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6.自己資本規制関係
 

6−1  定義
(1)  証券会社の自己資本規制に関する命令(平成11年総理府令・大蔵省令第28号。6において「自己資本命令」という。)第1条第1号に規定する有価証券等は、原則として、約定ベースにより把握することを求めるものとする。ただし、システム面の対応等やむを得ない理由により、約定ベースでの把握が困難と認められる証券会社(外国証券会社を含む。以下6において同じ。)については、受渡しベースとすることを認めるものとする。この場合において、自己資本命令第13条第1項に規定する自己資本規制比率に関する届出書の提出にあたっては、自己資本命令別紙様式第1号(第2面)中欄外に受渡しベースで把握している有価証券等を付記することを求めるものとする。
 
(2)  (1)の規定により、受渡しベースでの把握を認めた証券会社に対しては、できる限り早期に約定ベースでの把握により自己資本命令第13条第1項に規定する自己資本規制比率に関する届出書を作成、提出することを求めて行くこととする。
 
(3)  自己資本規制比率が 140%以下となった証券会社が、自己資本命令第13条第4項の規定により、自己資本規制比率に関する届出書を提出するにあたっては、自己資本命令第1条第1号に規定する有価証券等は、約定ベースにより把握することを求めるものとする。
 
(4)  日本証券業協会の会員への通知文書「証券会社のトレーディング業務に係る特定取引勘定の設置認可申請手続き等について」(平成9年2月27日付日証協(会)9第98号)により示された「約定基準時価会計における時価算定基準」に基づき算出した有価証券等の時価額は、自己資本命令第1条第1項第13号ホに規定する合理的な方法により算出した価額と判断して差し支えない。
 
(5)  自己資本命令別表第1及び第2に掲げる有価証券等の空売り又は借り入れた有価証券等の売付けに係る取引については、当該有価証券等の区分による。この場合の市場リスク相当額の計算期間は、売付け又は借入れに係る同一の有価証券等の買付けまでの期間とする。

 

6−2  自己資本
(1)  自己資本命令第2条第1項第5号ハに掲げる一般貸倒引当金とは、貸倒引当金のうち法人税法(昭和40年法律第34号)第52条第1項第2号に該当するものをいう。
(2)  劣後特約付借入金、劣後特約付社債又は匿名組合契約出資金を補完的項目に算入した証券会社に対しては、自己資本命令別紙様式第1号(第1面)中欄外に劣後特約付借入金、劣後特約付社債又は匿名組合契約出資金の貸借対照表上の計上科目を付記することを求めるものとする。
 
(3)  外貨建ての劣後ローンを補完的項目に算入している証券会社については、計算を行う日の外国為替相場の仲値を用い、円貨に換算することに留意する。

 

6−3  控除すべき固定資産等
(1)  自己資本命令第3条第1項第5号の規定は、短期貸付金の額のうち劣後特約付借入金の額、劣後特約付社債の保有額及び匿名組合契約に基づく出資金の額の合計額に相当する額の自己資本の額からの控除を課したものであり、当該短期貸付金の額から当該合計額を控除した結果の残額について取引先リスク相当額を算出しなければならないことに留意する。
 
(2)  自己資本命令第3条第1項第7号に掲げる前払金には、仕入にかかる消費税の前払金であって、その他の預り金に計上した売上にかかる消費税の額までの額を含めないことに留意する。
 
(3)  自己資本命令第3条第1項第12号の規定は、自己資本規制比率を向上させる目的で証券会社が出資又は劣後特約付借入金等を受け入れている場合に、事前又は事後にかかわらず、当該証券会社が、直接出資者若しくは債権者等に対して、又は第三者を経由して、コマーシャル・ペーパー又は社債を購入することにより資金を還流させている場合をいうことに留意する。
 
(4)  証券会社が、自己資本命令第3条第2項の規定に基づき同条第1項第1号に規定する固定資産から控除した場合には、時価額及びその具体的な算出方法並びにこれと比較した借入金の額及び帳簿価額を自己資本命令第13条第1項に規定する自己資本規制比率に関する届出書に添付して提出することを求めるものとする。

 

6−4  リスク相当額
(1)  自己資本命令第4条第4項に規定する業務の態様に応じた合理的な方法とは、次に掲げる業容に応じ次に定める方法であることに留意する。
 
マル1  特定取引勘定設置証券会社については、毎営業日、重要性が著しく乏しいものを除き、すべての有価証券等の時価額(月末以外は必ずしも客観性の検証を行った時価である必要はないこととする。)及び別表第13に掲げるすべての取引の契約額及びすべての資産の額を把握し、市場リスク相当額及び取引先リスク相当額を把握する方法とする。ただし、デリバティブ取引(有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引を除く。)に係る市場リスク相当額及び取引先リスク相当額については、自己資本命令に規定する算出方法に準じた概算ベースによる把握も合理的な方法とみなすことができるものとし、未収入金及び未収収益について、金融収益に係るもの及び経過的に約定日に計上されるもの(受渡日に入金されなかったものを除く。)を除くことも合理的な方法に含まれると解するものとする。
 
マル2  上記以外の証券会社のうち、市場リスク相当額の算出方法に分解法を選択する者については、毎営業日、重要性が著しく乏しいものを除き、すべての有価証券等について約定ベースによる時価額(月末以外は必ずしも客観性の検証を行った公正な時価である必要はないこととする。)及び別表第13に掲げる取引のうち主要なものの契約額及び資産のうち主要なものの額(未収収益のうち金融収益にかかるものを除く。)を把握し、市場リスク相当額及び取引先リスク相当額を把握する方法とする。ただし、デリバティブ取引(有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引を除く。)に係る市場リスク相当額及び取引先リスク相当額については、自己資本命令に規定する算出方法に準じた概算ベースによる把握も合理的な方法とみなすことができる。ただし、分解法の使用に伴う広範な相殺規定に対応する相応のリスク管理及び保有有価証券の約定ベースでの時価額の把握が、適切に行われているかどうかを、適宜、確認するものとする。なお、同趣旨から、当該証券会社に対しては、特定取引勘定の設置を促していくものとする。
 
マル3  上記以外の証券会社については、市場リスク相当額については、株式、自己資本命令第1条第1項第15号に規定するその他の債券及び自己資本命令第5条第5項第1号に規定する指定国以外の国で発行された有価証券等、相対的にリスクが高い、又は、流動性に乏しい有価証券については、固定化されていない自己資本の額に比しポジションが恒常的に小さい等、重要性が乏しいものでない限り、毎営業日、市場リスク相当額を把握する方法とする。取引先リスク相当額については、別表第13に掲げる取引のうち主要なものの契約額及び資産のうち主要なものの額(未収収益のうち金融収益に係るものを除く。)について、毎営業日、把握する方法とする。
 
(2)  (1)マル3の規定にかかわらず、特定取引勘定設置証券会社以外の証券会社においても、固定化されていない自己資本の額に比し市場リスク相当額が10%程度を超えるようなポジションを保有する等、より適正なポジションの把握が必要と認められる者に対しては、約定ベースによる有価証券等の時価額の把握を求めるものとする。ただし、上記の状況を恒常的に続けようとする証券会社に対しては、当分の間は、受渡しベースでの把握を認めるものとするが、原則として、特定取引勘定の設置を求めていくものとする。
 
(3)  自己資本規制比率が 140%以下となった証券会社が自己資本命令第13条第5項の規定に基づき市場リスク相当額を算出する場合には、すべての有価証券について約定ベースの時価額の把握を求めるものとする。
 
(4)  自己資本命令第4条第4項に規定する「把握する」とは、リスク管理について責任を負っている取締役が了知している状態をいう。
 
(5)  保有する有価証券のうち貸し付けたものについては、市場リスク相当額に加えて取引先リスク相当額を算出することに留意する。

 

6−5  市場リスク相当額
(1)  自己資本命令第6条第1項第3号の市場リスク相当額の計算に当たっては、外国通貨をもって表示される資産(貸借対照表に記載されない債権を含む。)及び外国通貨をもって表示される負債(貸借対照表に記載されない債務を含む。)に、自己資本命令第3条第1項各号の規定により自己資本の額から控除した額を含めることを求めるものではない。
 
(2)  自己資本命令第5条第7項に規定する「合理的な理由」とは、次に掲げるものをいい、証券会社がリスク・カテゴリーごと又は業務の種類ごとに市場リスク相当額の算出方法を選択している場合には、当該証券会社が適切に市場リスク相当額を算出しているかどうかを、ヒアリング等により、適宜、確認するものとし、自己資本命令第13条第1項に規定する自己資本規制比率に関する届出書の提出にあたっては適正な記載を求めるものとする。
 
マル1  リスク・カテゴリーごとに市場リスク相当額の算出方法を選択する場合
 
 リスク・カテゴリーごとに市場リスク相当額を算出することにより、より適切にリスクが把握される場合であって、市場リスク全体を統合的に把握する部署が他の部署から独立して存在している場合
 
 個別法と他の算出方法が混在する場合には、市場リスク相当額の算出方法を全体として分解法又は内部管理モデル方式に移行させる方針が明確となっている場合
 
マル2 業務の種類ごとに市場リスク相当額の算出方法を選択する場合で次に掲げる場合
 
 業務の種類ごとに市場リスク相当額を算出することにより、より適切にリスクが把握される場合であって、市場リスク全体を統合的に把握する部署によりリスク・カテゴリーごとの市場リスク相当額が把握される体制となっている場合
 
 個別法と他の算出方法が混在する場合には、市場リスク相当額の算出方法を全体として分解法又は内部管理モデル方式に移行させる方針が明確となっている場合であって、個別法を用いている業務に係る有価証券等と他の業務に係る有価証券等との相殺を行わないこととしている場合
 
(3)  自己資本命令別表第1有価証券等の区分の欄のうち金融先物取引には、通貨先物取引を含むことに留意する。
 
(4)  自己資本命令別表第2有価証券等の区分欄のうち著しく流動性の低い債券その他の有価証券等の区分欄に該当する有価証券その他の資産の市場リスク相当額の自己資本命令別紙様式第1号への記載については、「4 リスク相当額」の「(1)−a市場リスク相当額」の「合計(D)」欄の上欄又は「(1)−b市場リスク相当額」の「小計」欄の上欄に必要な欄を設け、適宜記載するものとする。

 


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