金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年7月29日(金曜日)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○吉野座長

それでは、東副大臣もお見えになりましたので、ただいまから第2回目の「我が国の金融業の中長期的な在り方」に関しますワーキング・グループを開催させて頂きたいと思います。

では、小野企画課長からまずお願い致します。

○小野総務企画局企画課長

それでは、お手元の資料の確認をお願いさせて頂きたいと思います。資料1としまして「メンバー名簿」、資料2と致しまして「家計保有資産の内訳及び推移」、資料3-1と致しまして「我が国における金融業の国際競争力の強化」、資料3-2と致しまして「東京海上グループの海外展開とその課題について」、資料3-3と致しまして「我が国金融業の国際競争力の強化に向けて」を配付させて頂いております。ご確認をお願い致します。

○吉野座長

本日の会議は、前回、皆様にご了解頂きましたように公開とさせて頂いておりますので、本日の議事も公開とさせて頂いております。

議事に先立ちまして、引き続き小野企画課長から前回お休みの委員、それから、新たに参加されましたオブザーバーの方々をご紹介頂きたいと思います。

○小野総務企画局企画課長

前回、ご欠席だったため、ご紹介できませんでした委員をご紹介させて頂きたいと思います。

小幡績様でございます。

○小幡委員

よろしくお願いします。

○小野総務企画局企画課長

また、オブザーバーのうち、前回ご欠席されておりました大塚大東京信用組合常務理事でございます。

○大塚常務理事(大東京信用組合)

大塚でございます。よろしくお願い致します。

○小野総務企画局企画課長

八木静岡銀行理事経営企画部長の代理出席で梅原経営企画部企画グループ長でございます。

○梅原企画グループ長(静岡銀行)

静岡銀行の梅原と申します。よろしくお願いします。

○小野総務企画局企画課長

鵜飼名古屋銀行執行役員総合企画部長でございます。

○鵜飼執行役員総合企画部長(名古屋銀行)

名古屋銀行の鵜飼でございます。よろしくお願いします。

○小野総務企画局企画課長

さらには、中島農林中央金庫総合企画部長及び本日はご都合によりご欠席でございますが、安藤全国労働金庫協会執行役員経営企画部長にも、今回からオブザーバーとしてご参加頂くことになりましたので、あわせてご紹介させて頂きます。

○中島総合企画部長(農林中央金庫)

中島でございます。よろしくお願い致します。

○吉野座長

ありがとうございました。

それでは、本日の議題に入らせて頂きたいと思いますが、その前に、前回、大垣委員のほうから自由討議の際に、金融資産ばかりでなく実物資産と比較もしてはどうかというので、私は資料2という横向きの、たくさん本日資料がございますけれども、右肩上に資料2というのがございますが、「国民経済計算年報」から実物資産も含めて金融資産との動きを簡単にプロット致しました。

一番上の破線のところが、これが土地の実物資産でございます。バブルのときに89年、90年がピークであります。それから、薄い線でずっと上がっておりますが、これが預貯金で、大体、左側の数字が真ん中ぐらいで800兆円ぐらいであります。それから、実物資産のピークが1,500兆円ぐらいでございます。それから、上から右の棒ちょん棒ちょんと、これが保険と年金でございます。それから、一番下の破線が有価証券、それから、下から2番目が株式と、こんなふうになっておりまして、とにかく実物資産が非常に大きく価値が下がったというところが特色かと思います。本日はこれの議論ではございませんので、前回、ご質問がございましたので、実物資産と金融資産というのを含めさせて頂いたという表でございます。

それでは、本日の議事に移らせて頂きたいと思いますが、本日は皆様からご覧になって前の右のほうに3人の方々にお越し頂いております。金融業の国際競争力の強化を巡る議論をさせて頂きたいと思っております。

まず、お一人目は株式会社三菱東京UFJ銀行の鉢迫国際業務部長でおられます。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

よろしくお願いします。

○吉野座長

よろしくお願い致します。

それから、お隣が東京海上日動フィナンシャル生命保険株式会社の吉川監査役でいらっしゃいます。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

よろしくお願いします。

○吉野座長

それから、大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社の中村参与でございます。

○中村参与(大和証券キャピタル・マーケッツ)

よろしくお願い致します。

○吉野座長

お三人とも海外業務のご経験が長く、本日ヒアリングさせて頂くには非常に適切な方々ではないかと思っております。

本日は大きく分けまして、1つは、それぞれの金融機関の方々が、企業等の多様なニーズに対して我が国の金融サービス業はどういうふうに対応しているか、それから、2番目は、我が国の金融業が欧米やアジアでどのような強みがあり、またどのような弱みがあるか、こういうことに関しましてそれぞれの方々からまずご発表頂きまして、それから、ご議論させて頂きたいと思います。

それでは、まず最初に株式会社三菱東京UFJ銀行の鉢迫国際業務部長からお願い致します。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

私ども国際業務部は、国内外のお客様のグローバルなビジネスのサポートをするという部署でございます。国内外に270名の要員を擁しておりまして、国内外で色々なビジネスサポートを行っております。

それでは、資料3-1に沿ってご説明申し上げます。資料を開けて頂きますと、「本日のアジェンダ」がございます。なお、BTMUとは、私ども三菱東京UFJ銀行の略でございます。まず、BTMUのグローバルビジネスの現況、私どもがどういうことをしているのかということが1点目でございます。続きまして、我が国のお客様の動向はどうなっているのかということが2点目でございます。最後に、それに対してどういった支援をしているのかという点を、現場の実態もふまえながらご説明させて頂きたいと思います。

それでは3ページをご覧下さい。私どものグループネットワークでございます。左側は国内拠点網になります。三菱東京UFJ銀行は、東日本を主な地盤としていた旧東京銀行と三菱銀行、東海地区を主な地盤としていた東海銀行、西日本を主な地盤としていた三和銀行の合併銀行でございます。右側は海外拠点、欧州、アジア、ユニオンバンク、米州ということで約500超の拠点を持っております。ユニオンバンクといいますのはあまり聞き慣れないかもしれませんが、全米、特に西海岸に拠点がある銀行でございまして、全米で18位の規模を持っており、私どもの100%連結子会社でございます。

下段に書いております通り、個人4,000万口座、法人50万社のお客様に対しまして、40カ国以上500拠点でネットワークを展開しております。なお、ここには書いてございませんが、私どもは8万人の従業員がおりまして、そのうち海外には約2万人の従業員がおります。そのうちほぼ全員がナショナルスタッフと呼ばれる現地で採用をした社員でございまして、海外における日本からの派遣社員というのは約700名ですので、4%の日本からの派遣社員で2万人の海外拠点を運営しているという状況でございます。

4ページ目でございますが、グローバルランキングということで、私どもの預金、貸出、時価総額がどの辺に位置しているのかを書いております。預金で2位、貸出で5位、時価総額で23位でございます。昨今やはり中国系の銀行が非常に伸びてきているということがここからも見てとれます。

5ページ目でございますが、主にアジアでございますけれども、色々な銀行、他の金融機関との提携状況をかいております。例えば中国ですと中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)と、ASEANですとCIMB(ASEANナンバーワンの投資銀行)、あるいはVietcombankと提携、あるいは出資関係にございます。

また、グローバルベースではMorgan Stanley銀行が持分適用会社であり、22,4%の出資をしております。右上には私どもMUFGグループの各社の名前が出ておりますが、今年よりこの各社を束ねまして国際連結事業本部という部署を作りまして、各社のリソースを1つに集めながら、グローバルに展開していくという施策を進めております。

6ページ目でございます。これはBTMUのグローバルランキングということで、リーグテーブル、世界の各国の銀行の中でBTMUがどれぐらいの地位にいるのかを書いております。『Rank』というところを見て頂きますと、例えば上から3つ目に1という数字が出ておりますが、これはアメリカにおけるプロジェクトファイナンスの昨年度のリーグテーブル、つまりランキングで、1位を獲得しているということです。その下のProject finance/EMEA、つまりヨーロッパでございますけれども、4位を獲得しております。そういう意味では国内のみならず、海外の銀行と伍してやっているという状況がここに表れていると思います。

続きまして7ページ目、これは私どもの収益の状況をハイライトしております。左側が粗利益です。全体の粗利益に対しまして、現状、海外部門で約23%の構成比を占めております。なお、UNBCと申しますのは先程申し上げましたユニンオンバンクのことでございます。将来的には、海外部門の構成比を40%にしていこうということで、国際部門で活動している次第です。

8ページ目でございます。ここでは、今、私どもがグローバルビジネスで注力している業務の1つをご説明申し上げます。通常、私どもの銀行では、お客様のリスク、いわゆるコーポレートリスクと言われている部分と、市場のリスク、いわゆるマーケットリスクと言われている部分のリスクを取って収益を上げてきたわけですが、第3の柱ということでトランザクションバンキング・ビジネスというものを現在推進しております。簡単に申し上げますと、預金、決済、トレードファイナンスといったお客様の商流を捉えながら、その商流全体に関わって収益を上げていくというビジネスでございます。右下に書いております「決済商品・サービス強化へ向けた新規投資の実施」とは、主にシステム投資のことを指しております。加えまして「地場銀行との提携を含むネットワーク強化」、「国内決済・外為取引強化」ということと、それを支える体制を強化しようということで業務を進めている次第です。ここまでが私どもの現状の主な体制となります。

次に、私どものお客様、特に日本の企業を中心としたお客様の状況、現状どういう動きをされているかということでございます。まず10ページをご覧下さい。この表は私どものお客様、主に日系企業の海外現地法人数の推移、つまりどの位進出が進んできているのかという表です。まず左上の地域別、ここには2001年~2009年までの推移が出ておりますが、現状、約1万8,000社の現地法人が海外に出ております。そのうち折れ線グラフの部分、2001年度の18%から2009年度は27%に拡大しているわけですが、これは中国への進出を表しております。そういう意味では、中国とアジアでほぼ半分以上、特に中国で拡大中でございます。

その下の業種別でございますが、2001年度は主に、製造業が非常に海外に進出していたわけですけれども、最近は現地での内需をよく見据えた卸・小売業のお客様の進出が増えてきております。右側の企業規模別でございますが、従来大企業のお客様が非常に海外に進出していたわけですけれども、ここへ来まして中堅中小企業の進出が増えています。全体に占める割合が12%から27%に増加したということで、内容が変わってきているということです。

11ページ目は、私どものお客様が海外に進出するときに何を目的に進出を決定するのかということを書いております。まずこの棒グラフを見て頂きますと、下が2004年度で上が2009年度、つまり過去と比較してどのように変わってきたのかを示しております。まず一番上の長いグラフですが、最近の一番の決定ポイントは、やはり現地の需要を見込んで進出するということであり、2004年度は61.2%だったのが、2009年度は68.1%となっております。その下の、安い労働力があるから進出するというお客様ですとか、さらにその下の、ほかの日系企業が進出するので進出するというお客様は、やはり減ってきていることが見てとれると思います。一番下は、進出先の隣の国あるいはその周辺国での需要を見込んで進出するということであり、統括現法をつくるということもそれに対する一つのやり方だと思います。このように進出目的は変わってきている状況でございます。

12ページ目でございます。これは、私どもの関係会社が日本の上場企業にアンケートをとりまして、我が国のお客様が日本の金融機関に何を期待しているかということを書いた表です。回答して頂いたのはお客様の財務部長様と経営企画部長様であり、色々な回答を頂いております。表の右側、上から順番にIFRSの対応ですとか、金利・為替財務リスクの軽減というのが、大きな比率を占めていることを表しております。「今回」とは2010年10月の結果であり、前回、2009年と比べてどうかを表す「前回比」については、お客様の期待の数字が増えている項目を四角で囲っております。

これを抜き出したものが左側でございまして、1番目に「M&Aによる事業力補充」、つまりお客様は金融機関に「M&Aによる事業力補充」についてサポートをしてほしいということです。

さらに「現地市場のマーケティング強化」、つまり現地のお客様や現地で物が売れるかどうか教えほしいということです。さらに「貿易・グローバル決済の効率化」、つまり事業を支える金融の部分を教えてほしいということです。加えまして昨今増えておりますのが、国外企業とのアライアンス、資本提携についてのサポートをしてほしいということです。これらの項目について主に中国・ベトナム・インド・タイ等の地域で相談され、期待が高まってきているという状況です。

こういったお客様のニーズに対しまして、私どもが何をしているかというのが次の章でございます。14ページ目をお開き頂けますでしょうか。実は私どもの銀行では、年間で約4万件、正確に申しますと4万4,000件のグローバルビジネスに関する相談を受けております。4万4,000件の相談内容がこの縦の棒グラフでございまして、例えば2006年度、一番多かったのは「貿易業務相談」です。これは、L/Cを開きたい、あるいは、輸出をしたいけれども、どうしたらいいのか、といった相談になりますが、やはりここへ来て段々その割合が減ってきております。

一方で、増えてきている「現地業務支援」ですけれども、これはどういうことかと申し上げますと、お客様が現地に進出した後、現地で色々と悩まれているということです。右側のパイグラフの中に書いてありますけれども、資金為替の効率化、あるいは、資本・事業再編のストラクチャー、海外現法の資金調達アドバイスといった現地での悩みについて答えることが最近は増えてきているということです。棒グラフの真ん中の「海外進出支援」の比率は変わってきていないけれども、3月の震災以降は、円高、あるいは、電力の問題、サプライチェーンの問題等もあり、この辺の進出支援の相談も足元では増えてきております。

続きまして15ページ目でございます。ここではそういったお客様の要望の内容について、大企業と中堅中小企業で何か大きな違いがあるのかということを示しております。お客様の相談を受ける地域はどこが多いのかを図示しているのが左側でございまして、大企業では、もちろん中国が一番多いのですが、約3分の2が中国を含めたアジアの相談です。一方、その下でございますけれども、中堅中小企業ですと8割がアジアの相談でして、やはりほとんどの企業が中国を含めたアジアについて色々考えているということです。右側は業務内容別となっておりまして、大企業は既に進出しているケースがほとんどであるため、主に現地の業務支援、現地でのオペレーションについての相談が大半を占めております。一方、中堅中小企業はそうは言ってもこれからどうやって貿易を進めていったらいいのかという相談が約半数ということで、大企業とは相談内容にやや違いがあるということです。また、昨今、大企業では、中国のみではなく南米・インドあたりの相談も増えてきております。

16ページ目でございます。ここは若干細かいので簡単に申し上げますけれども、こういったお客様の要望について、左側の50万社のお客様から私ども国内の1,146カ店、海外の522拠点が色々な形で相談を受けているということを示しております。例えばどこの工業団地に進出したらよいか、現地の駐在員についてどういうことを考えたらよいか、採用はできるのかなど、色々なケースで相談を受けております。

17ページ目です。BTMUでは中小企業のお客様を対象に特別の室を設けております。やはり中小企業のお客様の相談には、細かく対応しなければならないということと、グローバルビジネス展開に慣れていらっしゃらない方も多いことから、「グローバル経営相談室」という室を設けて、手厚く対応をさせて頂いております。例えば、税務・財務の相談ですとか、現地の工業団地の視察の相談に対応しております。

最近の取組みを紹介しておりますのが18ページ目でございます。私どもは昨年の9月に上海で「上海商談会」を開いております。上海に進出を考えている、あるいは、中国で物が売りたいという中堅中小企業のお客様、約250社、600名と、現地の中国銀行、大使館・領事館、中国企業に参加をして頂き、ビジネスマッチングと呼んでおりますいわゆるお見合い会のようなものを開催しております。中国企業でいいますと例えばアリババのようなネット販売の会社にも参加頂きまして、中堅中小企業の皆さんがうまく商売が続けられるというような体制をつくるサポートをしております。この一日だけで、約400件の商談が成立しております。こういった形のサポートも私どもでやっております。

ここまでがまさに現場で我々が対応してきていることでございます。まとめになりますが、私どものマザーマーケットであるアジアでは、現状の間接金融主体から、キャピタルマーケット、主に資本市場にアクセスしていくという金融調達構造に変わってきていることを受けて、私どものビジネスモデルも、貸出主体の商業銀行的なアプローチを変えていこうという取組みを実施しております。特に日本国内では銀行の収益性は非常に低いと言われておりますが、私どもの海外のROEは約13%ということで収益性は高くなっております。そういう意味では海外でどうやってそれを仕上げていくかということであり、例えばローンを実施した後に、外為ですとか、デリバティブですとか、色々なものをあわせて販売するクロスセルと呼ばれる手法をとっております。

加えまして、アジアのコーポレートファイナンスでは、HSBCあるいはシティバンク、スタンダードチャーダードといった銀行が非常に活躍しておりますが、私どもの銀行もそれらの銀行に比べてさほど劣っていると思っておりません。流動性の問題、資本力の問題等は、かなり欧米銀行に伍していますし、昨今の危機周辺国、ギリシャ等への債権の保有額も少ないです。そういう意味では、この辺を軸にこのマザーマーケットで勝ち抜いていこうということになります。

私どもの弱みといいますか、そうはいいましても、勝ち残るために対応すべき点は色々ございます。例えば、昨今進めておりますグローバルM&A体制の構築ということでは、Morgan Stanleyと提携を組んでおります。また、アジアでインフラのローンをどう取り組んでいくのかということも大きな課題ですが、これにつきましては昨今RBS(The Royal Bank of Scotland)からプロジェクトファイナンスの資産を購入しております。更に、先程のトランザクションバンキング・ビジネスですとか、あるいはリテール、それからプライベートバンキング、アセットマネジメント、といったところにどんどん活躍の場を広げていく必要があると考えております。

最後のページでございますけれども、こうしたことを実現するために課題として考えております点を3点挙げさせて頂きます。まず「海外拠点ネットワークの充実」は他の外銀と伍していくためには必要であると考えております。ただ、これも自前でやるだけではなくて、現地の有力銀行と提携することも重要な施策と考えております。加えまして、現地の各国によってやはり法制・税制色々ございますので、各国の当局とのコミュニケーションというところも、官民一体になって対応しく必要があると考えております。

2番目に、やはり「グローバル人材の充実」はかなり大きなキーを占めると思っております。当然、日本人ばかりの銀行となるわけにいきませんし、先程申し上げました通り、海外で働いている2万人の大半が現地のスタッフです。そういうスタッフの登用を積極的に進めておりますし、シンガポールにおきまして研修センターを作っておりまして、8,000人の教育研修、人事異動等も含めて対応しております。最後に「システムインフラ」の充実、これもやはりトランザクションバンキングを進めるためには、相応の投資が必要ということで、システムインフラ、情報系のインフラの投資を進めていく次第です。

私どものほうからのご説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

○吉野座長

鉢迫部長、どうもありがとうございました。

それでは、引き続きまして東京海上日動フィナンシャル生命保険株式会社の吉川監査役お願い致します。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

ただいまご紹介にあずかりました東京海上日動フィナンシャル生命の吉川でございます。直近3年間、今年の6月までシンガポールにございます東京海上日動の地域統括会社で、中国・韓国を除くアジア全域とオセアニア全域の責任者をしておりました。本日はよろしくお願い申し上げます。

では、お手元の資料に沿ってご説明をさせて頂きたいと思います。それでは、ページをめくって頂きまして1ページをご覧下さい。まず最初に、世界の保険市場の規模についてお話しさせて頂きたいと思います。この統計は2009年度のものでございますけれども、損保市場は全世界ベースで約170兆円、生保市場は同じく240兆円でございます。ここで皆様にご理解頂きたいのは、北米・西欧及び日本はGDPでは約50%を占めるにすぎませんけれども、グローバル損保市場では87%、そして、生保市場では82%の構成比を現時点で占めているということでございます。

続いて2ページをご覧下さい。一方、経済成長率という点では新興国、とりわけアジア及びブラジルの成長率が高く、その中ではアジアの中では特に中国やインドの保険市場が、その市場規模を飛躍的に拡大しており、将来的に先進国並みの水準に達することが見込まれております。

3ページへお進み下さい。私が所属しております東京海上グループにとっても、海外保険事業はグローバルな成長機会の追及、グローバルに地域分散の効いた事業ポートフォリオの構築、そして、我々のコアカスタマーでございます日系企業の海外進出への対応といった観点から、極めて重要なビジネスドメインとなっておりますと同時に、今やグループ全体の利益成長を牽引する力強いドライバーへと成長しております。

4ページをご覧下さい。東京海上グループの海外戦略は内部成長と買収を組み合わせた成長戦略を策定・実行しております。新規参入が相対的に容易な事業や、高格付や豊富なリスク引受能力といった当社の強みが生かせる事業分野、例えば再保険事業等がこれに当たりますけれども、こういった当社の強みが生かせる事業分野については、内部成長を主として成長戦略を展開しております。一方、時間を買う、買収先の事業基盤や強みを活用するといった観点からは、M&Aも重要な成長戦略の選択肢であると考えております。新規参入が困難で一定の事業基盤確保が必要な欧米や新興国における元受保険事業等がこれに当たります。ただし、M&Aには買収遂行リスクや買収後の統合リスク等がございますので、買収に当たっては経営の健全性、強固なビジネスモデル、そして、高い成長性の3条件を十分満たすターゲットであるかどうかを、慎重に評価しつつ検討を進めております。

では、5ページをご覧下さい。このページは東京海上グループの近年における海外展開の変遷を記したものでございます。ご覧のように東京海上グループは2000年以降、海外における事業規模を段階的に拡大しております。特に2007年以降、欧米における相次ぐ大型買収実施により、海外保険事業は加速度的に成長致しております。ちなみに海外で働くローカルスタッフの数は、2005年の5,900名から2011年には、三菱東京UFJさんと同じように2万人を超える規模へと、約4倍近く増えております。

続いて6ページをご覧下さい。一方、高い成長率が見込める新興国市場におきましても、重点地域を中心に損保・生保等への積極的な投資を行い、中長期的な収益機会の追及を進めてまいりました。例えばインドでは2001年、インド最大の肥料会社でございますIFFCO社と損保の合弁会社を立ち上げました。また、2011年7月には同国の有力投資銀行グループでございますEdelweiss社と、生保の合弁事業をスタート致しました。さらに、東南アジアでは2002年にシンガポールに地域統括会社を創設し、Asia General Holdings社の買収等複数の買収や合弁設立を通じ、同地域における事業規模の大幅な拡大を進めてまいりました。

続いて7ページをご覧下さい。このページでは直近の当社海外オペレーションのパフォーマンスを記載してございます。正味収保は円高の影響等がございまして前年比3%減の5,265億円、そして、当社グループが収益指標としております修正利益は、ニュージーランドの地震等の影響がございまして、前年比68%減の248億円という状態でございます。

8ページをご覧下さい。グループ内における海外保険事業の占める割合は、過去10年間に飛躍的に拡大しております。海外保険事業はグループ全体の成長を牽引し、2011年度はグループ全体の利益の41%を占める見込みでございます。先程も申し上げました通り、東京海上グループと致しましては、高格付や高い引受キャパシティといった当社の強みを、内部成長が可能な再保険分野等で最大限生かしつつ、買収の3条件といった明確な買収クライテリアに基づく大型M&Aを果敢に、そして、同時並行的に実施することによりこの10年間、海外保険事業の積極的な展開を進め、その結果として、グループ収益の重要な柱へと海外保険事業を、成長させることに成功したと考えております。

では、ここから先は海外保険事業を展開する上での障害や課題についてお話ししたいと思います。9ページへお進み下さい。私が3年間シンガポールの地域統括会社におりました際、東京海上を含めた日系金融機関が海外進出先で真に現地の主要ローカルプレイヤーや、欧米系のグローバルプレイヤーと伍して闘うための競争力を持つには、ブランディングの強化とグローバルな人事制度の導入が、喫緊の課題であると感じております。当社グループにおける海外保険事業については、海外進出を行っている日系企業に対する支援を中心に、事業を拡大してきた経緯がございます。したがって、そうした進出先におけるローカル企業や一般消費者に対するブランドの浸透度という点では、残念ながら、未だ低く、そのことが現地市場を開拓する際の大きな課題となっております。

例えばアジアを例にとりますと、トヨタさん、ホンダさん、ソニーさんといった日本のメーカーさんは、概して大変強いブランド力をお持ちですが、私どもを含めた日系金融機関のブランドは、一般大衆にはまだまだ十分浸透していないというのが現状だと思います。それに対し、欧米系のグローバルプレイヤーは、我々に先んじて例えば保険で言えばAIG等は何十年も前から、地道にアジアでのブランド力アップに力を入れておりました。我々日系保険会社がアジアにおけるいわゆるローカルビジネスへの取り組みを本格化させましたのは、この6、7年でございますので、その点では先行する欧米勢対比、残念ながら、まだまだ出遅れ感があると言わざるを得ません。

また、冒頭申し上げました通り、進出先における一般消費者に対するブランドの浸透度が低いことも起因してか、現地での優秀な人材の確保がまだまだ難しいという課題も抱えております。先程当社の海外保険事業が拡大する中で、ローカル従業員の数が2005年の5,900名から、2011年には4倍近い2万400名に急増したことはご説明申し上げました。これにより多様性を受け入れられる企業文化の創造、国籍を問わず優秀な人材が適材適所で活躍できる仕組みの創設等、さまざまな人事上の経営課題に直面しているわけでございます。ご案内の通り、保険ビジネスは各国各地の規制に否応なく影響を受け、また販売チャンネルも土着性が強く極めてローカル色の強いビジネスでございます。こうしたビジネスをコントロールするためには優秀なローカルスタッフの存在が不可欠であると考えております。

ところが、一般的にローカルの人材マーケットにおける日本の金融機関のイメージは、専ら日本人、日本語優先で昇進についてもいわゆるグラスシーリングがある。また、報酬についても地場企業よりは総じて高いものの、欧米系には劣る等未だそうしたイメージが優勢で、我々日系金融機関は現地における優秀な人材の獲得に、概して苦労しているのではないかと私は考えております。また、日本企業の東京本社そのもののグローバル化が総じてまだまだおくれているということも、こうしたイメージに繋がっているのではないかと個人的には思っております。こうした状況を乗り越えるために、例えば東京海上グループでは積極的に現地マネジメントのローカル化及び主要ローカルスタッフのプロファイル化や、地域間異動の促進等を進めておりますが、まだまだ道のりは長く、さらなる地道な努力の積み重ねが必要だと考えております。

続いて、下段にございます日本と進出先の規制内容や監督方針についてですが、ここについても彼我の間にはまだまだかなりの隔たりがあり、規制の遵守状況にもばらつきが見られ、そういった状況が我々金融機関が進出先で、ビジネスを行う上での障害となっている場合が多々ございます。

10ページをご覧下さい。10ページはアジアマーケットを例にとって、アジアマーケットでビジネスを行う外国保険会社が直面している障害の具体例を記載したものでございます。例えば中国においては外国保険会社の営業地域の制限や支店認可基準のあいまいさ、外資に対する自賠責保険の未開放等が挙げられますし、また、インドにおいては外国保険会社の出資割合が長年26%に据え置かれている、そういった問題が挙げられると思います。

続いて11ページでございますが、11ページは必ずしも外国保険会社特有ではございませんが、それぞれの市場で事業を行っている保険会社が障害や課題と感じているケースを記載しております。例えばインドにおける代理店手数料に関するルールの形骸化の問題や、マレーシアにおける自動車保険タリフの適正化の必要性等が、その具体例として挙げられます。

12ページへお進み下さい。それでは、最後に進出先における障害や課題に対する解決の方向性について触れておきたいと思います。まず現地市場での競争力と優秀な人材の確保についてですが、もちろん各国において地道な広報やCSR活動を展開することにより、ブランディング力の向上に努めるのは当然でございますが、現実的には進出先でのブランドの浸透度向上にはかなりの時間を要するため、これらの課題に迅速に対処するには、M&Aが非常に有効な解決策であると考えております。ついてはM&Aの際に諸外国の保険会社に劣後することのないような、障害となっている規制等の緩和を是非して頂ければと思っております。実際、私のおりましたアジアにおいても、2007年、Asia General Holdings社を買収する際、同グループが傘下に日本の規制では認められない業態子会社を多数持っていたため、そうした子会社を売却または清算する必要に迫られ大変苦労した経験がございます。

また、発展途上国における保険の普及促進に向けて、官民合同で例えば自動車賠償責任保険制度の未整備な国、インドネシア等がその良い例でございますけれども、そういった国における同制度の整備に取り組むとか、国民の保険に対する意識の低さや、損害査定網が未整備であること等により保険の普及が遅れている発展途上国において、インフラ整備策の一環としてのインデックス型保険、例えば天候保険等がその例だと思いますけれども、そういったインデックス型保険の普及促進に向けた取り組みを行うとか、発展途上国における個人向け巨大災害保険制度、例えば日本における地震保険制度や、米国の洪水保険制度等の設立に向けた取り組みを行うこと等は、日本及び日本の保険会社がそれぞれの国の保険インフラ整備に官民一体となって貢献することを通じて、そのプレゼンスを向上させる絶好の機会というふうに考えております。また、そういった取り組みを行うことによって、冒頭申し上げましたブランディング問題の解決にも寄与すると考えております。

また、日本と進出先の規制内容や監督方針の違いの問題については、世界的に規制や監督が統一化の流れにある中では、日本が特に新興国市場における規制監督の標準化に貢献することができれば、こうした問題の解決につながるのではないかと考えております。アジアのマーケットで申し上げますと、まだまだマーケットに秩序はなかなかございませんで、日本がこれまで過去において経験してきた色々な仕組み、例えば保険で言えば料率算定会制度、ノンマリン代理店制度、例えば修理費の標準化をする自研センター、こういったインフラをアジアに持っていくということは、アジアのマーケットの健全な成長に、日本が過去の経験を踏まえて貢献できる非常にいい機会ではないか。その中で我々日本の保険会社が一緒になってそういった努力をすることで、先程から申し上げているプレゼンス、ブランディングに繋がっていくのではないかと思っております。

以上で私のプレゼンテーションは終了させて頂きますけれども、ご参考として13ページには東京海上グループのこれまでの主な海外におけるM&Aの実施例、14ページには各国主要保険会社の時価総額及び正味収入保険料のランキングテーブル、そして、15ページには当社グループの海外ネットワークの所在地をそれぞれ添付致しましたので、後ほど時間がございましたらご覧頂ければと思っております。

以上、ご清聴ありがとうございました。

○吉野座長

吉川監査役、ありがとうございました。

それでは、引き続きまして大和キャピタル・マーケッツ株式会社の中村参与お願い致します。

○中村参与(大和証券キャピタル・マーケッツ)

大和証券キャピタル・マーケッツの中村でございます。よろしくお願い致します。

大和証券に入社以来、海外駐在の経験は通算で15年弱となりました。最近ではリーマン・ショックの起こりました2008年の秋まで、イギリスの現地法人の社長をしておりました。本日は我が国金融業の国際競争力強化という観点から、海外の金融機関と比較しての我が国金融機関の強み・弱みにつきまして、これまでの海外経験を踏まえまして、考えているところをお話ししたいと思います。

まずお手元の資料のところで1ページ目でございますけれども、本邦証券会社の海外展開の歴史ということでチャートを載せさせて頂いております。日本の証券会社の海外展開につきましては、海外の年金等を中心とする機関投資家に対しまして、高度成長経済を支えます成長性の高い日本企業の株式を、セールスするということが端緒となっていたわけでございます。その後につきましても、日本企業の旺盛な資金需要が続きましたこと、そして、また好調な株式市場を背景としまして、日本企業におきましては株式等による資金調達が活発化するということになりまして、さらなる海外投資家層の拡大へといったことが繋がってきたわけでございます。また、日本の資本市場における規制の問題もございまして、日本企業が海外の資本市場において資金調達を行うという事例も多く、海外拠点におきましてはそのサポートを行うという役割も果たしておりました。

一方、東京市場でございますけれども、世界有数の市場である東京市場ということでございまして、海外企業の上場も盛んに行われておりまして、このチャートの真ん中ぐらいに数字も出ておりますけれども、海外拠点におきましては現地企業のサポートを行うという活動も行われておりました。ピーク時の91年には127社が上場しておりましたが、その後は減少が続きまして、現在は13社という形になっております。

その後、90年代初頭のいわゆるバブル崩壊を経まして、日本市場の低迷が続く中、日本の金融機関や企業は不良債権の処理に追われ、海外拠点における日本関連ビジネスも縮小傾向という形になりました。一方で、海外拠点におきましては現地関連ビジネスを拡大させておりましたけれども、その後に起きましたロシア通貨危機の影響もありまして、90年代後半には海外事業自体の縮小を余儀なくされたという歴史がございます。海外業務を再び拡大させていくというのは、この2000年代真ん中ぐらいということになりますが、これはやはり日本経済が好調であったという時期と期を一にしております。そういった意味では、これまで日本の金融機関の海外展開とその競争力というのは、日本経済、日本企業、あるいは、日本市場の動向に大きく左右されていたと言えると思います。

次に、2ページ目のところには本邦・外資系の事業面における相違、それから、3ページ目には相違の背景となってきた課題ということを列挙させて頂いております。このように海外事業の展開を行う中で、日本の金融機関の弱みということからお話をさせて頂きますと、1つ目には、まず言語ということで、特に英語の運用能力の問題が挙げられると思っております。もちろん日本から海外拠点へは英語が堪能な人材を派遣しているわけですけれども、やはり現地での優秀な人材を採用するというに際しましては、採用される側からは日本の本社とのコミュニケーションに支障が生じないかなと、言いかえれば、本社に英語が堪能な人材が少ないということがネックになって、例えば経営レベルへの登用等、本人として日本の金融機関におけるキャリアプランが描きにくいといったことで、日系の金融機関が敬遠されるといったことがあるかもしれません。

また、2つ目としては現地採用の人材における企業に対するロイヤリティ、あるいは、カルチャーの違いがどうしてもありまして、本社から派遣した日本人との間で、それを克服することも苦労することになるかもしれません。本社から赴任しております拠点長が、現地スタッフと本社との間のリエゾン的な役割に終始するというケースも出てくる可能性もあると思います。一方、営業活動の面でいいましたら、欧米におきましては一定の規模の機関投資家や企業でありましたら、日本の証券会社についてもご理解を頂いておりますけれども、欧米金融機関との知名度等に差異がどうしてもありまして、さらなる顧客基盤を拡大させるということが難しい事情ということがございます。したがいまして、この点では現地に密着しました金融機関を買収する等の方策を講じるというのも選択肢と考えております。

また、リーマン・ショック前までの事象を捉えますと、欧米金融機関におきましては、発行体の発行した有価証券を引き受けて、投資家に販売するという伝統的な証券ビジネスから、2000年代の初めごろから、発行体企業の調達ニーズと投資家の運用ニーズが一致しない場合は、商品ストラクチャーを組みかえ、場合によっては自己のキャピタルを使いながら、市場に流動性を供給するという証券ビジネスへとシフトしてきています。その過程でヘッジファンドやプライベートエクイティファンド等の囲い込みにも成功して、マーケット部門の収益が急拡大してきたという歴史がございます。そんな中で、欧米金融機関では自己資本を活用したビジネスの拡大過程におきまして、リスク管理能力も高度化させてきたということでございます。しかしながら、一方、リーマン・ショック等流動性が急激に枯渇するという場面では、大きく自己資本を使ったビジネスを展開してきました欧米金融機関におきましては、収益機会の低下あるいは深刻なリスクが浮かび上がってきたというのはご存じの通りかと思います。

もう1点、地政学的な視点から申し上げますと、80年代の債務危機を切り抜けた後に、2000年代に入ってから資源価格高騰という膨大なキャッシュ・フローを背景に、新興国へと転換してきました南米を資本市場に呼び込んだ米国、あるいは、ヨーロッパではEU統合による巨大市場を作り上げて、また、同様に資源価格高騰によって新興国となりましたロシア、中東諸国から巨大マネーを呼び込んだことというのも、欧米金融機関の競争力の源泉になっていたのではないかと思います。なお、伝統的に金融関連におけるルールメーキングというのが専ら欧米の覇権争いの中で行われたという関係もあり、その点でも日本の金融機関には不利な状況ではなかったかと言えると思います。

さて、一方、それでは日本の証券会社の強みということになりますと、参考資料を載せさせて頂いておりますけれども、日本に蓄積された膨大な金融資産をアジアが必要とする成長資金としまして、また、日本が誇る先端技術や高度なサービス・ノウハウといったものをアジア内需とか、インフラ開発に結びつけていくための最も有利なポジションを占めているということかと思います。当社におきましては2009年秋に「アジアを代表し世界に通用する質の高い投資銀行を目指す」という目標を掲げました。アジアビジネスの強化につきましては、マーケット部門とインベストメントバンキング部門を集中的かつ同時に強化しておりまして、現状では香港がロンドンやニューヨークを上回る最大の海外拠点となっています。

このアジア強化は日本や欧米軽視ということではございませんでして、日本というコア市場の顧客基盤拡大のためにも必要なことであると考えています。また、アジアビジネスは結果としてアジア地域以外の拠点の利益拡大にも繋がる取り組みだと思います。欧州におきましてもアジア物のプロダクトの組成・供給を通じて収益を上げ、アメリカにおきましてもアジア物の販売等によって、アジアビジネスの利益を取り込んでいくということになります。アジア株をはじめ外国株式のニーズは大和証券のお客様の中でも高まっておりまして、サービスの拡充が必須となっていると思います。

大和証券には海外展開に積極的に取り組んできた歴史がございます。年表を載せておりますけれども、とりわけアジアでは1971年に世界初のアジアダラー債でありますシンガポール開発銀行の主幹事を務める等、アジア資本市場における多くのパイオニア的な取り組みを行ってきました。また、1980年代にはアジア各国から多数の研修生を受けいれる等、中長期的な視点に立ったネットワーク作りにも注力をしてまいりました。こうした活動が評価され、当時は「国際の大和」と言われていたほどでございます。アジアの時代が到来した今こそ、長年にわたり築いてまいりましたアジアにおける事業基盤、ネットワークを活用するときだと考えております。

私のプレゼンテーションは以上です。ご清聴ありがとうございました。

○吉野座長

中村参与、どうもありがとうございました。

それでは、今までのお三方のご発表に関しまして、どなたからでも結構でございますが、ご意見がございましたらお願いしたいと思います。じゃ、川波委員、どうぞ。

○川波委員

川波と申します。大変詳細で具体的な情報をご提示頂きましてありがとうございました。

いま少し教えて頂きたいことがございまして、鉢迫部長にいま少し展開して頂ければと思います。先ほど、海外業務の収益を現状23%であり、これを40%ぐらいまで高めていきたいのだというお話でございましたけれども、これはどういうふうにして高めていらっしゃるのかなと思いながら聞いていました。最後のほうでグローバルなM&Aの体制や、インフラ論とか、もともと強いProject finance、それから、リテール、プライベートバンキングといったようなことをご指摘になりましたけれども、いま少し具体的にお話し願いたいと思います。と申しますのは、国際銀行業務の展開という観点で見ますと、私は3つぐらいのタイプがあるのかなと思っております。

1つは、企業が国際的な展開をしていく上で、さまざまな金融的なニーズが必要になると思います。そうした企業の国際的な展開に即して、必要な金融業務を提供していくという、バンク・フォロー・インダストリーというような形です。2つ目のタイプは国際金融センターで国際金融業務を展開するという形が考えられると思います。ロンドンとか、ニューヨーク、香港やシンガポールといったところです。それから、3つ目のタイプとして、とりわけ成長著しいエマージング地域の現地銀行を丸ごと買収して、そして、現地において現地通貨建てでリテール金融業を展開していくという形の、国際銀行業務が展開していっていると思われます。

第三のタイプについては、例えば東欧あるいは旧ソ連圏、バルト三国等はスウェーデンの銀行が結構出ていると思いますし、南米ですとスペインの銀行等を中心にそういう形が展開しているし、アジアでもタイで同じようないわゆる金融FDIというような形の国際銀行業務が展開していて、これをBISではグローバルバンキングという言い方をしていると思います。したがって、こういう形の国際金融業務の展開をどのように位置づけていらっしゃるのかに関心がございます。先程は多少ホールセール的な中身をご説明になったと思うんですが、リテールのような形でこういう国際銀行業務を展開していくという戦略の位置づけ、この辺についていま少しご説明頂ければありがたいと思います。

○吉野座長

鉢迫部長、お願い致します。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

はい、ありがとうございます。

今、川波先生がご指摘のまずバンク・フォロー・インダストリーという部分、これはまさに我々の今までやってきた銀行業務のベースでございます。邦銀は当然ながら日系企業のための銀行であったという歴史があるわけでございまして、いわゆるその受け皿的な部分でネットワークを張ってきたという過去の歴史がございます。この業務は我々の今のベースの収益となっておりますので、当然、維持・発展しながらこれからも取り組んでいくことになります。ただ、昨今のアジアの成長というのは、いわゆる日系企業の成長というよりは、どちらかといいますと、現地の企業の成長であり、かつ、ご指摘のリテールの成長という部分が大きいと思われます。つまりアジアの成長をどう取り込むかということは、現地の企業をどう取り込むか、あるいは、現地のリテールをどう取り込むかという部分にかかってくるとも思っておりまして、私どもは今まさにそれを進めているところです。

現地の企業をどう取り込むかという点は何とかうまく進んできておりますが、リテール部門、これはやらなければいけないと思っておるのですが、我々日本の銀行の持っているノウハウがどこまで使えるのかというと、おそらく難しいのではないかと思っております。そうなると、やはり現地の銀行を買収して、マネジメントしていくというスタイルになろうかと考えております。ただし、大きなマーケットであります中国は、当局の規制もあり、現地の銀行を買収していくというのは、多分、先の話になると思っております。では、インドネシアはどうなのかということですが、やはり当然ながら買収金額が高くなってきておりまして、色々と研究は続けておりますが、なかなか対象とうまくマッチングしてこないというのが実態でございます。戦略の位置づけをまとめますと、日系企業とのお取引をベースにしまして、現地企業との付き合いを広げる。加えて、現地のプロジェクトファイナンス的なリスクのとり方を活用し、コーポレートリスクだけではなくて、ストラクチャーのリスクを取り込むというスキームを拡大する。さらにその先でリテールということを考えております。

2番目にご指摘頂きました国際金融センターとして生きていくのかという部分につきましては、これは私どものいわゆるマーケット部門の強化が非常に重要になってくると思いますが、この部分もまだまだ課題はございます。そういう意味ではMorgan Stanleyとの提携等を通じながら、今後の展開を考えていくということで、一応の足がかりはつくったというのが、まさに、今、足元の実態ですけれども、それをどうやって具体策に移していくかということを日々検討している状況でございます。

○川波委員

ありがとうございました。

○吉野座長

篠原委員。

○篠原委員

今、鉢迫さんのご説明を聞いていて思ったのですが、今、アジアを中心にソーシャルビジネスが、非常に活発になっていますよね。どういうものをソーシャルビジネスと捉えるかというのは色々あると思うんですけれども、例えばおたくでは何か取り組みをされているのかどうか。私はファンドをつくって、そこから繋げていくようなやり方が、一番現実的なやり方かなというような感じも素人的にはするんですが、いかがですか。私は大変これから有望なマーケットだと考えているんですけど、取り組み状況がもしございましたら教えて頂きたい。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

今ソーシャルビジネスとおっしゃっている分野、具体的にどの分野のことをおっしゃられていらっしゃいますか。

○篠原委員

イギリスやバングラなどで活発になっていますよね。要するに社会的な責任とビジネスとの両立を図るということでしょう。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

はい、まず、

○篠原委員

あんまりそういうことはお考えになって今までやられてなかった?

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

色々と銀行の中で進めていく中で、いかに社会に貢献をしていくかという点は考えております。ご指摘頂いたファンドをつくるという手段も当然ございまして、私どもも現在、色々な形でファンドを現地の銀行や企業とやっております。我々だけでは現地の企業や事業に対する目利きがなかなかできない点もございますので、どこの企業、あるいは、どこの金融機関と組むかというところは一番大きなポイントでございます。

もう1点、やはり投資家を呼び込む手法という点は、なかなか我々の独自の力ではできないものですから、そういった部分は当然意識しておりますし、特にエネルギー関係等では色々な形で検討を重ねているところでございます。

○篠原委員

ブランド力を高めていくというのも、1つの方法かなという感じもしますけどね。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

はい、おっしゃる通りですね。

○吉野座長

インフラ関係とか、今……。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

今のところでご発言させて頂いてよろしいでしょうか。

○吉野座長

お願いします。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

東京海上につきましてはインドで私どもの合弁会社が、先程ちょっと触れましたけれども、インド最大の肥料会社のIFFCO社というところと、IFFCO-TOKIOというジョイベンをやっておりまして、インドには全体の売り上げの何割かはいわゆるルーラル向けのビジネスをやりなさいという、そういう規制がございまして、その肥料会社であるIFFCO社のインド全体で5,000万人農民とのビジネスがございます。そこのディストリビューションを使いましていわゆるマイクロインシュアランス、天候保険ですね、これを2004年から積極的に販売しております。マイクロインシュアランスでございますので、1ポリシーいわゆる1保険証券の保険料は大体80円~150円ということで、非常に小さいわけでございますが、たまたま私どものパートナーが肥料会社で、農民にその肥料を日々提供しているということでございますので、そこのディストリビューションに重ね売りする形が可能だったものですから、こういったものができるようになったと。

もともとインドはそれなりに気象データがしっかりしておりまして、日本で東京海上、2000年の最初のころから、結構、天候保険を積極的にやっておりましたので、そのノウハウを移植をしてインドで大体150ぐらい、そういう定点観測できるいわゆる気象設備がございまして、そこのデータ大体100年分ぐらい一応蓄積がございまして、それを分析をして今言ったような商品につなげておるということで、現在そういった80円~150円のポリシーではございますけれども、全体で約40万人の農民の方にこのマイクロインシュアランス、天候保険を販売しております。保険料的にはこれ1口大体80円~150円、地域によって若干違うんですけれども、大体10億円ぐらいまで保険料規模は伸びております。ご案内の通り、干ばつの影響で農民の方の収入は大きく減るということでございますので、こういった天候保険は非常に農民の生活を安定させるという意味で、有意義な商品ということで、大変、色々な国からもこの例を教えてほしいということで、アジアのほかの国からも色々政府からご要請があって、ご説明しているような状況でございます。以上、簡単でございますが、ちょっと補足させて頂きます。

○吉野座長

井潟委員、それから、小幡委員。

○井潟委員

いずれの方々につきましても、取り組みについて非常に分かりやすくご説明頂きましてありがとうございました。日頃自分が所属しているグループの話ししか聞くことができないものですから大変参考になりました。グローバル展開の取り組みという点では、私がまさに所属する野村グループも金融危機真っただ中で、リーマンブラザーズの中東含む欧州、それから、アジアの人員承継を機に、ワールドクラスの独立系投資銀行というものを目指して、日本金融グループの中では最も本格的に海外展開を行っているという自負がございますので、私は研究者としてこの席に呼ばれているかとは存じますが、少しの間だけ野村グループの一員として、少しお話しさせて頂くことをお許し頂ければと思います。

例えば野村グループの社員数ですが、本年3月末では全体で2万6,800名になっております。そのうちの約44%、約1万2,000人が海外拠点の現地の方々を中心とした活動です。日本からの派遣社員の数は以前に比べると減少しています。なお、リーマン承継前と比べて、特にアジアは900人だった人員数が今5,400人、それから、欧州も1,800人から4,500人と大幅に増員して、取り組んでいるという状況です。

昨年度の決算ではグループ収益全体の42%が海外から計上されています。人事制度や報酬制度などもホールセール部門を中心に、かなり大幅な改革を行っておりまして、英語でのコミュニケーションについても、私も改めて学生時代に戻ったくらいの熱心さで英語を勉強せざるを得ないような状況です。さらに昨年1年間については、こういった体制を反映してということだと思いますが、例えばM&Aあるいは株式による資金調達業務などでは、欧州やアジアの海外リーグテーブルで地元の大手の金融グループさんと競り合いながら10位台に入るようになっておりまして、これを早めにトップ10入りを目指すんだということが、グループ内では共有されています。

何故こういうグローバル戦略の展開を進めているかということですが、これは三菱東京UFJさんのプレゼンにもありましたし、大和証券キャピタルさんの内容を同業として少し補足させて頂くことになりますが、私が野村グループの一員として理解しているということは、一義的には野村グループが日本に依拠する金融グループとして、長らくお取引をさせて頂いている日本企業、しかもこういう日本企業は今や相当厳しい国際競争にさらされている状態であり、こういう日本企業がますます国際競争を勝ち抜き、成長を求めていくために展開しているクロスボーダーでの活動を、当社は投資銀行の立場で、特にM&A及び海外でのマーケットからの資金調達という点において積極的に支援していく、ということですそのためにもレベルの低いサービスはできない、自らが各地域でその地域を代表する金融グループと伍する、あるいは、それを上回る投資銀行になって、そうした国際競争でしのぎを削る日本企業に必要とされる、ワールドクラスの商品とサービスを提供する、これを忘れてはいけないし、それが基盤になっているということではないのかな、と日ごろは考えている次第でございます。

実際にこの6月までの1年余りを見ましても、以前に比べますと、例えば大手の日本企業さんによる海外のM&Aの大型案件の財務アドバイザー業務としては、大手損保さんのトルコの会社への出資、鉄鋼会社さんのインドの会社への出資、薬品会社さんのスイスの会社への出資、商社さんによるコロンビアの炭鉱関連の資産の買収、さらにインドのインフラビジネス関連、こういった案件などをやはり相当組織全体として積極的に手がけ、進めていくんだという機運が本当に定着してきた、という印象を受けております。少し研究者の立場から離れたグループの一員としてのお話になってしまいましたがお許し下さい。以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございました。では、小幡委員、どうぞ。

○小幡委員

慶応大学の小幡です。

鉢迫様と吉川様に関連した質問を1点ずつお願いしたいのですけれども、三菱グループの日本企業絡みの話は本日大変よく分かったのですけれども、いわゆる外・外といいますか、日本企業と一切関係ないところで、海外のマーケットで海外の取引先を獲得したり、そこで収益を上げたりというのでの典型的なというか、すごくきれいな勝ちパターンという、これは今努力されて広げられているところだと思うんですが、これはうまくやったというか、こういうのをどんどん増やしたいという例をできましたら1つお聞きしたい。三菱銀行ならではというか、邦銀ならでは、どちらかとして、こういう勝ち方があるんだなというのを是非参考にさせて頂きたいと。

吉川様にも同じよう趣旨なんですけれども、M&A等あるいは社員の採用においても、ブランド力や今まで経緯でやや欧米に出遅れたところがあるというお話でしたけれども、ただ、そこを逆転というか、追い付いて逆転したり、新しいものを取っていく時に、今までも欧米のライバルに勝ってM&A成功した例もあると思うんですけれども、それは日本というところを出自とする企業としての勝ちパターンがあるのか、あるいは、やっぱり東京海上という会社としての組織文化としてのアドバンテージで、外資系というか、欧米系のところに勝った例があるのか、どちらでもいいのですが、M&A等で海外でほかのライバルに勝った典型的等バンテンージというか、例を教えて頂ければと思います。よろしくお願いします。

○吉野座長

鉢迫部長、お願いします。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

例えば、アジアの中でグローバルに展開しているアジアの銀行というのは実はそんなに多くはないのかなと思います。中国の銀行あるいは韓国の銀行は、地元では頑張っておられますけれども、例えば中国の企業が南米に進出します、あるいは、韓国の企業が北米で展開したいというときに、それぞれの地場の銀行が何かお手伝いできるのかというと、実はさほど慣れていないということが、結構、現実として起きていると思っています。韓国にも中国にもグローバル展開を目論んでいる企業群がかなりあり、当然、アメリカの銀行を使うという選択もあると思いますが、やはりアジアの銀行に相談するということを好む傾向もあると思います。

そういった点では、日本の銀行というのは過去の歴史といいますか、経験が結構ございまして、日本の会社が海外に進出するときの支援であるとか、あるいは、ファイナンスの手法といったノウハウがございます。今まで日本企業に提供してきたサービスをそのままアジアの大企業にご紹介することも可能であり、これがアジアの大企業からは非常に評価されて、日本の銀行はなかなか面白いじゃないか、ということで使って頂くケースが、ここへ来て増えているなと思われます。もちろん私どももリーマン・ショック以降、バランスシートを生かした営業で、色々な世界の名だたる企業と取引をしてきたという事実もありますが、これはどちらかというと、たまたま他の銀行と比較して我々がB/Sを使えたということなので、先生のご質問頂いた日本の銀行の特徴を活かした事例の1つは前に述べた事例が該当するのではと思います。よろしゅうございますか。

○小幡委員

はい。

○吉野座長

吉川監査役、どうぞ。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

東京海上としての勝ちパターンということですけれども、まず1つ言えることは、我々の強みをしっかり認識して、それを生かせる分野にやっぱり選択と集中という形で取り組んだ、そういったケースでないとなかなか現実的には勝てない、実際そういう分野はそう幾つもあるというわけではないというのが事実だと思います。

1つの成功例として挙げられるのは、先程のプレゼンテーションの中でもちょっと申し上げましたけれども、我々の強みというのは1つはやはり日本企業としては格付がなかなか高いほうで、今、ダブルAという格付を持っておりますので、その格付を生かす。それから、財務基盤も非常にしっかりしているということで、引受能力というものもグローバルのプレイヤーとの比較では高いものを持っているということでございます。そういったものを生かすということで、先程申し上げました再保険のビジネスというところで、我々かなり積極的にビジネスを展開して、それなりの成果を上げているのかと。

特に私どものポートフォリオは、海外展開するまではほとんど日本に全部ベットしているような形になっておりましたので、それを海外のリスクに置きかえることで、全体的にリスクの分散がきくという意味で、欧米リスクをとるという意味では、もともとポートフォリオの構成的に優位な立場にあったかなと思っております。そういった観点をうまく生かしながら再保険ビジネスをかなり積極的に拡大し、それなりの成果が上がったというのが、1つはホールセールの世界ではあるかなと思っています。

一方、リテールのところはまだかなり苦労しているところでございます。それは先程言いましたブランディングの問題もあり、リテールはアジアの主戦場でやっているわけでございますけれども、私、個人的に思っておりますのは、やはり冒頭申し上げた日本のメーカーさんが非常にアジアではブランド力があるということを申し上げましたので、何かそこと連携をしてリテールビジネスができないかなということを考えております。やはり保険のリテールビジネスで大きいウエートを占めておりますのは自動車保険でございます。日本でも売り上げの半分を超えるものが自動車から来ていると。現在、アジアもどんどん経済発展をしておりまして、その牽引役はやはり自動車、自動車の販売台数がどんどん増えている、いわゆる日本の昭和30年代、40年代のモータリゼーションが、今まさにアジアで起きているのだと思います。

その中で日本車のシェアというのは、国によってはもう9割に近いシェアを握っていたりするわけでございます。当然、自動車に付随するものとして自動車保険がございますので、日本の自動車メーカーとタイアップをする形で我々の保険、日本で日本のディーラーシップに我々保険をもうこの何十年間提供してございますので、そういったノウハウもかなり蓄積しております。そういったノウハウをうまくアジアで活用できないかなということを、今まさに色々日々苦闘しながらやっているという状況で、まだ完全な勝ちパターンができているわけではございませんけれども、そういった努力をリテールの世界ではやっているということだと思います。

○吉野座長

ありがとうございました。多分、もう少しベトナムなんか行くとオートバイ保険とか、まだまだ色々やるところがあると思いますので、是非頑張って頂ければと思いますが、ほかに。

では、東副大臣のご質問を池田参事官がしてくださるということです。

○池田総務企画局参事官

先程、副大臣が公務の都合で退席をさせて頂いたのですけれども、その際に一番最初の鉢迫部長の御説明につきまして、幾つか質問をさせて頂きたいということで、私のほうから質問をしておくようにということを指示頂いております。3点ほどございますが、1つは、鉢迫部長のプレゼンテーションの中で色々データも提供頂いているわけですが、一般的な質問として、金融業の国際競争力を測定する指標としては、色々なデータがありますが、どういう指標で評価をするのが良いとお考えか、ということ。

2番目に、それにも関連して、より具体的な質問として、鉢迫部長の資料の4ページに1つの比較のデータがありますが、この中で時価総額という表がございまして、これは何の時価総額かということも確認させて頂いたほうがいいかと思いますが、副大臣からは預金や貸出が2位とか、5位というのに対して、その時価総額のほうは23位というふうに非常に低くなっているのは、これは時価総額がどういう構成要素で、それでどうして預金が2位でありながらこの時価総額が23位なのかと、そういうことをお尋ねしたいということでございました。

それから、3番目は、これは川波先生のご質問と重なる部分があるかと思いますので、そこでお答えになった部分だということであれば、そのようにご指摘頂ければと思いますが、頂きました資料で20ページに、今後の取り組むべき課題ということが書かれておりますけれども、副大臣からの質問は、こういう課題の先にある御行としての究極の目標に、どういう目標があって、こういう課題というものを掲げているのかということを、お尋ねしたいということで、以上3点、お答え頂ければと思います。よろしくお願いします。

○吉野座長

お願い致します。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

ありがとうございます。まず1つ目のご質問でございます国際競争力をどの指標で評価すれば良いか、これは大変重要な問題でありますが、一方で大変難しい問題だと思っております。先程お示ししましたリーグテーブルなるものがございますが、これによって、毎年、毎年、この分野ではうちが1位だ、あの分野ではあそこが1位だというような、分野ごとの競争力を測定することは可能だと思われます。一方で総合力というものを何で評価したらいいのか、これは確かに非常に悩ましい部分でございます。究極的には利益なのかもしれませんし、あるいは、ネットワーク、あるいは、顧客数なのかもしれません。すみません、ここは私も明確にすぐ答えられないところではございますけれども、我々が一番大事な指標の一つと思っております時価総額については、ある程度株主の皆様、あるいは、マーケットの評価にも繋がっていく指標であると考えております。

2番目の時価総額でございますが、私どもも時価総額トップ10入りを目指すということをIR上で言っていた時期もありまして、今やそれが23位ということになっております。副大臣のご指摘の通り、預金・貸出が大きいということは時価総額を拡大する意味では有効なのですが、その一方で大きさよりも効率性あるいは利益率、ROEの影響を受ける部分も多々ございます。日本の銀行の特徴としてやはり資産を回転させずに、バランスシートで勝負してきたということも、この数値の中に出てきていると思っております。そういう意味で、我々としても預金・貸出が大きいから良いというつもりはあまりなくて、どちらかというと、時価総額をどうやって上げて株主の期待に応えていくかというところが、大きなポイントだと思っております。

一方で中国の銀行の時価総額が非常に大きいというのは、過去からの内部留保の蓄積もあると思いますが、当然株価が高いということと、やはりかなり政府が資金を投入しているということもあると思います。やはり日本の銀行は、よく指摘されるとおり、利益率が低い、効率性が悪いという部分で、このような時価総額の数字になっているということは確かだと思います。現在、私どもでは、日本国内の収益性の低さを海外並みの収益性まで何とか引き上げて、全体の効率、ROEを高めながら時価総額を上げていこうという戦略に取り組んでいる次第でございます。

3番目にご指摘頂きました、最後のゴールは何かというところでございますが、これも私が説明する立場にあるわけではないのですが、アジアナンバーワンの銀行を目指そうということで、信頼あるポジションを目指そうということを一つの目標としております。当然、アジアというのは私どものマザーマーケットと感じておりますし、そのアジアをリードする銀行になろうということで取り組んでおります。ナンバーワンを何で評価するのかという、1番目、2番目のご質問とも繋がってきますけれども、我々としてアジアで信頼される銀行を目指そうということで今取り組んでいる次第でございます。回答になっているかどうかわかりませんが、そういう形で進めております。

○吉野座長

ありがとうございました。

ほかにございますか。では、家森先生、どうぞ。

○家森委員

幾つか教えて頂きたいことがあります。まず、日本の金融機関の国際化というと1980年代に活発だった時期があるんですが、今回の国際化の進展とどういうような違いがあるのかについて教えて頂ければというのが1つです。2つ目は、日本の金融機関が国際展開を、もう既に立派にされているんですけれども、今、これについて障害になっているような規制などがまだ残っているのかという点を教えて頂きたいです。もう一つは、中小企業の国際化を、日本の金融部門としても支援していこうということでやっていますけれども、そういう点で何か障害が実務上起こっているのかという点です。それから、4つ目は、本日は出ていくほうばかりの話だったんですけれども、外国の企業に日本に来てもらいたいというのも同時に考える必要があるわけですが、そういう点で何らかのアクションをとられているかという点を教えて頂ければと思います。

○吉野座長

どなたからも結構ですけど、いかがでしょうか。鉢迫部長からお願いできますでしょうか。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

はい、わかりました。

まず1点目の80年代との違いというところで申し上げますと、80年代は日本の大企業が中心となり海外に進出していった時代と考えております。銀行もその動きにあわせて現地のお客様のフォローや現地ネットワークの拡大をしてきたという背景が強かったと思います。そういう意味では、大企業を中心とした拡大の時期であり、輸出産業、現地の安い労働力、あるいは、現地での輸出を意識した進出であったというのが80年代であったと思っております。

一方で現状は、輸出型から内需型へ移行しているということ、それから、中堅中小企業の中でも、大企業や自動車産業のサポーティングインダスリーといったレベルではない、もっと小さな企業がやむを得ず、やむを得ずというと表現は適切ではないかもしれませんが、出ざるを得ない環境で進出をしているというのが、今のまさに足元の状況ではないかと思っております。一方で我々銀行の国際化という面から申し上げますと、日系企業の繁栄がイコール我々の繁栄であったという時代が80年代かと思いますが、今はそれが広がって、地元企業、あるいは、地元経済の発展が我々の発展に直結していくという形態に変わりつつあるかなと思っております。

2点目の規制につきましては、日本側の規制というよりは、現地での規制が論点になると思います。先程の東京海上さんのお話がありましたけれども、特にアジアを中心とした各国が元気でございまして、自分の国のための規制というのは日々朝令暮改的に出ているところがございます。これに対して私どもが何かを言うよりも、もはやこれは国の発展段階に応じて仕方のない部分であろうとも思います。我々も長年、地域によっては、50年以上、100年近く営業してきているわけでございますので、その中でうまく地元の規制に合わせてやってきているというのが実態でございますので、大きな規制で何か困っているということは現時点では特にございません。

3点目の中小企業の国際化につきましては、これは先程ちょっと申し上げましたけれども、やはり中小企業特有の悩み、当然、人材の悩み、言葉の悩み等は色々とございます。それは大企業にアドバイスするのとは全く違う形態のものもございますので、中小企業の皆様用に、グローバル経営相談室をつくって対応しております。

最後の4点目、日本に進出して下さいということは、我々も当然ながら現地で言っておりますが、では進出しよう、というふうに直ぐにはなっていかないというのが実態でございます。ただ、昨今非常に増えているのは、震災の影響もあるのでしょうが、日本の技術力のある会社に興味があるという表明を、アジアなり海外の有力な会社が言い出しているということが1つあげられます。それから、日本の企業の海外での販売を手伝ってあげるよと、例えば、中堅中小の技術力のある会社でも海外での販売で困っているのなら、私のところに相談するように言ってくれというような、進出というよりはアライアンス的なお話がここへ来て増えているのではないかと感じております。

○吉野座長

ありがとうございます。じゃ、お隣の吉川監査役、どうぞ。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

まず最初の80年代との違いですが、おおむね三菱東京UFJさんの鉢迫部長のおっしゃったことと近いわけですけれども、やはり80年代は我々専らやはり日本企業さんにくっついて、海外に出てそのサービス援護をする。したがって、ビジネスもほとんどホールセールビジネスに特化していたと。なおかつ、まだ日本のマーケットが収益性がそれなりに高いマーケットでございましたので、海外はあくまでも、どちらかというと付随的、日本のお客様をサービスするために海外に出ていくという位置づけだったかなと。

ところが、今の海外の状況は様変わりでございまして、ホールセールビジネスは正直言って、保険につきましてはそれほどもうかるビジネスはなくなってきていまして、やはりリテールでどう勝っていくかというのが、将来、国際マーケットでの雌雄を決する、特にアジアでの雌雄を決するというふうに我々見ておりまして、そういう意味ではリテールビジネスをどう成功させるか。特にアジアでこれだけアジアの世界経済におけるプレゼンス、国民の人口の多さ、それから、所得がどんどん伸びている、こういう状況の中で、ある意味、早く陣取り合戦に勝って、しっかりしたポジションをつくっていかないと、我々もアジアはマザーマーケットだと思っているわけですけれども、そこをほかの外国の、またはローカルの保険会社にポジションをとられてしまうと、こういう非常に危機感を持った中で今ビジネスをやっている。まさにここが収益の柱に、日本のマーケットがなかなか収益性が伸びない中で、まさにここで収益を上げていかないと将来はないという、非常に強い危機感を持って今はこの国際ビジネスに取り組んでいるというのが、80年代とは大きく違うところかなと思っております。

2番目の国際展開上の障害、例えば先程我々ブランディングに非常に苦労していて、色々地道な努力は当然積み重ねていくわけですけれども、それをある程度クリアする1つのイシューとしてはM&Aをやっていかなきゃいけない。こちらについては、現在開催されている金融審の別のWGでお取り上げ頂いているテーマでもございますが、M&Aをやっていく上で保険という今の我々の業態で言うと、外国の保険会社を買おうとするときに、その保険会社が色々傘下に色々な業態の子会社を持っていたりするケースがございますが、今のルールでは、日本の保険業法で認められない業態の子会社については、事前に売却なり清算なりしなければいけないので、機動的にM&Aを進める上ではこの辺りについての規制を是非緩和をして頂けると、我々もそういった制約のない他の国のグローバルプレイヤーとの競合上、スピード感を持ってM&Aをやっていかなければいけませんので、是非そういったところについては、ご検討頂けるとありがたいと思っております。

それから、3番目の中小企業の国際化のところで申し上げますと、ここはなかなか悩ましいところでございまして、我々日本の中小企業さんにもリスクマネジメントのところで、色々サービスを提供していかなきゃいけないとは思っておるんですが、やはりそこは費用対効果の問題がどうしても出てくるわけでございまして、どうやって中小企業さんに対して効率的な、そういったリスクマネジメントのサービスを提供できるかというのは、これからさらにやはり工夫をしていかなきゃいけないかなと考えているところでございます。

それから、4番目の日本にも外国企業に来てもらいたいというところですが、ここについては、私、シンガポールにおりまして非常に感じるところがございました。というのは、シンガポールの規制当局は非常に自国に海外の金融機関を呼び込むことに積極的でございまして、我々はシンガポールにも生保・損保、それから、アセットマネジメント、それから、クレームサービスの会社、あとタカフルと、全部で5つ持っているわけなんですが、そういうエンティティに対して金融は検査が入りますけれども、その検査はもちろん通常の検査を厳しくやるわけですが、同時に常に聞かれるのが、どうやったらシンガポールマーケットをもっと魅力的にできるのかと、どうしたらあなたたちのさらなる追加のサービシングエンティティを、シンガポールに持ってこれるのかということでした。

検査の度にそれを聞かれて、私も何カ月かに一遍かは呼び出しを受けましたが、検査官は非常によく我々のウエブページも見ておりまして、おたくのこういう関連会社があるよね、こういう子会社があるよね、そこの支店をシンガポールに出せないかと、これを結構しつこく聞いてこられました。そのためにはどういった規制緩和をすればいいんだ、どういったサポートをすればいいんだということを、やはりひっきりなしに考えている。この辺がやはりシンガポールアジアの中で金融ハブとして成長してきているゆえんなのかなと思いますので、是非日本も負けずに、やっぱりそういった観点から、東京なり別の都市でも結構なのですが、そういったアジアの金融ハブに是非なるための努力を、していくべきではないかなと感じておるところでございます。

○吉野座長

ありがとうございました。中村参与、いかがでしょうか。

○中村参与(大和証券キャピタル・マーケッツ)

80年代と今回の違いということでございますけれども、先程プレゼンテーションの中でもちょっとお話をさせて頂きましたが、80年代というのは日本経済のところの非常に好調さ、それから、日本企業の強さというものをてこにして国際化ということが進んでいったという理解をしております。一方、現在の事象を見てみますと、例えばIMFの経済見通しというのは6月に出ておりますけれども、2011年カレンダーイヤーで見ますと、世界の成長率、GDPの伸びというのが4.3%ということの中で、先進国が2.2%の伸び、日本は震災の影響がございますけれども、ことしはマイナス0.7%と、来年2012年はプラス2.9という予想は出ておりますけれども、低成長と。一方、新興国というくくりの中で見てみますと6.6%の成長、その中におきましてアジアは8.4%の成長ということで、この新興国、特にアジアが世界経済を引っ張るという構造に変わってきているという背景はあるかと思います。したがいまして、日本を中核に据えた形でアジア全域をマザーマーケットとして、日本とアジアの成長市場を結びつけるといった国際化ということが、私どもの考えているところでございます。

それから、国際展開の規制というところでございますけれども、このアジア地域におきましては資本規制とか、参入制限等が残っていたり、規制についての予見可能性が低い国々もあるかと思います。これらの国々に対しましては、民間の金融機関だけで対峙していくというのは限界があると考えておりますので、これまで以上に官民一体となった働きかけが必要ではないかと思います。そのためには、当局の方々と民間金融機関のコミュニケーションを公式・非公式にかかわらず、さらに活発化させていくことが重要ではないかなと考えております。よろしくお願い致します。

それから、企業の結びつきということでいきますと、やはり世界最速の成長を続けるアジア市場と、これと日本の投資家含め、この企業を結びつけていくというのが私どもの使命ではないかなと思っております。それから、外国企業の日本への誘致ということでございますけれども、先程東証での上場企業数ということをお話を致しましたけれども、今後の大きな課題ではないかなというふうには認識をしております。以上です。

○吉野座長

ありがとうございました。

では、小野委員、それから、河野委員の順番でお願いします。

○小野委員

本日は貴重なご報告ありがとうございました。鉢迫様に3点お伺いします。1点目ですが、ご報告にて、日本国内の業務の収益性が低いのに対して、国際業務のROEは13%と比較的高いというお話がありました。その内訳を教えて頂けますでしょうか。具体的には、先ほど川波先生が国際銀行業務を3つの軸で整理されました。国際展開する日系企業をフォローないし支援する業務、アジアを含む国際金融市場での投資銀行業務、それから、3つ目として、現地の金融機関を買収して展開するローカルな銀行業務、具体的には三菱UFJフィナンシャル・グループさんの場合、アメリカのユニオンバンクになると思います。その各々の業務の収益性を教えてください。

関連して2点目の質問ですが、国際展開する日系企業をフォローする場合、同じ企業向けに国内でもお取引があるかと思います。そうした企業向けの国際銀行業務の収益性は、国内での銀行業務よりも高いのでしょうか。また、もしそうであれば、その差は何に起因するのでしょうか。具体的には、例えば扱っている金融商品が違うので収益性が異なるのかもしれません。また日本の銀行業務の低収益性の一因としてしばしばオーバーバンキングが指摘されますが、これは国内と海外で市場の競争環境が異なることが銀行業務の収益性の差につながっていると解釈できるかと思います。この点について、率直なご意見を伺えれば幸いです。

最後に、3点目の質問は、ユニオンバンクについてです。私の理解ではユニオンバンクは順調に業務を展開されており、いわば成功事例を持っていらっしゃるということだと思います。では、アジアで国際銀行業務を展開する際、ユニオンバンクのようなビジネスモデルは適用可能でしょうか。あるいは逆に、何かネックとなるような潜在的なリスク要因があれば教えて下さい。以上です。

○吉野座長

鉢迫部長、お願い致します。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

ありがとうございます。

まず1番目の海外のROE13%の内訳について、すみません、私も詳細が頭に入っているわけではないのですが、海外ではどちらかといいますと、日系企業とのお取引ではない分野で収益が上がっているということが実態だと思います。いわゆるマーケットの部分から上がってくる収益とかも含まれます。2番目のご質問とも重なるかもしれませんけど、海外での日系企業とのお取引はやはり国内同様に競争が激しく、親会社との関係もございます。変な話ですけど、ある子会社に対して、「マーケットではこういうスプレッド水準なのでこのスプレッドでやらして下さい」というのはなかなか通じません。親会社の保証があるのだから親会社と同じ水準でやって欲しいという、言ってみれば、日本の国内と同じマーケットになってしまっているというところが、1つ大きな要因かと思います。

一方、いわゆる日系企業ではないお客様とのお取引がなぜ収益性が高いのかというと、1つにはリスク相応のリターンの考え方がマーケットで浸透している点もあげられます。加えて、私どもが日系企業とのお取引の中で培った経験、先程ちょっと申し上げましたクロスセルという手法を導入し、単にローンのスプレッドだけではなく、外為ですとか、デリバティブですとか、各種の取引を拡大していく手法が、いわゆる日系企業ではないお客様に対しても有効であるという点も大きいかと思います。ご指摘のとおり投資銀行部門でも収益をあげるべきだとは思いますが、まだまだ我々としてもうまく機能できておりませんので、そこはまさに先程申し上げたMorgan Stanleyとの提携の中で、あるいは、地元の銀行との提携の中で、投資銀行分野の収益を上げていこうということでやっております。

ユニオンバンクの成功事例につきましては、これは確かにカリフォルニア州で第3番目の銀行ということで、1万人のアメリカ人とわずか数十名の日本人で運営しているわけですけれども、これはもともとあった銀行をそのまま私どもが買収して運営しておりまして、これと同じ手法がアジアで展開できるのかというのは1つ大きな課題として認識しております。実はリテール分野を香港で少し始めたときに、日本のリテール業務を輸出する形で試みたのですが、なかなかうまくいかない点がありました。そのかわりに、ユニオンバンクの手法を、中国は少し難しいかと思いますが、例えばアジアに持ち込めないか、ということは、今まさに、議論を開始しているところです。そうはいいましても、アメリカのものがそのまま当てはまるかどうか、まだ議論をしているというところでございます。

○吉野座長

ありがとうございました。では、河野委員、どうぞ。

○河野委員

すみません、では、鉢迫さんにですけれども、12ページのところで「我が国企業が金融機関に期待すること」というところで、調査の数字が出ているんですが、これもう少し詳しくというか、「M&Aによる事業力補充」というのと、「国外企業との資本提携による海外事業強化」というのが、ベストスリーかベストフォーの中に入って出ているわけですけれども、具体的には要はどこか相手先を見つけてくれよというようなことであるのか、日本の中での、提携とか、M&Aというのは今のところ時間を買っているようには見えないケースというのが非常に多い、あるいは、そういうことについてスピードを上げた事業提携なりM&Aのやり方を聞いておられるのか、その具体的な中身というのを教えて頂きたいというのが1点です。

それと、さっき中村さんが最後におっしゃられた東証の外国企業の上場会社の数ですよね、91年、これはバブルがはじけたときなんですけれども、127社で現在13社というふうにおっしゃいましたが、日本の中で東証と大証が合併すれば、外国企業の上場数が増えるということではないだろうとも思いますので、これが戻るのにどういうお知恵がありますでしょうかというか、何かどういう状況なら戻るんだというようなことが、これは要するに証券会社、取引所の問題なのか、単に日本が元気がないことが原因なのか、先程の、以前、日本企業が海外に出ていたのと、外国企業が上場されたのとは上げ潮に乗っていたという理由だったかもしれないですけど、今は逆に引き潮で日本企業が海外に出ているんですが、これを別に日本で上場しなくても、海外で日本証券会社さんがもうかっていればいいというふうに思えばいいのか、そこら辺を教えて頂ければと思います。

○吉野座長

では、最初に鉢迫部長からお願いします。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

まず1点目のこの調査の中身、表でございますが、財務部長さんと経営企画部長さんに聞いておりまして、「M&Aによる事業力補充」というところは、どちらかといいますと、上場企業の経営企画部長さんからの期待が高い、かつ、前年よりも今年のほうが期待値が上回っております。中身ですが、想像の世界もございますが、各企業がまさに先生ご指摘の時間を買う、あるいは、潤沢なキャッシュを有効に使う、ということについて経営からの要請を受け、私ども銀行に特定のターゲットを絞った相談ではなく、何がよい買収案件はないか、といった感覚で相談にこられていると思います。今、メガバンクは日本に3つしかございませんので、そういう意味では、相当な取引基盤があるであろうと想定されているのかと思います。

対象企業のイメージですが、同じ規模の提携というよりは、どちらかといいますと小さい、例えば、非上場企業で後継者はいないが、それなりに技術力があるとか、特定の地域での販売網を持っているといった企業で、上場企業が独自には見つけられないお客様に対するニーズが多いと思われます。同じ規模の企業であったり、あるいは、上場企業であれば皆さん独自に調べられますので、銀行に期待するのはいわゆる上場企業ではないケースが中心でございます。そういう意味では、まさに買いたい、拡大したいということで、どちらかといいますと、事業の拡大を目指した買収の相談というふうに我々は捉えております。

それから、4番目の「国外企業との資本提携による海外事業強化」という点も、おそらく根は同じかと思っておりまして、こちらもすぐに買収したいというよりも、どちらかといいますと、まずは提携先を探したいというイメージでございます。「現地市場のマーケティング強化」については、例えば企業を買収して技術力も全部取り込んでいきたいということがある一方、特に海外の場合はマーケットがよくわからないので、そのマーケットを詳しく知っている人と組みたいというような要望かと理解しておりまして、近年、そちらのほうも非常に増えてきております。特に中国ですとか、インドといったあたりの地場の有力先、地場資本の評判というようなものを聞いてこられることが増えてきいているということでございます。

○吉野座長

ありがとうございます。じゃ、中村参与、いかがでしょうか。

○中村参与(大和証券キャピタル・マーケッツ)

一般的な話だと思いますけれども、日本で上場するメリットというのが、以前に比べて小さくなってきているということなんだろうと思いますが、日本経済の以前に比べて、73年に東証は外国株市場というのが開設されておりますけれども、そのときの状況とは随分成長率というのも、変わってきているということが背景にはあるかと思います。

○河野委員

すみません、要するに円高というか、日本の円高安定ということでは、そういうことは影響はまるでないと。景気といえば今むしろアメリカなりヨーロッパのほうが、金融面では不安材料が多いかと思われますが、そういうこととはあまり関係がないだろうということでしょうか。

○中村参与(大和証券キャピタル・マーケッツ)

ないと思いますが。

○吉野座長

私から2つあるんですけど、製造業と金融業で5年ぐらい前、数年前にアンケート調査をしたときに、現地の方々のオートノミーといいますか、ディシジョンメーキングが非常に製造業の場合強いんですね。それは工場を自分で動かさなくてはいけないんですけれども、ところが日本の金融の色々な管理に関しては、日本の本社に聞かないといけないという部分が随分大きくて、現地の方々がなかなかできないというのがあったと思うんですが、東京の本社の方に聞きますと、変な言い方ですけど、現地が暴走するのが怖いと。現地の方に言わせますと、どうしておれたちにもっとやらせないんだという、そこらあたりが海外と比べてやっぱり非常にやりにくいのかどうか。

それから、2番目は海外に行ったときにびっくりしたのは、日本の金融機関の方は二、三年ですぐかわると。しばらく前にあいさつに来られて、今度来たなと思ったら今度は東京に戻りますという、来たときと帰るときだけのあいさつだった。それに対して海外はやっぱりもっと色々現地の方々を知りながらビジネスをされているという、お三方にこの2点をちょっとお聞きできればと思うんですけれども。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

では、私からでよろしいですか。

○吉野座長

はい、お願い致します。

○鉢迫国際業務部長(三菱東京UFJ銀行)

まず1点目の現地で色々やりたいけれども、日本の本社との関係で難しいという部分でございますが、私どもの銀行の場合、海外には2つ形式がございまして、現地法人という形式と支店という形式になります。例えば中国は現地法人という形式をとっておりますが、これは完全に現地に企画機能ですとか、会長・社長というような人材を配置しておりまして、現地での意思決定を尊重するという形式になっております。例えば現地で企業を買収する、あるいは、どこかと地元の省や庁と提携するという場合、まず現地の意向が最初にあって、そこから本社に回ってくるということなので、どちらかというと現地主導でございます。

一方、支店という形式の場合は、そこにおります支店長はやはり業務推進であったり、与信管理ということが主の業務になりますので、なかなかそういった他社との提携といったような業務に、携わりづらいということはございますが、完全に全てを本社に集中しているというわけではございません。現在、そういった意思決定機能もどんどん現地に出していこうということで、例えばアジアであればアジア中国部という機能をシンガポールに移管して、現地に判断をゆだねるという傾向になってきております。

それから、2点目のご指摘ですが、これは我々もまさに今悩んでいるところでございまして、海外の場合、特にアジアや中国で多いのですが、やはり現地での人脈・ネットワークづくりというのが非常に重要でございます。これは現地の当局しかり、お客様しかり、また日本のお客様も現地でその道10年、15年という方がいらっしゃる中で、銀行員だけが2、3年でかわっていくということが現実的に起きております。これについてはなるべく長期化を図ろう、あるいは、今までですとあまりなかったんですが、同じ国に2回、3回、戻っていくこともしております。以前ですと中国には1回しか赴任せず、次にアメリカに行ったり、日本国内を回ったりということをしていたのですが、今後は、中国のプロ、アジアのプロという形で人材を育てていこうという意識に変わってきております。

○吉野座長

ありがとうございます。じゃ、吉川監査役、どうぞ。

○吉川監査役(東京海上日動フィナンシャル生命保険)

最初のポイントですけれども、やはりディシジョンメーキングをスピーディーにするために、東京海上グループもアジアについては2002年にシンガポールに地域統括会社をつくって、できるだけそこにアジアにおけるディシジョンの権限をおろして、またそこがその権限をさらにできる限り現地におろしていく、そういう努力はしております。私どもよくベンチマーキングということで、ほかの地域統括会社がどんなふうに傘下のグループカンパニー、各国のグループカンパニーを統括しているのかというのをチェックするのですけれども、言われているほど、例えば東京海上グループという日本の金融機関が、特別何か全部本社集中主義かというと、必ずしもそうではないなというふうに思っています。ドイツの会社とか、フランスの会社なんかも相当パリなり、ミュンヘン、またはフランクフルトなのかわかりませんが、相当厳しく管理をしているし、アメリカの会社も然りかなということで、その点は我々もベンチマーキングを常にして、何か我々だけが浮いた形で、何というか、自由度を与えない形で傘下の保険会社に不必要な制約をかけないように、努力をしているというのが実情でございます。

それから、2点目のローテーションの問題ですけれども、ここについても先程申し上げましたように、我々の今の現在の最大の課題はローカルのリテールビジネスを開拓するということでございますので、自ずと日本人がそこをリードしていくというのには、もう明らかに限界があるわけでございます。それぞれの国のリテールマーケットをわかったローカルまたはその地に長く住んでおられる、アジアで言いますと結構オーストラリアの方とか、イギリスの方で特定の国に10年、20年おられて非常にマーケットのことがよくわかっておられる、そういうプロフェッショナルの方がおられますので、そういう方も含めて人材プールとして活用していくと。

例えば私どものシンガポールの生保のヘッドはイギリス人でございます。彼はもうシンガポールのマーケット、インドネシアのマーケット、こういうところに20年近くもいて、非常にそのマーケットのインテリジェンスがあるということで、彼を採用したということでございますので、そういう採用をどんどん続けていくと。日本人の役回りというのはいわゆる全体のガバナンスなり、もともとある日系企業との取引のリエゾンということで、そこの一定のローテーションというのは、これはお客様もご理解を頂けるところというふうに理解をしていますが、もちろんローカルのスタッフの中からは、やはりもう少しローテーションについては期間を長くしてもらいたいとか、そういう要望は当然出てきておりますので、人事管理の問題といった辺りについてはそのような要望との兼ね合いをバランスを見ながら、そこのところについてはやっていかなければいけないのかなと考えて降ります。

もう1点、一方、ローテーションのことで言いますと、欧米系のトップマネジメントも実はそんなに10年も20年もやっている人が多いかというと、実はそうではなくて、結構、短いタイムスパンで交代しているんですね。もちろん成績が悪くて首を切られてしまうというケースも多々あるわけでございますけれども、より良いオポチュニティーがあれば、そういう人たちはどんどん転職をしていきますので、そういう意味でのローテーションは日本人でなくても、実態上としては実はあるのかなと思っております。以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございます。じゃ、中村参与、もし追加があれば。

○中村参与(大和証券キャピタル・マーケッツ)

現地ビジネスへの権限移譲に対する考え方ということでございますけれども、やはり迅速な意思決定、それから、各国、それから、地域のニーズに基づいた形でのビジネス展開を図るということにおきましては、現地のリーズナブルな意思決定機関ということが非常に重要であろうという認識はしております。アジアにおきましては香港を第2本社化ということで打ち出しておりまして、具体的にはこのグローバル・インベストメント・バンキング部門のCo-ヘッドを駐在をさせておりまして、意思決定の迅速化ということに努め出したところでございます。

それから、ローテーション型ということで、ちょっとこれでございますけれども、やはり日本におけるジェネラリスト育成型ということと、海外におけるスペシャリスト育成型という、スタイルの違いというものに起因しているところはあるかと思いますけれども、私どもではグローバル・マーケッツ部門、それから、グローバル・インベストメント・バンキング部門、両方に各部門ヘッド格の採用というのを現地のところで進めておりまして、ローカル化ということも進めているところでございます。以上です。

○吉野座長

どうもありがとうございました。

時間が参りましたので本日はここまでにさせて頂きまして、もし追加のご質問があれば……。では、1点だけ、小幡委員、簡潔にお願いします。

○小幡委員

本日は本当に大変勉強になりました。どうもありがとうございました。ちょっとご提案というか、座長に対する希望なんですけれども、是非これと対照というか、日系企業のことがとてもよくわかったので、外資系といっていいのかどうかわかりませんけれども、非日系のグローバル戦略というか、アジア戦略でもいいんですが、グローバル戦略はどうなっているのかというのも、是非ヒアリングができたら……。

○吉野座長

それも考えておりまして……。

○小幡委員

特にスタチャとか……。

○吉野座長

はい、このメンバーの中にも海外に勤務されている方々もおられますので、是非次回、その次ぐらいにはやらせて頂けると思います。

最後に、今後の予定につきまして、小野企画課長、お願い致します。

○小野総務企画局企画課長

お疲れさまでした。次回につきましては引き続き我が国金融業の国際競争力の強化の論点につきまして、今度は金融サービスのユーザーである企業の皆様方からお話を伺うことを考えております。また、日程に関しましては皆様のご都合を踏まえまして吉野座長とご相談の上、9月上旬の金曜の午後開催という方向で調整をさせて頂きたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

事務局からは以上でございます。

○吉野座長

どうも本日も活発なご議論ありがとうございました。これで終了させて頂きたいと思います。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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