第二部 連結財務諸表原則の改訂について


                                                                            

    1.基本的考え方                                                        

                                                                            

      (1) 現行の連結財務諸表原則(以下、「連結原則」という。)は、今日まで見

        直しが行われておらず、連結の範囲につき持株基準が採用されており、支配

        力基準が採用されていないことのほか、税効果会計の適用が任意とされてい

        ること、親子会社間の会計処理の統一ルールが明確になっていないこと、資

        本連結の手続が明確になっていないこと等の問題点が指摘されている。    

          このため、ディスクロージャー制度において連結情報が主たる位置づけと

        なることに合わせ、連結財務諸表が企業集団の財政状態及び経営成績に関す

        るより適切な投資情報を投資者に提供できるものとなるよう、連結原則を改

        訂することが必要である。                                            

                                                                            

      (2) 連結財務諸表は、親会社とそれが支配する子会社によって構成される企業

        集団について、その財政状態及び経営成績を表示することを目的として、親

        会社と子会社の財務諸表を基礎として作成されるが、連結財務諸表の作成に

        ついては、古くから、親会社説と経済的単一体説の2つの考え方が対立して

        きた。いずれの説においても、単一の指揮下にある企業集団全体の資産・負

        債と収益・費用を連結財務諸表に表示するという点では変わりないが、資本

        に関しては、親会社説は、連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位

        置づけて、親会社の株主持分のみを反映させるのに対して、経済的単一体説

        は、連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置づ

        けて、企業集団を構成する全ての会社の株主持分を反映させるものであると

        いえる。                                                            

          この度の連結原則の改訂に当たり、いずれの考え方によるべきかを検討し

        た結果、双方の考え方にそれぞれ特長があり、国際的には経済的単一体説に

        よる動きも見られるところであるが、従来どおり、親会社説を踏襲すること

        としている。これは、連結財務諸表が提供できる情報は主として親会社の投

        資者にとって有用な情報であると考えられること、及び、親会社説による処

        理方法が、企業集団の経営を巡る現実感覚をより適切に反映すると考えられ

        るためである。                                                      

                                                                            

      (3) 本改訂案の要点及び考え方を、現行の連結原則と対比しつつ示すと、以下

        のとおりである。                                                    

                                                                          

    2.連結の範囲等の見直し                                              

                                                                            

        現行の連結原則では、子会社の範囲について、支配力の形式基準である持株

      基準が採用されているが、連結財務諸表が企業集団の財政状態及び経営成績を

      より適切に反映したものとなるよう、議決権の所有割合以外の要素も加味した

      支配力基準を導入することとする。関連会社の範囲についても、同様に見直し

      を行うこととする。                                                    

                                                                            

      (1) 子会社の範囲                                                      

          現行の連結原則上、子会社の範囲についてその判断基準として、親会社が

        直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかにより判定を行う持株

        基準が採用されているが、国際的には、実質的な支配関係の有無に基づいて

        子会社の判定を行う支配力基準が、広く採用されている。                

          現在我が国で採用されている持株基準は、支配力基準の一つと解されるが、

        議決権の所有割合が百分の五十以下であっても、その会社を事実上支配して

        いるケースもあり、そのような被支配会社を連結の範囲に含めないことは、

        企業集団に係る情報としての有用性を損なうことになる。                

          このような事情に鑑み、議決権の所有割合以外の要素を加味した支配力基

        準を導入することとし、「親会社とは、他の会社(会社組織ではないが、会

        社に準ずる事業体を含む。)を実質的に支配している会社をいい、子会社と

        は、当該他の会社をいう。」と定義することとする。                    

          持株基準以外に実質的な支配関係の有無を判定する具体的な基準を設定す

        ることには、困難な点も少なくないが、国際会計基準や諸外国の基準を参考

        として、意思決定機関を支配しているかどうかという観点から、次のような

        基準を設定することとする。                                          

        ○  他の会社の議決権の過半数を所有している場合には、他の会社の意思決

          定機関を実質的に支配していないことが明らかに示されない限り、当該他

          の会社は、子会社に該当する。                                      

        ○  他の会社に対する議決権の所有割合が百分の五十以下であっても、高い

          比率の議決権を有しており、かつ、例えば、次の状況にある場合には、他

          の会社の意思決定機関を実質的に支配していないことが明らかに示されな

          い限り、当該他の会社は、子会社に該当する。                        

          イ.議決権不行使株主の存在により、株主総会において議決権の過半数を

            継続的に占めることができると認められる場合                      

          ロ.役員、関連会社等の協力株主の存在により、株主総会において議決権

            の過半数を継続的に占めることができると認められる場合            

          ハ.取締役会の構成員の過半数を、出資会社の役員又は従業員である者又

            はこれらであった者が継続して占めている場合                      

          ニ.重要な財務及び営業の方針決定を支配する契約等が存在する場合    

                                                                            

      (2) 関連会社の範囲                                                    

          現行の連結原則上、連結会社(親会社及び連結された子会社)が、子会社

        以外の他の会社の議決権の百分の二十以上を所有し、かつ、人事、資金、技

        術、取引等の関係を通じて、財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を

        与えることができる場合には、当該他の会社は、関連会社に該当することと

        されている。                                                        

          当該取扱いによると、財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与え

        ることができると認められる場合であっても、議決権の所有割合が百分の二

        十未満であるときは、関連会社に該当せず、持分法の対象外となる。      

          このため、国際会計基準や諸外国の基準を参考として、影響力基準を導入

        し、「関連会社とは、親会社及び子会社が、出資、人事、資金、技術、取引

        等の関係を通じて、子会社以外の他の会社(会社組織ではないが、会社に準

        ずる事業体を含む。)の財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与え

        ることができる場合における当該他の会社をいう。」と定義し、次のような

        基準を設定することとする。                                        

        ○  他の会社の議決権の百分の二十以上を継続的に所有している場合には、

          財務及び営業の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明ら

          かに示されない限り、当該他の会社は、関連会社に該当する。          

        ○  他の会社に対する議決権の所有割合が百分の二十未満であっても、一定

          の議決権を有しており、かつ、例えば、重要な契約の存在等により、財務

          及び営業の方針決定に重要な影響を継続的に与えることができると認めら

          れる場合には、当該他の会社は、関連会社に該当する。                

                                                                            

      (3) 合弁会社に対する比例連結の適用の是非                            

          現行の連結原則によると、共同支配の実態にある合弁会社(関連会社)に

        ついては、他の関連会社と同様、原則として持分法が適用されることになる

        が、貸借対照表及び損益計算書の各項目を持分割合に応じて連結する比例連

        結を認めるかどうかという問題を検討した。                            

          この点については、混然一体となっている合弁会社の資産、負債等を、持

        分割合で按分して連結財務諸表に計上することは、不適切であるといった問

        題点が指摘されていること等を踏まえ、比例連結は導入せず、現行の取扱い

        を踏襲することとする。                                              

                                                                            

    3.少数株主持分の表示方法の見直し                                    

                                                                            

        連結財務諸表作成の基本的立場として親会社説をとる場合には、連結貸借対

      照表の資本の部には、親会社の持分のみが表示されることになる。このため、

      少数株主持分については、負債の部に表示する方法と、国際会計基準に見られ

      るように、負債の部と資本の部の中間に独立の一区分として表示する方法とが

      考えられる。                                                        

        現行の連結原則上、少数株主持分は、負債の部に表示することとされている

      が、少数株主持分は、返済義務のある負債ではなく、連結固有の項目であるた

      め、負債の部と資本の部の中間に独立の一区分として表示することとする。  

        なお、少数株主持分を負債の部と資本の部の中間に独立の一区分として表示

      する方法によっても、少数株主損益は、連結損益計算書において損失又は利益

      として表示され、当期純利益は親会社の株主に帰属する利益の額として計算さ

      れることになる。                                                    

                                                                            

    4.税効果会計の適用                                                  

                                                                            

      (1) 税効果会計は、会計上と税務上の収益又は費用(益金又は損金)の認識時

        点の相違や、会計上と税務上の資産又は負債の額に相違がある場合において、

        法人税等を適切に期間配分するための会計処理であり、国際的にも広く採用

        されている。                                                        

          税効果会計を適用しない場合には、単に課税所得を基礎とした法人税等の

        額が計上され、会計上の利益と課税所得とに差異がある場合には、その差異

        の影響が財務諸表に反映されない。このため、費用としての法人税等の額が

        税引前当期純利益と期間的に対応せず、その影響が重要な場合には、財務諸

        表の企業間比較を損なうとの指摘がある。                              

          税効果会計を適用した場合には、会計上と税務上の収益又は費用(益金又

        は損金)の認識時点や、会計上と税務上の資産又は負債の額の差異について、

        その影響が、貸借対照表に繰延税金資産又は繰延税金負債として表示される

        とともに、当期純利益は当期の業績をより適切に表示することとなり、有用

        な投資情報を提供することができる。                                  

          現行の連結原則上、税効果会計の適用は任意とされているが、上記の観点

        から、税効果会計の適用を原則とすることとする。                      

                                                                            

      (2) ○  現行実務上、税効果会計を適用している企業には、連結会社間に係る

            未実現損益の消去等、連結手続上の修正項目についてのみ税効果会計を

            適用しているもの(以下、「部分適用」という。)と、個別ベースでの

            税効果会計を含めて全面的に適用しているもの(以下、「全面適用」と

            いう。)とが見られる。                                          

              部分適用は、個別財務諸表において税効果会計が適用されていないと

            いう事情によるものであるが、連結手続上の修正項目についてのみ税効

            果会計を適用しても、それは極めて限られた意味しか持たず、国際的に

            も通用する会計処理とは言えない。このような考え方に基づき、全面適

            用を求めることとする。                                          

              なお、ここにいう全面適用とは、個別財務諸表に税効果会計を適用し

            て修正したものを、連結財務諸表の作成の基礎とする会計処理をいう。  

          ○  税効果会計の方法には、繰延法と資産負債法とがあるが、資産負債法

            は、税率変更等に応じて繰延税金資産又は繰延税金負債が回収額又は支

            払額をより適切に示す方法であり、国際的にも主流となっていることか

            ら、当該方法によることとする。                                  

                                                                          

      (3) 個別財務諸表における税効果会計の適用についても、上記・で述べた問題

        点を踏まえ、今後、具体的な検討を行う必要がある。                    

                                                                          

    5.親子会社間の会計処理の統一ルールの明確化                          

                                                                            

      (1) 現行の連結原則上、子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、「でき

        るだけ」親会社に統一することとされている。                          

          会計処理の統一に関しては、親会社と各子会社は、それぞれの置かれた環

        境の下で経営活動を行っているため、特定の会社が採用している会計処理の

        方法が、当該会社の環境に適合したものであれば、その方法が財政状態及び

        経営成績を最も的確に示すものであり、連結会計において親会社と各子会社

        の会計処理を画一的に統一することは、かえって連結財務諸表が企業集団の

        財政状態及び経営成績を適切に表示しなくなるということも考えられる。一

        方、同一の環境下にあるにもかかわらず、連結会社間で異なる会計処理が適

        用されている場合には、その個別財務諸表を基礎とした連結財務諸表が、企

        業集団の財政状態及び経営成績の適切な表示を損なうことは否定できない。  

          したがって、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については、企

        業集団として会計処理を統一することが適当である。                    

                                                                            

                                                                            

      (2) このような考え方から、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等につ

        いては、「原則として」会計処理の統一を求めることとする。          

          会計処理の統一に当たっては、子会社の会計処理を親会社の会計処理に合

        わせる場合のほか、親会社の会計処理を子会社の会計処理に合わせる場合も

        考えられ、より合理的な会計処理の原則及び手続を選択すべきである。    

          なお、実務上の事情を考慮して、財政状態及び経営成績の表示に重要な影

        響がないと考えられるもの(例えば、たな卸資産の評価方法である先入先出

        法、平均法等)については、敢えて統一を求めるものではない。          

                                                                          

    6.資本連結の手続の明確化                                            

                                                                            

          資本連結の手続とは、親会社の子会社に対する投資勘定とこれに対応する

        子会社の資本勘定を相殺消去し、その結果消去差額が生じた場合には当該差

        額を連結調整勘定として計上し、子会社の資本勘定のうち親会社の持分に属

        さない部分については、これを少数株主持分に振り替える一連の処理をいう。  

          資本連結については、企業集団内で行われる資本関連取引の複雑化に伴い、

        現行の連結原則上明確な定めのない取引が増加してきており、また、資本連

        結に係る国際的な会計基準の考え方にも変化が現れてきた。このようなこと

        から、現行の資本連結に関する基準を全面的に見直し、以下のとおり資本連

        結の手続の明確化を図ることとする。                                

                                                                          

        (1) 支配獲得時における資本連結の手続                              

            支配獲得時における資本連結の手続は、新たに連結の範囲に含まれる子

          会社の資産及び負債の評価、投資勘定と資本勘定の相殺消去及び連結調整

          勘定の計上に分けることができる。                                  

                                                                          

          ○  子会社の資産及び負債の評価                                  

              支配獲得時においては、親会社は株式の取得を通じて子会社の資産及

            び負債を取得することになるが、これらの資産及び負債の評価は、子会

            社の個別貸借対照表上の金額(帳簿価額)を離れて、新たに資産及び負

            債を取得する場合と同様に、公正な評価額(以下、「時価」という。)

            によることとする。                                              

              この場合の時価による評価には、親会社の持分に対応する部分に限定

            する方法(以下、「部分時価評価法」という。)と少数株主持分に対応

            する部分を含めて全体を時価評価する方法(以下、「全面時価評価法」

            という。)とが考えられる。前者の考え方は、親会社が株式を取得した

            際の親会社の持分を重視する考え方であり、後者の考え方は、親会社が

            子会社を支配した結果、子会社が企業集団に含まれることになった事実

            を重視する考え方である。                                        

              現行の連結原則の下では、投資消去差額の原因分析を通じて、結果的

            には部分時価評価法と同様な処理が行われてきたが、本改訂案では、国

            際的な動向を考慮し、新たに、従来の部分時価評価法に加えて、全面時

            価評価法による処理も併せて認めることとしている。                

              また、段階的に株式を取得した場合における部分時価評価法は、株式

            の取得時点ごとに時価評価を行う方法であるが、支配獲得時点において、

            一括して株式を取得したとみなして時価評価を行う簡便法も認めること

            とする。                                                        

              なお、子会社の資産及び負債の帳簿価額と時価評価額との差額に重要

            性が乏しい場合には、帳簿価額によることができるものとする。      

                                                                            

          ○  投資勘定と資本勘定の相殺消去                                

              本改訂案では、投資勘定と資本勘定の相殺消去は、子会社の資産及び

            負債の評価の時点に対応する子会社の資本勘定を用いて行われることと

            している。子会社の資産及び負債の帳簿価額と時価評価額との差額より

            生ずる評価差額は、一種の評価替剰余金の増減額としての性格を有する

            が、その金額は投資勘定と資本勘定の相殺消去及び少数株主持分への振

            り替えによって、全て消去される。                                

              全面時価評価法を採用する場合には、取得日ごとの資本勘定を用いて

            相殺消去を行うのではなく、支配獲得日における資本勘定を用いて一括

            して相殺消去を行う。なお、このような処理は、相殺消去の対象となっ

            ている投資勘定にすでに持分法を適用していた場合であっても同様であ

            り、持分法評価額を投資勘定の帳簿価額とみなして相殺消去を行うこと

            になる。                                                        

                                                                            

          ○  連結調整勘定の計上                                          

              上記のような処理を行った結果、投資勘定と資本勘定の消去差額は、

            連結調整勘定として計上されることになる。本改訂案では、子会社の資

            産及び負債を時価評価した後に、投資勘定と資本勘定の相殺消去を行う

            こととしており、その結果生じた消去差額である連結調整勘定は、事実

            上、のれんの性格を有することになる。                            

              全面時価評価法を採用する場合には、連結調整勘定を支配獲得時に一

            括して計算することとする。なお、消去の対象となる投資勘定に持分法

            を適用していた場合には、持分法評価額に含まれていた連結調整勘定も

            含めて、連結調整勘定が新たに計算されることになる。              

              連結調整勘定の計上に関連し、少数株主持分についても、これに相当

            する額を計上すべきであるとする考え方がある。本改訂案では、推定計

            算により少数株主持分に対応する連結調整勘定を計上することは好まし

            くなく、のれんの計上は有償取得に限るべきであるという立場から、こ

            の考え方は採用しなかった。                                      

                                                                          

        (2) 支配獲得後における資本連結の手続                              

            支配獲得後における資本連結の手続は、基本的には、親会社と少数株主

          との間の持分移動に係る処理をいう。この場合、経済的単一体説によれば、

          当該取引は所有者間の取引と考えられるが、本改訂案で採用する親会社説

          によれば、当該取引は親会社と外部者との間の取引と考えられる。        

            支配獲得後の親会社と少数株主との間の持分移動は、持分そのものを両

          者間で売買する子会社株式の追加取得及び一部売却のほか、子会社におけ

          る発行済株式総数の増減を伴う資本取引を通じて間接的に発生する場合が

          ある。例えば、子会社の時価発行増資等において親会社が引き受けなかっ

          た場合、又は、従前の持分比率と異なる比率で親会社が引き受けた場合に

          は、親会社の持分比率が増資前と増資後で変化することになる。        

            本改訂案では、このようなケースについて、基本的な考え方を示すこと

          とする。                                                          

                                                                          

          ○  子会社株式を追加取得した場合の処理                          

              支配獲得後において子会社株式を追加取得した場合には、子会社に対

            する親会社の持分は増加し、少数株主持分は減少することになる。    

              この場合には、追加取得持分相当額を少数株主持分から減額し、増加

            する親会社の持分と追加取得した投資勘定とを相殺消去し、両者の間に

            差額(追加取得差額)がある場合には、原則として連結調整勘定として

            処理することとする。                                            

              ただし、部分時価評価法を採用している場合には、支配獲得時におけ

            る処理と同様に、追加取得した投資勘定に対応する子会社の資産及び負

            債を時価評価し、追加取得差額から追加評価差額を控除した残額を連結

            調整勘定として処理することとする。                              

              全面時価評価法を採用している場合には、支配獲得時に子会社の資産

            及び負債のすべてが時価評価されているため、追加取得時には、新たな

            評価替えは行わず、追加取得差額をすべて連結調整勘定として処理する

            こととする。                                                    

                                                                          

          ○  子会社株式を一部売却した場合の処理                          

              支配獲得後において子会社株式を一部売却した場合であって、親会社

            と子会社の支配関係が継続しているときは、子会社に対する親会社の持

            分は減少し、少数株主持分は増加することになる。                  

              この場合には、子会社の資本勘定のうち売却した持分相当額だけ少数

            株主持分を増額し、その額と売却による投資勘定の減少額との間に差額

            がある場合には、当該差額を、子会社株式の売却損益の修正として処理

            することとする。また、売却した持分に対応する連結調整勘定も、同様

            に処理することとする。                                          

              なお、部分時価評価法を採用している場合には、売却持分に対応する

            時価評価差額を少数株主持分と相殺することとする。                

                                                                            

          ○  子会社の時価発行増資等に伴い親会社の持分が増減した場合の処理  

              子会社の時価発行増資等において、親会社の引受割合が従来の持分比

            率と異なり、かつ、発行価格が従来の1株当たりの純資産額と異なる場

            合には、親会社の払込額と当該増資等による親会社の持分の増減額との

            間に差額が生ずる。この差額は、当該増資等に伴う持分比率の変化によ

            って、親会社の持分の一部が少数株主持分に、又は少数株主持分が親会

            社の持分に振り替わることから生ずるものである。                  

              本改訂案では、連結財務諸表上の払込資本は親会社の株主の払込資本

            のみであり、子会社の払込資本は連結上の払込資本を構成しないとの解

            釈から、親会社の増減資によらないこのような差額は、連結剰余金とし

            て処理することとしている。                                      

              この場合、当該差額は、損益として処理することを原則とするが、発

            生の頻度、金額の重要性等に照らして、利害関係者の判断を著しく誤ら

            せるおそれがあると認められる場合には、連結剰余金に直接加減する処

            理も認めることとしている。                                      

                                                                              

    7.資本連結以外の連結手続の明確化                                    

                                                                            

          現在、連結原則等において、複数の処理方法が容認されている事項がある

        が、企業間の比較可能性の観点から、次の事項について連結手続の明確化を

        図ることとする。                                                  

                                                                          

      (1) 未実現損益の消去方法等                                            

                                                                            

        ○  少数株主が存在する子会社から親会社への売上取引に係る未実現損益の

          消去方法                                                        

            現行実務上、全額消去・持分按分負担方式(未実現損益を全額消去し、

          親会社の持分と少数株主持分とにそれぞれの持分比率に応じて負担させる

          方法)、全額消去・親会社負担方式(未実現損益を全額消去し、かつ、そ

          の金額を全て親会社の持分に負担させる方法)及び部分消去・親会社負担

          方式(少数株主持分に相当する部分は実現しているものとみなし、親会社

          の持分比率に相当する未実現損益のみを消去し、親会社の持分にこれを負

          担させる方法)の3つの方法が見られるが、全額消去・持分按分負担方式

          に統一することとする。                                            

                                                                            

        ○  減価償却資産に含まれる未実現損益の消去に伴う減価償却費の修正計算

          方法                                                              

            現行の連結原則注解では、減価償却資産に含まれる未実現損益の消去に

          伴う減価償却費の修正計算方法について、毎期修正する方法と固定資産の

          除却時又は連結会社以外の会社への売却時に一括して修正する方法を認め

          ているが、毎期修正する方法に統一することとする。                

                                                                            

        ○  連結会社間でたな卸資産等を時価により売買することにより生じる内部

          損失の消去方法                                                    

            現行の連結原則注解では、連結会社間でたな卸資産を時価により売買す

          ることにより生じる内部損失について、消去する方法と消去しない方法の

          双方を認めているが、損失消去前の原価が回収不能である場合を除き、消

          去することとする。                                                

            なお、たな卸資産以外の資産についても、これに準じて取扱うこととす

          る。                                                              

                                                                          

      (2) 連結調整勘定の償却期間                                          

          連結調整勘定の主要部分はのれんと考えられるため、連結調整勘定は、本

        来、その有効期間にわたって償却し、投資活動の実態を適切に反映させる必

        要がある。                                                          

          しかし、実務上、特に長期的視野に立って企業の投資が行われている場合

        には、有効期間の見積りは困難であるため、連結調整勘定の償却期間の上限

        を明記しないと、償却期間が長期化するおそれがある。                

          このため、企業が、一定の期間内において、子会社株式の取得の実態に基

        づいた適切な償却期間を決定することが重要である点を考慮し、国際会計基

        準を参考として、20年という償却期間の上限を明記することとする。    

                                                                          

    8.連結財務諸表における表示区分の見直し                              

                                                                            

        連結財務諸表の国際的調和、表示内容の簡素化等の観点から、連結財務諸表

      の表示区分について、以下のとおり見直すこととする。                    

      (1) 「連結調整勘定の当期償却額」及び「持分法による投資損益」の表示区分

        の見直し                                                          

          現行の連結原則上、「連結調整勘定の当期償却額」は、税金等調整前当期

        純利益に加減して表示することとされているが、連結調整勘定の主要な部分

        はのれんと考えられるため、「連結調整勘定の当期償却額」は販売費及び一

        般管理費(負債の部に計上された連結調整勘定については、営業外収益)と

        して表示することとする。                                          

          また、「持分法による投資損益」についても、税金等調整前当期純利益に

        加減して表示することとされているが、投資に係る損益であるため、一括し

        て営業外損益として表示し、経常損益に反映させることとする。          

                                                                          

      (2) 利益準備金の取扱い                                              

          現行の連結原則上、利益準備金は資本の部に区分して表示することとされ

        ているが、連結財務諸表は、商法上の配当可能利益の算定を直接の目的とし

        ているものではないため、個別財務諸表上の処分不可能な利益剰余金である

        利益準備金を連結財務諸表上表示する必要性が乏しく、表示科目の統合の観

        点からも、利益の留保額を「連結剰余金」として一括して表示することが適

        当と考えられる。                                                    

          このため、連結財務諸表上、利益準備金の表示区分を廃止し、利益の留保

        額(利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益)を「連結剰余金」として

        一括して表示することとする。                                        

                                                                          

      (3) 自己株式等の取扱い                                              

          現行の連結原則注解では、自己株式及び子会社が所有する親会社の株式は、

        資本の部から控除する形式で表示することとされているが、自己株式等の取

        得は原則として禁止されており、例外的に取得しても短期間のうちに処分す

        ることが必要とされているため、売却目的の自己株式及び子会社の保有する

        親会社株式については、個別財務諸表と同様、流動資産として表示し、その

        売却差額は損益として処理することとする。                            

          なお、利益消却目的の自己株式については、連結決算日において失効手続  

        が完了したものとみなして表示することとする。                        

                                                                          

      (4) 事業税の表示区分の見直し                                        

          現在、事業税は、営業費用の一項目として表示することとされているが、

        利益に関連する金額を課税標準として課される事業税については、法人税及

        び住民税と同様、税金等調整前当期純利益から控除して表示することとする。

          なお、個別財務諸表における事業税の表示区分についても同様の問題があ

        り、この点について、今後検討する必要がある。

[次に進む]

[「連結財務諸表制度の見直しに関する意見案」目次に戻る]