基 本 合 意 書


 預金保険機構(以下「DIC」という。)、株式会社日本長期信用銀行(以下「長銀」という。)及びニュー・LTCB・パートナーズ・CV(以下「ニュー・LTCB・パートナーズ」という。)(以下それぞれを「当事者」という。)は、1999年12月24日付で本基本合意書を締結する。

 DICは、DICが保有している一定の長銀株式をニュー・LTCB・パートナーズに売却する意向であり、ニュー・LTCB・パートナーズはこれを購入する意向である。

 ニュー・LTCB・パートナーズは、さらに新規に発行する長銀の普通株式(以下「新規発行普通株式」といい、長銀の発行済普通株式と併せて「普通株式」という。)を引き受ける意向である。

 DIC、長銀及びニュー・LTCB・パートナーズは、1999年9月28日付で、ニュー・LTCB・パートナーズにDICとの優先交渉権を与える趣旨の覚書(以下「本件覚書」という。)を締結した。

 全当事者は、全当事者間で本件覚書に従って行われてきた協議の内容及び上記意向に従って最終的な売買契約(以下「最終契約」という。)が締結される際の基礎となる全当事者の合意を明確化しておくことが好ましいと認識している。

 DICは、本基本合意書の締結交渉に当たっては、金融再生委員会(以下「FRC」という。)の指導・監督を受けている。

 よって、当事者間において次のとおり合意する。

第1条 (定 義)

 文脈により別意に解すべき場合を除き、以下の用語は下記の意味を有する。
 
 「基準日」とは、実行日の前日を意味する。

 「実行日」とは、ニュー・LTCB・パートナーズが長銀の新規発行普通株式3億株の発行価格1,200億円(1株当たり400円)を支払い、且つ発行済普通株式2,417,075,000株を10億円で購入する日を意味し、「クロージング」とは、実行日に当該新規発行普通株式に係る出資の払込み及び当該発行済普通株式の購入並びにそれらに付随する取引が実行されることを意味する。

第2条 (貸借対照表)

2.1   ニュー・LTCB・パートナーズは、DICから長銀の単位未満株式を除く全発行済普通株式を購入する。
 
2.2   DICは、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年10月16日法律第132号。以下「金融再生法」という。)第62条及び72条に基づき損失補填を行う。損失補填額決定に当たって使用する長銀の貸借対照表は、単体ベースの貸借対照表とする。当該貸借対照表は、基準日現在の会計基準に基づき作成される。

第3条 (株式購入及び資金注入)

3.1   ニュー・LTCB・パートナーズは、DIC及び長銀が最終契約に基づく義務を履行することを条件として、
 
(i)  長銀の単位未満株式を除く発行済普通株式の全部に相当する普通株式2,417,075,000株をDICから10億円(1株当たり約0.41円)で購入し、
 
(ii)  実行日に長銀の新規発行普通株式3億株を1,200億円(1株当たり400円)で引き受ける。
 
3.2   DICは、ニュー・LTCB・パートナーズが最終契約に基づく義務を履行することを条件として、
 
(i)  DICが実行日に所有している長銀の普通株式のうち2,417,075,000株を10億円(1株当たり約0.41円)でニュー・LTCB・パートナーズに売却するとともに、長銀に単位未満株式である普通株式212株を87円で買取請求する。
 
(ii)  DICが実行日に所有している長銀の転換優先株式のうち74,528,000株を現行条件(配当率年率1%、普通株式への転換権付、転換価格は1株当たり180円、2008年に強制転換)に従って引き続き所有する一方、長銀のすべての残りの優先株式が消却されることに同意する。
 
(iii)  クロージングの後に長銀から「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」(平成10年10月22日法律第143号)(以下「早期健全化法」という。)第4条に基づく株式引受の申請がなされたときは、引受についてのFRCからの承認を条件として長銀の新規発行無議決権優先無額面株式を最高6億株、2,400億円(1株当たり400円)まで引き受ける。優先株式の引受に係る具体的な条件については、早期健全化法に基づき、長銀がニュー・LTCB・パートナーズの指示に従い健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当する発行金融機関等として提出する(但し、承認日現在で自己資本比率4%以上を達成していることを条件とする)経営健全化計画に関するFRCの審査を経た上で決定される。実行日後における正式申請日から10営業日程度の最終契約に定める期間内に、最終契約で当事者が合意する日を払込日として、下記第3.4項に記載の条項とほぼ同一の条件による当該株式引受についてFRCの正式な承認が得られない場合には、ニュー・LTCB・パートナーズは最終契約を解除し、基準日以降に長銀に関して自らが行ったすべての取引を無効にできるものとする。
 
3.3   ニュー・LTCB・パートナーズが要求する場合、長銀は早期健全化法に基づき、前項の株式引受による増資の条件として、かかる増資と同時に、資本の欠損の全部又は一部を相殺するために必要な額の減資を行うものとする。
 
3.4   第3.2項(iii)の優先株式に係る条項は次のとおりとする。
 
(i)  転換期間:
 所持人は、優先株式をその発行日(以下「優先株発行日」という。)から5年目の応当日以降に普通株式に転換することができる。
 
(ii)  転換価格:
 転換価格は、優先株発行日から5年目の応当日、6年目の応当日及び7年目の応当日に、長銀の普通株式が公開されていれば1株当たり400円又は市場価格のいずれか低い方の額、また普通株式が公開されていなければ1株当たり400円又は1株当たりの純資産額のいずれか低い方の額に加減調整される。但し、転換価格は、時期・状況の如何を問わず、1株300円を下回らないものとし、また計算方法については最終契約において確定するものとする。
 
(iii)  強制転換:
 優先株式は、優先株発行日から7年目の応当日に、当該時点における現行転換価格により普通株式に強制転換される。
 
(iv)  配 当:
 配当はFRCが決定する配当率によるが、ニュー・LTCB・パートナーズは、可能な限り最低水準の配当率を希望している。
 
3.5   新規株式公開の際又はその後随時DICが保有している上記第3.2項(ii)及び(iii)に係る長銀株式の時価総額が5,000億円を超えている場合、長銀はDICに対し、DICが保有している長銀の普通株式又は優先株式のうちの一定の数量を公正な価格により売却するよう求めることができる。DICはかかる同意を不合理に差し控えてはならず、売却の価格及び方法については長銀と協議の上決定するものとする。その時点で優先株式が転換可能な状態にある場合、長銀は、かかる売却のために当該優先株式を普通株式に転換することを要求することができる。
 
3.6   各当事者は、本第3条に定める株式売買、株式発行、株式消却、減資及び増資並びに資金援助の実行のために各当事者による必要なすべての行為を行う(株主総会での賛成を含む)こととする。

第4条 (表 明 等)

 最終契約は通常の企業買収契約に含まれる表明・担保及び補償を含むものとする。なお、かかる表明・担保及び補償の有効期間は、税務に関するものについては実行日を含む事業年度の税務申告書の申告期限から5年間、それ以外のものについては実行日から3年間とする。長銀の基準日現在に存在していた未実現、簿外又は偶発債務又は責任が実現した場合並びに係属していた訴訟が確定したことにより長銀の責任が確定した場合についてはDICがニュー・LTCB・パートナーズに補償するものとする。また、長銀の子会社について基準日現在存在していた未実現、簿外又は偶発債務又は責任が実現した場合並びに係属していた訴訟が確定したことにより子会社の責任が確定した場合の取扱については別途最終契約書で定めるものとする。補償の総額については最高額の制限は無いものとする。但し、税務にかかる表明に関するもの以外に補償の対象となりうる金額(その金額の多寡を問わない)すべてを合計しても総額が50億円以下の場合には税務にかかる表明に関するもの以外に補償義務は発生しないものとする。総額が50億円を超えた場合に、50億円を超過している部分(但し実際の補償の対象となるのは50億円を超えている部分で且つ一件1億円以上のものに限る)について補償義務が発生するものとする。

第5条 (誓 約)

 最終契約は、通常の企業買収契約に含まれる誓約を含むものとする。

第6条 (長銀が現在保有している株式ポートフォリオ等)

6.1   長銀は、本第6条の規定に基づき売却する場合を除き、長銀が最終契約書の締結日現在実質的に保有している国内上場及び非上場株式を、最終契約締結後継続保有するものとする。長銀は、最終契約で別途合意される日(以下「判定期日」という。)現在の保有株式(長銀の子会社のうち最終契約で規定された子会社の株式及び契約の規定等により長銀による売却が制限されている株式を除く。以下本条において同じ)の銘柄、数量、簿価及び同日現在の市場価格(非上場株式については最終契約で規定する方式により計算された公正な価格。以下本条において同じ。)の一覧表を作成し最終契約で別途合意される日にニュー・LTCB・パートナーズ及びDICに交付する。かかる保有株式のうち判定期日現在含み損のある株式については実行日より前に長銀がDICに対して(当該株式が6.5項に係る株式である場合)又は市場で売却するものとする。かかる含み損のある株式のDICに対する売却価格は、本項規定に基づき長銀が作成した一覧表記載の市場価格とする。但し、かかる価格は、適用ある法律上許容されるものでなければならない。
 
6.2   ニュー・LTCB・パートナーズは判定期日現在で含み益のある保有株式から、同日現在の含み益の合計が実行日において長銀の自己資本比率を4%とするために必要となる金額になるような株式(以下「第一次売却株式」という。)及び含み益の合計が2,500億円から上記金額を控除した額になるような株式(以下「第二次売却株式」という。)をそれぞれ指定し、最終契約で別途合意される日までにDIC及び長銀に書面で通知する。第一次売却株式及び第二次売却株式以外の保有株式については、実行日より前に、長銀がDICに対して(当該株式が6.5項に係る株式である場合)又は市場で売却する(かかる選択は本項に基づく指定時に同時に行われるものとする)。かかる第一次売却株式及び第二次売却株式以外の含み益のある保有株式のDICに対する売却価格は、6.1項の規定に基づき長銀が作成した一覧表記載の市場価格とする。但し、かかる価格は適用ある法律上許容されるものでなければならない。
 
6.3   長銀は、第一次売却株式を実行日の午後に、第二次売却株式を実行日から90日以内(但しDICに対する売却は特定日1日ないし2日にまとめて行われるものとする)に、それぞれDICに対して(当該株式が6.5項に係る株式である場合)又は市場で売却する(かかる選択は第6.2項に基づく指定時に同時に行われるものとする)。かかる第一次売却株式及び第二次売却株式のDICに対する売却価格は、6.1項の規定に基づき長銀が作成した一覧表記載の市場価格とする。但し、かかる価格は適用ある法律上許容されるものでなければならない。
 
6.4   長銀が第6.1項ないし第6.3項において市場での売却選択をした場合、長銀はDICと事前に協議を行うものとする。DICは、当該株式の売却には反対しないものとするが、実際の売却日現在における株式市場の状況等に鑑み、関連する株式を購入する権利(以下「売却先指定権」という。)を有する。但し、(i)(a)DICの視点から見て売却案の価格が関連株式の数量及び流動性を反映する公正な市場価格であり、且つ(b)売却案が明らかに関連株式市場を混乱させるものではないことがDICにとって明らかである場合又は(ii)発行体が同意している場合には、売却先指定権を行使しないものとする。DICが当該株式を買い受ける場合の価格は、公正な市場価格とする。但し、かかる価格は適用ある法律上許容されるものでなければならない 。
 
6.5   長銀が株式の発行体と良好な業務関係を保てるようにするため、ニュー・LTCB・パートナーズが要求した場合、DICは、当該株式を、長銀信託銀行株式会社(以下「長銀信託」という。)に信託する。DICは、実行日から5年間、長銀の承認を得ずに当該信託の対象となった株式を処分してはならず、長銀又は長銀信託は、当該売却株式に対し名目上の所有権及び実質的な議決権を有する。長銀は、実行日から5年以内であれば、買戻時の公正な価格により売却株式を買い戻す権利を有する。但し、長銀がかかる権利を行使した場合には、DICは、対象となった株式を売り戻さないことを選択することができるが、当該株式の売却を不当に拒否しないものとする。DICが売り戻さないことを選択した場合で、当該時点で有効な信託期間が当該選択の日から1年以内に終了する場合には、当該株式に係る信託期間は当該選択の日から1年後の応当日まで延長される。延長された期間及びDICが売り戻しを行わないことを選択した以降の期間を含む信託期間中、長銀は買い戻しの権利及び売却の承認権を引き続き保有し、DICは売り戻しを行わない選択権を引き続き保有するものとする。
 
 第6.4項に定める売却先指定権によりDICが購入する株式は、本第6.5項に記載の取り決めに服する。

第7条 (貸出関連資産の瑕疵担保)

7.1   解 除
 
(1)  2つの条件
 
 本基本合意書及び最終契約において企図される取引において、DICは長銀に対して実行日付で貸出関連資産を譲渡したものとみなす。長銀は、実行日から3年以内の間に、貸出関連資産に瑕疵があり、2割以上の減価が認められた場合、当該貸出関連資産の譲渡をそのいかなる部分についても遡及的に実行日付で解除する権利(以下「解除権」という。)を有する。
 
 「貸出関連資産」とは、以下の資産及びその他の債権を意味し、それらの元本額は以下の通り決定される。但し、いずれかの債務者について、以下a)、b)及びc)に記載の資産及び債権の元本総額が1億円未満である場合には、当該元本総額が長銀の貸借対照表に計上されている金額であるか否かを問わず、当該債務者に係る資産及び債権は貸出関連資産に含まれないものとする。
 
a)  基準日に長銀が保有している貸出金、外国為替、貸付有価証券、未収利息、未収収益、仮払金並びに貸出金及び支払金に関連する立替金(但し、残額)。
 
b)  長銀による基準日現在まだ実行されていない与信確約(但し、与信確約の額から基準日前に実行された与信確約の額を差し引いた残額)。
 
c)  基準日に長銀が行っている支払保証又は支払承諾(但し、その額)。
 
d)  上記a)ないしc)のいずれかに該当する債権に関し、基準日後に更新、借換え又はロールオーバーされた債権、基準日後に会社分割等によって別の会社が借り入れた新しい債権、基準日後に長銀がその保証履行等により代位取得した債権又はその他の実質的に同一性のある債権(但し、その未払元本が当該債権について上記a)、b)及びc)に記載の額を超過してはならない)。
 
e)  ローンに関係するデリバティブ取引であってヘッジ目的で締結されたもの。
 
(2)  瑕 疵
 
a)  瑕疵の定義
 
 瑕疵」とは、当該資産に関し、FRCが「長銀が引き続き保有することが適当」と判定した根拠について、基準日から3年以内に変更が生じたか、又は、真実でなくなったことが判明したことを言い、簿価の減価が長銀買収後の専らニュー・LTCB・パートナーズ又は新生長銀の責めに帰すべき事由によって生じた場合は「瑕疵」に含まれない。
 
b)  瑕疵の推定規定
 
 以下の場合には瑕疵の存在を推定するものとする。下記規定の適用においては、資産判定(99年2月)に使用された債務者区分(金融監督庁検査済みの98年9月基準の自己査定を98年10月27日に時点修正したもの)を使用するものとする。
 
I . 「正常先」の債権又は「要注意先のうち、直近の決算において繰越欠損が生じておらず、元金の返済及び利息の支払いが当初の約定通り行われている先(いわゆる「要注意先A」)」の債権について、基準日から3年以内に、
 
(i)  元本又は利息の3ヶ月以上の延滞
 
(ii)  実質債務超過又は繰越損失の発生(但し、1〜2年程度で解消する一過性のものは除く)
 
(iii)  貸出条件緩和の要請(但し、経済的困難に陥った債務者の再建を企図するものに限る)
 
(iv)  債権放棄の要請

のいずれかがあったときは、かかる事実をもって瑕疵と推定する。
 

II . 要注意先以下の債権(但し、要注意先債権のうち上記I.の債権を除く)について「適資産」と判定された根拠となる主たる事由が下記の場合は、以下の事実をもって瑕疵と推定する。
 
(i)  自力再建の可能性あり・・・・・・・・・売上高又は当期利益又はその他の重要な財務数値につき、債務者の再建計画と実績との間に30%以上の大きな乖離が生じ、且つその結果、再建計画の達成不能が確実となった場合。
 
(ii)  親会社・メイン銀行の支援あり・・・・・・・・・延滞が生じた場合(但し、一過性のものを除く)。
 
(iii)  親会社との一体判定・・・・・・・・・親会社に「瑕疵」に該当する事由が発生した場合。
 
(iv)  個人に支払能力あり・・・・・・・・・延滞が生じた場合(但し、一過性のものを除く)。
 
III . 更に、下記の場合を瑕疵と推定する。
 
(i)  債務者について支払の停止又は破産、和議開始、会社更生手続開始、会社整理開始、特別清算開始もしくはその他類似の手続の申立があり、かかる申立が申立から60日間却下又は取り下げられない場合。
 
(ii)  債務者が手形交換所の取引停止処分を受けた場合。
 
(iii)  債務者が、解除権行使可能期間末現在で元本又は利息を3カ月以上延滞している場合。
 
(3)  解除権の行使期間
 
 解除権は、実行日の3年目の応当日までの間いつでも行使することができる。但し、長銀は、専ら3年目の応当日までの事実関係を立証・説明する目的のためにのみ、この期間を実行日から3年目の応当日以降さらに3か月間延長することができる。
 
(4)  2割以上の減価
 
 「2割以上の減価」とは、同一債務者に対する全貸出関連資産のその時点での簿価(その時点での引当金控除後ベース)の総額が、それら貸出関連資産の当初簿価(当初引当金控除ベース)の総額に比し2割以上減額していることを言う。
 
(5)  債権放棄と解除権
 
 債権放棄の要請があり(瑕疵の発生)これを新生長銀が受諾した場合は、解除権を放棄したものとみなす。
 一方、貸出条件の緩和に関しては、経済的困難に陥った債務者が再建を企図して要請し(瑕疵の発生)これを新生長銀が受諾した際に、DICが合理的と容認できる判断理由がある場合には、その時点で解除権を放棄したものとはみなさず、基準日以降3年以内の解除権行使留保を認める。
 
7.2   解除の効果等
 
(1)  解除の効果
 
 解除権が行使された場合、DICは、かかる解除の対象となった貸出関連資産の当初簿価(当初元本額から関連当初貸倒引当金を差し引いた額)を長銀に支払うものとし、かかる支払と引き換えにDICは当該貸出関連資産を取得する。長銀が当該貸出関連資産の元本の返済又は担保の処分代金もしくは保証人(法人を含む)による返済を受けていた場合、DICは、上記の長銀に支払われる金額から当該返済額を控除できるものとする。
 
 長銀は、DICへの貸出関連資産を返却する意図を有する場合には、当該時点における簿価(貸倒引当金の金額控除後)でDICから当該貸出関連資産の買戻しを行うことについてその都度DICと協議することができる。
 
 本7.2項で使用されている用語の定義については最終契約で定義されるものとする。
 
(2)  不可抗力
 
 長銀買収時から3年以内に、戦争、自然災害、経済大恐慌等の不可抗力が生じ、その結果として債務者の状況が悪化したときには、DICの新生長銀に対する支払義務は制限を受ける。不可抗力と思われる事象が生じた際は、DICと新生長銀はその事象が不可抗力に該当するか否か、債務者の状況悪化がその不可抗力に起因するものか否か等を含め誠実に協議し、DICと新生長銀の間の公平な負担のあり方を決定することとする。
 
7.3   解除の手続
 
 長銀は、一又は複数の貸出関連資産若しくはその一部について解除権を行使しようとする場合、DICにその旨通知をするものとする。かかる通知は四半期毎になされるものとする。DICが異議の通知を長銀にしない場合は、DICは解除通知の受領後最終契約で合意される期間内に解除された貸出関連資産の当初簿価を支払う。DICが長銀に異議の通知をした場合は、DICと長銀は誠実に協議する。協議が整わない場合、DICと長銀が合意できる国際的に認められている会計事務所が検討を行う。長銀及びDICは当該会計事務所の検討結果を尊重するものとする。但し、長銀又はDICがかかる検討結果について東京地方裁判所に提訴することを否定するものではない。DICが会計事務所の検討結果に従う場合及び裁判所がDICの支払義務を認める旨の判決が確定した場合、DICは解除された貸出関連資産の当初簿価を支払うものとする。
 
 最終契約では解除権行使についてさらに詳細な手続を規定するものとする。

第8条 (取締役会及び経営陣)

 実行日後の長銀の取締役会は15名以上(過半数は日本人)の取締役で構成される予定である。八城政基氏が会長、社長兼最高経営責任者に就任する。ニュー・LTCB・パートナーズは今井敬氏及び樋口廣太郎氏に取締役就任を要請している。また、ニュー・LTCB・パートナーズは、更に5名の日本人に取締役就任を要請する予定である。ティモシー・コリンズ氏及びJ・クリストファー・フラワーズ氏も取締役に就任する予定であり、ニュー・LTCB・パートナーズはポール・A・ボルカー氏についてもシニア・アドバイザーへの就任を要請している。残り5名の取締役は、ニュー・LTCB・パートナーズの非日本人出資者及びその他の名声ある個人から選任される予定である。

第9条 (貸出関連資産の継続保有)

 新生長銀は、1999年2月の金融再生委員会の資産判定により「長銀が引き続き保有することが適当」とされた全ての貸出関連資産を株主の変更にも拘わらず本契約に従って継続保有する。

第10条 (継続保有する貸出関連資産に係る債務者に対する融資についての基本方針)

 ニュー・LTCB・パートナーズは、新生長銀が継続保有する貸出関連資産に係る債務者との良好な関係を保つため、少なくとも実行日以後3年間は、新生長銀に以下のような基本方針で融資の管理を行わせることを表明する。

 すなわち、特段の事情のない限り、

 (i)  貸出関連資産を売却せず
 
 (ii)  急激な回収を行わず、且つ
 
 (iii)  借換え、季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずる

こととする。

 上記(ii)に定める「急激な回収を行わず」とは、契約上認められた債務者の期限の利益を守り、当該期限について債務者に不利な条件変更を行わないことをいう。

 上記に関して、「特段の事情」のある場合とは、上記(i)については、債務者の保護の趣旨に反しない長銀の資金調達を目的とするローン・パーティシペーションや貸付債権の証券化を行う場合、(ii)及び(iii)については、回収を行わない場合や借換え等に応ずる場合に新生長銀に損害が発生することが合理的に予見できる場合をいう。

 本第10条は、上記第7条に定める解除権を制限するものではない。

第11条 (機密保持義務)

 ニュー・LTCB・パートナーズは、本日別途機密保持に関する合意書を作成し、DIC及び長銀に交付している。

第12条 (契約の解除)

 最終契約は、本契約の当事者が一定の状況下で最終契約を解除することができる旨の規定を含むものとする。

第13条 (通 知)

 最終契約は当事者が行う通知に関する規定を含むものとする。

第14条 (諸手続及びその他の事項)

14.1   全当事者は、本基本合意書が、14.1項乃至14.6項を除き、法的拘束力を持たず、強制執行することができないものであることを確認する。
 
14.2   DICは、本基本合意書締結の日から2000年2月29日までの期間、本基本合意書の内容に従い、ニュー・LTCB・パートナーズとの間で、本基本合意書で企図されている取引について排他的に交渉しなければならない。本基本合意書は、全当事者が本基本合意書を延長する旨同意した場合を除き、最終契約締結日又は2000年2月29日のいずれか先に到来した日に終了するものとする。但し、相手方当事者が誠実な交渉を継続しない場合又は相手方当事者が本基本合意書の条項に重大な形で違反した場合には、DIC又はニュー・LTCB・パートナーズは本基本合意書を解除することができる。
 
14.3   本基本合意書は、当事者とその包括承継人のみを拘束し、それらの者のために合意され、第三者の利益のために締結されるものではない。
 
14.4   本基本合意書は日本法に従って解釈されるものとする。
 
14.5   本基本合意書は日本文を正文とする。
 
14.6   当事者は、本基本合意書の対象事項については東京地方裁判所が専属管轄権を有する旨合意する。

 

預金保険機構
 
  理事長:松 田   昇
 
株式会社日本長期信用銀行
 
  代表取締役頭取 安 齋   隆
 
ニュー・LTCB・パートナーズ・CV
 
  代表者 八 城 政 基
 
  代表者 ティモシー・C・コリンズ
 
  代表者 J・クリストファー・フラワーズ
 

長銀買収に係る基本合意書の概要
長銀買収に係る基本合意書の骨子

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