平成12年4月11日(火)

 
公認会計士審査会

第5回監査制度小委員会議事録


於 大蔵省第四特別会議室
(本庁舎4階)

大蔵省金融企画局市場課
  


午後3時0分開会

三原小委員長  予定の時間も参りましたので、ただいまから、「監査制度小委員会」の第5回会合を開催いたします。
 本日は、当小委員会の検討事項を大きく三つのグループに分けました三つ目のテーマでございます「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方」ということにつきまして、事務局から簡単に概要及び考えられる論点について説明を行っていただいた後に、関係の方々から御報告・御意見を伺い、意見交換を行いたいと思います。
 それでは、最初に、「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方」の各検討事項につきまして、事務局から簡単に概要及び考えられる論点について説明をいただきます。
 お願いいたします。


大藤大臣官房参事官  それでは、本日の議論でございます「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方」に係る検討事項の概要及び考えられる論点ということで、資料1というものをまとめております。
 まず、責任形態等の監査法人制度のあり方でございます。
 検討事項の概要でございますけれども、企業の経営規模の拡大及び経営の多角化等に対応いたしまして、複数の公認会計士による組織的な監査を推進するために、昭和41年6月、公認会計士法が改正されまして、監査法人制度が創設されたところでございます。
 現行公認会計士法は、商法の合名会社に準じた制度として監査法人制度を定め、監査法人の社員は法人の債務の弁済について無限連帯責任を負うこととされているところでございます。
 また、監査法人は、公認会計士が共同して組織的監査を行い得るようにするための制度であることなどから、社員は公認会計士のみとされております。
 なお、監査において外部の専門家を社員以外の立場で活用することは可能ということになっております。
 法律上の監査法人の要件等でございますが、まず、社員は公認会計士のみであること。社員の数は5人以上であること。社員は全て業務を執行する権利を有し、義務を負うこと。社員は無限連帯責任を負うこと等、商法の合名会社の規定を大幅に準用しております。
 現在の状況でございますが、監査法人は144法人ございますが、所属公認会計士数で見まして、400名以上というのは4法人ということでございまして、25名以下が130法人ということで、25名以下の法人が9割ということになっているわけでございます。
 それから、監査法人の設立、定款の変更、解散、合併は、大蔵大臣の認可事項とされておるところでございます。
 考えられる論点でございますが、被監査企業の大規模化や業務内容の多様化に対応するため監査法人が大規模化せざるを得ない状況にございまして、現行の合名会社に準じた監査法人制度の抜本的見直しを行うべきとの考えがあるが、このような考え方についてどう考えるかということでございます。
 一例といたしまして、社員が無限連帯責任を負う合名会社に準じた監査法人制度を見直しまして、米国のLLP制度に倣いまして、有限責任形態の監査法人制度を導入すべきとの考えがあるがどうかということでございます。
 LLPにつきましては、同じ資料の9ページに「有限責任パートナーシップ(LLP)について」という資料を付けてございます。Limited liability Partnershipということで、LLPと言われているものでございます。
 1ページおめくりいただきまして、また、このような会社形態、LLPというようなものは現行商法には規定がないものでございまして、商法との関係といったようなものを仮にLLPを研究する場合には、どう考えていくかというような問題がございます。
 それから、有限責任形態の導入とともに、損害賠償責任を担保するための措置(例えば、最低資本金制度の採用、損害賠償保険制度の充実)を検討する必要があるとの考えがあるがどうか。
 また、損害賠償保険の義務付け等については、監査におけるモラルの維持という観点から、慎重に検討する必要があるとの考えがあるがどうかということでございます。
 他方、監査の品質向上の観点から、監査法人の社員に対する責任追及を制限するべきではなく、監査法人の有限責任化は時期尚早という考え方も強いわけですが、これについてどう考えるかということでございます。
 それから、監査法人の社員として、公認会計士以外の専門家(弁護士、税理士、不動産鑑定士、等)が一定範囲内で参加できる制度(例えば、総合事務所化)を導入すべきとの考えがある、このような考え方についてどう考えるかということがございます。
 それから、2番目の大きな柱でございます「業務範囲のあり方」でございます。
 検討事項の概要でございます。現在の制度でございますが、公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査証明の業務、これは1項業務と呼んでおりますが、1項業務と、財務書類の調製、財務に関する調査、立案、相談の業務、これを2項業務と呼んでおりますが、こうした業務を行うことを業とするということでございます。
 監査法人は、法2条1項業務(監査証明業務)を行うほか、その業務に支障がない限り、次の業務の全部又は一部を行うことができるということになっております。
 法2条2項業務、それから、会計士補に対する実務補習でございます。
 なお、監査法人の業務の範囲は、監査法人制度が公認会計士の協同組織体である監査法人を通じて組織的監査を有効適切に実施することによって、監査水準の向上を図ることを目的として創設されたものであることから、監査法人の本来の業務である監査証明業務に支障がない限り、法2条2項業務等を行うことができるとされているところでございます。
 法2条1項業務は、公認会計士の独占業務ということでございまして、主な監査証明業務というのは、次のようなものがございます。
 まず、法律に基づきました監査といたしまして、法定監査というものがございます。これには、証券取引法監査、商法監査、私立学校法人監査、労働組合監査等がございます。
 それから、上記の法定監査のほか、制度監査や任意監査というものがございます。
 それから、法2条2項業務(財務に関する調査、立案等)は、公認会計士の独占業務ということではございませんが、公認会計士の名称を用いて、次のような業務を行うことができるというふうになっております。
 イ.会計業務のグループで、会計帳簿の記帳方法の指導、管理システムの立案・指導等でございます。
 それから、ロ.経営コンサルティング業務のグループで、中長期経営計画への助言・立案、経営管理システムに関する診断・立案・指導等でございます。
 近年、公認会計士に対しましては、監査業務だけでなく、会計に関した経営上の助言など、多様な会計サービスの提供が社会から求められておりまして、その傾向は今後、一層強まることが想定されるわけでございます。
 考えられる論点でございますが、公認会計士が提供している多様な業務の法令上の明確化を図るとともに、今後予想される公認会計士が行う業務(例えば、レビュー業務)の拡大に対応するため、現行法2条の「公認会計士の業務」の規定を改正すべきとの考えがあるがどうかということでございます。
 ちなみに、10ページに公認会計士の方の業務の最近の拡大した事例がございますけれども、いろいろな分野で業務が拡大しているところでございます。
 それから、監査法人の財政的基盤の強固化、統制がとれた監査法人の運営を確保するため、監査法人の業務範囲の拡大(監査法人による税理士業務、等)を検討すべきとの考えがあるがどうかということでございます。
 それから、監査法人等が社会から求められている多様なサービスに応えることは重要であるが、監査以外の業務での被監査会社との関係の緊密化が監査業務の独立性を阻害することにならないか等、利害得失に十分留意する必要があり、監査証明業務の独立性及び監査の品質向上という観点から、例えば、監査証明業務との間に一定の制限を課すことの要否等について十分に検討すべきとの考えがあるわけでございますが、これについてどう考えるかということでございます。
 それから、3番目でございますが、「広告規制のあり方」という問題がございます。
 検討事項、制度の概要でございますが、公認会計士又は会計士補は、公認会計士又は会計士補の称号及び専門とする業務を除くほか、その技能又は経歴に関する広告をしてはならないとされております。
 それから、併せて法律で、監査法人は、その名称、事務所の所在地、社員の氏名その他大蔵省令で定める事項以外の事項を広告してはならないとされており、省令で広告できる事項が限定されているわけでございます。
 考えられる論点でございますが、広告は、利用者が自己責任において資格者を選択するに当たっての資格者に関する情報として考えるべきであり、虚偽・誇大広告以外は、法律又は資格者団体の自主規制により規制する必要はないとの考えがあるがどうかということでございます。
 それから、利用者の適正な選択に資するとともに、弁護士法その他の資格者団体を規制する法律と平仄を合わせる趣旨からも、法律による広告規制を廃止し、業界内の自主規制に委ねるべきとの考えがあるがどうかということでございます。
 ちなみに、11ページに行革推進本部の規制改革委員会「規制改革についての第2次見解」というものがございまして、「公正有効な競争の確保や合理性の観点から、広告規制の在り方を見直す。」という視点が上げられているところでございます。
 それから、4番目の問題でございますが、「公認会計士法の目的規定等の要否等」でございます。
 検討事項の概要、制度でございますが、例えば、弁護士法及び税理士法には資格者の「使命」に関する規定が、司法書士法及び土地家屋調査士法においては法律の「目的」に関する規定が設けられているが、公認会計士法には、公認会計士の「使命」及び法律の「目的」に関する規定が設けられていないところでございます。
 各種の法律は、13ページから15ページに載せてございます。
 考えられる論点でございます。
 監査業務の公共性を社会にアピールし、公認会計士に対する社会の期待に応えるためにも、弁護士法や税理士法等に倣って、その使命と職責を公認会計士法に明記すべきという考えがあるわけでございますが、こういう考え方についてどう考えるかということでございます。
 それに対しまして、そもそも目的規定の有無と公認会計士制度の適正・公正な運営とのつながりをどのように考えるかということについて議論すべきではないか。また、公認会計士の今まで御説明しましたように業務の多様化・拡大化等に鑑みれば、公認会計士が行う多様な業務内容及びその使命・職責を法律上明確に表現するということが果たして可能なのかどうかというような問題もあるのではないかと思うわけでございます。以上でございます。


三原小委員長  ありがとうございました。
 引き続きまして、参考人の方々から本日のテーマにつきまして御報告・御意見をいただきたいと存じます。本日は、当初、第2回会合の際に参考人として御出席いただきましたプライスウォーターハウスクーパースコンサルタントの内田士郎取締役から米国の監査法人の状況を御紹介いただく予定でございましたが、急病になられたとのことでお話をお伺いできなくなりました。機会があれば、改めてお話をお伺いしたいと存じます。
 それでは、学界の方から参考人として御出席をお願いしております近畿大学の津田秀雄教授を御紹介いたします。

〔津田教授会釈〕

三原小委員長  津田教授は、以前、学会の「監査法人の在り方研究部会」で副部会長として、監査法人について御研究をなされていたと伺っております。
 それでは、津田教授お願いいたします。


津田参考人  ただいま御紹介いただきました近畿大学の津田でございます。先ほど御紹介いただきましたように、日本監査研究学会におきまして、「監査法人の在り方研究部会」というのが組織されまして、その部会の部会長は、現在、大阪学院大学、当時関西学院大学の教授であられました石田三郎先生でございましたが、その下で副部会長を務めさせていただいたわけでございます。その部会は、「監査研究学会」ということで、監査に関する諸種のテーマを順次取り上げて研究してまいっておるわけでございますが、「監査法人の在り方」ということで、この当時、監査法人が制度創設以来ほぼ20年程度経過いたしまして、そろそろ定着して、今後どのような方向に進んでいったらよろしいのかということを研究したらいいんじゃないかということで組織されたわけでございます。
 メンバーといたしまして、個々にお名前を挙げるのは省略させていただきますが、先ほどの石田部会長はじめといたしまして、公認会計士及び大学の教授を務めている方、こういう方が十数名加わって研究したわけでございます。その成果は、当然学会でございますので、全国大会におきまして中間報告及び最終報告をさせていただいたわけでございますが、さらにこのような形で研究叢書を学会として発行しております。その一つとして刊行させていただいております。
 しかし、既にこの書物が刊行されましてから10年程度経過いたしておりまして、当然その後の状況の変化とか、あるいは考え方の変化とか、そういうものもございますので、現在の状況に必ずしも適合していないかと存じますけれども、研究叢書を10年前に刊行いたしましたという御縁で、本日、参考人としてお呼びいただいたものと心得ております。
 それで、本題に入らせていただきまして、本日、「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲のあり方」について、何らかの参考意見を申し述べよという御依頼でございますので、既にお手元にレジュメが配付されているかと存じますけれども、これを骨子といたしまして、お話をさせていただきたいと存じます。
 まず、第1点でございます。「監査法人の創設と公認会計士業務」と題しておる箇所でございます。
 これは先ほど事務当局から御説明いただきました資料の13枚目に公認会計士法の第1条が抜粋されてございますが、その第1条の第3項でございます。
 読み上げさせていただきますと、「この法律で「監査法人」とは、次条第1項の業務を組織的に行なうことを目的として、この法律の定めるところにより、公認会計士が共同して設立した法人をいう。」このように規定されてございます。
 次条第1項は、簡単に申しまして、監査証明業務と称されておりますが、そういう監査証明業務を組織的に行うことを目的とする法人であるというように定義されているわけでございます。さらに、公認会計士が共同して組織したという点に留意していただきたいと存じます。
 レジュメの本文の4行目にまいりますが、この監査法人の制度は、高度経済成長期を経て生じていた被監査企業の経営規模の拡大及び経営の多角化に対応するために、また、昭和39年半ばから40年代前半に相次いだ企業の経営破綻を背景とする公認会計士監査の充実を求める要請が契機となって、組織的な監査を推進する必要が増大していたことから、その対応として設けられたものであるとされておりますが、ここで留意していただきたいことは、監査証明業務を営む公認会計士の集団化による当該業務の組織的実施の要請がなされたのであるが、その監査証明業務の担い手はあくまで自然人である公認会計士であり、監査法人が社員である公認会計士とは別個に、独立して当該業務を営むことを予定していないということであるわけです。そこに、監査法人は、自然人である公認会計士に一身専属的に与えられた資格に基づく監査証明業務を協同で行う公認会計士の協同組織体であるとの理解がなされるゆえんがあったと思われるわけです。監査証明業務という高度な知識と判断力を要する業務の遂行のためには妥当な措置であったろうと私は考えておりますので、この点は今後も維持されるべき点であろうと存じております。
 監査法人制度の創設により、法人が契約の当事者として登場してくることになったわけでございますが、現実に具体的に監査証明業務を実施する者の知識、能力水準をある程度確保するためにも妥当な措置ではないかと考えられるわけです。
 ということで、この第1条でうたっておりますように、公認会計士の協同組織体であるという点は、なお維持されるべき事項であろうと考えるわけでございます。このことが、以下の事項に関連してまいります。
 次に、第2点でございます。「法形態と業務監督の実効性」についてでございます。
 監査法人の法形態としては上述のように公認会計士法上の特別法人という法形態が選択されたわけでございます。この公認会計士法の改正によって監査法人を創設するという時点では、いろいろな組織形態が検討されたようでございますが、先ほど述べましたように監査証明業務は本来は、自然人である公認会計士の一身専属的な資格の下で行われるべきものであるという線が維持されて、それと矛盾しない組織形態ということで、合名会社の形態が選択されたと伺っております。そこで、その組織編成のあり方については合名会社の法理が多々準用されております。
 しかし、 [資料] の [表2] にございますが、その表を少し御説明させていただきますと、注1)に付けておりますように、各法人のインターネットのホームページを探りましたところ、この表にありますような数字が出てまいったわけでございます。
 [表1]の方に戻りまして、この順番は、業務収入の多い順番に上から並んでいるわけでございますが、その業務収入順に太田昭和センチュリー、朝日、中央青山、トーマツと、こういうような固有名詞が並んでおります。そのそれぞれの4監査法人におきます人員構成、[表2]でございますが、目を移していただきますと、社員として541人から312人まで、こういう順番で数字が出てまいりました。合計で見ていただきまして、いずれも2,000人を超えておるわけでございます。また、事務所数でございますが、国内の事務所数、これも20カ所以上になっております。また、海外についても20カ所以上となっております。ただし、注4)に付けておりますように、朝日監査法人につきましては海外事務所数はインターネットでは提示されておりませんので、空欄になっております。こういうような実態でございます。
 また1ページの本文に戻らせていただきまして、2の3行目でございますが、しかし、[表2]に見ますように、今日、四大監査法人では社員数が300名を超える状況となっており、恐らく合名会社の社員数として想定されている人数、恐らく数名程度が想定されているかと存じますが、その人数を超えているであろうと思われます。さらに、社員が駐在する事務所を国内に限定しても26~37カ所に分散しているように、合名会社において想定されている社員の相互監視ないし相互牽制による経営業務の監督が十分に行われるとは言いがたい状況が多分生じているのではないかと考えられるわけです。
 例えば、この点につきまして具体的な問題といたしましては、社員の変更等についても定款の変更を要することになっております。合名会社におきましては、社員の名称、氏名は定款記載事項となっておるわけで、それが準用されておりますので、社員の入退社がございました場合には定款の変更が要求されるわけですが、その定款の変更には、総社員の同意が必要とされております。従って、[表2]にございますように、社員が300名以上とか500名以上とか、こういう状況でございますが、これらの何百人という人々の全ての、1人も反対することなく、総員の同意が要求されている、こういう状況になっておるわけですが、このような人数が全て何事につけても全員一致で行動できるかというと、少しやはり一致できないような問題も時に生じるのではないかと懸念されるわけです。しかし、多数決でというわけにはまいりませんので、反対者がいた場合には粘り強く説得して、全員一致の状況を作り出していくというようなことが要求されてまいります。このように法人の運営につきまして相当無理が出てくるんじゃないかと懸念されるわけでございます。
 次に、3番目の「監査法人の内部における業務の高度化への対応」にまいります。
 監査法人の大規模化は、被監査企業側の大規模化と業務内容の多様化に対応するために必要とされ、現に監査法人の合併等により、監査法人は大規模化への道を選択してきました。被監査企業の国際化・多国籍化はまた監査法人の国際的連携をも必要ならしめております。
 こうした大規模化と国際的連携により、監査法人内部での業務分担による専門分化、例えば年金会計や退職給付会計に関する基準の適用に伴う年金資産あるいは年金債務の監査のために必要な保険数理の分る専門家の配置など、こういう業種別・機能別の専門化が要求されますし、また、コンピュータ監査に伴う特殊な知識、あるいはデリバティブの時価評価に伴う特殊な知識、保険数理とかデリバティブの評価に伴ういろいろな知識が要求されてまいります。そういうことに心得のございます専門家を配置するということも要求されてまいります。こういったことが大規模化することに伴って可能になるのではないかと考えられます。
 本文に戻りまして、大規模化により、業務分担による専門化と、それによる監査証明業務の高度化への対応が可能となり、また、経済的独立性が容易に達成され得るという利点が享受されることになったわけです。このことは評価されるべきであろうと考えますが、他方で、それに見合う設備投資や専門化に対応し得る人員を必要とし、その維持・向上のために、あるいは国際的展開力を高めるために、さらに大規模化していくことが求められてくるということで、大規模化がさらに大規模化を呼ぶ、あるいは必要とする、こういう状況が生み出されてきているのではないかと考えられるわけでございます。
 次の4番目でございますが、「監査法人の業務範囲」についてでございます。
 大規模化した監査法人の経営に維持のためには、当然それ相応の収入が必要とされるわけですが、これを監査証明業務でのみ得ることには限界があると言わざるを得ないと存じます。
 例えば、[表1]に示されております平成11年3月期の四大監査法人の証券取引法監査の受託件数は合計 3,101社となります。ただし、先ほど見ていただきましたようにインターネットのホームページに出てまいります数字でございまして、これは単純に合計した数字だけを見ておりますので、子細に見ますと、共同監査等で重なっている数字もある程度あるのではないかと考えられるわけでございますが、そういう意味ではそれほど厳密な数字ではございませんけれども、おおよその数字として聞いていただければ幸いでございます。ですから、単純に合計して3,101社でございますけれども、実質的には、これから少し共同監査等で減ると思います。
 次に、ほぼ同時期の証券取引法監査の実施数は、個別財務諸表のみの提出会社と連結財務諸表を併せて提出する会社の合計数としまして、4,110社ございます。従いまして、証券取引法監査に関する四大監査法人のいわゆる市場占有率、マーケットシェアは75%強と計算されます。75%が4法人に集中しているということで、相当に集中した状況であろうと思われます。この状況の中で、特定の監査法人が監査契約件数を伸ばしていくためにはかなりの努力が要求されるでありましょうし、そのことはまた契約を奪われる側の反撃といいますか、反応がございますので、監査法人間での依頼人獲得競争をもたらすであろうと想像されます。競争が公正に行われることが望ましいわけでございますが、そうした公正な競争が行われる限りは、提供される監査の品質についても、競争が望ましい結果をもたらすものと期待できるわけですが、そうした競争が必ず行われるという保証はございません。むしろ監査報酬の引き下げによる契約獲得競争の可能性も考えられるわけでございます。この点におきまして、現在、標準監査報酬制度というのが採用されておりますが、それに基づきます日本公認会計士協会の報酬規定がございます。これが一定の歯止めを果たしているのではないかと考えられるわけでございます。
 そこで、監査証明業務以外にも収入の道を用意する必要が、監査の品質の維持・向上を図るためにも必要ではないかと考えられます。例えば、会計上の助言をはじめとする経営コンサルタント業務、これは先ほど御説明がございましたように、法人の監査証明業務に支障がない限りという条件が付いておりますが、そういう業務は実施できるものとされておりますが、税理士業務につきましては、税理士法上の規定もございまして、監査法人としては実施できないことになっております。そこで、監査法人の社員が、監査法人とは別個に税理士事務所を構えて行っているようでございますが、この点につきまして、税理士法及び公認会計士法の改正を必要といたしますし、また、税理士会の意向等の調整も必要とされるわけでございますが、望ましくは、英独仏のように監査法人が直接に行えるようにすることが監査法人の財政的基盤の強固化のためには必要、あるいは望ましいのではないかと考えられるわけです。
 それによって監査法人の財政的基盤の強固化がもたらされるとともに、監査法人とは別に税理士事務所や経営コンサルタント業務を営む社員とそうでない社員、あるいは使用人である公認会計士等との軋轢も解消すると期待されます。それによって監査法人を構成する全員が、その全時間を監査法人のために費やすことで、統制がとれた監査法人の運営ができるようになると期待されるわけです。
 他方で、国際的な業務展開力に乏しく、あるいは各種の専門スタッフを十分には配置しがたい中小の監査法人や、あるいは個人事務所は特定専門領域に特化するか、あるいは中小企業の監査に従事することとなると思われるわけですが、この場合においても税理士業務の実施が財政的な基盤を構築するものと考えられます。
 次に、5番目、「監査法人制度の改革の方向」でございます。
 まず、監査法人社員の有限責任制の導入についてでございますが、これまで述べてまいりましたように、監査法人に生じている諸問題を解消ないし緩和する方策として、社員の無限・連帯責任を有限責任とする方策が提示されております。この方策は、上記の1で指摘いたしました監査証明業務実施のための高度な知識と判断力を要するという要件と、2で指摘いたしました監査法人の法形態と業務監督の実効性に係る問題とを同時に考慮いたしますと、関与社員を除く社員を有限責任とする方向で検討されるのがよいのではないかと愚考しております。
 関与社員につきましては、監査の品質の水準が低下することを防止するために、無限責任が追求されるものとし、特定の監査証明業務に関わったことから生じる責任を負担するものとすることでございます。
 代表社員についても恐らく同様とすることが考えられるわけですが、この場合には、直接特定の監査証明業務に関わったわけではないという問題もございますので、管理責任の側面が強調されるかもしれません。
 また、審査を担当した社員等の責任についても検討しておく必要があるわけですが、審査担当社員の場合には監査水準の維持ないし監査の品質向上を図るという観点からいたしますと、損害賠償責任よりも、行政責任の問題として行政処分の対象とすることで足りるのではないかと考えられます。
 なお、監査法人自体は無限責任といたしますが、この場合の問題点につきましては、多くのクライアントを抱える監査法人が巨額の損害賠償を重ねて倒産する事態がもし生じた場合、その影響が多くのクライアントに及ぶことを考慮し、その際の対応策として、例えば損害賠償責任を担保するために内部留保の強制あるいは最低資本金制度等を講じておく必要があるかもしれません。
 この点に関連いたしまして、社員の出資金につきましても相当額の最低出資額を定めるというようなことも考えられるかと思います。この点につきましては、現在100万円ぐらいの出資金から、多くても500万円程度の出資金と聞いておりますけれども、この出資金につきましてもある程度最低額を定めて、法人全体としての規模からも、損害賠償に対する用意をするというようなことも必要になるのではないかと考えるわけです。
監査法人の社員の有限責任化は、他方で有能な人材の確保にも貢献するものと考えられます。この点はワーキンググループの主要な論点の5番目の「公認会計士の質及び数の充実」ということにも関連するわけでございますが、監査法人社員の無限責任制を維持いたしますと、有能な人材が過重な無限責任を課されることを恐れて公認会計士になることを敬遠し、あるいは他の職業領域に転出するおそれもあると思われます。こうした事態が現実に生じますと、必要な能力と経験を有する人材を必要な人員分だけ確保しがたくなるかもしれませんし、こうしたことからも監査水準の低下が生じるおそれがあるわけでございます。
 さらにまた、リスクが多いと考えられる、あるいは推測されます企業につきましては、監査の引き受け手がなくなるというような事態も発生するかもしれません。損害賠償責任を回避いたしますために、自衛策といたしまして、危ない会社は引き受けたくないということになるかもしれないわけです。
 また、欧米の主要国が監査機関の有限責任制を採用していることから、これらの国において設立された監査機関と比べまして、我が国の監査法人が過重な責任を課せられることは監査法人の国際競争力の保持という観点からも望ましいこととは言えないと考えられます。
 さらに、社員間相互間の問題といたしまして、特定の監査契約の関与の有無による委任関係の区分が認められるとき、これを明示するためにも監査報告書の署名につきましては、現行のように法人名と関与社員名あるいは代表社員名、こうしたものを併記するというような制度が維持されるべきであろうと考えられます。
 次に、不適正な会計処理を行った経営者、法的には取締役、監査役でございますが、不適正な会計処理を行った経営者の対第三者責任と、これを任務懈怠等により発見し得なかった監査人の対第三者責任との関連について見てまいりますと、現行の商法特例法第11条は、経営者と会計監査人の無限連帯責任を定めているわけですが、これを修正することとなる比例責任制度の導入は、責任の按分の比率が個別事例ごとに負担すべきそれぞれの責任の程度が多分異なってまいります。その場合、その事実認定と責任配分の基準が問題となるかと思います。こうした事実認定はもちろんでございますが、責任配分の基準についても予め定めておくというようなことができないかと存じます。
 また、日本コッパース有限会社の第1審判決にございましたように、現実問題として、過失相殺ということが経営者と会計監査人、あるいは公認会計士との間で行われておりますので、この過失相殺の考慮が事実上、比例責任制度に当たるんじゃないかと考えておりますので、比例責任制度を明文で導入する必要があるのかどうか、問題ではないかと考えられます。
 また、関与社員等の経済的負担を軽減するための賠償責任保険制度の充実を図ることも検討する必要がございます。これは関与社員を除く一般の社員、他の社員につきまして有限責任とした場合、被害をもし被った人がいた場合に、その賠償能力というものを担保する必要があるかと思うわけでございますが、それが社員ではなくて、保険制度によって行われる場合、その保険制度の充実を図る必要があるかと思います。現行保険制度におきましては、公認会計士の過失があるときにしか保険金が支払われないという仕組みになっていると聞いておりますけれども、この点について検討が要るのではないかと思われるわけでございます。
 次に、社員の構成についてでございますが、これまで見てまいりましたように、監査法人の業務範囲を拡大した場合、コンサルティング業務や税務業務に従事する非公認会計士、公認会計士でない方ですが、非公認会計士についても社員への就任を認める必要が生じるかもしれません。この場合において、監査法人としての性格を維持するために、例えば社員及び意思決定機関の構成員の過半数、あるいは非公認会計士の割合を3分の1とか、あるいは4分の1とかというようなことで過半数以下にする、半数を超えないようにするという制約が求められるかと思います。
 この点につきましては、ドイツにおきましても監査機関といたしまして、各種の法形態を認めており、株式会社、有限会社、あるいは合名・合資会社等、いろいろございますけれども、一番多いのは有限会社組織でございます。この有限会社組織におきましても取締役に就任する社員、出資者でございますが、社員となるのは公認会計士に相当する、ドイツでは経済監査士、あるいは経営監査士とも翻訳されておりますが、こういう会計士の資格に相当する資格を持った人が半数を超えるように条件が付けられておるわけでございます。
そういうように監査法人という性格を維持し、意思決定も公認会計士が行うという必要が認められておりまして、その配慮の下に監査法人の社員の過半数が公認会計士であることという条件を付ける必要があるかと思います。
 次に、目的規定についてでございますが、公認会計士法第1条に目的規定を挿入することにつきましては、公認会計士の社会的存在意義の高揚と公認会計士自身の自覚を促すためにも妥当な措置ではないかと考えられますので、ぜひ目的規定を入れていただきたいと考えております。
 また、広告規制につきまして、虚偽ないし誇大な広告、あるいはほかとのネガティブキャンペーンと称されますような比較広告等々、禁止されるべき広告の態様あるいは内容を禁止するという形で示す。このような形式で規制してはどうかと考えておるわけでございます。
 以上、要領を得ない点もございましたでしょうが、「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲のあり方」について、愚考いたしましたところを申し述べさせていただきました。
 どうもありがとうございます。


三原小委員長  どうもありがとうございました。大変様々な論点につきまして丁寧な報告をいただきまして、誠にありがとうございます。
 ただいまの御意見に関しまして、いろいろと御質問・御意見あろうかと思いますが、まずその前に、日本公認会計士協会の、今回のテーマに属する項目につきまして、公認会計士協会の御意見をお伺いしたいと存じます。
 日本公認会計士協会の常務理事でもいらっしゃる富山委員からお願いいたします。


富山委員  富山でございます。津田先生から非常に詳しくお話しいただきまして、基本的にはほとんどこれに乗りたいという気持ちでいっぱいです。我々としましては、業界を代表して来ましたこともあり、若干抑えぎみにレジュメを書いていますが、こういうように言っていただくと、非常にありがたいと思っております。
 今日のテーマについてお話ししたいと思うんですが、まず、監査法人のあり方についてです。
 昭和41年に公認会計士法の改正により監査法人制度が導入されましたが、当時の改正法は社員数10名程度を上限と想定して作られた法律だと思います。ところが、先ほどの資料にもございましたが、去年の3月時点での調査では、1社だけが300名以上で、ほかに300名弱の法人が1社あったのですが、今年は4法人のほとんどが300名を超えるという状況になっています。そういうことから、現在の合名会社方式では、現実に機能しなくなっているということがございます。
 法人の人員数全体で2,000名を超え、社員だけでも300名を超える監査法人があるという状況下では、現在の合名会社方式をやめて有限責任会社方式に変えてほしいと考えております。
 現行法では、損害賠償によって責任を履行した結果、監査法人には一切の財産が残っていないという、支払不能の状況になった段階で、残った賠償金額については監査法人の社員全員が無限連帯責任を負うという形になっております。
 この方式ですと、先ほどご指摘がございましたが、相互に監視ができないという状況の中で、たまたま1人の社員のミスで大きな事故が起こったとして、300名以上の社員が全ての財産を投げ出さなければならない事態が起こり得る訳で、それが現実的ではないのではないかと考えております。
 そういうこともあって、アメリカでも90年代初頭にLLP制度を導入したわけですが、これと同じような制度を監査法人制度の中に入れていただきたいと考えています。
 LLP制度といいますのは、基本的には有限責任制度だと言っていいと思います。ただし、そこでは関与社員だけには、無限連帯責任を負わせるという意味で、基本的には有限責任制度だが、関与した人だけは別の扱い、ペナルティーを受けるという仕組みだというように考えております。
 それから、同じくご指摘がありましたが、有限責任制度にするのであれば、損害賠償責任を担保するために、資本を充実する必要がありますので、最低資本金制度を導入するべきだと思います。
 先ほどご指摘がございましたように、基本的には社員1人当たり最低限幾らを出資させるかという決め方になろうかと思います。社員300名で1人当たり例えば500万円とすれば、資本金が15億円になるとか、そんな形の決め方ではないかと思います。
 ちなみに、私の所属している朝日監査法人では、代表社員が600万円、社員が200万円ですので、平均400万円ということになります。
 それから、監査法人は、いろいろな業務をやっていくために、会計士以外の資格を持つ人、あるいは資格を持たない人も含めまして、いろいろな人材を必要としています。現在の我々の法人では、社員待遇、あるいは代表社員待遇という形で実質的に社員、代表社員と同等の資格のものを設けております。法律的には、これらの人たちは社員、代表社員にはなれないわけですが、社内的な取り決めでは、無限連帯責任という形も含めて、全部同じような対応でやっているということです。
 現在、総合事務所化ということが、規制緩和等の観点からも非常に重要なテーマになっています。法人としての総合事務所化という議論はあまり出てこないのですが、総合化を究極に推し進めますと、法人の中にいろいろな資格を持っている人を集め、いろいろな業務ができるようにしていくということになろうかと思います。要するに法人名で監査以外のその他のサービスも提供できるということになろうかと思います。
 その中で津田先生の方からご指摘がございましたように、監査をやれる総合事務所としては、社員のうちで公認会計士の数を一番少ない場合で過半数、今協会で考えていますのは、4分の3以上にしてはどうかと考えております。
 アメリカではもともと3分の2以上だったのですが、現在では過半数に変わっており、他の国でも過半数を指向しているように思われます。
 このレジュメには記載してないんですが、現在の規定は、合名会社方式を採る中で、いろんな点で大蔵省の認可を要する事項がございます。例えば定款変更は大蔵大臣の認可を得なければいけないため、例えば、300名いる社員の中の誰かが住所を変更するたびに、全員の判こを集めた上で、認可を受けるという、非常に形式的な手続が必要になっています。その辺も含めて、基本的に合名会社方式をやめて、大蔵省の認可事項ではなくて、会計士協会の管理の下に置いて、結果だけを届け出るという形に持っていけないかと考えております。以上が監査法人制度のあり方でございます。
 それから、業務範囲のあり方についてですが、これについても先生の方からいろいろ言っていただきました。我々としては税理士業務を監査法人でできるようにするということも言いたかったのですが、これについて前回にご指摘がございましたので、控えさせていただいています。
 ここでは、現在の業務の実態に合わせて法の規定を変えてほしいという提案をしております。今の規定は昭和23年にできた法律で、当時の業務をベースに作られているので、現在の業務のイメージに合わない部分があり、例えば、こういうように変更できたらいいのではないかという提案をしております。
 例えば、今後、内部統制組織そのものが監査又は証明の対象になってくると思われますが、これは財務書類の定義には当てはまらず、ある一つの事実、もしくは情報といいますか、こういうものが対象になってくると思われます。
 それから、マザーズの導入を契機としまして、実質的なレビュー業務がどんどん増えてくるだろうと予想しています。ナスダック・ジャパンでもそういう形になるでしょうし、他の地方市場でも同じようなスキームがあるようですし、将来はこの方式が広がって、店頭ですとか、上場会社全般に四半期報告書みたいな方式が具体化してくることも考えられます。そういうことを含めまして、第1項の業務について、次のように直せないかと思っています。
 まず、第1号は、「財務書類の監査又は証明をすること」で、これは従来と全く変わりません。
 それから、第2号は、「財務に関する情報の信頼性を担保すること」となっておりますが、文章が一部抜けており、「こと」の後に「ただし、前号の業務を除く」というふうに入れてはどうかと思っています。
 すなわち、1号は従来の業務で、2号は先ほど説明しましたレビュー業務とか、あるいは財務書類以外のいろいろな事実関係の証明業務であるとか、そんなことをイメージして作ってみたものです。
 それから、第2条第2項ですが、現在の会計士業務として相当大きな業務だと思われますIT(情報処理技術)に関わるコンサルティング業務がイメージしにくいのではないかと思います。
 そういうこともありまして、例えば、この第2項の業務を二つに分けまして、まず1号は、従来と同じで、「財務に関する情報の調製をし、財務に関する調査、立案あるいは相談に応ずること」という形にする。
 2号で、「財務に関する組織又は制度を改善させるための調査、立案あるいは相談
に応ずること」という形に直してはどうだろうかというふうに考えております。
 それから、法第34条の5についてですが、監査法人の場合は、第2項業務については監査業務に支障がない限りで実施できる、ある意味で消極的といいますか、限定的なイメージで規定されています。先ほどの先生の御主張によれば、むしろ監査法人内で全ての業務をやるべきであって、昔はそういう行き方があったんですが、そこに所属する社員が、監査は法人でやるけど、税務は個人でやるというようなことをやめ、全業務を法人でやる方向にもっていく。全ての努力を法人業務に傾注するということを考える場合、「その業務に支障のない限り、」という文章を取っていただけないかと思っています。
 次に、広告規制のあり方でございますが、これについて、公認会計士法だけが法律で広告規制について具体的に規定をしていて、弁護士法等にはそういう規定が一切ありませんで、業界の自主規制の下で管理をされていると思われます。そういう意味で、現行の法第28条は廃止していただけないか。広告・広報については、業界内の自主規制に委ねてほしいと思います。
 今回、公認会計士協会としましては、従来の規律規則を変えまして、新たに「倫理規則」を作ります。これを7月の定期総会で承認を受けるつもりなんですが、この28条があるため、広告規制に関してはほとんど緩和できない案になっております。
 国際基準、国際会計士連盟の会計士の「倫理規程」ですが、これによれば、法律などにより広告及び懇請が禁止されていない場合においては、「社会一般に客観的な方法で伝達することを目的としたもので、かつ、礼節、正直、真実及び品位のあるものでなければならない。」とされ、余り規制をするような形をとっておりません。だましたり、脅したりということは規制されますが、基本的には自由にやらせるという考え方なので、28条の廃止が実現した段階では、具体的に緩和の方向にもっていきたいと考えております。
 それから、公認会計士法の目的規定の要否ということでございますが、弁護士法その他には目的規定がございます。たまたま公認会計士法が一番先にできたか、あるいはその後に直せなかったということだと思うんですが、目的規定がなくて、第1条が単なる定義規定という、非常に格好悪い法律になっています。監査業務が本当に社会性を持っていると考えるのであれば、やはり法律の中にそういう文章を織り込んでいただけないかと考えています。
 先ほど申しました「倫理規程」の冒頭の部分をここに引用した文章なんですが、このようなものを第1条として入れていただけないかと考えています。
 「公認会計士は、監査及び会計に関する職業専門家として、公共の利益に資すために、その専門能力に基づき誠実かつ公正に業務を行い、もって社会の健全な発展に寄与することを使命とする。」こういう文章でございます。
 以上が、会計士協会の意見でございます。


三原小委員長  どうもありがとうございました。


奥山委員  すみません。1カ所訂正を。


三原小委員長  奥山委員、どうぞ。


奥山委員  恐縮ですけれども、2ページの「業務範囲のあり方」のマル1の6行目で、「公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、次に掲げる業務をなすことができる。」ということで、できる規定として提案しておりますけれども、これは誤りで、言葉がちょっと足らないんですけれども、「次に掲げる事項を業とする。」というできる規定ではなくて、これは本来業務で、「業とする」ということで、大変恐縮ですけれども、御訂正をお願いしたいんです。


三原小委員長  はい、分かりました。
 ちょっと確認させていただきたいんですが、最初の無限連帯責任のところなんですけれど、協会の御意見ですと、関与した社員は無限連帯責任である。その監査法人そのものですね。


富山委員  監査法人は当然無限責任となります。


三原小委員長  無限責任ですか。


富山委員  ええ。監査法人は払うべきものを全部払うんです。法人が払えるものを払った後で、個人の負担をどうするかということですが、そこで、関与社員だけを無限連帯責任にするということです。
 アメリカの仕組みについて、私も例えば、品質管理している人とか、あるいは法人を経営している方がどうなるかを調べてみたんですが、基本的には関与社員だけが対象となって、それ以外の人は損害賠償の対象にならないという形のようです。


三原小委員長  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの日本公認会計士協会の御意見も含めまして、今までの御報告・御意見等に関しまして、御質問等がありましたらお願いしたいと思います。
 中村委員、どうぞ。


中村委員  最初に説明を受けました論点のところ、また、今、会計士協会の中でも、LLP制度、Limited liability Partnership制度という用語があるんですが、確かこれは去年の経済対策の中にこの導入について検討するということを政府で決めたと思うんですが、一般的な問題として、このLLPはどのような進展になっておるんでしょうか。


三原小委員長  どちらから御報告していただいたらよろしいでしょうか。私もよくどういう制度か分かりませんので。


富山委員  アメリカでは、会計士以外にいろいろな職業に関してLLP制度が導入されており、弁護士等もそうだろうと思います。会計士の場合は、90年代に損害賠償請求が非常に厳しくて、大手の会計事務所が倒産するというような事態まで起こり、このままでは、会計士のなり手がいなくなるという危惧感から制度改革が検討され出して、結果的に90年初頭にLLP制度が導入され、現在では、ビッグ・ファイブ全部がLLP制度を採用していると思います。そういう意味では、割合と新しい制度ですが、向こうでは具体的に採用されているということです。


三原小委員長  ちょっと中身が違っていると思いますね。


中村委員  質問の受け止め方が違っているんですね。政府としてどうされているか。


大藤大臣官房参事官  私どもが承知している限りでは、今、公認会計士との関係で議論しているということなんですが、恐らくもししているとすれば、あるいは法務省とかそこら辺かも分かりません。事実関係を調べさせていただきまして、次回にでも報告させていただきます。


三原小委員長  では、そういうことにさせていただきます。
 いかがですか。
 宮島委員、どうぞ。


宮島委員  両方にお伺いしたいんですが、社員の出資みたいなものを考えておられるということですけれども、全体の流れがどうなっているんだか分からない。営利会社とまではお考えになってないんでしょうね。そうすると、営利会社だと、出資して、対価として利益配当を受けるというような形になりますけれども、そうじゃない。ただ出資をするということの意味がどういう意味なのか。
 そうすると、今度はむしろ、「資本」という言葉を使われましたけど、「資本」という表現もまた適切じゃなくて、基金とか、要するに担保になる財産を積み立てておくと、そういう意味でこの法人制度というものをお考えになっているのか、もうちょっと営利性に近いものとしてお考えになっているのか、その辺ちょっとお伺いしたいんですけれども。


三原小委員長  お願いします。


津田参考人  御指摘のとおり、営利性というものを余り表面化させないようにということで、公認会計士法上の特別法人という形態が選択されているんだろうと思うんですね。営利性を追求するんでしたら、そのまま合名会社組織を適用すればよろしいわけでしょうが、そうではないという意識があって特別法人になっているわけですね。
 それで、用語としまして不適切だったと思うんですけれども、御指摘のように「資本金」というのはちょっと問題があるかもしれませんですが、分かりやすいということで便宜的に使わせていただいたわけですけれども、そういう言葉で規定していくべきだという主張をしているわけではございませんので、御了解いただきたいと思うんです。
 その出資金に対しまして、これまた株式会社の用語になるわけですが、配当が行われているのかどうか、ちょっとつまびらかにしないんですけれども、当然損益計算といいますか、収支計算といいますか、そういうものが行われるはずでございますね。そして、剰余金が出た場合に、その剰余金がそのまま積み立てられて内部留保されているのか、あるいは配当というような形になって社員に還元されているのか、そこら辺は私はちょっとよく分からないんですけれども。


富山委員  まず、合名会社の仕組みに準じていますので、今、資本金と言うより、「出資金」というのが正しいのですが、出資金として内部に留保されます。監査法人は税法の上では、普通の会社と同じように税金を取られ、特別な扱いを受けていません。
 その利益を配当するかしないかは、個々の法人の考え方によると思います。配当という形にしないで、基本的に全部報酬の形で分配してしまうという考え方もあろうかと思いますが、ビッグ・ファイブは基本的にそれに近いと思います。利益を蓄積するという発想はしなくて、分配してしまうという考え方だと思います。しかし、日本の監査法人の場合は、蓄積をしていくいき方と、利息見合い程度を配当するという法人もあるようで、この辺は、それぞれ多様化しているように思います。
 以上です。


三原小委員長  関委員、どうぞ。


関委員  公認会計士協会から御説明いただいた2ページの「業務範囲のあり方」というところですが、先ほど訂正されたところで、法2条2項の方は「ことができる」じゃなくて、「業とする」に直されるわけですね。それで、その場合は、1項と2項とも「業とする」ということになることによって、公認会計士以外の方は2項のこともできなくなるという法律効果まで要求されているのか、そのあたりどういうようにされるのかというのが一つあるように思います。
 それから、もう一つは、これは念のためですが、34条の5の方は、「その業務に支障のない限り、」を取ることだけで、「一部を行なうことができる。」とここは「できる」のままに。監査法人の方はできるのままにしておこうと、こういうことでしょうか。つまり、そこのところは公認会計士と監査法人を違うようにしようという意味を含んでいるのか。
 また、それに関連して、監査法人についての1条第3項の定義規定ですね。ここのところは直す必要がないということでいいのかどうかということ。ここが第1の質問です。
 それから、第2は、先ほどちょっとこれは私の不勉強かもしれないんですが、損害賠償請求が出たときに、まず監査法人が全部補償して、足りないところを個人の公認会計士が無限責任で負うのが今の制度だということになっておりますが、そういう御説明だったわけですが、そこは訴える立場からは、必ずそうしなければいけないのかどうかというところは、どこで読むのか、ちょっと教えていただきたいと思います。


奥山委員  前半の方は私先ほど訂正したものですから、私の方から申し上げたいと思いますが、訂正しましたのは、2条1項の方が業とするということで、2項の方はできる規定です。


関委員  これはやっぱりできるなんですか。


奥山委員  できる規定です。従って、監査法人においても同様のことで、個人も同じということで御理解いただきたいと思います。


富山委員  損害賠償の話なんですが、非常に割り切って文章を書いております。法律的に言えば、好きな方から先に取ればいいので、例えば、関与社員が非常にお金持ちそうであれば、そこから先に取って、あと残りを監査法人から取るということもできます。実態論で言えば、多分監査法人に先に請求がくるだろうということで、監査法人が全資産を払った後にどうするかというふうに書いたわけで、法律的には必ずそうなる訳ではないが、現実はそうなるだろうと考えています。要するに監査法人は保険に入っていますし、資金を持っていますので、そういう意味で請求が先にくるはずで、そこで払いますが、払い切れなくなったところで、個人へ請求がいくだろうと解釈しています。


三原小委員長  よろしいですか。


関委員  制度じゃないわけですね。実際上そうなるということですね。


三原小委員長  ほかに。
 白石委員、どうぞ。


白石委員  今のLLPの問題ですけど、今の法人としての有限責任、関与社員としての無限連帯責任という制度で、何か課題があるとすれば、御紹介いただきたいというように思ったことと、それから、こういう形式にしたときの署名との関連性も念頭に置いておくべきではないかという気がしております。全く法人名だけの署名ですと、この関与社員の無限連帯責任というところが見えなくなるというのですか、法人内では十分認識しておられるんだと思いますけれども、外からは見えなくなるといったところの関連も少し注意して議論すべきかなと思います。
 そういったことも含めて、LLPでほかにもし何か課題があるとすれば、教えていただきたいと思ったわけです。


三原小委員長  では、富山委員お願いします。


富山委員  LLPでどういう課題があるかということですが、LLP制度というのは、法人としては無限責任を負い、そこの構成員である社員については有限責任だという発想でまず考えていただいた上で、その有限責任の社員のうち、関与社員だけは無限責任を負わせるという仕組みです。
 もっと有限責任という面を徹底していけば、株式会社みたいに個人には一切関係なく、法人だけが責任を負うという考え方もあり得ると思います。ただ、先ほどの説明にありましたように、監査業務というのは一身専属的な部分がありますので、担当した人は無限連帯責任を別途負わせるという形で、個人事務所との平仄をとっているんだと考えます。
 それで、制度的に何か検討すべき事項があるかという点ですが、LLP制度というのは職業専門家に適合した制度ではないかなと思っています。
 それから、監査証明に関係して、監査事務所名だけを記載した場合に、担当した個人をどうやって訴えるんだという議論がありますすが、法人内部では、誰が関与社員であるかは明らかに定められていますので、裁判のとき必要であれば、誰が関与したかを明らかにできますし。それから、監査概要書の上で、誰が関与社員か明らかにされていますので、そういう意味で監査報告書に個人名を書くべきかどうかという議論、要するに書かないと損害賠償をうまく請求できないということとは切り離して考えていいのではないかと考えています。


三原小委員長  関委員、どうぞ。


関委員  先ほど私も少し勘違いしたのかもしれませんが、2条1項の2号に「財務に関する情報の信頼性を担保すること」ということが業務であると書かれるという趣旨だと思いますが、そこのところについては先ほど私が申し上げた質問については、どういう考え方になるのでございましょうか。今の1項と全く同じことを言っているというように解されるか。それを拡大するというようになるのか。これについてはどんなようにお考えになっていますか。


富山委員  第2条第1項は、基本的に資格独占業務ということで、会計士しかができない仕事だということに法律的になっています。それから、第2条第2項は、名称独占業務、要するに公認会計士という名前でやっていい業務ということであり、会計以外の人がやってはいけないわけではないのですが、ただ、その人の資格名を付してこういう業務をやるということはできないというように解釈されていると思います。
 現在、財務書類の監査又は証明することだけが第1項業務になっていますが、レビュー業務であるとか、あるいは内部統制組織が適正であるとか、そういう証明をするということ自体も基本的には監査業務の延長線上にあり、従来の財務書類の監査証明という範疇からすると、ちょっと広がるような形になるので、表現を変えているだけでして、実質的には保証業務といいますか、証明業務の中に入ると思います。そういう意味で、弁護士とか税理士等は、こういう業務はできないと考えています。


奥山委員  追加でよろしいですか。


三原小委員長  はい、どうぞ。


奥山委員  若干補足しますと、今日事務局で御用意いただいた10ページですね。先ほどちょっと御案内あったと思うんですけれども、「公認会計士の行う業務の拡大」ということで幾つかの事項を挙げられておりますが、実はこのほかにも政党助成法に基づく監査がありまして、それは補助金、いわゆる国家から出た資金の収支についての監査があるわけですけれども、これらはいずれも今、2条1項の財務書類の監査又は証明をすることというものには適合しないと、こういう解釈なんですね。しかしながら、やっていることは、監査に近い、あるいは限りなく会計士でなければできないというふうな類のものです。
 ですから、この辺をどう私どもとしては位置づけたらいいかということがありまして、このほかにも保証業務等で今後新たなものが出てくるだろうと、そういうことを考えたとき、1号だけではなかなか律し切れないということで、この2号を考えたと、こういうことなんですね。そこをちょっと補足したいと思います。


三原小委員長  岸田委員、どうぞ。


岸田委員  監査法人の形態についてでございますが、先ほど津田先生の御報告では、合名会社の規定を準用しておりますけれども、合名会社の本来の趣旨といいますか、300人ぐらいの規模からすると、現状に合致していないというお話がございましたけれども、私もそのように思っております。
 そこで、会計士協会からの先ほどの御意見ですと、合名会社の規定の準用をなくすというのですから、特別の法人を作る、あるいはその法人の形態、現在の法律ではほとんど準用ですけれども、それを作るというようにおっしゃっておられるのかということをお伺いしたかったんですが。と申しますのは、アメリカのLLPというのは、別に会計士法の中に規定があるわけじゃなくて、LLPの規定を準用できるかどうかということだろうと思います。
 我が国でも今後、会計士に限らず、税理士とか弁護士も法人化ということがあれば、一般的には法人というものを考えてみてはどうかというふうに思います。
 現在、国会では、中間法人の設立簡素法律というのが出されているそうなんですけれども、一般的にはそういう中間法人にするとか、あるいは、こういうことを言ったら失礼ですけど、今度、証券取引所が株式会社になるそうなんですが、従来の中間法人であっても株式会社にするのであれば、理屈としてはそういうようにした方がすっきりするのではないか。
 つまり、いろんな法人形態でできるように選択をするのが、これからのあり方の一つではないかというようにちょっと思ったわけで、もし御意見ございましたらお伺いしたいと思います。


富山委員  監査法人につきましては二つ考え方があると思います。
 先ほど社員数が25名以下の法人が9割以上ということでしたので、ほとんどの事務所は従来どおりの形にして、LLP制度を監査法人制度の中に別途作るのも一つの方法でしょう。先ほど法人による総合事務所という提案をしたんですが、いわゆる「総合事務所法」を作って、その中で監査をやれる総合事務所については、会計士の数が過半数であることを要求するとか、そういう決め方があるのではないかなという意味で、導入に関して幾つかのバリエーションがあると思います。我々としては、どれを選択すべきだと考えているわけではないので、LLP制度というものを導入していただきたいということをお願いしているだけです。


三原小委員長  伊藤委員、お待たせしました。


伊藤委員  私は企業の立場からという点において、ちょっと見てみたいというように思うので、皆さん方と若干意見が違うかもしれませんが、教えていただきたい。
 つまり、津田先生のおっしゃることは大変よく理解できるわけですね。環境の変化が非常に大きくなってきて、しかもこの法制がかなり昔のままの状態であって、それがベースになっている。ところが、論点整理を読ませていただくと、例えば、まず、使命感についても出ておって、その使命をはっきりされたらいいんじゃないか。今、世の中に言われているのは、こういう環境変化に確かに対応してない面もありますが、日本のレジェンドクローズに代表されているような、これは企業の会計制度もそうだし、公認会計士のあり方も問題になっている。
 前回もずっと議論してきて、監査費用云々だとか、監査期間を長くするとか、いろんなことやって質を上げなきゃいけないというようなことを考えていきますと、公認会計士の品性をまず確保して、その地位を向上させる点において、私は使命をきっちりとさせるということは大変賛成なんです。しかし、それがLLPを導入したような形で、しかもLimited liability Partnershipという形が日本の法制度として定着されてない段階において、公認会計士だけを有限責任に持っていく。代表社員は別だけれども、非代表社員とか非関与社員を有限責任にする。あるいは最低資本金制度を作るということは、公認会計士の品性、つまり責任モラルとかそういうもの、これもちょっと指摘されていますが、それとはどういう関わり合いを基本的に持っていこうとするのかということですね。
 つまり、日本の公認会計士は世界に冠たるものの中で、監査期間は短いかもしらんけれども、質的には高いモラルを維持しようとするんだから、使命は明確にするけれども、そういう責任については無限責任を負うんだよと。企業に対してもそれを明確にしていただくんだよと。つまり初めから事故を前提にして、訴訟が行われてもいいよというような発想でいくのか、本来訴訟というのは行われないほどきちっとした対応を、企業に対して保証するから企業も信頼してくれというようにやるのか。今は、監査法人がサインをした形になっているわけで、そういうような信頼関係があって今の公認会計士制度が存在しているのを、ここで変えるのかどうかというところをまずお伺いしたい1点目です。
 それから、2点目については、確かに今の報酬制度だと、ちょっとうがった見方をすれば、いろんなコンサルティング業務をやった方が収益が上がる。アメリカの会社を見ても、ビッグ・ファイブのコンサルティング会社はものすごく収益を上げていて、監査の方は余り儲かってないのが現状なんですね。
 従って、日本もそういう多角化をしていろいろ実態の変化に応じて行うということも重要だけれども、同時にそこでの収益を上げるということもあるだろうし、企業の要請から言えば、確かに公認会計士に単に監査だけじゃなくて、そういうコンサルティングが欲しいということは、我々の実務において大変あるわけですね。
 しかしながら、現に我々、朝日監査法人の方もここにおられますが、朝日監査法人は朝日さん独自で国内にコンサルティング会社をもう作っておられるわけですよ。海外のアーサーアンダーセンコンサルティングと別に朝日コンサルティング会社を作っておられる。そこで同じような業務を別会社としてやっておるから、機能的には一緒ではないか。それを監査法人の中に導入するということは、変なうがった見方を、大変公認会計士の方々に失礼な言い方ですが、公認会計士の国内ファームが少し安易に流れていないですかと。つまり、一方で非常に高い評価を得なきゃいけないという使命感を得つつ、一方において、安全弁を余りにも図ろうとしているんではないですかというようなことは矛盾してませんかということをちょっとお伺いしたい。
 以上です。本質的なところなんです。


三原小委員長  では、とりあえずは協会にお願いします。山浦委員も何かそれに関連して御意見があるようですが。


伊藤委員  私は何もいじめているわけでも何でもないんで、率直に御意見をお伺いしたいんです。


奥山委員  では、まず、私、奥山の方からお答えいたします。
 1番目の御質問は端的に言うと、監査人の責任モラルと、今提案しているいわゆるLLP、有限責任との関係をどう考えるのかと、そういうようにお聞きしましたけれども、私どもの意見は、有限責任と言っているのは、あくまでも法人を組織している非関与社員ですね。監査法人と関与社員については有限責任ということを全く考えておりません。
 御案内のように、会社でもそうだと思いますけれども、何千人の世界になると、それこそ札幌から博多まで、あるいは沖縄まで、あるいは海外ということになったときに、全然関与できない社員というのは必ずいるわけですね。関与できない社員に、無限責任というのは、それは現実問題として過重ではないか。それはやはり関与社員がしっかり責任とってほしい。そうでなければ、社員として全国に置くということが不可能になるということです。


富山委員  同じ話なんですが、例えば、伊藤さんの会社の関与社員が、何かで大きな失敗をしたときに、彼が責任を負担するのは当たり前なんですね。そのとき、私も同じように責任を負担しなければいけないか。そうしないと会計士としての本来あるべき姿が全うできないかという議論だと思うんですね。そういう意味で、関与しようがない人を一緒に巻き添えにするのは、やっぱり制度としておかしいのではないですかというのが一つの考え方だと思います。


三原小委員長  伊藤委員、どうぞ。


伊藤委員  総合事務所化の問題に先ほどの御議論と関連するんですね。つまり関与社員と非関与社員というんだけれども、パートナーというのは基本的に、たまたま関与社員というのはうちにあるけれども、その人たちが3年間か何か固定されれば、そのうち代わってもらうわけですね。そうすると、関与社員と、例えばこれを見ると、いわゆる公認会計士でない人もかなり雇っているわけですけど、そういう人たちは本来身分が違って、そういう人たちは全く別なんだと。つまりパートナーというのはあくまでも基本的に社会的地位の高い方であって、どこにおろうと、その人たちの社会的責務というのが非常に高いものだ。
 だから、日本の公認会計士は極めて質の高いものなんですよというような社会的認識の下に使命感が今度新しく作られ、そういうように成り立った方がいいのではないかと思ったわけです。従って、そういうロジックから言うと、公認会計士以外の弁護士とか何とかの業務というのは別会社化して、そことは離す。つまりそこは有限責任の世界にして、それから、公認会計士のファームで雇っている公認会計士以外のパートナーの以外の人も本当は別会社にして、そちらの方の所属にして、無限責任の会社の中に入れないというようなきちっとした整理をすべきではないかというのが私の感じなんです。
 つまり公認会計士の社会的地位をうんと上げて、そして、日本の公認会計士社会は違うんだというところをきちっとやらないと、もちろん訴訟はこれから多くなっていくと思いますが、アメリカのような訴訟社会でもない日本に、アメリカと同じ制度だけ導入するのがいかがなものかという感じがしました。
 以上です。


山浦小委員長代理  大体論点は伊藤委員と同じような形なんですけれども、一つは、前半部分のLLP化について、奥山委員、富山委員のお答えについては、外部の利害者としては恐らく納得できないだろうと。つまり一つの監査法人でたまたま関与した社員の質によって、投資家が損を被ったときに、ほかの関与社員に影響を被らしたくないからLLP化をすると。それはちょっと外部に対して通用しない論理ではないか。
 というのは、やはりそういうことであっても、例えば一つの企業が製品等で消費者から損害賠償を受けたりしますと、企業としての責任ですね。御意見は分るんですけど、ある特定の社員の監査業務については、むしろ法人としてきっちりとした品質管理をやるという、これがやはり大前提ではないかと思うんですね。そのための組織づくりのために、例えばLLP化等でしっかりした体制をとる。そういった論法でなければ、一般の人たちは、社員の身勝手というか、そういった印象で受け取られるんじゃないかという気がするんです。
 ですから、私、以前、LLP化について提案したんですが、そういった趣旨では決してなくて、やはりもっと監査業務の大規模化等に対応して、しっかりした監査体制を確保できるような、そのためのLLP化ということを提案したつもりなんですね。
 これはもう一つあるんです。一つは、もう一方は伊藤委員の話なんですけれども、コンサルティング業務への拡大の話なんですね。実は、70年代から80年代にかけて、SECと各監査法人との間で随分と軋轢がありました。そして、その結果が例えばアーサーアンダーセンのコンサルティングといったところが分社化というか、別組織化したんですね。
 最近のSECの動きを見ますと、一番懸念しているのは独立性の問題です。つまりコンサルティングの業務拡大が、やがて独立性の問題をなし崩し的にしてしまって、監査に対する一般の信頼が得られなくなる可能性がある。そのために、SECとしても、コンサルティングについてはなおも懸念を持っているんです。ただ、一種の必要悪と言ったら変ですけれども、なぜそれでもコンサルティング業務を認めるかといいますと、完全に監査業務だけに特化させようとしますと、例えば専門家を雇ったり、要するに組織体制を充実して、きっちりとした監査を遂行する上で、どうしても監査報酬だけではなかなか監査法人が成り立っていかない。そうして、コンサルティングとか税務業務とか、そういうところである程度スタッフを養う収益を確保して、その上で監査そのものを充実させていこうと。ある意味では独立性に対する懸念は持っているけれども、監査法人としてのいわば収益体質を確保して、そして全体としてしっかりした監査ができれば、国民経済的な視点からすれば、ある程度目をつぶらざるを得ないんじゃないか。
 ただし、あくまでも内部的な組織体制で、要するにアメリカで言いますとファイアウォールと言いますけれども、そのファイアウォールを設けて、コンサルティングと監査部門について、あくまでも緩衝があって、監査の内容に対して手心を加えるようなことがあってはならないと、そういった釘を刺しているんですね。いわばコンサルティングを無制限に認めるといった考え方ではないと思うんですね。
 その点が、コンサルティングを監査法人の方で手がけて、そういったところに業務を広げていくという、その趣旨は分からないではないんですけれども、やはり何らかの形での独立性に対する法人側の担保制度というか、これについてはこちらの方の公認会計士協会として出される提案について、もう一歩附帯的な条件を付けていただきたいと私は思っているんです。


伊藤委員  ちょっと私それに関連して同じ意見なんですが、もうちょっと詳しく言いますと、つまり企業は常にリスクを負ってメリットを取ろうとしているわけです。従って、我々は公認会計士の監査とは別にコンサルティングを求めるときは、我々の会社もよくやっているんですけれども、それは単に監査的な内容の分析じゃなくて、もっと前向きの分析なんです。従って、そこではリスクがあるんですよ。リスクのアドバイスを得て、それをもとにして我々は監査をお願いしているわけではない。全く違うんですが、同じファームでそれをやったときのリスクというのは、ものすごく大きくなるわけです。そのリスクを極端に言えば、監査法人の無限責任の中でやるということ自体が極めて危険なんですよ。
 従って、我々はそういうオウンリスクでやる事業、経営は常にオウンリスクですから、リスクのないところに利益はないわけですから、そのリスクをミニマイズしてメリットを得るわけですから、それをやっていただく分野は、監査法人と別の事業体で、そこで逆に言えば、人を雇い、いろんなITのビジネスを専門家とやればいいんです。しかし、監査というのは、厳然たる、より崇高なる方が絶対的なものでやってもらわなきゃならない。そこではリスクはないということで使命感も明確にし、私はだから、そういう点でこの使命感をはっきりさせることが極めて重要だと思うんですね。
 ですから、何を使命としてするのかにも関連するわけですけど、そこのところがちょっと希薄になってこないかなという感じです。決してそういうことをお考えになっているわけじゃないと思いますけど、そこだけです。


三原小委員長  今の伊藤委員の御意見は、要するに何百人という監査法人の現状ですね、それ自体が本当は合ってないといいますか、本来の趣旨に合ってないといいますか、お互いに無限連帯責任を持ち得るような単位に法人を改組するべきであると、むしろそういう方向に行くべきだということですね。


伊藤委員  パートナーとそれ以外の従業員を分けてもらいたい。


三原小委員長  山浦委員の御意見は、LLP方式をとれば、何百人という社員の数でも、お互いに無限連帯責任をとるようなチェックはできるんでしょうか。それとも、やっぱりそんなに大きいというのは考えていないということで、むしろ分割の方向に考えるべきだということなんでしょうか。


山浦小委員長代理  先ほど申し上げましたように、独立性に抵触しないような形の、そういう内部的な担保措置をとっていただいた上で、コンサルティング業務を並列して行うというのは、むしろ監査そのものの質を高める上で仕方がないかなと。恐らくそれがSECの今の考え方のような気がするんですね。
 ただ、これも、伊藤委員のおっしゃるような形で完全に分断させますと、実は今の監査で公認会計士自身が、例えば今のアメリカなんかもそうですけれども、訴訟社会を迎えようとすると、その訴訟に耐え得るだけの監査のいわば品質を担保するために、かなり高いコスト、報酬で監査を引き受けざるを得ないと思うんです。しかも、かなり人員を入れまして、それは国民経済的な視点からしますと、企業にとっても大きな負担になるのではないかと思うんです。
 従いまして、コンサルティングはある程度の収益源、それから、スタッフの力を組織内で、法人内で確保して、そしてそれをいわば監査の品質向上のためにも使うと、そういう図式の方が現実的ではないかという気がするんです。


伊藤委員  そこはよく御検討いただいた方がいいと思いますけど、一緒にして訴訟の対象にするとなると、必ず起こってくるでしょうね、訴訟が。日本においても起こる可能性があると思います。つまり一方はリスクをはらんでいるものを分析し、アドバイスしていくわけですね。一方はそうじゃなくて、純然たる監査ですから、異質のものが二つ入るわけですね。しかしながら、やはり公認会計士さんがアドバイスを、例えば税務の面も含めて総合的にやるということは極めて重要なんですね。だけど、それはあくまでもコンサルティングなわけですね。先生のおっしゃるファイアウォールが働いて、そこをどういうように調整するか。
 従って、無限責任の法人が子会社を別会社としてコンサルティング業務を認めさせるということがある程度私は必要だと思うんですけれども、そこのところが、どういうような組織形態で行われるか、あるいは法律的に許されるかは、現に今やっている業務があるわけですね。実際に別会社でやっておられるわけですから。そのあたりがどういうようになっているのか、私はよく分からないんですが、そういう形で恐らく収益を上げていかないと、先生のおっしゃるとおり非常に厳しいでしょうね。だから、私は山浦先生のおっしゃることは大変妥当だと思います。


三原小委員長  奥山委員、どうぞ。


奥山委員  伊藤委員から大分疑問を投げかけられているんですけれども、LLPの問題は、私どもはやはり監査法人という大きな組織がまずしっかりとした製品を生み出すという意味では、山浦先生がおっしゃったような品質管理、これをきちっと行って、そして関与社員を付けるべきだと、こういうふうに思っておりますので、やはり一義的には監査法人が会社と同じようにその製品について保証するという意味では、全責任を本来負う。
 ただ、その担当した社員も、自分が担当していて、ぽかやったら、それは当然責任を負うということで、会社と担当した関与社員が無限責任を負うんだと、こういう考え方なんですね。
 ですから、何百人も社員がいて、関与できない社員がいるというのは、現実にそうですし、実際に仕事をやってみれば、そうなると思います。その人たちは、やはり監査法人の中で責任分担していろんな仕事をきちっとやっていくという意味では、日本のレベル、数の多さというのはやっぱり必要だと思いますし、ますますこれからも充実させていかなければいけないと思うんですね。
 そういう意味では、今の監査法人を無限責任の範囲内で分割していくというのは、やはりこれは間違いだろうと思います。今の社員数程度は必要だと私は思いますし、さらに内容を充実させるべく、構成しているメンバーで努力していくと、こういうことではないかと思うんですね。
 それから、コンサルティングにつきましては、これははっきり言って悩みがあります。ファイアウォールだけでは私ももしかしたら不足かなと。やはり戦略的なコンサルティングですね。つまり結果についてかなりリスクが伴う、そういう会社の戦略的な部分についてのコンサルティングというのは、もしかしたら監査法人はやるべきではないかもしれません。ある意味で監査法人の社員として、会計士として、その結果については責任を負わない範囲でのレベルのものはコンサルティングでやってもいいかと思いますけれども、確かに今は非常にストラテジーとしてのコンサルティングがありますから、そういうものについては同じ法人内でやるべきではないかもしれない。ファイアウォールを作ってもやるべきではないかもしれないという感覚はあります。ただ、この辺については、アメリカでも今非常にもめていますように、日本でもどういう方向へ行ったらいいか、まだまだこれから議論が必要かなということで、今、私見として申し上げたいと思います。


伊藤委員  どうもすみません。私もよく分かりました。


三原小委員長  富山委員、補足的に。


富山委員  ちょっと補足させていただきます。
 まず、コンサルティングについては、日本の監査法人は企業のいろんなニーズに応えるために、どんどんコンサルティングやるべきだという主張があります。その方向でやっていこうとするときに、やはり独立性の問題が出てきます。日本の監査法人は、従来コンサルティングにそれほど力を注いできたと思えないんですが、最近は非常にその量、範囲がともに広がってきていまして、以前は収入の9割ぐらいが監査収入だったのが、今では6割とかに、どんどん落ちてきて、そのうちに3分の1ぐらいまで落ちるだろうと予測されます。
 今の段階で独立性の問題を、どうすればいいのかと議論する必要があります。例えばアメリカのSECの基準では、コンピレーションは会社からの委託業務ですから、非常に制限された範囲でしか認めない、あるいは経営そのものに直接関わるような業務、アウトソーシングとか、そういうものについては基本的に認めないという形で幾つかのルールができています。これについて日本でも具体的に、では、どういう基準で認め、どういう基準で認めないかという議論をやらなければいけない時期に来ていると思います。そういう意味で、コンサルティングをどんどん進めながら、こういうルールづくりをやっていかなければいけないと思います。
 それから、損害賠償の問題なんですが、日本の会計事務所は損害賠償について以前は心配したことはほとんどないと思います。というのは、現実の裁判で損害賠償が確定したケースはほとんどないわけです。東京海上の損害賠償保険に入っていますが、そこから損害賠償金として払われたケースはなくて、訴訟費用がかかったとか、そんな形で終わっていると思います。
 ところが、ここ2~3年の動きを見ていますと、監査法人、会計事務所が、損害賠償を負担しなければならないだろうという事例が具体的に出てきています。我々が損害賠償に保険などで対応すること自体が安易に逃げるということになるのか、監査業務のような重要な仕事を単にお金で解決するかということになるんですが、決してそうではないんです。そういう事態を避けるために、各監査事務所では、品質管理の強化を、ここ数年で急激に進めてきています。現実に最近の新聞を見ていましても、そこまで徹底するかなというぐらい、厳しい対応をしていると思います。うちの事務所自体でも品質管理には非常に時間と人をかけて取り組んでおりまして、決して安易に流れようとしているわけではないんですね。
 やはり企業自体が国際化して、海外から資金を調達してくる中で、外国からの投資家がどんどん増えてくる。彼らは全くアメリカ国内と同じように行動しますので、どうやって訴訟に持ち込もうかと今考えているわけですね。そういうことに対応しなければいけないので、我々としては、まず、資本の充実のため資本金を増やし、保険にも最大限入るようにして対外的に対処する。しかし、中では品質管理を強化しているという現実があることをご理解いただきたいと思っています。


三原小委員長  この問題は議論すると切りがないんですが、どうやら、今の監査法人は監査法人制度ができたときに想定していた人数をはるかに超えた社員の数になっている。そのまま無限連帯責任を認めるということについては、どうも実情に合っていないという認識は大体皆さん共通にお持ちだと思うので、あとは、それに対して、例えば監査法人の規模を限定するといいますか、そういうやり方もあるでしょうし、それから、今、協会の方で提案されたように有限責任化という方向もあるでしょうし、それに見合っての内部の統制といいますか、チェックをしっかりやっていかなきゃいけないという前提となる条件もいろいろあると思いますので、これはもう一回また議論する機会があると思いますので、今までの議論を事務局の方で整理していただきまして、またそれをもとにして、この次の機会に、この小委員会としての意見をまとめてみたいと、こういうように思います。
 関委員、どうぞ。


関委員  ちょっとこだわるようで申し訳ないんですが、重要なところなので、1回だけクラリファイさせていただきたいんですが、冒頭に大藤さんの方から御説明があった資料1の2ページの下の方から3ページの上にかけてなんですけれども、2ページの一番下のところに、監査証明業務といって、法2条1項業務というのがあって、監査証明業務、「公認会計士の独占業務であり、」と書いてあるわけですが、それから、その次のページの上にロとあって、「上記の法定監査のほか、制度監査や任意監査がある。」と書いてありますね。
 それで、同じ資料の10ページに公認会計士の行う業務が拡大していると。これについては、この紙は、この拡大されているところがロというふうにとらえられているんですか。10ページの方はロではないといふうな考え方なんでしょうか。
 つまり、公認会計士協会のお話では、私の理解が間違っているか。この10ページのことをきちんとやるために、公認会計士法の2条1項の2号を付け足す必要があるというように私は取ったんですが、そのところは、そういう理解でいいんでしょうか。その場合、少し考え方が、つまり証明と読めないからこれが要るんだという説明だったと思うんですが、そこのところは両者の間に一致があるのかないのか、そこだけちょっと教えていただきたいと思うんです。


三原小委員長  それは私も同じような疑問を持っておりまして、例えば、地方自治体の包括外部監査人というのは、単に財務に関する情報の信頼性にとどまらないと思うんですね。もっと内容的なことで、例えば効率性とか有効性とか、そういう面での監査を期待されていると思いますので、協会の方で用意されたこの表現では、ちょっと読み切れないところがあるだろうと思うんですが、その辺、全部公認会計士法に盛り込むというつもりでこれを考えておられるのか、あるいはそういう特別法でそれぞれ広がっていくのは、それはそれで、そちらの方で読んでいくと、そういう考え方なのか、その辺ちょっと聞いてみたいと私も思ったんですが、よろしくお願いします。


福地課長補佐  10ページの資料の御説明でございますけれども、資料1の3ページのマル5というところに、「近年、公認会計士に対しては、監査業務だけでなく、会計に関した経営上の助言など、多様な会計サービスの提供が社会から求められており、その傾向は今後、一層強まることが想定される。」という、最近の公認会計士の業務の多様化ということでこの10ページの資料を用意しておりまして、内容的には、2条1項の業務、それから、それ以外の監査業務も含まれております。
 例えば、1番の新興企業向け新市場(マザーズ)における四半期財務情報につきましては、これは2条1項の監査業務として位置づけられているところでございます。これは東証が制度を作って監査を行うということで、制度監査というような位置づけになっているところでございます。
 それで、一方、4番の地方公共団体包括外部監査につきましては、外部監査制度は地方自治法の体系上の監査委員監査の一部をいわば外部委託するものであることから、公認会計士法上の監査には当たらないというような整理がされているところでございます。
 従いまして、この表につきましては、2条1項もあれば、2項もあるということで、業務が拡大してきているということの資料を用意したものでございます。


関委員  3ページのロは、そうすると、どういうものになるんですか。またその中間に入るものが何かあるという表現なんでしょうか。それとも、今のマザーズのようなことをロで表現しているんでしょうか。


大藤大臣官房参事官  ロは、まさに1項である、監査証明であるということは間違いないわけでございまして、それをいわゆる法律の規定によるかどうかということでございます。


関委員  マザーズはロに入る証明業務。


大藤大臣官房参事官  マザーズは、ロということで位置づけられたということだと思います。


関委員  この中では、そうすると、今のを直さなくても、当然独占業務に入るものも入っていると、入ってないのもあると、こういうように10ページの表は整理すればいいんでしょうか。
 イかロかというよりも、1項か、新しく公認会計士協会が加えなきゃいかんとおっしゃっている、そのどちらに入っているのかというところは。


富山委員  この10ページの4番は、異質なもので、これは証明ではなく、どちらかというと、コンサルティング的な仕事なのですが、監査という名称を使っていると思います。現在、我々は監査でないというように理解しています。それ以外の分はどちらかというと1項の業務に入るのではないでしょうか。


関委員  証明で読めるということですか。


富山委員  ええ。


大藤大臣官房参事官  マザーズの位置づけについても、これはやはりかなり検討というか、どちらに整理するのかというところがあるんだと思います。ですから、まさにそういう中間的なマザーズ的なものが増えてきて、マザーズは1項ということで整理したわけですけれども、そのさらに外延的なものが出てきた場合に、位置づけるツールを設けておくかどうかという考えという理解です。


富山委員  協会の立場ですが、1号は明らかだと思うんですが、2号を付け加えた趣旨は、こういうものをちゃんと区分け整理をして、独占業務に入るべきものは、この中で吸収したい。この表現で吸収できるかどうかは、我々も検討しなければいけないんですが、皆さんの御意見をお聞きしながら、適当な言葉に変えていけばいい、こういう受皿を作りたいという発想で用意したということです。


三原小委員長  例えばというような形で、規定の形にしたものだから、いろいろ、本当のところは今まだ規定の表現まで議論する段階ではないと思いますので、後でまたこの次の議論するときには、おっしゃりたい趣旨というものを文章で明確化して、また議論したいと思います。法案の規定の表現は、この委員会でそこまで言うかどうか、ちょっと疑問のところがありますけれども、趣旨を明確にするということで、この次また検討したいというふうに思っております。


山浦小委員長代理  よろしいですか。


三原小委員長  はい、どうぞ。


山浦小委員長代理  余り時間を取りたくないんですけど、会計士協会の方でおっしゃる提案の理由、よく分かります。実はマザーズにつきましても、これは四半期報告書、しかもレビューである。これはいわゆる財務諸表監査の保証水準が随分落ちるというか、同じ保証業務であっても、いわゆる監査業務とは違う、品質がかなり低いレベルの業務なんですね。しかし、それでもやはり公共の利益に資するという意味では、監査及び証明業務といった位置づけも必要なんですね。
 ですから、今新しい会計士のこういった証明業務の流れは、監査と非監査で、しかもレベルの低い保証水準の業務の流れが一つある。
 それから、もう一つは、財務諸表とか財務書類以外の事項がそういった証明の対象になっている。要するに業務対象の拡大化の問題と保証水準の多様化の問題、両方があるんですね。これがこの資料の中に混ざっております。
 それから、さらにもう一つ大事なのは、業務対象の多様化がむしろコンサルティングに近いようなものが入っているんですね。それがまたなかなか切れないところがありまして、ですから、そりあたりを整理する必要があるということが、協会の趣旨ではないかというように理解しております。


三原小委員長  もう大体時間になりましたので、終わりにしたいと思っていますが、一つちょっと確認させていただきたいんですが、協会の御意見の中で、監査法人には、これからは税理士業務を監査法人としてやれるようにということも入っているんですか、この趣旨の中に。


富山委員  本音では入っていますが、レジュメには書いていません。業界としましては、当然入れるべきだという主張で、シャウプ勧告以来、本来会計士が税務をやるべき主体であるというように考えていますので、本来は入れるべきだと思っていますが、この公認会計士審査会の趣旨には合わないので、ここでは取り上げず、協会としては別の方面で対応したいと考えています。


三原小委員長  あと、ぜひ何か発言したいという方いらっしゃいましたら。今日は大分議論する時間があったので、よかったと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 予定の時間が参りましたので、本日の会合はこの辺で終了させていただきたいと思います。
 今回まで5回にわたって、当小委員会の検討事項を大きく三つに分けました各テーマにつきまして、各界の方々からの御意見を伺い、意見交換を行わせていただいたわけであります。
 次回は、事務局の方で、これまでの議論を整理していただきまして、各テーマにつきまして、より深い審議を行ってまいりたいというように考えております。言うならば、これまでの意見を整理して、たたき台を作っていただいて、それをもとに、今度は参考人の方は考えていないんですが、十分議論をしていきたいというふうに考えております。
 なお、次回の会合の日程につきましては、事務局の方からまた連絡をさせていただきますので、御出席くださいますようによろしくお願いいたします。
 それから、皆さんの席上に第4回会合の議事録(未定稿)をお配りさせていただいております。御覧いただきまして、お気づきの点がございましたら、お手数ですが、4月21日(金曜日)までに事務局までお知らせくださるようにお願いいたします。
 以上をもちまして、本日の小委員会を終了いたします。
 どうもありがとうございました。

午後5時2分閉会

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