスパッとルール化していただければ、この端株の問題とかなんとかという手法を使わずに済むんだろうと思います。

○池尾座長

藤原さん。

○藤原メンバー

2点あります。

1点は、新株の発行についてです。新株の発行は取締役会の承認でできるわけですが、金融のグローバル化により時代環境がかなり変化し、取締役会の決定だけでの新株発行は事務局の説明にもあったように悪用しようと思うと悪用できるわけです。それゆえ、ここで大事になってくることは、役員会が悪用しないよう、ディスクロージャーをもっと徹底させることや、新株発行額が大きく、既存の株主の権利を損なう場合は臨時株主総会を義務付けてもいいと思います。

2つ目はMSCBに関してです。国際資本市場で長らくエクイティ・ファイナンスやデッドファイナンスに従事してきた者として、私はこれがなぜ合法的な資金調達手段であるか未だに理解できておりません。理由はMSCBというエクイティ・ファイナンスのストラクチャーが、既存株主の権利を著しく希薄化するだけでなく、MSCBの発行体である企業の株価下落の原因になっているからです。個人的には企業がMSCBを発行することを禁止してもらいたいと思っております。株価が下がり既存株主が損をするスキームは株主の権利を守ってないと思います。繰り返しになりますが、なぜこのようなエクイティ・ファイナンスが許されるのか理解に苦しみます。今までMSCBを発行した企業の発行前と発行後の株価の動きに関してのデータが存在していると思いますが、もしMSCB発行後に株価が上がったデータ、例えば5割株価がMSCB発行後に上昇したといったデータがあるのでしたら、ぜひ見せてもらいたいと思います。金融庁さんにお願いして証券会社とか証券業協会に頼んで出してもらいたいと思っております。エクイティ・ファイナンスを企業にアドバイスしてきたものとして、MSCBはイリーガルな商品だと思います。

繰り返しで申し訳ありませんが、株主の権利が守られていないだけではなくて、こういう金融商品をだしたら、その企業の株価が下がることを、証券会社の人たちは知っていると思います。この資料の中で所有者に転換のインセンティブを与えると書いていますが、MSCBが、証券会社にも主幹事になるインセンティブを与える金融商品だということはこの資料に書かれておりませんので少し付け加えさせてください。証券会社にもインセンティブを与えるという意味は、公募の有価証券に比べMSCBは手数料が高いからです。高MSCBの手数料が3%なのかそれとも5%なのかわかりませんが、MSCBはエクイティによる資金調達でかつ銀行からお金を借りれない、困っている企業がする資金調達なので手数料はかなり高いはずですし、これは証券会社にとっては魅力的な手数料です。MSCBを発行する企業は資金調達に困っているので手数料が高くとも払います。例えばMSCBを300億円発行して資金調達をした場合、手数料が5%なら15億円手数料が証券会社に入ることになります。これは証券会社にとってもインセンティブになります。

だから、MSCBが非難されながら続いてきているのは、発行をお手伝いする証券会社にとっても高い手数料をもらえるというインセンティブがあるから、企業へ勧めてきているのだと思います。

もし可能ならば、MSCBを発行しない形での資金調達のできる資本市場の方が健全だと思いますし、自主規制という言葉が存在するのでしたら、証券会社の方たちに自主規制をしてもらいたいと思います。MSCBに対する私の意見は証券会社の方達とはすごく違うと思いますので、もし反論がございましたらそれを聞いてみたいと思います。

○池尾座長

他にご意見いかがでしょうか。

はい、どうぞ。

○若松メンバー

ガバナンスの向上ということについて、ちょっと意見を言わせていただきたいと思います。

確か、前回のヒアリングで外資の方が、ガバナンスの向上のために日本の上場企業はもっと社外取締役を増やすべきだと、その比率を高めるべきだという議論がかなり強く出されたと思います。私も、うまく社外取締役が機能すれば理論的にはその意見は正しいと思うし、方向性としては、日本の上場企業もそうしていくべきだとは思いますが、現時点では一律にその比率を何か定めるとか、これだけ社外取締役の比率を高めるべきだと、何か一つの基準みたいなのを設けるのは、私は余り得策ではない、それがすぐ結果につながるとは思いません。

ちょっと次元の低い話になるかもしれないですけれども、経営者の方たちと話していると、理論的には、自分はもし社外取締役と言われれば、それは非常に責任を感じて、その企業のことを考えて自分も社外取締役として役立とうと真剣に考えるけれども、日本の社会ははっきり言えば村社会であると。だから、取締役、経営のメンバーに入っている人も、社外取締役に入っている人たちもほぼ、下世話な話、いわゆる朝の朝食会やいろいろなあらゆる場で、何遍も顔を合わせる村社会なんだと。

そんなところでアメリカ式に、では自分が社外取締役になったからといって、取締役会で自分で言うべきだと思っても、そういう意見をそこで言えるかといったら、それは多分1回は格好いいかもしれないけれども、とてもちょっとその後においてはなかなか気まずくなっていくしということで、せいぜいできることとしては自分の感じていることを外の場で企業トップの人に伝えるとか、そういうことしか現実論ではできないんじゃないかというのが、かなり進んだ経営を志向して社外取締役をもっと増やすべきだといろいろなところで発言されている人でさえ、結構本音としてそうおっしゃることが多いです。繰り返しになりますけれども、社外取締役をすぐに増やして、これぐらいの一定の割合に目指していくべきだとか、何らかの基準を今設けるのは、まだちょっと適切ではないと、私は思います。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

今のご指摘の問題も含めて、ガバナンス機構の話は、また回を改めてやることになると思いますけれども、論点としては、先ほど藤原さんおっしゃいましたけれども、株主総会を開いて株主に聞けばいいというのはそうなんだけれども、余り株主サイドとしても常に聞かれても困るという。

だから、取締役会をもう少し株主の代理人として信用できるものに改革するというのも、一つの選択肢としてあるんじゃないかと。直接民主主義でいくか、間接で取締役会を信頼できるものにする改革をするかという選択肢があるというのが論点だと理解しております。

第三者割当に関連して、監視委員会の方からコメントがあるというので、ご発言いただきます。

○佐々木証券取引等監視委員会事務局総務課長

証券取引等監視委員会の総務課長の佐々木です。コーポレート・ガバナンスそのものについて、監視委員会が所管なり摘発するということではございませんけれども、証券市場の不公正取引の観点から何点かコメントをさせていただきたいと思います。

先ほどのご議論にもありましたが、幾つかの第三者割当増資、大幅なダイリューションが起きるもの、あるいは特定の怪しいファンド、あるいは投資事業組合、海外の投資法人などに対する割当、こういう第三者割当増資が直ちにそのものだけで違法ということはまずあり得ないと思いますけれども、そのファイナンスに伴う一連のいろいろな株の動き、これが例えば株価操縦につながっているケース、あるいはインサイダー取引につながっているケース、あるいはそもそもそうしたファイナンスをする企業が、これは結果的にということかもしれませんけれども、粉飾であるというケース。こうした発行市場でのファイナンスそのものは違法ではないにもしても、それが全体として見ますと流通市場での不公正取引の一環として行われているというケースがかなり増えてきているように思います。

我々監視委員会としては、基本的に流通市場での不公正取引を調査し摘発することが使命ですので、こうした発行市場での問題は、怪しいとは思いましても直ちに調査に踏み切るというわけにはなかなかまいりませんが、これは昨年、既に公表しております監視委員会の基本方針の中でも、発行市場、流通市場の両方を俯瞰した監視を強化するということを方針として打ち出しております。

そうした監視の中でも、違法とは申し上げませんけれども、怪しいファイナンスが増えてきていると思います。その怪しいという観点は、いろいろあるかと思うんですけれども、このぺーパーの2ページにもありますとおり、問題のある割当先、特定の投資事業組合、あるいは特定のオフショア金融センター、特定のP.O.Boxであるとか、そういったところに住所を持つファンドに割り当てるファイナンスについては、違法とは申し上げませんけれども、過去の事例を見ましても繰り返し利用されているケースが少なくないと思います。

あるいは、これもよくあるパターンですけれども、ファイナンスを発表した後に破綻する企業、あるいはファイナンスをして調達したはずの資金が、その会社の本業とは関係ない投資、融資という形で流出して、その流出した投資先、融資先が破綻をして翌期に特別損失として計上される。こういうケースの場合には、その投資先、融資先で、またその先なんだろうと思いますけれども、これが反社勢力などとつながっている可能性もかなりあるだろうと、我々は推測していますけれども、そこまでなかなか調査で解明できない部分もございます。

いずれにいたしましても、第三者割当増資、それからMSCBも直ちに違法とは言えないとは思いますけれども、先ほどのお話にもありましたとおり、MSCBを発行するような企業が他に資金調達の手段のない企業であるケースが往々にしてありまして、またその株価の動きを悪用して株価操縦、あるいは全体が偽計のスキームとしてとらえられるような不公正取引、こういうものに全部とは申し上げませんけれども、一部の怪しい第三者割当増資あるいはMSCBが悪用されるケース、これがこの数年間でもかなり増えてきていると認識しております。

○池尾座長

ありがとうございました。

引き続き、前半部分に関して。上村先生どうぞ。

○上村メンバー

3点ほど申し上げておきたいと思うんですけれども、割と原理的なことです。

まず、第三者割当増資については、日本では割当自由の原則と一体のものとして第三者割当増資が過度に強調されたと思いますけれども、なぜ英・独・仏は株主割当で、我々は割当自由なのかということです。基本的に個人と個人のための機関投資家からなっているところは、そういう個人中心の社会の質を維持したいという強い社会的合意があると思います。ですから、そこで第三者割当増資、例えば事業法人向けの第三者割当増資などが自由に行われるということは、彼らが必死でつくってきた社会の性格を変えてしまうということがあるだろうと思います。それから、経済合理的な理由がないという理由ももちろんあるんだろうと思うんです。

ただ、日本の場合は、既に個人が物すごく少ない状況で株主割当増資をやりますと、現在の状況を固定することになるわけですね。ですから私は、やはり基本的には個人と個人のために運用している機関投資家向けの公募原則といいましょうか、それをまず確立するのが先だと思います。その上で、どこか相当程度の段階になったら株主割当というのもあるかもしれませんけれども、今の状況ですと、一方でTOBは強制公開買付ですね。ある意味では、これは個人がどんどん減っていく現象ですよね。他方で、個人が増えていくはずの現象になると第三者割当増資ということですから、市場構造全体から見ても、非常に非競争的な構図になりやすいという形になっていると思います。

ですから、やはり公開会社については基本は公募である。そして、個人と、個人のための機関投資家を増やすということがあって、つまりそちらが増えるということがルートが開いていて、それで強制公開買付が一方であるという、そういうバランスのとれた構造でないと証券市場は成り立たないだろうというふうに基本的に思っております。

そこで次に、第三者割当増資が具体的に認められているということを前提にして考えますと、そこでなされた増資の具体的な発行態様について正しいか正しくないかという話があるわけです。しかしこれを考えるためには、私は2つ目の論点として、会社法の解釈の基本姿勢が変わってこなければいけないし、変わりつつあると思っております。と申しますのは、ついこの間までは自己株の取得も原則禁止ですし、種類株の自由もなかったし、企業再編の自由もなかったし、最低資本金もあったし、そういう世界でやっていたわけですね。そういう世界での解釈の姿勢は、それらが全部が原則ひっくり返りまして、これもやっていいあれもやっていいとなったときには、それは自由の限界はどこか、どこまでが合理的な自由の範囲かを示すのが法律家の責任だと思いますね。あるいは、当局の責任だろうと思います。

ですから、そういう意味では、例えば株式併合であれば、株式併合には理由の説明あるいは合理的な理由の説明が株主総会で求められているわけです。合理的理由があるかどうかを、実質判断ですることについては結構抵抗はあると思いますけれども、そこでは発行自体が違法だと言えるかもしれないわけですね。あるいは、さらに申しますと、これに関する法解釈は、制度が全般的に原則自由になった以上は、大抵の事象に合理的理由の説明を要求すべきだと思います。例えば1万分割があれば、そこに合理的理由がなければ発行自体が違法だと思いますね。そもそも違法目的があると思いますけれども。ですから、そういうふうに法解釈の姿勢を転換しなければいけないというふうに思います。

それから、私はMSCBがそもそも社債なのかがよくわからないのですね。社債という言葉が最後についています。しかし、その前に何とか何とか、これは転換価格修正条項付転換社債型新株予約権付社債というんですね。上にダーッと何かがついていると、何がついていても後ろに社債という言葉さえあれば社債です、というような解釈で始めたのがそもそもどうだったでしょうか。つまり、私の理解では、価格形成の要素が違えば別の有価証券だと思います。ですから、それは政令指定なり、あるいは内閣府令指定という制度があれば、そういうことで確認していかなきゃいけなかったのではないか、その辺がどんなものでも社債とつけば社債ですというやり方でやってきたということにも、かなり問題があったのかなという感じがいたします。

長くなりますからもうこの辺にしておきますけれども、最後に取引所のガバナンスの関係について一言申し上げたいと思います。ガバナンスに関する自主規制のルールについていろいろ苦心して議論していただいているわけで、これは大いに結構なことだと思いますが、それは取引所でもやれる、ではなくて、マーケットを維持するためにはやらなくてはならないという義務と責任の問題だと思います。つまり会社法というものが、有限会社が株式会社であるということになったわけですから、これはある意味では市場の分野を法務省は放棄したと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、そこを株式会社法がやらない以上は、それを取引所と金融庁がやることになるのは当たり前なので、これはもうしょうがないかなと思います。そういう会社法にしてしまったのですから。

ただ、問題は取引所の自主規制の権威が、やはり今の位置づけではかなり低いと思います。これは1つには、従来の金融審の議論では、自主規制は証券取引法の補完であるという位置づけだったと思うんですね。これは、私は非常におかしくて、自主規制の方が重要だというルールは幾らでもあるわけです。例えば、末端の説明義務よりも中枢のプロ同士の価格形成のルールの方が大事だろうというのは当たり前だろうと思いますし、それから適時開示と有価証券報告書では、これはマーケットにとっては適時開示の方が大事に決まっているわけで、有価証券報告書というのは1年に1回、適時開示を集約して残す年鑑ないし年報でしかないわけですから、どちらかどうしてもあきらめろと言ったら有価証券報告書をあきらめるしかないのですね。マーケットを維持していくためにはですね。

それでもあっちは証券取引法、金融商品取引法に書いてある。こっちは取引所のルールだから、こっちの方が低い、そういうことではないのです。この分野の先進国のイギリスでも、証券取引法的な包括的法制は、金融サービス法ができるまではなかったわけですから、みんな自主規制でやっていました。これは法令なんていうレベルの低いものじゃなくて自主規制の方が高いぞという、そういうプライドがあって、ベスト・プラクティスとか、ジェントルマンズ・ルールでやっていたと思うんです。ですから、そういう意味では、自主規制というものの個々のルールの中には、法令より大事なものは幾らでもあるということをまず確認することが必要だと思います。

それから、ガバナンスについても、私は東証がやるべきガバナンスというのはガバナンス一般の話を第一にするところではないように思います。もちろん大いに余力があればやっていただくのは結構なことだと思いますが、しかし東証が守るべき資本市場の機能とか公正な価格形成、情報開示や会計や監査、内部統制、不公正取引の防止等々、これらを確実に実行するために必要なガバナンスというのはこれで、東証として絶対ここまでは要求します、というのがまずあって、その上で余裕があれば、ガバナンス一般の話をされたらいいと思うんですけれども、どうも何となく東証固有のミッションに基づくガバナンスの理論になっていないのではないかという感想を持っております。

それからもう一つ最後に申しますと、やはり証券会社等に対するルールは、東証が持っている金融商品取引法上の目的、ミッションに基づいて命じなければいけないはずだと思いますが、上場契約上のお願いとか上場契約を根拠にするという、そういう理論構成にまだかなりこだわっている印象があります。

それから、投資家も市場のプレーヤーですから、投資家であっても大口投資家などについては、東証がある種の影響を及ぼすことは、私は当たり前だと思うんですね。アメリカの大リーグを見ていましたら、観客だって退場させられていますよね。ですから、やはり市場の秩序を守るために必要であれば、プレーヤーの一つである投資家だって一定の限度では規制の対象足り得るというふうに思いますし、何となく上場契約というもの、契約に基づく義務と責任という発想がどうもあるんじゃないかと。そういう意味では、東証がやっているルールは、私はずっと東証の応援団ですし今でもそのつもりでいるんですが、東証自らが権威を高めるための理論構成に立っていないのではないかという感じを持っています。

勝手なことばかり申しまして、長くなりました。申し訳ございません。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続きご意見いただきたいと思います。もう後半の4、5の部分を含めまして、1から3のところで追加的にご意見があれば、もちろん出していただいて結構です。グループ化等の問題、親子上場とか、それから株式の持合いとか、買収防衛策、その他の論点とかいうふうにするのは、本来はすごく大きいテーマなわけですけれども、最初のご説明にありましたように、この場で詳細に立ち入って議論をするというのは少し目的から外れるという意味で、その他の論点ということになっております。

はい、どうぞ。

○鴇田メンバー

先ほどのエクイティ・ファイナンスに関わるもので若干意見を述べさせていただきます。2ページに記載されている新株の発行、エクイティ・ファイナンス自体の大半は企業の健全な発展のために寄与するわけですが、ここには極めて例外的なといいますか、不法なファイナンスが列挙されている。これに関して言えば、基本的には規制というよりも、いろいろな罰則規定をどういうふうに駆使していくかが重要ではないかと。これは二律背反の問題があって、大変難しい問題だろうと思っておりますが、その中で、一定水準を超える希釈化とか、問題になる割当先云々ということについては、監視委員会の方がおっしゃるように、大変悪意に満ちたものをどうやって排除していくかと、こういうことだと思うんです。一方で、東証の飛山メンバーから、5ページで、第三者割当というのは機動的に資金調達で必要な場面で非常に有用な資金調達、これは当たり前ですが、数値基準などで一律に規制することは好ましくないということですが、やっぱり一定の水準を超えるとか、そういった場合には、確かに実質的に判断することが大事であることは間違いないんですが、ある程度はそういった数値基準みたいなものを入れざるを得ないんではないかと。今その辺の進捗状況はどうなっているのか、ちょっと飛山メンバーさんにお伺いしたいんでございますが。

○池尾座長

では、お願いします。

○飛山メンバー

これは、やっぱり両方の意見が出ていまして、ある程度抑制するためには数値基準を入れて、例えば30とか50とかいろいろあるわけですが、そういう数字を入れたらどうかということと、やはり第三者割当も資金調達の中で今、公募と並んで半分ぐらいの地位を占めておりますので、結構有力な資金調達の手段になっているということから、一律的に数字を置かれて、それを超えるものはだめだというふうになると、やっぱり企業として、先ほど柴田さん言われたとおりで、第三者割当増資が必要な場面もありますので、そこまで制限してしまうのはどうかなという意見と、これは両方出ています。まだ実はどういうふうにまとめていこうかというところまでは議論しておりませんので、今そういう状況になっているということでございます。

○池尾座長

他はいかがでしょうか。

では、先に増井さん。

○増井メンバー

自主規制機関の関係で、先ほど上村メンバーから大変リスクヘッジは立派なものだという、そういうお話をいただきまして大変心強く思っていまして、私どももそう思っているんですけれども、一言だけ日証協の関係でちょっと出ていますMSCBのお話でございますけれども、この中にプリンシプルの確立が十分に行われているかどうかという議論がございます。

ここでの例で、16ページに事例2-3に、要するにMSCBに似て非なるというか、同じようなものだけれどもMSCBじゃないというようなものを発行したという事例がございます。これは私どものMSCBの自主規制ルールができた後、こういったことが起こったということですが、逆に言えば、十分かどうかわかりませんが、それなりの自主規制の効果があるので、こういったある意味では脱法的な動きも出てきているのかなと思っております。私どももこれは基本的にはプリンシプルというのは大事かな、同じような経済的な効果といいますか、機能といいますか、そういったものがあるものについては、これは全部ルールに書き切れませんので、そういった同じようなものについては、やはりやってはいけないというような形にするのがいいんではないかなと、私は個人的には思っております。あるいは、私ども中で今、行動規範委員会という内部の組織をつくって、そこで議論を始めておりますけれども、自主ルールについてはある程度、これはMSCBに限らないかもしれませんけれども、プリンシプルの考え方というのは非常に大事ではないかなと思っております。

○池尾座長

それでは、柴田メンバーお願いします。

○柴田メンバー

飛山メンバーのお話を伺いまして、非常に大切なポイントがありましたので、強調させていただきたいと思います。つまり事業会社の上場後の上場企業としての品質管理という課題です。

証券取引所が、企業の上場時に審査を行う際に、企業にいろいろと約束をさせ、親会社からの独立性についても担保をさせるというご指摘がありました。つまり、上常時には上場会社として必要な品質管理については、かなり注意が払われている。

さてディスクロージャーについて継続開示が大事であるのと同様に、上場企業においても上場会社としての品質の継続的な維持・管理というものも大事です。

しかし、市場の仕組みとして、上場会社としての品質の継続的な維持・管理については、改善の余地があります。たとえば、上場のときは証券会社がある程度の指導を行うし、指導の権限も持っています。この権限の根拠は、証券会社が上場の推薦書を出さなければ企業はそもそも上場ができないというところにあります。問題は上場後にあります。上場後は上場主幹事証券会社は何の権限もない存在になり、またその責任を負うべき能力もそもそもないという現実があります。証券取引所だけが、上場会社の上場会社としての品質管理に責を負い自分だけで戦わなければならない。これは、ポイントとして少し強調しておきたいというのが第1点です。

それから、この場において議論を余り深くする気はないと申し上げましたので短くさせていただきますけれども、買収防衛策についての議論です。日本の場合には重要な特殊性があり、これが根本的な欠陥ではないかと考えています。その根本的な欠陥があるがゆえに、買収防衛策をつくらざるを得ないと感じる経営者の方が日本では多いということだと思います。

具体的には、例えば買収側からしますと、TOBを使うよりも、あるところまでは流通市場で大きな玉を取得してしまった方が楽であるという現実。競争状況になったときも、やはりTOBを掛けた方はあとは何もできない。TOBを掛けていない方にはかなり行動の自由がある。これは、少しおかしいんではないかということです。つまり、TOBという公明正大な手段よりも、裏口からの買収行為の方が戦術として有利になっている。経営者としては公明正大な相手の方が、裏口からの攻撃者よりも防衛戦の相手としてはやり易いわけです。

ですからある一定の数字以上は強制TOBというふうに定めますと、中途半端な買収防衛策はひょっとしたら要らなくなるかもしれない。例え話をいたしますと、自宅の裏庭の出入り口があって、これに鍵がかかっていない。出入り口を開けてもベルも鳴らないというところになりますと、やはり自分の家を守るための仕組みというのは、かなり一生懸命つくりたくなるという一面があるということを申し上げておきたいと思います。原因は公明正大な方法が不利になるという日本の特殊性です。

○池尾座長

藤巻さん。

○藤巻メンバー

会社の防衛策に関しまして、基本的に会社は誰のものかという議論、本質的な問題があって、日本では会社は経営者のものだから防衛策が出てくるし、米国では会社は株主のものだから余りないというふうに理解しています。要するに自分が、会社が株主のものであればひょっとすると買収されることによって高い値段で出口があるわけですから、当然のことながら買収防衛策を否定するということで、これは買収防衛策をアメリカでは必要としないということなんだろうということで、会社は誰のものかという議論からの話かなと思っています。

それから株式の持合い、その他の論点のところなんですけれども、基本的にここの論点に書いてあるように、持合いというのは、私自身は会社資本の空洞化が生じるし、株主総会による監視機能が形骸化すると思っていて、持合いというのは望ましくないと思っていますが、これをどうやって解消するかということは、最終的には時価会計の徹底と、あと経営者の報酬が業績に連動するという、この2つがいずれ進んでいくんだろうと思うんですけれども、それによって持合いがなくなっていくのかなと考えています。

いつもアメリカの話になって恐縮なんですけれども、例えばアメリカの金融機関というのは、株も不動産もほとんど持っていないはずなんですが、それはなぜかと言えば、彼らは業績が上がれば非常に大きい報酬をもらう。その報酬が全く自分の本業でない持合株とか不動産によって、大きいものすごいボーナスがもらえると思っていたのがすっ飛んじゃうなんてことは嫌ですから、そういう意味で本業に関係ない持合株をしないということだと思うんですね。

また時価会計が徹底してくるというのは、持合株の解消のためには非常に重要なキーポイントかなと思います。持合株の株価の上下で会社の収益が大きくぶれるのは嫌なはずですから。つけ加えて言うと、時価会計の徹底というのは、コーポレート・ガバナンスの面でも物すごく重要な要因かと思っています。

○池尾座長

岩原先生、どうもすみませんでした。はい、どうぞ。

○岩原メンバー

今日議論している問題は、極めて難しい根本的な問題で、正直言って発言するのにかなり勇気がいります。本スタディグループは、金融・資本市場の観点からガバナンスについてどのような改善を図る必要があり、またそのために金融庁が所管されている法制の中でどこまでのことができるのかということを検討する場だと理解しております。

そういう前提の上で考えても、論点メモ、あるいは今日いただきました資料に出てきます多くの事例を見ますと、ほとんどが会社法の問題でありまして、会社法がうまく機能していないというところに根本問題があると、私は思っております。

会社法が平成17年に立法されるまでは、さっき上村メンバーからご指摘のありましたように、会社法は原則禁止というか、企業が自分の裁量でできることを、会社債権者あるいは株主保護の観点から弊害をなるべく起こさないようにということで、事前規制の形でかなり狭く限定する立法をしていたわけでありますけれども、平成17年の会社法はそれを言わば180度方向転換しまして、むしろ資本市場その他のマーケットメカニズムを信頼し、かつ経営者を信頼して、経営者が、最大限といいますか、非常に広い裁量権のもとで、あらゆるとまでは言いませんけれども、ほとんどのことができる法制に変えたわけであります。

そのときにモデルになったのは、アメリカ法であります。ただアメリカも、例えば新株発行の権限が取締役会にあって、それについて特に株主総会の権限がアメリカの法律上は規定されていないという意味では、確かにアメリカはそうなっているわけですけれども、これはアメリカが連邦と州に分かれた制度をとっていて、会社法は州の立法権限であるという特殊な事情に由来しています。州はなるべくその会社が自分の州を設立準拠州にしてくれれば税収が入りますから、なるべく経営者に甘い立法をするわけで、race to the bottom と言われていますけれども、各州は競争して経営者に甘い会社法立法をしています。その結果は会社法レベルで見ると大甘の法律になっている。

でも、アメリカ社会全体から見ると、それでは会社への投資家保護の観点から問題があるので、連邦の方で、連邦憲法上も連邦の権限とされている、州際を越えて流通する証券につき規制する連邦証券取引所法に基づいて、取引所の規則やSEC規則等を通じて実質的な会社法的なルールについて一定の枠をはめて投資家保護が図られるようにしている。そういう二元的なシステムをとっているわけですけれども、日本が戦後、昭和25年の商法改正でアメリカ型の会社法を取り入れたときに、会社法については、州法の会社法をモデルにしてそのまま立法して、アメリカにおいて実質的な会社法の重要な部分を形成している連邦証券取引所法に配慮しませんでした。

一方で証券取引法は、確かに一応アメリカの連邦証券取引所法等に基づいた制度を入れましたけれども、その下で日本の証券取引所がNYSEのような形での実質的な自主規制権限を従来発揮してこれたかというと、実際にはそうはなっていない。その一つの例が、上場規則の内容であって、NYSEなどは、ここの資料の中にありますように、原則として株式を20%以上発行する場合、すなわち、支配権に大きな影響を与えるような新株を発行する場合には株主総会の承認を得るようにということを、取引所の規則で決めているわけですけれども、日本はそのような規則は導入しなかった。片方の州法である大甘の会社法だけ導入して、以上のような連邦証券取引所法に基づく証券取引所の規則等は取り入れていないのです。アメリカにおいては、取引所の上場規則等によるいわばマーケットの規律のもと、会社支配権に大きな影響を与えるような新株発行は株主総会のコントロールの下におかれている。しかも、実はその背景には連邦政府の証券取引所法が控えていて、取引所がきちんと権限を行使しない場合には、取引所に対してSECさらには連邦議会が権限を発動するという体制になっています。アメリカにおいては、そのような体制のもとでの取引所の自主規制と申しますか、実は政府に監督された自主規制でありますけれども、それと各州の会社法の両方があわさって全体としてうまく機能するようになっている。ところが日本は、その一部である各州の会社法のルールだけを取り入れてしまって、それがいわば既得権みたいになっている。この第三者割当増資について、少なくとも、いわば支配権が移動するような極端な第三者割当による新株発行については、株主総会で決めるべきだと思います。いわば会社のあり方の基本を決めるわけですから。かつてのソニー・アイワ事件においては、アイワが倍額増資をして、ソニーにその100%増資分を全部引き受けてもらって子会社になりましたが、それをアイワは取締役会の決議だけでやったわけで、それが東京地裁によって適法とされてしまったわけですけれども、そういうように他の会社の支配下に入るというのは、これは会社のあり方の根本を変えるということですから、それをどうして取締役会だけで決めていいのか。しかも、その取締役会のあり方がさっき、藤巻メンバーからご指摘ありましたように、同じ取締役会という名前をとっていても、日本の取締役会とアメリカの Board of Directors は全く実質は違った存在であり、日本の取締役会は株主の利益を必ずしも代表していないことが多いという中で、そういう制度を維持していけばどんな問題が生ずるかというのは、火を見るより明らかです。

従来は、会社法の方が、ガチガチの事前規制だったから、取締役会の権限濫用的なことがそれほど表面化しなかったのが、それが会社法がもう全面自由化の思想のもとに立法され、かつ、日本のマーケットの方も、実質的な自由化が進んで、経営者の意識も変わってきて、法律上可能ならば何でもやってやろうということになってくると、MSCB等、第三者割当増資以外の問題を含め、ここの設例に出てくるような問題は当然出てくるというように思います。

それは、結局そうすると、平成17年会社法の立法の思想、フィロソフィーは、さっき言いましたように会社法はなるべく自由にして、あとはむしろマーケット、つまり資本市場の方に期待しようという思想ですから、そうなると問題が全部このスタディグループというか、金融庁というか、金融審に投げかけられてくることになる。ここで議論されているようなことは、いわば、その後始末を今させられようとしているのではないか。

ですから、私は、これは大変大きい問題に我々は直面していると思います。ただ、一方で確かに資本市場がうまく機能して、証券取引所などがまさにマーケットの力を反映した形で自主規制ルールで規律していけるのであれば、それでいいのかもしれないとも思いますが、まず現状としてそうなっているかということが大問題だと思います。

それともう一つは、では、証券取引所に上場していない会社について、現在のような日本の会社法制をそのまま残していいかというと、これは大問題というか、私は疑問だと思っています。ある意味で、むしろそちらの方がより問題が大きいとも言い得るわけです。そういう中小会社、マーケットの力の働かない会社で、例えば第三者割当増資により、取締役会だけで株主の意思を無視して会社の基本的な組織変更するような行為が行われて良いのか。合併だったら当然株主総会の特別決議が必要なのに、それを経ないで会社の組織の根本を変えるというようなことが行われていいのか。これはやっぱりまずいのではないか、それは中小会社を含めてまずいのではないかというように思います。

そしてまた、その投資家として被害者になるのは、一般投資家だけでなく、企業である投資家も同じです。これは経営者が常に自分の裁量権が大きければいいというものではなくて、会社の経営者の人たちは同時に自分たちも投資家になっているわけでありますから、被害者になりうるわけであります。資料の事例4-1のケース、これはUFJのケースだと思いますけれども、これなんかは明らかに企業も被害者になっているわけでありまして、持株会社の中核子会社の方で大量の新株発行が行われることによって、持株会社の方の株主である企業の人たちも、やはり自分たちの株主としての正当な権利を守る機会を得ないまま、持株会社グループ全体が、実質的に他の企業の支配下に取締役会だけの決定で入ってしまうということが行われているわけです。これは取締役会のあり方の違いもありますが、それを超えた基本的問題があると思っていまして、むしろそもそも会社は誰のものかという問題になる。この問題については、さっき問題提起がありましたけれども、やはり基本は会社は株主のものであるんですね。会社の根本のあり方を変えようというときは、やはり株主の意思に従うべきだと思います。

次の問題は、株主の意思を聞くときのやり方なんですけれども、株主総会の特別決議で株主の意思を聞くということに現在ではなります。ところが、株主総会の特別決議の要件を会社法は物すごく緩くして、海外に比べて特別決議の要件は非常に緩いのですね。さっき株式併合をして、その後、増資をした例や、あるいは、端数株式にしてしまうというレックスの例だとか、いろいろなおもしろい例を挙げていただいておりますが、株式併合したのはモックですかね。これが株主総会の特別決議で通っているわけですね。株式併合というのは、本来株主総会の特別決議を経なければいけないんですけれども、それが通っているところにも問題があるわけで、そもそも株主総会の特別決議を現在のような要件のもとでやらせるという会社法の規律自体が、規律としてちゃんと働いていない。根本的に会社法を見直す必要がある。大甘の会社法をつくっちゃって、その後始末で、むしろ経済界の皆さんを含めて、かえって困る事態になっているのではないかというように思っております。MSCBもそうでして、本当は有利発行の規制が働かなきゃならないのに、有利発行の規制が働くようになっていない。裁判所が有利発行規制等を守らせるうえでちゃんと機能していないというところに根本的な問題があるわけで、それを含めて全面的にこの際、見直していかないと、日本の資本市場は本当に世界から信用されない市場になるというふうに考えております。誤解等により言い過ぎたかもしれません。そのようなことがあればお許しください。

○池尾座長

いえいえ、大変ありがとうございました。

そろそろ時間ですから、ちょっと手短にお願いしますね。

○藤原メンバー

親子上場の件についてですが、かつて資本市場で仕事をしていた人間として、他国にない日本だけの親子上場を許可し続けることは問題があると思っております。個人的にはやはり禁止すべきだと思います。理由は2つあって、この資料でも書かれているように、親子が独立しているといっても、親会社と子会社は独立していない場合が多く、そこには利益相反の問題が存在するからです。2つ目はよくあるケースですが、親の切り出し業務をしている子会社が上場する場合、企業は利潤を2回あることになるからです。親子上場に関しては支持している専門家たちもかなりいると聞いてます。もし委員の先生や事務局の方で、親子上場はオーケーなんだという意見をお持ちの方がおりましたら、意見を聞きたいのですが。

○池尾座長

では、私が答えます。だから、本来的には利益相反の可能性は非常に多いわけですけれども、利益相反の可能性があるにもかかわらず、それに実際投資する投資家がいるという現実があるわけですよね。では、すごくディスカウントして買っているかというと、必ずしもディスカウントしないで買っているということになると、利益相反の可能性はあるものの、むしろ親会社による監督等が効いていることを評価しているとか、そういう可能性が実際の投資行動からいうと推察され得て、一概に否定し切れない現実があるということだと思います。

そろそろ時間なんですが、どうしても追加的なご発言の要望がありましたらあれですが、よろしいでしょうか。

それでは、いろいろとご意見をいただきましたが時間がそろそろ参りましたので、本日の審議は終了とさせていただきたいと思います。当然、引き続き議論をしていくことになりますので、今日は一応これで終了ということです。

最後に、事務局から、日程等についてご連絡をいただきます。

○池田市場課長

次回の日程につきましては、いずれにしましても年明け後の開催になると考えています。現在各メンバーの方の日程を集めさせていただいておりますので、早急に調整の上、追ってご連絡させていただきたいと思います。

議題につきましては、今日の議論に引き続きまして、コーポレート・ガバナンスのあり方をめぐる他の論点についてご議論していただきたいと考えております。それについても、追ってご連絡させていただきます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、これで閉会とさせていただきます。

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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