11年7月29日

金融監督庁長官談話

クレディ・スイス・グループ等について
 

.クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ(以下、「CSFP」という。)銀行東京支店、クレディ・スイス信託銀行、クレディ・スイス・ファースト・ボストン銀行東京支店、クレディ・スイス・ファースト・ボストン・セキュリティーズ・ジャパン・リミテッド(証券)、クレディ・スイス投信(以下、「CSグループ在日拠点」という。)及び国際投信投資顧問(以下、「国際投信」という。)に対しては、本年1月以降、当庁により立入検査を実施し、去る7月13日に検査結果の通知を行った。
 
 
.当該検査結果によると、
 
(1)  CSFP銀行東京支店においては、組織的に検査を妨害、忌避する行為や、顧客の財務内容の適切な開示の観点から著しく不適切な商品を大量に反復継続して組成・提供し、我が国金融市場及び金融機関の健全性を著しく損なわせることにより公益を害する行為と認められる業務運営が認められたのみならず、銀行の他業禁止違反等、銀行法や証券取引法に抵触する行為も認められた。
 
(2)  クレディ・スイス信託銀行においては、顧客の財務内容の適切な開示の観点から著しく不適切な取引を行うため信託勘定を悪用し、これらの不適切な取引に大量に反復継続して関与する等、我が国金融市場及び金融機関の健全性を著しく損なわせることにより公益を害する行為と認められる業務運営や一部の部門において検査を妨害、忌避する行為が認められたのみならず、法令遵守体制等の整備が極めて不十分であることも認められた。
 
(3)  また、その他のCSグループ在日拠点や国際投信においても、法令違反行為、不十分な法令遵守体制等が認められた。

このように、CSグループ在日拠点及び国際投信において、様々な違法行為、不十分な法令遵守体制等が認められたことは、極めて遺憾である。
 
 

.この検査結果を踏まえ、行政手続法等の規定に基づく聴聞又は弁明の機会の付与の手続を経た上で、本日、金融再生委員会においてCSFP銀行東京支店に対する免許取消の決定がなされ、当庁において、クレディ・スイス信託銀行に対する一定の新規業務の停止処分及び法令遵守体制の強化等を内容とする業務改善命令を決定するとともに、その他のCSグループ在日拠点及び国際投信に対しても、それぞれの違法行為等の態様に応じた別紙の内容の行政処分を決定した。
 CSグループ在日拠点及び国際投信においては、本行政処分を厳粛に受け止め、速やかに対応することが求められる。
 
 
.CSFP銀行東京支店等が組成・提供した債権流動化スキーム等の商品は、財務内容の適切な開示の観点から著しく不適切な取引である。
 このような取引は、2001年3月期からの金融商品の時価会計の導入後は行われにくくなると考えられるが、それまでの間における会計上の取扱の明確化の観点から、日本公認会計士協会にそれらの取扱について検討を要請したところである。
 
 
.また、顧客である金融機関がこうしたスキームを活用して自己資本比率の意図的な嵩上げを図ることは、当庁の事務ガイドラインにも抵触することになる。
 当庁は、CSFP銀行東京支店等が行った不適切な取引の顧客のうち金融機関について、取引実態を把握し、法令に照らして適切に対処していくこととしている。
 
 
.当庁としては、今回の行政処分及び上記の措置を通じて同様の事案の再発防止に努めるとともに、今後とも、検査、モニタリング等の監督権限の適切な行使を通じ、金融機関の業務運営の健全性の確保に万全を期してまいりたい。
 

(別 紙)

CSグループ各拠点及び国際投信の処分事由及び処分内容の概要
 

.クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ銀行東京支店
 
.組織的に、銀行法第63条第3号の検査妨害、忌避罪に該当すると思料される行為を行ったこと
 
.顧客の財務内容の適切な開示の観点から著しく不適切な商品を大量に反復継続して組成・提供し、我が国金融市場及び金融機関の健全性を著しく損ない、銀行法第27条に規定する公益を害する行為に該当すると認められる業務運営を行ったこと
 
.株価連動債等について、銀行である当支店自らが顧客への提案書の作成、説明等の勧誘活動を行う等、銀行法第12条、証券取引法第65条等に抵触する行為を行ったこと

から、下記の処分を命じた。

(1)  平成11年11月30日から効力を発する免許取消
〔銀行法第27条〕
 
(2)  平成11年8月5日から平成11年11月29日までの間、既存取引の解消及びこれに付随する業務を除くすべての業務の停止命令
〔銀行法第27条〕

 

.クレディ・スイス信託銀行
 
.財務内容の適切な開示の観点から著しく不適切な取引を行うため信託勘定を悪用し、これらの不適切な取引に大量に反復継続して関与する等、我が国金融市場及び金融機関の健全性を損ない、銀行法第27条等に規定する公益を害する行為に該当すると認められる業務運営を行ったこと
 
.一部の部門において、銀行法第63条第3号の検査妨害、忌避罪に該当すると思料される行為を行ったこと
 
.信託の受託者としての忠実義務に違反すると認められる等、法令遵守体制、内部管理体制の整備が極めて不十分であると認められたこと

から、下記の処分を命じた。

(1)  以下の項目について、平成11年8月5日からの新規引受業務の停止命令
 
 (a)金銭債権信託(リース・クレジット債権信託等を除く。)、(b)金銭信託以外の金銭の信託、(c)有価証券の信託、(d)特定金銭信託(年金資金に係るものを除く。)
 
〔金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(以下、兼営法)第8条〕
 
(2)  以下の項目について、平成11年8月5日からの業務の停止命令
 
(a)  個人顧客に係る受託業務(信託期間満了日前における顧客の財産の運用に係る業務を除く。)
 
(b)  スイスの親銀行のために行う顧客の仲介・取り次ぎ業務及び顧客開拓に係る業務

〔銀行法第27条、兼営法第8条〕

(注 )平成12年8月5日以降、当行から上記(1)及び(2)に係る業務の再開について申し出のある場合には、当行の法令遵守体制、人的構成を含む経営体制等の改善状況、及び業務停止命令の対象となった業務についての当行より提出される改善計画の妥当性等を踏まえ、上記(1)及び(2)の命令を見直すことがある。

 

(3)  (a)法令遵守体制等の強化、(b)人的構成を含む経営体制の抜本的改善、(c)内部管理体制強化策の実施状況に関する第三者によるフォローアップの実施と評価等を内容とする業務改善命令及び(a)〜(c)に関する平成11年9月28日を期限とする業務改善計画の提出命令
 
〔銀行法第26条第1項、兼営法第4条で準用する信託業法第18条〕

 

.クレディ・スイス・ファースト・ボストン銀行東京支店
 
.実質的に当支店全体を掌握し管理する責任者が不在となっている等、支店として最低限必要な管理体制や機能の整備が図られていないこと
 
.内部管理体制及び法令遵守体制が不十分と認められること

から、下記の処分を命じた。

(1)  支店の一体的な内部管理体制の確立、法令遵守についての責任体制の充実・強化等を内容とする業務改善命令及びこれらに関する平成11年9月28日を期限とする業務改善計画の提出命令
〔銀行法第26条第1項〕
 
(2)  平成11年8月5日から平成12年8月4日までの間、プライベートバンキング業務(スイスの親銀行のために行う顧客の仲介・取り次ぎ業務及び顧客開拓に係る業務)、デリバティブ又は債権流動化を活用した金融商品の組成・販売業務(リスクヘッジのために行う取引を除く。)に係る新規業務の停止命令
〔銀行法第26条第1項〕

 

.クレディ・スイス・ファースト・ボストン・セキュリティーズ・ジャパン・リミテッド(証券)
 外国証券会社の名義貸しの禁止行為に該当すると認められる行為等を行ったことから、下記の処分を命じた。
 
(1)  平成11年8月5日から平成11年9月4日までの間、名義貸しに関与していた部署(東京支店資本市場部及び金融開発営業部)が行っていた全ての業務(勧誘を伴わない保護預り有価証券の売付けの受託等を除く)の停止命令
〔外国証券業者に関する法律(以下、外証法)第24条第1項〕
 
(2)  平成11年7月29日から平成12年1月28日までの間、検査実施日におけるクレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ銀行東京支店職員で当該検査の指摘事項に関与していた者が当支店においてデリバティブないし債権流動化に関する業務に関与すること、及び検査実施日におけるクレディ・スイス信託銀行職員が当支店においてスイスの親銀行のために行う顧客の仲介・取り次ぎ業務及び顧客開拓に係る業務に関与することの禁止命令
〔外証法第24条第1項〕

 

.クレディ・スイス投信
 
.投資一任契約に基づく投資に係る証券取引行為等の内容を記録した書面を作成していなかったこと
 
.投資一任契約を締結しようとするとき等に顧客に交付すべき書面等を交付していなかったこと
 
.投資顧問業者としての忠実義務に違反すると認められる等、内部管理体制及び法令遵守体制が不十分と認められること

から、下記の処分を命じた。

(1)  平成11年8月5日から平成11年9月4日までの間、新たな投資顧問契約及び投資一任契約の締結の禁止命令
〔投資顧問業法第38条(管轄財務局長権限)及び第39条〕
 
(2)  責任の所在の明確化、再発防止策の策定、内部管理体制の充実・強化、法令遵守の徹底等を内容とする業務改善命令
〔投資顧問業法第37条(管轄財務局長権限)〕

 

.国際投信投資顧問
 
.投資一任契約に基づく投資の対象として認められていない商品を取り扱っていたこと
 
.投資顧問契約を締結した顧客のために証券取引行為を行ったこと
 
.投資一任契約に基づく投資に係る証券取引行為等の内容を記録した書面を作成していなかったこと
 
.投資一任契約を締結した顧客に発生した損失を繰り延べる仕組債を利用したスキームを紹介する不適切な行為が認められる等、内部管理体制及び法令遵守体制が不十分と認められること

から、下記の処分を命じた。

(1)  平成11年8月5日から平成11年11月4日までの間、新たな投資顧問契約及び投資一任契約の締結の禁止命令
〔投資顧問業法第38条(管轄財務局長権限)及び第39条〕
 
(2)  責任の所在の明確化、再発防止策の策定、内部管理体制の充実・強化、法令遵守の徹底を内容とする業務改善命令
〔投資顧問業法第37条(管轄財務局長権限)〕
 

金融再生委員会委員長談話

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