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3−3  損害保険会社の経理処理
 損害保険会社の適正な経理処理に当たって、留意すべき事項は次のとおり。
 
−3−1 収益等の計上(国税庁了解事項)

 損害保険会社の収益等の計上については、下記のとおり取り扱うこととして国税庁の了解を得ているので留意すること。

(1)  元受保険料の計上
 決算締切日までに入金報告書及び申込書その他保険料計上に必要な書類が到着している契約については、すべて当該事業年度の収入に計上すること。
 ただし、上記書類が決算締切日までに到着したもので、内容不備のため保険料率の審査決定、保険責任の有無の確認ができなかったものについてはこの限りでないこと。
 なお、決算処理に当たっては、上記書類の遅延ないし内容の不備の解消に特に留意し、計上保険料の翌年度へのずれ込み、又は計上洩れを極力防止するよう努めること。
 
(2)  回払保険料の計上
 船舶保険等にかかる回払保険料の計上については、初回保険料は(1)に準じて取扱うものとし、次回以後保険料については、決算締切日までに当該契約の約款に定める保険料支払期日応当月が到来しているものは当該事業年度の収入として計上すること。
 
(3)  受再保険料の計上
 受再保険料の計上については、本事務ガイドライン発出前に各社が定めた計上基準に基づき統一的かつ継続的に処理する場合は、当該基準に定めるところにより計上して差し支えない。
 なお、本事務ガイドライン発出後に設立した会社にあっては、当該会社の計上基準が従前の例に照らして合理的なものとなっているかどうかについて留意することとする。
 
(4)  求償権及び残存物の経理
 保険金の支払いにより契約者から取得した求償権又は残存物については、当該求償権の行使(裁判の判決又は当事者間の合意がないものは除く。)又は残存物の売却によって回収が見込まれる金額を当該事業年度の支払備金から控除して経理すること。
 
−3−2 価格変動準備金の取崩し
 
(1)  価格変動準備金の取崩しは、次に掲げる額の合計額を取り崩すものとなっているか。
 この場合において、当該合計額が、法第115条第2項に規定する株式等の売買等による損失の額(以下「株式売買等損失額」という。)から同項に規定する株式等の売買等による利益の額(以下「株式売買等利益額」という。)を控除した額(負数のときは零とする。)を超えるときは、当該超える額については、法第115条第2項情報ただし書に基づき金融監督庁長官の認可を受けて取り崩すものとなっているか。
 ただし、価格変動準備金の取崩額は、価格変動準備金の前期末残高を超えないものとなっていること。
 
マル1  株式売買等損失額から株式売買等利益額を控除した額と、契約者(社員)配当準備金等に繰り入れる額のうち下記に定める額(損害保険株式会社にあっては(イ)に定める額、損害保険相互会社にあっては(ロ)に定める額)との合計額から法人税等相当額を控除した額。ただし、負数のときは零とする。
 
(イ)  規則第63条において準用する規則第26条第1項に規定する積立勘定を設けている場合における、当該勘定内の価格変動準備金対象資産について、当該勘定において把握される法第115条第2項に規定する株式等の売買等による利益の額から同項に規定する株式等の売買等による損失の額を控除した額
 
(ロ)  社員配当準備金繰入額を限度とする額
 
マル2  価格変動準備金の前期末残高から上記マル1の額を控除した額が、規則第66条後段において規定する限度額を超えるときの当該超える額
 
マル3  上記のほか、やむを得ない相当の理由がある額
 
(2)  価格変動準備金の株式売却損失額及び株式売却利益額の計算には、次の額を含めるものとする
 
マル1  価格変動準備金対象資産に係る証券取引法第2条第13項に規定する有価証券先物取引、及び規則第47条第9号(又は規則第139条)から第11号までに掲げる取引及び同第13号から第15号までに掲げる取引その他これらに準ずる取引により生じた売却(損)益及び為替(損)益の額
 
マル2  洗い替え低価法を採用している場合において、期首に計算する価格変動準備金対象資産に係る評価損戻益の額
 
(3)  法第115条第1項ただし書に基づく認可の申請を受けた場合は、以下のいずれかに該当するかどうかに留意する。
 
マル1  上記(1)のマル1からマル3までの合計額が価格変動準備金の前期末残高を超えるときの当該超える額
 
マル2  規則第65条第3号に掲げる資産のうち、翌期から評価方法を原価法に変更し対象資産から除くこととする資産に係る積立相当額
 
マル3  地震保険について、その責任準備金等に対応する資産を他の資産と区分して経理している場合における当該責任準備金等に対応する資産に係る積立相当額(この場合において、当該責任準備金等に対応する資産に係る株式売買等損失額及び株式売買等利益額は、上記(1)の取崩額の計算から除くものとし、また、当該責任準備金等に対応する資産は、規則第66条後段において規定する限度額の計算から除くものとする。)
 
マル4  上記のほか、やむを得ない相当の理由がある額
 
−3−3 地震保険の危険準備金の取扱い

 広告・宣伝の費用のための危険準備金の取崩しは、適切に行われているか。
 

−3−4 再保険契約の責任準備金の計上

 規則第71条第1項第4号に規定する「保険会社の経営の健全性を損なうおそれがない者」とは、たとえば、次に該当する外国保険業者をいう。

(1)  保険契約を再保険に付した保険会社(以下「出再会社」という。)の総資産に占める外国保険業者が当該出再会社から引き受けた一の再保険契約に係る一の保険事故により当該外国保険業者が支払う再保険金の限度額の割合が1%未満である当該外国保険業者(当該外国保険業者が再保険金の支払を停止するおそれがあること又は再保険金の支払を停止したことが再保険契約の仲介者等の情報により明らかな場合を除く。)
 
(2)  出再会社が再保険に付した部分に相当する責任準備金を積み立てなかったことがある場合の当該再保険を引き受けた外国保険業者(過去5年以内において当該外国保険業者が、出再会社との間で再保険金の支払を停止するような状態に陥ったことがある者である場合には除く。)
 
−3−5 外国受再特約保険に係る支払備金

 外国受再特約保険に係る支払備金については、当該出再国等の会計制度との相違その他の事情により、出再保険者等から事故報告が得られない場合にあっても、最近の実績値を勘案し合理的な方法により算出した金額を、普通支払備金として積み立てるものとなっているか。
 

−3−6 退職給与引当金
 
(1)  退職給与引当金は、期末における自己都合退職の場合の退職給与規定による要支給額(年金を含む。)に対する退職給与引当金残高の割合が前期末水準を下回らないものとなっているか。
 ただし、止むを得ないと認められる特別の事情がある場合には、この限りではない。
 
(2)  退職給与引当金制度から適格年金制度等への移行に伴い、要支給額の全部又は一部が年金に移る場合において、退職給与引当金勘定の金額が要支給額の100%を超えることとなるときは、その超過額は税法の累積限度超過額の取崩し割合により取り崩すものとなっているか。
 
−3−7 保険計理人

 規則第77条第1号から第3号までに規定する「保険数理に関する事項」については、次のとおり取り扱うものとする。

(1)  規則第76条第1号に掲げる保険契約については、規則第77条第2号及び第3号に掲げる事項に係る保険数理に関する事項とする。この場合、同条第2号に係る保険数理に関する事項とは、保険期間の満了後満期返戻金を支払う旨を約した保険契約に係る払戻積立金の算出をいうものとする。
 
(2)  規則第76条第2号に掲げる保険契約については、規則第77条第1号及び第2号に掲げる事項に係る保険数理に関する事項とする。この場合、同条第2号に係る保険数理に関する事項とは、規則第70条第1項第1号イに規定する金額の算出をいうものとする。
 
−3−8 税効果会計導入に伴う有税の責任準備金の取扱い

 税効果会計を適用する会社においては、その適用の最初の事業年度における責任準備金の取扱いについて以下の点に留意すること。
 また、税効果会計を適用しない会社においても以下の(1)及び(2)の点に留意すること。
 
(1)  自動車損害賠償責任保険の有税の各準備金の事業年度開始の時の金額については、前事業年度末における当該準備金の金額に、前事業年度末における当該準備金の金額を基礎に計算した法人税等相当額を調整項目として加算した金額となっているか。
 
(2)  地震保険の危険準備金の事業年度開始の時の金額については、前事業年度末における危険準備金の金額に、前事業年度末における有税の危険準備金の金額を基礎に計算した法人税等相当額を調整項目として加算した金額となっているか。
 ただし、保険会社が地震保険に関する法律第3条第1項(政府の再保険)に規定する再保険契約を政府との間で締結している場合には、当該会社についてはこの限りではない。
 
(3)  異常危険準備金及び契約者配当準備金の事業年度開始の時の金額は前事業年度末における当該準備金の金額に、前事業年度末における有税の当該準備金の金額を基礎に計算した法人税等相当額を調整項目として加算した金額となっているか。
 ただし、調整項目として加算する金額の合計は、次のマル1の金額からマル2及びマル3の金額を控除した金額(負数のときは零とする。)を限度とする。
 
マル1  税効果会計を適用する最初の事業年度において計上する過年度一時差異に基づく繰延税金資産の金額
 
マル2  自動車損害賠償責任保険における上記(1)の調整項目として加算した法人税等相当額
 
マル3  地震保険における上記(2)の調整項目として加算した法人税等相当額
 

−3−9 税効果会計導入に伴う責任準備金算出方法書等の取扱い

 税効果会計を適用する会社においては、その適用の最初の事業年度末までに責任準備金算出方法書等に以下のような措置を実施しているか。
 また、税効果会計を適用しない会社においても以下の(1)及び(2)の措置を実施しているか。
 
(1)  自動車損害賠償責任保険の責任準備金算出方法書において、各準備金の積立て及び取崩しに係る法人税等相当額控除の規定を削除しているか。また、税率変更時の積立て及び取崩しの規定を新たに設けているか。
 なお、上記措置を実施している保険会社は、自動車損害賠償保障法第28条の3第1項に規定する準備金の積立て等に関する省令第2条第2号において、税効果会計を適用しているものとみなす。
 
(2)  地震保険の責任準備金算出方法書において、税率変更時の積立て及び取崩しの規定を新たに設けているか。
 ただし、保険会社が地震保険に関する法律第3条第1項(政府の再保険)に規定する再保険契約を政府との間で締結している場合には、当該保険会社についてはこの限りではない。
 
(3)  契約者配当準備金を積み立てる種目の責任準備金算出方法書及び事業方法書の別紙積立勘定運用細則において、積立て及び取崩しに係る法人税等相当額控除の規定を削除しているか。
 
(4)  各種目の責任準備金算出方法書において異常危険準備金の繰入率及び上限割合を見直しているか。なお、見直し後の当該繰入率及び上限割合は、各社の見直し前の繰入率及び上限割合については、次の算式により得られる率を原則とする。
 
マル1  見直し後の繰入率
 =見直し前の繰入率(除く有税部分)+見直し前の繰入率(有税部分)
   ÷(100%−実効税率)
 (注)小数点以下二位を切上げ、小数点以下第一位までの比率(百分率)
   とする。
 
マル2  見直し後の上限割合
 =見直し前の上限割合÷(100%−実効税率)
 (注)一の位を切上げ、十の倍数となる比率(百分率)とする。
 

3−4  損害保険会社の保証証券業務と債務の保証
  
 損害保険会社(法第2条第4項に規定する損害保険会社及び同条第9項に規定する外国損害保険会社等をいう。)の保証証券業務と債務の保証の業務に当たって、留意すべき事項は次のとおり。
 
−4−1 保証証券業務と債務の保証の業務との関係

 保険数理に基づき、対価を決定し、準備金を積み立て、再保険による危険の分散を行うなど保険固有の方法を用いて行う保証証券業務と、法第98条第1項第2号に規定する債務の保証とは、運営に当たって明確に区別されているか。
 保証証券業務として行われる保証は、たとえば、デリバティブ取引に係る保証
 債務の保証として行われる保証は、たとえば、融資、社債等、資産の流動化に係る保証
 

−4−2 債務の保証のためのリスク管理

 損害保険会社の健全性維持の観点から、日常の信用リスクの管理のための体制が十分整備されているか。
 信用リスクの管理について、マル1リスク管理の基本方針が定められているか、マル2経営陣は当該基本方針の策定に積極的に関与しているか、マル3取引実施部門と後方事務部門の相互牽制機能は発揮されているか、マル4測定したリスクは、経営陣に適切に報告されているか、マル5適切なリスク限度の設定は行われているか、マル6当該保険会社が現に有する保険金支払に必要な信用力の維持に配慮されているか、等の点に留意する。

 

3−5  損害保険会社のCPの取扱い
  
 損害保険会社のCPの発行について、留意すべき点は次のとおり。
 当該保険会社が発行したコマーシャルペーパーに係る支払利息を法人税法施行令第22条第3項に規定する特定利子の対象としている場合は、当該コマーシャルペーパーの発行代り金が株式に運用されないよう、当該損害保険会社が厳格な管理を行っているか。

 

3−6  自動車保険関係
  
 自動車保険については、保険の安定供給、当該保険の有する被害者救済や賠償資力の確保・向上といった機能等にかんがみ、損害保険会社の業務の状況によっては、法第131条又は法第132条に基づく事業方法書等に定めた事項の変更命令等を行うことが必要となる。
 以下において、本事務ガイドライン1−3及び3−1−2に加え、自動車保険に係る業務を監督するための、着眼点を整理した。
 
(1)  対人賠償責任保険および自社の継続契約にあって、真に危険が特に大きいと認められる場合を除き、保険契約の締結(含む、継続契約)に応じるような対応及び運営が行われているか。
 
(2)  地域、年齢、性別等を基準に特定の保険契約のみ締結するといった業務を行わないような対応及び運営が行われているか。
 
(3)  保険契約者等に係る個人情報の漏洩やプライバシーの侵害を発生させないよう、社内体制の整備や社員あるいは代理店等に対する指導などの措置が講じられているか。
 
(4)  保険の目的が存在しない契約(いわゆる架空契約)等法令や内部ルールに反する保険契約について、その発生の防止等の措置が講じられているか。

 

3−7  船主相互責任保険組合関係
−7−1 再保険契約の責任準備金

 船主相互保険組合法施行規則第15条第4号に規定する「組合の経営の健全性を損なうおそれがない者」とは、たとえば、次に該当する外国保険業者をいう。

(1)  船主責任相互保険組合と同種類の外国に所在する組合(以下「同種組合」という。)間で一保険事故につき支払う保険金のうち、一定額を超える保険金を一定の割合で分担するために締結された協定(以下「国際PIグループのプール協定」という。)に加盟している同種組合
 
(2)  保険契約を再保険に付した出再組合(以下「出再組合」という。)の総資産に占める外国保険業者が当該出再組合から引き受けた一の再保険契約に係る一の保険事故により当該外国保険業者が支払う再保険金の限度額の割合が3%未満である当該外国保険業者(当該外国保険業者が再保険金の支払を停止するおそれがあること又は再保険金の支払を停止したことが再保険契約の仲介者等の情報により明らかな場合を除く。)
 
(3)  出再組合が再保険に付した部分に相当する責任準備金を積み立てなかったことがある場合の当該再保険を引き受けた外国保険業者(過去5年以内において当該外国保険業者が、出再組合との間で再保険金の支払を停止するような状態に陥ったことがある者である場合には除く。)
 
−7−2 支払備金の積み立て
 
(1)  外国受再特約保険に係る支払備金
 外国受再特約保険に係る支払備金については、当該出再国等の会計制度との相違その他の事情により、出再保険者等から事故報告が得られない場合にあっても、最近の実績値を勘案し合理的な方法により算出した金額を、普通支払備金として積み立てるものとなっているか。
 
(2)  既発生未報告損害支払備金
 既発生未報告損害支払備金については、国際PIグループのプール協定加盟同種組合から事故報告が速やかに得られない場合のプール再保険の保険金等に係る金額について、合理的な方法により算出した金額を積み立てるものとなっているか。
 

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