広報コーナー 第4号
 
<金融税制に関する研究会の設置について>

はじめに
 金融庁は、金融監督庁と大蔵省金融企画局が統合して発足したことにより、金融制度の企画立案から金融機関の検査・監督、証券取引等の監視までを一貫して担当するとともに、銀行、保険、証券等の業態を横断的に所管することになった。このうち金融制度の企画立案に関しては、実効性のある制度設計をするためには、幅広い観点から外部有識者等と意見交換し、行政運営上の参考としていくことが重要であると考えられる。
 こうした認識の下、今般、当庁では、中長期的な観点からみた金融税制上の課題に関して、外部有識者と意見交換をする場として「金融税制に関する研究会」を発足させることとした。


.本研究会設置の背景と目的
 昨今、金融を取り巻く環境は、金融技術や情報通信技術の発達、金融・経済のグローバル化の進展など急激に変化している。この結果、業態間の垣根を超えた多様な金融商品・サービスが続々と開発されているほか、大量の資金がより利便性の高い金融・証券市場を目指して国境を超えて移動しており、今後もこの傾向はますます加速していくと考えられる。
 こうした状況下、わが国の金融・証券市場を、活力があり、透明性、公正性、効率性に優れ、さらに利用者にとってより利便性の高い市場に育成することが、安定的で活力ある金融システムを構築するうえでの課題の一つとなっている。
 そのためには、金融・証券市場を支える制度やインフラを様々な角度から不断に見直していくことが重要であるが、その一環として、金融税制についても、中長期的な見地からあるべき姿を改めて検討すべきではないかとの問題意識を持つに至った。具体的には、公平・中立・簡素という租税の基本原則と調和を図りつつ、わが国の金融・証券市場の特性、参加者のニーズに対応し、効率的で国際的競争力のある金融市場を育める金融税制を整備していく必要があると考えている。


.本研究会の位置付け
 本研究会は、総務企画部長主催の研究会であり、上述の目的に沿って、金融税制に関して広く外部の有識者と自由に意見交換、討議し、行政運営上の参考とすることとしている。このため、金融再生委員会、金融庁長官、大蔵大臣の諮問に応じて金融制度全般に関して審議する金融審議会とは性格・目的が異なることから、金融審議会とは独立して設置している。


.本研究会の委員構成
 中長期的な観点からみた金融税制上の課題に関して意見交換を行なうという本研究会の目的に鑑み、内外の金融税制や金融実務に通暁された外部有識者(金融や税制等の学識経験者、金融実務家)および当庁職員で構成している(別添メンバー表参照)。


.本研究会のスケジュール
 12年中は2回(第1回は10月10日、第2回は11月6日)、13年については、6月まで毎月1回程度を予定している。
 12年中の2回については、各委員が中長期的な観点からみた金融税制上の課題に関して幅広く問題意識を発表し、13年については、ある程度テーマを絞ったうえで、自由に意見交換をする予定である。


.議事内容の公表
 活発な意見交換を促すため、研究会は非公開とするが、意見交換等の内容については、研究会開催後、議事要旨をホームページに載せることにより、逐次公表する予定である。なお、本研究会は、意見交換が目的であるため、報告書の取りまとめは行なわない。
 
  (「金融税制に関する研究会」の模様)


別添
金融税制に関する研究会メンバー


 委   員 )
  大 村 敬 一 早稲田大学商学部教授
小 畑 哲 哉 NTT 第四部門担当部長(税務担当)
神 田 秀 樹 東京大学法学部教授
北 原 正 彦 三井海上火災保険 審査管理部 次長
関   行 隆 中央三井信託銀行 業務部 主任調査役
種 橋 潤 治 住友銀行 財務企画部長
田 邊 栄 一 三菱商事 財務部長代行
手 島 恒 明 日本生命保険 調査部 課長
中 里   実 東京大学法学部教授
ロバート・フェルドマン   モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券
マネージング・ディレクター兼チーフ・エコノミスト
キャシー 松井 ゴールドマン・サックス証券会社
マネージング・ディレクター兼チーフ・ストラテジスト
吉 川   満 大和総研 制度調査室長
渡 辺   努 一橋大学経済研究所助教授


 金 融 庁 )
  乾   文 男 総務企画部長
藤 原   隆 総務企画部審議官
渡 辺 達 郎 総務企画部審議官
三國谷 勝 範 総務企画部(取引所監理官)
鈴 木 正 規 総務企画部政策課長

 
<生命保険会社19社に対する検査結果について>

はじめに
 保険業法第128条等に基づき生命保険会社から平成11年3月期決算における自己査定結果の報告を受け、生命保険会社に対して集中的な検査を実施した。
 生命保険会社に対しては、平成11年5月27日より立入検査を開始し、11年3月期の自己査定結果に基づき、財務内容等について実態把握を行い、その検査結果をとりまとめ、平成12年9月21日に公表したところである。
 なお、第百生命、大正生命については、既に保険管理人の管理下に置かれていることから、計数は参考として記載している。


.総与信の査定結果
 総与信の当局査定結果は II 分類2兆9,844億円、 III 分類2,332億円、 IV 分類235億円となり、 II 分類から IV 分類額の合計は3兆2,411億円で全体の6.3%となった。
 当局査定と自己査定の乖離額は、 II 分類1兆906億円、 III 分類1,716億円、 IV 分類225億円あり、総与信に対する乖離率は II 分類2.13%、 III 分類0.33%、 IV 分類0.04%となった。
 自己査定基準については、大きな問題は認められていないが、その内容の一部に問題点が認められたので、大半の保険会社に改善を求めた。
 主な問題点としては、
 
(1 )債務者区分の定義が規定されていない、あるいは、決算期以降における後発事象に係る規定が定められていない。
(2 )担保処分可能見込額の算出について、合理的根拠に基づく基準が定められていない。
  等であった。
 自己査定の正確性については、自己査定基準自体に問題が認められるほか、債務者の実態把握等が不十分なまま分類を行っていること等から、当局査定と自己査定が相違しているものが大半の保険会社について認められた。


.償却・引当の適切性
 生命保険会社19社の要追加償却・引当額(注)は1,814億円で、償却・引当不足率は 0.35%であった。
 償却・引当基準については、大きな問題は認められていないが、破綻懸念先 III 分類債権にかかる引当必要額算定根拠や、一般貸倒引当金の貸倒実績率について、合理的な根拠がないなど、その内容の一部に問題が認められたので、改善を求めた。
 償却・引当の適切性については、当局査定と自己査定が相違していることから、大半の保険会社において償却・引当の追加が必要となった。
 
(注 )要追加償却・引当額とは、当局査定に、原則として各社の償却・引当基準を適用して算出した「当局査定に基づく償却・引当額」から「自己査定に基づく償脚・引当額」を差し引いた金額である。


.ソルベンシー・マージン比率
 ソルベンシー・マージン比率は、各社自己査定に基づくソルベンシー・マージン比率701.8%から、当局の検査結果に基づき算出した結果、32.6ポイント減少し、668.8%となった。
 ソルベンシー・マージン比率の正確性については、自己査定が正確でないことのほか、土地の含み損益の算定誤りなどによるソルベンシー・マージン総額を減少すべきものや、信用リスクのランク付け誤りなどによるリスクを増加すべきもの等が認められたので、大半の保険会社に改善を求めた。
 
<主な出来事>(10月)
     
3日(火) 金融審議会第二部会開催(第20回)
5日(木) 「公認会計士第2次試験合格者」発表
6日(金) 金融商品の販売法等に関する法律施行令案の公表(パブリック・コメント)
企業会計審議会第二部会開催(第10回)
9日(月) 千代田生命保険相互会社の会社更生手続開始の申立てについて(長官談話及び検査結果)
10日(火) 金融税制に関する研究会開催(第1回)
13日(金) 「生命保険会社・損害保険会社による第三分野への相互参入について」発表
企業会計審議会第一部会開催(第2回)
16日(月) 証券取引法施行令及び金融先物取引法施行令の一部を改正する政令案に係る概要の公表(パブリック・コメント)
17日(火) 「証券検査マニュアルWGの検討状況」発表
財務局理財部長会議開催
18日(水) 「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律」の施行に伴う政令案の公表(パブリック・コメント)
20日(金) 金融審議会金融の基本問題に関するスタディグループ開催
協栄生命保険株式会社の会社更生手続開始の申立てについて(長官談話及び検査結果)
24日(火) 「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律」の施行に伴う総理府令案の公表(パブリック・コメント)
26日(木) 私設取引システム(PTS)開設等に係る指針の公表(パブリック・コメント)
証券取引所の設立等に関する総理府令等の一部を改正する総理府令案に係る概要の公表(パブリック・コメント)
27日(金) 企業会計審議会企画調整部会開催(第3回)
企業会計審議会固定資産部会開催(第2回)
31日(火) 臨時財務局検査監理官等会議開催