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どうも皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました金融・経済財政政策担当の副大臣を務めさせていただいております、内閣府の櫻田義孝でございます。本日は20分弱の時間でありますけれども、宜しくお願い申し上げます。 |
![]() 我が国では、人前でお金の話をすると真面目さに欠けるといったイメージを持つ人が多いのではないだろうかと思います。真面目という評価を得るには、どちらかというとお金に若干疎い、余りうるさくないぐらいの方がよいと思われています。しかし、私たちの小さい頃と現在とでは事情が異なってきており、お金がお金を生む時代となっています。そして、金融というものを単にお金の融通ということではなく、資産運用の対象としてみるような時代に変わってきたのではないだろうかなと思います。 金融庁では、昨年の3月から6月まで、金融経済教育懇談会を開催しましたが、やはり、お金というものを意外に知らない、基礎的な知識がまだまだ国民の中で育ってないような指摘がございました。こうした事実は様々な資料、データからも明らかでございます。15年の7月に公表されました金融広報中央委員会の「金融に関する消費者アンケート」の調査結果をみますと、71%の方が、株式や債券投資についてほとんど知識がないというようなデータがでております。また57%の方は、金融商品についてほとんど知識がない、31%の方は、保険・年金についてほとんど知識がないというような結果がでているところでございます。 しかしながら、世界に目を転じますと、日本人のような感覚を持っている人たちばかりではございません。日本では個人の金融資産に占める現金・預金の割合が53%ですが、アメリカでは約13%、日本と同じように敗戦国であったドイツについては36%となっており、日本は飛び抜けて安全性の高い現金・預金の割合が高いということがいえます。逆に、日本では債券・株式・投資信託の割合が16%と、アメリカの53%、ドイツの33%に比べて、極めて低いということがいわれます。やはり日本人は、世界の中でお金を利用する方法に疎い部類に属するということではないだろうかと思います。 そうした現状を踏まえ、金融経済教育の意義について2つの側面からお話したいと思います。1つは個人にとっての意義、もう1つは地域社会や日本のとっての意義です。 まず、私たち個人にとっての意義を申しますと、バブル崩壊後、今日に至る経済・社会の構造変化やこれに伴う金融環境の変化は、非常に大きなものとなっております。経済全体をみますと、右肩上がりの時代はもう既に終わり、終身雇用や年功序列といった雇用形態にも大きく変化がみられるところでございます。また、昨年4月にペイオフが解禁され、銀行に預けていても100%安心というわけではない時代に入っております。そうした中で、金融商品やサービスというものが大きく変わってきております。金融商品やサービスの高度化、あるいはITを含めた販売チャンネルの多様化というものが、急速に進展をしているところであります。 このような経済・社会・金融環境の変化のスピードは速く、個人の人生設計にも大きく影響を及ぼしつつあります。そのような中で、私たちが如何に賢く金融というものに親しむことができるかが、非常に大切になってくると思います。果実を得る機会が拡大している時代でございますので、皆様方におかれては、是非金融や経済に関わる様々な情報を入手、分析して、自らのニーズに基づいて金融商品を選択し、上手に資産を運用していただきたいと思います。 最近、景気回復や株価の上昇を受けて、あるいはネット取引が便利になったことを受けて、投資家の数が非常に増えているところでございます。そうした中、様々な書物も出ており、「一日でわかる株式投資」、「外国為替で楽して大儲け」というような、本も出版される時代となっています。そのような中、外国為替拠出金取引や未公開株、変額個人年金等を巡ってトラブルが多発しており、金融商品の持つリスクというものに気づかなかったり、騙されて損をしたりすることがないように、心掛けなければなりません。 このような状況を踏まえ、国民1人1人が賢くなるように、というのが我々の基本的な考え方であります。金融経済についての読み書き能力を身につけることが必要であろうと思っております。そして、1人1人が身につけた能力をもって、お金を活き活きと賢く使うということが、私たちの生活にとって以前より大切になっているのではないだろうかと思っております。従って、皆さん、金融や経済についての基礎知識を是非この機会に増やしていただければありがたいと思います。 次に地域社会や日本のとっての意義についてお話いたします。日本が今後とも健全な発展を続け、人々の生活が豊かになっていくためには、その原動力となるアイデアや情熱を持った人たちや次代を担う企業に対してお金をふんだんに出して、いろんな企業の行く末を選別しながら支援していくということが、非常に大切でございます。つまり、個人や機関投資家が様々な金融商品の選択を通じて、事業リスクの一部を負担しながら、個人や企業にお金を流していくということが大切でございます。お金を眠らせないで、できるだけ効果的な働き場所へ送り出すということが大切でございます。少し大げさなことをいうならば、お金の出し手1人1人が、金融経済についての基礎知識を身につけ、自らの判断でお金を活き活きと使っていくということにより、地域社会、日本、そして世界をも変える可能性を持っているということでございます。 それでは、お金を活き活き使うためには、必要な金融やその背景となる経済の基礎的な知識とはいったい何でありましょうか。今までのお話からもある程度は分かるように、単に金融商品に関する知識に止まらず、経済についての基本的なものの考え方、企業や家計の果たす役割、金融の動きといった幅広い内容を含んでいることを理解しなければなりません。 金融庁といたしましては、副教材の作成等を通じて、こうした内容を学校教育の中でもぜひ採り上げていただけるよう、進めているところでございます。 |
![]() 最初に、リスクとリターンというものについてお話させていただきたいと思いますが、まず金融商品はリスクとリターンを考えたときに、大きく4つに分類されることを知っておいていただきたいと思います。 1つ目は、元本が保証された商品でございます。普通預金・定期預金・郵便貯金・貸付信託等がこれにあたります。2つ目は、元本の保証はないが、安全性を重視した商品でございます。公社債投信・MMF等がこれにあたります。3つ目は、元本割れの可能性があるが、その分高い利益が期待できるような商品でございます。株式・株式投信・外貨預金・変額年金等がございます。4つ目は、元本以上に追加負担が生じる可能性がある商品でございます。いわゆる先物取引等がこれにあたります。 このように金融商品には、必ずリスクとリターンというものがつきまといます。リスクといいますと、一般には危険であるとか危ないとかという、そういうように理解されておりますが、金融におきましては「結果が分からない不確実な状態」というように解釈をしているわけであります。また、リターンについては、お金を運用したことで得られる結果、いわゆる利回りというふうに解釈をしております。一般にリスクが少なければそれだけリターンが少ないということがいわれておりますが、お金を運用する際には、リスクとリターンの組み合わせというものをよく考慮して、金融商品の選択をしなければなりません。 次に、自己責任ということについて申し上げます。正直なところ、株式や債券投資に不案内な方にとっては、いきなり「自己責任」といわれても、極めて違和感があるのではないだろうかと思っております。自己責任とはかみ砕いていけば、「納得の行くまで商品の説明を求めて、正しく理解して自分自身の判断で取引し、その結果について責任を持つ」ということだと思います。またその裏返しとして、私たち金融庁といえども、当事者同士が合意して行った公正な取引に対しては、口を挟むことができないということであります。 金融庁としては、国民の皆さんに自己責任を求めるとともに、環境整備に真剣に取り組んでいるところでございます。具体的には、適合性の原則の導入や不招請勧誘の禁止等を内容とする各種業法の改正や、元本割れが生ずるおそれがあるような場合には金融商品の販売業者に説明義務を課す、金融商品販売法の制定といった法の整備も行っているところでございます。また、保険金の不払いを起こしたような保険会社や、法令に反した外国為替拠出金取引業者に対する行政処分も行っているところでございます。 |
![]() 第1に、「知っているもの、分かるもので運用しましょう」ということです。世の中には数多くの運用対象がございますが、複雑なものもあります。時にはありそうもない利益を約束したり、ムシが良いお話があったりすると思いますが、分かったものだけ、理解できるものだけに手を出すということが重要ではないだろうかと思っております。 第2に、「目的に合った運用を行いましょう」ということです。リスクの高い金融商品は高いリターンが期待できる反面、元本が割れる可能性も高くなっておりますので、普段の暮らしや商売に必要なお金、事故や災害といった不測の事態に備えるお金を、ハイリスク・ハイリターンの投資に向けてはならないということでございます。また、住宅や教育のためなど目的がはっきりしている資金は、安全性の高い金融商品で運用するのが好ましいと思っております。 第3に、「リスクを分散しましょう」ということです。1つの金融商品に手持ちのお金をすべてつぎ込むということは極めて危険でありますし、万一、その金融商品が値下がりをすれば、大きな損害を被ることになります。したがって、買い入れ対象を分散したり、買い入れ時期をずらしたりして、リスクを分散することが大切ではないだろうかと思います。 第4に、「信頼できるプロを活用しましょう」ということです。自分1人で情報を集め、1から勉強するのは大変です。銀行や証券会社、保険会社、ファイナンシャルプランナー等非常に金融に関して明るいプロの方々の力を借りる、そして専門知識を活用するということが大切だと思います。しかし、世の中には自称プロや自称専門家だというような人がおりますので、プロといっても、信頼のできるプロの方に知恵をお借りするようにしていただけたらと思っております。 第5に、「騙されたら泣き寝入りをしない。諦めるのをやめましょう」ということであります。先ほど申し上げました通り、金融商品も他の商品と同じく、自己責任で買わなければなりません。したがって、買う前によく話を聞くことはもちろんですが、買った後にどうしても納得がいかないというようなことがあれば、やはりその担当者に最後まで突き詰めて、納得がいくまで説明を求めるということが大切でございます。自分だけでは手に負えないような問題もあろうかと思いますが、千葉にも消費生活センターや各業界団体の相談窓口が設けられておりますので、ぜひ積極的に活用していただきたいと思います。その相談窓口の場所につきましても、配付させていただきました資料に記載されておりますので、ぜひ利用していただきたいと思っております。また金融庁におきましても、金融サービス利用者相談室で相談を受け付けておりますので、ご相談いただければ相談員が対応させていただきたいと思っております。 以上、お金を運用する際の心構えを5つほど申し上げました。さらに詳しいことは後ほどパネルディスカッションの中でもご紹介があると思いますが、千葉県近隣にも金融知識の普及に取り組んでいる方がたくさんいらっしゃいますので、是非お問い合わせください。また、投資クラブや自主学習グループをつくって、金融経済知識の習得に努めている方も多数いらっしゃいます。皆さんがこうしたものを活用して、ぜひとも活き活きとしたお金の使い方を実践していただきたいと思っております。 それから、最後に、本日のシンポジウムは「お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウム」でございますので、これまでの話と地域社会とのかかわりについて、若干述べさせていただきたいと思います。 さきほど、知っているもの、分かるもので運用しましょうというお話をしました。お金の運用先としては、全国展開している有名な企業のほか、地域に根づいた元気な企業ということも考えられると思います。企業自身やその製品に馴染みがあり、実際に肌身で分かるような身近な投資対象を探すということも考えられると思っております。 また本日、この後のパネルディスカッションで紹介される千葉県の地域再生計画がまさにそうでありますが、地域に根づいた元気な企業を意識して応援する、地域金融機関や投資信託型のご当地ファンドが全国各地に出ております。 また、リスクとリターンというお話を申し上げました。一般的には、お金の使い方を変えた結果、地域のお金が地域に使われるようになると、地元の雇用が増え、小売業が潤い、またさらには街の雰囲気が明るくなるといったような、社会的なリターンが生まれる可能性もあります。千葉県の地域再生計画は、まさにこうした観点から、地元の中小企業を支援して活性化を図ることにより、地域社会における倒産の減少や雇用の安定を図ることを目指すものであり、地域の方々がそうした取り組みを資金面から支えるということは、私は素晴らしいことではないだろうかと考えております。もちろん、個人の経済的リターンを追求してお金を使うのか、地域社会全体のリターンを追求してお金を使うのかは、お金の出し手であります皆さん個人の価値観に依存する部分であり、その意味で最終的な投資判断は、皆さん1人1人の責任となります。しかし、例えば千葉県の地域再生計画について、こうした取り組みもあるのだということを知っていただくだけでも有意義なのではないでしょうか。 その他、地域における金融経済知識の普及・習得について、お話をさせていただきました。現在はITの時代であり、インターネットで実にいろいろな情報が流れています。しかし、高齢者の皆さんやITを操ることが不得意な方には、ネットはよく分からない、とっつきにくいと思われるような方もいらっしゃると思います。そうした皆さんには、地域に根ざした金融経済知識の普及活動を行っている方々や、地域の投資クラブ、学習サークルの方から話を聞いてみるのも良い方法ではないだろうかと考えております。こうした面でも、お互いの顔がみえる地域社会の果たす役割は大きいと思っております。 以上、地域社会とのかかわりに触れながら、活き活きとしたお金の使い方について、お話をさせていただきました。本日はこの後、パネルディスカッション・プレゼンテーションが行われます。金融経済知識を習得することの重要性を、1人でも多くの方々に理解をしていただき、これまで以上に当事者意識を持って、お金と付き合っていただければ幸いでございます。まとまりのない話でございますが、以上をもちまして簡単ですが、私の話とさせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。 |
以下、次号以降のパネルディスカッションに続きます。 |