金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第18回)議事要旨

1. 日時:

平成21年1月19日(月)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3. 議題

上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方について

  • 事務局説明

  • ヒアリング

    • 日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム

    • 日本公認会計士協会

  • 討議

4. 議事内容

  • 上記について事務局説明及び参考人からヒアリングが行われ、その後討議が行われた。

    • 「良質なガバナンス機構と企業業績との間に有意な相関関係は認められないとの指摘がある」とあるが、一方で有意な相関関係があるという見方もある。

    • その点については、有意な差があるという研究と有意な差は認められないという研究と両方あり、どちらかに固まる状況にはない。

    • 実証研究の結果としてはっきり数字に表れなくても、制度として経営者の暴走が起きないような仕組みにきちんとなっているかという観点から、現在の日本のコーポレート・ガバナンスの制度の仕組みを見直すべきではないか。

    • 確かにガバナンスのシステムがさほど工夫されていなくても、業績がいい企業はあるが、そのような経営者個人の資質に頼ったシステムというのは非常に変動しやすく、投資家の立場からみれば、その安定性が保障されていない。

    • そもそもコーポレート・ガバナンスの向上が企業業績の向上につながるなどと巷間で言われていることがおかしくて、良いコーポレート・ガバナンスとは投資家にとってのインシュアランス・ポリシーである。

    • 現在、日本における取引の半分以上が海外の投資家によるものであり、日本の株式市場に与える影響が非常に大きい中で、海外の投資家から見て、日本の制度が信頼してもらえるような状況になっているのかという点については、検討する余地が十分あるのではないか。

    • 海外の投資家からは、日本のガバナンスについて、いろいろと問題提起がされている。一例をあげれば、取締役会の機能や社外取締役に関する問題である。そのことが、本当にガバナンスの向上や業績の向上に意味があるのかという議論を始めると相当意見が分かれると思うが、それはさておいて、世界の通説になっていることで、日本だけが不十分なところがあり、日本の株式市場に対してネガティブな要素になっているのではないかという点に関しては、個人的な見解や学説から離れて、何らかの手を打つ必要があるのではないか。

    • 海外の投資家は、社外取締役が少ないということを大変ネガティブに捉えている。他方、社外取締役が多いということは、それだけチェック機能が働きやすいのではないか、内部の閉鎖的な論理から一歩離れた議論ができるのではないか等、プラスに捉えることは間違いない。

    • 論点には入っていないが、取締役の報酬の決定や開示についても投資家の関心が高いところである。今、米国でも非常に大きな問題となっているが、日本では報酬基準等が米国とは異なるので議論に値しないと考えていいのか、あるいは検討すべきかということについては整理してもいいのではないか。今、米国では短期的な収益にあまりにも傾斜していたという点が見直されているが、日本においても報酬の決定に対する考え方を、個別の報酬額を開示しないまでも、もう少し開示してもいいのではないか。仮に日本では経営者が法外な報酬をもらっていないので、問題があまりないのだとすれば、むしろそれを開示することで海外の投資家はプラスに見るということもあるのではないか。

    • 国内の機関投資家の立場としても、良質なガバナンス機構の構築が企業業績と必ずしも明確な相関関係があるとは言えないと思っているが、同一業種あるいは同程度のパフォーマンスを上げている会社を比較すれば、やはりガバナンス機構をきちんと構築している会社に投資をするという傾向がある。その中で、取締役会に監督機関としての側面が確保されているかどうかということを一つの判断基準としているが、その判断に当たっては、執行から独立した機能があるかどうかという観点から、社外取締役に期待するところが非常に大きい。

    • 社外取締役が取締役会に参加することについては、取締役会での議論が活性化する蓋然性が高い等、明らかなメリットがある。企業の業績が好調であるときや平時における社外取締役の役割としては、経営者に、株主に対する説明責任を果たすかのごとく、株主の代表としての社外取締役に対する説明責任を果たさせるという要素が大きい。また、社外取締役の貢献度が極大化するのは、企業の業績が悪いときや問題発生時であり、経営者の暴走の防止という安全弁としての役割が大きい。

    • 社外取締役が求められる理由には、監査役制度が評価されていないということがある。監査役による監督が不十分、取締役会での投票権を持っていない、妥当性監査に必ずしも権限が及ばない、といった点で監査役の限界というものがあるのではないか。従って、社外取締役の選任を上場会社に義務づけていくという方向は正しいのではないか。

    • 社外取締役の選任を義務づけるに当たっては、現状、東証上場会社の55%が社外取締役を採用していない状況なので、慎重に進めないといけないのではないか。

    • 社外取締役を義務づける場合、親会社出身者が社外取締役として扱われるというようなことのないよう、社外取締役の定義に独立性の観点も加える必要がある。逆に、「現在及び過去一度も」という要件に関しては、海外に比べて非常に強化されているので、この点も見直していく必要があるのではないか。このことは、現実的に社外取締役のなり手の確保という観点からも必要なのではないか。

    • コーポレート・ガバナンスがインシュアランス・ポリシーだとしても、インシュアランスの対象を知らないとインシュアランスはできないと思うので、独立性に加えて専門性についても担保しておく必要があるのではないか。実際問題として、独立性の高い社外取締役を迎えた場合、執行側は、非常に緊密なコミュニケーションを図ることが必要となる。議題やその背景を説明することは当然であるが、営業所、生産拠点といった現場に行ってもらう等、より専門性を高めてもらうということに大変な努力を要するというのが現実なのではないか。そうであれば、独立性と専門性といった条件について、現実的に考えた方がいいのではないか。これは所与の条件なのか、これから獲得していく条件なのか、それが本当にできるのかという点を検討する必要があるのではないか。

    • 社外取締役は非常に重要だと思うが、日本でよりそれを積極的に拡大していこうと思えば、欧米などでどうやって社外取締役の裾野を広げる努力をやっているのかということについて少し調べておく必要があるのではないか。その上で、そういった人材を育成していくというプロセスを経る必要があるのではないか。

    • 単に社外取締役を強制的に義務化するだけでは、形骸的になってしまうおそれがあるので、監査役の機能の強化ということも併せて検討していかなければならないのではないか。

    • 経営陣が暴走しないような仕組みを考える上で、社外取締役を入れることによって監督機能を強化させるという考え方だけでなく、現在の監査役制度のあり方を見直すことによって強化できないかという観点からも検討していくべきではないか。

    • 監査役会の機能強化を図ること、特に、独立性と専門性を強化することは必要であるが、それによって取締役会の機能強化の代替がなされるわけではない。取締役会は経営の意思決定を行う場であり、一方、監査役会は経営の意思決定を行う場ではなく、能動的というよりは、むしろ受動的にきちんとしたチェック・アンド・バランスを行う場である。

    • 会計監査人の選任議案・監査報酬の決定において、経営者と会計監査人は利益相反の関係にあるため、会計監査人の独立性に重要な影響を与える可能性があり、財務情報の信頼性を毀損することになりかねない。従って、経営者を監視する立場の、半数以上が社外監査役で組織された監査役会が、会計監査人の選任議案・監査報酬の決定権を持つことが必要である。

    • 会計監査人の選任、報酬の決定を監査役会に委ねてはどうかという議論があるが、監査役会が能動的に会計監査人の選任等に手を染めてもいいのかどうかということは、本来の監査役会のあり方というものを見直さない限り、少し無理があるのではないか。

    • 会計監査人の選任、報酬の決定権については、現在の監査役に、米国のSOX法などが定めている監査委員会が会計監査人を選任するといったような権限を与えるだけのふさわしい能力と、そういうことを実行する体制ができているのかということが大きな問題であり、まずはその体制づくりが必要ではないか。その結果、初めて会計監査人の選任、報酬の決定について監査役が決定権を持つということになっても、経営者にとっても十分納得できるような決定が行われるのではないか。最終的には、取締役の選任・解任権を持っている監査委員と、そういう権限を持っていない監査役で、果たして本当に同じだけの機能を果たすことができるのかという点が最後に残る問題ではないかと思う。

    • ガバナンス機構に関するルール整備の手法については、全ての企業を会社法で縛ることは不適切であり、上場会社とそれ以外で分けるべきではないか。取引所及びマーケットには一定の条件を満たしている会員に限って上場しているというふうに、ある程度プライベート的なクラブの意識というのがあってもいいと思う。特に社外取締役に関しては、取引所ルールがあってもいいのではないか。

    • 法律という形をとる前段階として、取引所ルールは現実性を持っているのではないか。海外の事例等を見ても、取引所による規制というものが実質的に機能している。

    • 取引所がルールメークすることは一つの考え方ではあるが、米国と違って、日本は単一法でかつ会社法の中に大会社という区分があるので、そこを活用することによって、上場会社をかなり縛れるのではないか。

    • 社外取締役の義務化のようなことは、本来、会社法の問題ではないかという意見もある。一方、日本の金融・資本市場を魅力的なものにするために、上場規則の形で何らかのルール化を図る、もしくは、金融商品取引法上の開示ルールでガバナンスについての開示をさせるという形で、ガバナンスの強化を図るということも考えられる。やはり検討にあたっては、上場規則なり金商法上の開示という形でガバナンスの改善を図るのか、それとも会社法の改正という形で図るべきなのかについて、それぞれ適用の対象範囲も効果も異なるので、問題に応じてどの手法でルール化を図っていくことが適切かということを十分考える必要がある。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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