ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム(第4回)議事要旨

1.日時:

平成19年1月15日(月)13時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題:

「ソルベンシー・マージン比率等に関する検討課題について」

4.議事内容:

  • 第四回検討会が開催された。

  • 事務局より、資料4-1「主な論点(案)」に沿って説明が行われた。

  • 米山座長より、資料4-2「ソルベンシー・マージン基準の見直しについて」に基づき意見が述べられた。

上記説明に対して自由討論が行われた。主な内容は以下のとおり。

(事務局)

今回「主な論点(案)」として提示したものは、事務局で提案した叩き台であり、議論の内容を反映し、徐々にバージョンアップする。総論と各論の2つ、又は総論、進め方(段階)、個別の論点の3つのカテゴリーに分けることになるが、今回は総論に該当する部分を提示した。

(質問)

金融庁としては、過去の破綻事例の数値に関し、フォーミュラーに問題があるか、係数に問題があるか検証しているのか。問題がクリアになればよい。

(事務局)

当時、破綻した生保の数値を見直すと、200%を割っているという結果もあったようである。ただし、当時と経済的状況も違っており、過去の事例がそのまま参考になるものなのか、当時の破綻の状況考慮に入れる必要があるのではないか、といった観点も含めて議論をいただきたい。

(意見)

はじめの一歩として過去の検証も重要であるが、当時の基準と違って現在は厳格化が進んできたものと認識しており、そこから見直さないと始まらないということではないと考えるがどうか。

(意見)

当時、ソルベンシー・マージン比率が200%を上回って破綻した会社についてディスクロージャー資料を基に検証を行ったところ、清算価値のない資産をマージンから除いて債務超過となった保険会社が破綻しており、ソルベンシー・マージン及び会計基準が甘かったと考えている。その後、厳しくなったという話は聞いているが、当時のデータを基に「現在のソルベンシー・マージン基準を当てはめて機能するか」、「実質資産負債差額基準が機能するのか」、「十分早い段階で介入できるのか」といった点から分析する必要がある。金融庁当局から資料をだしていただくことを要望したい。将来収支分析の意見書も含め既に破綻した会社のデータは出してもよいのではないかと考える

破綻時点よりも1年以上前のソルベンシー・マージンが計算できないと有効な検証ができない。少なくとも破綻前の2期くらいはあるとよい。

(質問)

ソルベンシー・マージン基準、将来収支分析については、破綻当時のデータがあるはずだが、現在公開されているものは、ディスクロージャー基準に則ったものと情報公開により求めた検査の補足資料で三利源損益がわかるものなどがあるのみである。

(事務局)

どのようなデータをお示しできるかを含め、事務局として検討させていただきたい。将来収支分析の手法は、破綻事例を踏まえて確立してきたものであり、現時点でやり直すのはかなり難しいものと理解いただきたい。

(意見)

平成12年度末のソルベンシー・マージン比率の見直し当時、見直し後の数値の新聞報道があり、確認は取られていた。金融商品の時価会計を導入した頃であり、株式の含み損益のみ反映されていたものが、外国証券の含み損益も反映された。当時も有効な見直しが行われたものと認識している。

(意見)

当時は、資産の自己査定の方法、ソルベンシー・マージンの計算式も明らかに実態を反映していないものであったが、現在では相当程度の信頼性があるものと認識している。検証により現状の問題点が浮き彫りになるのではないか。

(質問)

消費者の理解を深めるための具体的方法として、ソルベンシー・マージン比率の議論だけでは不十分という意見もあったが、見直しが行われた場合、その影響は、何らかの形でしっかり伝えていく必要があるのではないか。

(回答)

消費者に、ソルベンシー・マージン比率とは何かを啓蒙するとなるとソルベンシー・マージン比率以外の商品比較の手法が生活の中で根付く必要があり、そこまで考慮するのはむずかしい。見直しによりどういった影響があるかは重要であるが、消費者に対して歪んだシグナルになるようなものは避ける必要がある。この検討会でどこまで考えるか、線の引き方の問題である。

(意見)

銀行の自己資本比率が、8%を大きく上回っていないのと比較すると、保険会社のソルベンシー・マージン比率は最低と平均が乖離してしまっており、多くの会社が1000%ある中で、200%で大丈夫なのかというのが、消費者が疑問を持つ点ではないか。見直しにより数値が適正な範囲になれば、消費者に対する回答になりうるものと認識している。

ソルベンシー・マージン比率の公表に関しては、公表前であれば、ABCDといった区分で開示するといった方法も検討の余地があったが、既に開示していることを前提とし、消費者の理解を深めていくべきではないか。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率のパラメータの意味づけがはっきりすれば、契約者に対し、平易な言葉で説明することができる。また、改善命令をだしてから、対応期間を持つことが必要である。清算基準をベースに考えれば、比率が突然下がることもなくなる。

(質問)

今後、段階的な見直しを行うとすれば、見直しの途中では、200%で大丈夫かという声にどこまで答えられるかは疑問である。少なくとも報告書に今後議論すべきことを記載すべきではないか。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率に問題ありという意見が多いが、200%が低すぎるかどうかは、慎重に考えるべきである。ソルベンシー・マージン比率の信頼感がないといわれたのは、バブル崩壊、低金利、逆ざやなどから金融不安が起こり、解約が起こったためである。

その後のルールの改善、会計のやり方、自己査定などはかなり厳しくなっており、金融不安も払拭されていることから、ソルベンシー・マージン比率の信頼感を過度に失わせるのは危険であり、厳しすぎる基準は、営業可能な会社が営業できなくなるリスクがある。

(意見)

現行基準は甘いというばかりではない。負債のことを考えてアセット・ライアビリティ・マネージメントを行っている会社に関しては、金利が上昇した場合厳しいことが起こる。ソルベンシー・マージン比率が高すぎるかどうかではなく、たとえば確率10%くらいで何か起きうるといった会社に対し、ビジネスの裁量権を与えるかという問題ではないか。また、中間的な改定で過度にソルベンシー・マージンが低くなってしまうことは避ける必要がある。

(意見)

保険会社のリスク管理態勢の整備を促す効果もあることから、リスク管理をしっかり行っている会社が高い比率になることが望ましい。

(意見)

現行基準は必ずしも甘くない。今回取りまとめるレポートの中で過去の破綻事例を検証した上での見直しを行うことにより、契約者に対する信頼性の確保もできるのではないか。基準を厳しくすれば良いというものではなく、厳しくすれば資本の要件も厳しくなり、保険料や配当に跳ね返る。

会社形態については、学術的には、出資者の違いがあり、劣後債務と契約者準備金の優先順位の違いなどがでてくる可能性はあるが、契約者は会社形態までを意識して保険商品を購入しておらず、基準のわかりやすさから考えると差をつける必要はない。情報公開、周知のあり方にも影響する問題。

(意見)

業法改正もあり、相互会社の保険契約が負債契約に近い形に変わったことから、現状では会社形態の違いは意識しなくてもよい。資本構成の違いについては留意する必要があるかも知れないが、大きく変える必要はない。

(質問)

支店形態の場合、保険契約者保護機構による保護はどうなっているか。

銀行の場合、支店形態の銀行に関しては保護がなく監督は母国対応である。保護がないのであれば、支店形態の会社に対しソルベンシー規制を課すことには疑問がある。保護機構の保護を与えず、契約書に明記し、母国にチェックを任せる。母国の監督が不十分であれば営業停止という考え方がある。

また、本店が倒産した場合、倒産隔壁はどうなっているか。

(事務局)

保険会社の場合、支店会社であっても保護機構に入らなければいけない。外銀の場合、預金保険機構に加入義務はなく扱いが異なっている。

保護機構を導入した当時と倒産に関する制度が変わっており、現在では、外国の倒産手続きが日本の支店にも及ぶこととなっている、これまでに問題となった事例はないが、今後検討が必要かもしれない。

(意見)

「ソルベンシー・マージン比率は万能ではなく、いろいろな経営指標の一つである」、「200%は何を意味しているか」などの周知活動はすぐに着手できる。一般の消費者には、数字のみがでているというイメージがある。

(意見)

現行の基準を大きく変える必要はないが、標準的な会社がモデルであり、「契約件数が少ないところは大きな数値となりやすい」など単純な数値の比較によるランキングは意味がないことを伝える必要がある。業界から出ているディスクロ資料の見方といった冊子の中で説明を行うだけでも効果がある。

データの検証は必要であり、たとえば株価の影響を大きく受けるような資産構成であると大きく変動することがあるといったことがわかるとよい。

基準が200%となっていることも原因だが、もう少し丁寧に伝えていく努力が大切である。200%から下は必ずトリガーを引くが、ある程度の範囲で裁量を持つといった考え方もある。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率の開示、信頼性に関して、健全性を評価する上で、オペレーショナルリスクのように必ずしも数値のみでは表せないものもあることから、検査情報などの定性的なものもセットで説明すべき。

(意見)

支店形態の会社は、資本を動かしやすいため、ソルベンシー・マージン比率の意義をつかみにくい。

(意見)

外国保険会社に関する規制関係について、保護機構への加入義務を外し、ソルベンシー規制からも外すという考え方がある。実効性の観点から、できないものはできないとして監督体制を合わせるべきではないか。

ソルベンシー・マージン比率がむやみに高いことには意味がないが、ある程度高いほうがよいことも事実。高いことのレベル感が直感にあうことが大切。米規制でも、200%の根拠は曖昧だが、既に定着している内容であることからPRしていく必要がある。

株だけ持っているような会社はVaRでみても極めてリスクが大きい。株式、為替に関しては現在のパラメータは低すぎる。破綻ぎりぎりで設計するのではなく、安全係数をかけることが必要である。

もちろん資産だけでなく、ALMでやるべきと考えている。VaRの考え方で資産、負債を両面で見ていくことが重要である。

(意見)

ソルベンシー・マージン基準は、どの水準にあれば十分なのかという指標になっていない。トリプルB水準を挙げたのはそういったことも関係している。

(意見)

相互会社と株式会社の基準をあえて変える必要はない。株式会社は資本を有効活用することが重要であり、IRなどでも、ソルベンシー・マージン比率が何%あれば必要十分であるといったことが言えればよいと考えている。

(質問)

株式会社は株価で価値が判断できるが、相互会社は価値の判断ができないという違いがあると考えるがどうか。

(回答)

ソルベンシー・マージン比率の開示により株価が形成されるものではない。むしろEVに引っ張られている。また、現状では保険会社の株価は安定傾向にあり、情勢を反映した株価の動きになっているという認識である。

(回答)

相互会社は、「内部留保を増やすといった考え方」が支配的であり、株式会社は、「株価を意識してキャピタルの有効活用を考える」という違いがあるが、リスク管理という視点で見れば目指すところは同じではないか。

(意見)

相互会社は資本調達手段が限定されているというといわれるが、株式会社と相互会社の資本調達手段の窮屈さに差があるのであれば、ソルベンシー・マージン比率もそれ相応の工夫が必要である。

(意見)

今の段階で、分かり易さを犠牲にしてまで、会社形態による資本調達の柔軟性の違いを入れる必要はない。

また、どれだけあれば十分という指標になっていないとの指摘であるが、目指す水準を決めるのは保険会社。規制としては当局が健全性を確保するトリガーとしてどうするかということを議論すべきである。

(意見)

トリプルBは例として申し上げたもの。理想とすれば、単に是正措置の基準ということでなく、計数にランクがつけられるようなものであれば、消費者に対しても市場に対しても意味があるのではないか。

(質問)

市場規律を重視する規制という観点でみた場合、株式会社は株価がキーとなるが、相互会社については、何に注視していけばよいか。

(回答)

ソルベンシー・マージンというよりは、コーポレート・ガバナンスのあり方ではないか。相互会社の場合、単一指標で市場にリンクした指標はないが、経済的意味と捉えるのであれば、会社形態は異なっていても業務は同じであり、経済的に考えた場合、同じような規制があるべきと認識している。

市場規律から考えるということであれば、コーポレート・ガバナンスとか、社員総代会のあり方などに踏み込まざるを得ないことになる。

(意見)

ソルベンシー・マージンの議論と責任準備金の議論はセットと考えており、実務基準の見直しを促す議論を行うべきと考える。

(意見)

経済価値ベースでのソルベンシー評価を行うための取組みの内容や手順を考える際、責任準備金は、相当テクニカルであるため、具体的な叩き台があった方がよい。簡単な資料を準備した上で進めていくのがよいのではないか。

(意見)

ロードマップの作成は賛成である。実務を考えれば、段階を踏んで進めていくことでよいが、途中で方向性を変えることは適切ではない。

国際的議論から見ると全期チルメル方式が基本となるが、一旦これを取り除いて、国際基準になった場合、再び入れるといったことは避けるべき。

(意見)

経済価値ベースの健全性評価については、責任準備金を評価する基礎率の設定の問題と認識しているが、割引率やリスクマージンの評価だけでなく、解約権のようなオプション性もあり、債券のようにキャッシュフローが決まっているのと違って、評価の論点となる箇所が多い。IASBにおける、負債評価の議論でも、検討課題が多くあることは認識されており、工程を考える上でも整合的な考え方の整理をしていくべきと認識している。

解約返戻金超過部分に関しては、IAISでも責任準備金にマージンが含まれているという考え方が議論されており、事業継続基準であってもマージンとして算入することには意味があると認識している。ソルベンシー・マージン基準の考え方としては、事業継続基準が望ましいという認識である。

(意見)

責任準備金の中に、リスク、マージンの両方があり、セットで考えるべきとの意見があった。解約返戻金をマージンとするか、責任準備金と考えるべきか、議論のたたき台があるとよい。

(質問)

経済価値ベースというのはEV(エンベデット・バリュー)のイメージか。換金性がソルベンの正当性を持つための前提となるのではないか。顧客価値を負債評価にいれているIFRSの議論とか、解約返戻金超過部分の議論と違う視点から、EVを何らかの形で改廃した形で評価するということか。

(回答)

経済価値ベースの評価にはいろいろなものがあるが、徐々に実務の状況も加味しながら進化していくものであり、ピュアに経済的に考えることが必要。

換金性に関しては難しく、マーケットがあるかないか、その値段で売れるのかどうかということやアセットサイドの考慮も必要があるかもしれない。

工程表のプロセスは、後戻りしないことが重要。今の責任準備金も、少しでもよい方向に向かうのであれば変更することも視野に入れて検討していくのがよい。そういった形で論点が提供できればよいと考える。

(意見)

生命保険会社の生命保険に関しては、スタンダードな契約が多いと考えるが、第三分野の保険、特に長期の終身を販売しており、どのような形で責任準備金を積みたてているか、解約返戻金がないものについて、どういった形で責任準備金を資本に入れているかご説明をいただきたい。

(意見)

経済価値ベースの健全性評価に関しては、長期的保険負債の経済価値、破綻確率を考慮した上で、責任準備金と必要資本でカバーできるかである。

長期的には国際的にも同様な方向であり、責任準備金の評価も統一化されていく。短期的には日本の会計基準として、債務超過にならないこともフロアー的に抑えること重要である。

(意見)

現行ソルベンシー・マージン基準は標準責任準備金制度、将来収支分析を前提としていることから、法律改正も含めて工程表に盛り込んでいく必要があるのではないか。国際的な議論も進んでいるが、監督当局としては、この場で議論すべき内容に関しどう考えているか。

(事務局)

健全性という観点から、ソルベンシー・マージン比率、責任準備金制度、将来収支分析、企業会計的な議論などがあり、どこまで一体として考えるか、どこまで先行していくか、というたいへん難しい問題と認識している。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率は計算し易い指標であるが、破産確率を代用したものであり、規制当局はその他の指標をみてもよいのではないか。CTE、VAR、EV、ALM、ROE、負債比率などとの対比表を作成してそれぞれどのような点が優れているか検討してはどうか。工程表の作成にも参考になる。

(意見)

工程表の作成においては、リスクと資本を切り離して考える視点が必要。

継続基準か、清算基準かという点に関しては、株式会社においては、通常Going Concernで考える必要があるが、有事の場合は清算基準を用いたり、換金性を見たり報告の頻度を上げるなどの特殊な対応が必要と考える。

「評価期間」は、公表サイクル、当該ビジネスの意思決定サイクルに合わせてはどうか。費用対効果、制度の分かり易さ、短期売買がそれほど多くないことを考慮に入れると1年に揃えるという実務的対応となるのではないか。

「測定方法」、「信頼水準」は基本的に統一すべきと考える。地震・風水災など同質のものは短期的対応でも揃えていくべきと考える。

(質問)

議論全体が生保を前提に行われていると考えるが損保に関し考慮すべき事項はあるか。

(意見)

本日の論点は枠組みの議論であり、枠組みは生損で異なるものではないと考える。ただし、損保の特殊性としては、「基本的に全てが株式会社であること」、「自然災害リスクが支配的であって、その尺度を揃えることが重要であること」があげられる。また、今回の論点にあがっていないものとして、損保には、多種多様なリスクがあるため、合算方法の検討が重要になる。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局保険課 秋田(内線3770)
山村(内線3431)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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