金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第6回)議事要旨

1.日時:

平成23年10月28日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

企業・有識者からのヒアリング

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 企業・有識者(株式会社インスパイア、富士セイラ株式会社、高性能駆動装置開発株式会社、シティグループ証券株式会社 野﨑マネジングディレクター)より、我が国金融業の地域経済における金融機能の向上をめぐる論点に関して説明を受けた後、質疑応答・自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【地域における金融サービス・ニーズ】

  • ITブームの終焉、ライブドア事件、および景気低迷の長期化を受けて、起業に挑戦する若者は減少している。もっとも、ゼロになっているわけではないし、また、役所や政府系金融機関の起業支援サービス等を受けて、起業そのものは制度的に行い易くなっている。こうした状況下、創業あるいは創業直後といった初期段階にある中小企業に対する金融機能の向上が望まれており、例えば、融資はもとより、投資においても、代表者が個人連帯保証を求められる現状は改められた方がよい。
  • 金融機関はそのサービス・メニューを色々と拡充させているかもしれないが、中小企業はそれをすべて把握しているわけではない。中小企業サイドでの情報収集が必要である一方で、金融機関サイドでも体系的な情報伝達の態勢を整備することが求められている。
  • 中小企業が海外進出を行う際、国内地元の地域金融機関ではなく、メガバンクに頼ることがある。これは、メガバンクの海外ネットワークの方が相対的に整備されているためである。もっとも、メガバンクによる現地子会社への融資については、借り手企業の日本本社による保証の有無が審査の重要要素になっているのが実情。海外進出を行う中小企業が増えていることを踏まえると、メガバンクが、中小企業取引においても、現地子会社単独の事業内容や業績を評価する態勢を強化していくことはこのような中小企業の海外進出に対する重要な支援になるものと考えられる。
  • 最近、リーマン・ショックや天災といった外的ショックが多い中、政府系金融機関の迅速な企業サポートへの評価が高まっている。
  • 少子高齢化の進展は、地域金融機関にとって、マイナスの面ばかりではなく、プラスの面もある。中小企業の間では事業承継に関する金融サービス需要が生じている一方で、個人の間では相続に関する金融サービス需要が生じている。

【金融機関による投融資先の中小企業の評価】

  • 地域金融機関によるリレーションシップ・バンキングにおいては、個々の銀行員の目利きは重要な役割を果たす。これによって、定量的な情報や顧客企業とのコミュニケーションだけでは把握し得ない企業の実情への理解が深まる。しかしながら、過去の金融危機時の新卒採用絞り込みの弊害で、現在では、30歳代後半から40歳代前半の行員が手薄であるため、技術・ノウハウの伝承がうまく進んでいないように見受けられる。
  • ある企業が持つ技術を様々な領域で十分に評価することは、コストの面でも、専門性の面でも、ファンド運営者単独で行うのはなかなか難しい。このため、ファンド投資元の事業会社に、それぞれの得意分野について、投資候補企業の技術を評価してもらうことが有益となる。そうした技術力評価を踏まえて事業性の評価を行うわけだが、技術面での高評価はそのまま高い事業性を意味するわけではないので、別途、事業性についての慎重な検討が必要となる。
  • 新しい技術の評価は、まさにその新しさゆえに、決して容易ではない。このため、技術評価を行うにあたっては、一時的な市場での評判に左右されることなく、わが国の産業基盤をいかなる技術領域に置くべきかについて、一定の見解を予め形成することが必要となる。例えば、米国ではIT技術、ドイツやスイスでは基礎技術に、その産業基盤があると考えることができる。わが国産業については、いわゆる「匠の技」に強みがあるわけで、こうした分野の育成に注力すれば、様々な製品の開発や改良に入り込み高い技術のブランド化ができるものと考えられる。
  • 様々な要因により我が国企業の海外進出は必要なものとはいえ、産業の空洞化を防ぐためには世界に通用するブランドを地域産業として育成・確立していくことが重要と考えられる。

【ベンチャー・ファンドの投融資活動】

  • 創業あるいは創業直後といった初期段階にある企業の資金調達構造については、様々な政府系金融機関の創業支援制度が充実しているため、全体的にみて、他人資本の貢献が大きくなっているかもしれない。もっとも、初期投資のために必要な資金量は起業するビジネスによって区々であり、自己資本の拡充が不可欠な先はもちろん多い。こういった先では、ベンチャー・ファンドによるエクイティ供給が重要となる。また、そうした先の一部には、富裕な個人からの援助的な資金供与に頼る先もみられる。
  • 足もとでは、ベンチャー・ファンドによる初期段階にある企業への投融資が低調になっている。過去10年間くらいでみて、水準感としては低いといえる。リーマン・ショックを受けて、ベンチャー・ファンドは様々な投資の失敗に直面しており、このことがファンド自身のリスク許容量を低下させることを通じて、案件の小型化や、より後期の段階にある企業への投融資の相対的な増大を招来しているものと考えられる。

【金融機関の再編や連携】

  • 地方では、企業の海外進出と人口の減少という二つの空洞化が進展している。こうした中で、供給者である地域金融機関の数がある程度減少していくことは自然なことかもしれない。
  • 規模が小さく、また営業地域が限られる第二地方銀行については、各行が個別事例への対応策などを持ち合って、業界全体として「知のデータベース化」を進めていくことが、再編以外の経営基盤・能力拡充策の一つとして有効であるものと考えられる。
  • 我が国金融機関の統合・合併の事例をみると、信託銀行同士のものは摩擦が軽く済んだ印象を受ける。信託銀行は、その主たる業務の一つである年金運用を通じてマーケット経験が豊富であるため、結果的に何が最もマーケットに評価されるかという意識を共有し易く、その上で再編に取組むことができたことがプラスに作用したものと考えられる。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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