第八 違法行為等の是正等

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|1  違法行為等の是正                                           |
|  (1) 大蔵大臣は、日本銀行又はその役職員の行為が法令・定款に違 |
|    反し又はそのおそれがある場合において、日本銀行に対し、当該 |
|      行為の是正のため必要な措置を講ずることを求めることができ |
|    る。                                                       |
|  (2) 日本銀行は、上記(1)の求めがあったときは、速やかに当該行為 |
|    の是正その他の政策委員会が必要と認める措置を講じるものとす |
|    る。                                                       |
|    ※  広範な業務命令権及び日本銀行監理官制度を廃止する。     |
|                                                               |
|2  大蔵大臣の求めによる監査等                                 |
|  (1) 大蔵大臣は、日本銀行又はその役職員の行為が法令・定款に違 |
|    反し又はそのおそれがある場合において、日本銀行の監事に対し |
|    て、当該行為その他の必要な事項について監査し、及びその結果 |
|    を報告すべきことを求めることができる                       |
|  (2) 日本銀行の監事は、上記(1)の求めがあったときは、速やかにそ |
|    の事項について監査し、その結果を大蔵大臣及び政策委員会に報 |
|    告するものとする。                                         |
|    ※  大蔵大臣の立入検査権を廃止する。                       |
|  (3) 大蔵大臣は、日本銀行の業務の執行の状況に照らし必要がある |
|    と認めるときは、日本銀行に対し報告又は資料の提出を求めるこ |
|    とができる。                                               |
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  (説明)                                                        
                                                                  
  1.(現行の日本銀行の監督)                                  
                                                                
      現在、日本銀行法においては、主務大臣に業務命令権・立入検査
    権等を含む広範な監督権限が認められるとともに、日本銀行監理官
    に、日本銀行の業務及び財産についての検査並びに報告の徴求、諸
    般の会議への出席と意見の表明の権限が与えられている。また、日
    本銀行には、業務運営をチェックする機関としての出資者総会が存
    在しない。                                                  
                                                                
      なお、諸外国においても、中央銀行は、公的法人とみなされてお
    り、中央銀行に対する監督についても、大蔵大臣が業務命令を発出
    しうるイギリス、金融政策以外の事項につき監理官による監督が行
    われるフランス、議会の監督(oversight) 下に置かれている米国、
    憲法上の機関で他の監督を受けないドイツ等、各国における政治的
    枠組みを前提に、様々な方式がとられているところである。      
                                                                
                                                                
  2.(日本銀行の独立性・透明性に配慮した監督のあり方)        
                                                                
    (1)(監督対象の限定)                                        
        今回の日本銀行改革において、日本銀行の金融政策の独立性の
      強化が重視されていることから、政府による日本銀行の監督につ
      いて、必ずしも、他の特殊法人・認可法人と同様の監督を行う必
      要はないものと考えられるが、日本銀行が公共的使命を持った機
      関であることから、全く外部からの監督を受けることのない機関
      となることは適当ではないと考えられる。                    
                                                                
        こうしたことから、政府の監督権限のうち、広範な業務命令権
      は廃止し、日本銀行の独立性の確保に配慮した必要最小限のチェ
      ックである適法性(法令・定款違反)の監督に限定することが適
      当である。                                                
                                                                
    (2)(違法状態の是正)                                        
                                                                
        大蔵大臣は、日本銀行又はその役職員の行為が法令又は定款に
      違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、原則として、
      監事に対して、当該行為等の監査及びその結果報告を求め、その
      報告に基づき、日本銀行に対し、当該行為の是正のため、必要な
      措置を求めることができることとするのが適当である。        
        日本銀行は、大蔵大臣の求めがあったときは、速やかに当該行
      為の是正その他の政策委員会が必要と認める措置を講じることと
      する。                                                    
                                                                
    (3)(日本銀行監理官の廃止)                                
                                                                
        日本銀行監理官制度は、フランスをはじめとする欧州諸国にお
      いて中央銀行の監督のために設置されている監理官制度と同様の
      制度であり、明治15年の日本銀行設立以来、存続してきたもの
      であるが、今般の日本銀行改革においては、日本銀行の独立性の
      向上の観点から、日本銀行監理官を廃止することが適当である。  
                                                                
    (4)(立入検査権の廃止及び日本銀行監事の監査機能の活用)    
                                                                
        現行日本銀行法は、大蔵大臣が、業務及び財産の状況に関して
      検査を行うことを認めているが、日本銀行監事を活用することに
      より、大蔵大臣が自ら検査を行う必要性は減少するものと考えら
      れ、日本銀行の独立性尊重の観点から、これを廃止することが適
      当である。                                                
        今回の日本銀行法改革においては、監事の役割を明確にし、そ
      の監査機能の充実を期することとしており、法令・定款違反又は
      そのおそれがある場合においても、大蔵大臣は、直接、立入検査
      を行わず、代わりに、日本銀行監事に監査を求めることで、監事
      の監査機能の活用を図っていくことが適当である。            
                                                                

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