保険業法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の
一部を改正する法律の概要

 

○保険相互会社について自己資本の増強、再編等を図るため、株式会社化を容易にするほか、○保険相互会社への更生手続の適用を可能とし、債務超過に陥る前の早期の手続開始、司法手続による権利調整、保険保障の継続を行うため、倒産法制を整備するとともに、○生命保険契約者保護機構の財源対策として業界の追加負担及び財政上の措置を講ずること等により、その機能の維持を図る。[資料1]

保険業法の一部改正関係

1.保険相互会社から株式会社への組織変更制度(株式会社化)関係 [資料2]

 (1

) 端株の一括売却制度の導入


 商法の特例として、端株の一括売却制度を導入し、端株を割り当てられる社員への補償として売却代金の交付を可能とする。
(注 )株式会社化に伴う社員権の補償は、社員の寄与分(会社の純資産形成に対する貢献度)に応じた株式の割当てにより行われるが、商法の規制(最低発行価額5万円以上)との関係で、寄与分が少額の極めて多数の社員に端株が 割り当てられる。


 (2


) 組織変更の際の資本増強


 組織変更と同時の株式発行、直後の新株発行による資本増強を可能とする。

2.保険契約者等の保護のための特別の措置(破綻処理制度)関係 [資料3]

 (1

) 早期の手続開始


 保険会社に対し、業務又は財産の状況に照らして保険業の継続が困難であるとき(注)は、事業継続困難である旨の監督当局への申出を義務づける。
(注 )「将来収支分析」により、将来、責任準備金が不足すると判断されるにも関わらず、追加積立や合理的な経営改善計画の策定・実行ができない場合等。


 (2


) 保険管理人の権限の強化等


 保険管理人に対し、破綻保険会社に対する罰則付の調査権限を付与するとともに、破綻保険会社の経営者又は経営者であった者の破綻の責任を明確にするため民事上・刑事上の所要の措置をとることを義務づける。


 保険管理人に対し、その作成する破綻保険会社の管理に関する計画の中に、業務の整理及び合理化に関する方針の記載を義務づける。


 (3


) 破綻処理の迅速化


 保険契約の移転等に係る仮決議の制度及び特別決議に代わる裁判所の許可(代替許可)制度を導入する。


 (4


) 契約条件の変更


 保険契約の移転や合併の場合のみでなく、保険持株会社等による破綻保険会社の株式取得の場合にも契約条件の変更を可能とする。


 (5


) 保険契約者保護機構の業務の拡大・強化 [資料4]


 業務の拡大


 保険管理人又は保険管理人代理への就任を可能とする。


 救済保険会社が現れない場合に対応するため、承継保険会社(保護機構の出資により設立された子会社)による保険契約の承継を可能とする。


 破綻保険会社の保険金請求権等の買取りを可能とする。


 破綻保険会社等の資産の買取りを可能とするとともに、当分の間の措置として、当該資産の買取り及び回収について協定銀行(整理回収機構)への委託を可能とする。


 資金援助の対象の拡大


 資金援助として、金銭贈与のほか、資産の買取り及び事後的な損失補てん(ロスシェアリング)を行うことを可能とする。


 保険契約の全部移転の場合のみでなく一部移転の場合の資金援助、保険持株会社等による破綻保険会社の株式取得の場合の資金援助を可能とする。


 資金援助の類型の拡大


 資金援助の類型として救済保険会社に対する資金援助のほか、イ)保険契約の承継(破綻保険会社から承継保険会社への契約移転等)、保険契約の再承継(承継保険会社から他の保険会社等への契約移転等)の場合の資金援助、ロ)保険契約の再移転(保護機構から他の保険会社への契約移転)の場合の資金援助を可能とする。


 (6


) 生命保険契約者への優先権の付与


 生命保険契約の保険金請求権等について一般先取特権を付与する。

3.生命保険契約者保護機構の財源対策 [資料5]

 (1

) 政府保証の恒久化


 借入れに係る政府保証を可能とする規定を恒久措置とする(現行;平成13年3月末までの時限措置・恒久化)
(注 )日銀からの借入れについては、現行どおり、平成13年3月末までの措置とする。


 (2


) 政府の補助


 平成15年3月末までに破綻した生命保険会社の破綻処理に係る業務に要した費用を生命保険各社の負担金のみで賄うとしたならば、各社の財務の状況を著しく悪化させることにより保険業に対する信頼性の維持が困難となり、ひいては国民生活又は金融市場に不測の混乱を生じさせるおそれがあると認める場合には、予算で定める金額の範囲内で、保護機構に対し、当該費用の全部又は一部についての国庫補助を可能とする。
(注) 保護機構の借入限度額を5000億円拡大する(現行4600億円 → 9600億円)。
業界負担として1000億円を追加する(現行4600億円 → 5600億円)。


 保護機構に対し、上記の国庫補助を受けた場合において、当該破綻保険会社の破綻処理に係る業務により利益が生じたときは、当該国庫補助を受けた金額までを限り、当該利益について国庫納付することを義務づける。
(注 )資金援助の特例措置(死亡保険金の全額保護等)については、現行どおり、平成13年3月末までの措置とする。

4.

その他の改正


 監督当局が保険会社の準拠すべき責任準備金の計算基礎率の作成等を(社)日本アクチュアリー会に行わせるにあたり、必要な監督を行う等のため指定法人化する。


 金融システム改革の着実な実施を図るため、一定の保険商品について銀行等による販売を可能とする。
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部改正関係

 [資料3]

1.更生手続関係

 (1 ) 保険相互会社への更生手続の適用


 保険相互会社への更生手続の適用を可能とする。

 (2

) 保険会社(相互会社・株式会社に共通)の更生手続の特例


 保険契約者への送達の特例を設けるとともに、保護機構による手続代理を可能とする。


 破産の原因たる事実(債務超過・支払不能)が生ずるおそれがある場合に、監督当局による更生手続開始の申立てを可能とする。


 保険契約者の保護を図るために管財人の保険契約の解除権を制限する。


 更生手続中であっても、一定限度額(原則保険金の90%;補償限度額に相当)までの保険金の支払いを可能とする。


 更生計画において、予定利率の引下げ等における保険契約者間の条件の格差の設定、早期解約控除の設定、更生手続開始後に納付された保険料の保護、相互会社から株式会社への組織変更等を可能とする。


.破産手続関係


 破産手続についても、更生手続の特例(保護機構による手続代理等)と同様の規定を整備する。
そ の 他


.施行期日


 この法律は、公布の日から3か月以内で政令で定める日から施行する。


 ただし、生命保険契約者保護機構の借入れに係る政府保証を恒久措置とする規定及び一定の保険商品の銀行等による販売を可能とする規定については、平成13年4月1日から施行する。


.見直し規定


 政府は、この法律の施行後3年以内に、保険契約者等の保護のための特別の措置等に係る制度等の実施状況、保険会社の経営の健全性の状況等を勘案し、この法律による改正後の保険契約者等の保護のための制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて保険業に対する信頼性の維持を図るために必要な措置を講ずるものとする。


.その他
 その他所要の規定の整備を行う。

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