10年1月23日

                          中間的な論点整理                               
                                                                           

                                                                                

  ┌    当懇談会は、電子マネー・電子決済の健全な発展・普及のための環境整備を  ┐

  │  行うことを目的に、昨年10月の発足以来5回にわたり、検討を進めてきたと  │

  │  ころであるが、今後の議論に資するため、今般、具体的な制度整備の検討を行  │

  │  う際のベースとなる基本的な考え方について、中間的な論点整理として公表す  │

  │  ることとした。                                                          │

  │    なお、以下に掲げる基本的な考え方は、あくまでも現段階における中間的な  │

  │  整理であり、今後、各論について具体的な検討を進めていく中で、さらに整理  │

  └  等を行うこともあり得る。                                                ┘

                                                                                

1.環境整備に向けた法整備の必要性                                              

                                                                                

(1) 電子マネー・電子決済を始めとする電子的な金融・決済サービスについては、内外で

  実用化・普及の動きが進展しており、情報通信の技術革新等を背景に更なる発展が見込

  まれている。                                                                  

    このような状況及び既存の制度による対応の延長線では捉えられない固有の問題等に

  鑑みれば、新たな立法措置を含む法的な環境整備を図ることが必要である。          

                                                                                

(2) 今後の議論の進め方としては、まずは、電子マネー・電子決済について、実用化に向

  けた民間サイドの動きも踏まえつつ、その環境整備に向けた制度面での検討を早急に行

  い、具体的な方向性を示すこととする。なお、既存法令の電子マネーへの適用の在り方

  についても、その中で検討することとする。                                      

    その上で、さらに関連する電子的な金融・決済サービスについても必要に応じて検討

  を進めていくこととする。                                                      

                                                                                

(3) 電子マネー・電子決済に関する法的な環境整備に当たっては、それらが利用者からの

  信認を得て普及する基盤として、利用者保護及び決済システムの安定性を確保する観点

  からの検討を行う必要がある。                                                  

    その際には、民間部門の技術開発や創意工夫を尊重するとの観点や制度の国際的整合

  性に配慮するなどの観点に留意すべきである。                                    

                                                                                

2.法的な環境整備に当たっての基本的な視点と方向性                              

                                                                                

(1) ルール整備についての基本的考え方                                            

    電子マネー・電子決済については、現在揺籃期にあり、未だ典型的な形態が確立して

  いるとは言いがたく、多様な形態のサービスが考案されつつある状況に鑑みれば、その

  ような動きを促す意味からも、利用者保護及び決済システムの安定性確保のためのルー

  ルが一部の形態にのみ適用され、他に適用されないということがあるのは適当ではない。  

    したがって、制度整備に当たっては、特定の技術や仕組みに関わらず、同様のサービ

  スであれば同様のルールが適用されるようにすることを基本的な考え方とすべきである。  

                                                                                

(2) ルール整備の際に着目すべき三つの要素                                       

    利用者保護及び決済システムの安定性を確保するとの観点からは、電子マネー・電子

  決済の以下の三つの要素に着目してルールの内容を検討していくことが適当である。  

    なお、以下に示す三つの要素については、そのいずれかを満たすサービスについてル

  ールの対象として検討することを基本とし、また、複数の要素を満たすサービスについ

  ては、その組み合わせによって全体として制度整備を図るべきである。              

                                                                                

  ○  電磁的な方法により弁済又は支払指図(即ち、広義での「決済」)の手段が提供さ

    れ、情報処理のプロセス全体を管理する責任を有する単一の主体が存在しないこと  

      電子マネー・電子決済は、ICカードやオープンネットワークを利用した決済サー

    ビス等取引過程が専ら提供主体のシステムの内部で電磁的に処理され、情報処理のプ

    ロセス全体を管理する責任を有する単一の主体が存在しない決済手段や決済サービス

    の提供である。                                                              

      したがって、利用者サイドからは、その信頼性を判断するのが容易でないため、サ

    ービスの適切な運営を確保するためには、利用者に対する説明、情報開示等のルール

    整備を図る必要がある。                                                      

                                                                                

  ○  利用者から電子マネーの発行見合資金の受信を行うこと                        

      電子マネーについては、海外のプロジェクトも含めると、利用者が商品の購入等を

    行うのに先立って、サービスの提供者に対して予め見合いの資金を提供する、即ち前

    払い(プリペイド)のスキームが大部分であり、さらに、前払いされた資金が利用者

    からの要求に応じて払い戻される、即ち一般的に元本の返還を約しているものも多く

    存在する。                                                                  

      このような電子マネーについては、受け入れた見合資金が適切に管理・運営され、

    また、万一、スキームの運営が困難となった場合に利用者に見合資金が適切に還元さ

    れ得るようなルール整備を図る必要がある。                                    

                                                                                

  ○  支払完了性(ファイナリティ)の高い決済サービスを目指すものであること      

      電子マネーの中には、限定された商品の販売等に伴う決済サービスの提供からファ

    イナリティの高い決済サービスを目指すものまで様々なものがあるが、とりわけ後者

    については、電子マネーの交付・移転をした後で決済の効力が覆されることがない扱

    いを可能とするような、取引の安全性を高めるための方策等、その利便性が最大限に

    発揮されるような制度整備についても積極的に検討していくことが必要である。    

                                                                                

(3) ルールの水準                                                                

    電子マネー・電子決済については、基本的には上記の各要素に着目してルール整備を

  図るべきであるが、発行形態、一般的換金性の有無、利用範囲等に応じて、決済手段や

  決済サービスに期待されるインフラとしての役割が異なることに鑑みれば、利用者保護

  及び決済システムの安定性確保のために求められるルールの水準についても自ずと異な

  るものとすべきである。                                                        

                                                                                

3.制度整備に向けた具体的な論点                                                

                                                                                

    以上のような基本的な考え方を踏まえつつ、各論について、今後具体的な検討を進め

  ていく必要がある(別紙1)。                                                  

                                                                                

(参考)                                                                        

  ・  これまでの審議状況及び今後の進め方(別紙2)                                

  ・  電子マネー及び電子決済の環境整備に向けた懇談会委員名簿(別紙3)            

                                                                                 

                                                                                 

(別紙1)今後検討を進めていくべき具体的な論点                                  

                                                                                

(1) 電子マネー・電子決済に係る公正な取引ルールと利用者保護の在り方              

    ・当事者間の権利義務関係の明確化(強制執行等の第三者との関係等を含む)        

    ・利用者に対するサービス提供者の行為規範(説明義務、情報開示、責任分担等)    

                                                                                

(2) 電子マネー発行体の適格性要件                                                

    ・参入要件、業務の適正性確保、財務の健全性確保等                            

                                                                                

(3) 電子マネー発行体の破綻時の対応                                              

    ・発行体破綻時の早期対応、権利実行手続の整備、権利の実体的な保護            

                                                                                

(4) その他                                                                      

    ・不正使用・不正行為の防止(電子マネーを用いたマネロンといった犯罪の防止等)  

    ・技術面での適正性確保                                                      

                                                                                

  など 

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