金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第2回)議事要旨

日時:平成19年2月16日(金)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館11階 共用特別第一会議室

議事内容:

○  打越メンバー、淵田メンバー及び中前忠氏から我が国金融・資本市場の国際化についてプレゼンテーションが行われた。

○  その後の質疑応答及び自由討議における主なやりとりは以下のとおり。

  • 日本の金融・資本市場の国際化は重要であり、粘り強く議論をしていく必要性がある。金融の専門家と一般の人との間には、知識・理解の面で大きなギャップがあるが、こうしたギャップがあると、「貯蓄から投資へ」を進めるのはなかなか難しいだろう。
  • 市場に対する不信感や不安感などもあり、国民の間では金融・資本市場のあるべき姿がどういうものか、まだ価値観が統一されていない。日本の金融・資本市場の国際化を進めるという気運が高まっている今がチャンスであり、国際化の目的や目指す姿について国民に分かりやすいメッセージを伝えて訴えかけることが大切。
  • 今の日本の市場の信頼性は低い。先物主導で相場が恣意的に動いており、一部の外資系のファンドが市場を動かしているのではないかとの話もある。これが欧米であれば当局が厳しく対応するのでやっていないはずで、こういう状況も個人投資家の信頼を損なっている一要因ではないか。
  • 我が国金融・資本市場の国際化に向け何をやるか、については既にはっきりしている。後はどうやるかが問題だ。金融は格差のネタにされやすいこともあり、金融の発展の必要性について国民にどう分かりやすく伝えるかが課題。以下のようなメッセージを国民に発信することが必要ではないか。

    (1)  少子高齢化の時代に一人当たりの生産性や国際競争力の向上は不可欠で、金融業の生産性向上も必要。

    (2)  また、金融・資本市場の改革は国家財政や年金問題の解決にも有効。

    (3)  さらに、ガバナンスのツールである金融を通じて、産業にガバナンスの効いた資金が入ることで産業や企業自身の生産性の向上につながる。

    (4)  加えて、国際分散投資の進展はODAと同様の役割も果たしていくし、いずれリターンとなって返ってきて国民を潤すことになる。

  • 金融のシェアが下がることで製造業が発展するという考えには違和感がある。金融が低迷しても資金は国内の他の産業ではなく海外へ行くだろう。したがって、今後を考えれば、金融のようにソフト面での高度な知識が必要な産業が必要となるのではないか。
  • 日本はものづくりの国である、という話をよく聞くが、先物は元々大阪の米市場が起源。そういう点では日本人には金融の素質があり、金融は日本の基幹産業であることを再認識すべき。
  • 将来、資産・物価のインフレの時代が来れば日本人の資産観も大幅に変わり、「貯蓄から投資へ」の流れが進むのではないか。日本の新しい産業を生むためにはリスクマネーが必要で、資金を有効に活用するために今のうちからきちんとした制度を作っておく必要がある。
  • 日本の国際収支を見ると、モノの収支である貿易収支より海外投資の利子・配当の収支である所得収支が多い状況が近年続いている。所得収支をいかにしてのばしていくかが今後の日本経済の死活問題で、製造業のサポート役ではなく金融産業そのものの発展が必要。
  • 外国企業は、日本語開示によるコストと日本での上場のビジネス上のメリットを考慮して上場を選択するが、発行体側に上場のメリットがなかったというのが事実ではないか。日本人の投資家の海外投資への関心の高さを考えれば、英文開示による上場促進を検討することも意味があるかもしれないが、大切なのは上場自体よりも財務内容などその企業の中身。企業の中身に対する情報の提供が同時になければ投資家がついてこない。
  • 外国企業の上場廃止については、翻訳コストだけが問題ではないという話もある。例えば、日本語開示が必要とされる、上場を伴わない形での外国企業の資金調達については、量が増えている。外国企業の上場廃止については、上場しても売買が少ないことも理由であり、必ずしも翻訳コストがネックになっているわけではないと思う。
  • 資本市場でのリスクマネーの供給を妨げる要因として、金融機関による低利でのリスクに見合わない資金供給が考えられるが、これに対しては、バーゼルIIのようなリスクセンシティブな規制の導入を通じリスクに見合わない資金供給を金融機関に止めさせる、預金が完全に安全な資産ではないことを国民に認識させる、といったことが必要なのではないか。
  • 日本の現在の投資は元本保証型の商品への投資に偏りすぎている。国際的なレベルでの競争を考えると、日本の運用技術の更なる高度化が必要。
  • 監督機関のあるべき姿については議論が必要だが、大切なのはハコの話ではなく何をどういうスタンスでやるかということ。また、自主規制機関については、欧米でも強化していくべきとの流れになっており、取引所と業界で業務内容の重複している自主規制機関の統合などを研究していく必要。
  • 日本のデリバティブ取引は国際的にはまだ低い水準にあり、今後はデリバティブの取引をどうやって増やしていくかが重要なテーマ。また、個人投資家の金融リテラシーの面で日本は米国に大きく遅れており、投資家教育が重要。このほか、金融先物と商品先物の垣根の撤廃、税制上先物と現物の損益通算を可能にする、などが主要なテーマとしてあがってくるだろう。
  • 税・法律・産業に加え日本銀行の問題など、金融・資本市場の国際化に必要な課題は多岐に渡っており、省庁の壁を越える高いレベルでのコミットメントが必要。
  • 金融産業の位置づけをどうするのか、基幹産業として位置づけるのか、それとも他の産業のサポート役になるのか、という哲学の対立の問題があるが、当スタディグループでは金融産業も一つの雇用付加価値の将来的な担い手として期待していくと位置づけられているものと理解している。
  • 裾野である全般的な市場型金融の拡大が頂である日本の金融・資本市場の国際競争力につながるので、地道な努力が必要。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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