平成11年5月14日(金)

未定稿


公認会計士審査会

第2回会計士監査に関するワーキンググループ議事録


於 大蔵省第三特別会議室
(本庁舎4階)


大蔵省金融企画局市場課


午後1時32分開会

○内藤大臣官房参事官 予定の時間も参っておりますので、実は三原座長はお出になっておられるのですが、ちょっと何かの御都合で遅れておられるのだと思いますので、私の方で議事進行を代行させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 ただいまから「会計士監査に関するワーキンググループ」の第2回会合を開催させていただきます。
 最初に、御都合によりまして第1回の会合では御欠席をされました委員の方を御紹介いたします。
 中原 眞委員を御紹介いたします。

○中原委員 中原でございます。よろしくお願いいたします。

○内藤大臣官房参事官 なお、本日は、葛馬委員、永嶋委員、山浦委員が御都合により御欠席でございます。それから、安藤委員は御出席の御予定でございますけれども、今後御出席されると思います。
 本日は、第1回に引き続きまして、各界の方々、お三方から、現行の会計士監査の在り方に対する御意見や御感想をお伺いし、その後に質疑応答に移らせていただきたいというふうに思います。
 それでは、最初に、ソニー株式会社国際会計部の石川栄一連結会計担当部長を御紹介いたしまして、連結会計に携わっておられる立場から御意見を伺いたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○石川参考人 石川です。どうぞよろしくお願いします。
 御紹介にありましたように、連結を担当しておりまして、本会議の趣旨に合致した御意見が申し上げられるかどうか分かりませんけれども、私の知っている範囲でお話ししたいと思います。
 当社の連結の前提なんですけれども、米国会計基準で連結をしておりまして、1961年から38年間、米国会計基準で連結を継続しております。従いまして、この会議で私が申し上げる内容は、それが前提になっておりますので、日本国内における監査の慣行と合致しない部分が若干あるかと思いますけれども、その辺は御了解いただきたいと思います。
 まず、私のお配りしたレジュメなんですけれども、4ページになっておりまして、最初に、グローバル連結を前提にした会計監査に望むこと、それから2番目に、これはグローバル連結云々ではなくて、これは単純に私の私見でございます。会社と監査人の関係で、こういうことに陥りやすいのではないかと思うことがありまして、これは皆様方は十分御承知のことかもしれませんが、私なりにちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。3番目が、当社の年間の監査スケジュールでございます。単独と連結、両方合わせてございます。それから、最後に、今会議の趣旨とはちょっとずれるのかもしれませんけれども、グローバル企業が直面する会計基準の問題と、それに対する会計監査、会計士監査に対する期待、御理解をまとめております。
 では、まず最初のページに戻りまして、私の関心事は、最初に掲げました1、2、3、4と左側に番号が振ってございますけれども、この順番で会計士監査に関して期待をしておるということでございます。会計ビックバンが導入されまして、同時に会計ビッグバンに対応する会計士監査のビッグバンも、やはりこれにつれて対応されなければいけないということなので、米国会計基準がほぼ会計ビッグバンに類似しておりますので、その観点でコメントさせていただきたいと思います。
 まず、決算の質の維持と向上。ここに掲げましたのは、会計処理の妥当性。これはごく基本的なことなんですけれども、これはグローバル会計監査においても、単独の監査同様にやはり注意深く行われることが必要です。たとえ経理部門が離れておりましても、個々の国、個々の企業においてきちんと行われているかどうかを確認することは、連結をまとめる者として大変関心がございます。これに関しては、同様の情報を、親会社でも編集するということを努めて心がけております。従いまして、問題があれば、その個々の会社の問題ではなくて、親会社も同様にそこに立ち入って、それを問題として捉えて対応する。会計士の方と協力してやるという考えでおります。
 それから、2番目のリスクの早期発見と適切な指示。これは、会社の中にいますと、リスクというのはなかなか分からない部分がございます。従いまして、会計士の方から早い段階で指示がいただきたいということでございます。
 それから、3番目は開示でございます。透明性の向上でいろいろ言われておりますけれども、これはなかなか難しいことで、透明と言いましても、社内に対する透明性、社外に対する透明性、両方ございまして、いろいろ透明性を前提とする場合に、その透明性を説明する前のいろいろな情報が十分あるかと。例えば社内では十分情報が握られていて、それに基づく社内における開示、社内に対する伝達・報告に関しては、十分理解の前提で確認できますけれども、社外に、ただ単に透明性ということで不十分な前提で全て開示していいのか。いろいろな条件を付けて開示するものでしたら透明性という議論もありますけれども、その辺も会計監査の方と十分その合理性についてお話しさせていただきたいと思っております。
 それから、会計基準の変更、新設。これはやはり会社としましては、自ら行っている事業の前提でしか会計基準の取り上げ方というのはないので、会計士の方に適切なアドバイスがいただきたい、それから指導がいただきたい。
 最後に、セグメント情報開示、それからMD&Aへの指針。「マネジメント・ディスカッション・アンド・アナリシス」というものですけれども、これは会計監査の方ではなくて、会社が外に対して会社のコメント、経営状況の説明をするものですが、セグメントにしろ、MD&Aにしろ、やはり企業がボーダーレスになり、しかも業種が多様化しますと、なかなか説明しにくく、「この辺はどういう形だと、投資家の方、アナリストの方、会社に関心をお持ちの方に説明できるか」というような部分も、コンサルティングの領域になるのかもしれませんけれども、会計士監査の中でサポートしていただけないかということです。
 2番目ですけれども、監査人の資質。これは、まず会社のことを事業全般に関してよく知っていただいていると。ですから、決算時にいらっしゃって、決算帳簿の締めのところだけで関与されるのではなくて、常に会社がどういうことをしているか、クライアントのことについて十分御存知であるということをまず期待しております。
 それから、自社だけではなくて業界の常識、それから、世間が一般的にその業界を見る目等々も、やはり監査人の方から適切に指示をいただかないと、会社自身も思い込みとか、自ら良かれと思っているようなこともございますので、その辺の全般的な理解と経験というものを期待しております。
 それから、3番目ですけれども、新規事象ですね、会社にとって初めてのこと。取引とか、買収とか、金融商品を新たに試みるとか、そういう財務的なことがあった場合にどういう処置をしたらいいかと。やはりこれも社内では、なかなか教科書を読んでそのままやるというわけにいきませんので、会計監査の方から指示をいただきたいと。
 それから、4番目も上の話に似たようなことですけれども、開示への提言ですね。例えば「今回のこの事象は開示に該当します。従いまして、新たに開示を加えます。」などのです。ですから、去年の開示と今年の開示は、さらに内容が変わってきますというようなことですね。
 それから、環境変化に対する先見的アプローチ。「今、周りはこういうことをしております。」「こういう会計が今行われております。」と。「そちらで該当するものはございませんか。」というような、事象がないにしても、会社の周辺に起こっている会計の変化、経済的事象の変化についても、やはり適切なアドバイスがいただきたいなということです。
 それから、最先端会計へのアップデート、それから、その中には時価会計の考え方ですね。やみくもに時価を出すのが本当にいいのかと。時価を出すには、時価を出すだけの前提条件をきちんと説明して出した方がいいとか、そのようなしっかりした方針に従った御意見がいただきたい。それから、経営管理指標で、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー表以外にもいろいろなものがございますので、それに関した追加知識みたいなものを会社にいただきたい。
 それから、これはちょっと今までの話とは違いますけれども、これは当然のことなんですが、独立性と客観性。会社との癒着等々に関して、常に良識ある立場でいていただきたいということでございます。
 3番目は、ここからは、連結をグローバルに行う会社の話に展開しまして、これはソニー独自の問題なのかもしれませんけれども、一応ここで申し上げますと、当社の場合、SEC基準でグループ会計方針を作っております。従いまして、その会社がマレーシアであれ、スペインであれ、メキシコであれ、なかにはインフレ会計をやっていたりしますけれども、会計基準は、それぞれの国がSEC基準に従って東京には報告してもらいます。本社、親会社に報告をしてもらうということでやっております。従いまして、ローカルの会計基準と本社報告の連結目的のためのSEC基準の会計処理は全く別に考えております。
 それから、各国の監査人は統一しております。これは米国の会計事務所一つを強く選択するように指示しております。これはコストが非常に高いです。アジアであれ、ラテンアメリカであれ、中国であれ、その地域の物価水準とは全く違う監査料を請求されておりますが、監査の質の同一性、即時性、それから、お互いに共通に理解できるという前提から、そのコストはしようがないというふうに考えております。
 それから、連結決算日程を短縮するということも社内の命題にしておりまして、これは経営判断、それから投資家へのタイムリーな情報提供、これはトップから経理の末端まで全部にわたり浸透させております。これに対して会計監査の方も協力していただきたい、監査に時間がかかります、こんな短い時間では監査できませんというようなことではなくて、どうしたらこの短い時間にタイムリーな情報が出せるかと。ちょうど日本のトライアングル体制が、会計が独立で進めるようになってきましたので、確定決算の部分というのが比較的少なくなりました。従いまして、これは会計の妥当性とか、引当金とか、後発事象の処理とか、そういうものをきちんと整理しながら決算に向けてスケジュールを組んでいただければ、監査人の方が十分監査しないまま、会社が早く決算を締めろと言うので監査も中途半端になってしまったということは避けられるのではないかというふうに考えております。従いまして、この辺の監査手続の工夫等をぜひとも前向きに考えていただきたいと思っております。
 それから、最後に、ローカルの会計監査が先ほど申し上げましたように、本社の同一監査人で行っているわけなんですけれども、その同一監査法人の得た情報は、ローカルに渡すと同時に、親会社にも必ず渡すようにという指示を強くお願いしております。従いまして、ローカルの監査とローカルのオペレーションがそのまま相談していろいろな事象を決めるのではなくて、必ずローカルの監査の人が知り得たことは、親会社、それから当然、親会社に対応する監査法人まで伝わるということを強く要求しておりますし、もしそういうことが守られていないとなりますと、その報告責任に関して本社から追及するということをしております。
 それから、4番目ですけれども、最後はシステムです。これはシステムだからといって馬鹿にできなくて、監査の今までの時間のかかる部分というのは、情報が見にくいと。網羅性が非常に悪いという情報はあるのだけれども、それを系統的にとっていく手段が社内にないと。従って、監査をきちんとやろうとすると、その情報を探しているだけで時間がかかってしまう。整理に時間がかかってしまうと。そうすると、やはり整理の問題から、まずどのような監査に必要で、どういう手続がこの監査のプロセスの中にあるかというのを、全部システム的にすぐ情報がアーカイブ的に出てくるというような環境を積極的に、会社のみならず監査の方も、会社が新しい会計システムを作ると聞いたらすぐに介入していただいて、そこで監査が本当にポイントポイントで効率的にできる、しかも時系列的にも追える、継続性も維持できるというような、そういう監査の観点をポイントポイントで織り込みながら対応していただきたいというふうに思うわけです。従いまして、これをすることによって、先ほど申し上げた監査のスピード化とか、それからコスト削減。介入する人材が少なくて済むというメリットがあります。どちらかというと、もっと質的な問題の方に監査の力点が置ける。それから議論の問題。会社といろいろなことを前提に議論ができる。そういうことをもっと積極的に会計監査人の方も会社と同様に考えていただきたいなというわけです。
 次のページに進みます。これはちょっと言い過ぎなのかもしれませんけれども、二つのパターンを挙げました。会社と会計監査の方が自覚症状がない状況に陥るパターンなんですけれども、会計監査の方の経験、それから、資質が非常に限定されておりますと、会社もそれに従って非常に限定された範囲でしか会社の会計的な必要性というものを自覚しないままずっといってしまう。やはり会計監査の方が大きな経験とか視野を持っておられると、会社もそれに対応していろいろなアドバイスがいただけて、会計の向上が図られるということで、何とか仕組み的に、個人の会計監査人の方にこれを期待するのは非常に厳しい話なんですが、法人単位の監査の方は、確かに同じ大きな会計事務所であっても、クライアントに対する守秘義務はあると思いますけれども、守秘義務と監査に関するノウハウ、それから、監査に関する向上というのは話が別なので、そこをきれいに切り分けていただいて、現にもうやっていただいているのかもしれませんけれども、本当にそういうことができていたら、比較的早い段階で質の良い会計が浸透することができるのではないかと思うわけです。
 それから、2番目は、置き去りパターンなんですけれども、これは会社と監査人が一緒になって良かれと思ってずっとしていると、経済実体がどんどん移ってしまうというパターンです。置き去りパターンになって気付いたときに、周りからおかしいですよと言われて、初めて監査人と会社が同時に気付くというようなことも、これは避けていただきたいと思います。ですから、最近は時価会計が出てきましたので、含みというものが比較的なくなって、時価で今後会社の数字が出てくると、数字が出ますので、客観性が数字から追っていけるということはあるわけなんですけれども、逆に時価は、先ほど申し上げたように十分時価の前提になることを説明理解してもらった上で時価を出すという組合せが非常に必要になってきますので、その辺も、ただはやりみたいに追うのではなくてやって頂けないかなという期待をするわけです。
 この辺をまとめますと、要するに経理部門は企業の中で専門分野として信頼を得ていまして、経理といえばちゃんとやっていてくれるというふうな、そういう考えがあるんですけれども、実は当社もこの図に近いんですけれども、定型業務の繰り返しをしていまして、それが継続性の維持である、保守性であるということで、そこに安全とかそういうものを見越しているわけなんですけれども、実は周りが変わってしまいますと、昨日まで安全であったものが今日から危険になるということがありますので、そういう体制の経理というのは非常に危ういなと思うわけです。では、誰がその経理を牽制するかといいますと、やはり内部牽制といっても、内部牽制を充実するほど会社に力がございませんし、人材もおりませんので、やはり会計監査の方が良識ある広い視野から会社に物、申していただくということが必要ではないかと思うわけです。
 それから、最後にこれをまとめますと、期待される監査人というのは、広範な経験の裏付けによる評価、時には先見性を含んだ対応を会社に対してしていただける。改善への示唆とか、長期的な経営を見越したガバナンスへのサポートを期待するわけでございます。ちょっと過大かもしれませんけれども、こう考えるわけです。
 以上は私見でございます。
 それから、3ページ目ですが、当社の事例ですけれども、何が言いたいかと申し上げますと、これは決まったことなんですけれども、非常に会計監査の方と接触する機会が多いということが申し上げたいということです。四半期決算をしておりますので、会計監査の方と当社が接触するタイミングというのはこういうように多くて、決算で何か急に出てきて、それで、さあどうしようという話はできるだけ避けるようにしております。こういう機会を設けまして、年の中で期末に向けて調整することとか、準備しておくこととかということを常に監査の方とお話ししていると。たまたま連結で四半期決算をやっておりますので、これは全世界な内容に関してチェックができるということで非常に有効だと思います。
 最後に、グローバル企業としての当社なんですけれども、今SEC基準で開示しておりますけれども、これが新日本会計基準になりますと、やはりちょっと数字とか手続が異なってくるということになります。最終的に日本基準が国際会計基準(IAS)とIOSCOで認められるという流れになるとは期待しますけれども、しかしながら、世間で認められている数字というものがSEC基準で今日、依然としてある限り、実務を担当する者としましては、IOSCOの承認後のIASが本当に市民権を得ることを確認してからぜひとも移りたいと思うわけです。その前まではSEC基準でもよろしいのではないか。つまり日本基準とIASがほぼ同等なものに実質なれば、それに近いSEC基準も同等であると看做して頂けないかと思うわけです。言いかえますと、実質的な違いというものは、比較可能性を損ねるようなものではないのではないかというふうに当社は考えております。従いまして、ぜひとも国際会計基準が市民権を得ることは大変期待するわけなんですけれども、確認する時期、それからグローバル企業としての認定等々、SEC基準の特例延長もしくは、SEC基準を国際会計基準に類するものという特別な御配慮が会計士協会からいただきたいというふうに希望しているわけです。
 すみません、ちょっとオーバーしましたけれども、以上です。

○三原座長 どうもありがとうございました。
 遅れて参りまして、大変失礼いたしました。
 それでは、続きまして、ヨーロッパ、特にドイツにおける会計制度にお詳しい日本ユニシス株式会社の藤田敬司常勤監査役を御紹介し、御意見を伺いたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○藤田参考人 藤田です。よろしくお願いします。
 昨年の6月に三井物産を離れまして、日本ユニシスの監査役をやっております。
 ドイツの話なんですけれども、ここに書いていますように、87年から92年と、既に離れまして7年たっておりますので、その後相当変わっております。従って、有益な話が申し上げられるかどうか余り自信はないんですけれども、御承知のように非常にドイツは日本と会計制度あるいは物の考え方が似ておりますので、その中で、あえて日本と違うなと思われる点をまとめたものが資料2の1ページ目でございます。その次のページは、短い経験ですけれども、監査役の立場から見て何か申し上げたいことということでまとめてございます。
 まず、ドイツの経験から申し上げたいと思います。先ほど申し上げたように非常に似ているんですが、特にこういう健全決算の伝統は、特に日本でもバブル前はそっくり同じようなムード、考え方があったかと思いますけれども、驚いたことは、非常に引当金が広い。未確定債務あるいは資産の減損に対する引当金、こういうのが会計士サイドから非常に積極的に提案されているということです。それから、経済実体論。細かい会計ルール面からではなくて、経済実体論からの提言が非常に多いと。税務も会計士の意見を尊重するということです。この点は、実は私も、ドイツの前はイギリスに3年おりまして、そこでの経験でも、チャータード・アカウンタントの言うことがそのまま通るということで、ドイツも似たようなところがございます。
 それから、2)は、収益認識あるいは資産計上に非常に慎重だというのが一つ。英米から言えばこれが含み益経営ということになるかと思いますが、逆に英米流の時価会計というのが今は変わってきていると思いますが、当時は「Accounting Imperialism」だと、こういうような陰口が出ておりました。それから、資産計上に慎重だということ。税効果会計で借方の資産計上、これは、原則ノー、または極めて限定的なやり方です。
 2番目は、これはその後随分変わっておりますが、最近も法人税率が45から40になり、財産税だとか営業資本税がなくなったりということで緩和されておりますが、私がいた頃は非常に税金の負担が重かったということで、非常に苦労しました、そういう記憶がございます。
 3番目の特色は、ドイツは1985年からだったと思いますが、EC指令に基づいて商法上の連結決算。証取法はございません。これは株式公開会社であろうと、非公開であろうと、一定以上のコンツェルン企業。コンツェルン企業ということは、子会社が1社でもあればコンツェルン企業ということで、連結の開示義務が出てきた。
 私がちょうど行った頃に関係会社が10社くらいありまして、連結決算を始めました。特色は実質基準で連結範囲を選んでいたというのが一つと、それから、その連結のやり方は、必ずしもドイツ基準にこだわりませんと。日系企業であれば日本基準でもよろしい。あるいは欧州内に統括会社があれば、三井物産の場合はオランダにございましたので、そこで連結をやっていれば、それでもいいんだというようなことだったんです。最近は、純ドイツ企業であっても、御承知のように米国基準でもよろしい、IASでもよろしいというようになっているように聞いております。このあたり、非常に柔軟性に富んでいるなというのが印象です。
 私は、どうせやるんだったらドイツ基準でやろうということで始めたわけですが、その後、ベルリンの壁が崩れてから東ヨーロッパ系への投資が増えておりますので、思い切ってやってよかったなというように思っております。
 連結納税制度ですが、これは御参考までですけれども、赤字会社のときは非常に有効なんですが、黒字会社になってしまえば、ほとんど意味がないということで、やめてしまった経緯がございます。
 それから、会計システムの特色としては、一つのインプットから現地の法定帳簿と対日報告用が出てくると、こういうやり方ですね。それから資金面では、マルク、ドル、円の多通貨会計。今年からはユーロ、ドル、円と。マルクは一つのローカル・カレンシーになってしまったようです。
 それから、6番目、これは私の単なる個人的な経験にすぎませんが、会計監査の特色としては、三つ書いてございますけれども、一つは、ドイツは非常に税金負担が重いということで、税務に強い会計事務所の監査を受けていたわけですが、親会社から、それだけではだめだと。全世界のネットワークのある大手の監査法人を起用しなさいということで、デロイトトッシュ系を選んだわけですが、はっきり言いますと、非常に監査料が高くて困ったなということで、かといって、前の事務所をやめるわけにいかないということで、監査報酬も、それから監査時間も、全部50・50と折半でやってみろというやり方をやりました。これはいろいろメリット・デメリットがございますけれども、メリットとしては、日本でもこれからどうなるか分かりませんが、共同監査というやり方、これは非常にデメリットもございますが、メリットとしては、お互いの良いところを引き出せるというのが一つと、会計事務所間での競争原理が働くといいますか、お金の問題は別として、質的な面ではよかったのではないかなというように思います。
 それから、2番目は、大したことではないかもしれませんが、自分たちの肩書きを「Wirtscaftspruefer」と言う。要するに、アカウンティング・オーディターという言葉としてはレヒヌングプリューファーというのがあるんですけれども、わざわざ自分たちは、Wirtscaftsprueferだという名刺を使っている人が非常に多い。要するに経済監査人みたいなものですね。これは単なる形式的な数字のチェックだけではないんだよと、こういう自負みたいなものが感じられました。
 3番目は、これは官報に載せる監査報告というのは定型文言が多いのですけれども、別途長文式でマネージメントレターが出てきまして、自由にコメントしているというところが、これは単なる経済現象面だけではなくて、よって来るところの問題点だとか、あるいは改善点について、日本でも今後考えていただきたいなと思います。
 以上がドイツでの5年間の経験から得たもので、今日の話に何らかのお役に立てればというふうに思います。
 それから、2ページ目は、私が監査役になってまだ1年足らずなんですけれども、その間に、特に会計ビッグバンということで大きな曲がり角に来ていると。形式ではなくて、税務基準だとか、あるいは年金基金の拠出ベースではなくて、実質経済判断、経済実体に基づく経営判断というのが非常に大事になってくる時代だというふうに思っております。
 まず、ここに書いてありますように、連結で言えば、まず最初に出てきているのが連結範囲の決定の実質基準。それから、年金会計でも基礎率、これも非常に経営判断に負うところが多いように思います。それから時価会計でも、金融商品の保有目的だとか運用目的ですね。それからリスク管理。これは定性情報として載せるわけですが、本当にそのとおりやっているのかというところです。それから、研究開発費にしても、外注か内工かではなくて費用と収益の関係を見ないといけません。それから、税効果会計も、こういう赤字子会社の持っている税務上の繰越欠損金、これの消化が本当にできるんでしょうかというところも、それによって借方計上の可否が決まると思いますけれども、そのあたりも経営判断に負うところが多いのではなかろうかと。会計士の判断が無理でしょうと言っているのではなくて、その前提として、やっぱり経営判断が非常に大事でしょうと。
 そうしたときに、我々監査役としてどうしたらいいのだろうかと。今の商法のフレームワークだとか、特に監査のスケジュールから見ると、2番の1)のようになってしまうわけですが、経営判断を鵜呑みにした会計監査人の監査が出てくると、これについて我々が、そばで見ている判断と違うねと言ったときに、それは不満だとか、問題がありと言ったところで、もう追い付かないわけですね。事実上、めくら判を押さざるを得ないと。そこで我々としてどうしたらいいのだろうかというのが、2)番なり3)番だと思います。
 2)番は、簡単に言いますと、会計監査が始まる前に、我々として、もっとそばにいて重要な会議にも出ていて、重要な書類も見ているチャンスが多いわけですから、やはり経営判断が会計監査人に出る前に、我々のところでもある程度意見を言っておかないと間に合わないと。たまたま矢継ぎ早にこういう新しい会計制度が出たものですから、時々週末に合宿で、経理部だとか会計担当の役員だとか、あるいは会計事務所の若手から関与社員から、全部で20人ぐらいの団体で週末に保養所へ行って、合宿勉強会をやったとか、そういう形で事前に三者三様の意見をまとめておくというのが非常に大事ではないかと。我々が仲介するということは、事実上はそんなにしょっちゅうできるわけではなくて、やはりお互いに三者三様の牽制、あるいは経営判断を中心に見れば、監査役と会計監査人のダブル・チェックといいますか、こういう何らかの形で連係プレーが図れればなということであります。
 3番は、そうは言っても、今度は逆のことになるんですが、監査契約、通常は会計事務所と企業の執行部の中で取り交わされるわけですが、これも今の商法特例法の考え方で言うと我々にとっても非常に大きな内容で、その中で我々も何らかの形で関与する必要があるのではなかろうかと。なかろうかというよりも、現に私がやろうとしていることは、こういうことをやろうとしているわけです。非常に長期にわたってやってもらっている人、長期が悪いと必ずしも言えませんけれども、やはり質の問題、それから発言力の問題、物の考え方、そのあたりで不満があれば、ローテーションにも口を挟みたいですねということです。
 ちょっと監査役としての立場に偏った嫌いがあるのですが、4番は、これは先ほどのドイツのことを考えて付けた注文でございます。ここに書いていませんけれども、何らかの形で質的に、品質管理だとか倫理というような抽象論に走る前に、やはり会計士の方にお願いしたいのは、もう少しこういう経済合理性だとか、そういうところにももっと、オーディットということとコンサルティングは違うんだと言われるかもしれませんけれども、我々はやはり高い監査料というか――高いかどうかは別としまして、監査料を払っている立場から言うと、単なる形式的なマニュアル監査ではなくて、経営に役立つ意見も、コンサルタントに別にお願いするのではなくて、計数をつかんでいて、そこから現に得られた問題について、もっと自由に物を言っていただく。それで、感情論は別として、それはちゃんと言ってもらえば、それなりの対応は必ずするはずですから、そういう面でのサービスの向上と言うと失礼ですけれども、そういうのを期待したいなと思います。
 簡単ですけれども、以上です。

○三原座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本公認会計士協会副会長であります奥山章雄委員及び日本公認会計士協会の友永道子常務理事から、近年の会計士監査を取り巻く環境などを踏まえた会計士業界の対応等について御説明を願いたいと存じます。お願いいたします。

○奥山委員 会計士協会副会長の奥山でございます。一応副会長という肩書きではございますけれども、本日は、特に会計士協会の全体の意見ということでお話しするのではなく、あくまでも個人的な見解ということで御理解をいただきたいと思います。
 前に公認会計士審査会から提言をいただいて、2年ばかりたったということでございますが、その間、実は公認会計士監査を巡っていろいろなことが言われております。また、いろいろなことが起こりました。今日は折角の機会ですから、私どもその辺をどういうふうに捉えているのかということをまず申し上げたいと思います。
 まず(1)として、日本経済の変革の影響ということですが、これはいわゆる金融ビッグバンをはじめとして大きなシステム的な変革があるということで、日本経済の総合的・多角的な再構築が現在求められているだろうという状況の中で、公認会計士業界は果たしてこういう健全な社会構築への挑戦に応えることができるのだろうか。もちろんそこには、こういう日本経済の改革の中で会計士もしっかりした役割を果たしたいという意欲を持っているわけですが、会計士全員がそういう自覚を持って、かつ、先ほどいろいろ御指摘を受けていますけれども、研究・勉強をして応えることができるだろうかと、こういう状況がございます。
 次に、(2)ですけれども、ゼネコンあるいは銀行等の大型倒産あるいは大口倒産、そういう倒産がございまして、これに伴って、公認会計士監査への疑問が提出されております。世間で言われている、特にマスコミとか、あるいは国会等もそうなんだと思いますけれども、公認会計士監査への疑問を整理してみますと、このほかにもいろいろあるかもしれませんが、とりあえず次のようなことではないかと思っております。「なぜ直前期に配当しているような会社が突然に倒産するのか。そのような会社の会計士監査は一体どうなっているんだ。何をやっていたのか。」ということでございます。
 これを若干分析いたしますと、例えばマル1として、倒産後の債務超過が大変大きくなっているということがよく報道されていますが、それが倒産前の純資産額ではちゃんと残っていたと。そうすると、倒産後のこの債務超過額と倒産前に純資産で残っていた金額との間に大きな差額があると。これは一体何なのだろうか。どうして会計士監査ではそういうことについてチェックできなかったのか。
 マル2としては、倒産する前にそういう兆候がないのかと。監査の上でそういう可能性は全く感じられなかったのか。こういうことを言われております。
 マル3として、いわば経営者の不正、経営者主導型による粉飾あるいは虚偽の記載と言ったらいいのでしょうか、そういうことに対して監査はどのようにやっているのか。監査手法がちゃんと成り立っているのかというふうなことでございます。
 それから、ちょっと視点が違うのですけれども、マル4として、これはやや素人的な発想かと思いますけれども、監査報酬をクライアントから得ていてきちんとした監査ができるのかと、こういう疑問もよくいただいております。
 それから、マル5として、これは私ども会計士協会の立場にも関係するんですが、会計士協会としてこれらの疑問につき、なぜ積極的に発言しないのか。
 まだこのほかにも幾つかあると思いますけれども、とりあえずこのような疑問が挙げられているということを指摘しておきたいと思います。
 次に、(3)番目として、日本の会計あるいは監査の慣行に対して海外からの批判がございます。これは私ども、IFAC(国際会計士連盟)に人も派遣して副会長として役に就いている者もおりますけれども、やはり国際会議で相当ひどく言われて帰ってくるというふうな状況もありまして、申し上げておきたいんですが、マル1として、会計基準、監査基準は日本独自のものが多く、国際的に通用しないのではないか。ちょっとこれは申し上げておきますと、現在いろいろ会計ビッグバンとして多くの基準が構築されてきておりますので、これは大方払拭されるというふうには思っておりますけれども、今までこう言われておりました。
 それから、マル2として、監査は十分に実施されていないのではないか。これは先ほど、向こうの監査報酬は高いというお話がありましたけれども、日本の監査報酬が実は低いという、あえて言って恐縮なんですけれども、そういう比較を見て、日本では監査が十分にやられていないのではないかというふうな、むしろ国際的にはそのようなことを私どもは言われております。
 この2年間、特にこういうことを巡って問題を把握したというか、挙げたわけですけれども、これに対して、日本公認会計士協会としてはどのように対応しているのかということですけれども、恐縮ですが2ページで、目下の対応。これからという問題ではなく、今までやってきた、あるいは今やりつつあるという対応を先に申し上げたいと思います。
 (1)は、日本公認会計士協会としての覚悟。これは私ども執行部として、きちんとした認識を持って、それをまた会員へ浸透させていきたいと、このようなことで一応挙げてみました。
 マル1として、技術的、専門的な分野における開発。これは基準とか実務指針作りですけれども、これをより強化させたい、あるいは強化するということです。
 マル2として、協力で結束力のある会計職業の育成。これはいわばプロフェッショナルという立場から見ますと、当然会計職業としてリーダーシップと、それに対して会員全員が協力していくという、そういう意味での内的な力の在り方が必要だということです。
 マル3は、それに付随して、本部及び地域会レベルでの情報及び組織の強化ということが挙げられます。
 マル4としては、これは対外的な問題だと思うんですけれども、会計職業の役割、あるいは責任、そして成果、こういうことをきちっとアピールしていくということです。
 マル5としては、資本市場及び国際貿易の発展への貢献。これは大変大事なことなんですが、いわば適正なディスクロージャーを担保するという会計士、そこに至る前提として、やはり会計職業というものが効率的な資本市場の発展等に対して影響を与えるんだということを自覚して、そういう覚悟を持ってこの職業に臨むべきだろうと、こういうことを、ちょっと精神的な、あるいは概念的な話で恐縮ですけれども、意思として、今内部でそういう意見を固めているというところでございます。
 次に、(2)としては、やや実務的な話が入ってきますけれども、監査実務において実施すべき監査手続を行っていたかどうか。これは実は、この3月期、銀行あるいはゼネコン、こういう業界の監査人に対しては厳しく対応してほしいという要請を出しております。この3月期決算が具体的にどう出るか、私どもも分かりませんけれども、漏れ聞くところでは、相当厳しい対応を会社に要請しているということが聞こえております。
 それから、マル2番目は、既に起こった事件では、綱紀問題として粛々と対処していくということを行っております。
 次に、(3)として、監査実務というよりも、監査制度上の問題があるかどうかということですが、これは実務指針がないというものについては、実務指針を作って、それを適用していくということが必要ですので、これは実務指針の作成ということで対応しておりますが、特に監査基準委員会報告書を相当数出しまして、概ね体系的な、あるいは網羅的な状況が整ってきたというふうに言えようかと思います。
 それから、これはゼネコンに端を発したんですが、債務保証に関する監査委員会報告、これが昨年のゼネコンのプロジェクトチームの報告から、この3月期では監査委員会報告としていずれの会社にも適用するという実務指針まで持ち上げました。
 それから、最近、年金資産、これはこれから退職給付会計で非常に問題になると思いますけれども、それをいち早く年金資産にいわゆる持合株を有効利用したいというふうなことから、ここにおいてどのように考えるかの会計士協会の基本的見解を示してくれというふうなことで、これも実務指針がないということに対して、私ども努力してそれに対応していると、こういうことが言えようかと思います。
 それから、日本独自基準。これは先ほど申し上げたように会計ビッグバンで変わりつつあるわけですけれども、この変わりつつある中で、特にこれから努力しなきゃいけない退職給付会計あるいは金融商品、ここについての実務指針を作成しようとしております。ちなみに、いわゆる実質支配力基準と言われている連結決算の新しい基準については、協会としても相当数の委員会報告を出しております。
 それから、ゼネコン問題。これは特殊な業界の問題ですけれども、これは現在、監査問題特別調査会というものを設置しまして、ここでゼネコン問題の、個々の会社の問題というよりも、ゼネコンに特有の共通的な問題をピックアップして、これがうまくピックアップできれば社会に対して公表していこうという問題として現在取り扱っております。
 それから、金融問題。これは特に金融機関の査定の問題、引当金の問題ですけれども、これについて今、いろいろ会計監査が問われている部分もあるわけですが、これにつきましては、「金融検査マニュアル」というものを金融監督庁で作っておりますけれども、会計士協会にも「引当金設定等に関する銀行等監査特別委員会報告4号」というものがありますが、ほとんど一致するような内容にさせております。従って、これについては今後、検査と監査の整合性が保たれていくのではないかというふうに期待をしております。
 それから、(4)として、日常的にきちんとした監査を実施しているか。監査を実施するのは監査法人なり個別の監査人の問題なんですけれども、会計士協会としては、個々の自己改革を促すという意味で制度的にバックアップする姿勢をとっております。これはCPE(継続研修制度)と、それから品質管理レビュー。これは監査法人に対して会計士協会からレビューアーが行って、実際にどのような監査をしているかチェックするという体制をとっております。後でちょっと申し上げます。それから、倫理規則の全面的見直しということで、これは、この3月に公開草案を出して、1年がかりで会計士協会内だけではなくて、外からも広く意見を集めて、会計士に対する一つの倫理というものを世の中に認知してもらうべく作業を進めてもらっております。
 次に、(5)としては、前にいただいた「会計士監査の充実に向けての提言」、これの実施ですが、恐縮ですが、お手元の〈別紙1〉であります。これは後でお読みいただければ、どういうことを今やっているかということが御理解をいただけると思うんですが、この中で今大変にお金をかけて、労力をかけて実施に移しているのが、いわゆる品質管理レビュー制度です。
 これは、お手元の一番後ろから3枚目です。これだけちょっと申し上げておきたいと思うんですが、この4月1日から実施に移していますけれども、会計士協会に専属で6人の会計士の経験者、こういうレビューの経験者、監査法人のOBとか、あるいは公募によって来た人とか、そういう方を採用しまして、今6人専属でおります。これがこの4月からレビュー基準あるいはレビュー手続を定めていまして、いよいよ各事務所へ行くことになっております。そして、このレビューチームから出た報告を、品質管理委員会として会計士協会の中に設置した委員会でその結果を定めて改善等を促すことにしておりますけれども、それだけですと、内々でやっているのではないかという指摘をまた受けるといけませんので、品質管理審議会という審議会を設置しまして、これは委員長は前会長の高橋善一郎なんですが、そのほか5名の方には外部から、経済界とか学会とか、あるいは取引所とかマスコミ界とか、そういう外部から御参加をいただいて、率直な意見をいただくということをしています。そういう意味では、これからこういうことによって、相当程度監査事務所の方が緊張感を持って当たるのではないかというふうに思っております。
 それから、同じことなんですけれども、最後になりますが、私ども昨年の10月に50周年で記念式典をやったんですが、そこでアピール宣言というものをやりました。これは、ちょうど21世紀を迎える時期にありますので、単に式典の中で言ったということではなくて、実際にこれに基づいてやっていこうという責任感を現すということで作成をしております。
 次に、今後の課題に入らせていただきたいと思います。
 今まで申し述べてきたことで、いろいろやりつつあることもあるんですが、なお現在解決されていない課題、今後やはり検討して解決していくべきだろうという課題が次のとおり存在すると考えております。
 (1)社会での認識の確立。これは口幅ったいんですけれども、企業関係者、あるいはもっと広く一般社会に下記事項につき正しい理解を求める必要があるのではないか。
 マル1としては、公認会計士監査の役割・有用性、これを再確認したい。つまり会計士監査は何のために行われているのか。実際に有用だったのかどうか。あえてこういう中で言わせていただくと、取引所なり店頭登録なりの株式公開で、この10年来、相当の会社数がありますけれども、そこでは二、三の問題会社があったとしても、圧倒的に多くの会社においては、会計士の指導性の下にきっちりとした内容を伴った公開を行われているというふうに自負をしております。
 それから、マル2として、通常の財務諸表はどのように作られるのか。これは、ともすると起こった事件で、そこだけをワアワアというふうなことが言われがちなんですけれども、もうちょっと基本的に財務諸表に対する理解をしていただきたいなということで、これも私どもは申し上げたいと思っております。
 例えば、企業の一次的責任。これは、財務諸表の作成は企業にあるわけですね。従って、そこの問題というのは、一次的には責任は企業にあるんだと。それから、通常の財務諸表というのは、企業の継続性を前提としたいわゆる会計公準というものがあって、それを前提とした取得原価主義とか、減価償却の在り方とか、そういうことで作られているんだということに対して理解をしてほしい。
 それから、マル3として、経営者の不正のチェック。多くの最近での問題会社は、経営者主導型の不正といいますか、虚偽の記載ということが多いと思うのですけれども、この問題は、もちろん私ども会計監査でも十分に対応しなきゃいけませんけれども、あらゆる角度から検討されるべきだろうというふうに思っております。
 ちょっとこの関係で、アメリカの事例で、コーエン委員会というのがあって、あるいはトレードウェイ委員会、そこの内容を訳した本をもう一回見直させてもらいましたが、まさしく10年前、20年前のアメリカの状況に今の日本の状況があるというふうな類似性を非常に持っているわけです。従って、そこで検討された事項というのは、実に幅広い角度からあらゆる検討がなされているということを思いまして、こういうことも必要なのではないかということで申し上げておきたいと思います。
 それから、(2)で、企業存続能力情報の提供。これは極めて私どもとしては大きい課題だと思っておりますので、今日は、そのために友永常務理事を連れてきましたので、これは後で友永さんの方からレポートしてもらいます。
 それから、(3)として、監査体制の強化。これは会計ビッグバンということで非常に実務がさらに複雑になるということで、これに対して、私どもとしては当然に対応していかなきゃいけない。指導できるような十分な対応をしていかなきゃいけない。それから、やはりいろいろな問題が多いとすれば、監査手続も徹底化し、それから審査体制も強化していく。そうしますと当然に監査日数も、きちんとやる上で増加させていかなきゃいけない。特に自己査定に対してチェックしていくという金融業界では、この監査日数の増加ということがかなり求められようというふうに思っております。
 それから、再三申し上げている経営者の不正ということに対して、監査手法は今のままでいいか、いま一度考えてみなきゃいけない。特に、性善説で監査を行っているということが一般的にはあるんですけれども、やはりその中でも職業的懐疑心というか、もしかしたらこの会社はおかしなことをやっているかもしれないということをどこで感ずるか、その辺の感じ方ですね。この辺は何かあるのではないかということです。
 それから、(4)として、問題点の社会への公表。
 これは、一つ実際問題としてよく新聞に出ている金融機関の問題がありますけれども、金融検査と公認会計士監査とで、貸倒償却あるいは引当について相当な差があるというふうなケースの場合、これはちょっと私ども、外から見ていて何が差があるのかよく分からないのです。具体的にどのように異なるのか。これはぜひケース・スタディとして、多くの今後の金融機関に影響を与えるわけですから、その具体例が欲しいなと。これはまた事業会社にも、そのまま査定されるという方では影響を与えるわけですから、ぜひここは知りたいなというふうに思っております。
 それから、マル2としては、これは私ども内部の問題を外に公表するかという問題なんですけれども、CPEとか品質管理レビューをやって、その結果を公表すべきだろうなとは思っているんですが、どのように公表したらいいか。例えば、あの監査法人は悪いとか、あの監査法人は十分にできていないとか、そういうふうな公表というのは、やはりこれは問題があるだろうということで、この辺の公表の仕方を検討すべきだというふうに思っています。
 それから、マル3は非常に難しい問題なんですけれども、問題会社があると、よくマスコミ的に言われるのは、そこの問題の内容、あるいはそれに対する監査人の対応、これを発表したらどうかと言われるわけですが、具体的状況を公表するということは、訴訟問題を考えてみますと難しいんです。アメリカでも調べてみましたら、訴訟問題を抱えている限りは公表することをしていないということなんです。そうしますと、では、個別問題で一体どうなったのかということを公表する方法が何かほかにあるのだろうか。これも検討課題だなと思っております。起きた問題について理解はしたいんだけれども、それを具体的にどういうふうにやったらいいのかと、こういうことでございます。
 それから、ちょっと長くなって恐縮ですが、(5)として、「提言」における今後の中長期的な検討課題の推進として、企業のコーポレートガバナンスの整備の推進と会計士の役割。
 これは、「提言」が中長期的な課題であって、ぜひこれは進めてほしいと思うんですが、例えばこの中で、監査人の状況ということについて報告するシステムが今はないんですけれども、何らかの形の報告をどこかに作ったらどうか。例えば一例ですけれども、もしかしたらそれが役に立つという意味では、監査報酬額の開示を行ってみてはどうか。
 それから、マル2としては、監査法人制度の在り方の見直しがそこに含まれておりますが、これは、損害賠償責任問題がこれから大きくなると思うんですけれども、あるいは、いわゆる行政処分の問題もあると思うんですが、監査法人と関与社員と関与外社員、それぞれがどういうふうな責任があるのがいいのか、あるいはあるべきかということを再検討すべきではないか。それから、監査法人というのは、日本では合名会社法理を使ったと言われておりますけれども、それは今の日本の何千人といる監査法人制度ですと、むしろとても組織的に向かないということから、株式会社という、株式がいいのかどうか分かりませんけれども、要するに一つの組織、たくさんの人員がいる組織体制ということへ変えていかなきゃいけないのではないかということです。
 その他、項目だけ申し上げますと、監査人の責任強化論への対応。これは無限結果責任とか、代表訴訟制度の拡充とかと言われておりますけれども、そこについては、我々としては的確に対応していかなければいけない。果たしてそういうことがいいかどうかですね。
 それから、信託銀行における信託勘定。これはいずれ大きな問題になる可能性があるということで、実は今、監査は実務としてやっておりません。これについて、監査をどのように導入したらいいのだろうか。
 マル3としては、監査法人の経営基盤強化。
 これは長年いろいろ日本の監査法人は弱いと言われておりますけれども、一つは、外国事務所というのは会計法人で、監査もMSもタックスもみんな一緒の法人でやっている。いわば総合会計サービスという機能を持っているわけですが、こういうことも日本の監査法人も考えていかなきゃいけないのではないか。そのことによって、外国事務所にも対抗する基盤ができていく。
 大変数多く申して恐縮なんですけれども、なかなか機会がありませんでしたので、言わせてもらいました。
 あと残り、継続能力問題について、少し時間をいただきたいと思います。


[続きがあります]

 

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