金融機能安定化緊急措置法等改正法案(ブリッジバンク法案)の概要
今後、行政は市場規律と自己責任を基軸としたルールに基づく行政へと転換 していくが、金融機関が抜本的に不良債権処理を図る過程で、経営困難に陥る 金融機関が出てくることも予想される。こうした場合においても、預金者保護 及び金融システムの安定性確保、更には善意で健全な借り手に対する適切な配 慮に万全を期す必要がある。 1.基本的考え方 (1) 金融機関の破綻に際して、民間の引受金融機関が登場しない場合でも、 金融システムの安定と預金者保護を確保し、迅速に金融の危機管理が行え る体制を整備して万全を期すこととし、金融システムに対する信頼を一刻 も早く回復させる必要がある。 (2) また、民間の引受金融機関が登場しないために善意かつ健全でありなが ら新たな取引銀行を見いだせない借り手の対策に資する体制を整備する必 要がある。 (3) このため、破綻後直ちに、その銀行の業務を公的に管理できる制度を整 える。さらに、民間の引受け手が登場しない場合でも、善意かつ健全な借 り手に融資を維持・継続できる公的な新銀行をブリッジバンクとして設立 できる制度を整える。この場合、あくまでこの制度により破綻処理の円滑 化を可能とし、金融システムの安定や預金者保護を図ることを最終的な目 的とすることが基本であり、この観点から、預金保険機構を活用する。 (4) なお、厳正な審査機能を有するチェック体制を整備する。 2.具体的な内容 以下によりブリッジバンク(つなぎ銀行)制度を創設する。 (1) 金融管理人による破綻した金融機関の業務管理 ○ 金融機関が破綻した場合において、必要があると認めるときは、金融 監督庁長官は、直ちに破綻金融機関の業務及び財産の管理をさせるため、 金融管理人を選任する(平成13年3月31日までの時限措置)。 (注)金融管理人等の適切な人材を確保するための体制を整備する。 ○ 金融管理人の管理下に置かれた金融機関(以下「被管理金融機関」) の代表権、業務執行権、財産管理・処分権は金融管理人に専属する。 また、金融管理人は、破綻に至った経緯、被管理金融機関の業務及び 財産の状況、他の金融機関への業務承継の見込み等を調査し、金融監督 庁長官に報告しなければならない。 (注)このため、金融管理人は、被管理金融機関の取締役等に対し報告 を求め、被管理金融機関の帳簿その他の物件を検査することができ ることとする。 ○ 被管理金融機関は、金融管理人の定めた方針に従い、資産の健全性の 確保に努めつつ、善意かつ健全な債務者に対して、融資を維持・継続す る。 ○ 金融管理人は、被管理金融機関の業務を、できる限り速やかに引受け 手としての民間金融機関に承継するよう努める。民間の引受金融機関に 承継出来ない場合には、公的ブリッジバンクに承継する。 ○ 被管理金融機関の業務の他の金融機関への承継が円滑に行われるよう にするため、株主総会等の特別決議に関する特例、減資に係る債権者保 護手続の特例、根抵当権の移転の円滑化のための特例など民商法の特例 措置を講ずる。 (2) 公的ブリッジバンクの設立 ○ 預金保険機構は、被管理金融機関の業務を承継し、その業務の暫定的 な維持・継続を図ることを主たる目的とする銀行(「公的ブリッジバン ク」)の経営管理を行う銀行持株会社「平成金融再生機構(仮称)」を 公的資金により設立する。 (注)公的資金としては、金融安定化のために措置された公的資金13兆 円の枠組み(金融危機管理勘定)を活用する。 ○ 平成金融再生機構(仮称)は、金融危機管理審査委員会の議決を経て、 上記公的資金により、被管理金融機関の業務を承継する公的ブリッジバ ンクを子会社として設立・組成する。 (注1)このため、金融監督庁長官は、被管理金融機関の業務の円滑な 承継のために公的ブリッジバンクを活用する必要があると認める ときには、預金保険機構に対し、金融危機管理審査委員会の開催 を要請することができることとする。 (注2)当該公的ブリッジバンクに対し民間出資も可能とする。 ○ 金融危機管理審査委員会の下に置かれた審査判定委員会は、被管理金 融機関から公的ブリッジバンクに承継される善意かつ健全な債務者に対 する債権とそれ以外の債権との仕分けを、金融危機管理審査委員会が定 めた適正な基準に従って行う。 ○ 公的ブリッジバンクは、平成金融再生機構(仮称)に置かれた融資審 査委員会が定めた融資ガイドラインに従い、融資審査委員会の承認を受 けて、被管理金融機関から承継した善意かつ健全な債務者に対し、一定 期間、融資を維持・継続する。 (注)政府系金融機関は、公的ブリッジバンクの斡旋を受け、公的ブリ ッジバンクが承継した善意かつ健全な債務者に対し、債務者の個別 の事情に応じ、必要な資金を融資する(10年度において確保されて いる貸し渋り対策の資金を活用する)。 ○ 預金保険機構は、公的ブリッジバンクの資金調達を補完するため、金 融危機管理審査委員会の議決を経て、上記公的資金13兆円の枠組みを活 用し、必要に応じ平成金融再生機構(仮称)を通じて公的ブリッジバン クに資金を貸し付けるとともに、公的ブリッジバンクに係る業務により 発生した損失を補てんする。 (注)これに関連し、整理回収銀行は、公的ブリッジバンクが破綻金融 機関から承継した後に不良化した債権等の買取りを、金融管理人に よる管理の開始から2年以内に限り行えることとする。 ○ 公的ブリッジバンクは、あくまでも「つなぎ」・時限的なものであり、 被管理金融機関から承継した業務を、金融管理人による管理の開始から 原則2年以内(ただし、1年ごとに3回までの延長可)に、営業譲渡等 により民間金融機関に移管する。 (3) また、この制度の整備及び運用に当たっては、善意かつ健全な債務者の 仕分けに関する判定基準や融資ガイドラインなどの公表及び金融危機管理 審査委員会の議事内容の公表を義務付けることにより、必要な透明性を確 保する。 (4) その他、公的ブリッジバンクへの資産の移転に係る登録免許税等の課税 上の特例措置を講ずるほか、所要の罰則規定を設ける。【ブリッジバンク制度の概略図】 【金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案要綱】