金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第10回)議事録

  • 1.日時:

    平成24年1月11日(水曜日)13時30分~15時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、審議に先立ちまして、お手元の資料の確認をお願いいたします。

お手元資料、4種類ございます。

資料1-1といたしまして、A.T.カーニー株式会社パートナー、矢吹様の資料。

資料1-2、中央大学大学院、杉浦教授の資料。

資料1-3は、大垣委員の資料でございます。

資料1-4は、事務局で用意させていただきました論点メモのような資料でございます。

以上、4種類、よろしくお願いいたします。

○吉野座長

それでは、ただいまから第10回目の「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」を開催させていただきたいと思います。

第1回目にご了解いただいておりますように、このワーキング・グループは原則として公開とさせていただいておりまして、今日も議事の公開とさせていただきたいと思っております。

それでは、早速、議事に移らせていただきたいと思いますが、本日は、前回に引き続きまして、国民のニーズに合った金融サービスの提供をめぐる議論をさせていただきたいと思っております。

過去の2回の会合では、国民という場合に、リスクマネーの供給源、リスクマネーの提供者という側面に注目したわけですけれども、今日は、お手元にございますように、資産運用ばかりではなくて、普通の日常生活を営む中での決済とか信託とか、それから社会格差の側面、こういうものに注目しながら生活者としての金融サービス・ニーズを考えたいと思っておりまして、お三人のゲストの方をお迎えいたしました。皆様からごらんになりまして右側から、A.T.カーニー、パートナーの矢吹様、それから、信託にお詳しい中央大学教授の杉浦先生、そしてワーキング・グループのメンバーである大垣先生、この3人にお越しをいただいております。

お手元の資料に基づきまして、まず最初に矢吹様、杉浦先生からご報告いただいて、一旦ご質問いただいて、それから大垣先生にお願いするという順序でさせていただきたいと思います。

それでは、A.T.カーニーのパートナーの矢吹様、よろしくお願いいたします。

○矢吹A.T.カーニー パートナー

皆様、ただいまご紹介にあずかりましたA.T.カーニー、パートナーの矢吹と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。お話しさせていただく時間は、冒頭15分ということで非常に限られておりますので、資料に沿いまして、ポイントを絞ってお話しさせていただきたいと思います。

私自身は、銀行で10年お仕事をさせていただいた後、A.T.カーニーで、主に金融機関向けに、経営から現場改革に至るまで、10年間にわたってご支援をさせていただいております。

本日は、その経験から私が考えていること、並びにA.T.カーニーの金融チーム共通の問題意識として、私どもが金融機関の変革をご支援させていただく際に念頭に置いていることについてお話をさせていただこうと考えております。

資料は、20ページ近くございますけれども、今日お伝えしたいメッセージは大きく2つございます。1つは、需給ミスマッチの根本的な要因となっているのは、単に金融機関だけではないということでございまして、我が国の政治・行政と、それを取り巻く消費者のマインドという三者が絡み合って、我が国特有の、イノベーションがなかなか起こりにくい構造をつくり出しているというところでございます。

2点目は、したがって、そういったミスマッチ解消に向けて、さらに今後消費者のニーズが多様化していく中においては、対症療法的に金融機関サイドで対応していくだけでは、到底この変化のスピードに追いついていくことは不可能であり、これまでの我が国の金融機関を取り巻く環境、風土にまで踏み込んで変革を促していく、このような抜本的な取り組みをしていく必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。

これ以降は、資料の右下に書いておりますページに従ってお話しをさせていただきます。

まず、1ページ目でございます。最初の部分については、これは多様化する個人の生き方から、今後金融ニーズがどう大きく多様化していくのかというところを簡単に整理させていただいたものでございます。このあたりについては、もう既にこれまでにもご議論されてきた部分かと理解しておりますので、ポイントを絞ってお話しさせていただきますと、今後、個人の生き方が大きく変化していく中において、キーワードとして2つあって、1つは、社会格差拡大、将来・先行きへの不安が高まってくる、実際に高まっているということと、もう1つは、多様な価値観の中でいろんな生き方が出てくる、ということをお示ししております。

2ページ目につきましては、多様な生き方を背景にして、これは1つの例ではありますが、A.T.カーニーが過去に行った、消費者・生活者向けのインタビューとアンケートをもとに整理した、社会格差に基づくセグメントをお示ししております。

縦軸に、年収と金融資産、いわゆるリッチ度合いを表したものと、横軸に年代という形で整理していきますと、この調査の結果わかったことは、過去、5つぐらいのセグメントで整理できていたものが、今は16ぐらいのセグメントに分かれてくるということです。それぞれ、特徴とか属性、ニーズというものがこれによって大きく変わってくるというところが、これ以降のページでお示ししていることでございます。

3ページ目では、金融ニーズも多様化するということで、資産形成と住宅ローンに絞ってアンケートをとりました結果を、縦軸に資産形成、横軸に住宅ローンで、ニーズの大小という形で2軸で整理しております。

今のニーズ状況と10年後のニーズ状況という形で、三角でお示ししたもの、この2つを整理しておりますが、言えることというのは、それぞれ、若年層、中年層、シニア層と仮に呼ばせていただいておりますけれども、このいずれのセグメントにおいても、10年後のニーズ状況というのはやはり大きく差が開いてくるということでございます。それぞれパターンというのは違ってはいるのですが、共通していることは、今よりも10年後は、さらにこういったニーズの差、大小がセグメントによって大きく開いてくるということでございます。

一方で、4ページ目は、もう一つの分析・調査結果ということで、資産形成商品についてのニーズが今後どう変わっていくかということを示しておりますけれども、これ自身は、結論から申し上げると、どの層においても、比較的、融資周りのサポートよりも、今後、資産形成のサポートのほうが期待が高いということでございます。多くの方が、将来の生活に不安を抱えているということは、もう皆様ご承知のとおりですし、ここにお示しさせていただいたとおりでございますが、就業中、退職後についても不安を抱えていらっしゃる方が非常に多くて、それに伴って特に若い人ですら、5人に1人ぐらいが資産形成のサポートを必要としているというような状況でございます。こういったことを踏まえますと、資産形成商品自体は、単にお金持ち向けの資産運用のツールだけではなくて、普通の方の生活のために必須のツールになっていくということが言えるのではないかということでございます。

次の5ページ目は、こういった生き方の変化から、今後どういう形で金融ニーズが広がっていくかというところを整理させていただいております。個人の生き方の変化から想定される影響ということで、大きく4つぐらいあるということですが、1つ目は、長生きリスクの高まりということで、ここからいろんな保険、あるいは融資のニーズは今後広がってくるでしょうということと、2つ目は、富裕層の方を中心に、より多様な資産形成手段というのも当然求められてくるので、この中で、例えば、テーラーメイドの運用商品のニーズも今後広がってくると考えられます。

それから、3つ目として金融難民の増加というところも想定され得るシナリオでございますので、その中で、いろんな消費性ローン、例えば、単にお金で返済するだけじゃない、別な返済の手段ということもひょっとしたら求められてくるかもしれませんし、一方で、超小口の証券商品みたいなものも求められてくるかもしれないということで整理をしております。

一方で、4つ目として、多様なコミュニティというものが派生してきている中で、取引仲介方法も多様化してくると想定されます。実際に今、決済の分野において、資金決済法の改正に伴って、いろんなプレーヤーが参入してきているというのも事実ではございますけれども、一方で、ニーズという観点からも、例えば、電子マネーというのは、今、クレジットカードの決済件数の3割ぐらいです。いわゆる小口決済の中において非常に大きなウエートを占め始めてきているというようなこともございまして、こういったこともどんどん需要としては膨らんでくると考えられます。今、もう既に顕在化しているニーズというのもありますし、今後さらに、こういったことを経てニーズが多様化してくるということをお示ししております。

このように、需要サイドでは、今後、金融ニーズが特に多様化してくる一方で、次のページ以降でお伝えするように、供給サイドにも構造的な課題があると私どもは考えております。

6ページ目にありますように、「負のトライアングル」と命名しておりますが、消費者である顧客、行政、我が国金融機関、この三者で構成するトライアングル、ここが非常に特殊な環境を引き起こしていて、我が国特有の、なかなか金融機関にとってチャレンジしにくい環境をつくり出しているということが私どもが考えているところでございます。

まず顧客サイドを見てみますと、もう皆様ご承知のとおり、従来から金融機関、特に銀行業というところで見ていきますと、両替対応や、窓口に硬貨をたくさん持ってきて、これを入金してくださいというサービス、それから集金、これも含めて、過去、多くの金融サービスが無料で提供されてきたという歴史的背景が、日本の場合はあったと思います。これは、単に風土の問題ではなくて、やはり金融機関側にとっても、預金がとれればもうかってきた時代が長年続いてきたわけでございまして、こういったところから、各種サービスを無償で提供できたという経緯もあったと理解しております。

最近では、超低金利というところもございますので、こういったことも背景にあって、新しいサービスを認知してもらって、それから手数料をいただくということが非常に受け入れられにくい構造が相対的に、我が国の場合は、消費者のマインドとして強いのではないかということを申し上げております。

一方で、行政サイドを見ていきますと、行政には2つの側面がございまして、1つは金融監督という観点からは、これは当然のことではありますが、規制を徹底的に遵守していくという姿勢と、ルールを逸脱すると厳しい処分を課していくという姿勢を貫いてきた一方で、もう1つは消費者とかメディア、こういった評価、批判にある程度敏感に反応してきたという側面もあったのではなかろうかと思っております。

そういった背景の中で、金融機関の立場からすると、何か新しいことにチャレンジをすると、ひょっとしたらお客様から、その分の対価をもらえないかもしれないというリスクがあるばかりか、場合によっては、規制に触れて、それが大きく新聞で報道されて批判される、こういった風評リスクにもつながってくる可能性があるそのような中においては、なかなか踏み込めない状況にあったというところが1点。

それから、もう1点は、実は金融機関は何もしなくても、それほど厳しい状況にならないというのも一部ではあったのではないかと見ております。例えば、それは地元での競争圧力の不足ということであったり、あるいは、株主、いわゆる株式の持ち合いにおける株主圧力の不足、こういったところからも来ているのではないかということでございます。

そういった観点から考えていくと、金融機関にとっては、規制に少しでも触れる、あるいは、お客様になかなか手数料を払ってもらえないかもしれないという中でコストだけ増えていくというリスクを抱えるよりは、横と同じことをやっていたほうがいいのではないか、こういった損得勘定が働いていたのではないかということでございます。

我が国金融機関特有のマインド・行動特性というものを整理したのが次の7ページ目でございまして、今申し上げた2点でございます。その具体例も、このページでご説明させていただいておりますけれども、例えば、ATMの不正取引への対応というのが2005年から2006年にかけてあったのは、皆様ご記憶にあるかと思いますけれども、このときに外国の金融機関が何をやったかというと、ある程度こういった不正取引が起きるというのを大前提とし、その上で、取引があった都度、お客様に取引があったことをメールで通知し、そこで齟齬がなければオーケー、何かあれば、それに対して個別に対応するというような運用ルールで乗り切ったのに対して、我が国の金融機関はどちらかというと、生体認証を含めたシステム対応で、徹底的に不正取引を起こさないという前提で対応したというところが大きなスタンスの違いではなかったのかなと思っております。これ自身は、どちらが間違いということを申し上げているわけではなくて、単にスタンスの違いとして、こういうところがあったのではないかということでございます。

こういった背景のある中で、従来の行動特性とかマインドを変えていくのは、そう簡単にできることではないというのが次の8ページでございます。なぜかと申し上げますと、職員を動かすメカニズムというところ、私自身も銀行におりましたけれども、やはり金融機関の職員一人一人にとっては、お客様のニーズにどうこたえていくかというプロセス自体よりも、金融機関サイドが売りたい商品をどう売っていくかというところがより強調され、あるいは推奨されてきたというところもあったのではないかと思います。

これ自身は、なるべくリスクをとりにいかないということと、一方で、効率的に推進していくという観点、市場が伸びていた背景には、非常に効率的に機能してきた成功モデルではあったと思っておりますが、今後、大きく世の中が変わっていく中で、やはりこのようなスタンスも変えていく必要があるのではないか。ただ、そのスタンスを変えていくということは、金融機関自身の風土とかカルチャーにまで踏み込んで変えていくということになりますので、それなりに大きな変革を伴うものであるということでございます。

9ページ目以降は、海外を見てみますと、失敗を恐れずに試行錯誤しながら新たな金融商品、サービス向上、顧客対応の仕組みをつくり出してきた事例というのは数多くございまして、こういったものは、我が国金融機関にとっても参考になるものがあると思いましたので、整理をさせていただきました。

1つ目の事例ということで、米銀Aと書いてあります。これは、ウェルズ・ファーゴ銀行でございます。アメリカの大手の銀行でございますけれども、こちらの銀行は何をやったかというと、これはエルダーサービスという商品なのですが、平均年齢85歳以上の単身の方を対象に、金融商品としては、運用商品として、預かり資産手数料をいただきながら、その一方で、こういった方々がふだんの生活で困ることに対して徹底的にこたえていくというようなサービスをあわせて提供しております。

ハウスクリーニングとかいろいろ書いてございますが、単なる話し相手みたいなものが実は一番ありがたがられたみたいなところもあって、この商品、非常に普及いたしました。実は、この方々、85歳以上が対象ですから、毎年4分の1ぐらいの方が亡くなっていくというところがあるにもかかわらず、銀行自体の関連取引が増えていったという経緯がございます。これは、背景としては、単身のご家族の方の面倒を見てくれる銀行ということで、親族の方のロイヤリティーが非常に高まって、ここで新しい取引に広がっていく、そんな波及効果があって大成功した商品ということで、ここでは整理をさせていただいております。

2つ目は、米銀Bということで、これは今、ウェルズ・ファーゴと統合しましたけれども、ワコビアという銀行で、ワコビア銀行は、もともと91年に、ファーストユニオンというところと旧ワコビア銀行というところと統合したわけでございますが、統合した当初は、顧客満足度最低の銀行という評価をもらっていた銀行です。何とか最低の部分を直していかなきゃいけないということで、集中的に対応していった結果、そこが今や一番の強みになっているという、こういった経緯のある銀行でございます。

ここで取り組んでいることは、やはり徹底的にお客さんの評価を集めて、それを経営陣がコミットして、これに対して、毎月どうだったのかというところをきちっと取り組んでいく、といった姿勢を全従業員に示していくというところと、お客さんの評価が毎月どうだったのかというところを直接業績評価に連動させていく、こういったところが2つ目。

それから、行員がこれをリアルタイムでチェックできるようにして、パソコン上で、毎月、自分の業務に関するお客さんからの評価というのはどう変わってきている、推移してきているのかというところが直接的に見られるような仕組み、ITインフラを導入して、そこの対応を強化していった。こんな仕組みをつくって、お客様評価という観点では、米銀ではナンバーワンの地位に上り詰めたという経緯がございます。

次の11ページ目でございますが、その仕組みとして、ここで申し上げているのは、1つはマーケティング部門を独立させて、中央集権的にそういった機能を強化してきたというところがございまして、人数でいうと、マーケティング分析スタッフだけで100名、それから、それとは別に、データ分析、解析をするITの担当のスタッフが150名ということで、お客様の数でいうと1,300万人ぐらいが主要顧客ですから、我が国でいうと、メガバンクよりも少し小さいぐらいですが、それでも、これだけ多くの人をかけてやってきたというところがございます。

12ページ目は、そういったデータをどう分析して、どういう形でターゲット顧客を絞り込んできたのかという例でございまして、ここのポイントは、単にお客様本人だけではなくて、お客様本人を取り巻く世帯とか家系も含めて、その金融機関が手数料なり金利なりで得られる収支がどうなっていくのかというところを、そのお客様の生涯にわたって獲得できる価値というものを見ているところがポイントでございます。

生涯価値の考え方については、次の13ページ目でお示しさせていただいたとおりでございます。詳細は触れませんが、例えば、1つのセグメントにおいて、いろんな金融商品提供のタイミングというものがある中で、それをどうとらえていくのか、どう数値化していくのかというところが、ここでお示ししたものでございます。

こういった取り組み自体は、我が国の金融機関においても、あるいはそれ以外の金融機関においても、既に取り組みを開始されて、大分浸透してきている部分はあると思っておりますが、その一方で、失敗例というのもやはり多かったというのも事実でございます。それが14ページ目のところで整理したところでございますが、失敗例の多くというのは、顧客管理の高度化段階というのはいろいろあるのですが、やはりシステム実装に頼ってしまって、それを取り巻く戦略部分の落としこみが不十分だったという側面がございます。

例えば、先ほどご説明したマーケティング専門部署の設立であったりとか、あるいは、顧客データを解析して、営業プロセスに生かしていく、そこのプロセスの確立であったり、それを評価する制度、仕組みであったり、そういったところがやはり抜け落ちてしまったために失敗したというケースは数多くございます。

なぜ、こういったことが起きたのかというと、私が考えるに、我が国の金融機関というのは、支店、支社中心の営業形態というのが長年続いてきたために、その中で、支店、支社を支える支店長なり支社長なりの力量というところが業績に非常に大きく影響してきた部分がありました。支店長にある程度お任せしたようなマーケティングというものは、今の時代、中堅の方がバブル崩壊以降の採用抑制でいない、それから、営業の外回りの数も絞っていく中において、OJTがなかなか進まず、継続的に優秀な方をどんどん輩出し、さらに高度化していくというのは難しい状況でございます。従って、今後は欧米銀行が取り入れているようなマーケティング部隊を集約していくとか、何らかの形の仕組みで担保していく必要があると思っております。これが今後の課題であろうということです。

それから、15ページ目でございます。これは営業チャネルの進化ということで、マルチチャネルであったり、いろんな店舗のイノベーションをやっているところがあるという話と、バーチャルのチャネルということで、最近で言うと、金融機関が携帯電話を配って、そこに自分たちのサービスのツールを載せて、より安い価格帯とかいろんなサービスをくっつけて、ある意味、半分、携帯会社となって、新しい若いお客さんを獲得していく、こんな流れが起きてきております。我が国ではまだそこまで進んでおりませんけれども、こういったことも海外で起きてきているということでございます。

以上、幾つか事例をご紹介させていただきましたが、金融機関の取り組み事例からの示唆ということで申し上げますと、今後、金融機関が対応していかなければならないのは、世帯・家系も含めた生涯価値を把握していくということと、潜在ニーズの段階からアプローチするということと、それを支える、金融機関にチャレンジさせる仕組みをつくっていく、ということが重要になってくるということでございます。

17ページ目、ご参考までに、私どもが提唱するマルチコミュニティ開発型営業戦略というものを今後導入していく必要があるのではないか、ということでございます。ここでのポイントというのは、本人と、それを取り巻くさまざまなコミュニティです。新しいコミュニティも含めて、本人との取り組み、1つの体験・対応がどう広がっていくのか、こういったところも踏まえて見ていくことが差別化につながると考えております。

例えば、本人からの口コミで、それが周りのコミュニティにどう広がっていくのか、こんなところまで見ていくということが必要と思われます。特に金融というのは、それ自体が目的ではなくて、お客様が何かを達成するための手段であるという観点から考えていくと、お客様に提供すべきもの自体を金融機関が提供していくという、そういうスタンスで考えていく必要があるのではないかということでございます。

最後に、需給ミスマッチ解消に向けた課題ということで、大きくは金融機関に求められることと、そのほかステークホルダーに求められることということで整理をさせていただきました。

金融機関に関しては、今申し上げたとおり、1つは、スキルの強化。これは、単に個人のスキルの強化だけではなくて、組織、IT、業務プロセスも含めたインフラの構築も含めた強化をしていく必要があるということと、チャレンジを後押しするインセンティブの設計ということで、特に現場の方への責任と権限を移譲していきながら、ただし、ポイントとなる部分については、中央でしっかり機能、仕組みとして強化していくことが必要だということでございます。

ただ、それだけでは不十分で、冒頭から申し上げていますとおり、負のトライアングルの揺さぶりということも一方でやっていく必要があるということで、これは行政対応ということで言うと、金融機関が新しい取り組みにチャレンジすることを奨励する仕組み、風土への改革というのも必要でしょうし、そのためには、万が一不祥事が起こったときの当局対応、マスコミ報道の仕方、こういったことも見直していく必要があるかもしれません。

その一方で、消費者に対しては、金融サービスに対する対価の感度の向上ということも必要でしょうし、金融機関に対しては、現状維持路線の打破に向けて、いろんな制度をてこ入れしていくことも必要でしょう。例えば、競争促進に向けて、地域の活性化に金融機関が主体的に取り組むための規制や仕組み、金融機関自体のガバナンスの強化、こういったことも必要になってくるということでございます。この辺りの詳細については、この資料では触れておりませんが、ぜひ議論をしていただきたいポイントということで整理をさせていただきました。

短い時間ではございますが、私からのご説明は以上でございます。ありがとうございました。

○吉野座長

矢吹パートナー、ありがとうございました。

それでは、引き続きまして、中央大学の杉浦先生から、信託に関しましてお願いいたします。

○杉浦中央大学大学院戦略経営研究科教授

中央大学の杉浦でございます。ご紹介いただきまして、ありがとうございます。本日、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

さて、私のほうは、矢吹さんと大垣先生の間に挟まれて、1人、かなり各論チックなお話になってしまうんですけれども、信託の可能性をできるだけ申し述べるために、できるだけ広めな話にはしていきたいと考えています。

まず、1つ、メッセージ的に最初に申し上げるとすれば、信託そのものは、少子高齢化が進む我が国、日本の中で、おそらく有効な投資であったり貯蓄手段であると私自身は考えていて、その他のことと合わせて、もしかしたら社会全体に対しても大きな影響力を与える仕組みではないのかなと考えておりますので、そのことを今回申し上げたいと考えます。

まず、大学の講義でもないのに、「信託の仕組みと機能」というのをすぐ下につけてありまして、中には、何かばかにしているのかという感じに思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、往々にして、これをつけなければいけない一番大きな理由の中には、信託はそもそも財産権が移転するというのがもとの設定にあるんですけれども、信じて託するという、この言葉が非常にミスリーディングで、広辞苑とかいろんなものを見ても、憲法の中にも「信託」という言葉がありますけれども、まず、そもそも財産権が移転するということはあまり認識されていない一般の方たちも多いので、まずそこのところをあえて言いたかったという部分であります。

委託者は、目的設定を行いながら財産を受託者に移転させ、それを契約とか遺言で設定できるわけですけれども、そして、単純に言えば、受益者に対して、受託者が監督、管理、運用したものから発生する利益を受益者が給付されると。そして、受益者は受託者を監視・監督できるということなわけですけれども、財産権が移転するがために、善管注意義務であったり忠実義務であったり分別管理義務といったものが受託者に課せられるという、ある意味だと受託者に対して非常にハードなコンディションに置かれながら、受託者主体で動いていくという仕組みになっているということであります。

しかし、さはさりながら、この信託という仕組み、財産管理機能とか転換機能、とかいつくかの機能を持っていますが、転換機能というのは、よくある話は、信託銀行さんのところに、委託者であるお客さんが行って、私はお金を持っているんだけれども、これだけのお金をうまく運用してほしいと頼んだときに、信託銀行さんとか受託者がいろんな人たちとコーディネーションを組んで、じゃあ、それをマンションにしましょうという形にしていくと、もともとあった金銭債権は物権に変わっていくという、いわゆるそういった意味での法律的な性格づけが変化していくということが転換機能です。また、倒産隔離機能といったものもある。この倒産隔離機能に関しては、既に流動化の世界の中で、一部、信託が取り込まれる中で、うまく有益的に活用されていて、この3つが信託を支える大きな3つの機能になっているということになるわけです。

こういったことを考えていくと、先ほど、矢吹さんからのお話にあったような、資産形成のツールとして考えたときに、1つ、受託者が委託者の資産をうまく活用したりすることによって、資産形成のツールとしても信託は活用し得るのではないかと考えるわけであります。

そして、3ページ目のところにいくわけでありますが、実は信託法と信託業法の改正によって、信託業は大きく変化してきたと私は考えています。2004年に最初に信託業法が改正されて、その結果として、特に大きかったのは、受託財産の制限が撤廃されたといったことが大きかったと思います。

実は信託業法は、2004年前までの信託業法に関しては、信託銀行が信託をやるというふうにしか読みようがなくて、実は信託会社がどういう形で設定されるかということに関しては詳細な条文がなかったというものであります。

信託会社をつくることができて、そして、さらに、受託財産に関しての制限を、信託業法の冒頭のところにあったものを撤廃したことによって、幅広い受託財産を運用、管理することが可能になったわけであります。その上で、さらに信託法が改正されて、結果的に、受益者の権利行使の実効性とか機動性を高めるための規律の整備だとか、いろんな制度の整備が行われたという形で、これ、全部説明すると大変なことになるので、いろんな整備が行われたという感じで思っていただければいいんですけれども、結果として、知財信託であるとか担保権の信託とか跡継ぎ遺贈型信託であるとか、目的信託、事業信託、さまざまな信託を実際的に行うことが可能になったということが挙げられるわけです。

それを受けて、今も信託銀行が信託の中の主要なプレーヤーであることは間違いないわけでありますが、とはいいながらも、13社もの運用型・管理型の信託会社は、今既にもう存在をしているということになります。また、新類型の信託の受託状況といったこともここでまとめてみましたが、これは学会等々で数字が出ているものを挙げてきたので、私が直接、全部のものを数えたわけではありませんけれども、ここで見ていくと、1つわかることは、当初、流動化ねらいとかそういった形で出てきた信託に関しては、担保権信託とかそういったものがあったわけですけれども、その後増えているタイプを見ていると、全体的には遺言代用信託であったりとか、そういった個人の財産に関連するものがむしろ伸びているということが挙げられるかと思います。

これもおそらく信託協会等々からのデータを、見ていって気づいたことでありますけれども、実は、流動化とか関連した信託の数字の伸びといったものは、ここのところ、伸びているどころか、むしろ下がっていて、これは皆様方もご案内のとおり、そもそもリーマン・ショックとかいろいろある中で、証券化、流動化そのものの数が伸びてないわけですから、当然落ちていくということになるわけですね。これに対して、じゃあ、信託全体の受託の額だとかそういったものも減っているのかというと、そんなことはなくて、微増しているということを見ていくと、そこを支えているのは何かなとなると、これは多分に民事信託の部分であるということが言えるわけであります。

そういうことを考えていくと、繰り返しになりますが、どうも以前のような状態の、いわゆるコーポレートベースの信託という形から、いわゆる民事信託を中心とする個人向けの信託といったものが徐々に伸びてきているのかなということもここからうかがえるような感じがいたします。

さて、その上で、5ページ以降に入ってまいりたいと思いますけれども、そこでは、個人向けの信託の事例といったことで、幾つかの事例を挙げさせていただきました。1つは、福祉型信託といったものを挙げました。福祉型信託については、実は平成20年の金融審議会の金融分科会第二部会においても一度これが取り上げられて、金融審議会の場でも議論が行われたところが記憶に新しいところであります。

この中で、福祉型信託とはそもそも何ぞやという定義を考えるのがなかなか大変だったわけですけれども、一般的には、高齢者や障害者の生活を支援するための信託であろうということが大ざっぱには言える。その中で、個別性が高いであるとか、プライベート・バンキングの領域よりも少額であるとか、安全性とか管理といった部分が重要視されるであるとか、そういうところが指摘されてきたところであります。あと、身上監護的な部分も求められる。

ただ、高額な信託報酬は、当然のことながら求めることはできないということになります。後でちょっとプレーヤーの話をするときに、重なったお話になりますが、したがって、非常に収支バランスのとれたビジネスモデルの構築といったものをやろうとすると、さまざまな困難があるといえます。

実は、福祉型信託といっても、全部信託で事を解決するというわけにもいかず、特に被後見人との関係等を考えていくと、任意後見制度や法的後見や遺言との隣接関係もありますので、実は福祉型信託というのは、信託で全部できるというよりは、そういった制度とのコンビネーションによって初めて物事が成り立っていくというのも事実として挙げられるかと思います。

そうはいいながらも、次のページに入れましたように、実は信託銀行などでも、一定のご努力が既に行われていて、さまざまな名称があるので、個別の名称は挙げませんが、特約つきの金銭信託ということで、パーソナルトラストが既にあるということがあります。これは、遺言信託との組み合わせの設定で成り立っているものでありますけれども、預金保険制度の対象になっているものであったりしますし、あと、あまり表面には出てきませんけれども、確実に使われているなという感じを受けているのは、特定贈与信託。これは、みなし贈与の部分、6,000万円という限度額がありますけれども、特別障害者を受益者として行う信託でありまして、こういった、いわゆる福祉と密接につながっている信託はもう既に存在しているというところになるわけであります。

そして、さらに次のページにいきますと、老人ホームにおける入居者利益保護のための信託といったものもあります。信託業法が改正されたときに、実際的な当時の考え方としては、1つには、こういった老人ホームであるとか、老人ホームを経営している主体も信託会社になって、そして、受託者として幅広い活動が行われるということの1つの大きな期待としてあったことは記憶しているところでありますけれども現実には、ノウハウ不足だったり、金銭を取り扱うというにはあまりにも経験がないとか、様々な理由があり、実際的には、入居者の利益保護のための信託も、信託銀行が関与されることによって実際的には今も行われていますけれども、ホーム運用サイドと利用サイド、それぞれからも信託が活用されていまして、今現在、信託の意思凍結制度や倒産隔離機能なんかを有効に使うことによって、万が一、老人ホームそれ自体がかなり経営的によくない状況に入った場合においても、ある程度は経営の安定化と永続性の確保ができるという仕組みづけも、既にある程度のところでとられているというところがあります。

さらに、もう一段飛躍した信託のお話の中には、新たな信託の可能性ということで、今回、街づくり信託というのを次のページに挙げさせていただきました。こういったものを取り上げて発表すると、とかく震災対応ねらいだとか言われたりするのでよくないんですけれども、決してそんなつもりでご紹介しているわけではなくて、実は、もう数年ぐらい前から、シャッター商店街の問題をどうするかとか、地域活性化といったニーズの中でどうしたほうがいいのかという検討のなかで挙げられていたものです。シャッター商店街の事例でいうと、シャッター商店街というのは、要するに、駅前からずっとシャッターが閉まった状態で、ぽつぽつとお店はやっているんだけども、そのぽつぽつとやっているお店は、ほとんど若い人を呼び込めない。あと、小規模な専門店が多過ぎて、人がなかなか集まらないという現状がある。じゃあ、もうちょっと適正なお店の配分であるとか土地の有効活用ができるんじゃないかと考えたときに、1回、その地域の、店舗というか、土地の使い方を抜本的に考え直してみるという話があり得るのではないかという中で、地権者の人たちが、所有権や借家権を信託して、それを権利受託会社が中心となって、地域コミュニティと、「指図」とそこで書きましたけれども、実際的にはおそらく相談をしながら、街づくり会社を通じて、新たなテナントと従来のテナントをうまく組み込んで活性化を図っていくという形のものであります。

これ自体は、実際的には実現したものがまだないのですが、かなりの地域で検討はされたことがあるものです。1ついいのは、どこからともなくファンドがあらわれて何かをするというのではなくて、地域を知っている人が、地域主体で物事を動かしていくことが1つのポイントなのかもしれません。

ですから、その中で、地元を知る人、根づこうとしている人たちが受託会社の代表になっていけばよく、そうなって、信託の集団的管理機能や倒産隔離機能が生かせればいいですねというのがあるんですけれども、やっぱり自分の土地の権利が移転するので、奪われたんじゃないかと思う人が結構出てくるんですね。そうなると、まずやっぱり信託期間はこれぐらいだとか、信託条件をどうするのかとか、をきちんと決めておくことも大事ですし、権利受託会社というのはどういうような会社であるべきかというのは、この権利受託会社がいくつもの商店街のこういった街づくり信託をやると、実は信託業法との関連性が出てきてしまって、じゃあ、信託業法上、この街づくり会社というのは、それなりの信託会社としての形態をつくらなきゃいけないのかというふうになりますし、また、これをどうモニタリングするのかというのは結構難しい問題になるかと思います。

また、さらに、これ、知財信託なんかでも共通している話ですが、すべからく、こういった街づくり全体のことをコーディネーションするのにたけている人材というのはそんなたくさんいるわけじゃない。具体的な経営者像をどうするか、またテナントコントロールの問題もあるわけであります。

さて、こんなことを考える中で、こういう形で信託そのものにいろんな可能性があるということ自体はお話ししたわけでありますが、とはいいながら、拡充のために求められることと考えると、やはり第1番目にあるのは、信託の担い手論の再検討を行うしかないと考えているわけです。既に信託業法等々によって、当局からの監督制度そのものは充実化していると私自身は考えており、1つには、規制を受けているということ自体が、業界、そういったところに関する信用力とかそういったものの維持につながっているということもあるんですけれども、逆に考えていくと、先ほど申し上げましたように、コストと利益のバランスといったものも、特に信託銀行さんなんかの場合は銀行なので、当然そこのところにひっかかってくる。ちょっと飛躍した言い方をすると、バーゼル規制とかいろんなものもある中で、一定の利益率も上げなきゃいけませんよねと、いろんなことを考えていくと、確かに少額の信託のようなものがほんとうにできるのかというのは、いわゆるコストと利益のバランスといったものを考えなければいけないということが挙げられます。

そして、実際に信託業法と信託法が改正されてから、信託銀行と勉強会をやったことも幾度かありまして、その中で、お話しした中で、福祉信託とか、やっぱり信託銀行に対する期待感というのは大きいので、じゃあ、信託銀行が福祉信託をやればいいじゃないですかという話になるわけですけど、銀行ですから、当然のことながら、銀行業以外のものをやるということはできないわけですね。そこはなかなかできないということが1つ大きな問題になってくるというのがあるわけです。

それから、そうは言いながらも、じゃあ、個人が受託者になればいいのかという話なんですけど、実は受託者というのは結構重くて、後見人制度の問題でもう既に問題になっていますけれども、一般の弁護士の方が後見人をやるのも、大体3人やるのがやっとだという方が多いです。10人も20人も後見人をやるというのは無理だという弁護士さんが多い。これは、司法書士の方にお聞きしても、一番多い方だと、20人ぐらいのお世話している方がいらっしゃいますけど、そういった方たちはかなりスーパーマンで、弁護士とかだと、10人も20人もとても無理ですというような状態だし、個人で後見人になってしまうと、仮にそれが自分の近い親類だったとしても、その方が地方に住んでいたりすると、裁判所とかに行って、じゃあ、こうこうこういう形でお金を使いましたみたいなことを一々報告しなきゃいけないという問題があって、結構負担が重いんですね。

そういったことがあって、じゃあ、だれがやるべきなのかなと考えたときに、やっぱり公益法人とかNPOとかこういった社会福祉になれているところが信託への参入をしていく可能性を模索していくことも大事だと考えていて、そうなっていくと、特定の業務範囲について、参入基準や法規制についての緩和といったものも必要なんじゃないかな。そのこと自体が、個人向け信託のビジネスの拡充につながるんじゃないかなと考えたりするわけです。

そして、最後のページに税の問題を入れました。信託は、受益者課税信託の形のものがほとんどですけれども、仕組みについては、今回、詳しくは申し上げませんが、従来から信託に関しては、受益者連続信託なんかに関しても、後続受益者が二重課税されるんじゃないかとか、いろんな問題が出てきます。これに関しては、既に税制改正要望等々で、信託の業界そのものが挙げて、さまざまな要望を既に国に対して上げていると私も聞いていますけれども、ただ、信託というのは、よくよく考えてみればそうなんですけれども、アメリカとかイギリスでどうして信託がはやるかという話をしたら、それは自分が税金を払いたくないから信託をしているというのも結構あるわけですね。そうすると、相続税制との確執から発生しているというのもあって、ここは税制度と信託の問題は、結構難しいといったところが、このページで言いたい部分でした。

最後に、ページ上、書かなかったんですけれども、一言だけ簡単に申し上げると、あと、もう一つ、信託のビジネスを伸ばそうとすると、やはり周辺法や社会制度とのバランスをどうするかも考えなきゃいけないと思います。例えば、さっき申し上げた福祉なんかの話については、仮に信託銀行とか信託会社が福祉に積極的に参入していこうと思っても、福祉の業界そのものにある参入障壁というのは結構高い。例えば、農業信託といったものも、これ、随分前から言われているわけですけれども、農業信託も、農地法が結構大きなハードルになったりしている。ただ、もっとも、それぞれの法律に関しては、それぞれに、なぜそういったものがあるかに関しては一定の意味があって、これに関して私がどうこうということはないわけですけれども、反面、信託の場合は、とりわけ権利そのものが移転するという過程の中で、もともとの権利を持っていた人たちのマインドといったものが結構重要になってきていて、信託制度のメリットを社会制度とかの中でどう説明をしていって、納得してもらって、最終的にその制度が一番適切な方法であるのかということを、これからどう説明、立証していくのかというのが大事なポイントになってくるんじゃないかと考えた次第であります。

ということで、雑駁なお話になって恐縮でございましたが、私からの発表はここまでとさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。

○吉野座長

杉浦先生、どうもありがとうございました。

それでは、ここで一旦区切りまして、皆様から発表者の方にご質問をしていただきたいと思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございました。大変興味深いお話をいただきましたが、矢吹さんと杉浦さんに1点ずつお伺いしたいんですけれども、まず、矢吹さんのお話で、需給ミスマッチというものが、金融機関のサービスと利用者との間にあるという前提でお話をされているんだなと理解したんですけれども、私も全くそういうことはないと強く主張する気はないんですが、他方で思うのは、ほんとうにそういう需給ミスマッチというのがあるのであれば、例えば、外資系の金融機関なんかの参入によって、利用者に真に求められるようなサービスが提供されて、結果的に従来の国内銀行のサービスも変わっていくというようなことが起きるはずなんじゃないのかということです。

例えば、証券業界ではまさにそれが起きたのでして、もともと国内証券会社のシェアが100%だったところへ外国証券会社がどんどん入って、今や、大手何社とかいう数え方をするのでも、外資系を入れないと数えられないようになっているわけですよね。そこは明らかに、少なくとも1980年代までの証券会社のサービスには需給ミスマッチがあったと思われるんですが、銀行業界についてはあまりそういう変化が見えないので、議論として、空想的と言うと大変失礼な言い方になってしまうんですけれども、ほんとうにそのような大きなミスマッチというのがあるのかなとやや疑問に思ったので、その辺についてのご見解を伺えればということでございます。

それから、杉浦さんのお話については、福祉型信託等の特定の業務範囲について、参入基準等々、規制緩和が必要かというようなご指摘があったんですが、私は、やや疑問に思いまして、過去には新規参入した信託会社の中で、基本的な財産管理に大変深刻な問題があったという事案があったと聞いておりますし、成年後見制度についても、負担が重いというご指摘がある一方で、後見人による財産の横領なんかが大変深刻な問題になっているという事態もあるわけですよね。そういうことを考えたときに、個人向けの信託に、公益法人とか、公益法人はちょっと微妙ですけれども、NPO法人とか社会福祉法人というのがどんどん参入すると、新たな消費者被害の温床になるだけではないかというような気がちょっとするんですが、その辺、ご意見いただければということです。

○吉野座長

矢吹パートナーからお願いいたします。

○矢吹A.T.カーニー パートナー

大崎委員、ご質問ありがとうございます。私から2点コメントさせていただきます。

ミスマッチがあるかないかという観点で言うと、現在、特に金融機関にお客様が求める顕在化されたニーズについて、特段そこに大きなミスマッチがあるということを申し上げているわけではなくて、ただ、お客さんにいろいろインタビューなりアンケートをとっていくと、実は金融機関には期待しているものと期待していないものがあって、例えばですが、住宅ローンをやるときに、金融機関に期待するのは、金利が低いとか返済方式が柔軟であるとか、そういったところのニーズが非常に強いのですけれども、一方で、じゃあ、私が住宅を購入するに当たって、どんな住宅を買うのが最適なのか、あるいは、それに対してどんな資金調達をするのがベストなのか、そういったことに対しては、実は金融機関に期待しているところはあまり大きくないというところもあります。ですから、こういった潜在的なニーズも踏まえていくと、需給ミスマッチというものが存在するのではなかろうかというところが1点。

もう一つは、現在の状況と今後の状況もまたさらに変わってくるだろうということでございます。今後、そういった需要というものが、単に金融という枠組みを超えて広がってくる、多様化してくるという中においては、やはり今のままの体制では、いずれ需給ミスマッチというものは今後起きてくるだろう。この2点からご指摘をさせていただいたということでございます。

○吉野座長

杉浦先生、不正があり得るという点についてお願いします。

○杉浦中央大学大学院戦略経営研究科教授

大崎委員がおっしゃった話は、私自身が全く同じように懸念していることなので、実は、格別、行け行けゴーゴーの信託をつくったほうがいいと言っているわけではないんですけれども、何が言いたいかというと、だからといって、今現在の状況でいれば、ほんとうは福祉分野等その分野に関してかなりプロの人がいるのに、そのプロの人がなかなか入っていけない。レジュメの中で、「特定の業務範囲について」という言い方をあえてしているのは、そこにポイントがあって、要するに、何から何でもいいからやってもいいというわけではなくて、特定の、彼らがプロ性を保てるところに関して、部分的に信託ができればそれでいいのではないかと私も考えています。

そうすると、やっぱり今現在の、いわゆる善管注意義務だとか忠実義務のレベルについては、金融機関に対して求めているようなレベルを、禁輸分野でないほんとうはプロである、そういった人に対して求めるのはちょっと酷なので、そこは考えなきゃいけない。そこはバランスの問題なのかなという感じに思っているわけです。

さっき、後見人の話をされていましたけれども、後見人個人にそれをやらすから、そこは問題が発生するのであって、これが法人格であるところがそれを行うことによって、金融庁が的確な監督を行うのであれば、むしろそのほうがいいわけです。ただ、それが信託銀行じゃなきゃいけないとか信託会社じゃなければいけないというんじゃなくて、それは別の、NPOみたいなところが、しっかりとした監督というか、一定のレベルの水準を保っていれば、そのほうが的確にできるかもしれないというところに意がございますので、一応そういうことでご説明させていただければと思います。

○大崎委員

ありがとうございました。

○吉野座長

ほかにいかがでしょうか。

小幡委員、どうぞ。

○小幡委員

ご説明、どうもありがとうございました。

矢吹様にご質問したいんですけれども、例えば、資料の2ページとか3ページでセグメントのお話をされているんですけれども、おっしゃられているように、金融だけじゃなくて、いろんな領域で消費者のニーズは多様化していて、分野によると思うんですけれども、従来のセグメントの切り方も全然当てはまらないというのが多いような気がするんですけれども、ただ、そうじゃない、クラシックなカテゴライゼーションというか、セグメントが効く領域もあるのかもしれないのでちょっとわからないんですけれども、金融というか、個人に対する金融サービスはどっちなのかなと。ファッションだって、例えば、60歳過ぎでも、すごい若づくりのじいさんもいれば、40歳でも30歳でも全然関心がない人もいますし、いろいろだという場合に、金融の場合、どうなのかなというのをぜひ。多様化しているのは間違いないと思うんですけれども、多様化している中で、今までどおりの分け方を細かくしていって多様に対応するのか、それとも、考え方を変えなきゃいけないのかなというのが、ちょっと教えてほしいところなんですけれども。

それと関連してというか、ほぼ同じような質問なんですが、銀行というのは一般的に嫌われているわけですよね。できることなら銀行に行きたくないと。住宅ローンも、お金を借りないと家買えないから、ほんとうは行きたくないんだけど、安く貸せという感じで、官僚と銀行員というのは一番嫌われている。もともとは両者とも信頼されているけれども嫌いみたいなところがあると思うんですけれども、それで、すごく多様化していって、もともとBtoCで、個人の多様な、接客が得意なわけでもないので、もしかしたら、あまりに多様化するのに、しかも、あまり得意じゃない分野できめ細やかなサービスという発想じゃなくて、徹底してBtoBみたいな。例えば、住宅のお話を先ほどされていた場合も、家が欲しいわけで、別に住宅ローンは、その手段として、金融サービスは常に手段として必要なわけですから、よく現地でもありますけれども、ハウスメーカーの提携ローンとか、提携しているから借りるとか、マンションを三井不動産で買えばどっかのローンとか、そういう徹底したBtoB、車、オートローンもそうだと思うんですけど、そういうスタイルに変わっていくほうがいいのかなとちょっと思ったりするんですけれども、後半、最初のポイントとややぐちゃぐちゃになった質問なんですけれども、この多様化に対して今までの銀行が対応できるのか、考え方を変えるべきかどうかということについて教えていただければと思います。

○吉野座長

矢吹パートナー、お願いいたします。

○矢吹A.T.カーニー パートナー

小幡委員、ご質問ありがとうございます。

いただいた1つ目のご質問、特にセグメントの切り方の多様性ということに関して申し上げますと、おっしゃるように、私がここでお示ししたのは、あくまでも1つの切り方で、いわゆる金融機関としては、従来からいうとスタンダードな切り方です。これまでで言うと、私も実はいろいろと分析したことがあって、相関係数とかをとりながら、何がセグメントを切るのに一番適切な軸なのかなというところで見ていくと、やっぱりフローとストックのところが一番よく効いた部分があって、スタンダードとしてはこれを用いるのがこれまでの王道であったのかなとは思います。

ただ、おっしゃるように、今後こういった形で、ほんとうに金融ニーズにとどまらない形でニーズが派生していく、多様化していくという中においては、そこでどういう形でセグメンテーションしていくのか、その軸をどう切っていくのかによって、独自性が生まれてきて、そこに新たな発想と競争優位性が生まれてくるということを考えていくと、これをどう考えていくのかというのは、競争戦略上、非常に重要なポイントになってくると思っております。

先ほど、海外の事例として申し上げた独身の高齢者というのも、このセグメントからは、私が申し上げた切り方からはなかなか出てこないセグメントでございますので、こういったことも踏まえて、新しいセグメンテーションの軸を考えていくのは1つの大きなポイントですというところは、まさに小幡さんがおっしゃるようなところで、私も同じ意見でございます。

2つ目、銀行の戦略ですね。お客様のニーズが多様化していく中で、例えば、徹底してBtoBみたいなところに特化していったほうがいいのではないかというご意見もございました。これは、私は銀行の個別戦略の話だと思っておりまして、ただ、おっしゃるように、ゴールというものは商品を提供することではなくて、その人が住宅を持つというところが金融機関にとってのゴールであるべきだとも思っておりますので、それを実現するために、じゃあ、その手段としてどういうサービスを提供していくのかということを考えていくことは、これは金融機関の独自の戦略になってくるだろうと思っております。それが1つの金融機関の特性によっては、BtoBに徹底的に徹底していくというやり方もあるでしょうし、一方で、特定の金融機関によっては、やはりフェース・トゥー・フェースでしっかりとお客様と対話していくというところも1つのやり方かもしれません。ただ、これは、こういうやり方がいいのではないかということではなくて、個別の金融機関の特性、あるいは強み、弱み、戦略の方向性、こういったことを踏まえて考えるべきではないかと思っております。

○吉野座長

ありがとうございました。

それでは、時間の関係もありますので、大垣委員にご説明いただいて、それから、お二人のも含めましてご質問いただければと思います。

それでは、大垣先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○大垣委員

それでは、簡単に。

ちょうど私が昔勤めておりました銀行の開発の部門に配属されたのが1986年でございまして、それ以来30年近く、いろいろタイトルは変わりますけれども、要するに、金融技術と商品の開発ということをやってきております。そんな中で、今やっている仕事は、いわゆる社会ニーズに対応した先端の金融商品を考えて開発をして、大学でございますので、いろんなところに働きかけて実現していくというのが主たる仕事でございます。

そういう中で、一番裏側の42ページに書いてございますように、これからの金融技術の発展というのは、どうも行き着くところまで来ちゃった高度金融技術というのを家計ファイナンスの中に生かすことによって、これまでにないものが出てくるんじゃないかという切り口で考えておりまして、宇宙ロケットをつくるのはアメリカしかできないんだけど、トヨタのすばらしい車は日本しかつくれねえという、高度技術の民生化というのは日本のお家芸じゃねえかということで、これをファイナンスでできないかというのは私の切り口でございまして、そういう中で、幾つか、金融機関がどうこうということじゃなくて、私自身がやってきたことをご紹介しながら、その中で、残念ながら、金融機関の方とご一緒にやることがほとんどないわけでございまして、そこが、矢吹さんもお話しになったように、少し日本の金融機関の持っている難しさが絡んでいるかもしれませんので、その辺を1つのサンプルとしてお考えいただければと思います。

3つお題がありまして、1つは、1,400兆円の家計部門の金融資産の安定運用という話と、少子高齢化の中で、中高年者層にどうなるかというのと、若年層ということなので、この3つに分けて考えます。

先にお話ししておきますと、私、かぎ括弧つきの「大人」という言葉を使っておりまして、これはなぜかといいますと、先ほど、60代の若づくりのじいさんということをおっしゃった方がいらっしゃいましたが、これを言いますと、60代のじいさんは非常に怒ります。シニアと言って振り向く人は実は60代にはおりませんで、言葉に非常に気をつけないとターゲティングを間違うことがございます。私自身もラジオの番組を持っておりまして、おととしは、アクティブシニアの番組というのをつくったんですが、「アクティブシニア」と言うと、もうおれの話じゃないと思って聞かない人が多くて、今、「大人ファンクラブ」という名前にして番組をやっておりますが、そうすると、ようやくちょっと聞いてくれるというふうになっております。

もう一つ申し上げておきたいのは、我々の思っている、60歳になると実は高齢期になるというのは間違いでございまして、ほんとうの意味での高齢期というのは、いわゆるジェロントロジーが相手にするようなものというのは80歳以降でないと出てきません。実は60歳から80歳の20年ぐらいバンドがありまして、ここは我が国であろうが、地球上、いかなる人間もあまり通過してこなかった。引退してから20年も元気なままでいるという状態は歴史的に存在してないので、ここにいい名前がないんですね。それで、今、便宜的に「大人」と申しておりますが、ここは実は、当然にこうしたらいいという答えはない部分やということをご意識いただきたいと思います。

1ページ目でございますけれども、この表で言いたいことは、皆さん、平均寿命よりは長生きするというのはご存じですが、実は平均余命というのも、これは算定方法のあやでございまして、平均余命の段階では、まだ今の年齢の人が半分には減りませんので、大体皆さん、おれは元気だと思っていらっしゃる方は、例えば同じ40歳の方がいらっしゃると、40歳の方が8割死ぬのは約90歳でございまして、要するに簡単に死なないよということをここで申し上げております。

それから、次のページを開いていただいて、これは皆さん、ご存じのことで、2ページは抜かしまして、3ページをごらんください。これは、上が、いわゆる預金がいっぱいあるぞという議論をしたときの表でございまして、これはフロー・オブ・ファンズからとっているわけですが、いかに高齢者の資産は見にくいかという話でございまして、右が国民経済計算、左が消費実態調査でございますが、これを見ると、日本人の資産形成の状況というのがよくわからんというか、統計によって随分違うということがおわかりいただけると思います。

ここを決めないと前に進めないものですから、いろいろとやってみた結果、結論から言うと、5ページの右下を見ていただきたいんですが、おそらくこれはコンセンサスじゃないかと思うんですが、通常のミドルクラスの方、厚生年金しかない、基金のない方の場合、公的年金が引退直後で大体6,500万円ぐらい入ってくる計算になって、それに対して、老後の生活費が9,000万円ぐらいかかるということでございます。そこだけ見ますと、2,500万円不足がございますが、大体1,500万円ぐらいの預金をお持ちになっているということで、さらに保険が非常に多うございまして、これはほとんど終身と、一部養老ではないかと思っていますが、400万円の価額としてございます。これは、個別に個当たり単価を見ても500万円ぐらい出てきますので、あまり平均の誤謬がない数字かと思います。

それに、マイホームですが、これはかなりいろいろと論争があるものですが、結論だけ申し上げれば、おそらく2,000万円弱ぐらいというのが、地方の方も納得感のいく価額ではないかと思います。

ここで言いたいのは、資産の額と将来の生活費とを比べると、資産が超過しているということを申し上げたいわけでございまして、足りないわけではないんですが、キャッシュを見ますと1,000万円ぐらい不足しております。ですから、ざっくり感で言いますと、持っていることは持っているんだけど、金にならない物持ちなものですから、1,000万円ぐらいは持っている資産をうまく活用して、現金を捻出するのか、働き続けて1,000万円稼ぐのか、何でもいいんですけど、キャッシュが1,000万円ぐらい足りない、資産は十分あるというのが日本の引退直後の現在の大人の状況、こういうことでございますので、金融商品のつくり方は、持っているものをどう運用するかというよりは、持っているものをどう流動化するかというところですね。コンティンジェンシーラインのつくり方というところに焦点が当たります。

若年層は、実はこういうバランスシートにならないんじゃないかという懸念がありまして、逆に若年層も、中間層については、ほとんど日本の場合は、金融資産ではなくて、住宅を中心にして資産形成してまいりますので、この資産形成をどのように可能にならしめるかという議論がポイントになってくる、このように考えております。

次、言いたいことは何かというと、金融資産をどうこうというところについていろんな議論があったんですが、皆さん、投資3原則と言って、長期投資しなさい、分散投資しなさい、定額購入がお得ですということを言うことになっているんですが、少なくとも、今、この3つとも間違っているということを申し上げたいわけで、2007年以降、20年持った株を売った方はほぼ確実に損なさっています。それに比べて、短期で見れば、むしろ投資の可能性は高かったので、投信に求めていることというのが、長期投資なのか、それとも、自分でできないマシントレーディングとかプロのトレーディングをやってほしいということなのかというのは、よく考えないといけない。

あるいは、8ページでございまして、下の図をごらんになると、新日鐵の株価の動きとTOPIXの動きを、この1年半について見たものですが、美しいぐらい同じになっているということがおわかりになると思いますが、これはCAPMの理論どおりでございまして、分散投資をしていって、マーケットどおりになりますと、今のマーケットだと負けてしまいます。ですから、9ページでございますが、非常にリスク分散が抑えられたTOPIXと同じような動きをする株式投信、これは公称、安全な投資ということになるわけですけれども、この安全な投資を600万円購入して5%損するリスクをとるのと、ゼロになるかもしれないけれども倍になるかもしれないという危ない投資を30万円するのとは、勝ったときのリターンは同じになりますが、損したときの額は明らかに、30万円の、危ないほうに投資したほうが少ないということをご理解いただきたいんですね。ですから、個人にとっては、幾ら投資しているかというのが問題であって、CAPMの言っている、あるいはマコービッツの言っている分散投資においてリスクであるというところの標準偏差がリスクとは限らないので、この辺のところも、実はお客さんによって考えてあげないといけないとか、あるいは、ドルコスト平均というのは、間違いなくこの1年半については、むしろ定数購入に負けております。それから、評判の悪いグロスオブのような毎月配当型。これは実は、成績が悪いと自動解約がなされるという、そういう仕組みになっておりますので、実は、ここ1、2年半ぐらいはマーケットが悪かったので、変な話ですけれども、分配金を再投資するよりは、毎月配ってもらったほうがリターンがいいという結果になります。

言いたいことは何かといいますと、要するに、投資理論が間違っているわけじゃないんですが、状況が変わりますと、やらないといけないことは変わってまいりますので、したがって、習ったとおりに客に言うことが正しいわけではなくて、投資理論から考えて正しいことをアドバイスできる人間が必要なんですが、このリテラシーを持っているプロがそんなにいるとは思いません。ですから、個人のリテラシーということを言うのはよろしいんですが、今、我々は非常に難しいマーケットにいるということは申し上げておきたいと思います。

12ページはご参考ですが、これは税の話でございますが、横軸に年収をとりまして、各年収の方が所得税と住民税を払う。その払った分、割ることの年収というのが何パーセントになっているかという、いわゆる年収に対して何パーセントの税金を払っているかという実効税率をとって、これに対して、そういう収入を得ている人が何人ぐらいいるかというのを網かけのグラフで示したものでございますが、実は20%も実効税率を払っている人は極めて少ない。国民の4%ぐらい。それから、株で負けてもらって、10%払ってよかったねと思える人も全体の18%しかおりませんで、残りは実は、今の金融税制だと、所得税の税率よりは高い税率を払うということでございます。ですから、ほんとうに中間層にいいことをしてあげたいのであれば、実は額は少額に絞っても構わないと思いますが、リターンに対して直接課税上の恩典を与えるというようなことをやらないと、税制というのはむしろ、税を不労所得と見る根本的な考え方がございますので、実は税というのは決して優遇しているわけではないということを意識いただきたいと思います。要するに、優遇税制というのは、結果としては金持ちのためのものになっています。

次に、大人のお話をいたしますと、大人は、さっきのバランスシートを見ると、保険を流動化するか、家を流動化するかでございまして、まず、保険の流動化についてお話をしますと、14ページをごらんいただきますと、これが生命保険会社の契約保有高でございます。この中で約300兆円ぐらい終身保険の保有高があるんですけれども、このうち半分ぐらいが高齢者じゃないかと思います。統計がないので完全にはわからないんですが、特にここ4、5年は60歳以上の方に対して、一時払い終身という大ヒット商品が出ておりまして、相当の販売がなされておりまして、我が国の国民というのは、大体お一人当たり4、500万円の終身保険を持っているケースが非常に多くて、この500万円というのは、まさに生命保険の非課税枠に当たるわけでございまして、税としての行動としても合理的な行動をしているということでございます。

ここを、どうやったら金になるかということですが、実は最近、一時払いの終身を買った方というのは、最初10年間ぐらい解約しますと、かなりひどい利回りになるか、おそらくマイナスになる方も多うございますので、通常、生命保険というのは死んでからしか使えない、でも、死んじゃったら使えないと、こういうなかなかいい金融商品になっているということでございます。これに対して、アメリカで、ライフセトルメントという商品がありまして、一言で言うと、ノンバンクみたいなところが、にせに対して掛けている生命保険を買ってくれるというわけであります。何で買ってもらえるといいかというと、私はどうも糖尿病で人よりも早く死にそうだと。そうすると、保険会社というのは、標準生命表というのに則って、普通の人が平均的にどのぐらいで死ぬかで計算しているから、長生きする前提で考えてある。おれは早く死ねるんだから、早くお金がもらえるんだから、おれの持っている生命保険の価値というのは、一般人の持っている生命保険よりも高いはずだから、それを現在価値に割り引いて買ってくれれば、たくさんのお金が、今、解約返戻金よりもたくさんもらえるよねと、こういう話でございます。ちょっとわかりにくいと思いますので、詳しく書いてございますので、読んでください。飛ばします。

そういうことを日本でもやったらどうかという議論がありまして、これが非常にかわいそうな例が裁判になりまして、ちょっと問題になったんですけれども、結果論としては、保険会社の方というのはあまりそういうことに積極的でない。これはなぜかといいますと、保険料の計算をするときに、解約の返戻率というのを一定置くわけですけれども、こういう商品が導入されますと、解約の返戻率というのが下がります。そういたしますと、実は損が出るということになりますので、大体アメリカでも、保険会社はこういうことに対して極めてネガティブだということでございます。

それで、どういうふうに考えたらいいかというので、例えば、こんなことを考えてみます。21ページをごらんになると、実は、60歳でも入れますという医療保険があると。最近、80歳まで入れますというのをやっています。おお、いいな。月保険料4,690円、おっ、悪くねえじゃん、こういうふうに思われるかもしれませんが、厚生省の、いわゆる、人間というのはどのぐらい入院をするかということで逆算をしてみますと、もとを取れていらっしゃる方というのは非常に少ない。今、医療保険に入られた方というのは、死ぬまでに260日ぐらい入院する自信がないと損をするというような構造になっています。

これはなぜかというと、当たり前でございまして、人間、年をとれば入院するわけでありますから、保険というのは、入院しない人が非常にたくさんいる中で、おれだけ入院するから成り立つんで、みんな入院すると、貯金になっちゃうわけですね。ですから、もうそうなっちゃったら貯金のほうがいいわけでございまして、企業も、リスクマネジメントするときというのは、いわゆる事故率の高いようなものについては、自分で、自己保険といいますけれども、リテインするわけでございまして、そういう意味では、実は、今、医療保険を掛けていらっしゃる部分の120万円ぐらいのところは、むしろ貯金したほうがよろしくて、ないとは言い切れないが確実に必要とも言い切れないようなものは借金をするのが正しくて、それを超えて高額のものが入ったときに保険を掛けておきますと、エクセス部分、超過部分に対しての保険というのは、まさに論理的な保険になりますので、非常に低い掛金で保証を得ることができます。こういうふうに組み直してあげれば、もっといい医療保証が高齢者に対してできるので、例えば、次の21ページから23ページ目ぐらいまでのサンプル商品というのをつくって、こういうのをやって、生保さんからディールを奪いませんかということを銀行に持ちかけると、いやいや、そんな面倒くさそうで、金融庁から怒られそうなことはやりたくないと、こういうことであんまり進まないということでございます。

次に、家のお話をさせていただきます。家については、大人世代は8割以上が持ち家を保有しておりまして、世帯数から言いましても、非常に多くの方が家というのはもう持ち家で持っている。これを使うときに、古くて新しいリバースモーゲージという商品がございますが、これは幾つか問題ございまして、25ページをごらんになると、これも時間がないので、書いておきましたので、また読んでいただいたらと思いますけれども、地方都市では、坪単価20万円って、なかなかいいところです。大体10万円台のところが多いんですけど、坪単価20万円ぐらいで60坪ぐらい持ってられる方というのは標準の方なんですけど、これですと、一括でも460万円ぐらいしか借りられません。月に直して3万円ぐらいですので、これで家を取り上げられていいのかというのは、みんな悩んじゃうんですね。

それから、もう一つは、不動産の下落リスクというのが、長生きリスクなんかよりよほど大きくて、26ページをごらんになると、平成3年にリバースモーゲージを始めた方というのがいらっしゃると、おそらく平成12、3年の段階でもう既に借りられなくなってしまっています。要するに、アメリカで普及している最大の理由は、ここをHECMと言いまして、政府が全部ノンリコでとるんですね。だから、普及するわけで、そういうことをやらないで民間だけに任せたら、これはとてもできる仕事ではないということでございます。

それで、手前みそになりますが、移住住みかえ支援というのをやっています。これは、28ページをごらんいただくと、一番上の表で、斜めによぎっているのが地価の動きでございまして、右側にほぼ平行線でいっているのが賃料の動きで、これは相関いたしません。地価と賃料って全く相関いたしません。理由はいろいろありますが、省略いたしますが、騰落率も非常に狭いんですね。それで、家賃保証をして借り上げをすることを国がやった場合に、どのぐらいのリスクをとるだろうかというのをリアルオプションでモデル化いたしまして、これでリスクコントロールをして、基本的には国に負担が出ないような形で国の保証を得て、公的機関が借り上げるという仕組みをつくって、これ、何をやったかというと、国民の持っている住宅というものの収益還元価値を国が実現してあげるということをやっております。

また、悲しいことに、家賃というのは、都内でも、借家に入る人というのは、通常は、家を買える人よりは貧乏でございまして、この業界では、15万円以上払える人というのは、法人、外人、変人と言われておりまして、15万円以下でしか運用できない。けれども、5万円以下にはならないということで、大体2,000万円ぐらいの収益還元価値があるんですね。これを実現してあげようということであります。本屋さんで、こういう田舎暮らしの本というのがあります。まだ見たことがない方は、ぜひごらんになってください。この中に、千葉あたりでどんなところが出物があるかって載っていますけれども、1,000万円を超えているような物件はほとんどありません。すばらしいのがいっぱいあります。こういうのをやり出している人がいるということですね。

これを使いまして、実は住みかえ支援ローンというのがあります。これは何をやっているかというと、国から保証をいただいて家賃保証をするということができるようになりましたので、ご老人の方が、今住んでいる家を移住住みかえ機構に貸して、その家賃に住宅金融支援機構が譲渡担保を設定して、家賃を直接住宅機構に返済する形で、家賃ノンリコース型の住宅ローンをつくることで、60歳以上の方でも35年の住宅ローンを年収ゼロでも、若い方と同じように借りられるようにしたというのがこの仕組みでございまして、既に幾つかの利用例が出ております。

例えば、盛岡に住まれている方で、最低保証家賃で7万7,000円出た方というのは、35年で4,900万円借りられています。こういうようなことが現にできるようになっています。一番高齢で借りられた方は、74歳で、最終返済年齢は109歳。こういう事例もございます。

こういうことが、銀行ではできませんが、我々の仕組みを使うことで、住宅機構と組み合わせてやっているわけです。これ、何で住宅機構とやっているかというと、民間の方に最初に言ったんですが、そんな危ないことはできないと言われてしまってできなかったと、こういうことでございます。

時間ないので、若年層に入ります。若年層については、お話をしたいことは、確定拠出は、非常にすばらしい制度なんですけれども、それ以前の問題として、投信というのを年金のために使うということは、業界、あまり考えたことがないので、年金型の投信というのをまずは開発するというところから始めないといけないというのがひとつ。もうひとつは、ここまで、こういう若者の投資は、勤労者ということで十把一からげにして職場でやってきたわけですけれども、今、若い、私の教え子でも、終身で同じ会社に勤めるだろうと思っている人なんか一人もいませんので、ポータビリティーの問題というよりは、ポータブルなものをつくらないと、ビリティーの問題じゃないですね。はなから、もはや職場というのが1つじゃないという前提で制度をつくらないと、あまりいい制度にならない。そうなると、会社なのかというと、例えば、大学の同窓会じゃいけないのかと。そういうゲートウェイを多様化していくということをぜひお考えいただきたいなと思います。

次の問題です。家を買わせないといけない。何で買わせないといけないかというと、今、40歳の方の持ち家比率というのは、既に10年前よりも5%下がっています。このまま平行移動していきますと、老人になってから住宅難民になる高齢者が増えてまいります。家は買わせないといけないんです。そういう中で、金融がないのでできないという話を1つさせていただくと、これ、牛久と我孫子です。この表は何かというと、取手で下車して新築の分譲を買うと、3,180万円というのが出物であるんです。これと全く同じような土地と延べ床面積の中古を探すと、我孫子で1,980万円で買えます。1,980万円の我孫子で新築そっくりさんをやると、こんなにかからないんですね。1,000万円もかからないので、これ、40坪ぐらいのやつだったと思いますけれども、通勤距離が、ひたち野、牛久でやった場合、3,480万円の新築を買うかわりに、2,070万円の中古を買って、そうすると、差額が1,410万円ありますけれども、新築そっくりさんはそんなにかかりませんので、それまでで買えば、20分早いところに新築そっくりさんが買えるんです。これをやるとき何が問題になるかというと、中古を買うところには住宅ローンがつくんですけど、大規模修繕についてはリフォームローンしかつかないんです。リフォームローンというのは10年から15年が限界でございまして、ここの右に書いてあるように、短くて金利が高いんです。その結果、実は月負担が新築を買うよりも増えちゃって、だから、牛久でいいやと言って、大仏さんの横に家を買っちゃうやつがいるんですね。それで、牛久の中古はどんどんと荒れていきます。こういうことを起こしちゃっているのは、住宅政策の問題ではなくて、金を貸さない金融機関の問題でございまして、請負に何で金貸さないんだと。更地で家がないときにローンを貸してあげようと言える人が、中古の目の前にある家を見て、直したら幾ら貸してあげようって、なぜ言えないんだというのをいくら言っても、聞いていただけなくて、これもしようがないから2年待ちましたが、全く動きがございませんで、住宅機構にお願いをずっといたしまして、ようやく融資保険で対応していただけるようになりつつあります。

もう1個、これはもうコンソーシアムまでつくって、ノウハウも全部提示しまして、つくってくださいということをお願いしましたが、できなかったのが、返せなくなったときに、移住機構に対して借り上げをしてもらって、その家賃で返すことで、抵当権の実効を猶予する。これを去年の9月に導入していただいて、若い方が家を買うことの不安がなくなるようにということでやっておるわけですけれども、これも残念ながら、そういうことを言われても、結局は分類債権になってしまうので、非常におもしろくないというようなことで、全く動きがなかったということでございます。

もう1個、2025年問題。これは、住宅ローンが35年になったのは平成12年からですので、実は35歳で買って70歳で返すという住宅ローンを組んだときに、60歳で何が起こるかということについては、日本社会はまだ1回も遭遇してない問題で、ほんとうにみんなが60歳で退職金で全部返し切れるのかというのは問題として残っています。ですから、なるべく早目に余裕ができたら返させなきゃいけないんですが、無理だったら、今、イギリスのリバースモーゲージというのは、ほとんどはこういう問題を抱えた方が、死ぬまで、とりあえずローンを延ばすためにリバースモーゲージを借りて住み続けるということをやるために使っています。こういうようなことを、いいことかどうかは知りませんが、やってあげないと、貸し倒れが増えます。我々は、住みかえをしていただくということで対応できるようなものを、今年、開発しようと思っております。それから、残価設定、これもかなり飛んでいる話ですので飛ばしますが、住宅業界は非常に興味を持っているものでございますが、民間の金融機関は全くついていけてないものでございます。

こういうようなものが出てくることによって、40ページ、最後でございますが、私はやはり、これからの金融というのは、quality of lifeというのを中心に、産業金融ではなくて、QOL金融というのを伸ばしていかないといけないと思っておりまして、これがずっと、住むところが1次産業、2次産業、3次産業、最後は東京一極集中になっちゃったわけですけれども、これ、広げていきませんと、内需の拡大というのはないという中で、やはり住みかえというようなものを軸にしながら、引退をしても、まだまだ元気な方々というのは、もう会社に通わないんだったら、3LDKの2階を空き部屋にしたまま、物置にして、そこに住み続けるというよりは、どんどんと動いて、日本のために、もらった年金はどんどん消費していただいて、できればもっと頑張り続けて、我が国のためにもっと頑張っていくということが必要なんじゃないか、そういうのを金融がどうやって助けていくかということではないのかなと思っておるわけでございます。

ちょっとオーバーいたしましたが、私はこういうことでございます。ご清聴ありがとうございました。

○吉野座長

大垣先生、どうもありがとうございました。

それでは、先ほどのお二人と大垣先生を含めて、ご質問ありますでしょうか。

大垣先生に、私から1つだけ。住宅に関しては、日本の場合、やっぱり短い期間しかなかなか持たなくて、海外と比べると、住宅自身の耐久性がないというようなことをよく言われるんですけれども、いかがでしょうか。

○大垣委員

これ、統計のとり方でございまして、購入をしてからとりつぶすまでの期間というので統計があるんです。これをもって耐久性という議論をなさる方がいるんですが、東大のそういう専門の先生なんかとお話をしても、耐久性自体はもうちょっと長いんですね。ただ、買っちゃうと、基本的には、つぶして新しいのを建てるということで、業者もそういうふうに持っていきますので、そこを直して長く使うということを、どうやったら欲得ずくで促進できるのかというのが、むしろ現下の問題であろうかと思います。

それから、そもそも論としては、若い方が買われる住宅が、建築基準法というのが、標準耐用年数というのが25年から30年という問題がありまして、これがなかなか長くできないんですね。それで、しようがないので、認定長期優良住宅という別の概念をつくって、100年住宅をつくらせるということで、複線型になっちゃっているんですが、その結果、25年しかもたない住宅をつくることは合法なんですね。自然でつくれば、木造の家というのは50年以上もつんです。それを、あえて25年しかもたないようにつくれば、合法なのに安い家がつくれるんです。だんだん貧乏になってくると、こういうものを買っている人がほんとうにいないのかというと、私の今の商売柄、新しい耐震基準以降になった家を見させていただいて、とんでもないのが山のようにありますので、そうでないとは言い切れないような気がしておりまして、若い方については、やはり長もちをする住宅をアフォーダブルに買わせるために、どんな金融が必要なのかというのは、これは金融庁の問題ではないのかもしれませんが、我が国の問題としては考えないといけない問題だろうとは思っております。

○吉野座長

ありがとうございます。

いかがでしょうか。永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

先ほど質問しそびれまして、矢吹様に1つと、今、大垣先生からお話がありました点について、質問が2つございます。

まず、矢吹様に質問です。とてもよいお話でしたので、もっと詳しくお聞きしたかったのですが、最後のまとめの18ページの課題のところで、「消費者の金融サービスの対価に対する感度の向上」が課題として挙げられておりますけれども、消費者の感度の現状について、先生はどのようにとらえていらっしゃるのかということと併せて、感度を向上させるためにはどうすることが必要なのか、だれが何をすることが必要とお考えなのかという点についてお伺いしたいと思います。

それから、大垣先生には、若年層の資産形成の必要性は、私も同感ですが、若年層が家を買わなくてはいけないという結論に至るところに少し抵抗を感じておりまして、逆にそうではなくて、買うのではなくて、優良な賃貸住宅の提供が課題なのではないかと思った次第です。もちろん優良な賃貸住宅の提供ということになると、金融機関の個人向けビジネスの部分が消失していくことにつながると思いますので、その辺が理由かと思ったりもしたのですが、先生が、若年層は家を買わなくてはいけないとお考えになった理由について、もう少し深くお伺いしたいと思います。

以上でございます。

○吉野座長

じゃあ、最初に、矢吹パートナーの18ページのところの、消費者の金融サービスについて。

○矢吹A.T.カーニー パートナー

永沢委員からのありがたいご質問ありがとうございます。

この点に関して、私自身、今、だれが何をすべきかという明確な回答を持っているわけではないのですけれども、1つ、やはりお客様にとって、対価を払ってもいいと言われるぐらいのサービス水準のものを提供していく必要があると思っていて、それは多分、金融サービスで閉じる世界ではないのかなと思っております。やはりお客様自身が何を達成したいのかというところに対して、どれだけ金融機関なり金融機能を持っているプレーヤーが対応していくかによって、そこで付加価値を感じてもらうというところからスタートしていくしかないのかなと思っております。従来のように、金融サービスを提供し、それに対してお金をくださいというアプローチのままだと、これはきっと解決し得ない問題であろうということでございます。

それから、それに対する行政なりマスコミ対応も含めて、こういったところについては、これは側面支援する形で、何らかの形でそこはフォローしていくということも必要なのかなと思っております。そういう世論づくり、形成、そういったこともあわせてやっていく。ただ、ベースにあるのは、金融機関自身がそういうふうに、お客さんにとってありがたいと思ってもらえるものを、金融にかかわらず提供していく、こういった姿勢でとらまえていくことが重要ではないかなと思っております。

○永沢委員

そこで少し追加の質問で恐縮なんですけれども、資料の中で、「金融サービスは従来日本ではただ」というところがありましたけれども、これが変わってしまう可能性ということは予定されというか、予想されている……、どんな形で金融サービスがただではなくなると。日本ではただだったんですけれども、これが変わるということが起こり得ると予想されているということでしょうか。

○矢吹A.T.カーニー パートナー

実際に足元、金融機関の収益状況を踏まえていくと、従来のように、預金をしてもらって、貸金をして、そこでもうけていくということが、なかなか難しい状況になっていく中において、手数料収入を増やしていかなきゃいけないという現状があります。ですから、例えば、こういった両替とか集金に関しても、実際に今、手数料をいただかないと難しいという形で対応している金融機関もございますし、そういった流れも、今、もう出てきている状況だと思っております。

そういった金融機関の収益構造を考えていく、それから、今後の市場環境を考えていくと、当然のことながら、ここの部分というのは、どうしても手数料をいただきながら対応していく。ただ、いただく分には、その分、しっかりしたサービスを伴っていくところが大前提になりますから、そういったことをやっていかなきゃいけないということだと思います。

○吉野座長

じゃあ、大垣先生、若年層の持ち家の件。

○大垣委員

ちょっと基礎的な話からしますと、消費者ローンというのは、借りた金を消費してしまいますので、その返済というのは当然、それ以外の収益からやるわけですけど、住宅ローンのような、大きな意味での耐久消費財のローンというのは、これを貸すことによって、衣食住でございますから、ルイ・ヴィトンのバッグと違って、住まないわけにはいかないので、必ず住居費というのが出てまいります。家を買えば、住居費が減って、住宅ローンの返済が増えるということになって、そこが代替的になります。ですから、住宅の価格というのは、ある意味で、将来家賃の現在価値の性格を持っておるわけでございまして、これをどのぐらいで買えるのかというのが住宅金融の問題になってまいります。

日本の場合、貸家の提供のかなりの部分が、相続対策を考えられる地主層のおつくりになるアパートで提供されております。この部分は土地を持っていらっしゃいますので、新たに借金をしないと相続対策になりませんので、必ず借金をなさって、上物をおつくりになる。ここから逆算してまいりますと、今の金利水準で、大体ドタ勘でございますが、ファミリー用とかをつくった場合には、いわゆる国交省が優良と考えている最低ラインの住宅をつくりますと、月当たり家賃で6万5,000円ぐらい新築で取らないと、絶対に採算が合わないような構造になっております。

したがって、私も、これ、20年分ぐらい全国で調べましたが、我が国の家賃というのは、5万円を切るということは極めてまれでございます。この結果、公営住宅の市場家賃という、いわゆる岩盤の一番低いところが、どんなに低いところでも3万円台から4万円台になってくるんです。ですから、家賃というのは住宅に比べて高いんです。なぜそうなるかというと、事業者という方はアパートローンを借りられます。アパートローンで25年以上貸す銀行はございません。それから、金利で、住宅ローンみたいに1%台の事業者ローンを出すという銀行は一つもありませんので、そもそも家主の返している借金というのは高いものですから、これにリターンを乗せて貸す家賃というのは、実は、政策的に金利が極めて低く抑えられていて、なおかつトヨタでも借りられない35年ローンなんていうのを借りられる住宅ローンの返済額に比べると、かなり高くなってしまうんです。ですから、我が国のように、住宅金融が非常に整備されている先進国の場合は、通常は同じ大きさのうちに住むのであれば、借家に住むよりも持ち家を持ったほうが月負担が減ります。さらに、団体信用生命保険というのがつきまして、だんなが死ねば、かみさんのものになるというすばらしい制度がございます。これ、家賃では絶対そういうことは起きません。

もう一つは、私が生まれたころは、男というのは65歳までで大体死んでいたわけですね。このころは、大体借家で住んでいようが、持ち家で持っていようが、持ち家がぜいたくということは言えたんですが、先ほど申し上げたように、今、普通の方は85歳まで生きるということになりますと、収入がなくなってから20年間も住居費がかかるんですね。この部分をキャッシュフローとして持とうと思いますと、やはり1,000万円から2,000万円の追加的なキャッシュフローがかかるんですが、これを家賃を払うということをやり続けたまま、貯蓄もできるというぐらいの余裕があるんだったら、家は買えるというのが、今の我が国の算数です。

ですから、そういたしますと、おそらく土地も含めて、家は買っておいたほうが、算数では得だと思います。あとは生き方の問題で、いろんな議論はあると思いますが、算数だけ見ると、持ち家のほうが金銭的には得です。そういうことになっているので、余裕のある方以外は、胸に手を当てて、おれは中流だと思う方は、家を持っていたほうが、老後は確実に安心だし、たくさんのお金が残せるというのが算数になっています。

以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございます。

山田委員、どうぞ。

○山田委員

ありがとうございます。お三方にお伺いしたいんですけれども、いろんな問題を解くかぎの1つは、担い手の金融機関の収益性と商業ベースだと思うんですね。銀行を分析している立場からしますと、ご存じのとおり、日本の銀行の収益性は、世界でもまれに見る低さ、世界で一番低い収益性だと思うんですね。そうすると、こういう質問になります。

まず、矢吹さんには、こういうふうに消費者のニーズに立ったミスマッチを解消するようなサービスというのは、実際、収益につながるのかどうか。先ほどの手数料の話もそうなんですが、実は日本の銀行法の第1条には、銀行の公共的立場とあって、銀行の自助努力は、第1条の後半に出ていると。先に公共性が来るということで、そもそも銀行の公共性ということが前面に出ている場合ですら、なかなか銀行のほうから見て収益を取っていくのが難しいんじゃないかと思うんですが、その辺の解決方法とか、もしあれば教えてください。

杉浦先生には、多分、高齢化社会において、これから個人信託の中でも、特に遺言信託が大変伸びていくものだと思うんですけれども、いかんせん、一般の個人にとっては非常にバーが高いと。例えば、5,000万円、1億円ぐらい金融資産がないと入れないというところだと思うんですが、いわゆる遺言信託の大衆化といいますか、バーを低めるような方法があるのであれば、お考えを教えてください。

それから、大垣先生には、いろんな新しいアイデア、大変すばらしいアイデアだと思うんですけれども、これを民間銀行側が採用しない理由ですね。それはバーゼル3なのか、それとも、今の非常に厳格なコンプライアンス的な行政にあるのか、あるいは、銀行への発想がほんとうに30年前と変わってない、そういう理由なのかどうか、その辺の個人的な感覚で結構ですから教えてください。

以上です。

○吉野座長

それでは、まず、矢吹パートナーから、銀行の公共性なり収益についてお願いいたします。

○矢吹A.T.カーニー パートナー

ご質問ありがとうございます。

当然、銀行も含めて、金融機関を含めて、民間企業ですし、営利団体ですから、収益を上げていかないと存続し得ないというところでございますので、収益を上げていくというのは大前提だと思っておりますけれども、収益を上げる上でやはり考えていかなきゃいけないのは、コスト構造を含めて、これは単に1つ1つの商品をどうしていくかではなくて、我が国の金融機関自身のコスト構造を大きく変えていかなきゃ、当然もたないというところが大前提でございます。

1つは、全部自分でやるのではないというところだと思っております。先ほど、最前線のところで言うと、チャネルの考え方にしても、BtoBに割り切っていったらどうかというご意見もございましたけれども、これも1つの考え方だと思います。よりコスト効率の高い戦略を持って、そこで収益を上げるビジネスモデルを考えていくというところが、金融機関にとっての課題でありミッションであると思っております。

ただ、一方で、営業だけではなくて、それを支えるオペレーションのところであるとか、バックのところであるとか、こういったところも、まだまだ多くの金融機関の場合は自前でやられている部分もあると思っています。後ろの部分は専門的なところに切り離していく。こういったことで、よりお客さんのところにフォーカスした形で対応していく。こんなような業態を変えていくような取り組みを含めて、収益を上げていくような構造に変えていくことが必要だろうと思っております。

○吉野座長

杉浦先生、遺言信託に関して。

○杉浦中央大学大学院戦略経営研究科教授

ご質問ありがとうございます。山田委員がおっしゃったお話は、一言で言うと、私もその解が知りたいという部分でもあるんですけれども、ただ、もし遺言信託ということでおっしゃっているのであれば、私はハードルは、今、そんな高くなってないんじゃないかなと思っています。おっしゃる中には、おそらく、生前信託的なものをまぜておっしゃっているので、先ほどおっしゃった金額が出ているのかなというイメージです。

遺言信託に関して言うと、私も毎年、教え子たちを大量に信託銀行に送り込んでいて、彼らがフロントラインに立って、実際に遺言信託を受託しているわけです。そうすると、自分の親たちとあんまり変わりませんとか、いわゆる一般の家庭の方たちが、相続の際に発生するさまざまなトラブルを回避するために遺言信託を使っている例というのは結構増えてきていると聞いています。何も中央大学法学部を出たのに、遺族の方から罵声を浴びるために信託銀行に入ったわけではないと言って、この前、泣きに来た学生が2人ほどいましたけれども、ただ、そんなことを言いながらも、そういった形での遺言信託というのは、私は確実に広がっていると思っています。

ただ、生前信託みたいなものを込みにして考えて、銀行なりの運用を考えていくと、どうしても規模が要求される。だから、管理という部分というところだけに置いていくと、むしろ子会社的なものをつくっていただいて、運用だけじゃなくて、単純な管理をする、ただ預かっているだけのような形態をつくっていくと、幾らかコストは安くなるのかなという感じには思っています。

雑駁な回答で申しわけないですが。

○吉野座長

大垣先生、民間金融機関の対応についてお願いいたします。

○大垣委員

1つは、産業金融、企業相手の金融というのは、ニーズを探さないでも、相手にニーズがあるんですね。ですから、言われたことにこたえられるかというのが最大の闘いになるんです。それに対して、QOLというか、いわゆる個人を相手にしていく金融というのは、例えば、iPadですね。これ、なかったら死ぬかというと、そんなことは全然ないわけで、iPadが出てきたからiPadが欲しくなるというところがございまして、そういう意味では、マーケッターの方は、ニーズではなくてシーズを探せと言いますけれども、私ら、シーズどころでもなくて、ないニーズをつくり出すぐらいのつもりでないと、家計に対するサービスというのはつくれないんですが、こういう思考訓練というのは金融機関では受けられないですし、そういう変人は、末期が私だというのを、ごらんになればおわかりのように、金融機関の中にとどまることは困難だと思います。ですから、そこをどうするかというのは、もう難しいですね。それが1点です。

別に、預金をとって国債で運用していれば基盤収益は取れちゃうので、そこからほかのメーカーの方みたいに、新商品がないと死ぬというところに追い込まれない業態ですから、それで、私は、別の機会に申し上げたように、追い込まれるような業態を別につくらない限り、免許でもって預金というものをとれる銀行が、みずから電子機器のメーカーのように、あるいは車の会社のように、新しいところへ踏み込んでいくという、そういうことはやらないと思いますね。やらないでいいわけですから。だから、やっぱりそこは難しいけど、銀行、頑張れよということじゃなくて、危ないことはしないでください。でも、新しいことをしないと、あなたは死ぬんですよという業態はつくらないと、イノベーションは起きないというのが何となく1点です。

それから、もう1点は、矢吹さんの感想と一致してくるんですけど、このペーパーではお話ししませんでしたが、今、中小企業の方でも、アジアに赴任になるんですが、アジアに赴任になると、商社の方とか中小企業の方というのは、給料が現地通貨建てになります。現地通貨建てになっても、住宅ローンをお持ちになっていますと、返さないといけないので、円に直して返すんですが、そんなことをすると、ここのところの円高で、円建ての給料が3分の2ぐらいに減っていますので、返せなくなって、このままだと家を手離さないといけないので、移住機構さん、借り上げてもらうわけにはいかないだろうかということで、マレーシアからご連絡をいただくということがあるんですね。

このとき、何がネックになるかというと、銀行に電話すると、自己使用が原則でございますので、賃貸運用した場合は、期限の利益を喪失することになってございます。これは、どこにおかけになっても、そのようにお答えになります。現実にはやらせてくれるんですけど、表向きは今そうなっているんです。それで、住宅機構のローンだけ、やいやい言って、継続居住要件というのを撤廃していただいて、自宅を貸そうが自分で住もうが自分の勝手じゃんかということで納得していただいたんですが、今、日本の金融機関、お願いを始めて4年目になりますが、いかなる金融機関も対応してくださいません。金融庁としてそういうことを言った場合に、何を言われるかわからないということでございます。でも、私の知っている限り、金融庁がそんなことを指導しているとは思わないので、要するに、100点でないことはやらないというのが徹底しておりますので、銀行が悪いのかというと、しようがないんですね、預金を預かっているんですから。ですから、要するに、こういうことを銀行に求めるのかどうかということも含めて多少考えていかないと、僕が銀行の経営者だって、それで別に困らないので、株主に対して責任を持っている経営者としては、リスクのないように、リターンの高いようにということで運営していけば、社会のニーズに合ったようなものをみずから切り開いていくという役割をあえて担わないでも、十分褒めてもらえるというのが今の環境だと思います。

以上でございます。

○吉野座長

時間の関係もございますので、もう一つ資料がございまして、最後に資料1-4を見ていただきたいと思いますが、これまでのご議論を踏まえまして、事務局から、ある程度まとめを少しずつしていただいておりますので、それについて説明をお願いいたしたいと思います。

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、もう時間も限られておりますし、事前にお配りしているという前提で、ポイントだけ、さっとご説明させていただきます。

検討の視点でございますけれども、ここに書いてございますように、まず、金融サービスの提供。国民のニーズは多様化していますが、同時に金融機関の提供できるサービスも多様化していますので、組み合わせは非常に増えている。したがって、そういった状況であるから、なおさら金融機関は、これまで以上に顧客目線に立つ必要がある。その上で考えるべき問題点は2つ。

まず、資金の流れですけれども、安定的な運用の受け皿となっているのか。そして、そのほかでは、きちっと国内外の成長資金へつなげていますかと。

2つ目は、いわゆる資金以外の金融サービス、潜在的な需要をいかに充足、発掘しているかという2つの問題点であろうかと思います。

ヒアリングの結果でございますけれども、家計サイドにつきましては、今し方あったことも踏まえまして、住宅が非常に多いのでリスクをとりにくい。あるいは、景気が低迷している。公的年金制度が不透明な先行き。あるいは、もともと安全志向である。あるいは株価が低迷している。こういったことから、貯蓄から投資は進んでいない。さらに、金融リテラシーの不足もあるのではないかという指摘もございます。

他方、実態面を振り返りますと、投資信託では、為替リスクが高いにもかかわらず、毎月分配型の投資信託がなぜか伸びているというようなことが言えます。

次のページに参りますが、他方におきまして、そういった純粋な利潤ではない公共心、郷土愛を動機としたような共感できるプロジェクトへの投資意欲というものも生まれてきております。

供給サイドについては、2つの目線で整理しております。資金供給者としての国民が求めている金融サービス、それから、真ん中以下ですけれども、生活者としての国民の求める金融サービス。それぞれにつきまして整理をさせていただいております。基本的には、個人のリテラシー、こういったものの不足を前提とした開発の必要性、あるいは、全体的にコストの割高という問題点が指摘されている。特に投資信託につきましては、真ん中あたりでございますけれども、販売会社、銀行の窓販も含んでおりますけれども、中長期的な顧客の利益より短期的な手数料獲得に重点が置かれているのではないかという指摘がございました。こういったものは、販売会社あるいは投信会社との関係が影響しているのではないかというお話が前回ございました。

それから、生活者につきましては、さまざまなサービスの提供の可能性があるのではないかというようなお話を今日いただきました。それから、高齢者ニーズ、信託、相続・財産、住みかえ、モーゲージ、本日のお話です。

次のページに行きまして、論点でございますけれども、3つほど考えておりますけれども、最初の視点に整合的なんですけれども、効率的かつ安定的な受け皿をいかに提供するか。そして、それらをいかにリスクマネーにつなげていくか。さらに、多様化する個人の金融向けサービス、これにいかに対応していくかということです。これを行うのは担い手である金融機関ということでございますが、3ページの下のほうですけれども、まず、顧客本位の経営戦略。経営戦略という面から何ができるか。

次のページに参りますが、態勢づくりということになります。それから、チャンネルということで、ほかにどのようなことが考えられるのか。それから、ガバナンスでございます。

業界全体ないしは当局者の取り組みとして、あくまでもアイデアというか、項目だけ書いてありますのが4ページの後半でございます。

以上、駆け足でございますが、説明でございます。

○吉野座長

どうもありがとうございます。これも踏まえまして、あと10分ほど残っておりますけれども、まとめに向けて。

井潟委員、どうぞ。

○井潟委員

今のご説明があった、この資料1-4について意見を幾つか述べさせてもらえればと思います。

2ページ目の真ん中あたりの、顧客目線で、個人投資家の属性や世代の特性を踏まえた、きめの細かい商品開発や営業努力が不十分との指摘というパラグラフについてでございます。私が、現場サイドから伺ったところによれば、例えば、毎月分配型、追加選択型の適切な販売ということについては、これは販売会社、運用会社ともに、証券業協会、投信協会、金融庁証券課と相談しながら確実に取り組んでいきましょうという方向性が去年から打ち出されておって、昨年の7月あるいは12月に具体的な幾つかの政策が始まったはずだと聞いております。

また、販売手数料や信託報酬の水準については、これは前回もありましたけれども、単純にその多寡が議論されるというのではなくて、あの会社のサービスはどうなんだろうか、あるいは、あの商品の中身はどうなんだろうか、というように、個別の水準に見合っているんだろうかという議論の仕方が重要なのではないのかなという気がしています。

前回も申し上げたかと思いますけれども、米国のロングセラー投信上位のほぼ半数を占める、あるブランドの商品群は、販売手数料が5.75%ということですが、これをもって、米国で、この投信はけしからんという議論は一切ないという認識をしております。いずれにしましても、これまで金融庁さんが進めてきた規制緩和で、商品のバラエティーの拡大とか新商品の開発が続いているわけですが、銀行の超低金利に直面し続けている国民に対して、多様な投資機会が提供されているということは非常に重要で、この流れをぜひ維持していただきたいと思っています。

それから、同じく2ページの中段にある、「高い営業力を背景に大手販社の意向が投信会社―特に、系列会社にある投資信託会社―の商品開発に反映されやすくなっているとの指摘」というパラグラフについては、これは私の知り得る限り、例えば私が所属している野村グループ、これは他のグループさんも同じではないかなと考えていますけれども、オープンアーキテクチャーを通常は実施しておって、グループ以外の運用会社の商品も結構多数採用されているはずだと思っています。

商品の採用に当たっては、当グループがそうですが、別の会社によるファンドの分析と評価に基づいて、それを参考にしながら採用するという第三者の意見の採用が非常に重視されているはずです。

それから、同じく実質的なオープンアーキテクチャーという進展では、野村アセットマネジメントでは、これは他のグループの運用会社さんも同じだと考えていますが、自分で運用する商品に加えて、外部の運用会社、特に外資系が多くなりますけれども、外部の運用会社に対して運用を委託する商品の組成というのも行われている。これによって、例えば、日本には拠点がないんですが、特定の分野で非常に優秀な能力を誇る外国の運用機能というものが日本市場への参入が図られていると。これは、日本国民にとっては広く世界で活躍している、非常にレベルの高い運用能力の利用可能性の向上につながっているという点で非常に意義があるんじゃないかなと思っています。

こうしたオープンアーキテクチャーの進展ぶりというものが一定水準見られているということについて、こういう議論をする場合に、実質的な部分と、定量的に正確な現状といったものについての把握が必要じゃないのかな、という印象を、これを読んで感じた次第です。

最後は、幾つかの箇所でお話しされていますが、確定拠出年金の利用向上の促進というものについては、これも強く賛成するところでございます。これについては、できれば金融庁さんが、ぜひ指導的な役割を担って、今後の税制改正要望、あるいは他省庁、これ、厚生労働省さんとなると思いますが、働きかけを行っていただければ非常にありがたいなと思っております。

加えて、日本版ISAのさらなる改善も望まれますし、私がかかわっている証券業協会のある懇談会では、イギリスで最近始まった、ISAはISAでも、教育資金の積み立てを専ら念頭に置いたというISA、これ、ジュニアISAと呼ばれており、昔はチャイルドトラストと呼ばれていたものですが、こういった制度にも関心が非常に高まっている、といったことについてもつけ加えさせていただきます。

以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございます。

河野委員、それから永沢委員。

○河野委員

金融業界や当局の取り組みというところで、基本的に、先ほども、最初のころに、銀行はもうかってないというお話がありましたが、私は、銀行にかかわるというんですかね、日本全体なんですけれども、システムコストですよね。金融機関のシステムコストというのを、要するに、アメリカなり海外の銀行、金融機関とぜひ比べていただきたい。それと、雇用のコストなんですね。システムコストというのは、実はアメリカのミラー教授という方が、日本は工場ごとにシステムが違う。金融機関のシステムコストというのは数十億円、あるいは百何十億円とすごくかかっています。たまたま、これはあおぞら銀行だか新生銀行だか忘れちゃいましたが、八代社長が就任されたときに、日本の銀行の10分の1のコストでこの銀行のシステムをつくりました。全部インド人に頼みましたというふうなお話があって、要するに、インフラのコストが、日本がごく当たり前に産業的に全部高いとなりますと、ある種の生産性というのが気になってしまうんですが、これはぜひどこかで調べて教えていただきたい。そのときに、もう一つ、当時は、銀行の女性の窓口担当というのは、給料が1万ドルだって。1万ドルということは、100万円とか、当時で言えば120万円前後で、そういうことを日本の金融機関に申し上げましたら、受付の人は全部派遣の人にかえましたとかというお話もありますけれども、そういう意味では、銀行の基本的なコストというか、もしかしたら日本全体のコストなのかもしれませんが、そのことをぜひ1回、資料で教えていただければと思います。

○吉野座長

じゃあ、永沢委員、それから篠原委員。

○永沢委員

本日、このペーパーに関して2点ばかり意見を申し上げたいと思います。

まず第1に、「市民ファンド」という用語についてです。私も、市民ファンドというものについて、流れとしてはそれは望ましい方向だと思っています。市民の社会に対する共感とか、社会を支える考え方というものは支援すべき方向であるということには全く異論はありませんが、ペーパーの中に、突然「市民ファンド」という言葉が出てきているように思えてなりません。今回のワーキング・グループの検討会の中で、この言葉の定義についてきちっとしておりましたでしょうか。

1つ懸念されますのは、これまで世の中で起きていることを思い起こしますと、このように非常に耳ざわりのよい言葉を通じて、投資詐欺的な事件が多発してきたということは忘れてはいけないと思っております。私といたしましては、やはりこの言葉の定義をもう一度再検討すると同時に、最後のところで、「市民ファンド支援」という一言で軽くまとめられておりますけれども、当局としてどう監督していくのかということについて、やはり議論して、その点を加えていく必要があるのではないかと思っております。

第2点目は、前回も質問させていただきました点であり、資料に注釈もしてありますが、「金融リテラシー」という言葉についてです。やはりこの言葉も、「市民ファンド」と同様に、世の中で非常に多用されている言葉ですが、定義が十分ではないように思っておりますし、また、2000年以降、国民の金融リテラシーを向上させる取り組みというのは官も民も行ってきたと思いますが、果たしてどのような取り組みをしてきて、どのような結果になっているのかということについて、今回の検討会の中でまだ十分に検討が行われていないように思っております。できれば、金融リテラシーとは何かという定義を入れて、金融リテラシーが不足しているというふうにまとめていかなければ、新しい展開が期待できないのではないかなと感じております。

以上でございます。

○吉野座長

今、金融リテラシーを変えるとすれば、「金融知力」とか「金融知識」とかあると思うんですが、どういう言葉にしたらよろしいですか。

○永沢委員

金融リテラシーの言葉を変えるというよりも、金融リテラシーについて何をしてきたのかということについて検討を加えるべきでは・・・。

○吉野座長

日本語で言うと、これを何にしたらよろしいと思いますか。

○永沢委員

その部分が非常に難しいですね。「金融リテラシー」という言葉でいいとは思うんですけれども……。

○吉野座長

リテラシーは、英語の文献を調べれば、それで定義はできるんですけど、リテラシーと言うよりも日本語のほうがよろしければ、「金融知力」とか「金融知識」とか……。

○永沢委員

いや、日本語でいいというわけではなくて、この「金融リテラシー」という言葉が、使われるときの場面場面で、使われ方が違うように思うんですね。それが非常に気になっておりまして、別に「金融リテラシー」という用語に不満があるわけではなくて、この点、もう少し踏み込んで議論すべきだったのではないかと感じているということです。

○吉野座長

あるいは、もし考えておいていただければ、どういう日本語の、いいのがあれば、また教えていただければと思うんですけれども。

○永沢委員

そうですね。少しお時間をいただいて、これは追ってお返事させていただくということでよろしいでしょうか。

○吉野座長

はい、結構です。それから、市民ファンドとかいうのは、ミュージックセキュリティーズの方などが、前回のときにちょっとおっしゃったことだと思いますけれども、ありがとうございました。

篠原委員、どうぞ。時間がオーバーしちゃって、すみません。

○篠原委員

私も、今の金融リテラシーの問題に絡めて一言だけ。

これ、中長期的な観点から今回の検討をやっているわけで、「リテラシー」という言葉がどうだこうだという次元じゃなくて、やっぱり子供の教育の段階、小学校、中学校、この段階から中長期的に金融というものにどういうふうに触れさせていくか、教育の中でどう取り入れていくか。教育的な導入を、ここでやっぱり1つきちんと、金融リテラシーというならば入れていただきたいなと。今いる大人たちだけが対象じゃなくて、これから大人になる人たちも含めた今後の金融のあり方というふうに、僕は今回のテーマは受けとめておりますから、そういうふうに思います。

リテラシーというのは、読み解く力とか読みこなすとか使いこなすとか、そういうふうで使ってますよね。だから、それは僕は別に抵抗ないんですけれども、教育面でどうやるか。しかも、それがあんまりもうけ主義というか、拝金主義というか、そういうほうばっかりに偏る教育も非常に困ると思っているので、ニュートラルな立場でやるというのは大変難しいと思うんですけど、日銀なんかが一部やっていますけれども、その辺も工夫しながら取り入れていく必要があるんじゃないかなと。

その点の記述がちょっと弱いなと、こう思いました。

○吉野座長

どうもありがとうございました。まだまだご議論があるかと思いますけれども、また次回も、このたたき台を少し修正した形で、皆様からご意見いただきたいと思いますので、今日はちょっと時間をオーバーしてしまいましたが、これで。

この次の会議でございますけれども、2つのシンクタンクに幾つか委託調査をしておりますので、その調査の説明も次回はお願いする予定でございます。

黒澤課長、今後の予定についてお願いします。

○黒澤総務企画局企画課長

次回の日程につきましては、皆様方のご都合を踏まえまして、また、吉野座長ともご相談の上、2月中旬の方向で調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○吉野座長

では、ちょっと時間をオーバーしてしまいましたけれども、これで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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