平成12年6月8日(木)

 
公認会計士審査会

第8回監査制度小委員会議事録


於 大蔵省第三特別会議室
(本庁舎4階)

大蔵省金融企画局市場課
  


午前10時0分開会

三原小委員長 おはようございます。まだお見えにならない方もいらっしゃいますが、時間になりましたので、ただいまから、「監査制度小委員会」の第8回会合を開催いたします。
 本日は、中村委員、宮島委員が御都合により欠席でございます。
 それから、大変恐縮でございますが、私、今日午後の小渕前総理の葬儀に出席することになっておりまして、バスの時間の都合で申し訳ありませんが、終了10分前に退席させていただきます。その後の議事進行を山浦小委員長代理に交替していただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、まず最初に、前回会合時の「適正な監査日数の確保と監査報酬のあり方」の項目を御議論いただきました際に、「適正な監査日数の確保」ということについて、十分な資料のもとに議論していないと思われましたので、重要なテーマでもございますし、公認会計士協会の方で調査資料も用意していただいたようでございますので、公認会計士協会から資料の説明などをしていただいた後に、この点に関して意見交換をさせていただきたいと思います。
 それでは、公認会計士協会から説明をお願いいたします。


富山委員 富山でございます。貴重な時間をいただきましてありがとうございます。
 去年の春先から、我が国企業の財務情報の信頼性回復のための対応策プロジェクトチームというものを結成して、作業を進めてまいりました。この目的は、11年3月期の決算の英文財務諸表について、ビッグ・ファイブの要請でレジェンドワードが付けられたわけですが、何をどうすればレジェンドワードを取り除くことができるかということを研究するために発足したプロジェクトチームでございます。メンバーとしては、前監査基準委員会の担当の小野さんを筆頭にしまして、各監査法人、当時のビッグ・ファイブから各2名ずつの若手のパートナーを出してもらいました。この方々は皆さん、海外経験等も豊富で、向こうの事情もよく分かっているという方々を中心に検討を進めました。
 この結果は、今年の3月に理事会の審議を通りまして、一応協会側としての手続は終わっておりますが、諸般の事情から、対外的にはまだ公表しておりません。
 この報告は大きく二つに分かれまして、「日本の監査規範整備の必要性」というのが第1部で、第2部が「日本の監査実務に対する信頼性を回復するための監査時間数増加の必要性」、それから別紙あるいは付録が付いております。
 まず、「はじめに」の部分ですが、これは先ほど申しましたレジェンド等について記載しており、会計基準あるいは監査基準等は、国際基準への調和という方向でどんどん進んでいますが、それでも全部が全部直った訳ではないという意味で乖離があるということを言っております。
 第1部の「日本の監査規範整備の必要性」の「監査規範設定主体に関する提言」で、日本の場合は企業会計審議会が監査基準等を設定しておりますが、アメリカでも、海外どの国をとりましても監査規範の設定は会計士業界が行っており、アメリカ型の例を提示しながら、設定主体を会計士協会に移すべきではないかという提言をしています。15ページの次の16ページに、こういうイメージでの監査基準審議会概念図というものを提案しております。
監査基準審議会を会計士協会の中に置いて、その構成員を15名のメンバー、例えば、大手の監査事務所から6名、中規模の監査事務所から2名、政府代表から1名、学者3名、財務諸表の作成者2名、利用者1名というような形の構成員で組織を作る。それを三つの部会に分けまして、A、B、監査証明業務基準専門部会という三つに分けて、そこで集中的に常勤で専任のスタッフを置いて監査基準等の改訂作業を進めていくということを提案しています。
 目的は、監査基準の整備についてスピーディーな対応を図るべきであるということもありますのと、やはり監査基準の設定というのは本来は専門部会でやるべきではないかということです。
 あと独立性について触れておりまして、独立性に関してアメリカと同じように監視機構を協会の中に置くべきではないかという提案でございます。
 次に、これはアメリカの基準と日本の基準とを比べまして、どこに差があるかということを非常に細かく分析しております。これについては審議会の第二部会の方でも検討されたといふうに伺っております。協会でやるべきことと、審議会でやるべきことを区分けして、今後これについても検討されるというふうに伺っておりますので、ここでは省略いたします。
 ここで時間いただきましたのは、第2部の「日本の監査実務に対する信頼性を回復するための監査時間数増加の必要性」というテーマでございまして、これについてはいろんな調査の仕方があるのでしょうが、質の比較というのは非常に難しいので、時間数を比較してみようということで、各監査法人の提携しておりますビッグ・ファイブ、アーサーアンダーセン、デロイトゥシュトーマツ、アーンストヤング、KPMG、プライスウォーターハウスクーパースという五つの事務所に協力をお願いしました。業種としては、金融業、製造業、サービス業の三つを、大規模会社とそれ以外の会社という二つの区分に分けて、結果として六つのサンプルを、国をアメリカとドイツに分ける形で、協力をお願いしました。
 その結果、時間数について統計的な数字が出たわけですが、同じ業種の同じような規模の会社の日本の監査時間と向こうの監査時間との比較をした結果が10ページの表ですが、例えば、売上高平均をベースにした場合に金融業の中規模で7倍、金融業の大規模で3倍、製造業の中規模で 1.5倍、製造業大規模で3倍近く、サービス業その他の中規模で 4.1倍、サービス業その他の大規模で 1.4倍という形で、いずれも向こうの実施時間が多いということが判明しました。
いろいろな理由が考えられますが、今後、連結財務諸表監査が中心になり、中間連結財務諸表の監査も始まり、いろいろな基準が変わっていきますので、そういう意味で監査時間が増えていくという項目がございまして、自動的に解消されていく部分があると思います。
それから、最近リスク・アプローチの重要性を強く言われていること、あるいは内部統制の検証手続の充実の必要性、品質管理の重要性、いろんな意味で監査に対する期待が高まっているということもあって、自動的に解決する部分もあると思いますが、基本的には監査基準を厳密に適用して、リスク・アプローチを徹底していった場合には、やはり時間数は増やしていく必要性があるというふうに考えています。例えば、向こうの監査人と日本の監査人とでは質が違うとかいう議論もあるようですが、向こうのレベルが低いということはないので、そのようなことは議論にもならないと思うんですね。やはり厳密な監査を徹底していくという方向性で考えた場合に、時間の増加はある程度やむを得ない、それを実現するためには、会計士そのものの人数を増やす必要がありますが、これについては別のプロジェクトでやられているようですが、試験制度そのものの見直しも含めて抜本的に見直す必要があるのではないかという提言をしております。
以上でございます。


三原小委員長 どうもありがとうございました。
 ただいまの協会からの御報告を基にして、これから御質問・御意見をお伺いするわけでありますが、その前に、本日、御欠席の中村芳夫委員から、この問題について御意見を頂戴しておりますので、事務局の方から紹介をお願いいたします。


大藤大臣官房参事官 本日、協会から御報告をいただいた趣旨は、前回の議論の中で、適正な監査日数の確保ということについて十分な資料のもとに議論していないという御指摘がございまして、公認会計士協会の方で調査された資料があるので、それを紹介していただいたらどうかということでございます。
 そういう趣旨でございますので、本日、御報告いただいた中で、監査時間のところが今回の議論の素材ということだと思いますが、本日御欠席の経団連の中村常務から御意見をいただいておりますので、これを読み上げさせていただきます。
 我が国の会計監査制度の国際的な信頼回復に向け、企業、会計士、行政が一体となって取り組んでいかねばならない点については論をまたない。しかし、日本公認会計士協会の我が国の監査の信頼性を回復するための提言には必ずしも信頼性回復につながるとは考えられない点や、企業負担が著しく増大しかねない内容が含まれており、以下のとおりコメントしたいということでございまして、1のところは、本日のこの委員会の直接のテーマではございませんが、参考までに読み上げさせていただきます。
 第1部において、監査規範設定のための監査基準審議会を日本公認会計士協会の中に設置すべきとの提案がなされている。現在会計基準設定主体で議論されているとおり、会計基準、監査基準の設定を民間へ移行した場合には独立性の観点が重要になる。米国の例が紹介されているものの、監査人が自らの遵守すべき規範を設定することに関しては疑義があり、慎重な検討が必要と考える。
 2でございますが、第2部において米国の監査時間との比較、会計制度などの環境変化から我が国における監査時間数の増加の必要性、金融機関3~4倍、その他 1.5倍~2倍が提言されている。しかし、監査時間は監査人の質、企業の内部統制状況、連結決算の定着状況、訴訟リスクの状況等により大きく変動するものであり、監査時間を増加させることによって信頼性を回復させるべきであるとの本提言の決議には賛成しかねる。企業はコスト削減のために内部統制の充実にも努めており、監査においても一層の効率化、高度化が求められている。
 以上、御紹介いたしました。


三原小委員長 どうもありがとうございました。
 御意見をお伺いする前に、ちょっと私の方から協会にお伺いしたいんですが、信頼回復のためのプロジェクトチームを発足させてこのようなレポートを出されたということですが、もともと信頼が低下していると考える根拠として、監査日数が足りないということがあって、それに対する提言として、今回、監査日数の増加ということが導き出されたように思うんですが、そもそも信頼低下の理由として、監査日数が不足していると考えられた根拠というのは何かあるんでしょうか。


富山委員 具体的根拠はありませんが、各法人にはアメリカ等から来られたパートナーがいますが、彼らとのディスカッションの中で、どうも日本の監査時間が少ないのではないかという示唆があり、それがレジェンドワードを付けさせられた根拠の一つになったというふうに聞いております。本当にそうかどうかを実証的に調査してみた結果、やはり少ないという結果が出たということです。
 特に金融機関については大きな差があるんですが、この程度の時間で金融機関を本当に監査できるのかということが前から言われていたようで、それについて今まで調査をやったことがなかったので、これを機会にビッグ・ファイブにお願いしまして、機密に属する事項になりますが、データを出してもらったということでございます。


三原小委員長 分かりました。
 それでは、どうぞ、御意見をお願いいたします。
 伊藤委員、どうぞ。


伊藤委員 まず、今日のこの資料でございますけど、私は、公認会計士協会自らがいろいろ問題点を認識し、チームを作って検討されている点については、大変敬意を表する次第であります。
 内容もそれなりに大変立派に良く詰められておるのではないかというふうに思います。その点は非常に結構であり、日本公認会計士協会がこういうことで自らをブラッシュアップしていくことは大変いいのではないかと私は思っておりますが、しかし、これがそのまま公の場の公式資料とするのには、やはり客観性が要るのではないか。その客観性は誰が評価をするかということになるわけですね。そうしますと、会計をやっている公認会計士協会だけじゃなくて、やはり私どものように監査を受ける立場の者ですね、そういう人の意見。あるいは大学の先生のように、それなりに学問的なことを進めておられる方とか、それから、立法する人たちの意見を聞いて客観性を高め、ということでないと世の中の評価は得られないというふうに思います。従いまして、今日はそういう点でこの委員会にこれが出てきたんだというふうに私は理解をいたしております。
 ちょっと話が長くて恐縮なんですが、それで、中村さんの方から、先ほど御紹介がございましたけれども、実はこれは中村さんの個人的意見もさることながら、先般も経団連の中で各関連の部会長クラスが集まりましてディスカッションした結論がここに出ておりまして、単に中村さんの意見だけではない。経団連に参画している企業は基本的にはこのような認識であるということを御理解いただきたい。
 従いまして、ここの考え方は、経団連に属している大多数の会社がこういう考え方を持っておりますということをよく踏まえて御理解いただければ、大変私はありがたい。
 最初の第1部は、先ほど大藤参事官から、今日の直接的なテーマでないということでお断りがございましたのですが、あえて言わせていただければ、そういう観点に立ちますと、やはり監査基準の設定というものを我々見直すべきであるということは極めて重要であるし、現にそういう方向でこれは進んでおりますので、監査人が自らの遵守すべき規範を設定することに関しては疑義があるというようにここに書いておりますけれども、これが私どもの正直な気持ちでありまして、やはりこういうような委員会とか、あるいは審査会とか、何らかの客観性が得られるところで行うべきではないか。
 それから、私は何も政府の肩を持つわけじゃないけれども、全て政府が参画すべきではないというように片づけるべきかどうか疑問を持っております。つまり客観性があるという点においては、極めて行政当局が客観性があるわけであって、何の利害関係もないわけですから、そういうところをぜひ考えていただければありがたい。
 それから、第2部に金融機関の問題に関するところが出ておりますけれど、私は金融機関に属しておらないのでよく分からないのでございますけれども、レジェンドクローズが出てきた原因の一つには、やっぱり金融のアーティキュチャーの問題があったことは、先般、私はアメリカにいろいろ調査に行ったときにそういう感じを受けました。これは中原さんからまたお話があろうかと思いますけれども、そういう点において、私どももビッグ・ファイブ一つじゃなくて、数社にお任せしておるわけですけれども、つまり監査時間がやはり日本は少ないということ、私はその点については決して反対しているわけじゃありません。日本の企業体質の古いのを引きずったままで監査が行われているところもあると思いますので、これはぜひ改めるべきではないかというふうに思っております。
 しかしながら、企業によって違うのではないか。これは大企業と中企業という規模別だけでとっていますが、企業は規模ではなくて、むしろ質が重要である。もちろん小企業だからどうこうとは言いませんけれども、大企業の中でもものすごく質が違って、例えば格付だって随分変わってきている。そういった格付が一つの判断材料にも証券取引条件によって違ってくるわけで、そういうものとの関連性はどう考えていくのかとか、何か客観的なものをある程度参考にしつつ、この監査時間というものを考えるべきではないかと私は思います。
 それから、もう一つの点は中村さんの意見にも出ておりますが、内部統制の充実をやっている企業とやってない企業。それから日本独特の内部統制組織。これは企業独自の内部の問題ですから、これはまた言い出すと企業自身が内部統制をしっかりしていると言っても客観性がないわけで、それをどこでどういう形で判断するかということも重要だと思いますが、ただ、今の日本の監査役制度をどう考えていくのかということも考えていただきたい。監査役制度との絡みで考えないと、日本のコーポレートガバナンスがヨーロッパと違いますから、それもぜひ御考慮いただきたいという点を含めて。
 それから、3点目は、この監査時間について、やはりいかに効率良くやっていくかということが触れられてないような感じがしたのでございますが、つまり公認会計士協会の今やっておられることは、今の新しいコンピュータシステム、ITシステムといったものをどう駆使して、これを短くしていくんだ。つまり効率を上げていくんだということがこのチームの中で内容が触れられてないのがちょっと物足りない。
 以上、3点でございます。以上です。


三原小委員長 ありがとうございました。
 協会の方でアメリカとの対比を先ほど言われましたが、監査時間をアメリカ並みに増やしたいと、こういう御意見でしょうか。それとも、そうじゃなくて、大体協会としてどの程度増やしたいという心づもりはあるんでしょうか。


富山委員 いろいろな点で基準が変わってきていますので、自動的に増えてくる部分があると思うんですね。例えば、金融機関にしても自己査定という新たな手続が入ってきましたので、ここでも述べられていますが、導入前と導入後では時間数が15%増えているということもあります。そういう意味で自動的に解決する部分がありますが、やはり物量的な面で足らないなという感じがあるのも間違いないようなので、例えば、平均的に、 1.5~2倍ぐらい時間を増やす方向で検討していかなければいけないのではないかと考えています。
 それから、先ほどコンピュータを利用した監査等のお話がございましたが、もともとアメリカの方がそういう方面は進んでおり、進んでいても、ああいう実績時間だということは、じゅうたん爆撃に近いようなことも一部やっているんだと思うんですね。その理由は、訴訟社会であるため、調書をちゃんと証拠として用意して、裁判になったときに十分に対抗できるようにするというニーズが非常に高いというところからきている部分があると思います。
 いずれにしても、ある部分を増やさざるを得ないというのは実感として持っています。自動的に増える部分もありますので、倍になるとは単純には考えていませんが、ある部分は増やさなければいけないと考えています。


三原小委員長 いかがでしょうか。
 中原委員、どうぞ。


中原委員 金融機関の話が出ておりますので、私どもも述べさせていただきたいのですが、結論的には、監査時間というのはあくまで結果であって、そうおっしゃっていますけれども、やはり問題は中身なんだろうと。諸外国の信頼を得るに十分な監査内容の問題であって、結果として監査時間が増えることはあり得るかもしれません。
 金融機関の場合には、結局、資産査定というのが従来の財務会計の監査では入っていなかったものが新しいFASのマニュアル等で、資産査定についての基本的な考え方が、会計の用語をもってかなり明確に決められた部分があるものですから、私は金融機関の場合には、このような議論がなくても結果としてはどのぐらい増えるか分かりません。当然増えると思います。ただ、あくまで監査時間というのは結果であって、最初から監査時間が足りないから、品質の問題にそれが影響を与えておるということではなかろうという感じがしておるわけでございまして、正直、金融機関については、かなり今までの監査内容とは今大きく変わりつつあると思います。
 レジェンドクローズの方も、私はやはり一番大きく影響しているのは会計基準の問題であって、監査のやり方が悪い云々というのもあるとは思いますけれども、やはり一番大きいのは、最近になって始まっておる時価会計の導入が遅れてきたというようなこと、その辺の問題が大きいのではないか。逆に言えば、そちらがグローバルなものになっていけば、自然に日本の会計監査に対する信頼性もある程度は回復できるんだろうという気がいたします。
 それから、12ページで「リスク・アプローチの重要性」ということをうたっておられるんですが、金融機関の場合にもリスク・アプローチということを最近盛んに内部監査、内部検査でも言っておりまして、「リスク・アプローチ」という言葉が若干私の誤解かもしれないんですけれども、いろんな意味にとられる傾向がありまして、リスクの所在を徹底的に分析して、その大きさを見ると、そこまではリスク・アプローチでいいんですけれども、その後に続くものとしては、リスクの高いところは検査、監査の頻度をどんどん高める、あるいはもっと深い監査、検査をやる。ところが、リスクがある程度限定されておる、小さいところについては、検査の頻度なり深さを抑えて、全体として検査、監査の効率性を上げていくという考え方だと思うので、リスク・アプローチをとるから監査時間がそれで自動的に増加するということにはならないんじゃないかという気がしています。
 以上でございます。


三原小委員長 ほかにいかがでしょうか。
奥山委員、どうぞ。


奥山委員 時間そのものよりも質の方が大事だ、これはもっともなことだと思いますし、私どもももともとそのように考えております。
 今こういう調査をしたのはなぜかというと、時間を比較して足らないから増やすと、単純にそういう趣旨ではなくて、何が具体的に欠けているから時間が不足しているのか、あるいは向こうは日本の監査で考えられていること以上のことをやっているのかということで、その辺の具体的な実務のチェックを行いたいということがあるわけです。
 それで、二つのことを申し上げたいと思うんですが、監査の実務で一つ考えられるのは、一応リスク・アプローチを日本でも取り入れましたけれども、これが本当に徹底してリスク・アプローチとしてやられているのかどうか。まだ概念だけで、きちんとしたリスク・アプローチが定着していないんじゃないか。徹底したリスク分析をして、そのリスクに応じて内部統制をチェックしていく、これを徹底してやれば今までの過去に問題となった粉飾事件等において、かなり違った見方ができたのではないかということは考えられると思います。
 従って、経営者に不正があったとか、あるいは内部統制を無視した不正とかいうものがありますけれども、しかし、そこはリスクをきちっと分析して、そのリスクを分析したことを基にして、それに対してきちっとしたアプローチをしていけば、もうちょっと違った観点があるのかなという意味で、この辺はまだ我々が徹底してないんじゃないかという反省もあり、また、今後の改善もあるかなということであります。
 これと関係して、銀行については、信用リスクについては今お話のように、自己査定を中心としたチェックでほぼこれはクリアできているんじゃないかと思うんですけれども、信用リスク以外のリスク、これについて十分なアプローチがまだ日本ではなされてないというふうに聞いています。これにつきましては、今実は金融監督庁と会計士協会と、どういうふうにそこは外部監査の形でフォローアップしていこうかということで検討を始めております。やはり業務監査という形、あるいは内部管理体制、リスク管理体制の監査というんでしょうか、そういう視点からもうちょっと検討を加える必要があるんじゃないか。従って、そういう検討が加わって、ある程度の成案が得られれば、またそれを基にして監査時間が増えるということが自動的に出てくると思いますので、そういう意味では具体的な内容を詰めていくことによって、監査時間は自ずから増えてくるというふうには思いますけれども、トータルとして見ると、今監査時間が足らない、あるいは向こうが多いというのは、そういうことが裏にあるのではないかというふうに思っております。


三原小委員長 すみません。今日は第II、第IIIのテーマ、最後まで一応やるつもりでおりますので、まだまだ御意見あろうかと思うんですけれども、今伺った限りでは、監査時間増加論と慎重論、両方あったと思うんですが、一応両論整理して書いてもらって、次の会合でこの問題を議論させていただきたいと思います。ということで、次のテーマに入りたいと思います。
 続きまして、本日は、当小委員会の検討事項を大きく三つに分けました各テーマのうち、前回の「公認会計士の質の向上に向けて」の残りの検討事項と三つ目の検討テーマであります「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲のあり方」につきまして、前回と同様に事務局の方で整理していただいた「たたき台」に基づきまして、より深い審議を行ってまいりたいと思います。
 二つ目のテーマであります「公認会計士の質の向上に向けて」につきましては、前回活発な御審議をいただきまして、とりあえず二つ目の検討事項まで御意見をお伺いしたということで、本日は三つ目の検討事項であります「日本公認会計士協会への強制入会制度のあり方」から御審議をお願いしたいと思います。
 それでは、事務局から基本的な考え方と考えられる方策について説明をお願いいたします。


福地課長補佐 それでは、お手元に配付してございます「資料2」3ページでございます。読み上げます。

   3

.日本公認会計士協会への強制入会制度のあり方

(1)

 基本的考え方
 公認会計士協会は、公認会計士の自治機能を通じて公認会計士制度の健全な発展及び監査体制の強化を図ることを目的として公認会計士法に基づいて設立された認可法人であり、公認会計士の自治統制機能が十分に発揮しうるよう全ての公認会計士が会員となるいわゆる強制入会制度が採られている。
 しかし、一方で、強制入会制の下では、資格者間の自由競争が制限される等の弊害が生ずるおそれがあるなど、強制入会制のあり方を見直すべきとの指摘がなされているところである。

(2)

 考えられる方策


 強制入会制度の維持と適切な役割の発揮
 近年、公認会計士監査による適正なディスクローズの確保と公認会計士監査に対する国際的な信頼の向上が一層重要になってきており、こうした観点から、公認会計士協会においては、「継続的専門研修制度」や「品質管理レビュー」の導入、倫理規則の全面的な見直し等、公認会計士監査の充実のための様々な取組を行っているところであり、職業専門家の自主規制機関としての役割や外国の職業会計士団体との連携情報交換などにより監査の質の向上を図るための窓口としての役割など、その役割は、極めて重要であると考えられる。
 自主規制機関である公認会計士協会が公認会計士監査の充実のために様々な取組を行っている状況に鑑みれば、公認会計士の自治統制機能が十分に発揮しうるよう全ての公認会計士が会員となるいわゆる強制入会制度は、これを維持することが適当であると考えられる。
 なお、公認会計士協会は、公認会計士法により、上記のような役割が果たせるよう強制入会の単一の機関として組織の存続が保証されていると考えられることから、今後とも、より一層の機能の充実に努めるとともに、その業務運営に係る自律性と透明性が十分に確保されていることについて、常時、対外的に理解が得られるよう社会に対する説明を行っていく必要があると考えられる。
 また、これに関連して、公認会計士協会が自主規制機関としての役割を適切かつ積極的に果たすことを前提として、監査法人の定款記載事項である「社員の氏名及び住所」の変更等を認可から届け出にするなど、行政当局による認可事項の範囲を見直すことを検討することも考えられる。


三原小委員長 どうもありがとうございました。
 では、この検討事項につきまして御意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 特に強制入会制度について、これを廃止するべきであるという面からの御意見というのはないんでしょうね。大体ここに書いてありますように、当小委員会の趣旨としては、監査の充実・強化という見地からいきますと、協会に強制的に入会してもらって、協会の傘の下に入ることがむしろ望ましいという方向になりそうな気がするんですが、また、例えば規制緩和の見地から別の意見もあるかもしれませんが、この小委員会としては、大体この方向でよろしいということであれば、こういう文章でまとめさせていただきたいと思うんですが、いかがなものでしょうか。よろしいでしょうか。
 特に御異論がなければ私の方からのお願いですが、最後の締めの言葉ですね。「検討することも考えられる。」という、これは一応「たたき台」としての言い方だと思うんですが、最終的なまとめとしては、大体皆さんの御意見が一致しているのであれば、もう少し明確な言い方はできるかなというふうに思いますが、そういう方向で文章を考えていただきたいと思います。
 中原委員、どうぞ。


中原委員 おっしゃるとおりのことだと思うんですが、ちょっと私よく分からないのは、資格登録と業務登録のところの議論で、どうだったんでしょうか。これは例えば、公認会計士としての業務に従事する場合には当然強制加入と。加入してないと業務ができないと、これは必要だと思います。ただ、今後、アメリカ型の状況を展望すれば、CPAの資格を取って企業内で働くと、監査業務に従事すると、こういうことも当然出てくるので、その辺の関係をちょっと考慮しておく必要があるのかなという感じがするんでございます。


三原小委員長 その話はこのまとめの文章の別のところに書いてなかったですか。どこかで見た記憶があるんですが……。


福地課長補佐 2ページに記載しております。


三原小委員長 ここに一応「たたき台」としては、2ページのマル2で書いてあるわけですね。


大藤大臣官房参事官 いわゆる米国の制度に倣って、資格と業務のところを分けてはどうかと、かなりテーマとしては大きなテーマでございますので、論点としては相当本格的、中長期的な検討も必要になるテーマということで、これ自体については是非とか、余りまだ議論が行われてないテーマだと思います。


三原小委員長 そうですね。おっしゃるとおり、文章としては見た記憶あるんですけど、余り議論をした記憶がなかったんですが、ただいま中原委員の御提案もありますし、この資格登録と業務登録制度を分けるという考え方について少し議論してみたいと思いますが、中原委員としては、何かこれについて御意見あるんでしょうか。


中原委員 いいえ、特にそうじゃないんですけど、たまたまこの2ページのマル2を読んで、強制入会制度の維持というところに移ったものですから、この前の例えば業務研修を受けない場合に、それを登録抹消というようなペナルティで担保するのかというような議論がありました。それは法で決めていくのか、あるいは会計士協会の自主規制の下で運営していくのかということにも絡んでくるわけですけれども、業務を行うには公認会計士協会に入会しなければならない。逆に公認会計士協会に入会しないと業務ができないということであれば、この前、資格停止の議論がありましたけれども、資格の剥奪とかそういうペナルティの与え方もできるという趣旨において、業務登録と公認会計士協会の強制加入、そこは結び付くと思うんですけれども、資格登録というのが出てきたときに、そういう立場で公認会計士協会への加入を強制しなけばいかんのかどうかという点は若干疑問じゃないかという単純な疑問でございます。


三原小委員長 ただいまの中原委員の問題提起なんですが、富山委員、どうぞ。


富山委員 前回、アメリカの場合、CPEを受けなかったために資格停止された場合にどうなるかという議論がありましたが、調べてもらいましたら、CPEが理由で業務停止をされた場合には、それを後で補完すれば元へ戻れるということで、試験を受け直すという仕組みではないようです。要するにCPEの単位を補完すればいいということを補足させていただきます。


三原小委員長 奥山委員、どうぞ。


奥山委員 資格と開業といいますか、営業との関係の問題なんですけれども、実は会計士協会としては、これは大きな問題点を含んでいると考えております。
 一つは、今は企業の方のお話が出ましたけれども、税理士と会計士を兼務している方がいらっしゃいます。これは会計士の半数と言ってもいいかと思うんですけれども、その場合に、税理士を本業として、会計士は本業じゃないということを考えた場合に、その方はもしそういう制度ができると、恐らく資格だけ登録して、あとは税理士の開業登録という選択があり得るのではないか。そうしますと、会計士協会の相当数が会員でなくなり、つまり公認会計士でありながら、公認会計士協会には属さないという結果が出てくる。これは実は税理士と会計士の問題というのは、もっと大きないろんな意味での争いといいますか、制度の欠陥が私はあると思っているんですけれども、そこまで踏み込まないとなかなか整理できない問題が入ってくるなということで、これは参事官もおっしゃったように直ちに直すということではなくて、課題として中長期的に検討していくということがよろしいのかなと思います。


三原小委員長 この議論をすると大きなテーマなので、いろいろあるようなんですが、時間の関係もありますし、検討を行う必要があるという認識については大体皆さん共通だと思いますので、とりあえず文章は、「検討を行うことが考えられる。」という文章にしておいていただいて、また次回以降で時間があれば、改めてこの問題について議論するということにしたいと思います。


伊藤委員 時間を取って大変恐縮なんですが、1点だけ教えていただきたいんです。


三原小委員長 はい。


伊藤委員 公認会計士の幹部の方がお見えになっているので教えていただきたいのですが、企業の中に公認会計士資格者を多数仮に用意した場合、今後の試験制度に関連するんですが、その場合は公認会計士協会としてはどういう評価をされるんですか。つまりそれは監査の内容を充実する人たちがいるという評価なのか、どういうふうな企業に対する認識をされるのか、1点だけ教えていただきたいんです。


奥山委員 個人的意見ですけれども、私はやはり会計に関する専門家という意味で、その方々が企業にたくさんいらっしゃるということは、大変すばらしい企業ということになるのではないかというふうに評価させていただきたいんです。


伊藤委員 どうもすみません。


三原小委員長 よろしいですか。
 それでは、続きまして、三つ目のテーマであります「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方」に移らせていただきます。
 最初の検討事項であります「監査法人制度のあり方」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。


福地課長補佐 「資料3」でございます。読み上げます。

  III

.「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方」
 近年、被監査企業の大規模化や業務内容の多様化に対応するため公認会計士監査の専門化や高度化が急速に進展し監査法人が大規模化せざるを得ない状況にあり、また、公認会計士や監査法人に対しては、監査業務だけでなく、会計に関した経営上の助言など、多様な会計サービスの提供が求められているなど、公認会計士や監査法人の業務領域も拡大しており、公認会計士及び監査法人を取り巻く環境が、法制定時から著しく変化している。このような環境の変化を踏まえ、監査業務の質の維持・向上という観点から、監査法人制度のあり方、公認会計士等の業務範囲のあり方、等を見直す必要がある。


.監査法人制度のあり方(責任形態等)

(1)

 基本的考え方
 現行監査法人制度は、合名会社や組合に準じ、法人の債務について社員が無限連帯責任を負う制度となっているが、このような制度は公認会計士監査の専門化や高度化等に対応した監査法人の大規模化に適合しにくい制度になってきており、また、合名会社形態は、一般的に、社員の相互監視ないしは相互牽制による業務運営が期待されているが、監査法人の大規模化等に伴い事実上十分に機能せず、むしろ、責任の所在が希薄化している状況が生じているとの指摘もある。このような監査法人を取り巻く環境等を踏まえ、監査法人の組織・責任形態のあり方等について検討を行う必要がある。
 監査法人の組織・責任形態のあり方等に係る検討においては、近年の企業の経営破綻に伴い監査を担当した監査法人に対して社会から厳しい指摘や批判がなされている現状を踏まえ、監査業務の大規模化等に対応した品質管理体制の充実・強化、監査に対するモラルの維持、監査業務における独立性の確保等の観点から、社会からの理解が得られるよう慎重に検討を行う必要がある。

(2)

 考えられる方策

マル1

 監査法人の社員に係る有限責任形態の導入
 上述のとおり、公認会計士監査の専門化や高度化の急速な進展により監査法人が大規模せざるを得ない状況にあり、また、公認会計士及び監査法人の業務範囲の拡大、さらに、監査業務における訴訟リスクの増大という監査法人を取り巻く環境に著しい変化がみられるところである。
 このような環境の変化に対応した監査法人の組織・責任形態として、現在の無限連帯責任を負う社員のみからなる合名会社形態に加え、有限責任パートナーシップ(LLP)等有限責任形態について、必要な資本の調達の容易化、専門家スタッフ確保の容易化や監査法人内の責任の明確化による監査に対するモラルの向上など監査の質の向上にもつながるのではないかという点に着目し、これを導入し選択することが可能となるよう検討することが必要との指摘がある。
 また、欧米の主要国が監査事務所の有限責任制を導入しており、これらに比してわが国の監査法人がこの制度を採用していないことは、監査法人の国際競争力の保持という観点からも望ましいこととは言えないとの指摘もある。
 他方、近年の企業の経営破綻に伴い監査を担当した監査法人に対して社会から厳しい指摘や批判がなされている現状において、訴訟リスクの増大に対処し問題を起こした関与社員以外への影響を遮断するという効果を持つことになるLLP等有限責任形態の導入については慎重に検討すべきであるとの指摘がある。
 以上のような観点に鑑みれば、有限責任形態の導入については、単に監査法人あるいは社員の訴訟リスクの軽減を図るという観点からだけでなく、取り巻く環境が大きく変化している監査法人にとって、有限責任形態は監査の質の向上に資するものであるとの点に着目して検討を行う必要がある。
 なお、その検討に際しては、わが国会社法制との関係も踏まえ、いかなる有限責任形態が考えられるかという検討とともに、現行制度に比して被害を被った投資家等にとっては損害賠償請求の履行が限定されることになることから、そのような懸念を払拭し、社会の理解が得られるような具体的方策(最低出資金の法定化等賠償責任能力の維持・向上策)を併せて講じることなどが必要であり、慎重に検討していく必要がある。

マル2

 公認会計士以外の専門家の監査法人への参加
 監査証明業務の充実・強化を図る観点からは、公認会計士以外の専門家(例えば、弁護士、不動産鑑定士、年金数理人、コンピュータ技術者、等)が有する特定分野の高度の専門的な知識、技能等を有効に利用することが監査の意見形成の充実に資するものと考えられ、このような専門家が一定範囲内で監査法人の社員として監査法人へ参加できる制度を検討する必要があるのではないか。


三原小委員長 ありがとうございました。
 それでは、この検討事項につきまして御意見をお伺いしたいと思います。
 ちょっと私から文章のことなんですが、(1)の「基本的考え方」ですね。第1パラグラフと、それから、その次の「監査法人の組織・責任形態のあり方等に係る検討においては、」という、第2パラグラフとのこのつながりは、文脈はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。これは「一方」というようなことになるんでしょうか。この前のパラグラフと後のパラグラフとの対応関係がよく分からなかったんですが、これは上が積極論で下が慎重論ということなんでしょうか。


大藤大臣官房参事官 そうでございますね。いずれにしても、国際的な整合性とか、そういう観点からその責任形態を追求すべきではないかという流れがあるわけでございますが、一方でそれに対して、少なくとも慎重に検討すべき必要があるという指摘等があるということで、そういう意味で言いますと、御指摘のようなことだと思います。


三原小委員長 言葉を補うとすれば、「一方」とか「他方」とか、そういうことになるわけですね。


大藤大臣官房参事官 はい。


三原小委員長 分かりました。
 それで、もう一つ、この有限責任形態論について確かめておきたいんですが、これは確かに協会が言われるように、現在のような大法人化になったものについては、こういう論理というのは考えられるかもしれませんが、一方、まだ依然として小さい監査法人があるわけですね。例えば、10人とか20人とか、数としても相当あるんじゃないかと思いますが、そういったところに対してはどういうふうに考えておられるんでしょうか。同じ論理はちょっと適用しにくいと思うんですが、やはり有限責任化ということを考えておられるんでしょうか。


富山委員 二つの解決方法があると思うんですが、一つは、有限責任にする場合には、例えば、最低資本金とかの経済的な面で縛るという形で選択を認めるということがあってもいいと思います。アメリカではいろんな形態があり、制度的には自由に選択できる形がいいのではないかという気がしますが、別にこだわってはいません。我々の論拠として、大規模化を挙げていますので、外形的に見て大きな組織についてはとれると言う行き方もあると思います。余りこだわっていませんが、アメリカ的な形をとるのであれば、選択を自由化して、そのかわり有限責任の場合には、経済的な面で縛って資本充実を求め、損害賠償がちゃんとできるような形に持っていくことが考えられます。


三原小委員長 関委員、どうぞ。


関委員 ここは専ら監査法人について議論しているわけですけれども、公認会計士という個人の業務と監査法人が並列しているということを前提にして考えると、個人の公認会計士というのは形の上では無限責任という。無限責任だということの意味がどのくらいあるかという問題はありますけれども、そういう状態が引き続き続くんだろうと思うんですが、大きな法人になるとそこがどうかという議論がここの中心だと思うんですが、1ページの一番下の(2)のマル1というのは「監査法人の社員に係る有限責任形態の導入」となっているわけで、監査法人そのものはここでは依然として無限責任だということなんでしょうか。
 後ろの方の文章を読んでいますと、監査法人そのものも有限責任にするというような感じがちょっとあるものですから。それはどうなっているかということをちょっとクラリファイしていただきたいと思うんです。


三原小委員長 私も同じような疑問を持ちまして、事務局の方に聞いたんですが、前も確か協会の方から盛んに監査法人は無限責任だと、それから、関与社員は無限責任だと、非関与社員だけ有限責任だ、こういう言い方をしておられたものですから、監査法人は無限責任だろうと思うんですが、ちょっとこの文章は紛らわしいんですね。その辺、協会の方から説明してください。


富山委員 商法でも株式会社と有限会社とがありますが、当然、会社自体はすべての責任を負うわけですね。それらの会社の株主とか出資者については、出資した金額が限度だという意味で「有限責任」という言い方をします。監査法人についてもLLP制度を導入した場合でも、法人自体は持っている財産をすべて出さなければいけないという点では無限責任だと思います。
 その出資者であるパートナーについては、関与した社員だけが無限責任を負うのであって、それ以外の社員は負わないという意味で有限責任だということです。


三原小委員長 要するに監査法人としての財産がある限りでは、無限責任としてこれは全部出さなきゃいけない。しかし、それ以上の責任は負わないという意味では有限だと、こういうことですね。そういう理解でよろしいわけですね。


関委員 合名会社というふうにここはしていますが、制度としては合資会社という制度もあるわけで、監査法人の中にも無限責任社員と有限責任社員と両方並列あると、こういうことを言おうとしているんですね、この後段の方は。だとすれば、もうちょっとはっきりそこのところが出るように書いた方がいいように思いますけれども。


三原小委員長 協会の趣旨はそういうことで、監査法人としての資産がある限りでは無限責任だと、そういう提案に対して御意見をお伺いしたいと思います。
 岸田委員、どうぞ。


岸田委員 二つお伺いしたい。
 一つは、今おっしゃった富山委員のお話、よく分かったんですけれども、今日は持ってきていませんけれども、最初の資料では、例えばドイツでは、報酬額の何倍とか、最初から契約で責任を決めているのが立法例によってはあるようですけれども、それを法律で決めるか、あるいは監査契約で決めるか別として、そういうようなことは別に考えておられないのか。それがまず第1点でございます。
 第2点は、法律の立場からすると、現在の監査法人に関する規定というのは、これは後で付け加えられた枝番号になっているんですけれども、ほとんどが合名会社と民法の組合の規定を準用しているわけですね。そうすると、法律の体系としては非常に格好悪いわけですので、もしこういうような有限責任にするとすれば、合名会社、あるいは民法の規定を関係なしに、新しく監査法人の仕組みについての法律を作った方がよろしいのか。それとも、このまま民法の規定を準用しないとか、そういうふうにされるのか。法律としてはどういうふうにおとりになるのか。この二つの点をお聞きしたいと思います。


富山委員 この論点整理には抜けていますが、協会は幾つかの提言をしておりまして、損害賠償の問題については、ドイツあるいはオーストラリアで実例がありますように、報酬額の何倍とかいう形での賠償額の法定化ということが検討されていいのではないかという提案をしました。
 それから、法律をどういう仕組みで作るかという話ですが、LLP制度を導入するとした場合には、別の法律の方がなじむのかとも考えられますし、現行の公認会計士法の中に吸収するやり方もあるでしょう。少なくとも我々は、会計士側の立場でLLPを論じていますが、アメリカでは別に会計士に限っておらず、弁護士とかの職業でもあるようなので、その辺の対応をどうするかということがあるかもしれません。


三原小委員長 ちょっとLLPの話が出たので、LLPにつきまして事務局の方で資料を用意していただいたので、説明をしていただきます。


大藤大臣官房参事官 議論の御参考ということで「有限責任パートナーシップ(LLP)について」という一枚紙を用意してございます。
 それで、時間の都合もございますので、省略させていただきますけれども、有限責任パートナーシップというのが全ての州ではございませんけれども、ほとんどの州に適用されているという状況がございます。
 それで、主な監査事務所の組織形態としては、個人事務所、それから、いわゆる日本の監査法人制度と近いものと思われますが、ジェネラルパートナーシップ制度、マル2でございます。これは、各パートナーは出資義務とともに、損害賠償を含むパートナーシップが負担すべき債務に対して無限責任を負うということになっておりまして、各州のパートナーシップ法が根拠法になっている。
 有限責任形態を検討するに当たって一つの参考になるものとして、有限責任パートナーシップという、Limited Liability Partnership 制度というのがアメリカでございます。
 これらにつきましては、1998年8月末の状況でございますが、ややこの記述が不正確でございますが、実は全米50州あるわけでございますが、これにグアムとコロンビア特別州を加えた52の法域があるというふうに言われておりまして、そのうちの51の法域でLLPという制度が州法で導入されております。それを基にいたしまして、そのうちの42の法域で会計事務所による利用が認められているということになっております。
 ですから、まさにLLPという形態を認めますよというLLP法が各州にございまして、その中で会計事務所は42の州でその形態を利用していいですよという枠組みになっているということのようでございます。
 その特徴でございますが、次の「責任範囲」というところを読んでいただきますと、全てのパートナー、社員は、パートナーシップの通常の業務執行に伴い生じた債務(税金、給与、借入金等)については無限連帯責任を負うこととなっております。それ以外の債務について無限連帯責任を負うのは、本人自身の注意義務違反・不法行為・不実行為によって生じた損害賠償請求に対する場合とそのような行為に直接関わった担当者を監督、管理した場合に限られ、ほかの場合は、出資金を限度にその各パートナーは責任を負うという責任形態になっているということでございます。


三原小委員長 ありがとうございました。
 それでは、意見交換を続けます。
 岸田委員、どうぞ。


岸田委員 もう一度確認ですけれども、先ほど富山委員は、法人自体は無限責任でいいというお話で、今お話しになったのは、そういう提言もしていると、ドイツのような。どちらに立つんですか。つまり会計士協会としては、法人自体の有限責任、それは法律になるか、あるいは監査契約の中でと、そういう方向も一つ提言したいと申し上げたんでしょうか。


富山委員 基本的にはLLP制度を導入していただきたいというテーマと、損害賠償金額について法定化していただければ、損害賠償の過重な負担を避けられるし、これだけ請求できるんだということをはっきりすれば、逆に訴訟もしやすくなるという部分もあって、それはそれで、別のテーマとして提案したいということです。


三原小委員長 白石委員、どうぞ。


白石委員 マル2で「公認会計士以外の専門家の監査法人への参加」というテーマがあるわけですが、先ほどのLLPの下における責任形態とも関連しますが、なぜこの人たちを社員とするのか。すなわち、提携とか、委託とかいう方法もあるのではないかと思うんですが、そのあたりの違いを教えてほしいと思います。


富山委員 例えば、法律事務所と提携するというのは通常のやり方で、現在でもあると思います。そうではなくて、法人の中でいろんな意味で法律的なサービスもしたいし、タックスに関連するサービスをしたい、あるいは不動産鑑定業務のサービスもしたいということで、中に取り込んでそれらの専門家たちを使った場合に、今の監査法人制度では公認会計士だけが社員になれて、それ以外の人たちは社員になれないわけですね。そういう人たちもある地位に到達した場合に、社員にしてあげる道を開いてほしいということです。


三原小委員長 どうぞ。


白石委員 そうしますと、関与社員にはなれないということですね。


富山委員 監査の専門家ではないので、監査の責任者にはなれないわけです。例えば、コンピュータの専門家がいて、コンピュータの専門部隊を引き連れて監査の援助をするということは当然にありますが、その場合には監査の関与社員にはなれませんが、監査チームの中に入ってくるということです。


三原小委員長 ほかにいかがでしょうか。
 関委員、どうぞ。


関委員 簡単な質問ですけど、今のLLPの資料ですけれども、これを公認会計士の事務所に当てはめたときの監査業務についての損害賠償責任とか、そういった問題はこの紙では、それ以外の債務の方で読むという形になるんですね。


大藤大臣官房参事官 そうでございます。


関委員 通常の業務執行の最たるものだと思いますけど、上ではないわけですね、この意味は。


大藤大臣官房参事官 はい。


関委員 それから、LLPそのものは法人格を持っているわけではない。やっぱり組合なんですか。これは法人になるんですか。


大藤大臣官房参事官 組合でございます。


関委員 組合ですか。


大藤大臣官房参事官 はい。


関委員 そうですか。分かりました。


三原小委員長 いかがでしょうか。
 伊藤委員、どうぞ。


伊藤委員 私ちょっと質問なんですけど、次のところに入る業務範囲のあり方で、後で説明があろうかと思いますが、つまり、いわゆる監査に関して、確かにコンピュータとか何かこれから出てくると思いますから大変重要なんだけれども、弁護士とか不動産鑑定士、年金数理人を擁するのは、あくまでも前に書いてある監査証明業務の充実・強化を図るということに限定して採用したと、こういうことなんですな。つまりコンサルティング業務のために採用している人が一緒にあって、それに対して云々というんならば全く別で、これは次項の論議なので、ここでの議論はあくまでも監査に対してということに限定しておきたいんです。つまりオーディットをやるために、有限責任の人たちをどうしても入れざるを得ないと、こういうことを言いたいんですかということを確認しておきたいんです。
 つまりオーディットをする公認会計士の方々は、例えば、関与社員というのは基本的には無限責任であると、これは周知の事実なんでしょうね。しかしながら、公認会計士以外の専門家をオーディットのためにどうしても要るんだと、こういう認識なんでしょうねと、こういうことなんですが、そこだけちょっと確認だけしておきます。


三原小委員長 いかがでしょうか。


富山委員 たまたま監査法人制度ということで議論していますので、ここに出されていますが、基本的に監査法人は、監査業務のほかに、2項業務ということでコンサルティング業務その他をやっていますので、その両方の必要からこのような専門家が要るというふうに理解していただいた方がいいと思います。必ずしも監査だけのニーズではなく、コンサルティングにも必要だということです。


伊藤委員 そうすると、この議論は次の事項を含めて議論しないと、ちょっとここだけで議論できなくなっちゃうわけですな。つまり、そういうファームに対して監査業務とそれ以外の業務を一緒にするのか、そこは分けるのかというような議論がこの間ございましたね。そこがもし仮に分かれるとすれば、この問題は取扱い方がちょっと変わってくるというふうに思います。


三原小委員長 私の誤解かもしれませんけど、今まで理解したところでは、監査業務以外もそうですが、監査を行う社員で関与してない社員につきましても有限責任にすると、そういうことで議論していたように思うわけですね。


伊藤委員 そのとおりです。


三原小委員長 ですから、今の伊藤委員の御質問は、監査以外の業務について。


伊藤委員 いやいや、そうじゃない。あのときの議論は、直接の関与社員は無限責任ですよ。しかしながら、直接じゃない関与社員は有限責任。しかし、それは監査のための人なんですよ。コンサルティングではないと、こういう議論で我々は今言っているわけですね。従って、あくまでも監査のためにこういう非関与社員がいっぱいいますから、これは有限責任でもしようがないということなんだけれども、そうじゃなくて、こういう人たちは、コンサルティング業務のためにたくさん抱え込まなきゃいけないのであれば、つまり極端に言えば、監査のためでなくて、こういう人たちはほんのわずかの人だろうという感じがするんですが、滞留してその人たちがだんだん増えてきて、実際に私の感じでは、ファームではかなりこの分野がこれから増えてくるだろうというふうに思いますし、コンサルティング業務は非常に大きなウェイトになっていますから、そういうことを踏まえてこれを議論するんですかということを今確認をしたかったわけです。


三原小委員長 奥山委員、お願いします。


奥山委員 この整理の仕方なんですけれども、「監査法人制度のあり方」の「考えられる方策」のマル1はまさしく有限責任の問題で、それで整理されていると思うんですが、マル2は実は私どもの方は、最初に総合法人の問題を取り扱って、そして、その中にはおっしゃるように監査業務以外の業務も総合法人として取り入れる、強化していくことが考えられるのではないか。
 それから、もう一つ言えば、WTOとの関係で、今、世界の中で規制緩和の観点から、やはりいろいろな業務がもうちょっと取り入れられていいのではないかということが言われていまして、その中では4分の1以下ですけれども、私ども提案しているのは、他の会計士以外の専門家が総合法人の中のパートナーになってもいいんじゃないか。
 従って、このマル2は、おっしゃるように必ずしも有限責任の形態ではなくて、監査法人の組織の問題で、2と確かに結び付くと思うんですね。ですから、そういう意味では両方にかかっているような話だと思いますので、私どもの提案からもそういうふうに思いますので、若干その辺は整理し直した方がいいんじゃないかと思うんです。


三原小委員長 その点は御趣旨が分かりましたので、また文章のまとめ方として。
 中原委員、どうぞ。


中原委員 今のは分かるんですけど、明らかにここのコンテクストは監査証明業務の充実・強化を図る観点と、その後、利用することが監査の意見形成の充実に資するということで、こういう人たち、確かにコンサルティング機能を担う人たちだと思いますが、その人たちの機能を二つに明確に分けて議論されているので、この部分はこの部分で議論の必要があるんじゃないかという気がします。
 それと、コンサルティング業務と監査業務というのは、本来ファイアウォールがあるべきものだろうと思いますし、議論はもちろん両方からのアプローチが必要だと思うんですけれども、ここは恐らくお書きになった趣旨は、そういう人たちの機能はコンサルティング業務に使う部分と、監査証明業務に使う機能と両方の機能を備えておって、監査証明業務の機能に使う部分についてはこういう考え方が必要ではないかという論点整理ではないかなという気がします。


伊藤委員 ここはちょっと議論の分かれるところで、そうすると、つまり関与社員のみが無限責任で、非関与社員は有限責任であるというふうなこの前の論点をいろいろ話したときには、例えば、大阪で我々の法人を受けている代表社員の人がいる。北海道の方はその企業と何の関係もない。
 しかしながら、ここに下に書いている人たちというのは、我々の会社にタッチして、例えば、コンピュータ技術者が我々に関与した人たちは、じゃ有限責任なのかとの非常に疑問に立つわけです。つまり関与した社員は無限責任だけど、それに一緒に携わった人たちは有限責任だというのもちょっとおかしいなというロジックなんです、私が言っているのは。
 つまり会社の基本的なオーディットに参画した人はみんな無限責任でないといかんではないか。それが公認会計士の資格を持った人も、持ってない人も、業務としては会社のオーディットに参画したんだから、それは無限責任ではないのかと私はちょっと言いたいんですけどね。
 あるいは、そうじゃなくて、そのファームから、先ほどおっしゃったファイアウォールで別会社に委託をして、コンピュータをお願いしますと、それは単に委託しただけだというんなら、ここで切れるわけですね、会社は。ということだから、有限責任でも何でもいいんだけれども、そのオーディットに参画した一群の人たちは全部無限責任ではないかと、こういうふうに思うんですが、ちょっとそのあたり聞きたいんです。


三原小委員長 富山委員、どうぞ。


富山委員 関与の意味を非常に広くとられているようなんですが、アメリカで言うエンゲージメントパートナーというのは、基本的には1人なんですね。ある会社の監査のすべての責任を持つ人、これがエンゲージメントパートナーです。それから、下の人を全般的に監督する人、これもエンゲージメントパートナーです。そういう趣旨から責任を問われるのであって、法的にその下の人を直接縛るという形はとられていません。


伊藤委員 それはそれで結構です。そこはそれで皆さんが納得されればいいと思います。


奥山委員 ちょっと追加で恐縮なんですが、よろしいでしょうか。


三原小委員長 はい、どうぞ。


奥山委員 ここの「監査証明業務の充実・強化を図る観点から」ということを言うと、専門家の利用というのは監査基準委員会報告書で、もう既に私どもきちっとした基準ができているんですね。ですから、監査に専門家を利用するということだけから言うと、余りここは議論にならないと思うんです。
 問題は、専門家がその法人の中で責任ある地位に就かすことができるのかどうか。そこはすなわち総合法人という道がどうしても叫ばれるんではないか。そういう意味で、個々の監査の上での専門家の利用という観点では、ここは余り問題にならないんじゃないかというふうに理解しているんです。


大藤大臣官房参事官 事務局からよろしいでしょうか。


三原小委員長 はい。


大藤大臣官房参事官 私どもの整理は、結局、監査の部分についていろいろ専門家を活用する必要があって、その人材登用とかそういう面もあって、とにかく社員になれないということでは良い質の人も確保できないというような観点から、監査の充実にこういうのが資するのではないかということでここで掲げさせていただいて、総合法人という場合に、業務範囲の拡大ということまで含めて議論をすると、やや混乱すると思われますので、ここの「監査法人への参加」は、まさに今の監査法人の業務範囲を前提とした上での議論でございます。
 また、その総合法人というのは、恐らく業務範囲を見直して、拡大したということと併せての議論だと思うんですが、そこも含めてすると、さらに次の問題ということになると思いますので、マル2という、今ここで掲げられているような点を否定されるのかどうかということだと思うんですが、まさに総合法人というのは、専門家という前に総合法人化することが適当かどうかという、まずその議論があって、その後の問題だと整理できると思います。


三原小委員長 タイトルが監査法人の組織(責任形態)となっているもので、話が少しこんがらがったんじゃないかと思いますけれども。
 では、山浦委員お願いします。


山浦小委員長代理 ここで中心的に議論すべき問題は、我が国の監査の精度をどうやって高めるかと、こういうことだと思うんですね。その範囲でこの議論をまず最初に押さえるべきだと思うんですね。
 総合法人化の問題は確かに戦略としてはお持ちかも分からないけれども、少なくともLLPというのはかなり大きな変革要因になりますので、それを総合法人化の問題に絡めて、それの正当性を論拠としてLLP化を出されると、我々としてそんなにすんなりとは受け入れられない。私としてはそういう議論を持っているんですね。
 それから、もう一つ、となりますと、監査法人という名前自体が既にこれはまずいというか、議論の前提として、監査法人という名前自体が協会側の御意見では、既に頭からないと言っていいような議論の展開のされ方なので、やはりここでは監査法人ということに限定して、このLLP化の問題を最初にまず議論された方がいいんじゃないかと思うんです。


富山委員 協会もLLP化と総合事務所化とを全くイコールだとは考えておらず、別のテーマとして提案しておりますので、監査上の責任問題の話に限定してLLPを議論していただいて結構です。


三原小委員長 私がちょっと気になっておりますのは、「考えられる方策」として1ページの下の方からなんですが、それぞれのパラグラフの締めの言葉が、2ページの第2パラグラフは「必要との指摘がある。」それから、その次は「また、」ということで「言えないとの指摘もある。」その次は「他方、」ということで「との指摘がある。」それから、「以上のような」ということで「検討を行う必要がある。」それから、その次が「慎重に検討していく必要がある。」ということで、要するにこの問題を考えるときの考え方をいろいろ書いて、これは両方の考え方を並べて書いて、それほど異論がないというか、こういうふうなことをいろいろ考えて、慎重に検討しなさいということなんですが、小委員会の最終的なとりまとめとしては、そういういろいろな面から検討した上で、どういうふうにするべきかという、できればある程度の方向性。これは一致しなければ両論ということでも結構なんですが、この次はもう少し具体的に書きたいなと、こんなふうに思っているんです。
 それで、ずばり、もう一度お伺いしますけれども、協会で言っておられる非関与社員については有限責任化すると、この問題についてはいかがなんでしょう。これはやむを得ないと、大体皆さんそういうふうなお考えでしょうか。
 私が最初に質問したのは、ちょっとよく分からなかったんですが、北海道と九州の社員は、それはお互いに責任持てないと、分かるんですが、最初に聞きましたのは、中小の監査法人については、お互い責任持ち合える状態じゃないか。それについてどういう論理を適用するのかというところが一つ分からなかったんです。そんなことも含めて、もう一度その辺の御意見を。それは大法人も小法人もみんな一緒に考えて、非関与社員は有限責任でやむを得ないと、こういうことであれば、それはそれで結構でございますけれども、どんなものでしょうか。
 山浦委員、どうぞ。


山浦小委員長代理 何度もですけれども、監査というのは非常に公共性が高い業務でありまして、そういった意味では、監査を通して被害を受ける例えば投資家等は、何らかの形でその受けた被害について担保されなくてはならないと、そういう考え方は基本的に置くべきではないかと思うんですね。
 としますと、こういった有限責任性についても、担保をできるという前提があって、初めてこの制度が承認されるわけで、そういった意味では、先ほど富山委員もおっしゃいましたけれども、ある程度規模の制限、例えば、最低資本金とか、そういう外部者を、投資家を保護するための財産的な基盤等、こういったものについてある程度のガイドラインを設けた上で、その範囲でLLPを承認する、恐らくそういうことが現実的ではないかと思うんです。
 もう少し小さな、例えば、お互いに管理し合えるような、おっしゃるような小規模な監査法人であれば、LLPというのは少なくともなじまない制度ではないかと、そういった形になるのではないかと思うんですね。ですから、結果としては、個人、それから、通常の法人、そしてLLP化された法人。
 もう一つ言えば、海外の状況からしまして、株式会社という制度をとっているところもありますけれども、これは今急には日本にはなかなかなじみにくいかも分かりません。ただ、少なくともそういう選択肢の下で、ある程度の担保制度を考えていく必要があるのではないかという気がします。


三原小委員長 関委員。


関委員 私も結論的には、今、山浦委員がおっしゃったような感じに近いと思うんですが、今までの議論をお聞きして、先ほどのLLPを事務局が説明してくれた紙に当てはめていきますと、今、公認会計士協会の方の御主張は、ここに下の方に書いてあるそれ以外の債務というところを「監査に係る債務」というふうに読み直してみると、本人自身の注意義務違反・不法行為・不実行為といったもので監査についての損害賠償請求については、直接関わった担当した本人と補助者、チームを作ってやった場合に、その監督責任のある人だけを無限連帯責任にして、他の場合は、というのは他のパートナー等は有限責任にしたいと、こういう考え方を言われていて、その前提としては、もう一つ、監査法人全体としては無限責任が残ります。ただ、もう一つおっしゃっているのが、損害賠償責任の上限みたいのは別なテーマとして残りますが、一応無限責任だと、こういう前提だと思うんですね。
 それで、その根拠は、大規模法人については、それが実態に合うし、国際的な競争という面でもそれが必要だという考え方になっていますから、当然、小委員長や山浦委員がおっしゃるように、そこまで規模の大きくないものにそれを適用すべきじゃないと、こういう考え方にもなるのかもしれない。
 それで、もう一点、私、これまでのほかのテーマの議論で、どちらかというと監査について、監査法人という法人自体を前面に出すという方向で議論してきたと思うんですが、この問題について今のような整理をする。それから、さらに、先ほど富山さん言われましたように無限責任、本人と書いてある本人は、エンゲージメントパートナーは1人である。アメリカではそういうふうになっているというような御紹介もありましたけど、そういうふうになると、今度は個人がぼんと前面に出てくるわけで、一方において、監査法人というものを中心に据えてこの監査の議論をするということと、また、監査法人という傘にはいるけど、一人一人の個人の公認会計士の問題というふうに、その辺の考え方の整理をどうするのかという基本的な問題が残るような気がすると、1点懸念がありますけれども、基本的には今まで申し上げましたように、山浦委員的な感じで私はおります。


三原小委員長 では、最後にお一人、白石委員お願いします。


白石委員 もっと簡単に言うと、なぜLLPをとるかという、その根本の理由は、結局は、エンゲージメントパートナー以外の方は有限責任にしたいと、こういうことになるんでしょうか。


富山委員 有限責任ですが、基本的に出資金部分は返ってきませんので、そういう意味では責任を負担をするわけです。出資金以上には負担しないということでございます。


三原小委員長 よろしいですか。


白石委員 つまり、エンゲージメントパートナー以外の方の有限責任というところがポイントということですね。


富山委員 はい。


白石委員 分かりました。


三原小委員長 時間が大分迫ってまいりましたので、申し訳ありません。また整理してもらうとしまして、今までの議論で、要するに大規模な監査法人の非関与社員については、これは有限責任化することはある程度やむを得ないかなと、そんなような御議論が大体コンセンサスとしてあるような気がします。ただ、それと、個人の公認会計士あるいは中小の監査法人、議論が一緒になるかどうか、その辺は、今の山浦委員の御意見のように、それぞれ分けて適用を考えなきゃいけないということもあるかもしれません。大体こんな流れを前提として文章を整理してもらいまして、またこの次に議論をいたしたいと思います。
 それでは、次のテーマにまいりまして、次は「業務範囲のあり方」についてでございますが、事務局から説明をお願いいたします。


福地課長補佐 それでは、3ページでございます。読み上げます。

   2

.業務範囲のあり方

(1)

 基本的考え方

マル1

 監査法人等の業務範囲の拡大等により、監査業務における保証水準とは異なる財務書類に係るレビュー業務や財務書類以外の監査証明業務などが拡大してきており、業務対象の拡大化や保証業務の多様化を踏まえ、公認会計士法上の業務としての位置づけと責任の明確化を検討する必要がある。

マル2

 また、監査法人等の行うコンサルティング業務の対象の多様化・拡大化を求める指摘があるが、一方、監査証明業務との関係において、独立性の問題が生ずる可能性が懸念される現状にあり、米国においてもそのあり方について疑問が呈されている。このような監査法人等の行うコンサルティング業務の多様化を踏まえ、公認会計士法上の業務としての位置づけや範囲、その規制の要否等について検討する必要がある。

マル3

 以上のような監査法人等の業務範囲のあり方の検討に当たっては、監査業務との独立性の確保、非監査業務に係るリスクの回避といった観点から、監査法人等自らが行い得る業務範囲及びその責任を明確にする必要があり、また、社会からの信頼性を確保するとともにこれらの業務を適正かつ公正に遂行し得る枠組みを検討する必要がある。

(2)

 考えられる方策

マル1

 監査類似業務(レビュー等)
 現行公認会計士法は、公認会計士又は監査法人の業務として、第2条1項において公認会計士の独占業務として「財務書類の監査又は証明業務」を、同条2項において「財務に関する調査、立案等の業務」を定義している。
 上述のとおり、近年、財務書類以外の監査証明業務、財務書類に係るレビュー業務等が拡大しており、これらの業務については、どのように公認会計士法上の1項業務又は2項業務として位置づけていくか、また、現行の規定について見直す必要があるかどうかについて検討を行う必要がある。

マル2

 監査法人等における監査証明業務の独立性等の確保
 上述のとおり、コンサルティング業務の対象の多様化・拡大化を求める指摘があるが、一方で、監査証明業務との関係において、独立性の問題が生ずる可能性が懸念される現状にあり、米国においてもそのあり方について疑問が呈されている。このような監査法人等の行うコンサルティング業務の多様化等を踏まえ、公認会計士法上の業務としての位置づけや範囲、その規制の要否等を慎重に検討する必要がある。
 業務範囲等の見直しに当たっては、監査証明業務の独立性の確保及び監査の品質の維持・向上、並びに非監査業務に係るリスクの回避等の観点から、少なくとも監査業務と非監査業務との間に人事及び組織上の隔離措置(ファイアウォール)を設ける等の一定の措置を講ずることが必要であると考えられる。


 以上でございます。


三原小委員長 ありがとうございました。
 ちょっとお伺いしたいんですが、最後のパラグラフですが、ファイアウォールのところなんですが、これは監査証明業務の独立性の確保ということから、人事及び組織上のファイアウォールを設けるということは分かるんですが、品質の維持・向上、それから、非監査業務に係るリスクの回避、こういう観点からもファイアウォールというのは必要なんでしょうか。


伊藤委員 それでは、ちょっと申し上げます、それに関して。


三原小委員長 はい。


伊藤委員 我々企業の側では、例えば、M&Aだとか、将来の買収業務とか、あるいは株式の買取りとかを欧米のインベストメントバンクを使うわけですね。それと同時に、そのときには必ず資産の評価とか何か出てきますから、公認会計士もかませるわけです。そうすると、二つ費用がかかりますから、公認会計士さんの方にやってもらえばフィーが安くなるんじゃないか。これは大変企業の甘い考え方かもしれませんけど、そういうことでアーサーアンダーセンとか、あるいはプライスウォーターハウスクーパースとか、そういうところへ頼んでアーンストヤングと一緒にやるとか。インベストメントバンクはもういいから、そっちと一緒にやってくれないかというようなことはよくあるんですよ。その場合、もちろん別会社になったり何かしていますけど、要するに監査をやってもらうと同時に、そのときには必ずコンサルティングも絡んでくるわけですね。そういうことは現実問題としてはありますよ、確かに。
 ただ、問題は、基本的に違うのは、一方は、常に先行きの予想を多少のリスクをはらみつつ、我々としては利益を求めていっているわけです。監査の方はそれとは全く関係なく、純然たる監査です。その事実をきちっと評価をするということです。
 従って、そこのところは、自ずから業務がちょっと違うと、私は山浦先生と同じ考え方なんですけど。ただ、現実のビジネスの社会においては、それを一体として我々がお願いするということはよくあることです。それが先ほどのフィーにも関連してくるんですけど、監査フィーが大変厳しくて、内容がはっきりしていますから費用が取れない。しかし、コンサルティングとかそういうものになってくると、コストはあってなきがごとしであり、プライシングもお互いの企業との間の値決めで決めるというような状態ですから、収益率という言葉は大変失礼な言い方ですけれども、ファームの収益率から言えば、もし一体としてやっておったとすれば、そういう監査費用よりもずっとそちらの方が利益率が高いと思いますね。これは想像ですけれども。
 ですから、今の日本のファームの方々がコンサルティングと一体としてやるというのは、将来の収益性という点においては大変魅力ある分野を取り込みたいというお気持ちはよく分かるんだけれども、ここのところは、やはり別会社化をすべきじゃないかと私は思います。


三原小委員長 ありがとうございました。
 それでは、ほかに御意見いかがでしょうか。
 奥山委員、どうぞ。


奥山委員 前のペーパーで「考えられる論点」の中で、「監査法人の業務範囲の拡大」というところで、監査法人による税理士業務というのが入っていたんですね。私ども聞かれて、それは大変ありがたいことだというお答えをしたことがあるんですが、今回のペーパーではそれが何となくどこに入っているのかなというふうになったんですけれども、これは大変大きなテーマになることなので、やはり残せるなら残しておいてほしいなと思うんですが。


大藤大臣官房参事官 論点としてと申しましょうか、途中過程で論点ということで提示申し上げましたが、それほど詰まった議論でなかったので、そこで議論があれば盛り込むことについて異論ございません。


奥山委員 海外の監査法人、いわゆる会計事務所でも、監査と税務とコンサルティングというのが3本柱で、その法人の大きな収入の成り立ちになっていますので、私ども総合法人とか、それを今主張するつもりはないんですけれども、しかし、テーマとしては非常に大きな問題なので、ぜひそれは入れておいてほしいなと思っております。


三原小委員長 ここの小委員会のテーマというのは、監査の充実ということですよね。ですから、今の税務を業務の範囲に入れるかどうかということは、ここの議論の本質からちょっと逸れるような気がしまして、一応私の感じでは、それは私どもとしてはどちらでもいいというか、余り関心が強くないところなんです。それで、ほかの業務のことをここで云々しておりますのは、それによって監査そのものに影響がどのように及ぼされるかというような見地から、これはやっぱり問題にせざるを得ないということでやっているので、ちょっと議論からは外れるといいますか、可もなく、不可もなくと申しましょうか、私どもとしてはちょっと議論しにくいような感じがするんですけれども、どんなものでしょうか。


富山委員 税務と監査とが全く別の世界の仕事だという御理解だと思うんですが、会社の利益の半分を税金が占めるわけで、監査上一番重要なテーマが税務だと思うんですね。ビッグ・ファイブでもそうだと思いますけど、監査と税務は同じグループに括られるんですね。オーディット・タックスは一緒で、コンサルティングとに分かれるわけで、本来、監査と切って切り離せないのが税務だと認識しています。基本的に企業の大きな費用構成要素として税務というのは非常に重要なので、監査上もそういう専門家を常に利用しなければいけないことになります。


三原小委員長 それで、監査を充実・強化するとの関係で、どうしてほしいという御意見なんですか。


富山委員 今の法制では税務だけを外していますよね。


三原小委員長 業務の範囲から。


富山委員 業務の範囲から。監査法人の場合には本来、当然入ってきていい業務だと思います。


三原小委員長 それはだけど、別の法律で税務の仕事もできるようにはなっているわけですね。ですから、そういうのはいろいろほかにもあるわけでしょう。


富山委員 個人でやっている場合は監査もできるし、税務もできますが、監査法人はできないんですよ。


三原小委員長 監査法人としての業務の範囲に入れてほしいと。


富山委員 はい。


三原小委員長 なるほど。
 何か御意見。
 どうぞ。


中原委員 実務的にはおっしゃる感じがよく分かるので、税務、財務監査は切り離せないというんですが、現実の姿としては、私どもでも財務監査の監査法人と税務監査の監査法人とはアメリカの場合ですけど、違う監査法人を使っているケースは結構あるんだろうと思うんですね。それから、我々の方から見ていても、こちらの監査法人はやや税務が弱いとか、そういう評価をしておりますので、財務監査機能を強化するために税務監査を一緒にやった方がいい云々という議論は、余り現実には当てはまらないんじゃないかという感じを我々の企業の方は受けておりますけれども、唯一コンサルティング業務、あるいは税務監査、非監査業務を充実させることが監査業務の充実にもつながるんだ、あるいは一緒にやることがつながるんだというのは、収益的な観点での論点があるのかなという気がするんですけど、その点はどうなんでございましょう。監査フィーがどんどん上がるのは我々困るわけですが、そのほかのところで多少儲けていただいて、それが中正、効率かつ低廉な効率的な監査につながるというのは、ある意味では企業がウエルカムなんじゃないかと思いますが、ファイアウォールがこの辺にどう効いてくるのか、私はよく分かりません。


山浦小委員長代理 よろしいですか。


三原小委員長 山浦委員お願いします。


山浦小委員長代理 まさに中原委員おっしゃる御指摘のとおりなんで、実は監査というのは非常に訴訟のリスクが高くなって、そして、監査の精度もかなり厳密なものになって、ますます監査に係るコストがかかってくるわけですね。これを全部依頼人側から回収できればいいんですけれども、なかなかそれも難しくなる。
 その中でアメリカで行われている議論は、税務業務あるいはコンサルティング業務というのは、前にちょっとここでお話しした方があると思うんです。一種の必要悪というか、ある程度収益のソースを確保した上で、監査業務については充実させてほしいと。これはSECも基本的には、監査のいわば独立の判断に影響しないということが確保できれば、そういう収益源も認めざるを得ないというのが消極的な意味で是認のようなんですね。
 これを今、日本の公認会計士法の体系からすると、まさに監査法人の業務範囲が非常に限定されている。そのために、先ほど協会側からあるように総合法人化と、こういう方向を各法人とも戦略として強調されているのが現実なんです。これを監査の強化というところで、プラスとマイナスの面が今あるというのがまさに事実の話なんですね。あとここでは、そこにどういう形でそのプラスとマイナスを見極めて線引きをするかと、この議論がかなり難しい議論として残っているんじゃないかと思います。


大藤大臣官房参事官 事務局からよろしいでしょうか。


三原小委員長 はい、では、事務局お願いします。


大藤大臣官房参事官 いわゆる税理士業務と監査業務の関係ですが、先ほど監査法人はできなくて、個人はできるということでしたが、個人の場合も、結局、自分が税理士業務で関与している会社の監査はできないということでございますので、ある意味で考え方としては、ある会社に対する税理士業務と監査業務というのは、やはり独立性等の観点から、両方はできないという考え方。それが適用されて、監査法人で税理士業務をやっていたら、当然その会社はできないということでございますので、そこは個人と監査法人で考え方に違いがないんだろうと思いますね。


富山委員 監査法人が監査している会社の税務をやろうとは全然考えていません。そうではなくて、業務の範囲の中に入れてほしいということです。現実にタックスは必要なわけですから、それを別組織でやらせるのでなくて、監査法人の業務として認めてほしいだけです。


白石委員 ちょっとすみません。


三原小委員長 はい、白石委員、どうぞ。


白石委員 今の御意見はよく分かるんですが、会計監査をする中で当然のことながら税務マターについても会計士さんは見ているというふうに考えるのが自然なのかなと思います。ただ、「税務業務」として会社が法人税の申告をするに保証を与えるということは、それはないのだろうと思いますけれども、当然会計監査をする中で税務マターの問題も見ておられるというのが普通なのではないか。また、そうしてほしいというのが一般的な考え方ではないかと思いますが、いかがでしょうか。


富山委員 ビッグ・ファイブ等での対応では、タックスの部分は税務の専門家が税務会計を含めて見ていると思うんですね。本来は中に置かなくてはいけないわけですが、今はその専門家を置きにくい組織になっています。やはり監査を充実させる趣旨からも、専門家を置く必要性からも、業務の範囲を見直す必要がある、なぜ日本ではだめなんだという議論をしていただきたいということです。


伊藤委員 私もこの点に関しては、こういう見方もあるんですけど、今の社内の監査役制度というのは、商法に基づくコンプライアンスと会計監査的なことと両方やっているわけですね。会計監査は会計監査人に任せているというような形になっているんですけれども、つまり国内法に限られておりますので、今、連結時代になって、しかも海外の子会社を全部連結していかないと連結決算ができないという事態になっていて、もちろん事業経営も海外を含めないとできない。そうすると、当然のことながら海外の税務というのが非常に大きな問題になってくるわけですね、企業としては。もちろんそれは会計監査というときに、税務上の問題がなかったかどうかもチェックしてもらうわけですね。
 我々は具体的にどうするかといいますと、国内の監査法人と同時に、提携している海外の監査法人、あるいはそれ以外の別の海外の監査法人を使って一緒に海外の監査もやり、同時に税もやらせると、こういうことをやるわけですね。
 従いまして、国内の税務の問題に関しては、現実問題として税理士さんがおられてやっているんだけれども、海外の税務のことについて国内の税理士さんにお願いしても、現実問題としてできないわけですね。
 従って、国内の監査法人に海外税務に関する問題をやらせるということは、我々企業の側にとっては現実的にはかなりありがたいということではあるんですけど。これは白石さんのところもちょっと御意見を聞かなきゃいけないんですが、私はそういうふうに思っているんですね。今の監査役の監査制度についても、基本的には海外の方まで含めた連結体制については、これはいわば忠実義務はないし、いわゆる注意義務はやっぱり監査役は持っているわけですけれども、商法の今のあり方と証券取引法の狭間があって、海外に子会社を展開しているが、これを連結していくんだけれども、そういう場合は非常に大きな問題が出てくるという現実の問題はございますので御報告申し上げておきます。どちらがいいのか、分かりません。


三原小委員長 分かりました。時間の関係もありますが、この問題は、要するに監査法人が税務の仕事をやってはいけないという意見はないわけなので、それを法律で、業務の範囲をもし考える場合に、それを織り込めと、こういうふうな提案まで我が小委員会として言うかどうかというところだと思うんですね。あるいは、そういうことを盛り込むということまでは言わないにしても、盛り込むに当たっては、監査の独立性が阻害されないように何か方法を講ずるべきであると、そういうような面を強調して言うのか、その辺は言い方としてはあると思うんですけれども、いずれにしても、一応文章として出してもらって、この次にもう一回議論してみたいというふうに思います。


大藤大臣官房参事官 税務に関する知識とか、そこら辺の本当の意味での監査に付随するアドバイスということと、それから、本当に監査法人が税理士として活動されるというか、そこら辺、考え方がやや明確でもないようですので、そこら辺はっきり、どういう御主張なのか。


富山委員 海外の事務所を見ていただければ分かりますけど、タックスと監査とが本来のメイン業務なんです。もともとこれらの業務からスタートしていますからね。そこにコンサルティングがくっついてきただけで、タックスだけを切り離すという制度はまずどこの国にもないです。


大藤大臣官房参事官 ただ、そういう意味では向こうには、ある意味で言うと、税理士というのがそれにぴったりくるような対応関係がないということも確かなんですね。日本の場合は税理士業務というのが業務として確立されておって、アメリカでは誰でもできるということなんです、ある意味で言うと。税理士という資格がないということですから、そういう大前提の中での、じゃ税理士業務という資格が要らないのかということとも絡んでくる議論だと思いますので、非常に大きなテーマだと思います。


三原小委員長 分かりました。
 すみません。時間がきましたので、あと山浦委員お願いいたします。


山浦小委員長代理 当初御案内のように三原小委員長、御退席されますので、代わりに代理を務めさせていただきます。
 いかがしましょう、もう少しこの議論。実は次に「広告規制のあり方」がありますけど、時間的には、事務局の読み上げ等でいっぱいになるのではないかと思いますので、今の議論をもう少し続けましょうか、それとも、次の広告規制に移ってよろしいでしょうか。


伊藤委員 もうちょっと整理をしてもらって、次回にどうですか。


奥山委員 次に移っていいと思うんですが、今の形が何らかの形で次の文章の中で触れていただければ、そのときの議論ということで、今日はそれで結構だと思いますけれども。


山浦小委員長代理 委員長の代理ということで、私の方から意見申し上げるのは適当じゃないのかも分かりませんけれども、先ほど参事官が述べましたように、日本には税理士という、まさに国家資格がありまして、これは例えばアメリカなどでは、税務に関する関連業務は実は誰でもできるんですね。つまり会計士に限らず、いわば税務に詳しい人であれば、誰でもそれに参加できる。
 そういった意味では、例えばアメリカと比較する場合に、その制度環境が違いますので、税理士業務を監査法人業務の中に入れるということについては、他の関連法との調整の問題も必要だと思うんですね。ですから、恐らくここの場では、白黒はつけづらいと思うんです。そういった意味では、問題としていわゆる除き、問題点を提起するという形で一度文章を作らせていただいて、その上でもし必要であれば議論をする。こういう形でこの問題はよろしいでしょうか。


富山委員 はい。


山浦小委員長代理 どうぞ、岸田委員。


岸田委員 業務範囲のあり方、一般的には異なりまして、先ほど伊藤委員がちょっとおっしゃった別会社ということがあったので、私、日本の監査法人の実務をほとんど知らないんですけれども、海外の会社とコンサルティング会社等があるように伺っていますけれども、日本でも、例えばコンサルタントとかM&Aについて、監査法人が別会社の形態を作った場合に、それは監査法人でできること以外だから許されるのか。それとも、それは監査法人が 100%持っていれば監査法人と一緒なのか、そういうことは議論する必要ないんでしょうか。日本のことよく存じませんので、教えていただければと思います。


富山委員 現実にはファイアウォールを作る一番確実な方法は、組織を別にすることなので、現在、コンサルティング業務等は別会社化しているケースが多く、法人の中でコンサルティング業務をやっているケースは少ないのではないかと思います。


岸田委員 別会社は株式会社ですか。


富山委員 株式会社ですが、 100%子会社にした場合に、本当にファイアウォールなのかどうかという議論をこれからやっていかなければいけないテーマだと思います。いろいろ突き詰めていきますと、その辺でも何らか規制が必要なのではないかと考えています。


山浦小委員長代理 関委員、どうぞ。


関委員 それに関連して、この文章にも4ページの2行目等に書いてありますが、アメリカでもこのあたりが問題になって、確かこの小委員会でも議論があったように思いますけれども、そういう考え方がどうなっているか、整理していただいたらどうかと思います。


山浦小委員長代理 私が知っている範囲でも、この問題はかなり大きな議論をアメリカでも長年続けておりますし、それから、実際の実務界でも非常に大きな問題として各法人、対応する際に組織を独立させたり、あるいは日本でも大手の監査法人は株式会社の子会社という形でコンサルティングを分離させる。ただ、そこでもやはり公認会計士自身が移っていきまして、そして、その間のいわば人事的交流、あるいは情報交換とか、そういう問題が実は何も規制されていない形で実務が進んでいるというのが現実ですね。
 ですから、このあたりはここで文章として残すにしても、もう少し慎重というか、はっきりした方向を出すためには、実態を踏まえて調査した結果でないと、そう簡単には出せないと思うんですね。少なくとも今の法人制度の問題点というか、非常に大きな問題点であるということは確かですので、もう一度これは議論する必要であるのではないかと思います。
 富山委員、どうぞ。


富山委員 今回は間に合わないと思いますが、この独立性の問題は非常に重要なテーマなので、会計士協会としてもこれからよく検討したいと思っていますが、この審査会の重要な将来的なテーマとして検討されていった方がいいのではないかと思っています。


山浦小委員長代理 白石委員、どうぞ。


白石委員 今御回答ありましたから、いいんですけど、今は監査法人の中でできるわけですね。ただ、これが非常に多様化し拡大化しているから、監査に影響が出てくるということを考えると、監査の質を上げるという中で、このコンサルティング業務をどういうふうにしていくか。当然監査法人全体としての経営という問題もありまして、いろいろそういう方向に向かっているんだと思います。
 従いまして、このコンサルティングも経営としてやっていかなければいけないんだけれども、アメリカで今どういう問題があるかということも先ほどありましたように整理していただくことになりますが、やはり監査の品質向上のためには、分離、独立ということになるだろう。ただ、それでうまくいくかということについては、やはりこれは内部統制といいますか、監査法人の内部統制が最後の決め手になるだろうというように思います。
 その内部統制の状況を日本流に言えば、やはり公認会計士協会で作られるいろいろな審議会や委員会、こういったところで見ていくというふうな形で運用をしていくのが一つの方向かなというふうに私は思います。


山浦小委員長代理 前回こちらの方で御議論いただいた点で、業務改善命令という措置を盛り込むということがほぼ了解されたと思うんですけれども、恐らくそういった中でこういうコンサルティング業務と監査業務とのいわばファイアウォールの問題等についても、もしかしたら触れることができるかも分かりませんですね。
 いずれにしても、これについて事務局の方で文章を作らせていただいた上で、もう一度この場で提案させていただきます。
 所定の時間になりまして、当初予定していたところを全て終わらせることはできませんでした。この委員会が非常に大きな問題を抱えて議論しているということの証拠だと思うんですけれども、次回に、また改めてこの議論を続けさせていただきます。
 本日は、どうもありがとうございました。
 今事務局の要望がありまして、本日予定しておりました「広告規制のあり方」、それから、「公認会計士法の目的規定等の要否等」この二つの点について、委員の方々から、あるいは会計士協会からしますと協会として何か御要望がありましたら、書面にて一度事務局の方に提出していただきたいと思います。そのほかの委員の方々についても、その旨よろしくお願いいたします。
 本日の会合はこの辺で終了させていただきます。
 これまでいただきました御意見等につきましては、整理させていただき、当小委員会としての「審議結果のとりまとめ」に反映させてまいりたいと思います。
 次回は、これまでの御意見等を整理させていただいた上で、「審議結果のとりまとめ」の原案を作成させていただき、さらにそれについて御審議をいただきたいと思います。原案につきましては、時間的な問題もありまして、早急に作成させていただき、皆様に送付させていただきたいと思いますけれども、本日、時間等の関係で十分に御発言いただけない向きにつきましては、御意見を事務局宛までお知らせくださいますようお願いいたします。
 なお、次回の会合は6月15日(木曜日)の午後1時から3時まで、この第三特別会議室で開催させていただきたいと思いますので、御出席くださいますようよろしくお願い申し上げます。
 それから、皆様の席上に第7回会合の議事録(未定稿)をお配りさせていただいております。御覧いただきまして、お気づきの点がありましたら、お手数ですけれども、次回会合までに事務局までお知らせくださるようお願いいたします。
以上をもちまして、本日の小委員会を終了させていただきます。
 ありがとうございました。

午後0時0分閉会

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