金融システム改革法の骨格

 

I .法律の概要

1.資産運用手段の充実


  
 投資家の多様化するニーズに応え、より有利な資産運用を可能とするた 
   め、投資信託の整備、有価証券店頭デリバティブの導入等、資産運用手段を
   充実させる。                            

  (1) 投資信託の整備

    投資信託は、専門的能力を活用した簡便かつ効率的な資産運用手段を提供
   し、個人投資家等の証券市場への参加を容易にするもので、市場改革におけ
   る中核的な役割を果たしていくことが期待される。このため、投資信託の商
   品の多様化、商品性の改善、販売チャンネルの拡充等を図ることとする。

   ○ 新しい投資信託商品の導入(証券投資信託法)
     欧米で広く利用されているさまざまな投資信託の商品を、我が国投資家
    が利用できるようにするため、証券投資法人(いわゆる会社型投信)及び
    私募投信を導入する。

   ○ 商品設計等の自由化(証券投資信託法)
     投資家が自らのニーズに合った商品を選べるよう、個別商品(信託約款)
    の承認制を届出制に改めることで多様な商品の出現を促す。また、より専
    門的な運用も可能となるよう証券投資信託委託業等の運用指図の外部委託
    を認める。
    (注)
     証券総合口座については97年10月に導入済。

   ○ 銀行等の投資信託の窓口販売の導入(証券取引法)
     投資信託を銀行を始めとした様々な金融機関で購入できるようにする。
    このため、金融機関が、証券取引法上登録を受けて、本体での投資信託の
    窓口販売を行うことができるようにする。
    (注)
     投資信託委託会社への銀行の店舗貸の形による窓販は97年12月に実
    施済。

  (2) 証券デリバティブの全面解禁(証券取引法、銀行法等)
    金融革新の先端にあるデリバティブ取引が、我が国においても利用できる
   ようにする。このため、有価証券店頭デリバティブ取引を証券業と位置づけ
   て導入するなど、法的疑義を取り除く。この際、金融機関も一定の範囲で営
   業として取り扱うことができるようにする。
    (注)
    取引所で取引される個別株式オプションについては、97年7月に導入済。

  (3) 有価証券定義の拡充(証券取引法)
    投資家に提供される商品の種類が拡大していく中で、公正取引ルールの適
   用等により投資家が購入しやすい環境を整備するため、カバード・ワラント
   やDR(預託証書)を始めとし、有価証券定義を拡充する。

 

2.活力ある仲介活動を通じた魅力あるサービスの提供


  
 市場利用者が、金融機関等において、さまざまな質の高いサービスを受け
   られるようにするため、証券会社等の提供するサービスの自由化、価格の自
   由化、参入の促進を始めとする改革を進める。
             

  (1) サービス提供の自由化

    投資家が、証券会社や資産運用業者(証券投資信託、投資顧問)において、
   さまざまなサービスを享受できるようにするための枠組みを整備する。

   ○ 証券会社の業務の多角化(証券取引法)
     証券会社の専業義務を見直し、投資顧問業や証券投資信託委託業等の法
    令で幅広く明記した業務については届出で、それ以外についても承認を受
    ければ行えるようにする。承認についても、公益に反する又はリスクの算
    定が困難であるために投資者保護の観点から支障がある場合でない限り拒
    否できないこととする。
    (注)
     これにより、手数料の完全自由化と併せ、米国で定着している個人投資
    家向けの資産運用サービスであるラップ口座の導入が可能になる。  

   ○ 資産運用業の業務の多角化(証券投資信託法、投資顧問業法)   
     資産運用業者についても、専業を原則としつつ、証券業をも含め、でき
    るだけ幅広く兼業を認める。

  (2) 価格の自由化

    利用者が内容と価格を比較しつつ商品やサービスを選べるよう、価格設定
   の自由化を進める。

   ○ 株式売買委託手数料の完全自由化(証券取引法)
     手数料の完全自由化を99年末までに実施する。
    (注)
     94年4月より取引金額10億円超の部分については手数料の自由化が
    既に実施されているが、99年末の完全自由化に先立ち、本年4月より、
    5千万円超にかかる部分について自由化を行う(この部分法改正不要)。

   ○ 保険の算定会の改革(損害保険料率算出団体に関する法律)
     火災保険、自動車保険等について、算定会の料率の使用義務を廃止する。

  (3) 参入の促進

    幅広く参入を促進することにより、活力と特色ある金融機関等を生み、
   利用者がその目的とニーズによって選択できるような枠組みを整備する。

   ○ 証券会社の免許制の登録制への移行等(証券取引法)
     証券業について参入を促進するため、現行の免許制を登録制に改める。
    なお、有価証券の元引受け業務、有価証券店頭デリバティブ取引業務及び
    私設取引システムに係る業務については認可を必要とする。

   ○ 相互参入の促進(金融制度改革法、銀行法、保険業法等)
     保険会社と金融他業態との間の子会社による参入を可能とする。また、
    銀行系証券子会社に対しても、残余の業務範囲制限を99年度下期中に撤
    廃する。

   ○ WTOの承認に伴う規定整備(保険業法)
     WTO金融サービスに関する議定書の国会承認に伴い必要となる第三分
    野の激変緩和措置に係る規定を整備する。

 


[続きがあります]