金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第19回)議事録

日時:平成21年2月10日(火)10時01分~12時00分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻になりましたので、まだ若干ご出席の予定でお見えになっていないメンバーの方もおられますが、ただいまから我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第19回会合を開催いたしたいと思います。皆様には、本日はご多用中のところをご参集頂きまして誠にありがとうございます。

それで、いつものことですが、本日の議事も公開の形で行わせて頂いておりますので、ご報告申し上げておきます。

それでは、早速本日の議事に入らせて頂きます。

本日は、ヒアリングとかゲストはなくて、討議だけを2時間やって頂きたいというふうに思っておりますが、上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方についての第4回目の審議ということになりまして、本日は、機関投資家による議決権行使や会社と投資家との間の対話の充実などの投資家行動等をめぐる論点についてご審議頂きたいというふうに思っておりますが、その前に若干前回からの持ち越しといいますか、前回の補足の審議をお願いしたいと思います。

それで、前回はガバナンス機構をめぐる論点につきまして幅広くご審議頂きました。とりわけ、社外取締役の設置やその独立性等をめぐる論点につきまして、多数ご意見を頂いたところです。

それで、前回も申しましたように、ガバナンス機構についての議論はこれで終わりということではなくて、今日の補足の議論を含めて、あと取りまとめの際にもまた改めてより突っ込んだ議論をさせて頂くことになると思いますが、その都度その都度きちんと整理をしておかないと、また議論が繰り返しになったり重複した議論をすることになると効率的でありませんので、また取りまとめの際に改めて議論をすることもあると思いますが、その際のためにも、今回、前回の議論を事務局に取りまとめて整理をして頂きました。

ただ、その整理の内容は今からご説明頂きますが、確認して頂ければおわかりになるように、いかに意見が分かれているかを整理したという感じでして、決してこの時点で意見の集約を図るために整理をしたということではなくて、あくまでも議論の繰り返し等を避けるために、前回どういう議論をしたかということの確認のために整理をして頂いたということです。

そういうことで、2時間のうち最初30分程度前回の補足の議論をした上で、それで残りは本日のテーマである投資家行動等に関する議論をするというふうな感じで進めさせて頂きたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

それでは、前回の議論の整理につきまして事務局から説明を頂きます。よろしくお願いします。

○池田市場課長

それでは、ただいま座長の方からありました点につきまして、お手元に資料1、資料2というものをお配りさせて頂いております。主にこの資料1の内容についてご説明をさせて頂きたいと思います。

前回の議論、まず1のところで、若干これは制度的な整理ですけれども、我が国におけます上場会社のガバナンス機構の枠組みについて整理をしております。

1番目のところにありますように、委員会設置会社という形態があるわけですけれども、委員会設置会社では執行に対する取締役会による監督機能を適切に発揮すべく、指名委員会・監査委員会・報酬委員会、この3つの委員会が設置されておりまして、各委員会の構成員の過半数は社外取締役であるということが義務づけられているということで、そうした重厚な制度が用意されているわけですけれども、現状において委員会設置会社への移行数は、東証上場会社で全体の2.3%にとどまっているということでございます。

次に、監査役設置会社については、上場会社について言いますと、3名以上の監査役から成る監査役会の設置が求められておりまして、この3名以上の監査役のうち半数以上は社外監査役でなくてはならないということで、最低2名は社外監査役がいらっしゃるということになろうかと思います。

この監査役設置会社について、この監査役の監査というのは、原則、適法性の監査であると。細かく言いますと、著しく不当な業務執行が行われている場合、取締役等の善管注意義務違反ということを構成することから、そうした適法性に加えて、著しく不当の領域についても監査は及び得るという議論もあると承知しておりますけれども、原則、適法性の監査にとどまっている。

それから、前回もございましたけれども、役員の選・解任などを含めました取締役での投票権自体は監査役は有していないということでございます。

そして、前回の議論としまして、上場会社におけるガバナンスについて、より安心感が持てるようにすることが重要だという指摘が多々出されたところかと思います。

2番目は、そうした中で、ガバナンスの強化に向けて考えられる方向性として、論理的にはここに掲げた3つの選択肢が存在するのかと思います。1つは委員会設置会社への移行を進めていくということ、それから監査役の機能を強化していくということ、あるいは社外(独立)取締役の導入を図っていくということが論理的には存在しているのだと思います。

2ページ目ですが、この点について、前回頂いた主な議論を整理させて頂きましたが、これは藤原メンバーからのご指摘だったと思いますけれども、現行の委員会設置会社制度は日本の実態に適わず、移行の促進は困難であるというご指摘があったかと思います。

それから、監査役の機能強化についても取り組んでいく必要があるというご指摘がございましたけれども、同時にそれだけで安心感を得ることができるかは疑問があるというようなご指摘が柴田メンバーその他のメンバーの方からあったと記憶をしております。

そうした中で、社外(独立)取締役の役割等につきまして、その役割に期待するご発言が多くの方からあったところでありますけれども、ここでは柴田メンバーのご発言を代表的なものとして使わせて頂いていますが、社外(独立)取締役には平時における経営者の説明責任の確保、有事においては暴走の防止・安全弁といった役割が期待されるといった指摘があったところであります。

同時に、社外(独立)取締役の導入に関しては幾つかのご指摘を頂きまして、一つは監査役の機能強化ということについても併せて検討する必要があるというご指摘、あるいは八丁地メンバーからは、社外(独立)取締役となり得る人材の確保、あるいは独立性と実効性・専門性とのバランスといったものにも留意する必要があるというご指摘があったかと思います。

それから、さらに仮にこうしたことについて、上場会社に関してルール化をするとした場合のルール化の手法についても若干ご意見を頂きましたけれども、取引所ルールによるべきだというご意見がございました。

一方、会社法の大会社制度の活用を図ることも検討すべきではないかというご指摘もあったかと思います。

以上、前回の議論を座長のご説明に沿った形で整理させて頂いたものであります。

それから、併せましてご紹介させて頂きたいんですが、お手元に島崎メンバーの方からペーパーが提出されております。前回の審議の際に島崎メンバーの方から会計監査人の選任議案、監査報酬の決定について意見の紙を後日提出したいというお話があったものを事務局の方でお預かりをしておりました。

ポイントは島崎メンバーの方からお話し頂いた方がよいかもしれませんが、1のところでは、現在、会計監査人の選任議案の決定あるいは報酬の決定については、取締役がそれを行い、監査役が同意をするという形になっております。

1. の3番目の段落ですが、これらの制度は、会計監査人の選任議案・報酬の決定に当たり、経営上の意思決定と会計監査の独立性を同時に実現するためのものだというご指摘でございます。

それから、2.のところですけれども、監査役は同意権というものを有しているので、牽制になり得るものであると。あるいは、監査役には議案の提出請求権も存在しているというご指摘であり、2番目の段落で、監査人の報酬についても同意権を有しているというご指摘でございます。

3のところは、最後の文章に表れているかと思いますけれども、会計不祥事は、経営者の意識、会計監査人の倫理観の欠如が問題なのであって、選任・報酬の決定権が執行側にあることが原因ではないということが指摘されているかと思います。必要があれば、島崎メンバーの方から補足頂ければと思います。

以上でございます。

○池尾座長

よろしいでしょうか。

○島崎メンバー

今、池田さんから説明して頂いたことで結構だと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、論点メモ(2)-2という形で前回の議論を整理して頂きましたので、といいますか、最初に申し上げましたように、やや議論が分散している状況を整理して頂きましたので、これを最終的にはもう少し取りまとめていかなければいけないわけですが、今日の段階でこの論点メモ(2)-2を踏まえて、追加的あるいは補足的なご意見がございましたら、ぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

はい、どうぞ。

○川端メンバー

論点メモで整理頂いた2ページ目の社外取締役の役割等というところの2つ目の大きな黒丸の部分でございますが、この社外取締役の導入に関して、前回までの議論ですと、この3つ目のチェックの箇所の「仮に、上場会社に関し、社外取締役の設置をルール化するとした場合」というところで表されているのかもしれませんが、ルール化した方が良い、一人でもというご意見と、それからルール化は全く必要ないという意見が出ましたですよね。そのことは私は明示した方が論点としては良いのではないかと思います。

私自身といたしましては、ルール化は必要ないのではないかと思っております。我が国金融・資本市場の国際化という流れからいきますと、統計データを見ましても、それから私どもでも直近の時価総額が非常に高い企業で社外取締役を導入されているところと、されていないところの外国人の持ち株比率等を調べましたが、導入していない企業の方が意外と高いというデータもありまして、その狙いからいって、ルール化ということがそぐわないのではないかという意味で私は必要ないと思っています。そこははっきり書いて頂いた方が良いと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

どうぞ。

○鴇田メンバー

例えば1ページ、全体の国際化の流れの中でコーポレート・ガバナンスの重要性は十分わかるわけでございますが、ガバナンスの機能強化の中で、例えば今現状、上場会社の中でも、中堅中小企業あるいはベンチャー企業と、ここに掲げている内外の機関投資家を対象とするというようなところとはかなり分類して物を見る必要もあるのではないかと。と申しますのは、やっぱり現状コーポレート・ガバナンスに関する報告書の関係を取引所から義務づけられていますし、近時施行されています内部統制報告書の監査法人による監査と、あるいは有価証券報告書にそういった項目も入れるというようなことを含めて、大分浸透してき、コーポレート・ガバナンスについての認識は高まってきているという状況の中で、その負担感もまたかなり大きなものがあると。

ですから、こういった環境下で企業の活性化を図っていくという上で、管理監督機能の必要以上の強化というのがいかがかと。現状の法律でも、十分、例えばここに監査役の機能強化とありますけれども、監査役のスタンスによっては十分機能を発揮し、コーポレート・ガバナンスを発揮できる。逆に、あまりやり過ぎるとそれを牽制する機能がないぐらいな状況。ですから、代表取締役が決めるということによって、本来の発言を抑えているというようなことでのマイナス面はあるにせよ、今の法律なり現行の運用ルールをまず徹底していくということで、今後の状況について必要であれば手当てすると、こういう見方も当然あろうかと思うんですね。

ですから、今の現状では、この監査役の機能強化、あるいは委員会設置会社への移行という点では、事業規模が大きく、対外的にグローバルに展開するようなビッグネームと中堅中小とはかなり位置づけも違うと。この辺についても配慮して頂きたいなと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

藤原メンバー、どうぞ。

○藤原メンバー

2点申し上げたいことがあります。鴇田メンバーが中小とおっしゃいましたが、ガバナンスに関しては、大手と中小に分けるのではなく、上場しているかいないかで分けた方がいいと思います。上場したことにより、色々な株主が株を自由に買えることになるので、上場後の責任の一つとして、社外取締役を入れるというルールがあった方がいいと思います。上場企業の経営陣より、「うちは社外監査役がいるから社外取締役は要らない」という意見をよく聞きますが、おかしな論理だと思います。理由は社外監査役と社外取締役は役割が全く違うからです。社外監査役は経営陣が法令や定款に違反しているかをチェックするのが仕事であり経営には直接タッチしておりません。一方、社外取締役は株主の代理人として客観的な立場で経営判断を行います。それゆえ、社外監査役がいても、社外取締役は必要です。企業が役員会で将来の事業計画について話し合うときは、これは経営に関する話なので、株主の代理人であり、企業の経営や意思決定を関する役割を担う社外取締役の仕事です。実際、株主の代理人である社外取締役が入ることで、議論が活性化します。社外の人間が役員として入ることで透明性の向上も期待されます。私は日本の上場企業は不正が多いと思います。先日も一部上場会社の建設会社の社長が裏金疑惑の件で逮捕されました。この会社には社外監査役はいましたが、社外取締役はいませんでした。日本の上場会社に不正が多いという現状ならば、こういう状況を改善するためには、また透明性を確保していくためには、社外監査役だけではなく社外取締役も任命して、企業の経営や意思決定を株主の代理人として監視していくことは大事だと思います。

それから、2つ目の点ですが、2008年度アメリカのサブプライムが原因で世界同時株安が起こりました。日本は米国と比べ、サブプライムからの痛手をあまり受けていないにも関わらず、日本の株価は40数パーセント下がり、米国や英国の株価は30数パーセントと日本ほどは下がりませんでした。皆様もご存じの通り、東京株式市場の毎日の取引の6割は外国人株主による取引です。彼らの多くは日本の上場企業のガバナンスが遅れていると思っています。また、日本の企業は透明性がないと思っている株主も多いです。サブプライムによる被害が少ない日本株の方が米英以上に売られたのはガバナンスの遅れも原因であるとみている市場関係者もおります。こういう現状を考慮した場合、社外取締役を1人置いておいて日本のガバナンスをもう少しグローバル・スタンダードに近づけることを前向きに検討してもいいのではないかと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

ほか、追加的にガバナンス機構に関わる面に関してご意見ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

じゃ、島崎メンバー。

○島崎メンバー

2ページの1番上「この点について、」というところですが、監査役の機能の強化についても取り組んでいく必要があるというのはそのとおりだと思います。ただし、それだけで安心感を得ることができるかは疑問という意見もあったかと思います。この点について、例えばどういう疑問なのかということでありますが、下に書いているように、社外取締役には説明責任の確保とか暴走の防止・安全弁などの役割を期待するとした場合に、監査役の機能では不十分だということなのでしょうか。あるいは議案の決議権を持っていないことがそういう不安感につながるのか、その辺のところはもう少し明確にする必要があると思うんです。例えば監査役設置会社で社外取締役を入れていない企業においてそういう問題があるのかどうか、もう少し検討してみる必要があると思います。

それから、企業の不祥事について先程お話がありましたが、社外取締役を入れているところが不祥事が少ないのかということですが、恐らくきちっと立証するということは難しいと思うような問題だと思います。なぜ社外取締役を入れるべきなのか、社外監査役に加えて入れる必要があるのかという点を整理してみるべきだと思います。これは先程のコストの問題とか、監査役制度とは何なのかということにもつながってくる話だと思います。単に外国人投資家に対して日本のガバナンス体制について不要の説明をしなくて済み、おたくの国と同じようなものを入れていますよということだけが目的であれば、それはそれで意味があるかもしれませんが、それだけのことなのかと私は感ずるわけであります。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

じゃ、八丁地さん、どうぞ。

○八丁地メンバー

3点申し上げたい。

まず1点目として、2ページの「この点について」にある「現行の委員会設置会社制度は、日本の実態に適わず、移行の促進は困難」との指摘に、私は違う意見を持ちます。日本の委員会設置会社は2003年以来6年を経て、制度の定着に関しては進んでいるのではないかと思います。監督機能の分離・強化、ガバナンス機構としての評価では、適切な評価を得ていると私は思います。

2点目に、私の知るところでは、委員会設置会社制度と監査役設置会社制度の2つは、立法当時は同じ価値のものであるとの理解が基本であったと思います。それが、日本の実態なりポリシーであったと理解しておりますので、等価値であるということがその後変化を見せたのかどうかについては、きちんとした議論をすべきと思います。

3点目に、委員会設置会社の評価はそれほど低いものではないとの実感を持ちます。ですから、ここに言われている「委員会設置会社が日本の実態に適わず、移行の促進は困難」との指摘に関しては、さらに実務的なスタディなり、現状の把握をすべきではないかと考えております。

○池尾座長

ありがとうございました。

じゃ、山澤メンバー。

○山澤メンバー

私が思っていますのは、今どうしてこの金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの中でコーポレート・ガバナンスのあり方を検討、議論するのかという視点みたいなものがもう少し取りまとめの中に出ていてもいいのかなという印象を持ちました。私が理解していますのは、やはり何でこの場で議論しているかというと、資本市場が日本の企業のガバナンスをどう評価しているかとか、国際的に見てどうなのかと、日本の株価というのが本当にフェアバリューになっているのかどうかと、ガバナンスに関する資本市場の見方ないし国際的な見方という点で、若干割り引かれている点がないかというところがこのスタディグループで議論する一つの基本的な視座だと思っていますので、もちろんこれはさまざまな議論があり得るし、ガバナンスの属性みたいなものというのも考えなきゃいけないというふうに思うんですけれども、そういう切り口で議論するということから見た評価みたいなものがもう少し表に出ていてもいいのかなというふうに感じました。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

それでは、最初に申し上げましたように、取りまとめの議論をする段階で再びこの問題についてはより立ち入って議論をして頂かなければいけないということで、なかなかちょっと前途多難のような感じもしますが、前回の議論の補足という形でのディスカッションはこれぐらいにさせて頂きまして、あと本日の新たなテーマであります投資家行動等をめぐる論点の議論に移らせて頂きたいと思います。

それで、まずその点に関しての論点をやはりメモの形で整理をして頂いておりますので、それにつきまして事務局からまずはご説明頂きたいと思います。

よろしくお願いします。

○池田市場課長

それでは、引き続きましてお願いをいたします。お手元の資料3と資料4をご覧頂きたいと思います。

まず資料3をご覧頂きたいと思いますけれども、最初のところは基本的な考え方ということにしておりますが、市場を通じた上場会社のコーポレート・ガバナンスというものを考えていく場合に、株主・投資者の行動というものが重要になるのではないかと。

次は、やや教科書的なことが書いてありますが、株主・投資者の行動としては、3つに整理をしていますが、1つはパフォーマンスの悪い株式は売却をするという行動。

それから2番目に、議決権の行使を通じてガバナンスの発揮を図るという行動。

3番目に、こうしたこれらのことを背景に、経営者との日常の対話の中で、経営についての議論を行っていくといったようなことが行動のパターンとしてあるのかと思います。

それらについての論点は後ほど掲げておりますけれども、その前にここでは2点ほど総括的な論点を掲げさせて頂いています。

1番目は、株主・投資者は短視眼的であって、中長期的な視野に立った企業評価を期待し得ないのではないかといった指摘があろうかと思いますが、こうしたことについてどう考えるかということでございます。

お手元の資料の4に、ご参考として1ページ目に、これは金融審議会の専門委員でもいらっしゃいます首藤先生の研究から若干引いておりますけれども、首藤先生の調査では、ここにあるように機関投資家へのアンケート結果ということで整理をしておられますが、日本、ドイツ、アメリカといったものを比べたときに、左側ですけれども、相対的に日本における投資期間というのはドイツ、アメリカに比べて短期的である。

右側は若干切り口が違いますが、トレンドをフォローするタイプかどうかということで、調査結果では、米国、ドイツに比べて順張りの投資行動であるというようなことが分析をされておりますけれども、もともとの論点メモに戻って頂きますと、こうした調査にも見られるように、短期的投資の傾向はこれまでの日本市場特有の要素であって、今後投資家の機関化がさらに進んでいけば、変化していく可能性が高いのではないかといったような指摘もあろうかと思います。このあたりについてどう考えていくべきか。

それから、2番目でございますが、株主・投資者からの要請を受けて株主配当等の水準を向上させるということが、労働分配率を低下させることとなるのではないかといった指摘についてどう考えるかという論点を併せて掲げさせて頂いているところであります。

次に、下の方、2.でありますけれども、パフォーマンスが悪い株式は売却するというメカニズムを通じて上場会社に対するコーポレート・ガバナンスの改善を図っていくと。そういう際には、的確な企業評価に基づく投資行動というものが重要になると考えられますが、このための環境整備として、どういったことが課題となるかということが論点として考えられるかと思います。

次の3ページから、議決権行使を通じたガバナンスの発揮について論点を整理させて頂いております。最初のところは、株主・投資者による議決権行使がガバナンスの発揮の上では重要だということを書かせて頂いていまして、とりわけ株式等を長期保有する投資家やインデックス運用を行う投資家の場合は、株式の売却という行動には限界があるので、議決権行使を適切に行使することがより重要になるのではないか。

それから、受託者責任というものの重要な構成要素ではないかといったことを書かせて頂いています。

次の(2)のところですが、議決権行使ルールのあり方について若干論点を掲げさせて頂いております。機関投資家の中には、業界ルール等によって議決権行使に関するガイドラインの作成が求められ、これに基づき、ガイドラインの作成が行われているという例がございます。

お手元の資料では、5ページをご覧頂きたいと思いますが、ここでは投資信託、投資顧問、信託、生命保険の状況を整理させて頂いておりますが、この上の段にありますように、業界の自主規制ルールあるいは当局の監督指針などに沿いまして、これらの業界では議決権行使についてのガイドラインの作成というものが求められているところであります。さらに、この表の下の方を見て頂きますと、投資信託の自主規制ルールでは、ガイドラインの作成に加えて、そうしたガイドラインの公表についても求められているということでございます。

もう一つ論点としては、こうしたガイドラインに沿った実際の議決権行使結果の公表を図るべきかどうかという論点がございますが、この点については、特にこうした業界ルールでは規定されていないということでございます。

論点メモの3ページにお戻り頂きまして、こうしたガイドラインの作成についての取組みをより横断的なものにしていく必要がないかということ。

それから、1番下の黒ポツは、こういうガイドラインの公表までを業界ルール等で求めている例がありますが、こうしたものをより横断的なものにしていく必要がないかということ。

それから、4ページですけれども、個々の機関投資家によっては議決権行使の結果まで公表している場合があるということで、資料の方で14ページになりますが、これはある投信委託会社におけます公表の例ですが、こうした形で実際の議決権行使結果を個社ベースで公表されている例もあるということでございます。こうした議決権行使の結果の公表を業界ルールで求めていくこと、あるいは個々の公表についてもより一般化あるいはより詳細なものにしていくことについてどう考えるかという論点があるかと思います。

それから、論点メモの4ページの2番目の黒ポツですが、以上、機関投資家サイドの取組みになりますが、上場会社サイドについて、株主総会での議案の議決結果について、多くの場合、可決か否決かが公表されるわけですけれども、可決か否決かだけではなくて、賛成・反対の票数までを公表することを求めていくべきではないかという指摘が投資家の方々からは寄せられているところであります。

資料の方の15ページをご覧頂きますと、ある上場会社において実際に議決権行使結果を公表されている例を掲げさせて頂いておりますが、投資家サイドからは、可否だけではなくて、これらの票数がわかることがより経営に対するチェックという意味では意味があるのではないかという指摘が出されているところでございます。こうしたことについてどう考えるかということでございます。

それから、議決権行使というものが受託者責任の重要な構成要素であることについて、より一層の明確化を図っていくべきではないかという指摘もございますが、このあたりについてどのように考えるかということを掲げさせて頂いております。

それから、4ページの(3)のところは、議決権行使に係る環境整備のために取引所等がさまざまな取組みを行ってきておりますが、これらをどのように評価していくかという論点を掲げさせて頂いております。

5ページでございますが、取引所で取り組んできております事柄について、現状を若干整理させて頂いておりますが、資料の20ページになりますが、株主総会の開催日の集中緩和ということで、取引所で取組みを行っておりますが、この点について、日ベースの集中は相当程度の改善が見られるけれども、週ベースでの集中はなお解決していないという指摘があります。この点についてどう考えていくか。

それから、招集通知の早期発送についても取引所では呼びかけてきているわけですけれども、これについては21ページになりますが、招集通知の発送は、毎年若干の改善を見ているところでございますけれども、この点については、なお十分な検討時間が確保できないという指摘や、あるいはその議決権行使の判断材料となる説明が不足しているというような指摘、それから前回根本メンバーの方からは役員報酬の決定方針についてもご指摘がございましたが、そのような指摘についてどう考えるかということがあるかと思います。

この時間の確保ということの関連では、次の黒丸ですけれども、議決権電子行使プラットフォームの利用という論点がございます。これは、資料では24ページに資料をつけさせて頂いております。議決権電子行使プラットフォームというのはどういったものかということでございますが、この絵にありますように、一番下に上場会社である発行会社、株式の発行会社がございまして、株主名簿の管理人、これは信託銀行ですけれども、そこが株主名簿の管理をしておると。それで、議決権行使が行われるわけですけれども、通常その上にあります管理信託銀行あるいはグローバルカストディアン、常任代理人、こうしたところが株主名簿の名義人になっているわけですが、実際にはその背後の内外の機関投資家が議決権の指図をするという構成になっております。

それで、例えばここで言います信託銀行、株主名簿管理人においても、主として個人投資家などを対象に電子的な議決権行使のためのTAプラットフォームを提供されているわけですけれども、ここでの議決権電子行使プラットフォームと申しますのは、そういう株主名簿の名義人だけではなくて、その背後にある、したがって実質的に議決権を有しています指図権者のところから指図権の行使を含めて電子的な行使を可能にするプラットフォームでございます。

このプラットフォームの利用がされますと、一つは招集通知の発送当日に招集通知がPDFの形で閲覧可能になると。それから、指図権を行使する場合に、通常ですと指図権を行使した後、それを管理信託銀行やグローバルカストディアン、常任代理人が整理をして議決権行使をするわけですけれども、その整理や集計に時間がかかるということで、通常そのための事務の手数を考えて、総会の例えば8日から10日ぐらい前までに指図をすることが求められるということになりますが、このプラットフォームを利用しますと、そうした集計の作業が不要になりますので、総会の前日の正午まで指図行使が可能になるということで、招集通知が早く見られるということと、ぎりぎりまで指図権行使ができるということで、一般的に言いますと、議案の検討時間が従来3日程度に限られたものが13日程度まで広がるというメリットがあるところでありますが、現状このプラットフォームを利用している上場会社というのは、ここの一番下にありますように、313社に限られているということでございまして、例えば東証一部で言いますと、1,700社ぐらいございますので、そういう意味では全体の2割弱の上場会社のみが利用しているということでございまして、とりわけ海外の機関投資家などからは、このプラットフォームの利用を上場会社に義務づけるべきではないかといった指摘が寄せられている。東証のアンケートでもそうした声が寄せられているところと承知しておりますが、こうした点についてどう考えるかという論点があろうかと思います。

それから、5ページの下の方ですが、株主総会の議事運営について、速記、通訳の利用等さまざまな指摘があるところであります。

それから、6ページでございますが、若干異なる切り口の論点でありますが、ガバナンスの充実の観点から、金商法上の内部統制報告書を初めとする開示書類を株主総会における議論の材料とするように、株主総会への提出書類とすることを可能にすべきではないかという議論がございます。この点についてどう考えるかと。

若干制度的なことを申しますと、右に書いてございますが、現在の金融商品取引法令に基づきますと、有価証券報告書、これは3月決算の場合6月末までに出てまいりますけれども、その有価証券報告書の添付書類として株主総会に報告した計算書類及び事業報告というものを求めております。これは関連の内閣府令で規定をしておりますので、これに従いますと、株主総会が終わってからでないと、有価証券報告書が出せないという形になります。そうした金商法上の開示書類を株主総会に出すということになりますと、これは時間が前後になりますので、この右側の規定については修正を要することになろうかと思いますけれども、こうしたことについてどう考えるかという論点でございます。

4のところでございます。これは、もう特段補足してご説明することもございませんが、株主と経営者との間で経営についての建設的な議論を充実させていくことが重要ではないかということ。

国際的に活動する上場会社の中には、経営トップ自らが海外の機関投資家等との対話を行って、経営方針について突っ込んだ議論を行っているケースが多いかと認識をしておりますけれども、国内においても同様の環境が整っていると考えてよいかどうか。

そうした環境の中で、上場会社の経営トップが、自らの経営方針について株主・投資者の言語で的確に説明して、建設的な議論を行っていくということが重要ではないか。

そうしたことが行われるということが、企業買収等の局面においても、経営者が自らの経営方針等を明確に説明していくという対応を促進することにならないか。そうしたような場合、こういう環境整備をどのように図っていくかということを掲げさせて頂いております。

そこの黒ポツの3番目ですが、こうしたことを議論していく場合に、株主と経営との対話の充実に関して、フェア・ディスクロージャー上の問題あるいはインサイダー取引との関係ということも論点になってくるかと思います。

最後、ルール整備のあり方について若干触れさせて頂いております。この点については次回以降、より突っ込んだご審議を頂く必要があるかと思いますが、法制という点では、受託者責任あるいは議決権行使、ディスクロージャー等の基本的枠組みを規律しているところですが、個々の実情がある中で、法制によりどこまで一律の規制を求めることが適当かという議論があり得ると思います。

また、取引所ルールについても、これまでさまざまな形で議論がされてきているわけですが、取引所ルールについては、上場契約に基づいて上場会社を規律するという側面、それから、取引参加者規程に基づいて仲介業者、すなわち証券会社を規律するということが基本となってまいりまして、投資家サイドを規律するというのは、これまで取引所のルールの中では限定的であったかと思います。こうしたことについてどう考えていくかと。

そうした中で、途中ご紹介しましたように、業界ルールでの対応ということがとられてきているわけですけれども、こうしたものは業界に属さない投資家等は必ずしも対象にならないというようなことがあります。こうした中で、こういうことについてどのように規律づけをしていくのかということをご議論頂ければというふうに考えております。

以上、どうかよろしくお願いをいたします。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、残りました時間で、この今ご説明頂いた論点メモ3に沿って議論を進めたいと思いますが、やや論点が多岐というか多いので、前半と後半に分けて議論をさせて頂きたいと思います。8ページありますので、真ん中4ページの(3)議決権行使に係る環境整備のための取引所等の取組みの前までと、それからその後というふうな形で、ちょっと分けて議論をさせて頂きたいと思いますので、最初は基本的な考え方と的確な企業評価に基づく投資、それから議決権行使の部分については、これも総論的な議決権行使の重要性、議決権行使ルールのあり方という、やや前半は基本的な考え方に近い部分について議論して頂いて、後半4ページの下のところ以下のやや具体的な話について議論をして頂きたいというふうに思います。

はい、じゃ柴田メンバー。

○柴田メンバー

2点だけ申し上げたいと思います。まず資料3の1ページの1番下の「株主・投資者は短視眼的である」という考え方についてですが、短視眼的な投資家ばかりではなくて、長期投資の視点を持った投資家も多数存在しており、「多様な投資家の存在こそが資本市場の流動性と価格発見・価格形成機能を支えている」という点は大切ですので、指摘をしておきたいと思います。

長期的な視点を持つ投資家の例をいくつかあげてみたいと思います。「バリュー型」、これは長期的に見て割安な価格に放置されている株式に投資をする人たちで、これは何年かの投資スパンを持っている方が多いわけです。また「グロース型」、これは成長力を重視して長く持つ方々です。ほかに「グロース・アト・バリュー型」、これは割安な成長株へ長期投資するスタイルです。つまりいろいろな長期投資の投資スタイルがあり、やはり長期的な視点を持つ投資家が存在するということを忘れてはいけないのだろうと思います。

第2点は「議決権行使の結果を公表すべきかどうか」という点についてです。一律に公表を義務づけるということは適切ではなく、個別の機関投資家の判断に公表するかどうかは委ねられるべきであると考えます。「受託者責任」の面から考えますと大元の資金の性質がそれぞれ違うということでもございますし、また投資スタイルも違います。さらに、一律に公表を義務づけるということになりますと、いろいろな会社や、またいろいろなエージェントからの圧力も増えてしまうというリスクが発生します。かえって議決権行使の自由が阻害されてしまう危険性が生じるということです。議決権行使の結果を公表することを一律に義務づけるということは適切ではないと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

ほかの方から、どうぞ、藤巻メンバー。

○藤巻メンバー

今の柴田メンバーの最初の発言の日本の株主・投資者は短視眼的であることに関しての発言、流動性が重要であるという点はまさにその通りだと思います。アンケート結果として、日本人が短視的なトレーディングをしているということであるなら、この理由は私が想像するに、やはり日本の株というのは配当金が低いということで、日本の投資家がどうしても欧米の投資家に比べてキャピタルゲイン狙いになるからだろうかなという気がいたします。なぜ配当金が低いのかとなれば、やはり日本の場合はステークホルダーがたくさんいて、欧米のように会社が株主のものとは言えず、配当金を高めようというモチベーションが低いせいなのかなと思います。

そういう面で言うと、コーポレート・ガバナンスって誰のためにガバナンスしているのかなと。日本の場合は、配当金を最大限にするという機能を果たしていないんじゃないかなと思います。

これは蛇足ですけれども、短期的にしか株式を所有しないというのは、やはりデリバティブの未発展のせいかなとも思います。今東証さんが個別株のオプションを定着させようと努力をされているようですが、例えばプットオプションが出来れば、株価下落の可能性があるとき株式をわざわざ売らずにプットオプションを買うということによって対処できるわけです。それによって、株を長くホールドすることになるのではないかと思います。そういうオプションのような手段が日本にはまだ発展していないというのも短期的なトレーディングになってしまう一つの理由じゃないかなと私は思っています。

それから、それに関して2ページ目に、株式配当金の水準を上げると労働分配率を低下させることになるのではないかという議論がありますが、巷ではよくセンセーショナルに株主対労働者もしくは経営者対労働者というような議論に持っていきがちですが、今の労働分配率の問題というのは、この前、日産が小型主力車マーチの生産を日本からタイに全面移行するという日経新聞の一面トップ記事からわかるように株主対労働者じゃなくて、日本の労働者対外国の労働者の問題になっていると思うのです。今や株主対労働者という観点でとらえるべき問題ではなくなっているような気がします。

最後にもう一つ、2番の的確な企業評価についてということなんですけれども、今回取り上げていませんけれども、やはり会計の問題は極めて大きいと思います。今のサブプライムローン問題に関しても日本では会計の問題があまり話題になっていませんけれども、時価会計が本当にいいのか、もしくはディスカウント・キャッシュ・フロー会計を一部入れる方がいいのではというような議論が米国ではされていると思うんですけれども、そのように会計によるコミュニケーションというのは極めて重要だと思っていますので、その辺も論点に入れた方がいいのではないでしょうか。

○池尾座長

じゃ、次は柴田さんから。どうぞ。

○柴田メンバー

投資期間に対する議論ですが、このアンケートを見ますと、日本よりも米国の方が数年単位の投資期間を持つ投資家の比率が高いということです。この背景ですが、これは米国では機関投資家の中で確定給付型の企業年金や確定拠出型の個人の年金の比率がかなり高いということが背景です。「本源的に長い投資期間を持つ資金」の割合が高い国であればあるほど、長期投資の比率が高くなるということかと思います。

○池尾座長

じゃ、淵田メンバー。

○淵田メンバー

短期的投資の話について、3点申し上げたいと思います。

1点目は、この機関投資家の比較だけを見ると、日本の方が短期的のように見えますけれども、株主全体で見ると、こういう投資家の割合は、日本の場合は持合いや政策投資もあり、善し悪しは別として、トータルの株主が短期的で日本企業がそれによって例えば国際的な競争力が低下しているとか、そういったことではむしろなくて、昔は逆に日本は株主全体として長期的な観点に立っているので、日本企業の国際競争力が強いというふうに1990年頃は言われていたわけであります。アメリカは短期的な投資家の比率は少ないようでありますけれども、政策投資等がない分、こういった投資家のウェイトというものは株主全体の中では相対的に多くて、したがってこの短期主義の問題というのは米国においても大きな議論にはなっています。したがって、申し上げたいことは、日本だけが特にこの短期主義の問題によって何か大きな被害を被っているとか、そういうことは必ずしも言えないんじゃないかということが1点目。

2点目は、例えば短期的とか近視眼的と言ったレッテルを張った途端に、もうそれ自体が悪いことのように考えられますけれども、短期的に行動することが必ずしも非合理的ではないということです。経済が変動している中で、昔のように長い間株を持っていれば必ず上がるといった時代でもありませんし、理論的な企業価値というものも時事刻々変わっています。そうした中で、例えばエクイティのアロケーションを長期的に基本ポートフォリオとして維持して、それは安易に変えないというのは一つの投資姿勢でありますけれども、その中における銘柄を機動的に変更するというのは、これは決して非難されるようなことでもないし、政策的に何か抑制すべきことでもないと思います。

3番目に、非合理的な短期的投資というのは実際にあるわけでありまして、こういうバイアス、これは短期主義だけの問題でなくて、モメンタムの投資とかそういう問題もありますけれども、この手のバイアスというのは、確かに問題でありますから、これを正す方向の対応がなされた方がいいと思います。ただ、その正し方は4段階あると思います。第1段階は、これはそういうバイアスがあったら、そのバイアスを通じてもうけようという動きを通じて修正される姿です。行動主義的なファンドというものも実際登場して、その結果、一部のバイアスは実際に縮小しているという結論も得られています。

2番目のレベルというのは、民間同士のいろいろな工夫があるだろうと思います。昨年のこの会議で矢野さんがおっしゃったんですけれども、短期主義の問題というのは、これは委託者の意識改革が必要であって、運用会社は顧客である委託者の意向に左右されるというご指摘だったのですけれども、委託者だけではなくて、運用会社あるいは企業も含めたコミュニケーションといったこととか、あるいは企業経営者やファンドマネジャーのインセンティブ体系を変えていきましょうといったことも、2006年にCFAとビジネスラウンドテーブルが提言しておりますけれども、そういったいろいろ工夫の余地があると思います。日本の場合、マスコミなども短期的に年金がこんなに損したといったふうな形でしょっちゅう記事にしたりするようなこともありますので、そういった点は民間の工夫でいろいろ改善の余地があると思います。

3番目の方法は、政策的に何か対応するとしても、強制ではなくて、自然にインセンティブづけを各種制度設計でしていくという、シカゴの先生がナッジという言い方をしていますけれども、そういう対応もあるだろうと思います。ボランタリーな選択を促すような制度設計をするという対応ですね。

4番目は、それを超えて、もう強制的に何かやらなくちゃいけないかということになるわけですけれども、今申した1番目から3番目のいろいろな工夫をやる余地というのはまだまだあるのではないかと思っております。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

島崎メンバー。

○島崎メンバー

投資家のアンケート結果、この資料の1ページ目ですが、日本と欧米とで機関投資家の株式保有期間に差があることがわかります。実際にアメリカなどの投資家を見ていますと、大体1年たつと半分ぐらいが入れ替わるというような感じなので、この数字は感覚と合うかなと思います。ただ株主という場合には、機関投資家だけではなく、上場会社全体での株主がどのぐらいで入れ替わっているかとなると、日本の場合にはかなり長く固定的に株を持っている株主もいると思います。機関投資家が持っている株の比率が日本とドイツやアメリカとでどういう比率になっているのかということを示して頂かないと、これだけのデータでもって議論すると誤るかなという感じがします。

それから、機関投資家は株主として近視眼的、あるいは短視眼的で、パフォーマンスが悪いと売りますよということですが、このパフォーマンスというのは一体何なのかというあたりを少し整理してみないといけないと思います。これには企業経営者の経営姿勢についてのパフォーマンスは入っておらず、業績とか、配当だとか、資本政策とか、数字で見えることをパフォーマンスといっているのではないか、もっと定性的なことを含めたパフォーマンスというのであれば、整理の仕方は変わってくるのかなと。業績、配当とか資本政策ということであれば、それは悪ければ売ると、普通はそういうことであろうかと思います。

先程会計の問題が話がありましたけれども、アメリカ発で、世界で起こっている時価会計の問題についてはいろんな意見があって、先程おっしゃったような考え方もありますが、私はそうじゃないんじゃないのかなという考え方を持っています。この時価会計というのがいわゆる株価とか証券市場に対して、マーケットがいいときにはそれをさらに助長するような傾向を持ち、悪いときにはそれをまた助長するような傾向を持つというプロシクリカルという考え方がありますけれども、実際にどうなのかということは、実証されたわけでもありません。会計の本来の使命からいえば、企業の財政状態を正しく評価して情報開示していくということ、すなわちファクトを投資家を含むステークホルダーに開示するということが使命なのではないのかなと、私はそう思っておりますのでつけ加えます。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

じゃ、鹿毛メンバー。

○鹿毛メンバー

機関投資家の立場で一言申し上げないといけないかなと思います。今までいろいろご意見を伺ったことは私どもとしてもほとんど違和感ありません。ただ市場にはいろんな人、長期投資家もいれば短期投資家もいる。いろいろな判断をする、多くの価値観が違う人がいるので活性化するわけです。ですから論点メモにこれでいいのかといった、ある種の価値判断的な文言が出てくるのですが、一体その理由は何なのかという議論も出てきます。市場行動の中に基本的にはあまり大きな問題点がない限り、あるいは法律に反しない限りは、どちらかといえば、こういった価値判断を加えないで、むしろ多様な活動をエンカレッジする方が望ましいと思います。その方が、このスタディグループの資本市場を国際化し、活性化していこうという目的にも合うのではではないかと思います。

そういう観点から見ると、恐縮ですけれども、論点メモに幾つか「短視眼的」といった、価値判断的な文言が出てきているところが若干気になりました。

それから、議決権行使の問題ですが、日本の年金としては私ども企業年金連合会は、株式の自家運用を行って議決権行使をする唯一のものと思います。それ以外の日本の年金は公的年金も含めすべて外部の運用機関に委託します。実は外部の運用機関が議決権行使をしています。考え方としては、投資家である年金、さらには加入者、受給者が、運用機関に対しても相当コントロールをすべきだという議論にもなってきますが、現実には今の年金が実際に議決権行使をしていく、あるいは方針を決める上でのリソースは極めて限られています。

一方で、運用機関は多くの機関投資家の株式投資をまとめて受託するため、金額的にも大きくなる。また、アナリストやポートフォリオマネジャーといったリソースも十分にある。それから、議決権行使をしっかりと行うことでパフォーマンスがよくなれば、当然業績にも結びつくという意味では、インセンティブもあります。現実に議決権行使をしている運用機関に動機や条件が、機関投資家と比べれば整っているという面があります。

もう一つ、機関投資家には年金だけでなく生命保険会社などいろいろあります。そういうところでも、恐らく自家運用している部分と委託部分があって、委託の場合はやはり運用機関が行っているはずです。ですから機関投資家の議決権行使という議論をするときに、運用機関の役割が非常に大きいというところに立って議論する必要があると思います。年金や機関投資家自身が議決権行使しているというところで考えると、議論が混乱してくるのではないかという感じがします。

それから、この議決権行使のいろいろなルール、「資料」に書いてあることも考え方としてはそうなんですが、例えば適切に行使することによって経営を監視していくことが重要である、上場会社の行動を適切に規律していくことが重要であるというのは、「結果」なんだと思います。つまり、投資家、運用機関であれ機関投資家であれ、その責務というのはリターンを高めることであって、そういう行動をとることで結果として市場の規律が働いてくるということでしょう。目的と結果というのが、逆になっているのではないかという気はいたします。

議決権行使にしても、現実にどうすれば長期的なリターン向上に結びつくのかという点については、決して一様ではないわけで、多様な意見があります。逆に言うと、多様な意見があることが市場の本質でもあります。受託者責任という観点から議決権行使をしっかりやっていくことは大事だと思いますが、その中身、あり方等については、ある程度の弾力性を残すことが、むしろ市場の活性化にとってはプラスになるのではないかという感じがいたします。

○池尾座長

非常に率直に申し上げて、1ページの下から2ページにかけての2つの論点というのは、ちょっと語弊があるかもしれませんが、例えば私個人は、これは本当に重要な論点だと思って掲げているというわけではなくて、世の中的にこういう議論が根強くあるので、この議論はいわばこなしておかなければいけないというか、だからこういう論点はおかしいという意見はぜひ出して頂ければ結構だというふうに個人的には思っておりますので。

はい、上村メンバー。

○上村メンバー

池尾先生はあまり大事じゃないというふうにおっしゃったんですけれども、見方によっては大事かもしれないのですね。

私は、戦後の日本の経済発展が非常に短期的に一気に成し遂げられたのは、やはり法人が中心で物事を処理してきたということがあって、その名残がかなり色濃く資本市場にもその性格として位置づけられているという感じがします。それはいい悪いじゃなくて、経済成長自体はよかったことだと思うんです。

ただ、そこが欧米のように例えば市民社会を構築するために大変な努力をして、歴史的ないろんな失敗もして、そしてある意味では、ちょっと抽象的な言い方ですけれども、市民社会に根差した企業社会といいましょうか、やはり個人と個人の受託者である機関投資家が中心の安定した成熟社会における企業社会とか資本市場というものになっていれば、これは企業は簡単には買収されませんし、それから投資行動にもやはり大きな影響を与えているんじゃないかと思っております。例えばフランスなんかは、確か今もそうだと思いますけれども、2年以上株を持っていると議決権が2倍になると思うんですね、会社法上。これを会社が自発的に定款でやったら、株主制度原則で違反かというと、岩原先生に違反だとおっしゃられるかもしれないのですが、私は、例えば個人株主を優待するための優待制度は、個人株主を増大するという理由において違法じゃないと思っているんですね。ですから、同じ目的のために議決権を2倍にしたからといって、私は違法であるとは全然思わない。そういう仕掛けがあって、安定的な企業社会をつくっている。

それから、機関投資家が主役の証券市場というのは受託者責任の履行として議決権を行使する。これは当然ですけれども、もう一つは、運用業者には、業者としてのFSAのプリンシプルに基づく行動というのがやはり基本的にあるわけで、それが議決権を行使している比率が極めて高いですから、そうした業者プリンシプルの帰結が株主総会における株主の意思だといえる面があると思うんですね。だから、そういう意味ではかなり条件も背景も違う。

私は夢みたいなことを申しますけど、やはり日本は戦後の経済発展の中で急成長を遂げてきた。しかし、それを実質的に個人と個人のための機関投資家を中心の社会に徐々に徐々に、これを静かな市民革命と私は言っているんですけれども、徐々に徐々に上手に変えていく必要がある。それには前に申しましたように、まずは個人株主を増やす方のルートである公募原則みたいなものを強調していく。そうした仕掛けを工夫して社会の性格を変えていくというような大きなプロジェクトを国家目標として考える必要があり、それも考えるのがこういう場所なんじゃないかと個人的には思っております。

普通株式というのは、コモンシェアといいますけれども、コモンというのは、これは主役という意味なんですね。しかし日本はコモンの方がほんのわずかで、種類株式が9割を超えても構わないという会社法に今なっていますけれども、それはもう発想としておかしいわけです。コモンは主役である市民である個人が企業社会を支えているんだということを意味しているからコモンなんだと思います。ほかにもいろいろありますけれども、そういう意味では、ここで問題になっていることというのは、やはりかなり本質的な問題を背景に持っている。だから、そういうことをきちっと本当は議論する必要があるのではないかということだけちょっと申し上げさせて頂きたいと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

岩原先生。

○岩原メンバー

メモの3ページ以下に書いてある議決権行使の重要性について一言申し上げさせて頂きたいと思います。

前回議論しましたガバナンスの問題にもつながるのですけれども、ガバナンスの制度の改善に関し、社外取締役の導入その他について議論しておりますが、取締役会等の会社運営機構の上の方の制度を幾らいじくっても、結局、企業のガバナンスというのはなかなか根本的には改善しないところがあって、やはり株主がきちんと経営者を評価し、そして監督するということが実現しない限り、ガバナンスは根本的にはよくなっていかないのではないかと思っております。したがって、やはり投資家、株主がきちんと経営者をウォッチしているという体制を作ることが必要で、とりわけ現代においては機関投資家がきちんと会社の経営を見て、議決権行使等を通じて影響力を行使していくということが、究極的なガバナンスの改善につながっていくと思います。

その意味では、ここに書いてある議決権行使に係る部分、とりわけ機関投資家による議決権行使がきちんと行われるような体制をつくるということが非常に重要だと思っておりまして、日本はその点が従来必ずしも十分ではなかったことに大きい問題があると思っています。先程、日本では例えば年金などは自家運用の部分が少なくて、外部運用に任せているところが多くて、そこにはなかなか手が及ばないというか、そういう趣旨のご発言もありましたけれども、外部運用しているならば、外部運用している機関投資家に対して、委託している年金基金等が、受託機関投資家がきちんと議決権行使を含めた株主としての権利行使をしているかについて、ちゃんと見張っていく必要があると思います。それが年金基金であれば年金の受益者に対する受託者としての義務であり、そういったことがきちんと果たされるようにしなければなりません。

また、それ以外の機関投資家についても、機関投資家に資金を提供している背後にいる人たちのために最大のパフォーマンスを上げるような機関投資家としての議決権行使を行う等、投資先に対する経営のモニタリングをきちんと行う体制を充実していくことが非常に重要であると思います。しかし日本の場合は、いわゆる政策投資その他の観点の方が重視されて、必ずしもそういう点がきちんとされていなかったということに非常に大きい問題があったのではないかと思っております。そういう意味では、いろいろな各種機関投資家が、彼らに最終的な資金を拠出している人のために、投資先がきちんとした経営を行い、なるべくよいリターンを上げ、投資先がよい経営をするように監視するような体制をつくっていくように、投資家サイドの体制を充実していくということが非常に重要であると思っています。これはむしろ後半の方の問題に関わってきますけれども、アメリカのエリサ法みたいな法制の整備を含めて、機関投資家サイドが本当に最終的な投資家のために行動するような体制、制度を整備する必要があると思っております。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

どうぞ。

○越村メンバー

まず発言させて頂く前に、信託銀行に関係するいろいろな話が出ておりますので若干説明しますと、信託銀行は国内機関投資家という立場と、もう一つ、後ほど出てきますが証券代行機関という立場の両面を持っていると言うことです。そういう意味で、今日は非常に微妙な立場での発言になり、私は一人で二役をこなすような場面も出てくるかと思います。ですから、歯切れが悪くなる場合があることは、最初にお許しを頂きたいと思います。今、岩原先生からお話がありました件ですが、こと信託に関して言わせて頂ければ、当然ここで言う受託者というのはフィデューシャリーであるということは理解していますが、トラスティーという観点から申し上げますと、現在においても信託法、信託業法及び兼営法等々にしたがって、十分、善管注意義務、忠実義務といった受託者責任を果たしていると思っております。加えまして、監督指針や検査マニュアルもありますので、政策投資株についてはまた別の面もありますが、機関投資家としては議決権行使について十分義務を果たしていると考えております。

また、論点メモにも議論が出ておりますが、議決権行使に係るガイドラインの公表という点に関して一言申しますと、現在公表については各社の判断に委ねられているわけですが、これは基本的には公表する方向になっていると思っております。私どもとして、この公表することの意義をどう考えているかということですが、コーポレート・ガバナンスに対する考え方を広く周知する、それにより発行体のガバナンスの向上、投資収益の増大に寄与するということを期待して公表するわけです。ここで最も重要なのは、これも後ほど出てまいりますが、やはり発行体との対話を行うことだと思っておりまして、我々は発行体との間で対話を通じて信頼関係を醸成し、本当のガバナンス向上につなげていくべきだと考えております。

ここで声を大にして申し上げておきたいことは、公表することが目的ではないということです。公表されているものに形式的に合わせればそれで良いと考えてもらっては困るということです。我々もガイドラインを形式的に当てはめるのではなく、やはり発行体との話し合い、議論を通じて議案の賛否を考えていく、それが議決権行使を行うにあたって一番重要な点ではないかと考えています。

以上です。

○池尾座長

そろそろ時間的にも迫ってきましたので、後半の部分も含めてというか、ご意見を頂くということで、議決権行使に係る環境整備のための取引所の取組み以下、今ちょっと出ました経営との対話の話、それから最後のルール整備のあり方、後半部分も含めてご意見を頂くということでお願いします。

それでは、はい、柴田さんから。最初、柴田さん、お願いします。

○柴田メンバー

今の受託者責任ということで、機関投資家の義務は大きいというご指摘がありましたけれども、これはそのとおりであろうというふうに思います。例えば、野村アセットマネジメントは議決権行使委員会というものを持っていまして、議案提出者が経営者であるか外部の株主であるかを問わず、すべての個別議案について個別に検討した上で議決権を行使しています。その原則となるガイドラインは、ホームページで公表をしているわけです。

一方で、個別の投票行動については公表はしないというポリシーをとっています。この個別の投票行動についての公表を義務づけるということになりますと、先程申しましたけれども、かなり無用な圧力もかかるし、会社さんに対しても、またほかの方に対しても無用なご迷惑がかかる可能性もあり、無用なコストが大きくなるということです。こうした方式をとっているのは野村アセットだけではなく、機関投資家の投資行動と議決権行使の行動はきちんと行われている、そういうケースが日本でも多数派になってきています。

少し話が飛びますが、「株主総会において各議案の議決結果について単に可決か否決だけではなくて、賛成・反対の票数まで公表する」ことを決めてはどうかということについてです。現在、議場における採決の方法として、拍手による採決が行われているケースが多いわけですが、委任状、議決権の書面行使、議決権の電子行使があることですから、これには一定の合理性があるということかと思います。もちろん、賛成・反対の票数がかなり近いような場合には当然公表することも必要だろうかと思いますが、実際の株主総会での手続等々を考えますと、限界的な費用と限界的な効用の観点から、一律に票数の発表というものを求めることは現実的ではないと考えます。

以上でございます。

○池尾座長

どうも。

じゃ、藤原さん。

○藤原メンバー

このスタディグループは、我が国金融・資本市場の国際化に関して2年間もかけてスタディしてきています。ここの場で、イギリスやアメリカではこういうのが既に導入されているので、日本の市場を国際化するためには、「その一部を導入してもいいんではないでしょうか」と提案しても、「日本のやり方でいいではないか」という意見が非常に強く、特に業界の人からは強いです。「それでは、皆さんは何を国際化しようとしているのか」と私は皆さんに聞きたい気持ちがあります。

4ページの「上場会社サイドにおいても、」という論点についてですが、株主総会の日というのは、経営陣が株主に対して1年に1回非常に協力的で優しくしなければいけない日です。私たちは、今ガバナンスの話について議論しているのですから、この話は、透明性、説明責任の話でもあります。

株主は株主の権利として、議案に対して1票を投票するだけでなく、可決されたか否決されたかを知りたいと思っています。また、株主はただ結果を知るだけではなく、賛成票が何票で反対票が何票だったかも知りたいと思っています。しかし、日本のほとんどの上場企業は株主総会で議案が可決されたか否決されたかだけを公表しております。海外の上場企業はどうかと申しますと、例えばイギリスでは、結果だけでなく、賛成票が何票あったかも、ごく当たり前のこととして株主へ知らせます。透明性、説明責任の観点から当然だと上場企業の経営陣が考えているからです。もし、私たちに日本の資本市場を国際化しようとする気持ちがあるのなら、可決、否決だけではなく、一歩踏み進んで票決の結果を発表してもいいのではないかと思います。また、この提案も少数意見になりそうですが、もしそうであるなら、私たちはこの会で、一体何を国際化しようとしているんだろうとちょっと聞いてみたい気持ちがあります。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○越村メンバー

今度は証券代行機関という立場でお話をさせて頂きたいと思いますが、私どもも発行会社の代行機関として株主総会の運営に協力させて頂いております。資料の15ページに出ている例ですが、これは前日までの分を集計したものだと思います。基本的には先程柴田メンバーからもお話がありましたように、当日の作業というのは非常に難しい部分がありまして、それはコスト面と時間的な面等を含めた実務的な負担があるということです。ただ、現状でも前日までに議決権行使されたものについてはほぼ集計ができているわけで、この例にもありますとおり、発行会社の指示に基づくことが前提ですが、こういう形であれば何とか実務的にも対応ができると考えております。

先程もお話しがありました、当日の投票が議決の可否を左右する場合、これは当然、当日集計を行うべきケースだと認識しておりまして、実際に私どもが把握しているだけでも、年に二、三社は当日の総会の議決をきちんとカウントして、票決されております。ただし、また否定的とおっしゃられるかもしれませんが、一律に義務づけるということについては、コスト等の問題を含め実務的な負担が大きいということをお考え頂きたいと思っております。

以上です。

○池尾座長

はい。

○藤原メンバー

1つだけつけ加えさせてください。

議決結果を公表するのは難しいということですが、経営陣がやろうという気があったら、議決結果を当日公表することが可能であることを私は上場企業の株主総会のお手伝いをして分かりました。私が関わった企業の場合、株主提案があり、議決結果は発表しなかったのですが、前日に議決権行使をほぼ集計し当日の分も付け加えて、最終の数字を固め、会社側は総会当日に議決結果を把握しておりました。だから、議決結果を集計することは大変だけど、経営陣がやろうとしたらその日のうちに発表できるんだということは分かりました。問題は経営陣が株主に対して議決結果を発表したいかどうかということだと思います。私の意見ですが、物理的に議決結果は株主総会の当日に発表できるのですから、経営陣は株主に対する透明性とか説明責任という観点から、議決結果を発表してもいいと思っております。

○池尾座長

後半部分を含めてご意見を。

はい、どうぞ。

○江原メンバー

ちょっと意見を述べさせて頂きます。

どちらかというと前半の部分に関する点が多いんですが、先程からこの資料のアンケート結果に関していろいろな方のご意見を聞きながら、ああ、やっぱりいろいろな見方があるんだなと思ったんですが、私なりの解釈をちょっとここで紹介させてください。

この左と右の方を見てみますと、ガバナンスに関する関心度合いというのがやはり国によって大分違うのかなという気がします。何だかんだいっても、6カ月以内でトレードしているケースが多いという場合は、基本的にはやっぱりガバナンスというふうなものを通じて影響力を対象企業に与えるという考えというのは非常に薄いんではないかなと思われます。

よく海外の投資家さんと話をしていますと、いかにしてアルファをつくるかという、こういうことを皆さん話しますよね。アルファとは何かというと、アルファとベータというのがあるわけですが、ベータというのはどちらかというと市場全体の動きということで、アルファというのは各固有の会社の価値ということなんですが、やはりこのアルファをつくるためにはガバナンスというものが必要条件ではないかということなんだと思うんです。ただ、やっぱりガバナンスというのは、これは時間がかかる話でございますので、半年以内でガバナンスの効果が出たということはまずあり得ないんだと思うんですね。やっぱりこういうことを考えてみますと、運用者の運用成績の評価の仕方とか、そんなふうなものとも非常に密接に関係しているんではないかなと思います。

このアンケートの右側の表を見ますと、基本的にトレンドをフォローしているというのは、これはベータを追っかけている投資ということになりますので、ベンチマークに対して負けていなければいいだろうというような評価体制ですと、やっぱりどうしても右側の方のトレンドをフォローしてしまうような結果になってしまうのかなと。

一方で、やっぱりアルファというものを積極的に追求しようとすると、少数意見であっても、判断であっても、逆張りというような発想が当然出てくるということなんです。

機関投資家さんの中でもいろいろな方がいますんで、全部束ねてこうですというふうに言うのは非常に危険だとは思うんですが、やはり一般的に感じることは、日本におきまして、運用のファンドマネジャーとしてでも3年、4年するとローテーション的に他のポジションに行ってしまうというのは、もう少し個々の機関投資家さんで工夫すべきではないかなと思いますね。やはりそういうふうなところもこういう運用結果みたいなものをつくり出しているような気もいたします。

また、この論点の後半の方に、6ページですか、株主と投資者による経営に関する対話の充実と。これはまさしく非常に重要な点ではないかなと私は思います。日本の企業は、結構IRというものを一生懸命やっていらっしゃるケースが多いような気がしますね。形だけやっていらっしゃるところも確かにあるんでしょうけれども、でもそれなりの時間は割いていらっしゃるような気はいたします。

一方で、機関投資家さんとして、やっぱりオピニオンリーダー的な存在感というんですか、もっと顔が見えるような存在になって頂きたいなと。そういう方がこの東京に100人いれば、これはまたすごい市場になるんではないかなという感じがします。別に固有名詞が重要だというふうに私は言っているつもりはないんですが、やはり10年、20年やってきたプロの投資家としての、機関投資家としての存在感というのは、実を言うと、上場している経営者にとっても大変ないい相談相手であり、もしかしたら脅威の存在でもあるかもしれないけれども、でもやっぱり話すに値するような存在になり得るんではないかなと思っております。

以上です。

○池尾座長

大変ありがとうございました。

飛山さん。

○飛山メンバー

各論なんですけれども、2点ほど言わせてもらいたいと思います。

1つは、資料3の5ページ目のところの電子的な方法による議決権行使の関係なんですけれども、池田課長の方から資料3に基づきまして機関投資家向けの議決権行使等の説明があったわけですけれども、そもそも会社法の規定に基づいて電子投票制度が採用できるというふうになっているわけで、それを採用している企業というのは、実際約3,000社ぐらい上場企業があるわけですけれども、550社程度と2割未満の状態なんですね。

それから、先程池田さんから説明がありましたとおり、議決権電子行使プラットフォームを採用している会社というのは、東証一部の1,700社から比べれば2割未満ですので、上場会社全体から見れば1割程度ということで、そういう数字になっているということです。

それで、東証でも、上場会社に企業行動規範で電磁的方法による議決権行使の採用を努力義務としてお願いをしているわけです。

それから、さらにここにおられます鹿毛さんの企業年金連合会などともいろんなPRに努めているんですけれども、やはりこの低い率になっているということです。これだけインターネットが普及している時代において、やはりこの低い率というのはどうかなという感じがありますので、ここのところはもう少し採用に向けて動きがとれないのかなという感じを持っているというのが1点でございます。

それからもう1つは、議決権行使の結果の公表のことでございますけれども、これもやはり議決権行使の結果が公表されるということになれば、投資家は株主投票の重要性ですとか、その議案に対する投票がどういうふうに推移してきたかとかいうことまでわかりますから、議決権行使に積極的になることも考えられますので、義務づけの方向性というのは私は賛成だと思っております。ただ、やはり実態も少しありまして、これは関係資料の15ページで先程説明がありましたとおり、当日のものも含めてやれということになれば、これはできないに決まっていますので、前日までのところでわかっているものをやっていくとか、それから実際今やっている会社はほとんど少数の会社だけでございますので、徐々に義務づけていくとか、そういうことをしながらやっていったらいいのではないかという感じを持っているということでございます。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

ほか、ご意見いかがでしょうか。どうぞ。

○鹿毛メンバー

先程投資家と企業の対話というお話がありましたけれども、私も賛成です。今、国際コーポレート・ガバナンス・ネットワークという国際組織があるんですが、そういうところでも投資家と企業経営者は、最終的には長期的な企業価値を上げていく、業績を向上させていくという点では共通の目標を持っているはずだということで、その共通の目的に向かって対話を強化しようという考え方が、世界的にもはっきり出てきています。アメリカでもヨーロッパでも現実にそういう試みが起きています。ですから、もちろんここに書いてあるような幾つかの留意点はありますけれども、恐らく国際化あるいはガバナンスの向上という点でも非常に有効な検討課題ではないかと思います。

それからもう一点、先程岩原先生のおっしゃった市場によるガバナンス強化という点は、私も大賛成です。例えば機関投資家が議決権行使をどこまでコントロールしているかという点については、実体は結構進んでいるわけですが、そういうことが世の中にあまりPRされていないと思います。先程野村アセットというお話がありましたが、今、東京で主要外資系だけでなく、主要な日系投資顧問会社も先程のような議決権行使のルールをつくって、かなり積極的に行っています。それから公的年金に関しては、連合会は別にしても、GPIFや、大手共済組合ですと国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済というようなところは、すべてコーポレート・ガバナンス・ルールを持って、運用機関に対して指示をし、またその結果も発表しています。市場のインフラとしてはかなり進んできています。ただ、さはさりながら、当然まだ不十分なところはあるだろうというのと同時に、これだけでなかなか目に見えた効果が出てきていない。つまり市場によるガバナンス機能というのが十分でないというのは多分そのとおりだと思います。もう一つのこの市場によるガバナンス強化のポイントというのは、やっぱり企業買収だと思います。今回の基本テーマがコーポレート・ガバナンスの拡充、つまり経営規律の向上と考えた場合に、法規制による規律の向上と、それから市場のプレッシャーといいましょうか、市場による規律の向上、この2つがあるはずです。金融庁という立場では、今まではどちらかというと当然、法規制にウェイトがあったと思うんですが、やはりコーポレート・ガバナンスの向上という意味からいくと、先程ご指摘もありましたように、やはり市場機能によるガバナンス向上についても今回のスタディグループで、もう少し取り上げて頂いてもいいのではないかという気がいたします。

以上です。

○池尾座長

はい、根本さん。

○根本メンバー

海外の投資家と接する機会が多いんですけれども、やはりこの議決権行使の環境整備、ここは不満があるという声は聞くところでして、もちろん各企業さんで一律なあり方があるべきものでもないというところはわかるんですけれども、やはり投資家としてはこういった一つ一つ小さいことかもしれませんが、集中日の問題とか電子的な方法とか、それを通じて経営者がどのぐらい投資家に向いているのかを判断していく大きな要素だと思いますので、そういった面からも改善が望まれるところです。

あともう一つ、若干議論になるところが、子会社のガバナンス、あるいは少数株主の権利ということです。これは多数例ではないんですけれども、例えば親会社がマジョリティーを持っていて、子会社が上場しているとか、あと特殊な例なんですが、金融機関で公的資金が入って、政府が潜在的に大株主だとか、そういうときに少数株主がどう主要株主の経営支配に対して守られているのか不安であるという声があります。例えばスーパーマジョリティー条項とか累積投票制度とか、こういったものは検討されているのかと。そういったことにもちろんいろいろ弊害はあるとは思うんですけれども、その検討があまりなされたように今まで見えなかったので、少数株主の保護というところも考える余地があるのではないかと思いました。

以上です。

○池尾座長

上村メンバー。

○上村メンバー

2点です。1つは、6ページの一番上のところに書いてあります問題ですが、現在は有価証券報告書の方が後から来るので、株主総会の書類を添付しろということですけれども、実際はどうかというと、皆さん誰でもEDINETとTDnetを見て行動していると思うんですね。当然ですけれども、この金商法上の有価証券報告書やタイムリー・ディスクロージャーの情報を前提にして、それを踏まえて株主総会が開かれるのが現実の姿であって、ですから、これは公開会社法の話になるんですけれども、この電子的な開示をきちっと参照するということと、それから、ある程度は紙媒体もあった方がいいと思いますので、有価証券報告書などの要約情報、それから総会当日までに、もし追補情報があればそれを開示すれば、それが招集通知に係る情報提供だと言ってしまえばよいのですね。株主総会の直前まで有価証券報告書情報に接していて、有価証券報告書は事後の開示だと言っているのがおかしいのだと思います。

我々法学部では、会社法の授業で有価証券報告書を教えないというカリキュラムになっていまして、ロースクールでもそういう法曹を大量に生産しているんですけれども、ほとんどナンセンスじゃないかと思っています。ですから、それとも関係があるんですけれども、ここはむしろ金商法の世界を中心にして、株主総会はその上に展開するというような位置づけにした方が、それは現実にやっていることですから、望ましいというのが1つです。

それから、最後の6ページ、これは前にも申し上げたことなんですけれども、ここに書いてあるので一応確認的に申し上げますと、取引所は上場契約に基づいて上場会社を規律する、それから投資家サイドへの規律が限定的ということですが、これは証券取引法というのは会社法を補う法律であるとされ、私法的な世界で考えられていたのですね。証券会社は商法上の問屋だし、取引所は絶対的商行為だし、とそういう世界だったわけです。そして、投資家を取引法的に保護するのが証券取引法だとされてきました。ところが、実際今の状況を見ればわかりますけれども、資本市場が機能しないことによって、株なんか1回も買ったことがないような国民がみんな大きな被害を受ける。つまり、契約の相手方を保護するというような世界じゃない。そのことを、金商法の第1条の資本市場の機能の十全な発揮と公正な価格形成という新たに入った条文が確認しているはずです。だとすれば、証券取引所というのは、これはそうした目的を達成するために免許を与えられた免許法人としての証券取引所ですから、上場契約を根拠として規律するというのは非常におかしな話で、やはりあくまでも資本市場の機能を守るために上場会社に情報提供をさせるというのは、それは免許法人として、あるいは免許法人に課せられた当然の責務ですし、それから投資家も当然その市場のプレーヤーの一つとして、ある程度の規模を超えた投資家であれば、規律の対象になり得るというのは、私はむしろ当然じゃないかと思います。前にも申し上げましたけれども、一応ここに書いてありますので、確認的に申し上げさせて頂きます。

○池尾座長

そろそろ時間なんですが、はい、じゃ。

○八丁地メンバー

6ページの開示書類について申し上げたい。招集通知を早く出して、十全な議事運営をしたいとの願いでは、発行会社は共通であると思います。同時に、開示書類に必要な情報のアヴェイラビリティー、ガバナンス構造を経たその作成や手続き、正当性の確保に関しては、ナローパスを辿って株主総会に揃えているのが現状と思います。

加えて、営業報告、計算書類の変更が毎年多岐にわたるため、毎年同じプロセスで開示書類を準備できる会社は殆どないと思います。また、内閣府令ですとか、関係する規定の存在への対応を勘案しますと、招集通知の展開、具体的な議事運営の準備期間の設定等の実務を詰めていく必要があります。株主のご満足をどこまでいただけるのか、実務の点から詰めることが、現実的なコーポレート・ガバナンス、特に株主総会の充実につながると思います。

もう一点、内部統制報告書は、米国でもSOXの有効性に関する議論があります。一部反省があるとの議論も耳にします。これにかける費用とその効果の判断も、企業としては重要です。株主総会のタイミング、議事、ガバナンスに必要な書類とその有効性、必要なコストと効用を整理して議論すべきであります。ご検討賜ればと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

まだいろいろと議論、ご意見あるかとは思いますが、時間が来てしまいましたので、とりあえず本日の審議はこれまでということにさせて頂きたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは、最後に事務局の方から日程等につきましてご連絡をお願いします。

○池田市場課長

次回の日程でございますけれども、3月18日水曜日の午前10時からということでよろしくお願いをしたいと思います。

本日もいろいろなご指摘を頂いておりますので、ちょっと審議内容についてはそれらを踏まえまして考えてまいりたいと思いますが、基本的には次回は上場会社等のコーポレート・ガバナンスに係るルール整備の手法等をめぐる論点についてご審議をお願いする予定にしております。

以上でございます。

○池尾座長

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

サイトマップ

ページの先頭に戻る