第4回金融税制研究会議事概要

1.日時:

平成22年6月21日(月曜日)18時00分~19時55分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○神崎政策課長

それでは、定刻になりましたので、まだちょっとお集まりでない方はいらっしゃいますけれども、第4回金融税制研究会を開始させて頂きます。

本日は、皆様遅い時間にもかかわらずご参加頂きまして、どうもありがとうございます。

まず、座長である田村大臣政務官からごあいさつを申し上げます。

○田村大臣政務官

お疲れさまです。今日もご参加頂きまして、本当にどうもありがとうございます。前回も中座をさせて頂きまして、誠に申しわけございませんでした。基本的に、そういう場合でもしっかり議事録でフォローさせて頂いておりますけれども、今日は最後まで、本来はそれが当然なのでありますが、最後までいることができますので、またしっかりと皆様の生の声を胸に刻みたいと思っております。今日もどうぞよろしくお願いいたします。

○神崎政策課長

それでは、議事に入らせて頂きます。

お手元に議事次第を配布しておりますが、本日は吉村委員、湊委員、太田委員のお3人の方から、それぞれ約20分程度ご説明を頂きまして、その後で自由討議の時間をとらせて頂きたいと考えております。

それでは、初めに、吉村委員からご説明を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉村委員

ただいまご紹介にあずかりました、横浜国立大学の吉村です。本日は報告の機会を与えて頂きまして、どうもありがとうございます。

金融所得課税に関する論点は非常に広範にわたるわけですけれども、私の報告におきましては、こちらスライドにて副題をつけましたとおり、二元的所得税をめぐる各国の対応、各国といっても、ここではもっぱらドイツなどのヨーロッパ諸国ということになりますが、その動向を踏まえて、我が国にどういった示唆があるだろうかと、そういったことを考えたいというふうに思っております。

例えば所得課税の方向性、いわゆるグランドデザインにつきましては、既に森信委員や諸富先生といった方々によって既に報告されているところでありますので、こういった二元的所得税をめぐった動きに限定をする私の報告にも意味があるだろうというふうに考えた次第です。

まずは確認ということになりますが、ページをめくって頂きまして、二元的所得税、特にここでは北欧型の、いわゆるピュアな二元的所得税の仕組みというものを図式化しております。森信委員のご報告にもありましたように、従来、投資に対する所得課税、投資に対する課税のあり方につきましては、包括的所得税か、それとも消費型所得税、すなわち投資については免税をするといった税制、いずれを選択するかといった対立があったわけですけれども、現在におきましては、ここでお示ししたような二元的所得税が、もう一つ参照に値するモデルとして認識されるようになっております。二元的所得税自体は90年前後に北欧にて導入され、その後、ヨーロッパを中心に広がりを見せている、もしくはヨーロッパにおいて所得税の改革を行う、これはアメリカも含めてということになりますが、所得税の改革の議論を行う際には、二元的所得税が1つのモデルとして取り上げられるということが多いというふうに思います。

しかしながら、そのように参考にされるモデルでありながらも、具体的な税制、具体的に実現した税制を見ますと、必ずしもピュアな形にはなっているわけではない。これはもちろん、皆様ご承知のとおり、ドイツなどは必ずしも完全なピュアな形での二元的所得税というわけではないと。それがなぜなのかということを考えてみたいということであります。

まず前提として確認しておくことでありますが、90年前後に北欧において導入されたということで、既に二元的所得税そのものは十分な期間、運営をされ、信頼に足る制度であるということが実証されているという点であります。したがって、机上の空論としてのモデルではないということです。

しかしながら、実際に他国で二元的所得税的なものが導入されるに際しては、必ずしもこの北欧型のものをそのまま取り入れるということにはなっていないわけですけれども、そこに影響しているものは何なのかということです。この図式でわかるように、1つ考えられるものとしては、当然、税率設定の面において、やはり導入しがたい。北欧以外の国においては導入しがたい側面があるんだろうということが予測されます。すなわち、租税裁定を防ぐためというのが大きな動機かとは思うのですけれども、北欧では、若干のずれがあるケースもありますが、例えばノルウェーなどは法人税率と資本所得に適用される税率及び勤労所得のスタートラインですね、これがすべて28%と。州によっては、地域によっては違うこともあるようですが、基本は28%ということでそろっているという、この三者の間に非常に強い結びつきが持たされているわけです。この点、ここに乗るかどうかで大きな違いがあるんだろうということです。

もう一枚、スライドの3枚目に移ります。

ピュアな二元的所得税のもとで生ずる論点ということで書きました。もう一つ、二元的所得税を取り入れるという際に大きな障害になる問題としまして、資本所得・勤労所得の区分をどのように行うのかという問題が起きてきます。資本所得につきましては、累進税率の適用から排除するということになりますと、勤労性の所得を資本所得に転換をして租税回避を行うという可能性が存在するということで、この両者をいかに区分するかが問題になります。

しかしながら、実は北欧諸国においては、この両者の差異を利用した租税回避というものは、一般的には問題にされていないと、問題視されていないというふうに紹介されています。

その原因は2つ考えられるかと思います。1つには、先ほど言いましたように、資本所得については軽課されるといいましても、そもそも高い水準から税率がスタートし、そこに9%、あるいは12%という形で超過課税が乗るという仕組みですので、実際、その転換による利益というのはそれほど大きくないのだろうと思います。

またもう一つは、この所得分類2つだけというシンプルなものですので、この両者、所得の性格を転換することで、軽減された税率を利用するといいましても、その問題になる事例、局面というのは限定されたものであるということです。

逆に申しますと、この限定された局面ではあるんですけれども、その接点ですね、勤労所得と資本性の所得が接する点こそが、まさに二元的所得税のアキレス腱というふうに評価され、実際にそれをめぐって、ノルウェーなどは非常に大きな改正を行っております。

具体的に何が問題かということになりますと、資本所得と勤労所得が入り交じった、そういった性格を有する事業所得の扱いということになります。また、その事業所得、個人が直接事業を営んでいるという場合に限らず、閉鎖会社ですね。少数の株主によって運用されているケースにおきましても、報酬として支払われる額が客観的なものかという点で疑問符がつきますので、やはり閉鎖会社をも対象としてその議論が行われるということであります。

そもそものスタート時、2004年改正前におきましては、資本・勤労を分離するというときには、資本額、すなわち資本について想定される収益率というものを法律が定め、それを資本の額に乗じることで対応する資本所得を算出するという計算を行っておりました。ですので、名目上、給与として支払われたか、配当として支払われたかということは重視されず、法定率、法定の収益率を前提として資本所得とその他の所得、その他の所得は当然勤労所得に合算され、累進の対象になるわけですが、そのような区分を行っていたということです。

しかしながら、これはやはり執行上大きな問題を抱えたということでして、そのうちの一つが、対象として閉鎖会社に限定をして適用がなされておりましたので、持分を分散することによってその対象を逃れる動きが広範に見られたということです。

もう一点は、今申しましたように、結局法令の根拠に基づいて、その資本に対応する収益率を定める、国が、政府が定めるということですが、それが正しく資本所得を切り分ける数字になっているのか疑問視されたということになっております。

2004年改正では、これを次のように改めたということなんですが、この内容と申しますのは、配当及び事業所得につきまして、これをノーマルリターンか、もしくはレント部分なのかにより両者を切り分けるということになっております。すなわち、ノーマルリターンとしては、3カ月物ノルウェー国債を参照するということになっておりますけれども、その企業が通常上げるであろう、通常上げ得る収益と、それに加えてのリスクプレミアム及びレントを含む部分とに分割をする。この前者につきましては資本所得ということになりますし、後者につきましては、他の勤労性の所得に合算をして累進課税の対象にするということになっております。

なお、この際、この改正の際には、以前の仕組みは閉鎖会社のみに適用されるということで大きな問題を抱えていたわけですけれども、2004年改正法による仕組みは閉鎖会社のみに適用されるものではなく、一般的な法人課税の対象とされる法人すべてに適用されるということになっております。ですので、たとえ上場会社の配当であったとしても、このような分離を行った上で、ノーマルリターン部分と、その他の部分とに分けなければいけない仕組みになっております。

この際に、配当に対する二重課税調整措置は廃止されております。ただ、ここに書きましたように、二重課税調整措置が廃止されたといいましても、ノーマルリターンにつきましてはそもそも課税の対象に含めない。資本性の所得だというふうに先ほど申し上げましたが、それは既に法人段階で税金がかかっているということで、所得控除ということになります。

次、もう一枚おめくり頂きまして、では、北欧のいわゆるピュアな二元的所得税のもとでは、二重課税の調整をどうしているかということですが、これは国によって分かれるというのが結論になります。2004年改正前のノルウェーやフィンランドは、インピュテーション方式を採用しておりましたし、特にノルウェーにおいては、譲渡益につきましても二重課税調整措置を有していたということであります。しかしながら、デンマークは法人税を引き下げたんだからということで、二重課税の調整措置については、インピュテーション方式を廃止する改正を行ったということです。

また、2004年改正後につきましては、先ほど申し上げましたとおり、配当のうち、ノーマルリターンにつきましては、そもそも課税の対象から除外されるということになっております。

このように、二重課税調整自体、当たり前のことではありますが、二重課税の調整をするかということと、二元的所得税を採用するか否か、すなわち二元的所得税の枠組みとの関係で直結して論じられる問題ではないということです。これは、もちろん理論として当然、その両者の直接の関係はないということなんですが、実際上、北欧においてもこのように調整措置というのは分かれているということです。

3つ目としまして、損益通算ですね。二元的所得税のもとで損益通算がどのように扱われているかということです。フィンランドやスウェーデンは、資本所得について損失が出たという場合には、それに税率を乗じて、その計算された税額を勤労所得から控除すると。そしてノルウェーは、そもそも一般所得ということで、その20%までの税率が適用される対象はすべての所得ということになっておりますので、この一般所得の算定に当たりましては、その損失が資本所得から生じたものか、勤労所得から……勤労所得からマイナスというのはあり得ませんが、資本所得から生じたものであるということは重視されておりません。結局、結論を申しますと、北欧の国々、ピュアな二元的所得税をとっている国におきましては、少なくとも資本所得の税率の範囲内で損益通算を認める。それは相手が勤労所得であっても損益通算を認めるという仕組みになっておりまして、我が国やアメリカなどにおいて、またヨーロッパの国々において問題視されるチェリー・ピッキングというのは、あまり重視されていないということです。

その根拠は、先ほど紹介いたしましたように、そもそも所得の性格の転換が問題視されていないという根拠と重なるものと推測されます。

北欧型の二元的所得税は以上のような特徴を持っているわけですけれども、これがEU域内においてどのようなインパクトを持ったかということであります。資本市場の統合を進めるEU諸国にとりましては、このような北欧の二元的所得税は非常に大きなインパクトを持ったということです。しかしながら、その受容のあり方といたしましては、必ずしもその北欧型のピュアな二元的所得税を導入したわけではない。例えば特徴として、ここに挙げたように、資本所得について、源泉分離課税を採用している国、これ自体は多いと紹介されておりますけれども、それを子細に見ますと、先ほどピュアな二元的所得税の特徴として挙げたような仕組みまで踏み込んで採用している国は意外と少ないということです。例えば事業所得につきまして、資本性か勤労性かということを厳密に分離することまでは行わないという国がほとんどでありますし、損益通算については制限を設けて、勤労所得に対して損益通算をするということまで認めている国はほとんどないということです。後者につきましては、これは先ほど比例税率で資本所得に対して課税をする国が広がっていると申し上げましたが、その際の税率設定におきまして、北欧のように、累進課税の最低税率と一致させるといったこと、そのような強度な結びつきを課している国というものが、そもそもほとんどありませんので、損益通算を認めるということまでは踏み込めない状況になっております。

また、二重課税につきましては、先ほど申し上げましたように、二元的所得税かどうかということとは切り離して議論されているわけですけれども、EU諸国につきましては、EC条約(56条)上、資本移動の自由を実現しなければいけないという義務が課されておりますので、内外無差別のもとで二重課税調整を行わなければいけないという前提がありますから、必ずしも税収を減らしたからといって、自国の法人税との調整にならないといった、そういった事情も作用しているんだと思われます。

具体的にドイツを見た上で、ピュアな形とどのような違いを生じさせているかということでありますが、ドイツで二元的所得税が導入されたといいましても、そこで導入されたものは、所得税内部における議論というよりは、法人税率、法人税との関係でそのような仕組みへの移行が促されたという面が大きいように思います。すなわち、EU域内での企業誘致という問題、租税競争という問題を抱える中で、法人税率の引き下げを行うことが先行して決まりました。そういった問題意識が先行した上で、ではそれに対応した所得税制はいかにあるべきかといった発想に基づくものだというふうに思われます。すなわち、法人に投資をするか、それともトランスペアレントなエンティティに投資をするかという選択、あるいは対象となる金融商品を考えた場合の投資選択について中立性を維持しようとする。そういった発想から、所得税を二元的なものに組みかえる流れで改正が進められたというふうに思われます。

それを反映してということになるんだと思いますが、金融所得の切り出しについても次のような特徴を持っています。事業資産や大口株主は比例税率、25%の適用からは排除されるということになっております。また、二重課税調整措置は、これら比例税率が適用されるものについては廃止されたということですね。

また、金融所得につきましては、他の所得類型との損益通算は認められておりません。また、株式の譲渡損は区分されるということでして、これは改正に当たっての報告書段階におきましては、株式の譲渡損であっても金融所得内部での損益通算の対象とすべきだという議論があったはずですので、現実にこのような制度に結びついた背景までは、私の手持ちの教科書ではちょっとわからなかったので、また調べておきたいと思います(注:財政上の考慮から制限が設けられた)。

なお、課税方法としては源泉分離ということで、金融機関を通じた投資であれば、源泉分離で片づくということですね。

ただし、これはドイツの特徴ということになるかと思いますが、他の所得と合算した上で累進税率に載せた場合に、25%に達しない納税者につきましては申告を行い、その還付を受けることができるという仕組みになっております。

以上のように、ピュアな二元的所得税と呼ばれるものと、それをドイツがどのように受け入れたかということをご紹介いたしました上で、これは結論というよりも、感想めいたものでありますが、日本への示唆として次のようなことが考えられるかなというのを、スライドの8枚目からまとめております。

1つ目は、再分配の範囲・税率設定についてですが、そもそも発想として、ピュアな二元的所得税のように、再分配の対象は勤労所得であると割り切る仕組みと、ドイツ型のように、一定の所得、金融所得ですが、金融所得については、累進税率の適用にキャップをはめるという発想とでは、やはり制度設計が異なってくるんだということです。我が国の場合、前者ですね、ピュアな二元的所得税まで移行するということになりますと、そもそも再分配の範囲を勤労所得に限定するということについての大きな議論が必要になるところでしょうから、やはり後者のように、最高税率にキャップをはめる所得の範囲はどのようなものかということで政策判断をしていくことになるんだと思います。

その際には、やはり投資選択の中立性が中心となる考慮要素なんだろうというように思われます。ですので、適用税率にキャップをはめる対象としては、なるべく広く適用範囲を考えていくということになるかと思います。

しかしながら、その一方で、そのように限定された範囲で最高税率にキャップをはめる、最高税率までいかない範囲を決定することになりますと、ピュアな北欧型とは異なり、やはり執行上、損失を適切に把握できるかという問題は重視されることになりますので、損益通算の場面に当たっては、その客観性が確保されているといった執行上の考慮も影響してくることと思います。

税率設定につきましては、これは私の個人的な意見といたしましては、金融資産の多くが既にリタイヤした世代によって保有されているという実情が研究会資料の中で示されていますので、フローに注目をした再分配のプロセスである総合課税の枠組みに乗せて適用税率を考えることには疑問を持っています。すなわち、金融資産に対しての税率は、所得税、本来的意味における累進課税とは若干切り離して議論すべきではないかということを思っています。その再分配効果が検証された上での議論が行われることが前提であって、20%か10%かという選択に関しては、私は、現時点では特に強い意見までは持っておりません。

損益通算につきましては、先ほど制限の可能性があることを申し上げましたが、その際には、担税力を適切に把握するために、やはり損失の繰り越し、とりわけ金融機関の口座を通じて管理される損失のように、客観性が確保されている、正確性が確保されている損失については、なるべく長く、欲を言えば無期限に繰り越しを認めるということが望ましいのであろうと思います。

9枚目は、特に金融所得の課税ということではなくて、金融所得の範囲を決めるに当たって現行法がとっているアプローチは、先ほど紹介しましたピュアな二元的所得税のもとで採用されている分離の仕組みに比べますと、非常にシンプルではありますけれども、一定の合理性を持ったものとして今後も維持されるべきであろうと考えているということであります。

以上、雑駁で申しわけありませんけれども、私からの報告は終わらせて頂きます。

○神崎政策課長

どうもありがとうございました。

続きまして、湊委員からご説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○湊委員

今ご紹介にあずかりました湊でございます。20分程度で、私なりの意見を述べさせて頂きたいと思います。

お手元、資料が2つございます。1つが検討課題についてということで、もう一つが税法の抜粋というものが3枚ページでありますので、この2つでご説明させて頂きたいと思います。

まずメーンのほうの資料の1ページをめくって頂いたところに目次というところがございます。私なりには、1番と2番というのが、基本的には金融所得の一元化に関するアプローチで、しかも私は実務家でございますので、実務に接したところでの意見という形で整理させて頂いたものでございます。3番から6番につきましては、先週の金曜日に新成長戦略が発表されていますけれども、その中でも金融戦略というのが非常に重要視されておりまして、金融のフィルターの中で、重要項目として、あるいは制度として検討したほうがいいかなというものを4項目ほど入れておりまして、7番につきましては、この会がいろいろな検討課題を出すということなので、私なりにそれ以外に1項目つけさせて頂いたというふうな構成になっております。

1ページめくって頂いて、まず1つ目、2ページというところで、1番ですね。私なりに金融税制を考える場合に、高齢者という側面というのを自分なりには非常に問題にしております。というのも、事務局の方から発表ありましたように、金融資産の保有割合が非常に高齢者の方が高いということに対して、現状の複雑な金融税制から、現実ちょっと取り残されてきているという部分と、しかもIT等での教育がなかなか行き届かない層ということなので、現在最もケアが必要な層なのかなと考えておりまして、私としては高齢者に優しい金融税制というような切り口で検討しました。

その下に図がございますが、高齢者の方とお話をしていますと、基本的には年金という収入が入ってきますけれども、その入ってきたものに対して、生活資金としてどの程度日常残せばいいのかを気にされておられます。特にご高齢ですので、いつ病気になるかわからないという不安感の中での医療の負担、特に健康保険の窓口負担の割合に対して非常に高い関心を持っておられます。そして最終的には相続という部分の心配をされておられる。このような環境に囲まれながら、日々生活をしていらっしゃると思うんですが、検討課題の1として挙げたのが、上場株式について、今、譲渡損の繰り越しは3年間認められているんですけれども、この部分と健康保険の窓口負担割合の中立性というのが、現在確保されていないので、この部分についてのご提案でございます。。

具体的には、判定基準というのが真ん中辺に見えると思うんですが、最初は所得ですね。いわゆる利益の部分に関して、住民税の課税ベースですけれども、145万を超えると3割負担になると。その145万未満の方のみが1割負担ということで、これは夫婦だけで生活している方で、いわゆる配偶者控除をとった場合で換算して収入に直しますと、大体331万4,000円ぐらいの年金収入を超えると3割になるというような区切りになっております。これを超えると、基本3割負担なんですが、その後、2番、収入基準ということで、70歳以上の方については世帯収入520万円というところで、520万円未満であれば、申請によって1割負担になるということで、こちらはご覧になって頂くように、収入基準という切り口になっております。そうすると、今現実、現場でどういう形のことが起きているかといいますと、ちょうどここに入る方が非常に多いんですね。譲渡損の繰り越しをしたいと考えていらっしゃる方が、このスパンに入ってきますと、譲渡損の繰越控除の申告をして健康保険については、3割負担なってしまうことを受入れるか、あるいは譲渡損の申告をあきらめて1割負担を優先するかという二者択一の選択を迫られております。

したがいまして、私も高齢者の方の確定申告をすることが多いのですが、上場株式の譲渡損の繰越申告をすると、健康保険の窓口負担が3割になってしまう方がいらっしゃって、今後1年間は病気できないねと決意されて申告をされておられました。

この申告不要の対象となる上場株式の譲渡取引について申告すると、ほかにも配偶者控除がとれなくなるケ-スがありますが、こちらは売却益の申告不要の選択なんですね。一方譲渡損の場合、繰越控除の適用を受けるには、申告を選択をしないといけない。いわゆる利益が出ていない方々が譲渡損だけの繰り越しを選択する、これは税金上はベストなシナリオなんですけれども、実際の生活上はなかなか厳しい選択をされているわけです。この収入の範囲について、税務でも臨時的な収入と経常的な収入という切り口で、異なる仕組みを考えていますので、健康保険の基準においても、経常的な収入に限って、株式の売却や不動産譲渡等の非経常的な収入は除外というような切り口があると、非常に高齢者の方には優しい形が実現できるので、検討項目1で挙げさせて頂きました。

次のページ、3ページ目、2番目の検討項目なんですけれども、高齢者にとっては、検討項目でやはり確定申告の負担というのが非常に重いです。今、金融所得に関してですね。これについては、いろいろ申告不要の制度が導入されていますけれども、証券会社が異なると、その部分についてそれぞれ資料を収集して、通算をかける申告、あるいは繰越控除の申告という形で、必ず申告というフィルターを通らないといけないという形になっておりまして、改善策-1を見て頂きたいんですけれども、ここは森信先生のほうから、金融所得について通算させる、しかも国側で構築するという制度のご提案が第2回目のところの委員会であったと思うんですけれども、基本的にはこの繰越控除までを計算するシステムが必要なんですけれども、現状の所得税の計算体系からいくと、この下の括弧書きのところを見て頂きたいんですけれども、仮に医療費控除とか、それ以外の所得控除があった場合については、ここの部分を入れてからでないと還付させないという法律になっていまして、したがって、その還付をさせるにはどうしてもこの所得控除のフィルターを通るというところがネックになるなというのが、私の意見です。

次のページ、4ページ目を見て頂きたいんですけれども、したがって、その部分を深掘りをして書いたのが問題点-2です。現行の所得税の規定では、納税者が還付を受け取れるのは、還付申告をした場合と年末調整という、この2つのフィルターを通らないと、課税当局は認めておりません。この120条の条文、先ほどの一部抜粋というところでつけさせて頂いていますけれども、1ページ目ですね。ここに1から6、以下省略と書いてありますが、基本的にはその方の年間のそれぞれの所得、それから所得控除のすべての項目を載せなさいという条文になっております。

その次のページ、2ページ目を開けて頂くと、122条、還付等を受けるための申告という形で、居住者は、その年分の所得税につき、前ページで見た120条第1項の4号、6号、8号に掲げる金額がある場合にはと書いてあります、4、6、8です。

ちょっと前のページに戻って頂きまして、4号というのが外国税額控除の控除し切れなかった金額。6号が前号に掲げる金額の計算上控除し切れなかった源泉徴収税額がある場合。8号は省略していますが、8号というのは予定納税の部分です。したがって、金融所得で一元化させた場合に還付という部分については、この6号に該当した場合に122条で還付を受けることができるんですが、この122条の条文は、最後から2行目の行を見て頂きたいんですが、税務署長に対して120条第1項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出することができると書いてありまして、この1項各号というのが、すべての所得、すべての所得控除、これを入れないといけないという各号なんですね。ということは、122条の基本条文でいくと、金融所得の確認システムにおいてもこの分を入れないとなかなかワークしないということになります。

私のレジュメのほうに戻りますけれども、それが4ページの、上のポツ2つ目、ポツ3つ目になります。

ポツ4つ目は、今年から配当所得と株式の譲渡損が源泉徴収選択口座の中で損益通算できるようになったではないかと。ということは、還付もここであり得るのかなということも当然考えられるわけですけれども、この条文、よくよく読んでみると、還付はできない仕組みになっています。

どのように還付が無い形で条文がつくられているのかを見て頂きたいんですが、先ほどの条文の3ページ目を見て頂きたいんですが、租税特別措置法の37条の11の6、源泉徴収選択口座内配当に係る所得計算及び源泉徴収の特例という部分ですが、第6項に書いてあります。これの2行目、真ん中辺ですね。「徴収して納付すべき所得税の額を計算する場合において」と、まずここで納付すべき所得税額の計算する場合、どうするのかということが書いてあります。その下、更に3行下を見て頂きたい、「より」と書いてあるところですね。「より」の後ろです。「その年中に交付した源泉徴収選択口座内配当等の額の総額から当該各号に掲げる金額の合計額を控除した残額を」ですね。残額と書いてあります。ですから、ここで損益通算をかけているわけですけれども、すぐその下の行へ飛んでください。「交付する金額とみなして」と書いてあります。ここまでで結構だと思うんですが、いわゆる配当を交付するというのは、配当を支払っているという意味です。源泉税のルールというのは、支払ったときにすぐ源泉徴収して、納付をしないといけないんですね。したがって、配当があったら、配当を払ったときに源泉税納付、通算させたら還付という、本来制度がつくれるんですけれども、ここ見て頂くように、配当を支払っても、株式の譲渡損を引いて、又引いて、そこまでは配当を支払ったことと見なさないわけです。損益通算を行なった後、最後に配当を支払ったことと見なして源泉徴収しなさいという形で、源泉徴収のタイミングをずらす条文になっていまして、結果的にこの条文構成ですと、必ず還付なしになります。譲渡損が配当額を上回れば配当がなくなって、源泉もなしという条文にしていますので、結局還付がなしとなるわけです。

したがいまして、これもちょっと使えないということになりますと、4ページ目のほうに戻りますが、私としては、森信先生が何年も検討されてきた金融所得確認システムを前提にして、何とかこの金融所得のみで、いったん税額を確定して還付というラインに乗せられないかなということを、もう一回各法律を全部読み直して、いろいろ考えました。

その結果、4ページの改善策の2なんですけれども、やはりこれは190条の年末調整に準じた条文を引用しないと無理だなと。したがって、190条の条文は何と書いてあるかというと、これは給与所得だけで税額を確定させます。条文はちょっと時間がないので、2ページ目に載っていますが、最終的には何と書いてあるかというと、所得控除した後の金額を課税所得と見なしてという、見なし規定を入れているんですね。したがって、同じように考えると、損益通算した後の金融所得を課税所得と見なせれば、ここで税額を確定させることができ、還付までいけるなということを考えました。

こうしておけば、医療費控除とか雑損控除があるときはどうするのということなんですが、これは年末調整と一緒です。該当される方が個別に後で確定申告を行なう。必要のない人はそのまま確定という形で読みかえができるので、これであれば現実、現在の122条と190条の枠の中考えることが出来、還付申告の122条自体を変えるのは大変なので、新しく年末調整に準じたに見なし規定をつくれば何とかいけるのかなと。この辺まで入れないと、やはり高齢者の方々が申告の負担から解放されて、金融所得について親しみを持つということはなかなかできないかなということで挙げさせて頂きました。

その次、5ページ目なんですけれども、検討事項-3、やはり高齢者の方は、投資損失の切り捨てが非常に怖いと思います。というのも、経常的な収入が年金収入しかありませんので、万一損失が発生したときに、それを埋め合わすその他の経常的な収入がありませんので、リスクに対する意識が非常に高いと思われます。したがいまして、もしこういう高齢者の方々にもなじみ易く優しいものをつくるということであれば、まず投資所得というものを一元化させて、内部通算の拡大が必要だと。控除し切れないものについては、繰越期間というのをやはり拡大してあげないと厳しいのかなと。具体的には、ポツ4つ目ですけれども、アメリカ、イギリス、ドイツにおいては無制限、フランスにおいては10年という形になっていますので、やはり投資あるいは金融所得については、今、青色申告の繰越期間にしばられていますけれども、10年というぐらいのものが必要なのかなと。もし全体で無理であったとしても、65歳以上10年というのはどうかなというふうに考えています。

最後、高齢者に関しては、損益通算の範囲ですね。この金融所得の損と、公的年金の損益通算がもし認められるのであれば、先程の健康保険の窓口負担の部分についても、損益通算により、所得で落とせますので、ここもクリアできるのかなと思っていますので、この切り口での検討も必要かとと思っております。

それ以外の論点、6ページ目のほうにいきます。

金融所得の一元化に関することですが、ここは森信先生のほうから、金融所得一元化の後に、二元的所得税という所得を2つにする切り口の中で、これは先ほど吉村先生のほうからもご意見のあった、非上場株式の配当についてどうするのという部分が、やはり私としても気になります。現状、日本においては、以下3つの理由がありまして、非上場会社に関してはほとんど配当はしていません。1つは、総合課税であるために、法人税より税率が高くなってしまってメリットがない。それから、留保金課税が停止になっているので、ここもする必要がない。又配当を上げると株価が高くなってしまうので相続対策にならない。この3つで、積極的にやるメリットがないんですね。

これを配当所得で分離課税という形で持っていってしまうと、役員報酬を払わないで配当にすればいいという形で簡単に租税回避ができてしまうので、ここは何らかの手当てが必要かと。ただ、中小企業を見ていますと、従業員持株会をつくって、会社を本当にオープンに運営している、あるいは外部の株主を積極的に入れてきちんと配当しているという会社もかなりあります。したがいまして、一律に非上場会社だからというのは、やはりそういう会社にリスクテイクして出資していらっしゃる方々に対してどうなのかなと思いますので、オーナーグループについてどうするかという検討が必要とと思っております。

2番目が、不動産の譲渡損益を資本所得に含めるという部分なんですが、日本の譲渡の場合、居住用財産について非常に手厚い規定を持っております。したがいまして、この居住用不動産について、どういう形で考えたらいいかという部分が1つ目のテーマです。

それから同様に、各種の買換え特例、特別控除というものがありますので、その部分で圧縮した後になお、株式の譲渡損等の他の資本所得との内部通算を行うべきかどうかというような切り口についても検討が必要と思っております。

次、7ページ目からは、成長戦略に合わせて、金融の分野で何ができるのかという形で書かせて頂いた部分になります。

1つ目の部分になりますが、国内債権市場における海外投資家層の拡大という形で、ここの部分は振替国債、それから振替地方債、それから今年度の改正で、社債についても非居住者、外国法人については源泉税が非課税という規定が入りましたけれども、この海外投資家という範囲が限定されておりまして、海外であればパートナーシップ等がこの資金の出し手という部分になると思うんですけれども、こういった海外の事業体からの出資、あるいは投資という部分については、現行の日本の所得税、法人税のところでは税法が整備されていないので、この辺はぜひパートナーシップ等の海外の事業体についての取扱いを明確化して門戸を広げたほうがいいというご提案が7ページ目でございます。

それから、8ページ目のほうになりますけれども、これは今、10%の軽減税率が20%に戻ったときに困るというテーマでございます。軽減税率廃止に伴って、租税条約の適用手続が非常に煩雑になると思っております。今、租税条約は軽減税率が大体10%です。日本の上場株式の場合、ちょうど10%なので、今は特に必要はないんですが、これが20%に戻ると、租税条約の届け出で軽減する必要があるということなんですが、現状、原則は投資家ごとに、あるいは銘柄ごとに、これは全部出していかないといけないという形になっております。措置法の9条の3の2の株式数比例配分方式を採用する場合には、銘柄ごとではなくて、いわゆる証券会社ごとという形にはなっておりますが、基本的には海外からという目で見ますと、この部分について、国内の支払者が出さないといけないとなっております。これに対する改善策ですが、米国では個別に出さなくても、課税庁から許可をとれば、グローバル・カストディアンですね、いわゆるグロ・カスが出すことによって、一律に取扱うことが可能となっているので、海外からの投資家であれば、グロ・カスで出して免除という規定の検討が望ましいと思っております。。これは振替国債について、既にグロ・カスがQFI、適格の外国仲介業者になるという方法が入っておりますので、同様な形で検討するのが現実的かなと思っております。

それから、9ページ目を開けて頂いて、今、不動産市場が非常に冷え込んでいるわけですけれども、この特定目的会社の課税の特例の機関投資家の範囲が、現状、金融商品取引法になった時点で、金商法のほうだけ適格機関投資家の範囲が広がっております。一方税法はそれに合わせて広がっていないというテーマでございまして、ここは改善策のところだけ読ませて頂きますが、機関投資家の範囲を金商法と同等の範囲まで拡大するというのが必要かなと。それから、海外の年金基金等については、適格機関投資家の範囲に含まれておりませんので、不動産ファイナンス市場を活性化させるということであれば、ここの部分の検討も必要ではないかという形で入れさせて頂きました。

それから、10ページ目のところですけれども、アップリートの税制の導入というテーマをご提案、あるいはご検討して頂きたいということで入れております。今、リート市場も、かなり冷え込んでおります。リートのデフォルトも起きているという状態で、これは改善策のところを見て頂くとわかるんですが、このアップリートというのは、リートの下にパートナーシップをいくつもぶら下げて、そこに不動産を保有させるというやり方になります。リート自体は不動産を持たず、不動産を持っている方は、このパートナーシップへの拠出時までは間接的保有を継続しているという立てつけで、譲渡所得税を繰延べます。日本においても、リートに直接拠出するのではなくて、リートの下に特定の事業体、いわゆる組合等を入れることによって、今のリートの仕組みを改善し、優良な不動産を所有している方が課税の繰延べという特典を使うことにより、不動産の有効活用を行ないやすい環境ができるのかなというふうに思っております。

現状、アメリカではほとんどがアップリートで運用しておりますし、このアップリ-トの制度設計を工夫すれば、リートの倒産隔離もできるのかなと思っているので、書かせて頂きました。

11ページ目になります。これは株式の買収手法という形で、公開買付のテーマでございます。問題点の1を見て頂きたいんですが、公開買付の対価は一般的には金銭が利用されますけれども、自社株を使って公開買付を行うことは現行法可能となっているんですが、当然、自社株を渡して、相手先の株を買収で取得すると、相手先では譲渡所得税がかかってしまうという形なので、ここを繰り延べできないかというテーマでございます。しかも譲渡所得税がかかるので、問題点の3つ目になりますが、この買付に応じた株主は、納税資金捻出のためにその株を売却することが予想されて、株価下落のリスクも抱えてしまうということで、なかなかうまくいきませんので、ここの部分について課税の繰り延べる制度が入ると、改善されるというテーマを挙げさせて頂きました。

それから、12ページ目、最後になりますけれども、有価証券投資、今まで個人所得税の二重課税の話が出てきておりますが、法人においても二重課税の問題がございまして、配当に関する源泉所得税については、自社が保有していた期間だけしか源泉税が控除できません。したがって、受け取った配当全額に対して源泉所得税がかかるんですけれども、それが保有期間に対応した部分しか控除できないと。したがって、控除できない部分は二重課税になっておりますので、この部分についてもやはり源泉税を支払っている以上、二重課税の排除の観点からは、全額控除が必要ではないかというテーマになります。

ちょっと長くなってしまいましたが、以上になります。

○神崎政策課長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、太田委員からご説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○太田委員

私の方では、資料3と記載された「わが国資本市場強化のための税制改革」と題するレジュメを基に、20分程度でお話をさせて頂ければと思います。

私の今回のプレゼンテーションにおけるスタンスですが、今まで学者の先生方や専門家の方々から色々なプレゼンテーションを頂きましたので、それについて実務家の立場から、若干感想めいた形ではありますが、私の考えをまとめさせて頂きました。

基本的に3つの視点から物事を考えてみたいと思っております。

1つが、短期的な施策と中長期的な政策目標との峻別という視点、2つ目が、資本市場活性化のための政策誘導措置としての税制という視点、それから3つ目が、海外から我が国への投資促進という視点でございます。この3つの視点から考えてみたいと思っております。

まず最初の短期的施策と中長期的政策目標との峻別のところでございますけれども、色々な先生方のプレゼンテーションをお伺いしておりますと、金融所得一体課税の導入や配当の二重課税問題の解消については、非常に理論的なご説明があり、なるほどと頷けるところが多々あるのですが、他方で、どうも聞いておりますと、理論的に解決すべき課題も多いのではないかというように考えております。従いまして、金融所得一体課税の導入や配当の二重課税問題の解消は、中長期的な目標としては妥当なのだろうと考えている訳でございますけれども、研究会の進め方ということでも当初から議論がありましたとおり、短期的な施策と中長期的目標とを少し分けて議論したほうが良いのではないかと考えております。短期的な施策としては、現状、そこまで細かな理論的な問題がない、上場株式の譲渡益・配当課税についての軽減税率をどのように取り扱うか、損失の繰越控除の可否及び期間をどのように取り扱うか等についてをまずは優先して検討すべきではないかとの感想を持ちました。

それから、2番目でございますけれども、政策誘導措置としての税制という観点から見た場合、私のような素人の眼からは、「貯蓄から投資へ」という目標が平成16年頃からここ何年も掲げられているにも拘わらず、依然として金融資産の大半は貯蓄に回されていて、リスク資産への投資は進んでいないように見受けられます。かかる現実に対してどのように対処すべきかという観点から致しますと、当面は政策誘導的にリスク資産への投資を促す税制を採用するという選択肢があり得るのではないかと思っております。

かかる立場を採用した場合、基本的には金融商品間における課税上の中立性を重視するという話である現在の金融所得一体課税の議論とは方向性を異にしますが、一定の期間、金融商品間における課税上の中立性を一定程度犠牲にしても、国がある特定の金融商品への投資を政策的に誘導するという政策は、それはそれで政策の選択としてはあり得るのではないかというように思っております。

そうしますと、経済の牽引車であるところの上場企業の成長を優先するという観点から、上場株式の譲渡益・配当課税についての軽減税率を当面維持することも、政策的には十分にジャスティファイされるのではないかと考えております。

この研究会では、「損益通算の範囲拡大がリスク資産への投資を促すことになる」という理論的な観点から、先生方に色々とご教授頂いている訳でございますが、前回の吉井委員のご報告にもありましたとおり、現状の我が国の個人投資家の実態を踏まえた場合に、これがどこまで理解されているかは甚だ疑問であると思っております。そうしますと、政策的な有効性としては、損益通算の範囲拡大よりも、軽減税率の方が現状においては高いというのがまだまだ実態なのではないかと思った次第でございます。

それから、3番目でございますけれども、レジュメの2ページ目にいって頂いて、成長戦略という観点から見た場合に、これまでの議論の中ではあまり出てきませんでしたが、海外からの我が国に対する投資を妨げているような税制上の要因があるのであれば、可能な限りこれを除去していくという視点も大事なのではないかと考えます。

次に、金融所得一体課税の議論については、短期的な施策としてはまだ少々議論が煮詰まっていない段階ではないかと思いましたので、私なりに感じた項目を幾つか並べております。

まず1つ目ですが、二元的所得課税を導入する場合には、上場株式の譲渡益・配当についての軽減税率を維持することは、基本的には難しいということになると理解しておりますが、それよりも各種の金融所得相互間の損益通算の拡大の方が果たして政策的に優先すべき課題なのかという点が、私にはよく得心がいきませんでした。

例えば、各国の状況を見ましても、前回、諸富委員のプレゼンでもご指摘がありましたとおり、スウェーデンが二元的所得課税を導入した背景には、当時、住宅ローンの利子控除がかな り濫用的に使われていて、高所得者層による租税回避的な裁定取引が横行していたため、かかる状況を是正するという目的があった訳でございますが、我が国ではこのような状況はございませんので、その意味ではスウェーデンとは状況が異なるのではないかと思っております。

それから、ドイツでも、2009年に投資所得一元課税制度が導入される前の状況を見ますと、株式譲渡については1年以内の投機的売買を除いては非課税であったので、この部分については、ある意味で増税という側面があったと理解しております。その意味でも、現在の我が国とは少々状況が異なる部分がやはりあるのではないかと思われます。

さらに、オランダのボックス・タックス制度が二元的所得課税の例として挙げられていましたが、これは私の理解では、資本性資産からの所得について、純資産額の4%をみなし収益として30%の比例税率で課税するというものです。これは即ち、純資産額に対する1.2%の税率の、いわゆる富裕税に等しいものですので、これも我が国で導入する場合には、執行上困難が伴うのではないかと思われます。

これらを諸々考えた場合に、我が国では本当にヨーロッパ諸国がいわゆる金融一体課税ないし二元的所得課税を導入した際に前提としていたようなキャピタル・フライトの問題というのは本当に深刻なのだろうかということを、感想として持ちました。我が国では、現状、金融資産が「国内に」「貯蓄に著しく偏った形で」貯め込まれているということが問題なのであって、幸か不幸かEUのような形で資本移動が自由化されている訳ではありませんし、通貨統合されている訳でもありませんので、この資本逃避の問題よりも、「貯蓄から投資へ」というスローガンをいかに推し進めていくべきかということを中心に議論すべきではないかと思います。

金融所得一体課税の議論では、金融商品間における課税の中立性が重視されるため、預貯金利子と株式投資等との間における課税上の取扱いの同一化が志向されることになる訳でございますけれども、これは本当に「貯蓄から投資へ」という動きと整合しているのだろうかとやや疑問に思います。

それから、我が国の個人投資家の実態については、実証研究が必要なのかもしれませんが、我が国においては、金融商品間における課税上の中立性が要請される経済的な実態が本当に存在するのだろうかと感じております。即ち、我が国では、実態として、特定の金融商品への選好が強い個人投資家が大部分なのではないかということです。前回、吉井委員のプレゼンで、CFPの方へのアンケート結果では、損益通算の範囲拡大よりも軽減税率の維持が望ましいとする回答が60%であったとか、個人投資家へのアンケート結果では、約半数が損益通算の範囲の拡大は「わからない」と回答したとのご報告があった訳でございますけれども、これをあまり知識がないからと馬鹿にするのはたやすいことですが、実態は実態として、これが現実であることは認めざるを得ないのではないかと思います。そうしますと、個人投資家の中で特定の金融商品への選好が強い投資家が大部分なのであれば、金融商品間における水平的な損益通算の拡大よりも、同一の金融商品についてのクロノロジカルな損益通算の拡大、即ち、繰越控除期間の伸長や、場合によっては繰戻還付制度の創設といった事項を、政策課題としては優先するということもあり得るのではないかと考えた次第でございます。

それから、二元的所得税を導入する場合、本日の吉村先生の発表等にもございましたけれども、税率の設定をどうするかについては、未だ議論が定まっていないように感じました。

例えば、スウェーデンでは、資本所得に対する税率が、勤労所得に対する累進税率の最低限である30%に設定されているところ、法人実効税率は26.3%ですから、ほぼこれに合わせられているといえるかと思いますが、勤労所得者の大部分はこの30%の税率のブラケットに入っているといわれております。また、ドイツでは、15%から45%までの累進税率による課税がなされ、且つ法人実効税率が30.18%とされている中で、金融所得に対する税率については、連帯付加税を含めて26.375%とされ、大体累進税率の真ん中あたりに設定されているという状況のようです。そうしますと、我が国で二元的所得税を導入する場合には、法人税率引き下げの議論が現在あるようですが、例えばこれが30%程度に引き下げられると致しますと、金融所得に対する税率は、現在、多くの金融商品について適用されている20%よりも引き上げられることになる可能性があるように思います。その場合、それは資本市場の強化にとって良いことなのかということがやや疑問であるように感じます。

さらに、レジュメ4ページ目のマル8ですが、二元的所得税を導入する場合に、議論としては、補完税としての資産保有課税が導入されることになる可能性があるのではないかということです。スウェーデンにおいても、現在、富裕税は廃止されていますけれども、中道左派連合は、富裕税を復活させると主張しているようですし、こういう議論についても目配りが必要ではないかと思った次第です。

最後に、スウェーデン型とドイツ型のいずれを選択するかに関して、不動産所得をどうするのかという点についても詰めが必要ではないかと感じます。

以上、諸々考えると、様々な問題点が存在しておりますので、私個人としては、どのように考えるべきか迷うところが多いのですが、二元的所得課税の導入については、やはり中長期的目標として考えた方が良いのではないかというのが私の個人的な感想でございます。

次に、レジュメ4ページ目の3、配当の二重課税問題の処理についてです。この点に関しては、前回、吉井委員がご提言されていました配当所得の2分の1控除方式が実際的な解決として優れていると感じましたが、私は、理論的には、やはりインピュテーション方式が最も優れていると思っております。

ヨーロッパでは、近年インピュテーション方式が廃れてきているという状況がある訳ですけれども、これは、この方式が資本移動の自由を保障するEU憲章に違反するとのEU裁判所の判決が出されたために、EU各国でインピュテーション方式をギブアップする国が増えてきたということだと理解しております。我が国ではかかる状況はありませんので、インピュテーション方式の採用を真剣に検討しても良いのではないかと思っております。

ただ、現在の株式譲渡益・配当の軽減税率が維持されている状況下では、敢えてこの配当の二重課税問題に取り組む必要もないと思われます。むしろ企業の競争力強化の観点から見ますと、これは法人税の話ではございますが、企業間配当については、持株比率に拘わらず、受取配当の全額ないし95%につき益金不算入を認めるべきではないかと思うのです。我が国では、現状、発行済株式総数の25%以上を6カ月以上保有していなければ、受取配当の50%しか益金不算入を認められていない訳ですけれども、レジュメの末尾に記載した表にありますとおり、受取配当については、それこそイギリスやフランスでは全額益金不算入ですし、ドイツも95%益金不算入でございます。同様に、我が国においても、企業間配当については、持株比率に拘わらず、受取配当の全額ないし95%について益金不算入を認めるという方策を、配当の二重課税問題の処理のファーストステップとして検討するのが良いのではないかと思います。

それから、レジュメの5ページ目以下が、具体的な政策の話になります。

まず、「貯蓄から投資へ」を実現する施策についてですが、先ほど来述べておりますとおり、上場株式の譲渡益・配当課税についての軽減税率は、しばらく維持した方が良いのではないかと思います。

次に、こちらも先ほど申し上げましたけれども、クロノロジカルな意味での損益通算の拡大が非常に重要ではないかと思いますので、これは湊委員の本日のご発表でもありましたけれども、繰越控除期間をフランス並みに10年間に伸長するということを考えても良いのではないかと思います。

さらに、第1回の研究会の際に、金融庁の方から、公社債の利子・譲渡所得についての課税方式を申告分離として、相互に損益通算を可能にする方向で検討するとのご報告がございましたけれども、この範囲で損益通算を可能にすることについては、特段異論もないかと思いますので、これについては宜しいのではないかと考えております。

レジュメの5ページ目の4マル4は、これも湊委員の発表と同じでございますけれども、エクスチェンジ・テンダー・オファーに応じた株主については、譲渡所得の課税繰延べを可能にするという措置が必要なのではないかと思います。現在、株式の交換による買収については、100%買収であれば株式交換という手法があり、株式交換であれば課税の繰延べが認められている訳ですが、これだと100%の買収しかできませんので、株式を対価にターゲットとなる会社の過半数あるいは3分の2の買収を行うという場合には、現状、対象会社の株主には課税繰延べが認められていないことになります。そこで、かかる場合にも課税繰延べが認められるようにするのも良いのではないかと思う訳です。現在、金融庁においてはコーポレート・ガバナンス連絡会議が本会議とは別に設定されていますけれども、こちらの会議でもエクスチェンジ・テンダー・オファーについての規制緩和が議論されていますので、当該提案は、かかる議論とも整合的なのではないかと思います。

それから、最後のマル5ですが、ライツ・イシューについても、コーポレート・ガバナンス連絡会議において更なる規制緩和が必要かどうかが議論されています。これとの関係では、新株予約権の無償割当てによって割り当てられた上場新株予約権についても、特定口座に受け入れることを可能にすることが必要ではないかと思っております。

最後、レジュメの6ページ目の5「海外からわが国への投資促進のための措置」ということですが、(1)は湊委員と全く同じでございます。現在の非居住者債券所得非課税制度の下においては、パートナーシップが債券を保有している場合に、非課税になるかどうか明らかではありません。特にLPSについては、現在、その法的性格が法人か組合かについて東京高裁で争われている状況だと思いますけれども、この辺りが不明確なので、ここを明確化すべきではないかということでございます。

それから、(2)は、海外からのファンド投資の促進という観点から、実務家として色々見聞しているところを申し上げたいと思います。今まで組合で投資をした場合には、日本にPEがあると見なされることになっていた訳ですけれども、平成21年度税制改正により、一定の要件を満たす場合には日本にPEを有しないものとされ、源泉徴収等の必要がなくなるという特例が規定されたと承知しております。しかしながら、この要件がかなり厳しいとの意見をよく耳にします。「特定外国組合員」に該当するための要件としては、マル1LPであること、マル2投資組合の業務を執行しないこと、マル3持分割合が25%未満であること、マル4無限責任組合員と特殊の関係にある者でないこと、マル5国内に投資組合事業以外に係る事業のPEを有しないことの5つが要求されている訳ですが、中でも、マル2の投資組合の業務を執行しないことという要件が厳しいとの声を、色々な方から伺っております。特に、単なるモニタリングを行う場合や、アドバイザリー・コミッティーのような機関を通じて、業務執行に対して一定の同意権等があるというだけの場合でも、業務執行を行っているとして、日本にPEがあると見なされることがあり、これが日本に対する投資を阻害しているという声を頻繁に聞きますので、この点について一定の措置を講じることができないものかと考えております。

最後も似たような話なのですが、いわゆる事業譲渡類似株式の判定に関してです。現在、国内の株式の25%以上を所有している人が当該株式を年間5%以上譲渡した場合には、いわゆる事業譲渡類似株式の譲渡益課税として、日本にPEを有しない投資家でも課税対象となるのですが、これについても平成21年度税制改正で、「25%以上所有、5%以上譲渡」に該当するか否かの判定が、ファンド単位から投資家単位で行われることになりました。これによって、課税の範囲は限定されたことになる訳ですけれども、投資家単位で判断してもらうための要件として、やはり先ほどの特定外国組合員に課されている要件と同様の要件が課されています。そこで、(2)の場合と同様に、投資組合の業務を執行しないことという要件を満たすことが、実務上は結構難しいということになります。LPであっても、業務がどのように行われているかのモニタリング程度は最低限必要であり、全てを無限責任組合員だけに任せる訳にもいかないという実態があるものですから、かかる最低限のモニタリングをするだけということであれば、業務執行には該当しないというような形で、これは法律か、政令か、通達かわかりませんが、何らかの手当てによって、PE認定がなされる場合を限定して頂くことができれば、海外からの投資ファンドを通じた資金流入というのも期待できるのではないかと思っております。

以上でございます。

○神崎政策課長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのお三方のご説明に対しまして、ご質問を含め、ご議論をお願いいたしたいと存じますが、時間の制約がございますので、ご発言は短めにお願いできればと思います。大崎委員。

○大崎委員

すみません、私ちょっと、もう10分ぐらいしたら退席させて頂かなければいけないもので、図々しく発言だけ勝手にして引き上げちゃいますが。

ちょっと申し上げたいんですが、まず湊委員のお話にありました、高齢者に優しい金融税制という、非常に具体的なご指摘を頂いて、これは私も全く賛成でございまして、こういった点については何とか税制を図る提案をしていかなきゃいかんなと思った次第です。

それから、太田委員のご発言の中で、2点、やや違和感を持った点がございまして、1つは、損益通算の拡大ということと軽減税率を維持するかどうかというのが、何か二者択一のようなイメージで語られてしまっていたような気がするんですが、私はこれはもちろん、長期的には二者択一かもしれないけれども、短期的にはそうではないのではないかと思っておりまして、現実に今度配当が損益通算に入ってきたということとか、あるいは、今、雑所得になっている各種金融商品を源泉分離の世界へ取り込んでいくというような形での損益通算の拡大は、軽減税率を維持したままでも十分にやるべきことではないかと思っておりまして、ここはあまり厳しく考える必要はないのかなと思った次第です。

それから、もう一点は、インピュテーションについてなんですが、これは確かにEUでどういう理由でなくなったかというのはおっしゃるとおりだと思うんですけれども、これやっぱり申告が前提じゃないと、このインピュテーションというのは採用できないと思いますので、せっかく申告不要の世界を特定口座を通じて広げていこうというときに、インピュテーション方式を取り入れるという提案は、私はよくないのではないかと思います。

それから、もう一点だけですが、湊委員、太田委員からご指摘があったさまざまな、非常に具体的な問題、PEの話でありますとか、債券の現状の話でありますとか、租税条約の手続の話でありますとか、これらいずれも非常に重要だと思います。これらを通じて言えることは、要するに海外からの投資を呼び込む上での障害になり得るということだと思いますので、ちょうど新成長戦略でも、新金融立国とか、国を開くとか、そういう言葉が入ったことでもございますので、ぜひこれは金融庁の1つの柱として、そういう観点から改めて税制を見直すと、まだこんな問題があるというようなことをピックアップして頂けるといいのかなと思った次第でございます。

○神崎政策課長

島本委員。

○島本委員

じゃ、手短に。

マーケットアナリストとしてコメントさせて頂きます。湊委員と太田委員も論及された国内債の海外投資家に対する非課税措置について、ちょっと補足させて頂きますと、マーケットから見ていると、ここ数年間の金融庁なり主税局のご努力で随分改善してきたと評価することが出来ます。ただ、実際には海外保有比率がそういう制度設計に連動しているかというと、どちらかというと金利水準に連動してきていまして、2003年の一番金利が低いときには比率が低くて、金利上昇とともに海外の保有比率も高まって、ここに来てまたデフレで金利が下がったことで保有比率もまた下がっていると、こういう展開を示しています。

ただ、これは逆のインプリケーションとしては、中期的に展望すると、高齢化に伴って、貯蓄は減って国債は増えていくわけですから、いずれ金利上昇とともに、どこかで海外からのファイナンスにより依存せざるを得ないというマクロな実態があるわけで、この間口を広げる努力というのは常に怠れないなというのが私の印象です。

あと、太田委員の資本課税を低くすべきという点も、これは私、マーケットアナリストという立場から、マクロ政策的にも全く賛成なのは言うまでもないわけですが、ただ、二元的所得税との関連については、資本課税を低くすることで、整合性を取るという考え方もあると思います。つまり、いずれ法人税率も下げていくという方向性と合わせる形で、労働と資本のめり張りをつけるという考え方もあるはずです。また冒頭にお話しされた吉村委員の、北欧で二元的所得税が導入されて、それなりに成果も出ているというような話との関連で、関連するかどうかはともかく、ちょっと今の北欧経済に対するマーケットの評価というのも、少し最後にお話しさせて頂きます。ユーロ危機というのが、今年に入って市場の非常に大きなテーマなんですが、こんな中で、北欧経済というのはたまたまかもしれませんが、今、逆に評価されています。例えば、最近はやりのCDSプレミアム、これはソブリンのデフォルトリスクを見る指標でですが、最近の水準を見ると、ギリシャはもう七、八百、スペインが二、三百というオーダーなのに対して、ノルウェーとかスウェーデンというのはドイツ並みの三、四十とかそれ以下ぐらいで、マーケットでは財政経済政策がうまくいっているという評価になっています。

日本へのインプリケーションも幾つかありまして、例えば先行して金融危機を経験したとか、高齢化社会であるということは、共通点と言えます。もちろん、この手の議論というのは、また状況が変わればガラッと変わることもあり得るんでしょうが、社会保障と競争政策のバランスが比較的うまくいった例として、北欧モデルがマーケットで評価されている面があります。そこに資本所得課税を低くしてきた、この二元所得税という税体系が影響しているなら、ここは非常に参考になる面があるなと、改めてそういう印象を持ちました。

以上です。

○神崎政策課長

森信委員。

○森信委員

ちょっと手短にコメントだけ申し上げます。

湊委員の問題提起されたのは、実は非常に大きな問題だと思います。要するに、金融所得というものを考えるときに、一方で社会保障制度があり、所得と連動するような制度がある中で、この分離課税を所得との関係でどう考えていくのかということですね。

例えば、私は給付付き税額控除というのを提案しておりますが、そのときに要件として、一定の所得以下だけれど、金融所得がたくさんあると。つまり所得要件ではオーケーだけれども、金融所得というものが相当程度ある、そういう人をどう考えるかといったときに、排除できるような仕組みを持っておく必要がある。そうすれば、金融所得というものを分離にしながらも、こういうふうないろんな社会保障制度の中につなげるように、どこかでチェックできるようなシステムを考えておかなければいけないという意味において、この問題提起は悩ましい問題で重要だと思います。

それからもう一つ、太田委員のご報告については、非常に違和感を感じました。まず、このようにすべきであるという大きな考え方の柱がなくて、しかも税率に惑わされる投資家の誤解を利用するような、非常に志の低い提言だという感じがしてがっかりしました。

それからもう一つ、インピュテーションの問題は、EU憲章に違反するというのが直接の動機ではありますが、インピュテーションの廃止は、税制が複雑だという点に大きな理由があります。フランス、ドイツはずっとこの複雑性の税制をどうするかということで議論をしておりましたので、EU憲章違反、という判決が出た際に、もっけの幸いという形で廃止したということです。

それからもう一つ、PEの問題は、国家の課税権の問題なんですね。PEをどんどん外していけば、日本の課税権はますます縮小していくわけです。それで結局何が起きるかというと、海外のファンドや投資家が、わが国で収益を上げながら税を負担しないということです。マーケットの振興になるからいいではないかという立場は1つあるかもしれませんが、一方では我が国としてそれなりの課税権はしっかり確保していくというのは、金融庁として持つべき重要な視点だと思います。したがって、毎年毎年、安易にPEを緩めて課税権を放棄していくということは、日本国としてはあまり望ましくない対応ではないと思います。

以上です。

○神崎政策課長

小幡委員、お願いします。

○小幡委員

すみません、森信委員に怒られそうなんですけれども、高校生みたいな質問を3つしたいと思います。

まず1つ目は、二元的所得税は、2回目を休んでしまったせいかもしれませんけれども、基本的な仕組みが私はよくわかっていないので、事務方でもいいんですけれども、何か出来合いの資料や何かで読むべきものを教えて頂ければと思います。今、ネットで検索したところ、森信委員の2002年の『フィナンシャルレビュー』を、今ちょっと読んでいたんですけれども、それ以外に何かあれば教えてくださいということです。

2つ目は、その限られた知識の中であれですと、資産課税を、先ほど太田委員のお話にもありましたが、強化しているという、その分強化しているということらしいんですけれども、現状、ノルウェー等について、基本的にどうなっているのかということをご存じの方に教えて頂きたい。

3つ目は、その限られた知識でまた恐縮なんですけれども、資本課税に関して、スウェーデン等北欧では、高い税率で課税して、それに対する課税回避行動が膨らんでいて、かついろんな個別の優遇措置があったため、複雑になっていたために、それをタックスベースで広げて簡素化して、低くして、資本逃避を防止するということだという理解なんですけれども、そうだとすると、日本の場合、その場合にどうしても土地を利用したさまざまな、相続税を含めた課税回避行動、そして個別の優遇措置というのは、土地に対して非常に複雑な税制になっていると思うんですけれども、そうなるとやっぱり二元的所得税のときに、不動産、土地に関して、これを金融所得、あるいは同じようなカテゴリーとして入れなければいけないと思うんですけれども、北欧で実施されているときは、その不動産、土地に対してはどのような対策というか、扱いがなされているのかということを、ご存じであれば教えて頂きたいということです。

どなたに聞いていいのか、ちょっとわからないんですが。

○神崎政策課長

それでは、今の小幡委員からのご質問に対して、もしご回答頂ければ。いかがですか。

○田村大臣政務官

説明していたらきりがないですからね、先生方の。部分的にでももしお答え頂けるんでしたら。

○吉村委員

二元的所得税がどういうものかという一般的な説明は、もうこのことで非常に長く研究されている森信先生に譲ることとしまして、3点目の土地の扱いですけれども、二元的所得税では、不動産から生じてくる所得につきましては、比例のほうですね、資本所得扱いで切り離すということになっております。この点の経緯は太田委員の報告の中でも、諸富委員の報告を紹介する形で今日取り上げられていましたけれども、そもそも家を買うときにローンを組んで、そのローンの利子を所得金額から控除できていたという従来のあり方を改めることが二元的所得税導入の動機の一つでした。むしろそういった不動産絡みの損益を通常の勤労所得から切り離すということが1つの眼目でしたので、やはりそれは累進課税の世界からは出ていってもらったということになるんだと思います。

あとの点は森信委員のほうに。

○森信委員

じゃ、簡単に補足だけします。

二元的所得税というのは、精緻な所得税理論に裏づけられたものというよりは、現実的な税制として構築されているわけですね。それは先ほど吉村さんが言いましたように、課税理論としては、包括的所得税に代わるものとして支出税が注目を浴びました。これは、消費課税の一種で、金融所得は全部非課税になるわけですね。しかし金融所得を全部非課税にするのは、政治的にはもたないということで、消費課税のフレーバーを取りながらも、金融所得についてはとりあえず分離して、低率で、しかし源泉地でがっちり課税しようということで二元的所得税が導入された。対症療法的に導入された税制です。しかしそれがだんだんドイツとかオランダとか、いろんなところで、むしろ自分の国の実情に合っているではないかということで広まっていき、今では多くの国が導入しており、改めて評価され直している、という税制です。基本的には資本というものに対してなるべく軽い税制にして、資本がなるべく逃げないように、あるいは高齢化で貴重な貯蓄に対して、あまり負荷をかけないようにして、貯蓄も促進し、経済成長につなげていこう、そういった非常に現実的・政策的な税制であるということだと思います。

○田村大臣政務官

土居先生が編纂なさった本には出ていました。森信先生が書いていらっしゃるんでしたっけ。

○吉村委員

そうですね。

○田村大臣政務官

ですね。まさに最近、私、土居先生が編纂して、そこには森信先生だけでしたっけ、このメンバーでは。あと、今日ご欠席の諸富先生が編纂なさって、そこで吉村先生も書いていらっしゃいましたけれども、あの正式名称は何でしたか。

○吉村委員

そうですね、京大のシンポジウムをまとめたやつですよね。何というタイトルかちょっと失念してしまいましたが(諸富徹編著『グローバル時代の税制改革―公平性と財源確保の相克―』(ミネルヴァ書房))

○田村大臣政務官

それも今年出た本ですので、諸富先生の名前と、税制改革とで検索すれば、かなり出てきますので、私もそれで諸富先生が環境税だけではないというのを知ったという経緯もありまして、その2つは少なくとも大いにご参考になると思います。

○土居委員

コメントなんですけれども、よろしいですか。

発表ありがとうございました。吉村先生の発表がちょっと聞けませんで、申しわけありませんけれども、ご発表を伺っていて、方向性としては、例えば資本市場の活性化という問題、それから配当の二重課税をできるだけなくしていくということ、それから高齢者の課税の問題という、その問題提起としては非常に重要な論点で、これらについて、金融税制がどうあるべきかということは私も重要な問題だと思いました。

ただ、その対処については、もう少し洗練化した方法があるんじゃないかというふうに思いますので、少しコメントさせて頂きたいと思います。

まず、資本市場の活性化なんですけれども、軽減税率を維持することで資本市場が活性化できるのかということですね。今でさえ、ずっと資本軽減税率が適用されているわけでして、さらにこれから今よりも活性化しようということであれば、税率を下げるということしか、税率では対応できないということになってしまいます。ところが、税率を下げると税収が減るわけですし、軽減税率のまま損益通算を拡大するということになれば、これまた税収が下がるわけです。ですから、税収を大幅に減税するということはできないという制約を持っている中で、いかにリスク資産のほうに投資を向けていくかということになれば、税率を上げつつ、損益通算の範囲を拡大するという形で対応するという形にしか、なかなかなりにくいのではないかというような印象があります。

そうすると、私も前回申し上げたように、基本的には資本市場を活性化するということはとてもいいことで、税制面でもそういうことができればいいんですが、二段構え、前回申し上げたように、いきなり政策優遇の税制と言うと、門前払い的に、そんな優遇なんかしている余裕はないなどと言われてしまう可能性があるので、いやいや、優遇という話じゃないと。金融商品間の有利不利というものが、この税制によってもたらされているという問題を克服するというステップが、まず第一に必要でしょうと。別にそこは税収が増えるとか減るとか、そういう次元の問題ではなくて、金融やその投資行動にゆがみを与えるような今の税制があるとすれば、それは改めるべきではないかというところがまずあって、それで一歩ゲインを得て、さらにその先にもう一段優遇がないと、なかなかリスク資産への投資というものが運用がされないということであれば、そこへさらにもう一段、リスク資産への投資を優遇するようなものをつけるという、そういう形にしておくと、1つのハードルが乗り越えられなくても、もう一つのハードルは乗り越えられるだろうというような印象を持っているということです。

それから、2つ目の配当の二重課税のところなんですけれども、私も配当の二重課税というのはできるだけ解消させるべきだと思うんですが、いきなり2分の1を控除するという話が突然出てくると、何で2分の1なんだとか、極端に言えば、私が仮にこれ導入されたときに、海外の公共経済学者の、財政学者の方々から、あなたのところ2分の1控除になったけれども、何で2分の1なのといって、さあよくわかりません、まあ何かエイヤと2分の1になったというふうにしか説明できないというようなことになったり、そういうようなこともありますし、さらには、前回もご紹介しましたけれども、税と配当政策との関連の中で、ニュー・ビューという考え方があって、配当所得課税を減税すると、今の株主に対して、ランプサム・トランスファーをするだけであって、投資を促すものにはならないという、そういう経済効果が認められていて、ニュー・ビューというものが割と現実的に企業行動を問われているんじゃないかという見解も世界にはあります。日本の事象分析にもあります。

そういう意味で言うと、配当経過という形で所得税で対応するという話ではなくて、むしろ法人税のほうで対応すると。法人税で対応し切れない分を、もし可能ならば、配当課税のところで対応するというような二段構え。だから、まずは法人税のほうで対応して頂くというところが、二重課税解消のまず1本目にある話ではないのかなというふうに思います。

それから、3点目の高齢者の課税の話も、これも非常に重要な問題で、ある意味で社会保障制度のゆがみをこっちのほうで、金融所得のほうで引き取らされているみたいなところがあって、こういうようなことは中立性を確保する意味でも、きちんと整合的に金融所得の申告のところで変なことが起こらないようにして頂きたいというふうには思うわけですけれども、それはそうなんですけれども、だからといって、軽減税率を見直すということをためらう話になるわけではなくて、むしろ高齢者の課税の問題で、むしろ例えば住民税の課税所得の中で、公的年金等控除が認められているがゆえに、これで課税所得が縮小しているということで、なぜか金融所得の部分も含めたところで課税所得に入れられて、それで保険料の多寡を判断するという変な話になっていると。だから、ここは湊委員ご提案のとおりで、私もいいと思うんですけれども、非経常的な収入を除外する。そのかわり給与だけではなくて、公的年金の給付もそうですけれども、これを入れた形の経常的な収入で保険料負担を判断するという話にするということなんだろうと思います。

ただ、1つだけ私が気になっているのは、高齢者に優しい金融税制というのはとてもよくわかるんですが、本来、ライフステージを考えたときに、経済学的に高齢者にリスク資産に投資をどしどしして頂いていいのかという問題が、実は経済学の中で指摘されております。ある種の皮肉なんですけれども、ワールドワイドを見ても、高齢者がリスク資産により多く投資しているなんていう現象があって、かつ日本の場合、さらにそれが顕著にあるという話なんですが、もう今後余命がわかっている、大体わかっている方々に、それほど就職したり失業したりするなんていう人生のリスクもあまり多くない方に、何ゆえ金融でリスクをとるのかと。もはや安定した資産運用でいいのではないかという。むしろリスクをとるべき人は若い人たちで、若い人たちがもっとリスク資産に投資するということを考えてはどうかというような話に、本来的にはなる話なんだけれども、何かいろいろな行動、ファイナンス理論とか、いろんな話があって、必ずしも実態はそうなっていないですねという、そういう話があるので、そういう意味で言うと、むしろ若い人にリスク投資を、リスク債に対する投資を促すというところも重要なんではないかと思います。

以上です。

○神崎政策課長

和泉委員、どうぞ。

○和泉委員

今日はありがとうございました。今、ほとんど土居先生がおっしゃったので、私に関係にあるところだけ、もう一度、重なる部分と、こういうのはどうでしょうということでお話をさせてください。

湊さんが指摘なさった高齢者の件に関して、私も日ごろ仕事をしている中で、いつも健康保険とか医療費の負担の話は、特にセカンドライフを迎えている方にお話ししているんですけれども、どうしても投資を抑制する話になってしまいます。例えば大家さんになっても、収入がたくたん入ってくると、医療費などの負担が上がりますよといったことを説明しますと、分配金も同じなんですけれども、やはり皆さんは、だったら投資を控えようかということになるので、かなり影響の大きい話だと思います。一般に暮らしている人から見ると、社会保障も税も自分の収入から取られるという意味では一緒のカテゴリーで、投資家側から見ると同じようなものなんですけれども、本来的には全然別なものですし、縦割りの制度にもなっているので、このご提言がトータルな形で説明されていることに対して、非常に意義深いと思いました。

土居先生から、高齢者は人的資産が減るので、本来、リスク許容度は下がるはずだから、こういう高齢者に優しい税制はどうなのかというご指摘がありましたが、これに関しては、確かに一方でそのとおりだけれども、逆に損益通算の幅を広げるということで、リスクを限定するというか、セーフティネットを張ることにもなるので、今回のご提言はいいのかなと思いました。

ただ、雑所得まで広げるという点については、とてもいいなと思いつつも、公的年金がそこに入るのかとか、経常的収入といった中に変額年金を含む個人年金も入るのかというところが、まだ整理ができていないので、もしまた機会がありましたら、ここのところをもう少し教えて頂きたいなと思いました。 それから、太田委員に関しては、非常に現実的な視点でのご意見だったので、驚くことが多く、また勇気のあるご発言だなと思いながら伺っていました。ただし、損益通算に関しては、一般の人が理解しにくいことであっても、あるいは政策的にとても有効であっても、やはり、あるべき姿みたいなものから逆算して考えていくべきではないかと。急に変えられないのであれば、少しずつ積み重ねて、短期的なもの、それから中長期的なものと段階を踏んで解決していくアプローチが、この研究会では美しいと思っているので、ここに関してはどうかなと感じた次第です。

この点に限らずなんですけれども、金融商品が一般の製品と違っているのは、目に見えないものだということまた、多くの方が経済の仕組みとか金融のことについてよくわからない中で、一般の人たちのニーズにこたえようとしていくと間違ったものが出てくるということがすごく多いと感じているんですね。税制も同じなんですけれども、目に見えなくて非常に複雑な仕組みの中で、短絡的でわかりやすい、軽減税率みたいなものは非常に受けがいい。表面的な金利が高いとか、分配金がたくさん出るとか、体の具合が悪くても入れる保険だとか、短期目線でわかりやすいものほど多くの人が反応する。でも、それにこたえた商品や制度をつくっていけばいくほど、正しいところから離れていって間違うことがあるので、こういった場面では、あまりニーズにこたえようとし過ぎないほうがいいのではないかと思いました。

最後に、そもそも個人が直接金融にかかわっていこうとすることは、今までの預金主体の行動というか、お金とのかかわりとは本質的に違うものであって、自立の象徴だと思うんですね。なので、損を限定してくれたり得をするための仕組みができたときには、多少ハードルが高くても、自ら勉強して取り入れていくべきだと。これは厳しい要望かもしれませんが、そう思っているんです。

そういう意味では私は確定申告も全員がすればいいのにと思っているぐらいなんです。それはあまりにハードルが高過ぎるとしても、日本人が自立をしていくための1つのチャンスであるというふうに、直接金融とのかかわりを捉えるのであれば、目先でわかりやすいとか、たやすいとかということに流されずに、方針を決めたいなと思いました。

損益通算に関してわからないという意見については、1つは告知不足ということもあると思うので、こういったことは一方で粘り強く伝えていくことが大切だとも思いました。

○田村大臣政務官

ちょうど、私もまさに確定申告のことを質問しようと思っておりましたら、和泉委員がおっしゃったのでちょうどいい流れになりましたけれども、今回、湊委員が資料の3ページで確定申告負担の軽減のところで、損益通算のシステムを国側でというふうにお書きになっていらっしゃって、前回諸富委員がたしか同じことを書いていらっしゃいましたよね、そのとき私中座をしていて、そのとき質問できなかったので、お二人に質問、お二人じゃなくてもいいんですが、やはり今、和泉委員がおっしゃったように、確定申告を全員でなくても、それこそ3年前に私も森信委員にご指導頂きながら、給付付き税額控除、還付付き税額控除というものを民主党で提言を出しましたけれども、まさにもう所得がない人にも申告を求めると。それは、要は還付が欲しければ申告をしろという、ある意味権利のようなものであります。権利ともとられるものでありまして、申告をしなければ還付がもらえないと。そこはある意味こういった、まさに、もちろんできるだけ簡単にするほうが、より貯蓄から投資へという一般論、政策誘導としてはそれは当たり前なんですけれども、国側としては、最近財源がと言われているトラウマもありまして、そもそもそんな簡単なシステムでは、なかなか恐らくないだろうと。金融機関を全部巻き込むとですね。そういう視点とともに、今後まさに給付付き税額控除、その前に、当然、納税者番号制度を導入をするという中で、ほかにもさまざまなシステムを税務署は整えなければいけないという中で、このシステムを国側で構築するというのが優先順位としてどうなのかというのは、お二人にお伺いをしたいと思います。

○森信委員

長い答えになるかもしれないんですが、私はまず、基本的には番号を入れて、正確な所得を捕捉し、なるべく自分で申告するような制度をつくっていきたいと考えています。イータックスとうまく組み合わせて、アメリカ型の全員申告システムをつくっていきたいと。ただ、一方で、金融所得については、特定口座と申告不要という、これは日本にしかない優れた課税インフラで、これを通じて申告することによって、金融所得に対する非常に簡便なシステムができると。それは高齢化の下で貴重になる貯蓄・資本を効率的に活用するという政策目的を持っているので、金融所得に関しては、申告分離と申告不要という形で進めていくのがいいのではないかというふうに、2つに分けて考えています。公平な税制と効率的な税制の両立とも言えましょう。

その中で、今政務官がおっしゃった、金融所得確認システムと我々は呼んでいますが、そういったものをどう使っていくかということなんですが、これは基本的に、本人確認された番号が必要だということです。もっとも、選択適用でいい、自分が2つ3つ、いろんなところに特定口座を持っている場合に、わざわざ税務署に行かなくても、金融機関間で自動的に相殺できる、そのために主たる口座を1つどこかの金融機関に登録しておいて、そこを中心に、異なる特定口座間で、本人確認された番号を通じて損益通算ができるようなシステムにしたらどうかと考えたわけです。それは選択適用でいいし、そんなに大きなシステムではないと思います。ただ、根っこの、じゃ本人確認するところの番号を何にするのかということになると、望ましいのは、住民票コードとくっつけることなので、そこのところは、今、民主党で別途検討されているところとつながっていくわけです。

○湊委員

今のご質問なんですが、私、申告納税制度を発展させるのが仕事としてやっている身としては、当然申告納税という制度が社会に普及するほうが、国の制度に対する関心が広まるという意味では、方向性は望ましいというふうに思っているんですが、これは給与所得者の方が、今、年末調整でやっているということが、申告納税制度に変わるというような方向性であれば、非常に賛成なんですね。いわゆる若い方からリタイヤメントまでの、その方々がこれからどういう国づくりをしていくかということに関心を持つと。日本の制度に関心を持つということでは賛成なんですけれども、実際に金融所得というのが少額で非常に大量性があると。自分で集計するのも非常に難しいというような、こういった特徴があって、実際、納税者の方が混乱しています。我々、申告を受け持つ人間も、所得が何所得なのかというのは、金融商品だけ見てもわからないんですね。

したがって、いざ申告しようとすると、証券会社等に全部聞いて、これは一体何なのかというところから入っていかないといけないというのが、我々でさえそうだということになると、一般の納税者としては、ほぼ、これからどんどん金融の商品が増えていって、金融所得というのを発展させていくというところでは、うまくしっくりこないと。したがって、ここはやはり金融所得を扱う金融機関で、中の改善策を持たないと、健全で発展しないだろうなという問題意識で、やはりこういったご提言、これは森信先生が書かれたものを、私としてもそう思っております。

ただ、これを国側で構築するのかどうかという部分については、森信先生が去年、一昨年、その前と書かれているところにも載っているんですが、やはり金融コングロマリット、いわゆる民間で構築するのはもちろん可能だと思うんですけれども、いわゆる弱小な金融機関、金融機関も規模がいろいろあります。その中で、そこに参加できないところも出てくるでしょうし、排除されるということも出てくると。せっかく理念はあっても、現実こういったものがつくれなければ全く何も動かないという形になると、しかも情報が共有されてしまうことへのデメリットも出てくるということになると、結果的には公的なところでやはり集計するというようなものがあると、実務をやっている人間としては、非常に健全な方向で、安心して金融所得というものが納税者として取り扱える方向性なんだろうなというふうに思っておりまして、原則、もちろん申告納税なんですが、この金融所得という性格を考えれば考えるほど、やはりこういったものが、仕組みが望ましいのかなというふうに思っております。

○神崎政策課長

ほかにご発言ございますでしょうか。武田委員。

○武田委員

すみません、私、あまりよく聞こえなかったので、すみませんが。どちらでも。

○神崎政策課長

じゃ、吉井委員からお願いします。

○吉井委員

納税システムについては、今、湊先生からご説明があったとおりかと思います。1つは、納税者の利便ということを1つ考えないといけないと。先般、10%税率の適用所得金額に上限をつけたときに、限度額を超過した場合に新たに申告を行う必要が生じました。その際に、申告の負担を負うということについて、かなり納税者サイドにアレルギーがあったということを考えると、やはり簡素な納税の仕組みというのをつくる必要があるかと思われます。

そのような仕組みは、金融機関同士で自助努力でできないことはないとは思うのですが、ただそれをやった場合に、非常にシステム的な負荷が重いということもありますし、情報の漏えいするリスクも高くなってくる、顧客の囲い込みという問題も生じるということを考えると、やはり国のサイドで何かそういったシステムを設けて頂いた方がよいのではないか、単に金融所得だけだともったいないということであれば、それをもっと幅広く活用していくという展開も考えて頂ければいいのかなというふうに思います。

それからあと、配当二重課税のところで、なぜ2分の1課税かという話がございましたけれども、2分の1課税で完全に調整できるかというと、実際には2分の1でも不十分な調整に留まりますので、そういった意味では理論的な根拠はないということかとは思いますが、現実的に10%税率という現状の税率から、一体化に移行するということを考えた場合の受け入れやすさということからすると、2分の1というところは1つの落としどころと考えられるのかなと。それ以上の意味というのは特段ないと思います。

確かに二重課税については、ニュー・ビューという考え方があるということですけれども、ニュー・ビューとオールド・ビューというのは、まだどちらが正しいか決着がついているという状況ではないと思います。仮に税率を20%にそろえられるとしても、法人段階での調整ということでは、ゼロ%にしないと完全な調整は無理ということですから、そういったことから考えると、やはり、個人の所得の段階でも何がしかの調整というのが必要になってくるのかなと、私は個人的にはそのように考えております。

以上でございます。

○神崎政策課長

では、武田委員、お願いします。

○武田委員

すみません、時間もかなり押してきたので、手短に3点を申し上げさせて頂きます。

各委員の方々には詳しいご解説を頂きましてありがとうございました。

私からのコメントは、主に太田委員のご発言に対してなんですけれども、3つほどございます。

まず1つ目が、最初のページにありました経済の牽引車である上場企業の成長を優先するということですが、先日、政府から発表された成長戦略の中でも触れられているように、やはり起業であるとか、あるいは新規参入の企業、こちらにリスクマネーを増やしていくということが目指されるべきというフレーズがありまして、それを考えると、目指すべき方向は、よりリスクマネーに資金が流れるように、損益通算の範囲を広げていくという視点だと考えられ、上場企業だけをターゲットにしていくといった姿勢についてはどうかと思います。ただ、もちろん税制上のさまざまなステップがあると思いますので、まずは上場企業からというところは理解できるのですが、長い目では、より成長性の高い企業へのリスクマネーの供給といったところに、少し重点を置いたほうがいいのではないかと考えています。

2つ目が、軽減税率の維持でございますけれども、これについては3つ視点が必要だと思っています。基本的には土居委員とも似たようなことですけれども、1つは財政全体で、今、軽減税率10%を維持していいのかという視点です。2つ目が、税の簡素化という視点でどうかということ。3つ目が、税制改革をこれから実施する中、つまり消費税の議論が出ていますし、法人税の議論も出ている中で、金融税制をどう位置づけるかという視点がやはり必要だということです。金融所得の実効税率を先ほどご提示頂きましたけれども、もし法人税率をそれに近い形まで下げていくということであれば、むしろそろうかもしれないとの捉え方もできると考えました。

最後3つ目ですが、キャピタル・フライトは日本では問題ないのではないか、EUとは違うのではないかという点です。確かに今のEUの立場と比較すると、日本は大分違うとは思うのですけれども、やはり長い目で見れば、あぐらをかいていられる状況ではないと思います。日本はデフレが続き、収益性も高まらない見込みの中でも、これまではホームバイアス志向で、資産の多くは国内にとどまっていましたが、これだけ新興国経済が立ち上がってくると、実際にその動きは進んでいると思いますけれども、海外資産への投資といった動きは、長い目で見ても進んでいくと予想されます。そうした中では、やはり日本でキャピタル・フライトは絶対起きないということを前提とするよりは、むしろ今後は起きる可能性が高まっていくというような視点が必要かと。もちろん外に投資するなという意味ではないですけれども、その視点は全く排除してはいけないのではないかと考えました。

以上です。

○神崎政策課長

もう時間でございますが、もしプレゼンテーション頂いた委員の方で何か最後にございましたら、ご発言頂ければ。次回もまだお時間がございますので、またそのときにご発言を頂ければと思いますので、もし最後、本当に何かということがあればあれですが、よろしいですか。

それでは、お時間、かなり超過いたしましたけれども、本日の研究会をここで終了いたしたいと思います。

次回以後は、論点整理のとりまとめに向けた議論ということでお願いしたいというふうに考えております。

次回会合でございますけれども、7月1日木曜日、14時から、この建物の9階にございます905B共用会議室にて開催を予定いたしております。

皆様、本日はお忙しい中ご出席頂きまして、誠にありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

総務企画局政策課総合政策室(内線3182、3716)

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