金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第9回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年12月16日(金曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料をまず確認をお願いしたいと思います。

資料は3種類ございまして、資料1-1と題しまして、モーニングスター株式会社からの資料、「投資信託に関する現状の課題と対応」、それから2つ目、1-2はカーライル・ジャパンの資料ですけれども、「日本におけるPEファンドの活用」、それから資料1-3は、ミュージックセキュリティーズ株式会社からの、「マイクロ投資の現状について」、以上3種類の資料、ご確認をよろしくお願いいたします。

○吉野座長

それでは、ただいまから第9回目の「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」を開催させていただきたいと思います。

第1回目の会合でご了承をいただいておりますけれども、本日の会議も公開とさせていただいておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。

今日は、国民のニーズに合った金融サービスの提供をめぐる論点につきまして、引き続きご議論していただきたいと思っております。前回の議論では、リスクマネーの供給源としての個人につきまして、家計部門が取り巻くマクロ的な環境、それからリスク資産の投資の実態などについて、我々は大分理解が深まったのではないかと思っております。また、前回の議論を通じまして、個人投資家が中長期的な資金で金融投資を行えるようにするため、金融仲介業者による、きめ細かな商品の開発や販売といったミクロ的な取り組みが重要であるということが認識されたと思います。

そこで、今日は皆様からごらんになって右の前のほうでございますけれども、4名の方々にお越しをいただきまして、個人向け金融商品の供給サイドの側からお話をいただきたいと思っております。

まず最初が、モーニングスター株式会社の代表取締役COOの朝倉様、それからカーライル・ジャパン・エルエルシーよりマネジングディレクターの三井様、それからディレクターの大塚様、さらにミュージックセキュリティーズから、代表取締役の小松様にお越しをいただいております。最初、まず朝倉様からお話を伺いまして、それから質疑応答を挟み、さらにご議論をいただくということにしておりますので、よろしくお願いいたします。

早速でございますけれども、モーニングスターの朝倉代表取締役COO、どうぞよろしくお願いいたします。

○朝倉モーニングスター代表取締役COO

ただいまご紹介いただきましたモーニングスターの朝倉でございます。

モーニングスター株式会社は、投資信託の評価機関でございます。投信の時代と言われて久しいです。1998年、窓販解禁以降、投資信託が貯蓄から投資の中核となる金融商品であると言われ続けておりましたが、残念ながら、家計の金融資産に占める投信の比率というのは、まだ4%から5%前後です。もちろん投資家の金融リテラシーの問題もありますが、供給サイド、運用会社、販売会社等の問題点、課題点等も幾つかございますので、その点について、今日お話をさせていただければと思います。

お時間が限られております。20分いただいております。資料が多いものでございますので、少し駆け足になりますが、ご了承いただければと思います。

それでは、早速でございますが、始めさせていただきたいと思います。

まずめくっていただきまして、投信の現状の評価、国内投信は一時的なブームの繰り返しであるという標語で書かせていただいておりますが、それをまためくっていただきまして、4ページでございます。4ページが、今、日本の投資信託の純資産残高トップ10のファンド名の一覧でございます。残高を集めているということは、投資家に極めて人気の高い商品でありまして、そのトップ10でございます。このトップ10の特徴は、まずグレーで塗られている部分、3本のファンドがありますが、グレーで塗られているファンドの3本は、5年前もこのトップ10にランキングインされているファンドでございます。

ただ、逆に言うと、残り7本が5年前にはランクインをされていなく、ここ2年、3年に設定されたファンドであるということで、極めて今のブーム、そしてテーマ型のファンドというものが、こういうトップ10のファンドに入ってきているということで、これが2年、3年と繰り返されているというのが、日本の投資信託の現状であるということでございます。

そして決算回数、これは毎月と書いておりますが、毎月分配型ということで、毎月毎月決算を行って、毎月定期的に分配金を出すファンドである、これが極めて人気が高いというのが日本の投信の現状でございます。

また、米国のほうでございますが、その下、5ページ目でございますが、米国の投信の、これは5年前の純資産残高トップ10でございます。米国の投信は設定から20年、30年以上たっているファンドが、ずっとロングセラーのファンドが多くランクインされております。そして、また自国の株、自国の債券、グローバルバランスという、まさに投資家の資産形成のコア、中核となるファンドがずっとロングセラーであり続けております。

これは5年前でございますが、では、今どうなっているのかというのをめくっていただきまして、6ページでございますが、日本とまた別で、5年前にランクインされていたものが7本入っているということです。そして、また残高を伸ばしているファンドもあれば、それほど残高も減らしていないファンドがあるということでございます。日本とは違って、資産形成のコアとなるファンドが常にランクインして、ロングセラーで人気の投信であり続けているというのが米国投信の状況でございます。

日本の投信のブームは毎月分配型、先ほどお話しさせていただきましたが、めくっていただきまして、8ページに純資産残高の国内投信の推移が左側のグラフで掲載されておりますが、現状43.9兆円が株式投資信託の全体の残高でございます。そして、その中身の33兆円が毎月分配型のファンドであるということで、2001年、10年前は12%ほどであったのが、今は76%が毎月分配型ファンドであるということでございます。

右側の四角で囲っておりますのは、巻末の参考資料の要点でありまして、毎月分配型ファンドがいかに人気があるかということで、本数が今、3,000本中1,000本もなっているということ、そして、現状は毎月分配型ファンドの中でも通貨選択型ファンドといって、いわゆる株、債券には投資はするものの通貨が選択できるということです。

そして通貨が選択できて、なおかつ人気が高いのが、ブラジルのレアル、豪ドルの債券、ブラジルのレアルが特に人気が高いのは、ドルとブラジルの金利差、この金利差を取って分配金に上乗せできる。あるいはブラジルのレアルの通貨が異常に上昇しておりましたので、その上昇分を取って分配金に上乗せできるということで、いわゆる分配金を高く出せるということで、この通貨選択型ファンドが生み出された、これが今、日本の中でも非常に人気が高いということでございますが、今、申し上げましたように、金利差、通貨、これを両方加味するということで、これをいかに個人投資家が理解するかというのが難しいかということなんですが、その難しい中でも人気があるというのは、やっぱり分配金が高く出ている、分配利回りが高いということで、それが人気の高い証拠でございます。

9ページ目、通貨選択型ファンドの純資産額ランキングでございますが、一番最初から9,200億円、6,500億円と非常に高い純資産額を集めております。そして、今申し上げましたように、なぜこれだけ集められるかというのが、毎月の分配金が非常に高いわけです。今まで毎月分配型というと30円とか40円の分配金だったんですが、今申し上げましたように、金利のプレミアム、または通貨の上昇、そういったものを加味できるということで、毎月140円とか200円、分配金が出せるようなファンドになっております。

ただ、これはあくまでも毎月毎月この金額が一定額出るというのが前提で分配金利回りをはじき出しております。ですから、毎月200円でいきますと、12カ月で2,400円と、1万円を投資すれば24%利回りが上がるということで、いわゆる毎月分配型の多寡、そして分配金の利回り、この高いのを投資家が未来永劫続くと勘違いをして投資をしているということです。

この証拠に、一番右側のトータルリターン、このトータルリターンというのが、分配金にプラスアルファして元本の上昇、元本が下落している、それを加味したトータルリターンでございます。したがいまして、一番上の分配利回りが23%といって、トータルリターンが3%というのは、キャピタルロスが26%出ているということです。ですから23%分配金はもらっていながら、1万円が3割ぐらい減少していると。トータルでいえば、実は3%減少しているということです。このトータルリターンを気にせずに投資をしている、あるいはトータルリターンというものを訴求せずに営業をしている、それが現状の問題点であるということです。分配金が高い、分配金利回りが高いと、それだけ投資では行っているというのが日本の現状であるということです。

次のページでございますが、10ページ目、米国は当然インカムリターンだけではなくてキャピタルゲイン、これを含んだトータルリターンを重視して販売サイドも提供しておりますし、投資家もそれをきちんと認識をした上で投資をしております。四角に囲っております一番上の表でございますが、毎年毎年のトータルリターンのパフォーマンス、そして下段がインカムリターンとキャピタルゲインのパフォーマンスということで、日本の場合は、下段のインカムリターンだけを重視しているのでございますが、当然インカムリターンとキャピタルゲインが投資家にとってのトータルリターンでございますので、そこが今のところ重視されていないというのが問題点であるということでございます。

じゃあ、国内で毎月分配金とか、分配利回りだけでトータルリターンがあまり出ていないファンドのほうが多いのかということなのでございますが、次のページ、12ページ目を見ていただきたいと思うのでございますが、先ほどトップ10の純資産残高をお見せいたしましたが、残念ながら残高が多いファンドイコールパフォーマンスがいいファンドではないです。米国はパフォーマンスがよければいいほど残高が集まるのでございますが、日本の場合は、先ほど言いましたように分配金が高い、分配金利回りが高いというだけで残高が集まっているということです。

例えば、国内株式ファンドの例でございますが、国内株式型に投資をするファンドで今一番残高を集めているのは、フィデリティ・日本成長株・ファンド、これは2,240億円です。一方パフォーマンスが高いのは、JFザ・ジャパンというファンドがあるんですが、これは純資産残高126億円、20分の1ぐらいの残高です。パフォーマンスを見ていただければわかりますように10年の年率のリターン、これは年率です。10年間累計でいけばマイナス19%、単利で20%ぐらい下落しているわけですね、フィデリティ・日本成長株・ファンド。

日経225、TOPIXも年率で10年間マイナス2%でございますので、日経平均とTOPIXに比べてそんなに大差はないんですが、一方、このJFザ・ジャパンというのは、10年間の年率で11%を上げているわけですね。ですから、10年間でいくと、もうほぼ倍になっていると。失われた10年といいながらも、こういったファンドがあるというのが現状なんですけれども、それが投資家に買われていない。それが営業体から訴求されていないというのが問題であるということです。

また別の例として、13枚目のシートへいきますと、海外先進国のファンド、これもピクテ・グローバル・インカムというのが、一番残高を集めているので6,298億円、一方、朝日Nvestグローバルバリューというのが220億円ということで、30分の1ぐらいの残高なんですが、これも3年の年率でいきますと圧倒的に差が出ているというのが現状でございます。

そして、さらに顕著な例が、次のページでいきますと、グローバル・ソブリン・オープンというファンドが国内投信でトップのファンドで、現純資産残高は1兆9,000億円、約2兆円なんですが、これは実は5兆5000億円までいったファンドなんです。それが今2兆円弱になっているんですけれども、このパフォーマンスが10年の年率でいきますと、1.7%、一方、この下のパフォーマンス上位のファンドというのは10年で4.5%上げているということです。

ご案内のとおり、先進国の債券、米国もユーロも非常に厳しい状況でありますし、またこの10年ドルに対してもユーロに対しても円高が続いておりましたので、そういった意味では、為替も含めて非常に厳しい環境下でありましたが、このBAMワールド・ボンド&カレンシーというのは4.5%上げていたというところなんですが、片や2兆円で、片や329億円ということで、こういったファンドがクローズアップされていない、こういったファンドが売れていないというのが非常に問題があるということだと思います。

じゃあ、なぜそうした現状になるのかということですが、一時的なテーマ設定に基づく営業スタイルということで話をさせていただきたいと思います。17枚目のシート。先ほどご説明申し上げましたように、トータルリターンだけではなくて、分配金利回りを訴求しているということですね。分配金利回りというのは、先ほど来申し上げておりますが、月200円がずっと継続して、200円が前提として減らないというのと、1万円の元本も減らないと、これが前提であれば、24%の利回りが上がるということなんですが、分配金が減額される、あるいは元本が下がる、そうなってくると、当然この分配金利回りというものが維持できないと。ですから、一時的なあくまでもこれは分配金の利回りなんですね。それが、分配金の利回りというものを訴求しているというような営業スタイルが横行しているという状況でございます。

次のページでございますが、そういった環境下の中で、投資家は高い分配金、分配利回りのファンドを購入しているわけなんですが、残念ながらここ数カ月の厳しい環境下の中で、分配金利回りに魅力を感じて投資をして、その後ですぐに分配金の引き下げが行われているということです。9月でいきますと17本、10月は37本、11月でいうと分配金が減額されたのが42本あるということでございます。11月の一番上のファンドは、10月に190円だったものが150円になっているということです。

したがいまして、190円を、あたかもずっと分配金が支払われるというような前提で、あるいは錯覚で投資家が買われている中で、11月に早速分配金が引き下げられるというような形になっているということでございます。

じゃあ、なぜそうした営業スタイルになるのかということで、これはあくまでも一例でございますので、個別の企業の例を出して恐縮でございますが、例えばグループ会社の中で、証券会社と運用会社というようなものを持っているというような、系列構造がもたらす弊害という形で書かせていただいておりますが、証券会社、銀行グループでいきますと、販売手数料は非常にやっぱり高く取れるということですね。ですから、運用会社に売りやすいような商品をつくってもらって、そして販売手数料を稼いでいくと。グループ全体でいけば、手数料が入ってくればそれがベストでございますので、そういった関係が、まだ一部散見されるということだと思います。

21ページでございますが、特定の販売会社専用の解約状況ということで、これはどういうふうに見るかということなんでございますが、一番左から4列目の販売手数料、4.2%、3.6%と出ておりますが、投信の販売手数料というのは、販売時点で手数料はもらえるわけです。なぜ投信に力を入れているかというと、ご案内のように、株の手数料というのはインターネット証券がいろいろ出てきましたので、非常に手数料は下がってきているということで、例えば100万円投資をして、手数料は多くても1,000円、あるいは639円というインターネット証券も出ているということで、0.06%しか株は取れないと。

ただ、一方、投信でいきますと、3%とか4%、100万円販売すれば4%の手数料が取れるということですので、非常に販売会社としてはおいしい商品であるということです。反対にいえば、投資家としては手数料がそれだけ取られるということでいえば期待リターンが下押しされるということでございます。設定日の純資産残高、一番上のファンドでいきますと1,240億円、これをずっと積み上げて最大の純資産額は1兆1,000億円までいきました。これが2011年4月でございますが、現状は8,600億円であるということで、1兆1,000億円でいくと4.2%でいきますと、約400億円ぐらい、販売手数料で入ってくるということです。

こういった、非常に販売手数料が高いおいしい商品であるということなんですが、ただ、これがずっと継続して販売されればいいんですが、一番右に設定来の解約累計額と出ておりますが、残高を積み上げていった後に、解約が非常に多く出ているということでございます。一番上が3,000億円、2番目が1,000億円、そして3番目も1,000億円で、ここ一、二年設定したファンドの中で、残高が大きく膨らんだ上で、その後に大きく解約が出ているということです。当然この解約した資金がまた新しいファンドにいっているという状況だと思います。

次のページでございますが、23ページ目、高いコストと今申し上げさせていただきました。これが非常に投資家にとっては極めて期待収益が下がるという状況でございます。

めくっていただきまして、24枚目、25枚目、同時に一緒に見ていただきたいと思います。投資信託の手数料というのは、販売時点に販売会社が取れる販売手数料、あとは、残高に応じて運用報酬として毎年毎年フィーが入っていく信託報酬と2つがあります。投資家からしてみれば両方取れるわけです。1回目の販売時点、申し込み時点で手数料が取られる部分、あとは、毎年毎年、管理手数料で取られる部分ということで、両方コストとして取られるわけなんですが、24ページと25ページを見ていただいてわかりますように、販売手数料も信託報酬も毎年毎年上昇しているという状況でございます。これは投資家にとっては非常に厳しい環境下であるということだと思います。これを加えた手数料が26枚目のシートでございますが、2011年、これは平均でございます。あくまでも投資信託全体の平均で、初年度4.16%の手数料が取られてしまうということでございます。

したがいまして、パフォーマンスを上げても4.16%手数料が取られて、パフォーマンスが全然上がらないという状況でありますので、これだけ厳しい運用環境の中で期待収益も下がってきておりますので、下がってきている中でも手数料が上がっているというのは、投資家にとってはまさに厳しい環境であると。反対にいえば、販売会社、運用会社にとってはインセンティブがどんどん上がっているというような状況でございます。

27枚目のシートでございますが、先ほど申し上げましたが、この販売手数料というのは非常に販売サイドとしては、収益としては期待できるフィーでございますので、これは対面証券とネット証券の比較でございます。投資信託全体の収入の中で、今申し上げました販売手数料と信託報酬の内訳はどうなっているのかということで、販売サイドとしては、販売を強化することによって販売手数料がコントロールできる部分、これは、やはり対面証券としては非常に強力だと思います。対面証券としては、信託報酬よりも販売手数料の比率が圧倒的に高いと。片やネット証券の場合というのは、営業マンがおりませんので、もう自然体として手数料に頼らざるを得ないと。そうなってくると、残高が積み上がってきた信託報酬のほうの比率が高いと、どちらかというと真っ当に販売をしていって、残高が積み上がってきての報酬でいった場合というのは信託報酬が積み上がってきて、信託報酬の比率が高いほうが望ましいスタイルではないのかなと思います。

そして、もう一方、コスト構造として非常に厳しいのが、先ほど申し上げました純資産残高トップ10のうちの、このトップ3のファンドを掲載しておりますが、これを見ていただきますと、例えばグローバル・ソブリンの合計手数料、1.3125%と書いてありますが、その配分というものが、委託会社、販売会社、受託会社、出ております。この受託会社というのは、信託銀行でお金を、いわゆる管理するだけなんですが、委託会社というのが運用会社、販売会社というのは販売サイドでございます。この1.3125%というのは変わらないんですけれども、見ていただきますと、販売会社の取り分というのが、販売を、残高が積み上げていくことによって上がっていくということなんですね。ですから、販売のインセンティブになっているわけなんです。

運用会社としては、販売会社に売っていただけるということで、運用会社のフィーを削っても、販売サイドのフィーを上げてあげるということなんですが、本来であれば、残高が積み上がってくれば投資家に還元をしてあげる。この1.3125%が下がるというのが、普通の発想なんですが、当然残高が積み上がってくれば、ファンドマネジャー、アナリストも、それだけ増やすということはあまりないので、運用効率としてはよくなってくる。ですから、投資家にできるだけ還元してあげるということが重要なんですが、日本の場合というのは、販売インセンティブが増えるだけで、個人投資家向けの手数料というのは下がらないという状況でございます。

29ページでございますが、グローバル・ソブリンも5兆円を超えて今現在2兆円弱でございますが、一番下に掲載しておりますが、ずっと1.3125%、この信託報酬は変わらないで来ております。

ところが、米国の場合は、次のページを見ていただきますと、30ページでございますが、米国の場合は純資産が増加すると、投資家の負担するコストを引き下げております。これはバンガードのファンドでございますが、一番下に四角で囲っているのがネットアセットという純資産残高の推移でございます。純資産残高がずっと増加しているわけなんですが、信託報酬、エクスペンスレシオという、上の四角で囲っておりますが、そもそもエクスペンスレシオが低いんですが、0.2%ですので、それが残高が増えることによって引き下げが行われていると。投資家に還元してあげるというようなこと、これが米国の状況でございます。

縷々ご説明申し上げましたが、今の現状でいきますと、いわゆる分配金、分配利回りを積極的に販売する姿勢、そしてまた投資家に対するコストが非常に引き上げられている。非常に厳しい状況であるということで、最後、僣越ながら、32ページ目、インプリケーションとして、現状の課題への対応ということなんですが、一番目が今申し上げましたが、高い取引コスト、これが投資家にとってリスク資産に対する魅力が大きく棄損しているのではないかということで、これは、あくまでも私の私見でございますが、販売手数料の上限規制というものも必要になってくるのではないのかなと思っております。

クラスシェアというのは、これは投資家サイドが手数料体系を選べる、これは、実はアメリカで導入されておりますAシェア、Bシェア、Cシェアということで、Aシェアというのは、販売手数料は高くてもいいと。ところが年間の信託報酬は低いんです。Bシェアというのは、販売手数料はゼロです。ところが信託報酬は高くてもいいと。Cシェアというのはその間をとっているんです。販売手数料も信託報酬も真ん中で。そうなってくると、投資家が自分の投資の期間であるとか、リスクの考え方、目的によって選べるというようなスタイルになっているんです。そういったことを導入してもいいんではないのかなと思っています。

あと、投信併合でございますが、これは投信の合併というルールを設定していただきましたが、その投信の運用会社との合従連衡が行われても、それぞれの会社が、例えばTOPIXのインデックスファンドを持っていても、併合が行われるのが望ましいんですけれども、いまだに併合が行われていないと。併合が行われる、いわゆるこれはファンドの統合です。ファンドの統合が行われれば、当然運用効率も上がってコストも引き下げができるということで、投資家にコストを引き下げて還元できるということなんですが、実は、これは投信の併合というのはいまだに1本も行われていないというのが日本の投信の現状でございます。

2番目でございますが、きめ細かい商品開発、営業活動ということで、先ほど来から申し上げておりますが、分配金額、分配利回りランキング、この販売訴求の抑制というのはできればしていただきたいということと、あと分配可能額です。アメリカの場合というのは、毎月分配型というのも確かにあるんです。ですが、例えば100円、いわゆる利回りが上がれば100円を必ず出すと、50円しか上がらなかったら50円を出すと。分配金が全然出なかったら全く出さないと。ですから、毎月一定額、分配金が上がるということはないですよね。通常、変動しておりますので。

ただ、日本の場合というのは、あたかも毎月毎月200円出るように毎月定額の分配金を設定していると。これは運用会社がコントロールできるんです。ですから、200円出ていた場合は100円しか払わないで、100円を翌期に回す。いわゆる内部留保をする。あとは、収益調整金という会計項目があるんですけれども、1万円で100円分配金が出るとしたら、もう1万円純資産が入ってきたら、この既存のファンドの投資家が薄まってしまいますので、収益調整金として、もう100円を入れるということで、会計上の収益調整金勘定が使えるということが、運用会社としては非常にコントロールしやすいということでございます。

あとはライフプランに即した中長期的な視点での商品設計、アメリカではターゲットイヤーであるとか、ライフ・バランスファンドというものが非常に人気が高いということです。あとは、金融リテラシー不足、または高齢者、これは両方に当てはまると思うんですが、彼らに対し、きめ細かい対応が必要になってくるということだと思います。

あと、運用会社の独立性ということで、先ほど系列の構造をお話しさせていただきましたが、投資家の利害を一致させるために、例えば今、上場会社でも独立の役員、社外取締役の義務づけというような議論がされておりますが、運用会社の取締役の独立の役員という、加えるのも一考に値するのではないのかなと思います。米国では独立の役員を3分の2以上構成せよというようなものが、SECから要求されております。また、経営者とファンドマネジャー、自分の運用しているファンドに自分がどれだけお金を入れているのかというのは、米国では、投資開示義務になっております。それだけ投資家と利害が一致しているのかどうかということで、受託者責任の意識を高めるために、そういったものを開示させているというような状況でございます。

以上、縷々ご説明しましたが、かなり厳しいコメント等をさせていただきましたが、私はほんとうに投資評価機関の一代表者としては、投信というのは、極めて金融商品としては非常に有効なツールだと思っております。ただ、残念ながらこの投資信託の中でうまく活用されていないというのが現状あると思います。その課題、問題点を一つ一つ解決していけば、投資家にとっても非常に好ましい、適切な分散投資、資産運用、資産形成ができるのではないかと思っております。私も微力ながら貢献をできればさせていただきたいと思います。

ちょっと長くなりましたが、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

○吉野座長

朝倉取締役、どうもありがとうございました。

私も昔アメリカにいたときに、ちょうどMMFがそのとき出てきまして、それで銀行で販売を始めて、それからずっとアメリカの場合にはMMFが伸びていって、やっぱりいろいろなリスク資産が出てきたと思いますので、ぜひ日本でも私、投資信託が伸びてほしいと思っているんですけれども、先ほどの32ページのご説明の中で、1つだけちょっとお聞きしたいんですけれども、トータルリターンがどうかという、成果主義で手数料を決めるというようなやり方をした場合には、やはり皆さん一生懸命頑張るような気がするんですが、そういうことはいかがなんでしょうか。

○朝倉モーニングスター代表取締役COO

そうですね。成功報酬ですね。アメリカの場合でも成功報酬というのが出てきております。ただ、その決め方も非常に難しくて、成功報酬でもどれぐらいの期間を見るかということで、1年だけの成功報酬でファンドマネジャーに、いわゆる報酬を与えてしまいますと、かなりアグレッシブな運用をする場合があるということで、いわゆるファンドマネジャーなり運用会社のインセンティブというのも、例えば1年間だけではなくて、またそれが成功報酬が長いと、また運用会社、ファンドマネジャーとインセンティブとしても、そんなに効果がないということで、その期間をどれだけ取るかというようなもの、それが非常に重要な検討事項だと思います。

○吉野座長

ありがとうございました。それでは、委員の皆様、いかがでしょうか。

じゃあ、井潟委員、どうぞ。

○井潟委員

ご説明ありがとうございました。3つほどご質問させてください。

まず6ページの米国のロングセラー投信についてなんですが、私も前回ここのワーキング・グループでプレゼンテーションをさせていただきまして、質疑応答でも触れさせていただいたんですけれども、こうした米国のロングセラー投信、ほとんどというか、全部だと思いますが、確定拠出年金でも採用されているものばかりで、例えば1位のPIMCO、PIMCOのトータルリターンですと、残高のおそらく4割以上、それからあと3位のアメリカン・ファンズ・グロースだと、これは5割以上。それから6位、8位のアメリカン・ファンズのユーロパシフィックとか、フィデリティのコントラですと、7割以上、確定拠出で積み上がっている投信ということで、投資信託の、やっぱり米国のロングセラーができる背景には、実は一般の販売活動以上に確定拠出による資産残高形成というものが非常に大きいんじゃないかと思っていますが、その点、この確定拠出年金の拡充、普及というものについて、朝倉先生はどういうふうに思っていらっしゃるのかというのが1つ目でございます。

それから2つ目は、24ページから26ページです。これの手数料のデータのつくり方でございます。これらの平均、先ほど先生もおっしゃられたように、これはそれぞれの年末に日本で提供されていた公募追加型株式投信、全部の単純平均ですよね。プロの朝倉先生に申し上げるのも恐縮なんですが、例えばこれはインデックスファンドと国内株式ファンド、あるいは海外株式ファンドなど、ファンドのカテゴリーの種類が異なると、これは販売手数料とか信託報酬というのは、そもそも全然お互い水準が異なってくると。そして異なるファンドのカテゴリーをまぜて平均値をとった意義とか、さらにそこで年によって募集団のファンドの構成も違ってくるんじゃないかなと思うんですが、それを時系列でとった意義というもの、これは全体のトレンドを把握するといっても、なかなか正確な分析ができない可能性もあるので、一般に我々議論の対象にこういう平均を使わないんですが、あえてこういう形で単純平均をとられた特別な理由は何かございますかというのが2つ目でございます。

あと、最後、27ページなんですが、これは販売手数料のネットと対面の依存度の違いということでございますが、これはそもそも対面と非対面というのはリテールビジネスとしてのビジネスモデルの違いということから来るので、なかなか比較対象にそもそもならないような気がするんですが、いかがでしょうかと。

先ほど、6ページに示した米国のロングセラー投信、この6ページのほうでも、例えば1位のPIMCO、これは対面で売られている投信なんですが、アメリカで3.75%の販売手数料と。それから、同じく対面で売られているアメリカン・ファンズ・グループ、これ、3位と5位と9位と10位に4入っていますが、これはいずれも5.75%という販売手数料で売られていて、十分ロングセラー投信の中に入ってきているわけなんですが、一方、このバンガードさんというのはご存じのとおりネットで売られているもので、これは販売手数料ゼロと、これをもってアメリカン・ファンズやPIMCOは悪いファンドで、バンガードがいいという人はアメリカにはだれもいないという事実も、先生はよくご存じだと思いますが、そういう意味では同じ対面の中でのカテゴリーの比較、それから非対面の中での比較という意味はあると思いますが、ビジネスモデルが違う2つを比較するというのは、電気製品でもお店で買うのと、最近は通販で買うのというので値段が違うのと全く同じで、ビジネスモデルの違いということなはずなんですが、その辺、先生はどういうふうに思っていらっしゃるのかという、3つでございます。

○吉野座長

じゃあ、3点ほどお願いいたします。最初は確定拠出のところ。

○朝倉モーニングスター代表取締役COO

まず、確定拠出ですが、おっしゃいますようにファンド1つをとっても3割か4割ということで、投信全体からしてもそうです。アメリカは1,100兆円と言われておりますが、その4割ぐらいがDCからの残高であるということで、おっしゃいますように、アメリカの投信の歴史というものに関して見れば、この401kDCというのは非常に外せないと思います。401kが始まって、そして拠出額も増えることによって、そして残高が増えていくことによって、個人投資家の意識も相当変わっていったと思うんですね。今まで確定給付で年金、基金、あるいは企業側にお任せしていたような状況が、個人が意識をするようになってきたと。

今般、日本でもマッチング拠出という形で企業だけではなくて、個人も拠出できるような形になりますので、そういったものは、アメリカでもマッチング拠出というものは非常にはやっているわけなんでございますが、マッチング拠出なんかも出てくると、個人の意識はさらに変わってくるということなんですが、日本は残念ながら、まだ確定拠出年金というのがそれほど大きな残高を集めていないということで、ただ、今、申し上げましたように、マッチング拠出が始まって、また従業員の投資教育の継続義務化というようなものも行われて、そうなってくると、かなり、今まで投資とか投資信託に触れていなかった方というのが、意識が大分高まってくるのではないのかなと思っております。

ですから、そういった意味では、今後の401kの残高、並びに個人投資家の意識の改革とか、または意識が投資に向かっていくというようなものというのは、私はぜひ期待したいなと思っております。

そういう形になっていきますと、確定拠出年金の場合というのは、リテールのファンドと違いまして、先ほどの話につながるかもしれませんが、コストというものについては、非常に抑えられたファンドが多いですよね。ですから、その分、投資家にとってのコスト意識というものも出てくると。そして確定拠出年金で足りないのであれば、リテールのファンドで投資をしていこうという形になっていきますので、今は確定拠出年金というような拠出額も少ないですし、また投資している投資資産運用商品というのもそんなに多くいっていないということで、意識はまだ少ないと思いますが、今後、個人投資家に対しても、個人投資家にとっても意識は高まってくるのではないのかなと期待はしております。これが1点でございます。

2点目でございますが、コストでございます。確かに先生おっしゃいますように、それぞれのカテゴリーで比べないと意味がないと。それはまさにおっしゃるとおりでございます。ただ、個人投資家の場合、残念ながら日本の場合は、ようやくですが、若い方はパッシブとアクティブというような区別がついて投資をするようになってきたということなんですが、まだまだご年配の方、残念ながらリテラシーのそれほど高くないような投資家のほうが非常に多くて、私どもの、いわゆるスターレイティングだ、カテゴリーとか、分けて考えてやる場合と、一緒にやって考える場合を2通りやっておりまして、一緒にやってアクティブとインデックスも両方、例えばコストを比較、あるいはパフォーマンスを比較というようなほうが見られるんですよね。

ですから、アクティブの中でどれがいい、パッシブの中でどれがいいという、残念ながらリテラシーはそこまでいっていません。もちろんすべてではないですが、意識は高くなってきましたけれども。ですから、両方加えて見せてあげる、すなわち、個人投資家全体が直面しているコストの平均的水準を把握することは、意義のあることかなと思いまして、作成させていただきました。

もちろんカテゴリー別に分けて見ますと、インデックスでいえばもっと低いレイティングが出てくる、コストが出てくると思いますし、アクティブの中でも日本株と外株、あるいは外国債券という中でも、またまた出てくると思います。そういった意味ではアクティブとパッシブの比較というようなものも、お見せするのが望ましいかもしれませんが、全体感として、どういう状況になっているのかということでしたので、こちらのほうで掲載をさせていただきました。

あと、最後でございますが、これもおっしゃるとおりビジネスモデルが違うということでございますが、これは先ほどの、いわゆる系列構造、または販売手数料が大きく依存している販社さんが非常に多いという観点で、どれだけ比率が違うかというような、比較感でお見せさせていただいたわけなんでございます。ビジネスモデルが違うということはもちろん否めませんが、ただ、ネット証券も、必ずしも毎月分配型を販売しないであるとか、あるいは安いインデックスファンドばかり売っているということではなくて、例えば分配金利回りを訴求をしているというようなことというのも、実は対面の証券会社とあまり変わらないスタイルなんです。

ただ、結果的に投資家が、ネット証券の場合というのは能動的に投資をしていると、あるいは毎月積み立てが多いという形で信託報酬の比率が高くなっているということなんですが、そういった意味で、ビジネスモデルは確かに違うのでございますが、どれだけ販売手数料が上がっているのかという形で掲載をさせていただいた次第でございます。

○吉野座長

ありがとうございました。じゃあ、犬飼委員、どうぞ。

○犬飼委員

恐れ入ります。朝倉さんにお聞きしたいと思いますが、私の少ない経験と、想像の話で恐縮でございますが、特に投資家が受け取るレポーティングのフォーマットに問題があるのではないかという気が大変しておりまして、やはり高齢者の方々などですと、どういう内容が書いてあるのか非常にわかりにくいのではないか。わかりにくいということは、目論見書などはよほど詳しく調べてみれば、確かにここはこういうことが書いてあるということで、あるいは半分ぐらいわかるかもしれませんが、月々、四半期、半期ごと、あるいは年度に受け取る、いろいろなレポーティングのフォーマット自体が非常にわかりにくいのではないかという感触を持っております。そういうものについて評価するなり、あるいは指導するなりという機能が、投信業界並びにレギュレーターも含めてかもしれませんが、日本には存在するのでしょうか。

○朝倉モーニングスター代表取締役COO

それはまさに、目論見書の改変等も金融庁さんに一生懸命やっていただきまして、大分わかりやすくはなってきたと思います。今までは目論見書を受け取ると、失礼ながら投資家の方は見ない方のほうがほとんどだったと思うのでございますが、最近では大分簡素化していただいて、なおかつどこにどういう項目を入れなきゃいけないかというような、そういったものを出していただくようになりましたので、大分わかりやすくはなってきたと思います。ただ、目論見書だけではなくて、おっしゃいますように、運用会社が出す月次のレポートであるとか、あるいは運用報告書、そういったものも今後は検討課題に入ってくるのではないのかなと思います。

投資信託というのは、まず購入するときに受け取る目論見書、もちろんこれも大事なんですけれども、中長期の資産形成、資産運用の商品でございますので、長きで持っていただくという意味では、継続して見るレポーティング、運用報告書であったり、月次レポートであったり、週次レポート、これが極めて重要なんですが、これがなかなか運用会社によって統一されていない。

あるいは、また運用報告書にしても、決算期基準でいわゆるパフォーマンスを出しますので、中には11月15日の決算の場合もあるし、12月15日の決算もあるということで、日本のように3月決算であるとか、12月末決算というようなもので、いわゆるそういった形の、ある程度の統一感がありませんので、したがいまして、横の比較がなかなかできないというのが、1つ問題点があるわけですね。

あとは、ここには掲載しませんでしたが、手数料といっても信託報酬だけではなくて、実際ポートフォリオの中身の入れかえがありますよね。ポートフォリオの中身の入れかえの手数料というのが、これに隠れておりますが、実はあるんです。それがどれぐらい手数料が上がっているのかというのが、今は残念ながら横比較できなくて、非常にわかりづらいというようなポイントがあります。

あとは、先ほど言いましたように、分配金がどれだけ出るのかという分配可能額、収益調整金というのは、最後の運用報告書のページのプロフィットロス報告書、あれはおそらく個人投資家の方でもなかなか理解できないようなフォーマットになっているということで、そういったいろいろな観点があるんですけれども、大分、金融庁さんが目論見書とかレポーティングは整理をしていただきましたので、わかりやすくなってきました。ただ、この運用会社サイドで、もっともっとやっぱり考えて、個人投資家にわかりやすい情報を提供していくということが大切だと思いますし、あと、最後に1点、このファンドマネジャーの情報という話をさせていただきましたが、やはり自分が大切なお金を預けるファンドマネジャーがどれだけの経験で、どれだけのコミットメントをしているのかという情報が実は一切ないわけなんですけど、それは非常に大切な情報だと思うんですが、なかなかそこの情報が運用会社のほうで開示はしていただけないということですね。

そうなってくると、やっぱり投資家としては不安なわけです。自分の投資したファンドマネジャーが3年しか経験がないのか、あるいは30年経験があるのか、そういうデータを見たいという方もいますし、どれだけの過去の実績があるのかというようなものというのは、なかなか開示されていないということなんですけれども、やはりファンドというものを運用会社、運用者のいわゆる情報というのを、もっともっと運用会社として出すべきだと私は思っております。

○犬飼委員

ありがとうございます。

○吉野座長

じゃあ、永沢委員、それから太田委員の順番で。先に、じゃあ、永沢委員からよろしいでしょうか。手を先に挙げていただいた。

○永沢委員

ありがとうございました。

私は、先ほどからいろいろなご意見はありましたけれども、利用者が常日頃思っていること、私たちが日ごろ不満に思っておりますことを、データを示しながら指摘いただいて、正直胸がすくような思いで聞いておりました。

まず、95年ぐらいから投信改革と言われてきましたけれども、国内にお金を回すという点と、利用者の満足度を高めるという、この2つの原点をすっかり忘れてしまっているということを、ご指摘を通じて改めて感じております。また、投資というのは本来ならば、今を我慢して後を楽しむというもののはずなのに、お示しいただいた毎月分配型が売れているという現状はまさにその逆ですよね。本来ならば投資に向かうべきではないお金が入っているのではないかと改めて危惧しながらお話を伺っておりました。

また、最後の経営に関するご指摘、これは今まで指摘されてきていないことですが、多くの投資家が常日頃、思っておることですので、何らかの形でぜひ制度改革に反映していただきたいと思っております。

ここから質問ですが、細かい質問で大変恐縮なんですけれども、まず日本とアメリカの投資家の行動の違いとして、1つ税制の違いのようなものは影響していないのでしょうか。毎月分配型が売れているという日本の現状を見ますと、あまり税制というものに関するリテラシーが日本人にはないのかもしれないと思えるのですが、アメリカではたしか期末にキャピタルロスを処理するような税制もあったかと思います。そういった税制が、何か行動に影響を与えているというようなことはないのでしょうか。

それから、2番目の質問としては、残高が多いとパフォーマンスが悪いというようなご指摘があったように理解しました。因果関係があるとはご指摘はされませんでしたけれども、その間に、何か因果関係ではないにしても、何か関係性を説明することができるような、何か要因のようなものがあるのかどうか。

3番目の質問として、アメリカでは息の長いファンドが売れているわけですけれども、例えば販売において、これは会社のプラクティスなのかもしれませんけれども、他社ファンドも併せて薦めなくてはいけないとか、そういう公正性を大切にするルールがあるというふうに聞いたことがあります。日本の今の対面販売の現状では、これは販売会社の方にお聞きすべきなのかもしれませんが、評価会社のお立場からごらんになって、どのような形の販売がなされているか、お聞きしたいということ。

それから、販売手数料の値上がりが続いておりますけれども、これは仕組みが複雑なものが増えていることと何らかの関係があるのではないか、ご意見を伺いたい。

最後に、合併がなかなか行われない理由ですけれども、これも運用会社に聞くべきなのかもしれませんが、朝倉様のお立場から、何か理由として、こういうものがあるのではないかというご指摘ができるのであれば、是非いただきたいと思います。

以上です。

○朝倉モーニングスター代表取締役COO

ありがとうございます。

じゃあ、1点ずつご説明させていただきたいと思います。

まず、税制面でございますが、アメリカはご案内のように日本と比べて所得的な、所得税としては低いというのが1つありますが、先ほど来から申し上げております、確定拠出年金、ここの部分というのはもちろん税優遇が拠出額において、非常に高く拠出額がありますので、そこの部分の税の優遇がありますが、一般に投資をする、リテールの投信にしては、別に日本もキャピタルロスというものを特定口座に入れれば、株とのキャピタルゲインと合算するということも可能なんです。ですから、そこの面について、税制面で優遇があるからということは、あまり私はないのではないのかなと思います。

例えば、毎月分配型でも、今では証券優遇税という形で20%から10%になっているわけなんですが、これが例えば10%が20%に戻っても、私は毎月分配型ファンドというのは、そんなに簡単に廃れないような気がするんです。要は、税制というよりかは、やっぱり錯覚か勘違いかわかりませんけれども、毎月毎月、分配金が入るという、いわゆる預貯金でなれた確定利回りの感覚がありますので、それの意識が高いのと、それを、あたかもそのように意識をさせて売っているというようなものも一部原因があるのではないのかなと思いますので、日本の場合も税制に関しては大分優遇をされておりますので、それほど大きな差はないのではないのかなと思います。

あと、2番目でございますが、日本の場合というのは、残高が大きいファンドイコールパフォーマンスが悪いということではないんですが、残高が大きいファンドというのは、先ほど来から申し上げておりますように、分配金が高いであるとか、分配利回りが高い、あとは販売サイドとしては売りやすい商品であると。例えば、今でいえばオーストラリアの債権であるとか、グローバルREIT、リーマンショックの後、不動産投信がずっと下がりまして、随分右肩上がりで上昇してきましたので、そして、グローバルREITというのは、分配金利回りが非常に高いです。そういった意味では売りやすい商品であるというようなものが1つあります。

ただ、必ずしも、いわゆる売れているファンドというのが、パフォーマンスが全く悪いということではなくて、中にはいいファンドもありますが、私が申し上げたいのは、それ以上にいいファンドというものがいっぱいあって、それが埋もれていると、それが残高が集まっていないというほうが問題ではないのかなと思っております。やはりそれに焦点を当てない営業スタイルというのは好ましくないと。また、投資家がわからないのであれば、それを説明してあげるということが大切ではないのかなと思います。

ただ、これは3番目の質問にも、一緒になりますが、アメリカの場合というのは、独立のファイナンシャル・プランナーが投信の販売では非常に活躍をしております。独立の販売員というのが、オープンアーキテクチャーでどのファンドでも公平中立でアドバイスをするわけです。ところが、アメリカも日本も販売会社がいわゆる品ぞろえをしているファンドしか販売できないというようなものが現状でございます。

ですから、株のようにどの証券会社へ行っても3,500銘柄、3,600銘柄購入できるということではなくて、例えば野村証券でいえば200本の中からしか購入できない。大和証券に行けば大和証券が品ぞろえしているものしかできない。あるいは地方の銀行に行けば、たとえば、広島銀行が品ぞろえしているものしか投資家は選べないということになっています。また営業マンもそれしか販売できないということです。本来であれば、例えばグローバル・ソブリンより、さっきのパフォーマンスのいいファンドがあるんですけれども、その品ぞろえがなければセールスはできないですよね。

ところが、中立的なインディペンデント・ファイナンシャル・アドバイザリーがいれば、中立的な立場から個人投資家に販売を提供できると、アドバイスができるというようなこと、これがアメリカでは非常に活躍をしているということで、日本の場合は、残念ながらファイナンシャル・プランナーというのは、たくさん資格を持っていらっしゃるんですけれども、独立のファイナンシャル・プランナーは非常に少なくて、いわゆる企業内FPというか、銀行とか証券会社で、いながらにしてFPの資格を持っているというような状況に過ぎませんので、独立のファイナンシャル・プランナーが業をなせるような仕組み、そういったものができてくれば、また変わってくるのではないのかなと思います。

4番目の販売手数料については、販売会社が自由に決められることに注目すべき。販売会社が決められますが、私の、タイトルにも書いておりましたが、販売手数料が上がった分アドバイスレベルが向上しているかどうか、そこがポイントだと思います。先ほどの井潟委員の話にもありましたが、アメリカでも販売手数料は、例えば5.75%を取っていると。あるいは6%を取っているのもあるわけです。ところが信託報酬が非常に少ないと。いわゆる低いというような場合、販売手数料なりのきちんとしたサービスを得られているかどうかというのがポイントだと思うんです。

4%が高い安いというような議論ではなくて、じゃあ、きちんと4%分のアドバイスを受けているかどうかということなんですけれども、これはすべてにおいて私は言っているわけではないんですが、先ほど来から申し上げておりますように、今の販売スタイルとしては、毎月分配金がこれだけ出ます、分配利回りが二十何%出ます、実はこれだけで売れちゃうんですね。ですから、先ほど申し上げました通貨選択型の仕組み、これを100%理解して説明できる営業マンというのは極めて少ないと思います。100%理解して投資をした投資家というのはほんとうに少ないと思います。先ほど言いましたように原資産に加えて通貨の金利のプレミアム、そして通貨の上昇、これは3階建てになっているわけですね。3階建てになっているものを一つ一つ細かに説明できる営業マンというのが、それができれば私は4%を取ってもいいと思います。

ところが、営業側として見れば、そういう説明をするから4%を取っても正当化されるんですよということで、おそらく販売手数料を上げてきているんだと思います。ですから、そういった状況がありますので、複雑な仕組みの商品はいっぱいできております。ほんとうに金融庁さんのおかげで、いろいろな制度改正をしていただきましたので、REITファンドとか、ファンド・オブ・ファンズとか、コモディティーのファンドとか、いっぱいファンドの品ぞろえはあるんです。ですから、ファンドの商品性、品ぞろえとしては私は日本は世界一だと思うんです。

先ほどの通貨選択型ファンドなんて、アメリカの投資家から見ればびっくりするぐらいの仕組みを考えたというぐらいなんですけれども、それだけ、やっぱり商品は多様化しているんですが、複雑になればなるほど説明が非常に必要になってくると。ただ、ほんとうに説明のレベルの分、手数料を取っているかどうかというのは甚だ疑問であるということだと思います。

あと、最後の質問、合併なんですが、先ほど来から申し上げている、運用会社は合従連衡が行われているんですが、それぞれの運用会社に、例えばインデックスファンドでいくと全く同じような運用なんです。日経225のインデックスファンドがある、TOPIXのファンドがある、あるいは日本株の大型株ファンドがある、同じような運用スタイルであれば統合してもいいんではないかと、例えば10億円と10億円でやったら統合すれば20億円になります。その分投資家にコストを還元してあげるということがほんとうは望ましい。そしてまた、ルールもそういう形で法も改正していただいてできるようになっているということなんですが、これは幾つかハードルがあるみたいです。

それぞれ、先ほど言いましたように、受託銀行というのがありまして、お金を管理する銀行がそれぞれ違うと、そこのお金を管理する銀行を調整しなきゃいけないということですね。あとは約款というのがありまして、ファンドの合併というのは重要な約款変更になりますので、重要な約款変更の中には書面通知をして投資家から許諾を得なきゃいけないんです。もちろん何も返ってこなかったら自然と許諾を受けたという形もできるんですが、それが、やはりコストがかかると。ただ、私は、最大の理由としてはファンドを統合するというのは、あまり好ましいというか、パフォーマンスがよくないファンドのほうが多いんです。というのは、パフォーマンスがいいファンド、あるいは残高が積み上がっているファンドというのはあまり統合しませんので、やはりファンドの残高が積み上がっていない、パフォーマンスが悪いファンドを統合していく例のほうがおそらく多いと思うんです。

だけど、パフォーマンスが悪くてもファンドを統合すれば純資産残高も上がって運用効率が上がるということで、パフォーマンスの上昇が期待できるんですけれども、それが行われないというのは販売会社としては寝た子を起こしたくないと思うんです。やはりファンドのいわゆる悪いパフォーマンスを買ってくれた投資家に対して書面通知をする、あるいは知らせるということ自体は、あまりそこまで積極的にやらないと、やりたくないというようなものが、要因があると思いますが、いろいろな要因がありますから、どれが定かだかわかりませんけど、残念ながらファンドの効率性が上がるにもかかわらず、また法としてできるにもかかわらず、ファンドの合併統合が行われないというのが日本の現状であります。

以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございます。先ほど日本の独立のファイナンシャル・プランナーの方がなかなかいないというのは、やっぱり業として、FPで独立はなかなか日本の場合、生計が立てられないものですから、どうしてもどこかの会社なりに所属してしまうという傾向があるような気がいたしまして、ニワトリと卵だと思うんですけれども。

ありがとうございます。じゃあ、最後に太田委員、いかがでしょう。

○太田委員

私は犬飼委員と同じことを申し上げようと思っていたので、十分なご説明をいただきました。追加でございますけれども、やはり私も比較していますと、アメリカの投資信託の運用報告書というのは非常に透明性が高くて、ファンドマネジャーみずからがサイン入りでマクロ経済から、自分の方針から、なぜ今期に入れかえたのか、そういうことが十分書かれていると思うんです。透明性が高くて緊張感があって、またそれが読み物として十分読ませるようになっていると思うんです。それがやはり金融リテラシーの向上にもなるし、ファンドマネジャーの実力養成にもなると思うんです。ですから、ぜひそういう視点も必要だろうと思います。

○朝倉モーニングスター代表取締役COO

ありがとうございます。

○吉野座長

まだまだご質問があるかと存じますけれども、この次の方々のご質問の後、もしあれば追加のご質問をいただきたいと思います。

それでは、カーライル・ジャパンの三井マネジングディレクターと、大塚ディレクターから20分程度ご報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大塚カーライル・ジャパン・エルエルシーディレクター

ご紹介ありがとうございます。

本日、私どもからは大きく2つのテーマについて触れたいと思っています。1つ目は、「はじめに」の1から3にございますPEファンドがどのような実績を作ってきたか、またそれをどのようにして作ってきたかのご説明を経て、投資家にとって有効な投資手法の1つであることを申し上げたいと思います。後段は、三井より日本の機関投資家、あるいは個人が、世界比較の中で有効な投資手法であるPEファンドの活用ということがまだまだ十分出来ていないのではないかということについて触れさせていただきます。

めくっていただきまして、4ページ、まず簡単ではございますが、PEファンドの歴史を簡単に振り返りたいと思います。1980年代にプライベート・エクイティ・ファンドがアメリカに発祥し、その後この業界は拡大し、現状2010年においては、ファクトベースで、140兆円の預かり資産を、運用しています。この中には、グローバルで展開している、我々のようなプライベート・エクイティ・ファンドと、極めてローカルで行っているプライベート・エクイティ・ファンドが混じっています。最近では、聞くところによると、中国でもかなりの数のローカルファンドが立ち上がっていると話も聞きます。なお、カーライルは現在までで約12兆円の運用資産を現行いただいております。

5ページにおいて、ご承知の内容も多いかと思いますが、あえてここでファンドの形態を整理しました。横軸は企業の成長ステージ、縦軸はどのファンド形態がどの位の出資比率で投資を行うかということを一般論的に書いたものでございます。色がついたところが、一般的にプライベート・エクイティ・ファンドというカテゴリーに入るところだと思っています。歴史からすると、マネジメント・バイアウトをお手伝いする機能が、規模としても大きいです。日本の場合は、ファンドというと、ここに点線に書かれているヘッジファンド、アクティビスト、先ほど朝倉さんからご説明のあった投資信託等々、全部交えて「ファンド」という一言で一緒くたに議論されることがございますが、実態は内容として随分違います。

あと、特に日本の場合は、新聞紙上で多々話題をつくるアクティビストファンドと、バイアウトファンドの違いということも、あまり明確に区別されていないところがございます。

6ページでございますが、これは直近5年間でプライベート・エクイティ・ファンドが募集し、集めた金額の順位でございます。特にこの5年は、ご承知のとおりリーマンショックがございましたので、ファンド募集という観点からは、必ずしもいい環境ではなかったわけでございますが、我々を含めた世界の大手プライベート・エクイティ・ファンドがこのような実績を作っています。なお、日本において、カーライルは日本特化型のファンドを持っておりまして、現状2,156億円のバイアウトファンドを運用しております。

続いて7ページでございます。PEファンドの特徴ということで、ここには代表的な事象を記載しております。まず、オルタナティブ投資の1つであるということ、また高い期待リターンが期待できるということがあります。これは単純なレバレッジ効果ではなく、プライベート・エクイティ・ファンドは、投資先の経営陣と二人三脚で多くの事業戦略遂行の努力をしていきます。その結果、高いリターンを上げることができると思っています。このように、一定期間の努力を経ますので、長期保有が前提になっております。次なる特徴として、募集タイミングが常にオープンではございません。そこはヘッジファンドと随分意味合いが違い、その意味においては、投資家はマーケットタイミングを捉えることができません。かつ、投資後の業績は、徐々に上がっていくものですので、Jカーブの軌道を描くことが通常です。よって、短期的な投資収益という意味においては当てはまらないと思っています。

なお、投資先をサポートする為には、多々なノウハウ、ネットワークが重要であり、どこのプライベート・エクイティ・ファンドでも同じ成果を出せるわけではなく、持つべき能力を持ったところが、結果として高いパフォーマンスを上げているということが言えると思います。

8ページに、若干定性的ではございますが、バイアウトファンドが活躍するための機能あるいは必要と思われる事象を書いております。この国旗はいつの年代にその地域で、このようなものが育ってきたかということを表しております。日本という観点では、近年に、特に2000年代に入って、この環境は整ったと思っていますが、実はこの中でも、まだやっぱりチャレンジはございます。特に先ほど申し上げたとおり、まだまだバイアウトファンドの機能は日本社会で完全に理解されてなく、先入観で虐げられるということが我々の活動の中において起こっています。

続いて、10ページでございますが、ファクトベースで、バイアウトファンドがどのようなリターンを過去に上げてきたかということを10ページに示しています。これは、各々の期間でS&P500、ナスダックとの比較でネットIRRを見ております。どの年限で見ていただいても分かります通り、バイアウトファンドは高いパフォーマンスを示していると言えます。

もう一つ、先ほど、どこのプライベート・エクイティ・ファンドかということが重要という点を申し上げましたが、11ページには、優良なファンド、つまり高いパフォーマンスを上げたトップティア4分の1だけの実績を比較しています。先ほどより、より高いパフォーマンスを上げているということが言えます。ではなぜこのような差が出るかということも含め、恐縮ではございますが、カーライルの投資事例を伴って次のセクションでご説明申し上げたいと思います。

ここにはカーライルの投資哲学、あるいは成長への付加価値などといろいろ書いておりますが、まず我々の投資は、どこの企業にでも生きるものではございません。我々の持論ですが、未来永劫に安定成長する会社はないと思っています。企業がどこかのタイミングで大きな仕掛け、例えば新規事業、あるいは海外展開、あるいは大きな設備投資、あるいはM&Aなどを行うことにより、次なる10年の安定成長期を形成すると思っています。そのような大きな仕掛けが無ければ、5年、10年先には立ち行かなくなる可能性のある会社さんに対して、我々の投資は、付加価値をもたらすと思っています。

もう一つ、我々は技術者集団ではございませんので、物が毀損している会社に対して投資はできません。そうでなく、「やりよう」、例えばどのように展開をしたらいいか分からないや、なかなか実行(アクション)ができない会社に対して付加価値が出ることが多いです。また明確な成長プランがあるのですが、実行がなかなかできない、あるいは成功を阻害する障害物があるなどのケースが日本企業には散見されます。事例として、海外戦略の理論的プランはあるが、それを実行に移せる海外人材がいないとか、あるいは大企業の子会社によく起こりますが、プランがあっても親会社にとってのプライオリティーが低いので、自分たちの成長戦略が認めてもらえないなどがあります。このような障害物を取り除くことにより、本来持ち得る会社の価値、成長を実現していただくことでも我々の投資が生きると思っています。

ここでカーライルの特徴を申し上げると、左側にちょっと書いておりますが、ローカルとグローバルの融合モデルを作っていることがあります。我々は先ほど申し上げた通り、日本においては日本特化型ファンドでありかつ、日本をバックグラウンドにする人間が活動しています。そこに業界担当チームなどを通じてグローバルネットワークを活用し、世界のチームと共同し、和と洋のバランスをもって投資先のサポートをすることが特徴になっています。

また我々は、投資をする前に経営陣との話合いで、明確に課題意識を共有し合い、具体的な課題とアクションプランを作り上げ、二人三脚で走って行きます。よって、どれだけ投資前に実りある協議ができたかが、結果として非常に重要です。

もう一つ、我々は経営の能動性を取り上げることなく、あくまでも経営のサポーター役ということに徹します。そうすることで、我々の資本が抜けた後でも、会社には本質的な力が根付きます。この仕組みは、5年、10年後を見据え、この2、3年で何をしなければいけないかということを信じる者のみで株主を構成することで大きな機動力を作り上げます。よって、最近の新聞等に出ている上場会社のMBOにおいて、非公開化を伴うことが多いですが、これが1つの理由になっています。一般の株主さんの中には、明日の配当、明日のキャピタルゲインという方もおり、そうなると経営は大きな施策が特に中長期ではなかなか描きづらく、実行しづらいということが起こります。

14ページにはグローバルなネットワークを入れています。我々は多くの拠点と、多くのプロダクトを運用しています。我々の投資先は、このネットワークをフルに活用することができます。

15ページでございますが、投資先を通じたネットワークというのも重要です。コーポレート投資として、今まで約400社以上の投資を行っておりますが、その投資先間の中で協働するということも多々ございます。ここに書いてある、日本での投資13件というのはすべての実績でございますが、海外投資の件名は一部の抜粋です。物作り系においては自動車とか航空機部品の領域、あるいはサービス、通信、あと最近では新興国においてはBtoCのビジネスの投資も非常に増えてきております。

よりイメージをつかんでいただければと、我々の日本での投資先であるキトー社の事例を、16ページでご紹介できればと思います。

キトーは、工場などで大型の資材を運ぶホイスト、屋根設置型のクレーンをメーンビジネスとしている会社です。2、3年後も全然揺るぎのない会社でございましたが、2003年に、5年、10年先を見据えたときには、今後の事業展開上、海外事業での収益性を高める必要性などの経営課題を、キトー経営陣がカーライルとの協働を通じて、海外事業を進化させたいということで門をたたいていただきまして、ジャスダックに上場しておりましたが、一旦の非公開化を経て、やるべきことをやって、最終的には2007年に東証一部に再上場をしました。ただ、我々の資本という意味での関係では、上場しても一気に我々の持ち分が全部出せるわけではございませんので、2011年、つまり今年の前半まで、我々の持ち分がございまして、約8年間の資本関係のお付き合いを通して付加価値を出してきました。

申し上げたとおり、投資前にロードマップを作るという意味において、事業上、あるいは組織上のいろいろな課題を全部洗い出し、実際の投資後ですが、右に書いてあるようなアクションプラン、我々はよく100日プラン、180日プランといいますが、当初3カ月、6カ月でまずやるべきことを、プロジェクトチームをつくって走っていくということをやります。右に書いてあります、いろいろな施策の中で、カーライルのネットワークとしては、例えばですが、中国展開においては、当時のキトーは中国ローカル企業が合弁パートナーでございましたが、なかなか相手先が言うことを聞かないということで、ネットワークを通じて相手を口説き独資に切りかえたりとか、あるいは海外のマネジメントを、例えば現地のアメリカ人の経営陣をネットワークで見つけたりとか、あるいは新興市場であるインドでのM&Aをサポートしたりとか、あるいは欧州戦略という意味においては、同業であるKonecranesとの資本業務提携を行うなどを経営をサポートしながら実際に実行してきております。

結果として、キトー社の扱っている製品は、日本では工場の新設需要が少なくなっておりますので、海外の市場にいち早く転じて、リーマンショックの時はもちろんうたれましたが、構造的に海外で儲かる会社として生まれ変わっていたということもあり、非常に高いパフォーマンスを上げられております。

その意味で、我々はサポーターとして、経営と一緒に汗水を流しながら、実際の会社、企業の成長をサポートしております。発想としては、会社が成長し、それが結果として企業価値の向上につながり、かつ株式価値の向上につながり、そして機関投資家に対してのキャピタルゲインにつながるという循環を作っています。

○三井カーライル・ジャパン・エルエルシーマネジングディレクター

それでは、お手元の資料の18ページをご参照ください。このようなプライベート・エクイティ投資を行うに当たって、ファンドへの資金の提供者がどのような人たちであるかということをグローバルと日本という2つの切り口で分析したいと思います。

投資する手法として、大きく分けますと4つの方法がございます。1つ目が、ファンドを通さずに個社の企業へ直接投資をしていく方法。それから2つ目としては、我々のようなファンドを通じて投資をしていく方法。日本にはほとんど存在しておりませんが、海外では、そこのファンド投資をすべきかの目利きをするゲートキーパーというコンサル業者が存在しております。それから3つ目としましては、これは主に個人投資家ですが、ファンドの1口の投資単位が非常に高いのでこれを小口にするフィーダーファンドというものがございます。4つ目としては、ファンドを幾つも選ぶのは大変なので、それをまとめてファンド・オブ・ファンズへの投資があります。

基本的には、その間が増えれば増えるほど、手数料はもちろん高くなる構造になっております。

19ページですが、どのような投資家がグローバルには存在しているのかですが、こちらは地域割りとなります。ご覧のように、北米の投資家が全体の半分以上、欧州が約4割、日本を含めたアジアは約1割未満となります。個人投資家に関しては、データがとれませんので、これは機関投資家のデータとなります。基本的には伝統的資産への投資ではなくて、オルタナティブ資産の中の一部、その中でもリスクの高い商品ということで投資をしていただいております。

20ページですが、機関投資家がそれぞれどの程度プライベート・エクイティ・ファンドに資産を割り当てているかという分析です。ご覧の通り、いわゆる富裕個人の割合が高いです。個人の資産管理会社で、欧米ではファミリーオフィスという形態が多数あります。全体資産の4分の1、もしくはそれ以上を振り分けています。また、財団、大学基金が全体の12%程度、それから公的年金、企業年金など一定の投資をしておりまして、そして保険会社が続くという状況です。近年、伝統資産のリターンが非常に低くなっておりますので、実はこのアロケーションは増える傾向になっています。顕著なのがやはりファミリーオフィスで、今、多いところですと3割を超える資産をプライベート・エクイティ投資に投じております。また公的年金も、特にアメリカでは、今、アロケーションを増やす傾向にございます。

21ページですが、各投資家のタイプがどれぐらいの金額を投じているかということで、残念ながらデータがほとんど見当たりませんでしたので、これはあくまでも弊社の例です。2009年のアニュアルレポートから抜粋させていただきましたが、全体の内、多くが機関投資家からで、公的年金・政府系機関、いわゆるソブリン・ウエルス・ファンド、金融機関、それから富裕個人といったように続いております。

これに対して、日本ではどういった投資家がプライベート・エクイティ・ファンドに投資をしていかというところですが、23ページです。黒字のところが、現行、幅広に投資をしているということで、ご覧の通り非常に限定的です。公的年金は、今は、プライベート・エクイティ・ファンドへの投資はなさっていないです。日本にはソブリン・ウエルス・ファンドもございませんし、金融機関、銀行保険会社というのは、歴史的に比較的長く取り組まれておりますが、現在では、そのリスク資産に対する規制が非常に厳しくなっておりますので、方向性としてはあまり増やす方向ではないと聞いています。加えまして、ファンドだけではなくて、ファンドからの投資先の財務状況と細かなモニタリングが必要とされているので非常に手間がかかるということで、これもアロケーションを増やすに当たっては非常に大きな障害になっています。富裕個人の方は、日本ではまだ、ほとんどプライベート・エクイティ・ファンド商品には投資をなさっておりません。企業年金に関しては、現在オルタナティブ投資ということで、ヘッジファンド中心ですが、プライベート・エクイティ・ファンドにも資金を投じていらっしゃるところはございます。ただ、プライベート・エクイティ・ファンドの場合はJカーブであり、投資をしてから数年はキャッシュが出っぱなしでリターンが出ないということで、特に日本におきましては、人事制度のもと、3年から5年で次の部署へ異動することが多く、この資産を自分の在任中に取り入れるインセンティブが働かないという構造的な問題はございます。財団基金、事業会社は、今の段階ではほとんど投資をしておりません。

24ページは、個人投資家様にとって、プライベート・エクイティ・ファンドはどのような方法で投資をすることができるかをまとめています。大きくわけると、間接的、直接的、2つの方法がございます。プライベート・エクイティ・ファンドの場合は、1口単位が非常に大きいということで、基本的に直接投資できるのは、富裕個人投資家層が中心になります。これは海外においても同じでございます。それ以外に、海外ですと投資銀行、日本の証券会社に当たりますが、彼らが商品を小口化し、フィーダーファンドに投資をする方法もあります。それから、より幅広な個人投資家が投資する方法として、間接的ですが、公的年金、企業年金、あるいは銀行の預金や保険の払いなどで金融機関を通して間接的に投資が行われています。ただ、実態として、今の日本の個人投資家は、いずれの方法においても、プライベート・エクイティ・ファンドへのエクスポージャーはほとんどないというのが現状でございます。

25ページでは、なぜほとんどエクスポージャーがないか、そのハードルについて幾つか具体的な指摘ですが、ここに代表的なものとして、チェックがしてあるところは多少ハードルが低くなりつつあるというところです。

まずはファンド投資単位ですが、これは残念ながら1口が高いと申し上げましたが、最低でも5億円、低くても1億円程度という、非常に高いハードルがございます。ただ、現在、欧米ではこれをさらに小口化するフィーダーファンドというものが非常に幅広に販売されておりまして、一口の単位が大体2,000万円からできるようになっております。

2つ目としては、非常に長期の投資で寝かせる商品であるということ、基本的には10年、もしくはそれ以上の期間の商品で、途中の解約はまずできません。また10年間の内、実際ファンドから投資をする期間は5年ですが、ワインと同じようにじっくり成熟させて待つ必要がある。これは先ほどモーニングスターの朝倉さんも言われてましたが、証券会社から見ると、途中回転売買というのがほとんどできませんので、あまり販売業者としては魅力のある商品ではないということです。

それから、先ほど申しましたJカーブ。

流動性というところでは、途中解約ができないというところ。

それから、投信と大きく異なるのが、投資の仕組みでして、例えば1,000万円を投じたい場合、1,000万円が1日目に出るわけではなくて、あくまでもファンドが実際、具体的な企業に投資する際に、そのうちの100万円をまず入れてください、200万円を入れてくださいなどのコールが5年間にわたってきます。払い込みの要請がいつ来るかは全くわかりませんで、事務手続としては非常に煩雑だということがございます。また、ファンドが投資先を売却して、実際に投資家に分配をお渡しできるタイミングも予測不能ということになります。

投資評価に関しては、基本的には毎四半期ごとですが、監査が入るのは年に1回ということで、非常に情報量は少ないです。

それから、ファンドへのアクセスですけれども、基本的にすべて私募ですので、個人投資家にとっては、その情報へのアクセスは非常に難しいです。特に日本においては、間に立っている販社さんもほとんど存在していない状況ですので、業界の情報も入ってきませんし、いわゆる一般的なメディアでも、ファンドというもの自体の投資活動がまだまだ理解されていない状況ですので、ほとんど不可能という形でございます。

27ページになりますが、最後にサマリーをします。まず、我々が一番申し上げたいのは、プライベート・エクイティ・ファンド投資は、非常に有効な投資手法であるということです。特にその中でも、過去継続して高いリターンを出しているトップティアのファンドは、多いに投資収益源になるというところです。その背景としては、我々のように、単にトレーディングをするのではなくて事業会社の経営陣の方とがっちりと組んで、二人三脚で企業の成長をお手伝いするという、非常に有効な資金でございます。日本は長期的に株式市場が低迷する中で、有効な投資手法ではありますが、残念ながら、今は販売業者がほとんどいなく、商品自体の販売がないという状況です。今、日本の企業さんは国内の経済成長がなく苦しんでいる中で、その成長をサポートするファンド機能と、結果として投資家にとってもプライベート・エクイティ・ファンド投資というのは非常に有効です。個人投資家が間接、直接的にこの資金に投じることで、長期的には日本の経済成長への貢献できる資金源にもなりますし、結果として個人資産の蓄積にもつながっていきます。社会的にも、個人的にも、いずれにとっても非常に効果の高い資産運用です。ですが、残念なことに、投資手法、投資に対する枠組み自体が、現在はほとんど存在しておりませんので、ここの発達が必須になると考えております。

簡単ではございますけれども、弊社からのプレゼンは以上でございます。

○吉野座長

どうもありがとうございました。

引き続まして、ミュージックセキュリティーズの小松代表取締役、お願いいたします。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

ただいまご紹介をいただきました、ミュージックセキュリティーズの小松です。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

まず、2ページ目からさせていただきたいと思います。マイクロ投資の現状についてということなんですけれども、マイクロ投資とは、マイクロな単位の個人が非常に小口で企業や事業に投資ができる手法でありまして、投資を受ける企業は事業単位で資金調達ができると。

主に匿名組合のスキームが用いられておりまして、金融商品取引法に準拠しております。

多くの場合は、投資期間は1年から5年程度なんですけれども、投資対象の事業計画によっては、3カ月程度の短期間のものだったり、10年間の長期間に及ぶものもあるということです。

投資対象事業の売り上げが投資家への分配原資となりまして、投資時の契約に基づく割合とタイミングで投資家へ分配していくというものです。

当社はこのようなことを11年間やってきておりまして、主たる投資プロジェクトが、こちらの下に書いてあるものです。音楽のプロジェクトに対するファンドから始まったんですけれども、そこから純米酒の酒蔵だったり、開発途上国の支援のファンドだったり、農林業、スポーツ分野、特に今年は被災地の応援ファンドという形で実行させていただいております。

これまで累計で144件手がけさせていただきまして、マイナス33%からプラスの55%の実績があるということになります。

次のページを見ていただきますと、まだまだ非常に小さなマーケットではあるんですけれども、当社を含め、他社のファンドの規模がこちらのような表になっております。特に弊社が取り扱わせていただいている、このマイクロ投資のスキームは、最低出資単位が非常に小さいというのが特徴になっている部分でございます。

次から、投資家層と投資の動機というところに移らせていただきたいと思います。

投資家の属性です。男女比及び年齢の分布の部分でいうと、やはり男性のほうが多く、66%、女性が33%です。それぞれ、弊社の投資家の方、2万件のアンケートに基づくものです。年齢層は30代から40代の方が半分を占めているということで、現状インターネットを通じた募集等を行わせていただいているので、このような分布になっていると思うのですが、最近は非常に幅が広がってきていると思っております。職業分布は、会社員の方、公務員の方。そういう意味でいうと、いわゆる富裕層ではない方々に非常に多く参加いただいていると思っています。県別の分布を見ても、全国各地から参加いただいておりまして、人口分布に非常に近いようなイメージだとは思います。

次のページの動機の部分なんですけれども、このような形になっておりまして、特徴としては「事業者を応援したい」、「事業者の考え方に共感した」という動機の方が一番多くなっております。あと、特にこのマイクロ投資という仕組みそのものへの共感が非常に多いのも特徴です。もう一方で、「利益が出そうだから」という方が非常に少ないのが大きな特徴でございます。

次のページが、投資家が希望する事業、投資家がもたらしてもらいたい、欲しい情報です。特に投資家の希望するファンド、個人の方々の希望するものとしては、食とか、環境とか、文化とか、地域というキーワードに非常に興味を持っていただいていると思います。あと情報です。投資家が投資した事業者からもらいたい情報という意味でいうと、やはり当然、ファンドの進捗状況というのもあるんですけれども、特にコミュニティーの活動状況がもらいたい情報という形になっております。

続いて資金の流れです。当社の例でご説明させていただきたいんですけれども、当社は第二種金融商品取引業者として、匿名組合契約の仲介や取り扱いを行っております。契約はすべてウエブサイトを通じております。また、弊社は営業者のモニタリングの業務であったり、任意監査のようなことをやったりさせていただきます。そのような機能を持っておりますので、右側の営業者の方々、事業者の方々と、当社が持つマイクロ投資プラットホーム、ウエブサイトで個人の投資家の方を集めることができるプラットホームの契約をさせていただき、システムを提供させていただくという形で、このようなことを実現しております。左側の個人の方に、そのウエブサイトを通じて投資を募集させていただくんですけれども、一番大事なのは出資者の方が消費者にもなっていくということを促していけるような仕組みであるということがポイントになっておりまして、この資金を持って事業を行っていただき、それで売り上げを立てていただいて、その売り上げの一部をファンド、投資、匿名組合勘定として集めさせていただいて、分配を行うというような大きな枠組みの中でやらせていただいております。

次のページは、もうちょっと中身の仕組みの部分なんですけれども、その営業者の、会社ですね。この事業を行う営業者の方は、このように資金を調達して、現金と匿名組合預かり金という形で特定事業の原価と販管費を匿名組合出資によって調達をする。BSの現金と匿名組合預かり金は分配に応じて減少していく。匿名組合預かり金は負債勘定になっている。通常のベンチャーキャピタル等の出資と異なりまして、株式を割り当てるようなことはないです。よって、経営の自主性が重んじられている。また、銀行からの融資と異なりまして、返済義務があるわけではなく、毎月の返済があるわけでもない。匿名組合契約によって約した事業売り上げの一定の割合を、約したタイミングで分配していくものという形になっております。

次のページが、つい先日、金融庁より発表された金融検査マニュアルの明確化についてです。十分な資本的性質が認められる資本制借入金について、資本と見なすことができる条件の明確化が発表されました。これによって、匿名組合預かり金の部分を一定の条件下で資本と見なして融資の評価を行うことができ、融資がしやすくなる。また資本不足に直面している企業のバランスシートの改善が図られ、経営改善につながるということで、特に弊社のほうで組成させていただいている被災地応援ファンドのほうで、この枠組みというのは非常に有効で、被災地の会社さんにとっても大きな希望になっているということです。

次のページが、実際の、このファンドを用いた企業からのコメントを踏まえてコメントさせていただきたいのですけれども、この下の部分が陸前高田の八木澤商店さんなんですけれども、これは当社が行わせていただいている「セキュリテ被災地応援ファンドによって集まった資金の意味とは、その資金によって新工場の設備等を購入でき再建につながるということだけでなく、応援してくださる方の人数分だけ、『八木澤商店は、必要とされている企業なんだ』という実感が持てることで、非常に希望となりました。そして、今回の金融庁の発表により、その皆様からの希望のお金が、資本と評価されることは、名実ともに当社を支えて頂けるお金として見て頂けることになります」と。あと、これからが非常に重要で、「これまで共に歩んできた地域の金融機関にとってもお金を貸しやすくなります。これからは地域の金融機関とこうした個人からの小口出資ファンドが手を取り合って頂きながら、当社以外も含め、被災企業の再建を支えて頂く、本当に力強いものになっていくと考えています」ということで、この金融検査マニュアルの資本性借入金を資本と見なすことができる明確化というのは、非常に有意義な発表になったなと感じております。

それも含めて次のページなんですけれども、このようなマイクロ投資の将来性という意味で、マイクロ投資を利用する企業は、既存の資金調達手段と異なりまして、こだわりたいこととか、守りたいことを大切にしながら、事業のシードマネーを調達できることにメリットを感じてくださっていると。また、そのこだわりや守りたいことに共感、応援したい個人が多く存在する。また、出資者になることで、対象事業の成長可能性も高まることが期待できるというふうに考えております。

投資の成否を分けるものということで、次のページです。当社も、このようにマイクロ投資を集めてくるだけではなくて、出資者が消費者になることへの支援を行わせていただくこと、またファンドとして募集することによるPR活動、多くのテレビや新聞等で取り上げられることが多いと。また、当社の公認会計士による会計的支援や投資先企業同士の協業の促進も行っていくということです。

次の具体例は、そのような細かいご説明になっておりまして、事業計画の作成、現地で直接行わせていただいたりとか、次のページはプロモーション等でお手伝いさせていただく。

次の18ページは、販売支援や協業者の獲得のご支援を、微力ながら行わせていただいております。

非常に簡単ではあったんですけれども、まとめといたしまして、国内の中小企業、約420万社の資金ニーズと日本国内の膨大な個人金融資産が、共感や応援を動機として直接結びつくことによって、また新たな資金媒介経路の確立の兆しが芽生えてきているんではないかということがあります。また、マイクロ投資による資金媒介経路の確立というのは、世界的にもまれな事例であると考えておりまして、国際的な競争力を持った産業として金融の一分野になる可能性があると考えております。また、運営主体としては、受動的な取り組みである投資先のパフォーマンス評価だけではなくて、有望な案件の発掘に加えて、投資先事業のパフォーマンスが向上するために、さまざまな形で支援・協力を地道に行っていくことが重要なのではないかというふうに考えております。

以上が弊社からの報告になります。どうもありがとうございました。

○吉野座長

小松代表取締役、どうもありがとうございました。

それでは、あと20分ぐらいございますがいかがでしょうか。

私のほうから、まず最初に、カーライル・ジャパンの方々にお聞きしたいんですけれども、先ほど、投資対象のところでは、やっぱりコンサルタントとかゲートキーパーという目ききが重要であると。それから、その後の経営サポートだと思うんですけれども、どういう人材の方々がここを担っていらっしゃるんでしょうか。

○三井カーライル・ジャパン・エルエルシーマネジングディレクター

ゲートキーパーは、やはりプライベート・エクイティの投資経験のあるところです。欧米ではファンドの選別をするのに特化した業者さんがたくさんいらっしゃいます。日本でも、今徐々に事務所を設立なさっているところは増えてきています。原則はプライベート・エクイティのファンド投資を、過去いずれかの投資機関で経験された方がやっていると思います。

○吉野座長

その後の経営サポートは。

○大塚カーライル・ジャパン・エルエルシーディレクター

投資サイドの人員としてのバックグラウンドは多岐にわたっております。金融出身の人間、あるいは事業会社出身の人間、日本の場合は官僚出身の人間とかいろいろおります。もう一つ、我々の人員としては、投資するプロフェッショナル以外に、シニアアドバイザーという形で、各業界出身の方々が我々の投資活動をサポートする体制にもなっております。

あと海外においては、この業界から事業会社に戻っていく人間もいて、例えばですけれども、今、ゼネラルモーターズのCEOであるダニエル・アカーソンは、もともと我々の人間で、海外ではプライベート・エクイティ・ファンドと事業会社間においてもキャリアのエクスチェンジが行われることがございます。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

いかがでしょうか。川波先生、それから永沢委員と。

○川波委員

カーライルの大塚様、三井様、どちらでもよろしいのですが、18ページに投資の方法が示されていると思います。ただいまのご説明で、投資家別の構成では、北米が53%、欧州が37%、アジアが10%という数字をお示しになったんですけれども、投資先のほうの、とりわけリターンがどうなるのかということをちょっと教えていただきたい。

それから、短期より長期だというお話だったんですけれども、投資先の具体的な企業名も事例でお示しいただいているんですけれども、例えば地域ごとのリターンの比較のようなものはできるのでしょうか。できるのであれば、少しその中身を教えていただきたいということ。

それから投資先を決めていく場合の、あるいは投資先を発掘し、選別し、決定していく際の基準と申しますか、どういう基準で見ていらっしゃるのか、そのあたりのことについて、もう少しご説明をいただければありがたいと思います。

以上です。

○三井カーライル・ジャパン・エルエルシーマネジングディレクター

では、前半は私のほうで回答させていただいて、後半は大塚のほうで。

まず1つは、リターンのところですが、基本的にはグローバルにプライベート・エクイティ・ファンドは、実際に投資をしたお金が、最終的に10年後には2倍から3倍になるというのが1つの基準にはなっています。ただ、あくまでも絶対リターンの商品なので、先ほどワインに例えましたが、やはりビンテージによって市場環境が違うのと、最終的にファンドがその事業を上場させる、もしくは他の事業会社に売却をしますが、それらはマーケット動向にもどうしても左右されますので、年により良い年もあれば悪い年もあるというのが現状です。

現状、地域ごとのリターンの比較はできますが、ほとんどは欧米の数字になっています。残念ながら、日本だけのデータは、存在しておりません。今、アジアの数字がほぼとれるようにはなってきていますが、欧米とアジアというのは市場の仕組みが若干違いますので、横並びにすることはあまり意味がありません。

手元に数字はありませんが、アメリカの数字のほうは前段でお話をさせていただいたとおりで、欧州もそれほど大きな差異はない形です。アジアに関しては、比較的、市場が最近なので年によって違いますが、押しなべてそれほど大きい差はないと。ただ、アジアのほうが若干リスクは高いので、当たった場合は高いリターンが出るというケースもあります。リスクは高くなって、リターンも高くなることがあります。ただ、年によってそれも異なるということです。

○大塚カーライル・ジャパン・エルエルシーディレクター

後段の投資の発掘と投資の基準ということでございますが、主には日本に関してお話を申し上げると、発掘というところは先ほど申し上げたとおり、我々には先入観との戦いがございまして、基本は我々の付加価値を、地道に、直接投資対象になり得る会社の経営陣、あるいはコングロマリットの子会社の場合であれば、親会社に、あるいはその間に立っていただける可能性があるような金融機関等々に真摯に語っていくことしかないです。

投資の基準ですが、基本は先ほど申し上げたとおり、資本が動くから投資するわけではなくて、我々として付加価値が明確に見出せるから投資します。それが投資先の経営陣にとって間違いなく付加価値として感じていただけるというところに非常にこだわります。もう一つは、プロダクトが毀損して事業が立ち行かなくなるという投資は、カーライルとしてはしません。どちらかというと、「やりよう」のところで、実行力が足らない、やり方が分からないとか、進み方が分からないなどといった会社に投資をさせていただくことが多いです。

あと客観性の部分で多少申し上げると、投資後のサポート体制という意味では、我々は人力を割きますので、担っているファンドサイズでの効率などで、これ以上の額じゃないと投資ができないという基準がございます。

○川波委員

ありがとうございます。

○吉野座長

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

ありがとうございました。2社に対して2つずつ質問をさせていただきたいと思います。

まずカーライル様への質問ですけれども、資料の8ページ目の進捗表、歴史のところについてお尋ねします。最後の法制の整備のところで、日本はおくれていたが、整備されたと評価していらっしゃいますが、どのような法律ができたから整備されたと評価されているのか、ご説明をいただきたいと思います。

それからもう一点、三井様は、日本については、個人にも入ってほしいと願いながらも、やはり慎重な姿勢でいらっしゃるようにお見受けしました。お話の中で小口化とか、フィーダーファンドという言葉が出てきたと思いますが、この場合、日本ではどのような法形式の利用が予定されているのか、実際に使われているのかもしれませんが、教えていただけたらと思っております。

それから、ミュージックセキュリティーズ様に続けて質問をさせていただいてよろしいでしょうか。

まず、おそらくファンドによっても違いがあると思いますが、マイクロということですが、最低購入単位はどれぐらいからか。それから運用報酬というんでしょうか、管理報酬というんでしょうか、この率はどの程度か。開示されている範囲で結構でございます。これが第1点目の質問でございます。

それから第2点目としましては、6ページ目に投資動機について触れてありましたけれども、このような動きというのは、日本においても新しい動きで望ましいこととは思いますが、投資動機というのは時間とともに変わるものではないでしょうか。特に個人においては、初めはそういうふうに言っていても、時間がたつと、そうは思っていなかったと変わりがちなものでございますが、共感できなくなったということはないのでしょうか。時間の経過とともに、会社も変わるし、投資家も変わる。会社のほうはおそらくミュージックさんのほうでコントロールされるんでしょうけれども、投資家の投資マインドのコントロールというのはなかなか難しいもので、こういう面からトラブルは生じないのでしょうか。ないということならどのような点に配慮をして投資家選別をされているのか。事業者選別も必要かと思われますが、投資家選別も相当必要なのではないかというふうにお話を伺いながら思ったのですが、その点、どのように取り組んでいらっしゃるのか、お話を伺えたらと思います。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

○吉野座長

カーライルのほうから、2つお願いいたします。

○大塚カーライル・ジャパン・エルエルシーディレクター

前段、法制の整備ということで、ここの8ページに書いてある内容は若干漠とした内容です。例えばですが、公開会社に我々が投資させていただくときには、先ほど申し上げたとおり、今後5年、10年を考えて、この2、3年で何をしようかというものだけで株主を構成しないと、なかなか会社経営としての機動力が出ないわけですが、その意味で上場会社の場合は非公開化のプロセスを経て、やるべきことをやって、また次なる資本政策に移るということが普通であります。その時に、例えばTOBをかけますが、自分がその会社の株を持っていることも忘れられている方もいますので、100%集まることは基本ありません。ですが、株主が残ってしまうと、先ほど申し上げたような発想において経営が行いにくいということで、少数株主に、ちゃんとした対価を払って100%化するということが通常行われますが、このプロセスがあまり明確になっていなかったということが、90年代から2000年にかけて、いろいろな事例を通じてクリアになってきたと思っています。

○三井カーライル・ジャパン・エルエルシーマネジングディレクター

それから、2つ目のご質問の個人投資家向けのフィーダーファンドの仕組みですが、海外ではリミテッドパートナーシップというストラクチャーをとっております。日本では、残念ながら、まだフィーダーファンドを直接販売している実績はどちらの販社もないと聞いておりますので、可能性としてはそのままリミテッドパートナーシップで販売することも可能ですし、あるいは、これは証券会社の方に伺ったほうがいいかもしれませんが、ユニットトラスト等の組合等に仕組みを変えることは可能だと思います。

○永沢委員

ありがとうございました。

○吉野座長

ミュージックセキュリティーズの小松社長、どうぞ。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

まず1つ目のご質問なんですけれども、こちらの3ページ目を見ていただきますと書いてあるんですが、弊社のファンドの場合は、大部分が1口1万円から投資できるようになっております。1口も1万円ですし、最低出資も1口からという形です。以前はもうちょっと小さい、1,000円とかでできることもやっておりましたし、あとは商品によっては5万円というものもあるんですけれども、大部分が1万円からになっております。弊社の手数料は、例えば集めた金額の何%かをいただくこともありまして、9ページ目に、この仕組みの部分で、例えば販売の取り扱いの報酬で、調達金額の5%をいただくなど、これもケース・バイ・ケースではあるんですが、これぐらいいただくということがございます。

また、2つ目のご質問の部分なんですけれども、投資家の方が共感できなくなったり、気持ちが変わったりすることは当然想定できることだとは思うんですけれども、弊社がそうならないためにやらなくてはいけないことという意味でいうと、これはやはり日々の情報の開示だと思っております。ウエブサイトを通じた販売を行っているので、ウエブサイトを通じた情報開示を非常に頑張ってやってはいるんですが、大事なポイントは、その出していただいたお金が、実際、その会社さんにとってどう役に立ったのかとか、どのように使われて、それによって何が実現できたのかということを非常に丁寧にご説明させていただくことに努めております。それによって、投資家がファンドの期間中、自分が出した先の会社さんのことを、当事者と同じような気持ちで考え続けていただけるように努めていくことによって、気持ちが変わったり、トラブルが起こるようなことを防ぎたいと思っております。

今まで、当然マイナスで終わったファンドもあるんですね。こちらの最初のほうのページでご説明させていただいたように。これは音楽のファンドで、マイナス33%になってしまったファンドもあったんですが、投資家の方を皆さん、希望者を呼ばせていただいて、特別な、例えば音楽ライブをさせていただくことによって、いわゆる金銭的なリターン以外のリターン、投資家の方が感じることができるリターン、喜びというものを、できる限りお返しすることを、弊社としても、アーティストとしても、事業者さんとしても努力していただくことによって、そういうようなトラブルが起こらないようにできるのではないかなと考えております。

○永沢委員

それから、最低購入単位は1万円とありますが、ほんとうに1万円から買えるということですね。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

はい。

○永沢委員

ありがとうございました。失礼いたしました。

○吉野座長

では、大垣委員、それから小野委員、川島委員、篠原委員、その順番で。

○大垣委員

では、簡単に。

ミュージックセキュリティーズの小松社長、すばらしいビジネスモデルだと思うんですね。こういう匿名組合の出資仲介というのは、古くからあり得たものだと思うんですが、ビジネスとして成立するのがなかなか難しいような印象を受けておりまして、カーライルのMDの方が私の10倍くらい給料をもらっているというのは容易に想像がつくんですが、例えば10年間で24億円の募集ということですから、5%の販売手数料をとっても10年間で1億円ちょっとですね。その後、期中でフィーをとられても、例えば新丸ビルにオフィスを構えてやっていくには少し苦しい規模だと思うんです。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

確かに。

○大垣委員

こういうのは何となく、私も何回考えても非営利でやらないとなかなかうまくいかないような感じがしていて、それが参入されている企業さんがまだ非常に少ないということにも影響していると思うんですが、率直なところ、こういうやり方で、何というんですか、非営利でやろうと思われる方じゃなくて、若い方がお金もうけとしてこういうのをやってみたいと思われるとなったときに、こういう事業は大きくなるんでしょうか。

○吉野座長

小松社長、どうぞ。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

ありがとうございます。そうなんです、はい。

ただ、こちらの15ページから数ページご説明させていただいているように、運営主体がいかにお金集めだけにとどまらないのかというのが非常に重要かと思っておりまして、弊社の場合は、こちらのように、やはり出資者の方が消費者になることによる商流がそこで生まれていくことによるビジネスで、ウィン・ウィンの関係を事業者さんとも築いていくこととか、あとは弊社は音楽のファンドから始まったので、じゃあ、音楽の事業に対してもきちんとコミットして、事業ができるような体制をつくっていくということで、ある種、金融にとどまらない金融の事業者であるというところが、結構重要なのかなと。ビジネスマインドを持ってやることがほんとうに重要で、もう一方で、支援のために、大変な人のためにお金を集めたいという姿勢もとても重要なんですけれども、やはり続けていかなくては、弊社も従業員に給料を払っていかなくてはいけないので、かといって、もう一方で個人の投資家の方に不当な手数料だったり、必要以上のリスクをとっていただくことは健全ではないと思っているので、そことのバランスをとりながら、弊社は適正なビジネスをきちんとしていくということのバランスがとても大事なのかなと思っております。

○大垣委員

1点だけ。そうすると、差し支えなければで結構なんですが、全体の粗利に占める、純粋なファンド事業の占めるシェアというのは、どのぐらいの感じでございますか。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

大きいですが、何というんですか、ほかの、いわゆるファンド事業でのこの報酬以外のものも非常に大きいです。

○大垣委員

ありがとうございました。

○吉野座長

では、小野委員、どうぞ。

○小野委員

私も小松さんにご質問をさせてください。

資料の10ページ、11ページに記載されている仕組みについて、お話を伺いながら、通常の株式による出資と融資の中間のような仕組みであるとの印象を持ったんですけれども、不幸にしてデフォルトしたときの優先劣後の構造も、出資と融資の中間的な取り扱いになるのかを教えてください、というのが1点です。

それから2点目として、今度は事業が成功した場合ですけれども、その場合、特に通常の株式出資者と、こちらの仕組みで投資したときとで、投資家にとってのリターンがどう違うのかを教えていただければと思います。10ページの資料によると、売り上げの一定割合をいただくということで、リターンの一定割合ではないのかなという疑問を持ったんですけれども。

それから、3点目として、投資先に対してある種密着型のビジネスをされているというふうに理解したんですけれども、これまでのパフォーマンス、具体的には、デフォルト率なり、失敗してしまったケースがどれぐらいの比率なのか、差し支えなければ教えてください。

○吉野座長

時間の関係で、先にご質問だけいただいて、それからまとめていただきたい。

では、川島委員、どうぞ。それから、篠原委員。

○川島委員

カーライルさんへの質問です。

資料の23ページに、我が国において投資家層が限定的であるという記載があります。先ほどの説明では、個人の投資家に対してはハードルがあるというお話でしたが、法人、あるいは公的機関においてこうした投資が拡大するためのハードルといいますか、支障になっているものはどういうものがあるのか。そして、それに対してどのような対応、対策が必要なのかについて、お考えをお聞かせください。

以上です。

○吉野座長

最後に篠原委員、ご質問をお願いいたします。

○篠原委員

まずカーライルさんにお聞きしたいんですけれども、今日、僕はずっと話を聞いていて、個人的にファンドというのは全く縁がないものですから、お話を聞いていてすごく新鮮な感じがいたしました。ただ、どうなんでしょうか。日本人の特性の、リスクをとりたがらないとよく言われるんですが、実際に事業を展開する上で、そういうことをお感じになることが、まだまだやっぱり欧米に比べれば普及度が弱いですよね。そういう点はどういう認識をされているのか。それで特にそういうものを広めていくために、金融当局に何か要望が、どういう要望があるか、あればお聞かせをいただきたい。

それから、小松さんも同じように、金融当局に対して、何かリクエストがあればということと、それからCSRという企業の社会的責任ということがよく言われるんですけれども、ここに熱心な企業というのは、おたくの場合、例えば何か順位づけとか優先度みたいな基準を何か設けているんでしょうか。その辺をちょっとお聞かせいただきたい。

○吉野座長

まず小松社長のほうから、質問を全部まとめてで結構ですので。

○小松ミュージックセキュリティーズ代表取締役

まず劣後性に関してなんですけれども、もともと契約上も匿名組合という性質上も、劣後として取り扱われるものでいいんじゃないかなとは思っていたんですが、今回の11月22日以降、明確にそこは一般債権より劣後するものであるというふうに立てつけさせていただいたものを立ち上げさせていただいています。それによって、投資家の方はリスクが大きくなる可能性はあるんですが、このように、事業者さんにとってのメリットが資本と見なしていただけるのであれば、それは事業が今後成長していく可能性が高まるので、バランスで考えるとそちらのほうが、みんなにとっていいと思いましたので、契約上も明確に劣後するというふうにさせていただいています。

2番目です。通常の株主として入ることと、こういう形で入ること、どちらがいいのかということ、もしくはどちらがメリットがあるのかというイメージなんですけれども、まず株主で入ることというのは、通常のベンチャーキャピタルさんや株主として入る場合は、やはりエグジットが、期間が見えにくかったりとか、そもそもIPOを目指していない会社もたくさんありますので、そういう会社さんが株主に対して、どういうエグジットしてもらうのかというのは非常に描きづらいと思うんです。このようなファンドであれば、もう明確に10年間の売り上げのうち、もしくは5年間とか、決めた期間の売り上げで、ある種エグジットしていただくということになるので、あらゆる資金が集まりやすいのかなと思っておりますし、投資家としてもエグジットが期間として見やすいというのがメリットとしてあるので、私としては、このようなマイクロ投資の形での入り方、もしくは匿名組合での資金供給の仕方というのは、まさに第3の方法なんじゃないかなというふうに思って、そういう違いがあると思います。

あと、まさに収益ではなく売り上げにこだわっておりまして、それはいろいろな理由があるんですが、売り上げそのもののほうが非常にモニタリングしやすいということもありますし、もう一方で個人の投資家の方からしてみると、例えば酒蔵のファンドであれば、お酒が何本売れたかによってリターンが決まるほうが共感しやすいと思いますので、あえて売り上げにこだわっております。

あと失敗率ということなんですけれども、特に率では出してはいないんですが、144本中のファンドで、償還しているのが70本程度、半分ぐらいは償還しているんですけれども、その中でマイナスのパフォーマンスになっているものが数本程度ありますので、そんなにすごく失敗をしている、失敗率が高いということでは全然ないと思います。それはやはり、事業に基づいて売り上げでの分配を行うからだと思います。

あと、当局への注文なり、希望ということなんですけれども、このような場に呼んでいただいたことも非常にありがたいと感じておりますし、本日何回も言わせていただいている資本性借入金の件についても、特に被災地の会社さんにとってみたら、大きな後押しになっていると感じていますので、非常に感謝しております。

あとCSRの観点での順位づけということなんですけれども、これが一般的なCSRという意味でかどうかはわかりませんが、地域へ貢献している会社であるということが、弊社として、匿名組合でのファンドという仕組みを通じて、積極的にかかわっていきたい、あるいはかかわっている会社です。やはり地域に根差している会社というものは、ファンとか、かかわる会社さんも多くて、当然雇用もきちんとされているということで、こういう資金がいきやすいですし、あとは、私がお目にかかっている経営者の方の傾向としては、やはり地域を盛り上げていくという意味での責任感が非常に強い方々が多いというふうに感じましたので、そういう方に積極的に使っていただきたいというふうに考えています。

以上です。

○吉野座長

ありがとうございます。

じゃあ、カーライルの方々お願いいたします。

○三井カーライル・ジャパン・エルエルシーマネジングディレクター

機関投資家の中でまだ普及が限定的だというハードルですが、25ページに先ほど個人投資家にとってのハードルを列挙させていただきましたが、基本的には同じ理由です。特に我々側から見て障害になっているのが、2つ目、3つ目、4つ目、長期の投資であって、Jカーブであって、低い流動性だというところです。特にプライベート・エクイティ投資をすると一たん決めた場合は、皆さん積極的になさるのですが、すると決めるまでのところでかなり時間が掛かります。

幾つか理由は挙げられると思うのですが、1つは、一般的論ですが、やはり最終的な資産の配分を決められる、いわゆる企業の上層部の方が、まだファンド自体に非常にネガティブなご印象を持たれているところは正直否めないと思っています。その解決で一番理想的なのは、日本のプライベート・エクイティ・ファンドが成功した事例が実際目に見えて、いろいろなメディアにそれを取り上げていただいて、正しい報道がされるというのが最も理想的ではあるんですが、現状国内の市場は、まだそこまで成熟していないので、どうしても海外の話にはなってしまいます。

それと、やはり大きいのはアセットを導入したときに、Jカーブのある資産ですので、運用者の在任は大体3年から5年の人事制度だと思いますが、入れたところでその資産の運用利回りがその期間ではマイナスになってしまう可能性のところです。ただ、それをしばらくして次の担当者のときにはプラスになるので、その種まきをした人はある意味損をしてしまう。これは人事制度をある程度柔軟に対応していただいて、そのあたりの評価をしていただくとか、あるいは場合によっては、そこを報酬制度に多少リンクさせていただくとかいうことをなさっていただくと、多少導入はしやすいと思います。やはり目先評価が下がるものを、あえて、今、積極的にとりたがらないというのは大きな障害になっています。

○吉野座長

もう一つ、リスクをとる。

○大塚カーライル・ジャパン・エルエルシーディレクター

リスクをとりたがらないというところでございますが、ほんとうに言われるとおりでございまして、やっぱり日本においては、まだまだこういう機能を活用してまでという方は非常に多いと思っています。特に大会社の子会社みたいな事例のときは、大会社さんはプライオリティーを幾つか設けて事業展開をされますが、プライオリティーが明らかに低い事業というのは、資本のサポートがなければ、事業は長期的には毀損をしていきます。なかなか売るということに対して、自分の社長任期、例えば4年、6年、の中で、おれの任期の間にそこまで決断する必要はないだろうというような先延ばしの傾向があります。ただ、最近は、子会社の社長が自分たちの業界において、自分たちの現行の仕組みでは、絶対に10年後の成長が見えないと子会社が火をつけて親会社への独立への働きかけが起こっています。

ちなみにですが、こういったリスクマネーを背負って、かつ事業展開上のサポートをするという機能は、本当は私たちを使い倒していただくことです。私が聞くところによると、中国なんかではそんな都合のいいやつらがいるのかということで、非常にプライベート・エクイティ・ファンド投資に対しては一般企業も含めてポジティブにとっているというようなことを聞きます。

○吉野座長

あとは金融庁への何か意見。

○大塚カーライル・ジャパン・エルエルシーディレクター

金融庁というか、行政全般という意味においてですが、欧米を見るとこういったプライベート・エクイティ・ファンド投資が1つのきっかけとなって業界全体の再編が行われているということがあると思います。例えばですが、投資先の将来を見据えたときに、次なる資本政策ということで、同業と一緒になっていくケースもございますし、あるいは大会社さんの子会社の場合は、そもそもそこの会社が専業化されていないのに、そのような中途半端な子会社と統合するかと思う人は多分いないと思います。ただ、この子会社さんがMBOで明らかな専業企業として、自分たちの事業の発展のためだけで物事を決められる仕組みになっていれば、第三者の方が一緒にやろうというようなことが起こって、結果としてですけれども、10年、15年の歴史の中で業界再編が起こってきました。

特に日本においては、どの業界においても、今、プレーヤーが多すぎて、サプライサイドがディマンドよりも過剰ということが、自動車とか、どこの業界においても起こっていると思っています。結果として、プライベート・エクイティ・ファンドの活動がいい意味での業界再編を起こして、日本の5年後、10年後に、世界的な競争の中で、力強くやっていける会社さんをつくっていくような認識を持っていただいて、一般企業の先入観のハードルにいい意味でエデュケーションしていただくということが、もしかしたら行政から側面サポートいただけることなのかなと思っています。

○吉野座長

どうもありがとうございました。ちょっと時間をオーバーしてしまいまして申しわけございませんでした。

それでは、次回の、これからの計画に対してお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

本日も長いご審議ありがとうございました。本年の審議は以上でございまして、次回の日程は皆様方のご都合を踏まえまして、座長ともご相談の上、来年1月上旬という方向で調整をさせていただきたいと思います。

それでは、よいお年をお迎えください。

○吉野座長

どうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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