「出題の趣旨」の公表について

 平成19年公認会計士試験論文式試験の「出題の趣旨」を、次のとおり公表する。
会計学】
 

1問

問題1
 製造間接費の配賦基準の設定方法が原価計算の計算結果に与える影響に関する理解を問う問題である。製造間接費の配賦計算を正しく行う能力を確認するとともに、部門別配賦計算の方法の妥当性について、適切な判断ができることを求めている。

問題2
 直接原価計算に基づくCVP分析と原価管理の関係についての理解を問う基本的問題である。状況に応じた変動費・固定費情報の解釈ができることを求める一方で、労務費の管理可能性についての判断や、部品の外注が原価管理に与える影響についての質問を加えて、問題の対象領域に幅を持たせている。
 
2問

問題1
 多品種生産企業の損益予算の差異分析を行い、予算差異の解釈を聞くやや進んだ問題である。営業部門における業績評価の視点から、予算編成の基礎になる市場予測や中期経営計画なども視野に入れた予算差異の意味を考えさせている。

問題2
 予想損益計算書と予想貸借対照表からフリーキャッシュフロー法による企業価値の計算を行わせる問題である。まず、与えられた条件から資金計算書を作成するという企業価値評価としては標準的な計算作業を行う能力を確認しているが、企業買収に伴う問題の検討を加えることによって応用力も確認している。
 
3問

問1
 キャッシュ・フロー計算書の基礎理論に関する理解、およびその作成能力を問う総合問題である。
 
  (1)  期首残高試算表と決算整理前残高試算表に基づいて、間接法により、キャッシュ・フロー計算書を作成する問題である。本問での考慮事項は、キャッシュ・フロー計算書をめぐる基本的な事項であり、本問によってキャッシュ・フロー計算書の基本的な作成能力を試している。
  (2)  営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法については、「直接法」と「間接法」がある。各方法の長所と選択適用の理論的根拠を問うことにより、キャッシュ・フロー計算書の作成方法に関する基本的理解を試している。
  (3)  利息の支払額の表示区分については、複数の方法があるが、それらの背後にある考え方を理解しているかどうかを試している。

問2
 企業結合の会計処理に関する理解を問う総合問題である。
 
  (1)  株式交換を持分プーリング法によって会計処理する場合について、完全親会社となる会社の個別財務諸表の作成を求めている。
  (2)  株式交換をパーチェス法によって会計処理する場合について、連結財務諸表の作成を求めている。本問では、完全子会社となる会社が取得企業となる逆取得のケースであり、完全親会社となる会社の資産および負債を時価評価するとともに、のれんを計上する点に留意する必要がある。
  (3)  被取得企業の事業用固定資産の収益性が著しく低下した場合について、必要な会計処理を分析的に論じることを求めている。
 
4問

問1
 のれんについて、規則的な償却による費用化が求められていること、そしてその理由について解答を求めることで、現行制度の処理とその基盤となる考え方を理解できているか否かを確認するための問題である。自己創設のれんの計上を排除するために、また期間損益計算として適切な投下資本の回収計算を行うために、のれんについて規則的償却が必要とされる点の指摘が求められる。

問2
 棚卸資産との交換により固定資産を取得した場合の処理を問うことで、固定資産の取得原価の決定や、損益の認識についての知識を確認する問題である。こうした交換取引については、棚卸資産が販売され、その対価をもって固定資産が取得されたとの取引を擬制し、その支出額をもって固定資産の取得原価とするとともに、棚卸資産の販売による損益が認識される点の指摘が求められる。

問3
 一取引基準と二取引基準に関連して、基本的考え方の違いが両基準にあることに関する理解を問うている。ある事象が生じた後にそれと密接に関連した事象が生じた場合、両事象を一つの取引として処理するのかそれとも別個の取引として処理するのかという異なる考え方のうち、現行の会計制度上は、主として二取引基準に依拠している。それが、貸倒れに関して、貸倒損失という費用の発生として取り扱う点の指摘が求められる。

問4
 振当処理は、外貨建金銭債権債務とそれに付された為替予約とを一体のものとして処理するが、現行会計制度上は、為替予約を独立の取引として処理することが原則である。セール・アンド・リースバック取引は、資産の売却と当該資産のリースという2つの契約から構成されるが、これらを一体のものと考え、資金の調達(借入れ)として処理することが振当処理と同様の論理構成を持っていることの理解を問うている。したがって、振当処理とは異なる考え方では、2つの契約を資産の売却と当該資産のリースとして処理することになる点の指摘が求められる。
 
5問

 本問は、在外子会社等を含む連結グループを題材に、連結財務諸表の作成およびその理論的背景の説明を求める総合的な問題である。
 問1は、在外支店の外貨表示財務諸表と在外子会社の外貨表示財務諸表の換算方法に起因する換算差額の性格の相違点の理解を問うとともに、在外子会社の外貨表示財務諸表の換算によって生ずる換算差額を純利益に含めるか否かについて意見を求めている。
 問2は、海外に設立した子会社が新株予約権を親会社に対して発行している場合において、同子会社の資本連結手続に関連して株主資本および新株予約権に係る為替換算調整勘定を算定するなどの能力を問うている。
 問3は、第三者から株式を取得して持分法適用会社とした海外の会社について、持分法適用による会計処理および追加取得して連結子会社とした場合の会計処理を問うている。
 問4は、第三者から株式を取得して連結子会社とした海外の会社について、土地の評価差額およびのれんの会計処理を行う能力を問うている。さらに、当該会社の株式を売却して持分法適用会社とした場合において、当該売却についての会計処理を行う能力を問うている。
 問5は、上記の問2から問4で得られた結果を利用して、連結グループの連結財務諸表の期末の利益剰余金の金額および為替換算調整勘定の金額を算定する能力を問うている。
 問6では、持分法の適用に伴う未実現損失の控除方法の留意点について、複数の問題点を整理し、分析する能力を問うている。
 
監査論】
 

1問

問題1
 今日の監査業務が抱える難しさのうち、特に新会計基準の導入により制度化された見積りの判断の介在する情報を前提に、監査人が監査業務の品質を確保するために必要な対策について、具体的な局面に即して説明できるかどうか、広範囲な視点からの思考力を問う。
 繰延税金資産の回収可能性、退職給付債務計算における予測数値など、財務諸表には従来にも増して会計上の見積りを要する要素が多く含まれている。このことは、監査対象である財務諸表の情報としての質の変化をもたらしていることから、監査の品質確保という観点から、とくに留意すべき事項となっている。本問は、監査の計画と実施、監査意見の表明、及び監査体制の整備という観点から、監査人としてこの問題にいかに対応すべきかを体系的に論述できる能力があるかどうかを試す問題である。

問題2
 監査人が重要な虚偽表示のリスクを評価する際に監査上留意すべき点について、特定の状況を踏まえ、自らの問題意識を明確にした上で、整理して論述できるかどうかの能力を問う。
 被監査会社の経営環境の急激な変化が生じた場合、監査人は、職業的専門家としての懐疑心を高め、監査の品質確保に十分な注意を払わなければならない。本問は、経営トップの急な交代と経営方針の変更に伴う経営環境の変化が生じた事例を想定し、重要な虚偽表示のリスクの評価に際して、どのような点に留意すべきかについて、職業的専門家としての懐疑心という観点から論点を整理しながら、体系的に論述できる能力があるかどうかを試す問題である。
 
2問

問題1
 分析的手続は、監査計画の策定及び財務諸表の総括的吟味において必ず実施しなければならない手続であり、実証手続としても、発見リスクの程度によってはそれ以外の実証手続よりも効率的な場合がある。したがって、監査人は、分析的手続の特徴について十分理解しておく必要がある。また、分析的手続の推定値はデータを利用して算出するため、監査人は利用するデータの信頼性(監査の有無やデータを入手するシステムに係る内部統制の有効性等)、入手可能性及びデータ間に存在する関係等に注意する必要がある。本問は、監査人の必須の知識として、分析的手続に関する理解の程度を確認することを目的としている。

問題2
 産業構造の変質に伴い、ソフトウェアの仕掛品のように実地棚卸の対象とならない販売用資産を有する会社が増えてきている。またリスクアプローチの普及により立会や確認等の伝統的監査手続の重要性が低下したようにみなす風潮も生じている。しかし、虚偽表示リスクの高い棚卸資産に対する実証手続としての立会は依然重要であり、立会に関する基本的理解と応用力を問う問題である。

問題3
 債務保証の会計上の取り扱いとして全ての債務保証が偶発債務として注記されるべきこと、及び発生の可能性と見積りの合理性の要件から引当計上の対象となることに関する理解、ならびに保証債務に関連する注記ないし引当金が、適正に開示・計上されていない場合に、不適正事項として記載される除外事項とそれに関連して必要となる記載事項を問う問題である。
 
企業法】
 

1問

   株式会社の機関である株主総会と取締役会に対する規制は、様々な点で比較できるところ、本問は招集手続、とりわけ招集通知に関する規制について問うものである。問1は、特定の株主総会で議決権を行使することができない株主が存在することまで含めて、招集手続に関する制度を正確に理解しているかが問題となる。問2問3では、招集通知もれがある場合の決議の効力の違いを、株主総会と取締役会の会議体としての特徴の違いを踏まえて理解しているかを問うている。問3では、あわせてそれに関する重要な判例の考え方に対する評価を示すことまで期待される。
 
2問

   問1は、事業譲渡における利害関係人の保護について、会社法「第1編 総則」の「第4章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等」および「第2編 株式会社」の「第7章 事業の譲渡等」の諸規定に関する基本的な理解を問うものである。問1では、事業譲渡における組織法的な規制とともに、会社法総則の事業譲渡に係る規制について、事業譲渡の意義を踏まえて適確に指摘することが求められる。
 問2は、事業譲渡と経済的実態が類似している会社分割(吸収分割)について基本的な理解を問うものである。問2では、会社分割の手続きと効果に関する諸規定について、債権者保護の観点から、事業譲渡の場合と比較してどのような違いがあるかを両者の法的性質の差異を踏まえて適確に指摘することが求められる。
 
租税法】
 

1問

問題1
 問1は、法人税法第22条2項の定めについて、資産の無償譲渡の場合における取扱いと規定の趣旨に対する理解を問うものである。
 問2は、親子会社間の資産の低額譲渡事例を基にして、法人税法22条の適用のあり方と、法人税法37条で定める寄附金としての取扱いを、親会社と子会社の両者について問う。いずれも、租税法上の重要な論点である。この事例と類似の裁判例としては、最高裁平成7年12月19日判決(民集49巻10号3121頁)があり、参考となろう。

問題2
 本問は、譲渡所得課税の理論的根拠とともに、借入金利子の取得費該当性に関する法的な処理について基本的な理解を問うものである。
 問1は、譲渡所得課税の理論的根拠を問うもので、最高裁昭和47年12月26日判決(民集26巻10号2083頁)によれば、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものと解されている。
 問2は、借入金利子の取得費該当性に関する一般的な取扱いの知識の有無とその取扱いの理由の理解を問う。たとえば、最高裁平成4年7月14日判決(民集46巻5号492頁)及び課税実務は、土地建物を現に居住の用に供した日を基準に、当該資産の使用開始の日以前に対応するものは、当該資産の取得費に含まれるとしている。そこでの理由付けも参考になろう。
 
2問

問題1
 問1
 本問は、公認会計士を目指す受験生が基本的に理解している必要のある企業会計上の当期利益の金額に法人税等の調整事項を加算・減算する全過程を問う問題である。各調整項目の留意点は、マル1期末棚卸製品の評価損の可否、マル2低額譲り受け、定率法から定額法への変更、広告宣伝用資産の譲り受け、陳腐化及びソフトウェアを含む減価償却、マル3損金不算入の租税公課と控除対象外消費税の処理、マル4特定資産の買換えの圧縮記帳、マル5外貨建取引の換算及び為替予約差額の按分、マル6貸倒損失の要件及び一括評価金銭債権の貸倒引当金、マル7会社と役員間の低額譲り受け及び低額譲渡の処理の正確性を問う問題である。
 問2
 本問は問1の会社と役員間の取引に関連して、取得費計算の有利・不利を含む個人のみなし譲渡所得を求める問題である。

問題2
 本問は法人税法上の寄附金の損金不算入額を求める問題である。留意点は、マル1指定寄附金、特定公益増進法人に対する寄附金等、マル2仮払金、未払金の処理、マル3子会社に対する債権の放棄の処理を含む損金算入限度額の計算過程である。

問題3
 本問は、公認会計士を目指す受験生が基本的に理解している必要のある納付すべき消費税額を計算する全過程を問うものである。問1は、課税標準額とその消費税額、問2は、償却債権取立益にかかわる控除過大調整税額、問3は、販売奨励金、株式投資信託分配金、有価証券の売却等を含む課税売上割合と仕入税額の按分計算の要否、問4は、控除対象仕入税額、問5は、売上げに係る対価の返還等を含む納付税額の計算能力を問う問題である。
 
経営学】
 

1問

問題1
 本問は、業界標準が企業間競争上重要である市場の性質や、近年重視されているブランド・エクイティ概念に対する理解度を問うている。

問題2
 組織は絶えず変化することを迫られている。その中で環境にいわば強制的に変化を迫られているのではなく、主体的に自ら変化、そして変革を進めることがマネジメント全体において重要である。学習する組織として、この変化に真正面から取り組むことが重要であることを、この設問は意図している。問1及び問2は鍵概念の理解を、そして問3は、論理的な展開を問うている。
 
2問

問題1
 本問は危険資産と無リスク資産(安全資産)からなるポートフォリオ選択に関する問題である。問1は3資産からなるポートフォリオの期待収益率を問うている。問2は3資産からなるポートフォリオの投資収益率の標準偏差を問うている。ただし、1資産が無リスク資産であるため、計算は容易である。問3は2つの危険資産の組合せのうち、標準偏差(リスク)が小さいものを探す問題である。問4問5は、危険資産に無リスク資産が加わった場合の効率的フロンティアと最適なポートフォリオ運用に関する理解を問う問題である。

問題2
 本問は株主に対する利益分配(留保)政策に関する問題である。
 問1は配当政策を問うている。前段で完全資本市場におけるミラー・モジリアーニ理論の意味するところを、後段で配当政策の違いが投資政策に影響を及ぼす場合の望ましい配当政策について問う問題である。問2は完全資本市場の仮定を一部取り除いたときの、自社株買いの実質的な役割を問う問題である。

問題3
 本問は法人税を考慮に入れた場合の資本構成と企業価値の関係を問う問題である。まず、問1では株主資本のみの場合の企業価値を求めさせ、問2で負債が導入された場合の企業価値、株式時価総額、株価を求めさせ、問3で負債の法人税節税効果によって企業価値が増加することの理解を問うている。問4は負債に依存した場合、株主資本コストにどのような影響があるかの理解を問う問題である。問5は、資本構成変更後の株主資本コストと加重平均資本コストを実際に求めさせる問題である。
 
経済学】
 

3問

問題1
 この問題は消費者行動理論の基本的な知識を問うものである。2財平面上の消費者の選択行動を図示すれば容易に解答できる。

問題2
 本問題は、受験者が私的財と公共財の違いを理解しているかを確認するのが目的である。まず、私的財の総需要曲線は個別需要曲線を水平(または横)に加えて求められる。しかしこの問題では、均衡において、個人Cの需要は満たされず、個人AとBの需要のみが満たされることに注意が必要である。次に公共財の社会的需要曲線は、個別需要曲線を垂直(または縦)に加えて求められる。社会的需要曲線と供給曲線の交点として公共財の最適規模を求めても良いが、本問題ではリンダール・メカニズムにより公共財の最適規模を求めている。

問題3
 外部性がある場合、市場システムのみでは市場の失敗が発生することの理解を問う問題。特に、ピグー税やコースの定理などを内容を含め十分理解しているかを問うている。

問題4
 寡占企業の行動について、特にクールノー競争とシュタッケルベルグ競争についての理解と最適化問題の解を求める計算能力を問う。
4問

問題1
 物価指数やフィッシャー方程式等のマクロ経済学における基礎的知識の理解度を問う。

問題2
 標準的な開放マクロ経済モデルであるマンデル=フレミング・モデルの変動相場制下および固定相場制下での政策効果を分析する。

問題3
 家計の効用関数から労働供給関数を導くことができるか、企業の生産関数から企業の労働需要関数を導くことができるかの二つについて問う。労働者に貨幣錯覚が存在するときに労働市場の均衡を求め、経済の総供給関数を求めることができるか、について問う。家計の期待の調整を表現できるかについて問い、その期待の調整による収束先を理解しているかについて問う。
民法】

5問

問1
 共同抵当に関する理解を問う問題である。共同抵当においては、抵当の対象になっている不動産を同時に競売する場合と一方または一部だけを競売する場合があるが、民法が同時配当の場合は、各不動産の価額に応じて債権者に対する配当額を割り付け、異時配当の場合は後順位担保権者等の利害関係者が不利益を受けないように配慮している(民法392条2項)にもかかわらず、判例が債務者と物上保証人がともに抵当物件を提供する場合は、民法392条2項がそのまま適用されるのではなく、物上保証人提供の物件に先立って債務者の提供した物件が債権者の満足にあてられるとしていることを理解しているかどうかを問うている。

問2
 わが国では登記の記載に公信力が認められていないにもかかわらず、本問のような場合に民法94条2項(通謀虚偽表示の第三者保護規定)が類推適用されて善意の第三者が保護されることを理解しているかどうかを問うものである。
6問
問1
 他人の物の売買をした場合の基本的な効果、解除、不当利得のあり方を総合的に問う問題である。
 他人の物の売買において、目的物が追奪された場合に、売主は、担保責任を負担し、買主は契約を解除することができる。解除の効果は、原状回復であり、買主は支払った代金を返還請求することができるが、同時に、受領した目的物を返還しなければならない。追奪をうけた場合には、目的物を返還できないが、その場合でも、契約を解除して、代金を返還請求できるか問題となる。目的物の返還不能のリスク負担を、解除権の存否の問題と関連づけて検討する必要がある。
 また、解除を前提とした場合に、買主が自動車を1年間使用したことによる利益の帰趨が問題となる。さらに、目的物の所有権は他人にあるので、その他人との関係で、売主と買主の利益の調整を検討する必要がある。

問2
 他人の物の売買、賃貸借をした場合において、売主と買主、および貸主と借主の法律関係を問う問題である。
  (ア)  他人の物の買主側に、自分に責任のある滅失に関して、どのような権利があるかを問う問題である。その前提として、履行補助者の責任をも検討する必要がある。
(イ)  物の貸主は、借りた者に対して賃料の請求をすることができ、賃貸借終了時には、目的物の返還を請求できるが、他人の物の貸主に、どのような権利があるかを問う問題である。
統計学】

7問

問題1
 確率に関するよく知られた話題を対象とした2つの独立した小問から構成されている、初等的な問題である。問1はベルヌーイ試行と呼ばれる事象の確率を求める問題で、最も基本的な話題である。期待値の計算も内容に含まれている。出題の背景には確率の評価に関する歴史的な議論があるが、場合の数え上げでも容易に解ける水準である。問2は3項分布を題材としてベイズの定理を適用する問題である。

問題2
 出現頻度が低い事象の確率モデルとして広く利用されているポアソン分布を題材とした問題である。基本的な確率の計算、独立な2つのポアソン分布に従う確率変数の和がまたポアソン分布となること 。2変数の和が与えられたときの個々の確率変数の条件付確率を評価することが要求されている。
 多数の確率変数の和については、中心極限定理を適用して近似的に確率を求めることができる。正規分布による近似はこの種の問題では基礎的な知識である。

問題3
 家計の消費行動を題材とした単回帰分析の問題である。最小2乗法の計算だけでなく、回帰係数の意味から弾力性が評価できること、予測値とその区間推定の導出方法など、応用される内容を理解していることが求められている。関連して、指数に関する初等的な知識としてラスパイレス指数、パーシェ指数の知識も要求している。家計調査、物価指数のいずれも、経済動向を把握するための基本的な統計として重要なものである。
8問

問題1
 2変量正規分布の確率密度関数についての理解を問う問題である。(3)では正規分布に従う複数の確率変数の線形結合が正規分布になることと標準正規分布表を使った確率の求め方を理解しているかどうかも問う。

問題2
 回帰分析において不可欠な最小2乗推定量、決定係数、回帰の標準誤差、信頼区間といった基礎事項を正しく理解し計算できるかどうかを確認する問題である。

問題3
 ファイナンスで資産価格の変動を表すのに用いられるランダム・ウォーク、正規分布、対数正規分布に関する理解を問う問題である。(1)、(2)、(5)は正規分布の知識があれば解ける。(3)、(4)は対数正規分布に関する問題であるが、変数変換、期待値、メディアンを正しく理解していれば、対数正規分布を知らなくても解ける。

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