欧州委員会から欧州議会、閣僚理事会、EMI、経済社会評議会への報告(仮訳)                
                                                                                        
                           -97年7月9日公表-                                       
                                                                                        
           単一市場における電子的支払手段に対する消費者の信用育成                       
                                                                                        
                                                                                        
はじめに                                                                                
                                                                                        
  87年1月の支払手段に関する委員会の最初の報告("Europe could play an ace: the new        
payment cards": Communication to the Council COM(86) 754 of 12 January 1987)から        
10年、支払カードの使用は進展している。支払カードは支払手段の市場の大きな割合とな        
っている。キャッシュレス支払手段の使用は飛躍的に伸びてきた。例えば、域内のカード        
による支払の支払全体に占める割合は(EC12か国ベースで)90年の9%から95年には13.5%に         
増加している一方、カードによる支払の回数は7回から14回に増えている。                     
                                                                                        
  87年報告以降、次のような新たな革新的な支払方法が導入されてきた。                      
                                                                                        
・「銀行口座アクセス」商品:金融機関(端的には、銀行)にある口座にリモートアクセス       
する機器                                                                                  
                                                                                        
・「電子マネー」商品:磁気ストライプ、ICカード、コンピュータのメモリーであれ、電         
子的な価値が貯蔵される機器(Eマネー、あるいはサイバー・マネー)                           
                                                                                        
  今後10年でインターネット上で行われる小売業は大きな割合になると期待されている。        
電子的な方法、あるいは遠隔地で商品やサービスが提供されるようになるほど、より簡単、      
安全かつ効率的に支払の方法を提供するための競争圧力が提供者(provider)にかかってく        
るであろう。                                                                            
                                                                                        
範囲と内容                                                                              
                                                                                        
  電子商取引と新たな支払手段の間の関係については、「電子商取引に関する欧州イニシ        
アティブ」で強調されている。サービス提供者の利益となる、安全かつ効率的で利用者に        
とって使いやすい電子的支払システムがあってはじめて電子商取引は発展する。本報告は        
透明で安全な電子支払機構は、特に移行期において、単一通貨への転換を促進することも        
認識している。                                                                          
                                                                                        
  本報告は、電子的支払に関して相当な公的貢献(contribution by public authorities)        
が求められる4つの主な分野を示している。                                                 
                                                                                        
(i) 発行体の健全性を確保するために電子マネーの発行に関する適切な監督の枠組みを明        
らかにしなければならない。                                                              
                                                                                        
  電子マネーは広範な商品やサービスに使用され得ることを前提に、発行体の健全性確保、      
ひいては消費者の利益保護を図る観点から、電子マネーの発行に関する適切な監督の枠組        
みを委員会、EMI、各国は現在検討している。この議論にかんがみて、委員会は97年末(す        
なわち、作業遂行の目標期日)までに電子マネー(e-money products)の発行体に適用され       
る条件を定める指令(a directive)に対する提案を発表するつもりである。                       
                                                                                        
(ii) 使用者の十分な信頼を確保するため、透明性、責任、補償手続に関して発行者及び使       
用者のためのガイドラインを提示しなければならない。                                      
                                                                                        
  電子的支払手段の信頼育成のため、顧客は明確な情報、公正な責任負担、効率的な補填        
手段に頼る必要がある。これらは本報告の主題であり、次の節でより詳細に取り扱われる。      
                                                                                        
(iii) 相互運用性と健全かつ活発な競争の間の適切なバランスを達成するため、EU競争政        
策(competition rules)の適用を明確にしなければならない。                                 
                                                                                        
  真の単一市場を確立するために必要なことであるが、電子的支払手段には「相互運用性」      
が求められる。すなわち、ある機関により(あるいは、ある国において)発行/受入が行われ       
る支払手段が可能な限り広範に使用できれば、顧客利便や市場効率性は向上する。使用者        
とビジネスの双方に利害関係のある、電子的支払システムの互換性は基本的にシステム運        
用者の合意に依存する。そのような合意はEU競争政策と一貫していなければならない。す        
べての利害関係者(金融機関、流通業者、及び顧客)に対するガイドラインを提示するため、      
委員会は98年中に電子的支払手段への競争ルールの適用を明確にする告示を行う。              
                                                                                        
(iv) さらに、安全性を向上させることにより、不正使用や偽造のリスクに取り組まなけれ       
ばならない。                                                                            
                                                                                        
  支払手段は不正行為に使われないような必要な保証がされるものでなければならない。        
技術的安全対策に関しては、電子的支払システムをできるだけ安全なものにする方法が探        
究されることが重要である。特に、適切な暗号手法、電子署名その他の技術を発展させる        
ことであるが、その責務は一義的にはサービス提供者にある。しかしながら、安全性には        
別の側面がある。すなわち、適切な法制度、とりわけ刑罰法により安全性を向上させるこ        
とが可能である。これらの重要性にかんがみて、アムステルダムの欧州理事会は組織犯罪        
に対するアクションプランを採択した。アクションプランでは、閣僚理事会及び委員会が        
98年末までに、電子的支払手段を含むすべての支払手段に関する不正や偽造の問題を調査        
し取り組むことが求められている。この要請を受けて、委員会はこの分野でのイニシアテ        
ィブの必要性を評価(assess)する。                                                        
                                                                                        
  最後に、以上に示された分野に加えて、電子的支払手段に関する取得者(acquirer)と受        
取者(acceptor)の間の関係の明確な枠組みを確立する観点から、委員会は87年勧告              
(Commission Recommendation 87/598/EEC of 8 December 1987 on a European Code of 
Conduct relating to electronic payment (relations between financial institutions,       
traders and service establishments, and consumers))を最新のものとすることができ       
るかについても検討する。                                                                
                                                                                        
  それ故、本報告はより広範かつ統合されたアプローチという文脈における第一歩であり、      
その究極的な目的は関係者全員の利益にとなる、健全、効率的かつ安全で利用者にとって        
使いやすい電子的支払システムを発展させることである。                                    
                                                                                        
発行者及び使用者にとってガイダンスの提供                                                
                                                                                        
  新たな支払手段が成功するかは顧客が受け入れて信頼するかに依存する。信頼はまずそ        
の手段の使用の際の条件の透明性に依存するが、発行者及び使用者の義務が明瞭かつ公正        
に負担されることも必要である。                                                          
                                                                                        
  88年の委員会勧告(Commission Recommendation 88/590/EEC of 17 November 1988             
concerning payment systems, and in particular the relationship between card-holder      
and card issuer)は支払カードその他の機器の発行者及び保有者の間の関係に関する最低        
限の基準を定めた。88年勧告の見直しは次の2つの理由で時機を得ている。                     
                                                                                        
  第一に、次のことに関係者が関心を示している。                                          
                                                                                        
・支払手段の紛失や盗難の際の関係者各人の責任の範囲、及び紛争の際の立証責任            
                                                                                        
・ホーム(テレホン及びコンピュータ)バンキング機器及び前払手段をより効率的にカバー        
する必要性                                                                            
                                                                                        
・より一般的には、すべての支払手段及び効率的な補償手続に関する包括的な情報の利用        
可能性                                                                                  
                                                                                        
  第二に、まったく新たな商品(すなわち、電子マネー)が88年勧告が採択された以降に開        
発されてきた。電子マネーは未だに揺籃期にあるとすれば、成長を阻害しないよう負担の        
大きい条件を課すことを避けることが重要である。このために、新たな勧告の適用範囲は、      
顧客の口座に関連するというその特徴により、顧客保護の必要性が強い、価値の再充填が        
可能な手段のみを範疇としている。                                                        
                                                                                        
  委員会は電子マネーには最も直接的に関連する事項(すなわち、事前の条件の透明性、い       
くらかの責任、補償手続)だけが適用されると判断している。しかしながら、電子マネーの       
発行体がリモートアクセス商品の条件を適用すると自主的に判断し、より高い消費者保護        
を達成することをさまたげない。                                                          
                                                                                        
今後の方向                                                                            
                                                                                        
  88年勧告の最新版は委員会諮問委員会(the Commission's advisory committees)及びEMI       
の意見を考慮するために用意されている。                                                  
                                                                                        
  本報告に付属している、新たな勧告は従来のものを修正及び補完したものである。            
                                                                                        
・それは、透明性のための包括的条件、すなわち、消費者に事前・事後に知らさせる必要        
がある最低限の情報を含んでいる。                                                        
                                                                                        
・より透明性を向上させる目的を支えるため、関係者各人の義務と責任を明確にしている。      
                                                                                        
・商品及びサービスに関連する顧客の苦情に取り組むため、補償手続を求めている。            
                                                                                        
  98年12月31日までに、委員会は次のことを要請する。                                      
                                                                                        
・電子的支払手段の発行者に対しては、新たな勧告で決められた条件にしたがって行動す        
ること                                                                                  
                                                                                        
・各国に対しては、勧告にしたがって、発行者と使用者の間の紛争を解決する適切かつ効        
率的な手段を確立すること                                                                
                                                                                        
  委員会はその受入状況と98年末の間の進捗を注意深く見守る(monitor)。98年末で履行         
状況の調査も行う。新たな勧告が十分に履行されていなければ、委員会はこの分野の指令        
(a Directive)を提案する。                                                               
                                                                                        
電子的支払手段による取引における発行者と保有者の関係に関する委員会勧告                  
                                                                                        
EU委員会は以下のとおり勧告する(注・前文は省略した)。                                    
                                                                                        
第1章  範囲と定義                                                                       
                                                                                        
第1条  範囲                                                                             
                                                                                        
1. 勧告は次の取引に適用される。                                                         
                                                                                        
(a) 金融機関により指図・実行されるものを除く、電子的支払手段(electronic payment         
instrument)による資金移動                                                               
                                                                                        
(b) CD・ATM等の機器及び発行者あるいは加盟店の店舗での、電子的支払手段による現金         
引落し並びに電子マネー機器(electronic money instrument)への価値充填(及び払戻し)         
                                                                                        
2. 第1項にかかわらず、第4条(1)、第5条(b)2-3号、第6条、第7条(2)(c)(d)(e)1号、            
第8条(1)(2)(3)、第9条(2) は電子マネー機器による取引には適用されない。しかしなが         
ら、電子マネー機器が保有者の口座にリモートアクセスして価値を充填する(及び、払い戻       
す)のに使われる場合には、勧告は適用される。                                             
                                                                                        
3. 勧告は次のものには適用されない。                                                     
                                                                                        
(a) 小切手による支払                                                                    
                                                                                        
(b) 小切手による支払に関連する、カードの保証機能                                        
                                                                                        
第2条  定義                                                                            
                                                                                       
  勧告のために次の定義を適用する。                                                     
                                                                                       
(a) 「電子的支払手段」は、第1条(1)で指定された取引を保有者に行わせることができる       
機器を意味する。これには、リモートアクセス支払手段と電子マネー機器の両方が含まれ       
る。                                                                                   
                                                                                       
(b) 「リモートアクセス支払手段」は、ある場所で自らの口座にある資金に保有者をアク       
セスさせてそれによって受取人への支払が行われることができるようにし、通常、ID番号       
及び、あるいは他の同様な本人確認を要求するような機器を意味する。これには、(クレジ      
ット、デビット、オフライン・デビット、チャージのいずれのカードであれ)支払のための      
カード、並びにテレホン及びホームバンキング機器が含まれる。                             
                                                                                       
(c) 「電子マネー機器」は、ストアドバリュー・カードであれコンピュータのメモリであ       
れ、電子的に価値単位が貯蔵されており、第1条(1)で特定された取引を保有者に行わせる       
ことができる、リモートアクセス支払手段以外の価値の再充填が可能な(reloadable)支払       
手段を意味する。                                                                       
                                                                                       
(d) 「金融機関」は、理事会規則(EC)No 3604/93の第4条(1)で定義されている機関を意         
味する。                                                                               
                                                                                       
(e) 「発行者」は、その業務の過程で、結ばれた契約にしたがって支払手段を利用可能に       
した者を意味する。                                                                     
                                                                                       
(f) 「保有者」は、発行者との間で結ばれた契約にしたがって支払手段を保有する者を意       
味する。                                                                               
                                                                                       
第2章  取引のための条件の透明性                                                        
                                                                                       
第3条  電子的支払手段の発行及び使用に適用される条件に含まれる最低限の情報              
                                                                                       
1. 契約締結時あるいは電子的支払手段が配送される以前の然るべき時に、発行者は保有者      
に対して電子的支払手段の発行及び使用に適用される契約上の条件(以下、条件)を知らせ       
る。条件は契約の準拠法を示す。                                                         
                                                                                       
2. 条件は、分かりやすい言葉で、かつ、容易に理解できる様式で書かれて(適当であれば、     
電子的な方法による場合も含む)おり、少なくとも公用語あるいは電子的支払手段が提供さ      
れている国の言語で利用可能である。                                                     
                                                                                       
  条件には少なくとも次のことが含まれている。                                           
                                                                                       
(a) 電子的支払手段に関する記述。適当であれば使用される保有者の情報通信機器に関す       
る技術的な条件及びそれを使うことができる方法、並びに、もしあれば適用される限度額       
を含む。                                                                               
                                                                                       
(b) 保有者及び発行者のそれぞれの義務と責任の記述。それには電子的支払手段及びそれ       
を使えるようにする方法(例えば、ID番号など)を安全に保持するために保有者がとらねば       
ならない合理的な手段の記述が含まれる。                                                 
                                                                                       
(c) 当てはまる場合には、保有者の口座から引き落とされる通常の期日、あるいは保有者       
が発行者に口座を持たない場合、インボイスの通常の期日。                                 
                                                                                       
(d) 保有者が支払う料金の性格。特に、当てはまる場合には、次の料金の詳細を含む。         
                                                                                       
  - 加入及び年間の料金                                                                 
                                                                                       
  - 特定の取引のために保有者が発行者に支払う委託料金                                   
                                                                                       
  - 適用される利息(計算の方法を含む)                                                   
                                                                                       
(e) 保有者が異議を申し立てられる期間、並びに、保有者が利用できる補償・異議申立手       
続及びそれにアクセスする方法の表示。                                                   
                                                                                       
4. 電子的支払手段が外国の取引(国外での発行/加入)で利用できる場合、保有者には次の       
情報も知らされる。                                                                     
                                                                                       
(a) 外貨での取引に課せられる料金の表示(適当であれば、そのレートを含む)                 
                                                                                       
(b) 外貨での取引を交換するために参照する為替レート(レートを決める日も含む)             
                                                                                       
第4条  取引に伴う情報                                                                  
                                                                                       
1. 発行者は保有者に電子的支払手段による取引に関連する情報を知らせる。容易に理解で      
きる様式で書かれる(適当であれば、電子的な方法による場合も含む)、その情報には少な       
くとも次のものが含まれる。                                                             
                                                                                       
(a) 保有者が取引を確認できるレファレンス。それには適当であれば取引の相手方に関す       
る情報が含まれる。                                                                     
                                                                                      
(b) 勘定する通貨での保有者から引き落とされる取引金額、及び、適当であれば外貨での       
取引金額                                                                               
                                                                                       
(c) 特定の取引に適用される料金金額                                                     
                                                                                       
  発行者は外貨での取引を交換するために使用する為替レートも知らせる。                   
                                                                                       
2. 電子マネー機器の発行者は過去5回の取引及び価値貯蔵残高を照合できることを保有         
者に知らせる。                                                                         
                                                                                       
第3章  契約参加者の義務と責任                                                          
                                                                                       
第5条  保有者の義務                                                                    
                                                                                       
保有者は、                                                                             
                                                                                       
(a) 電子的支払手段をその発行及び使用に関する条件にしたがって使用する。特に、保有       
者は電子的支払手段及びそれを使えるようにする方法(例えば、ID番号など)を安全に保持       
するためにあらゆる合理的な手段をとる。                                                 
                                                                                       
(b) 次のことに気がついた時には速やかに発行者(あるいは、発行者が指定する者)に届け       
出る。                                                                                 
                                                                                       
  - 電子的支払手段あるいはそれを使えるようにする方法の紛失あるいは盗難                 
                                                                                       
  - 自らの口座における無権限取引の記録                                                 
                                                                                       
  - 発行者が口座を保持する時のエラー・異常                                             
                                                                                      
(c) 特に電子的支払手段、あるいはそれと共に携帯するものに、ID番号などを容易に分か       
る形で記録しない。                                                                     
                                                                                       
(d) 指図が行われた時に金額が確定していない場合を除いて、電子的支払手段による指図       
は撤回しない。                                                                         
                                                                                       
第6条  保有者の責任                                                                    
                                                                                       
1. 保有者は、届出の時まで、150ECU(注・約2万円)を超えない範囲まで電子的支払手段の       
紛失及び盗難の結果生ずる損失を負担する。但し、重大な過失、第5条(a)(b)(c)の違反、       
あるいは不正がある場合は、そのような限度額は適用されない。                             
                                                                                       
2. 故意の場合を除いて、第5条(b)に要求されているように発行者(あるいは発行者が指定       
した者)に届け出るとすぐに、発行者はそれ以降電子的支払手段の紛失あるいは盗難の結果      
生ずる損失に責任を負わない。                                                           
                                                                                       
3. 第1項及び第2項にかかわらず、それ自体で物として存在しない、あるいは電子的に識        
別されない状況で支払手段が使われる場合には保有者は責任を負わない。秘密の番号ある       
いは他の同様の本人確認の使用それ自体では保有者に責任を課するには十分でない。           
                                                                                       
第7条  発行者の義務                                                                    
                                                                                       
1. 発行者は、保有者が引き落とすことを選んだ場合にそうすることができる十分な変更通      
知が各人に行われることを前提に、条件を変更できる。少なくとも1カ月が条件として指        
定されるが、それ以降は保有者は引き落とさなかった場合には条件を受け入れたとみなさ       
れる。                                                                                 
                                                                                       
  しかしながら、現行利息の変更は上記の前半の規定は適用されず、変更の発表に指定さ       
れた期日に発効する。この場合、契約を撤回する保有者の権利を害さないように、発行者       
は可能な限り速やかに保有者各人に知らせなければならない。                               
                                                                                       
2. 発行者は、                                                                          
                                                                                       
(a) 保有者に対しての場合を除いて、保有者のID番号などを公開しない。                     
                                                                                       
(b) 保有者が既に保持している電子的支払手段の代替である場合を除いて、求められてい       
ない電子的支払手段を配送しない。                                                       
                                                                                       
(c) 第1条(1)に参照される取引が遡って調査されエラーが修正されることができるよう         
な内部記録を十分な期間保持する。                                                       
                                                                                       
(d) 保有者が第5条(b)に要求される届出を行えるような適当な方法が利用可能であるよ         
うにする。届出が電話で行われる場合、発行者(あるいは発行者の指定する者)は保有者に       
届け出たことを証明する方法を提供する。                                                 
                                                                                       
(e) 第1条(1)に参照される取引に関して保有者と争う時に、保有者が行う反証を妨げては       
ならず、次のことを証明する。                                                           
                                                                                       
  - 取引が適切に記録され口座に入れられたこと                                           
                                                                                       
  - 取引が技術的な故障あるいはその他の欠陥により影響を受けなかったこと                 
                                                                                       
第8条  発行者の責任                                                                    
                                                                                       
1. 発行者は、第5条、第6条、第7条(2)(a)(e)にしたがって、次のことに責任を負う。          
                                                                                       
(a) 取引が発行者が使用のために認めたものでない機器などで始められたのでないことを       
前提として、発行者が直接あるいは排他的に支配していない機器などで始められる場合で       
も、第1条(1)に参照される保有者の取引の不履行あるは不完全な履行                         
                                                                                       
(b) 保有者の口座を保持する時に、発行者に帰属するエラーあるいは異常とともに、保有       
者の権限によらない取引                                                                 
                                                                                       
2. 第3項は妨げないが、第1項に示される責任の金額は次の通りである。                      
                              
(a) 不履行、あるいは不完全な履行の金額、並びに、もしあればその利息                     
                                                                                       
(b) 無権限の取引が行われる以前の立場を保有者に回復させるのに必要とされる金額           
                                                                                       
3. さらなる金銭上の結果、特に補償金が支払われるべき損害の範囲に関するものは、発行      
者と保有者の間で結ばれた契約の準拠法にしたがって、発行者が負担する。                   
                                                                                       
4. 故障が保有者の故意、あるいは第3条(3)(a)の違反で起こらなかったことを前提として、     
損失、あるいは不完全な履行が使用のために認められている機器などの故障に原因がある       
場合、充填された価値の損失金額及び保有者の取引の不完全な履行について発行者は電子       
マネー機器の保有者に責任を負う。                                                       
                                                                                       
第4節  届出、紛争解決及び結び                                                          
                                                                                       
第9条  届出                                                                            
                                                                                       
1. 発行者(あるいは発行者に指定された者)は保有者が電子的支払手段の紛失あるいは盗        
難をいつでも届けられる方法を知らせる。                                                 
                                                                                       
2. 発行者(あるいは、発行者が指定する者)は、届出を受けると、保有者に重大な過失ある      
いは不正がある場合でも、電子的支払手段のさらなる使用を止めるためのあらゆる努力を       
払う義務がある。                                                                       
                                                                                       
第10条  紛争解決                                                                       
                                                                                       
  各国には、保有者と発行者の間の紛争解決のための適切かつ効率的な方法を確保するこ       
とが求められている。                                                                   
                                                                                       
第11条  結び                                                                           
                                                                                       
  各国には、遅くとも98年12月31日までに、電子的支払手段の発行者が第1条から第9           
条にしたがって行動することを確保することが求められている。                             
                                                                                       
ブラッセルにて                                                    委員会のために       
                                                                                       
                                                    Mario MONTI  委員会のメンバー      
                                                                                       
                                                                                       

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