4.新しい金融法制・ルールの具体的な内容
 
 
(1) 当事者間の権利義務関係の明確化に係るルール(「取引ルール」)

 

○ 金融取引の特性に照らして、民法・商法等の一般私法を具体化するものとして、以下のような、金融取引の権利義務関係の明確化に係る基本的な要件・効果のルールが考えられるのではないか。
○ その場合、実質的に同一の取引行為については、同一の法的な効果(民事責任等)が発生するということを基本的な方向性とすべきとの意見があった。他方、市場機能への影響の多寡等に応じて、法的な効果に差異が生じうるとの意見もあった。

(a) 情報開示・説明等とリスクの移転

・ (a)一定の説明やディスクロージャーが行われれば、金融商品・取引に付随するリスクが移転する、(b)重要事項に関して虚偽・不実あるいは不十分な情報提供に基づいて取引が行われた場合は、当事者間でリスクは移転しない、といった、法的な要件・効果のルールを明確にしていくことが必要ではないか。
・ この場合、説明が不十分だと、取引契約の無効または取消や、損害賠償責任といった私法上の効果に繋がることになるのではないか。
・ 情報提供の内容としては、金融商品・サービスの商品性とリスクのほか、取引当事者の権利義務関係に係る事項(契約の内容、取引主体の明示、各当事者の責任範囲)等が含まれることになるか。
・ これらの具体化に際しては、商品・サービスの種類、取引主体の属性、勧誘の有無等に応じて、リスク移転の要件となる情報提供の内容・程度、およびそれぞれの法的な効果を整理していくことが必要となるのではないか。(注)
 

(注)
1.私法上の法理との関係では、民法上の信義則、不法行為責任、債務不履行、錯誤による無効、詐欺・強迫等との関係について整理が必要となろう。
2.説明義務に関する我が国の最近の判例を見ると、(a)利用者の自己責任原則を前提とした上で、(b)民法上の信義則に従い、金融機関等が必要事項を説明して初めて自己責任が妥当するものであり、(c)説明義務の程度・範囲は、商品の性格、社会的浸透度、勧誘の態様、顧客の投資経験・商品知識、購入目的等を総合判断して決定される、という考え方が基本的な傾向となっており、不法行為責任等により金融機関の損害賠償責任を認める判例も見られる。なお、金融機関の説明義務違反が認められた場合でも、顧客の側にも過失があったとして、過失相殺が適用される場合が多い。
 
(b) 分別管理と破産リスクからの遮断

・ 多種多様な金融商品が大量かつ頻繁に取引され、また、資産の管理・運用等に関して専門家による分業が進展してくると、関係当事者の破産に対して、信用リスクの所在を明確化するためのルールが必要となる。その場合、取引の類型や資産の種類等に応じた適切かつ法的に有効な分別管理の形態(信託のほか、特別勘定、別段預金等)について検討する必要があるのではないか。
・ 具体的には、一定の分別管理等(分別、公示、登録等)がなされていれば、利用者の資産は取引仲介者(ブローカー)や資産保管者(カストディアン)等のいわゆる受託者の破産リスクから遮断されるといったルールとなるか。なお、ブローカーとカストディアンでは資産等を管理下に置く期間および裁量の面で差異があり、これに応じて要件・効果ルールの内容も異なってくるか。さらに、分別管理とリスク遮断に係る説明や情報開示についても考える必要があるか。
・ 契約意思に反して十分な分別管理がなされなかったり、資産等の流用がなされた場合には、利用者の受託者に対する取戻請求権や損害賠償請求権が生じることになるのではないか。(注)
 

(注)
1.一般私法との関係では、問屋法理(主にブローカレッジの場合)、信託法理(主にアセット・マネジメントの場合)と第三者対抗要件(分別、公示、登録等)といった点について関係の整理が必要となろう。
2.今般の金融システム改革法では、信託業法の改正により、信託財産である有価証券を固有財産との分別管理を前提に公示なくして第三者に対抗できる規定等が盛り込まれている。
3.金融機関の国際倒産等、クロスボーダーの場合においては、法律面での不確実性や複雑性が特に顕著となることにも留意が必要である。
 
(c) 利益相反行為に関する責任分担

・ 金融サービスの提供においては、利用者と受託者の間、あるいは同一受託者の複数の利用者相互間の利益が衝突する場合も少なくないと考えられ、とりわけ、当事者間での情報の非対称性がある場合について、受託者と利用者の間での適切な責任配分に係るルールの内容について明確化を図っていくことが必要ではないか。
・ 利益相反行為に対しては、受託者の行為の無効、受託者に対する返還請求・損害賠償請求、不当利益の没収等が考えられるのではないか。
・ 具体的な判断に際しては、(a)利益相反の起きうる立場に身を置くこと自体を禁止するか、(b)利益相反が起きうる立場にあることを一定の手続きにより利用者に開示することを責務遂行の要件とするか、(c)実際に行われた取引がarm's lengthであればよいとするか、といった考え方について検討していくことになるか。(注)
 

(注)
1.一般私法との関係では、英米の信託法上の忠実義務(duty of loyalty )が関連が深いといえるか。また、民法の善管注意義務に係る解釈、代理人の自己取引・双方代理の問題、商法の取締役の忠実義務、社債管理会社の公正誠実義務、証券取引法・信託法・証券投資信託法・投資顧問業法・商品ファンド法における誠実公正義務や忠実義務の規定等についても関係を整理する必要があるか。
2.その場合、取引の態様(ブローカレッジ、アセット・マネジメント、カストディ、アドバイス等)や当事者の知識・経験、受託者の裁量の余地等に応じて責任範囲を考えていくことになるか。また、利益相反防止に係るルールが厳格に過ぎ、自由な取引活動が阻害されることのないように配慮することも重要ではないか。
 
(d) 受託者の注意義務に係る責任範囲

・ 金融サービスの受託者(仲介者、運用・管理者、助言者等)には、安全かつ効率的な取引および資産運用を確保する観点から、十分に思慮深く行動することを要請する、いわゆる「注意義務」が課されるのではないか。
・ 他方、その基準が曖昧であると、例えば、資産運用行為において過大なリスクをとったり、あるいは、過度に保守的になってしまうおそれがあり、受託者の注意義務の内容について明確にすることが必要ではないか。
・ さらに、受託者(一次受託者)が、自らの能力に関する判断等に応じて、第三者(二次受託者)に助言を求めたり、資産の運用・管理等を再委託する場合についても、利用者と一次受託者、二次受託者との間の権利義務関係に係るルールを明確化する必要があるのではないか。
・ 注意義務を果たさなかった結果生じた損失については、利用者に損害賠償請求権や解除権が発生することになるか。(注)
 

(注)一般法理との関係では、英米法の信託法理上の注意義務(duty of care)との関係が深いといえるか。我が国民法上の善管注意義務との関係についても整理が必要か。その場合、忠実義務との関係整理も必要となるか。
 
(e) 支配・従属、提携関係がある場合の責任分担

・ 金融商品・サービスの提供に係る分業体制の高度化が進むなかで、複数の行為者が、企業グループあるいは提携関係に基づいて、利用者に商品・サービスを提供する場合や、複数の商品・サービスが組み合わされて提供される場合が増えてくるものと予想される。このような場合の取引当事者間の権利義務関係を明確にするためのルールが必要ではないか。
・ 例えば、金融商品の販売に係るトラブルについては、販売者以外の者の販売行為への実質的な関与や販売者との関係の深さ(独立系ブローカー、子会社・孫会社、兄弟会社、業務提携者、ローン提携者、雇用者等)といった面を考慮して、責任の分担を考えていくのか。また、販売者が倒産したり過小資本である場合はどうか。契約主体や責任関係に関する説明・開示の効果についても検討する必要があるのではないか。(注)
 

(注)
1.一般私法との関係では、商法等の企業結合法制に関するルール、倒産法上の支配株主、少数株主、債権者等に係る権利ルール、法人格否認や表見代理の法理、民法上の代理・委任、使用者責任、共同不法行為等が関係してくるのではないか。また、損失負担ルールのほか、立証責任の配分についても検討が必要ではないか。
2.なお、後述の「業者ルール」にも関連するが、本年1月の金融制度調査会・銀行グループのリスク管理等に関する懇談会報告書においても、銀行グループのサービス提供における取引先の誤認防止や、グループ内取引等に関するアームズ・レングス・ルールについて指摘がなされている。

 

(2) 取引参加者全てに適用される一般的な行為ルール(「市場ルール」)

 

○ 市場機能の円滑かつ効率的な発揮を促すためには、リスクに関する十分な情報とその公正な利用が不可欠になってくると考えられ、狭義の「市場ルール」として、取引参加者全般を対象とする以下のようなルールが必要とされるのではないか。

(a) ディスクロージャー

・ 現行の証券取引法に見られるような公衆縦覧型のディスクロージャーの対象とすべき金融商品の範囲や、公衆縦覧ではなく、相対の書面交付や説明が適当と考えられる場合についての考え方の整理が必要ではないか。その際、商品の規格性・流通性、取引参加者の範囲(特定少数か不特定多数か)等に着目して判断することになるか。
・ ディスクロージャーの内容については、リスクの種類(金利、為替、株価、コモディティ等)や、金融商品の属性(資産担保型取引・企業信用型取引、直接投資・間接投資等)、取引の態様(不特定多数への公募・特定者への私募、市場型取引・相対型取引、ホールセール取引・リーテイル取引等)によって、求められる内容が異なってくるのではないか。
・ 米国のような発行開示(目論見書開示等)を中心としたルール体系とするか、あるいは、英国のような流通開示(広告、契約時の書面交付等)を中心としたルール体系を考えるか。(注)
 

(注)
1.英国では、広告等の金融商品の流通に係る行為は「投資業者」以外が行ってはならないとして、後述の「業者ルール」にリンクした一般行為規制を採用している。
2.情報通信技術の発達を受け、インターネット上での金融商品の募集等が見られるようになっており、こうした形態についても、発行開示のあり方や公募・私募の区分等についてルールの整理が求められているのではないか。また、インターネット等の電子媒体を通じた継続開示・流通開示のあり方についても整理が必要か。
 
・ ディスクロージャー・ルールを強制する範囲をどうするか。最低限のディスクロージャーを義務付けた上で、追加的な情報開示については、市場での評判等を通じた自己規律に委ね、取引参加者の自主的な対応を尊重していくべきという見方についてどう考えるか。(注)
 
(注)利用者の投資意思決定に関して、一次的な開示情報に全てを依存することは必ずしも容易ではなく、当該情報を利用者に分かり易く伝える情報プロバイダー等の競争メカニズムを通じた充実(情報の間接流通)も望まれるのではないか。また、開示情報の正確性・信頼性を高める上で、会計監査等の役割も重要ではないか。
 
(b) 公正取引ルール

・ 公正な取引の確保は、市場参加者の自己責任の確保や、効率的な価格形成(さらには市場メカニズムを通じた効率的な資源配分)にとって極めて重要と考えられ、全ての市場取引関係者が遵守すべき公正取引ルールが必要となる。その場合、私人間の利害調整を超えて、公共財ともいえる市場の機能向上という観点から必要とされるルールはどのようなものか。
・ リスクに関する情報生産・仲介という金融取引の本質に照らして、情報の歪曲や情報優位の濫用等の行為を排除すべきであり、インサイダー取引、相場操縦、風説の流布、詐欺的行為(偽計・強迫)等の規制が考えられ、現行証券取引法の第六章「有価証券の取引等に関する規制」の規定が参考になるのではないか。

(c) 価格形成機能に関するルール

・ 各種の市場(取引所のような組織化された市場、あるいは、店頭等の相対型取引の市場)において形成される価格や金利は、幅広く情報として共有されることにより、金融取引の円滑化・効率化に資するものであり、取引への参加等による価格形成への関与は、社会的な一定の責任を伴うと考えることができる。
・ 後述の「業者ルール」に分類することも可能であるが、とりわけ、組織化された市場(取引所)の運営者や値付け業務を行うマーケット・メイカー等については、価格形成機能への関与の大きさに着目して、その適切な運営を確保するためのルール(価格情報・取引情報の公開やオファー・ビッドの連続的な呈示等)が求められるのではないか。
・ 情報通信技術の発達等により、コンピュータ・ネットワークを用いたPTS(私設取引所:proprietary trading system)が登場する等、取引チャネルの多様化が進みつつあるなかで、「取引所」に対するルールとブローカー・ディーラー(マーケット・メイカーを含む)に係る「業者ルール」との関係を整理していくことも必要ではないか。
・ このほか、不特定多数あるいは広範囲の投資者等に対する情報提供を業として行う主体(格付・評価機関、情報ベンダー等)についても、市場での価格形成への影響力の大きさに配慮して、何らかのルールを考える必要があるか。あるいは、市場メカニズムによる選別に委ねるべきか。

 

(3) 業者に対する行為ルール等(「業者ルール」)

 

○ 基本的には、全ての取引参加者を対象とする「取引ルール」と「市場ルール」の実効性が担保されるならば、それにより十分に公正で効率的な金融取引と市場機能の発揮が実現されうるとの見方もあろうが、現実の金融取引においては、とりわけリーテイル分野について、情報コスト・監視コスト等が存在することから、ルールの実効性確保の上でこれらのルールのみでは不十分となるおそれがあり、「金融サービス」行為を反復・継続して行う「業者」に対する行為規制および一定の参入要件を課すことにより、取引の公正確保と市場機能の維持を図ることが必要ではないか。
○ 今後の方向性としては、業態毎のルールではなく、金融の機能面に着目したルールとして、「金融サービス」行為を業として行う「金融サービス業者」を名宛人として、それぞれの行為類型毎に所要の規制・ルールを整備していくことが考えられるのではないか。
○ ルールの強行性の有無や制裁・是正措置の程度、金融イノベーションへの柔軟な対応等との関係も踏まえ、どのようなレベルでルールを規定すべきか(法令、監督当局によるガイドライン、民間の自主ルール等)。その場合、業者規制で規定すべき範囲と、自己規律で対処すべき範囲を如何に画するのか。
○ なお、「業者ルール」の内容としては、前述の「取引ルール」における要件・効果ルールの要件部分(〜すれば)を「金融サービス業者」の行為義務(〜しなければならない)として規定したものが基本形となると考えられるが、その対応関係については、ルールのエンフォースメントのあり方も念頭に、内容的にパラレルとなるものとそうでないものとを整理していく必要があるか。(注)
 
(注)例えば、「業者ルール」の内容は、「取引ルール」のうち業者が最低限遵守すべきものや適用要件が明確なものに限って義務化したものとなることが考えられるか。なお、こうした下で、「取引ルール」に伴うリーガルリスクを踏まえた民間の保守的な自主ルール等が確立されれば、実質的には「業者ルール」が「取引ルール」に相当程度パラレルになる可能性もあるか。他方、「業者ルール」が幅広く規定される下で、これを根拠として民事ルールとしての「取引ルール」が順次形成・確立されていくプロセスも考えられるのではないか。
 
(a) 販売・勧誘行為に関するルール

i 説明義務

・ 販売業者の説明義務を明示するとともに、その内容を明確化し、これに違反する場合には行政当局等による是正・制裁措置を加えるためのルールが必要ではないか。

・ 説明義務の具体的な内容については、商品性、リスクの内容、セーフティネットの適用の有無、取引当事者の明確化(売買、仲介、斡旋等の区別、契約主体、保証提供者や融資提供者等との関係)等に関する説明が必要となるか。また、虚偽の説明や誤解を招くような説明(断定的な判断の提供等)については、詐欺的な行為として禁止すべきではないか。(注)
 

(注)我が国の現行法制における金融商品・サービスに関する説明義務ルールとしては、証券取引法、証券投資信託法、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法等に取引概要等を記した書面交付義務の規定がある。また、金融システム改革法においては、銀行の非預金商品の取扱いの拡大等に伴い、銀行の情報提供義務に関する規定が盛り込まれている。
 
・ 取引の性質(商品の複雑性、顧客の資質、勧誘の有無等)に応じてルールの内容にどのような差異を設けるべきか。説明と助言行為との境界は如何に画されるか。アフターケア(契約締結後の損益状況の提供ないし報告等)の義務についてどのように考えるべきか。
・ 個別の販売行為における説明内容に係るルールのほか、適切な販売行為が行われるための体制確保(リスク管理体制、コンプライアンス体制、研修・教育、マニュアルの整備等)といった業者の内部管理面に対するルールについてはどのように考えるべきか。
・ 適合性原則
・ 十分な利用者保護を図るためには、説明義務に加えて、業者に対し利用者の知識・経験、財産力、投資目的等に適合した取引を行わなければならない、あるいは適合しない顧客に対して販売してはならないとする、いわゆる「適合性(suitability )原則」に係るルールも必要となるのではないか。(注)
 
(注)
1.説明義務と適合性原則の関係につき、欧米では、前者をappropriateness 、後者をsuitability として概念的に区別されており、前者が「買い手責任」に、市立脚して、業者が利用者に適切な情報提供を行うことが、業者自らのリーガル・リスクやレピュテーショナル・リスクの削減に繋がることにより、結果的に利用者の保護も促されるという考え方であるのに対し、後者は「売り手責任」の考え方に立脚して、利用者の保護を主たる目的として、そのために必要とされる調査等について業者に義務を課す(受託者的な注意義務が発生する)ものであるという点で、本質的な相違があると考えられている。
2.適合性に関しては、上記のような顧客に対する適合性という観点に加え場機能にとって有益な投資判断を確保する上での、市場に対する適合性という観点もあるとの意見があった。
3.我が国の現行法制においても、証券取引法に適合性原則に係る規定がある。
 
・ どのような金融取引について、適合性原則を適用する必要があるか。基本的には、利用者の知識・経験と商品の複雑性等に照らして、説明義務のみによっては情報の非対称性を十分に軽減できないような場合が対象となるか。適合性原則をあまり広範に適用すると、利用者の多様な商品・サービスへのアクセスが阻害されたり、業者側が金融商品・サービスの提供に二の足を踏むことに繋がる可能性もあり、説明義務の強化を中心に検討し、適合性原則の適用範囲は必要最小限としていくとの意見もあるがどうか。なお、業者から利用者に勧誘する場合と、利用者から業者に照会する場合とでは、適合性原則の適用に違いがあってもよいのではないかとの意見もあった。
・ 説明義務と同様に、顧客の適合性に配慮した適切な販売体制の確保といった業者の内部管理面に対するルールについてはどのように考えるか。
・ 助言行為との関連をどのように整理すればよいか。販売業者が助言行為を併せ行うと見做される場合には、利用者の単なる適合性の判断(消極的に利用者に適さない取引は排除する)に係る「注意義務」を超えて、利用者にとって最適なアドバイスを行うべき義務を負うことを意味するのではないか。
・ 適合性原則の前提として、利用者に関する一定の情報を得る必要があり、業者の利用者に関する調査義務が求められることになるのではないか。そうした場合、情報の具体的な内容、収集・管理方法に関しても検討が必要になるのではないか。さらに、こうした情報の利用とプライバシー保護との関係をどのように整理していくべきか。(注)
 
(注)適合性原則に限らず、金融商品・サービスの提供全般に関して、データベース・マーケティングに代表されるような顧客情報を活用した利用者ニーズへの積極的な対応と、個人情報保護およびこれに付随するプライバシー侵害や利益相反行為の問題とのバランスについては、新しい金融法制・ルールのあり方とともに、今後の重要な検討課題ではないか。
 
iii  勧誘規制、広告規制

・ 業者サイドからの不適切な勧誘行為が利用者被害を惹き起こすおそれがあることを考えると、説明義務や適合性原則に加えて、勧誘行為自体について何らかの規制が必要ではないかという意見があるがどうか。例えば、英国の金融サービス法に類似規定が見られるように、一定のリスクを有する金融商品等については、不招請の勧誘(unsolicited call:利用者からの依頼なしに業者が勧誘を行うこと)を禁止することが考えられないかとの意見があった。
・ 一方、勧誘行為の禁止については、適合性原則の場合と同様に、利用者の多様な商品・サービスへのアクセスを阻害する面もあり、勧誘行為自体を一律に制限するのではなく、詐欺的な勧誘や威迫・困惑的な勧誘、あるいは優越的地位を濫用した勧誘行為等・制限は禁止する一方で、それ以外のケースについては、業者が勧誘行為を行う場合には、説明義務や適合性原則を適用することで対処できるのではないかとの意見もあるがどうか。
・ 広告行為についても、広義に捉えれば説明ないし勧誘行為に含まれると考えられ、虚偽あるいは誤認を招くような広告行為を禁止することが必要との意見があるがどうか。一方で、広告行為は、多くの場合に不特定多数の利用者を対象に行われ、ディスクロージャーと共通する部分があることも念頭に置いて、広告規制は必要最低限のルールとするとの意見もあるがどうか。(注)
 

(注)
1.証券取引法、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法等には、詐欺的あるいは過度の勧誘の禁止規定がある。また、投資顧問業法、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法等には、広告規制に関する規定がある。
2.広告規制・ルールの内容については、競争制限的な内容にならないよう留意すべきとの指摘もあった。
3.インターネットを通じた勧誘・広告については、その特性に応じて、ルールの対象範囲の明確化や行為ルールのあり方を考えていく必要があるのではないか。
 
(b) 分別管理義務

・ 金融資産の仲介ないし管理等においては、破産リスクの適切な遮断が「取引ルール」として求められるが、こうした行為を担う業者に対しては、分別管理を「業者ルール」として義務付けることにより、利用者を業者の破産リスクから確実に隔離し、金融取引に係る信用リスクを明確化することが必要ではないか。
・ 一方、分別管理には一定のコストを要することから、取引の性質(仲介か管理か等)や金額、売買頻度等に照らして、適切な分別の形態について整理していく必要があるのではないか。金融商品・サービスの種類や取引参加者の資質等に応じて、分別管理を義務付けるのではなく、分別管理の有無や形態について利用者への開示・説明を義務付けることも考えられるのではないか。(注)
 

(注)
1.今般の金融システム改革法では、証券会社の預り資産の分別管理や証券・金融先物取引に係る証拠金の分別管理の義務化(証券取引法、金融先物取引法の改正)等が盛り込まれている。
2.資産管理サービスを提供する業者の破綻に際して、分別管理の不備等により顧客資産が返還されない場合について、「補償ファンド」を設け、利用者保護を強化することが考えられる。その場合、補償される金額の範囲や資産・取引の種類、取引主体の属性・範囲、費用負担の構造、処理手続き等について、モラルハザードの問題等も念頭に、透明性の高いルールや十分な情報提供等により、予め明確化することが重要ではないか。金融システム改革法においても、投資者保護基金の創設等が図られている。
 
(c) 利益相反防止義務(忠実義務)

・ 行為類型別に見ると、まず、「販売」を行う業者については、利害関係人が仕組み・発行する金融商品の販売を行う場合等について、利用者との間での利益相反行為を禁止ないし制限することが必要ではないか。(注)また、こうした金融商品の販売に際しての融資(バックファイナンス)に関して、利益相反の問題を増幅させる可能性を念頭に何らかのルールが必要という考え方についてはどうか。
 

(注)
1.例えば、証券取引法では、子会社等特定利害関係人に係る利益相反の防止ルール、取引条件等に関するアームズ・レングス・ルール等を規定している。
2.なお、利益相反防止に係るファイアーウオール規制の内容については、競争促進という視点にも十分配慮すべきとの指摘があった。
 
・ 「仲介(ブローカレッジ)」を行う業者が、自己売買(ディーリング)を併せて行う場合に、自己の売買を顧客の注文に優先させる、自己の売買を仲介業者に有利な条件で顧客の注文に付け合わせる等により、利用者を害するおそれがあり、こうした行為の禁止ないし制限が必要ではないか。(注)
 
(注)証券取引法では、証券会社に対して、取引態様(自己売買か仲介か等)の明示義務や向い呑みの禁止が規定されている。
 
・ 「助言」サービスを提供する業者については、顧客と自己との間での売買取引や自己の保有する金融商品の顧客への推奨(いわゆるスキャルピング)等の禁止ないし制限が必要ではないか。また、手数料の自由化が進むなかで、助言者が顧客のためにブローカーに売買注文を出す見返りに自己または他の顧客のための投資情報を受領し、当該情報の対価を売買仲介手数料の一部として支払う場合(いわゆるソフトダラー)についてどのように考えるか。(注)
 
(注)投資顧問業法や商品ファンド法では、助言者の顧客との間の自己取引やスキャルピング行為の禁止、利益相反の開示等が規定されている。なお、米国では、1940年投資顧問法に係る判例等を通じ、助言者は個人的な利害関係を完全かつ率直に開示しなければならないと解されており、その具体化の一例として、投資アナリスト団体の行為基準において、ソフトダラーに関し、情報受領の事実を顧客に開示しなければならないとのルールが見られる。
 
・ 「資産運用」サービスに係る業者についても、利益相反の防止の観点から、ファンドとの間の自己取引、利害関係者の発行した証券等のファンドへの組み込み、自己とファンドの債権の競合、ファンドの取引に係る自己勘定での報酬受入れ(キックバック)等について、何らかの禁止ないし制限の必要性について検討すべきではないか。また、忠実な運用指図を遂行する観点から、ファンドに損失が発生しない場合でも、利用者に無断での運用方針に背反する運用行為を禁止ないし制限する必要があるのではないか。(注)
 
(注)信託法や証券投資信託法では、自己取引の禁止や忠実な運用指図等に関する義務規定がある。なお、信託法(第22条)による信託財産と自己の固有財産との間の取引の禁止は、資産運用・管理サービスの観点からは厳格に過ぎる面があり、金融取引の実態に相応しい利益相反行為に関するルールが必要ではないかとの意見も聞かれた。
 
・ 以上のような利益相反等の忠実義務違反の防止に係る業者への行為義務規制としては、\利用者と利益相反的な立場に身を置くこと自体について禁止する、]利益相反的な立場にあることを利用者に開示することを義務付ける、^サービスの対価の関係を明示する、_実際に利益相反行為を行うことを禁止する、`利益が競合する場合は受託者に当該利益の分別管理を義務付ける、等の選択肢について検討する必要があるのではないか。
 また、忠実義務違反は、情報優位性の濫用・悪用に起因する場合が多く、業者の助言部門ないし運用部門と自己売買部門との間の情報隔壁(チャイニーズ・ウオール)等の内部管理体制に関する義務・規制も考えられるか。なお、その一方で、情報隔壁の実効性については懐疑的な意見も見られる。
・ 忠実義務については、受託者に重い責任を課すものであり、必要に応じて義務規定に適用除外を設ける等、取引の実態や実務上の実行可能性に配慮していくことも重要ではないか、受託者の裁量性の度合いに応じて、義務の内容や制裁措置に強弱を付けていく必要があるのではないか、等の意見もあるがどうか。

(d) 資産運用サービス等における注意義務

・ 資産運用サービス業者に対しては、プルーデントな運用(安全性だけでなく収益性も十分に考えた思慮深い運用)を確保するためには、リスクを一定範囲で抑制するための行為義務を課すとの考え方もあるが、資産運用の手法・形態は多種多様であり、運用の自由度を確保し、効率的な運用を可能とするためには、予め運用対象を制限するような基準を設けることは必ずしも適切ではないのではないか。運用の方針やパフォーマンスに関して、適時に文書等により利用者・投資者に開示することを義務付けること等も考えられるか。(注)
 

(注)
1.具体的な規制方法としては、(a)運用対象を安全性の高い資産に限定ないし安全資産を一定比率以上にする(リーガル・リスト方式、従来までの年金運用に係る5・3・3・2 規制等)、(b)分散投資を行う、(c)資産ポートフォリオ全体としてのリスクがリターンに見合ったものとする、等の方法がある。
2.米国では、信託法理の発展の過程で、当初はリーガル・リスト方式あるいは厳格な分散投資という考え方を重視していたが、運用の柔軟性・効率性が損なわれるという観点から、1974年ERISA法(Employee Retirement Income Security Act of 1974:従業員退職所得保障法)や1990年の信託法第三次リステイトメント(判例法を中心に確立した法理を条文形式でまとめたもの)において、モダン・ポートフォリオ理論(上記の(c))を重視する考え方へと変遷してきている。
3.我が国の場合、証券投資信託法には、投信委託会社の行為準則として分散投資義務が規定されている。また、証券投資信託法、投資顧問業法、商品ファンド法、特定債権法等には、運用報告書の作成・交付義務等が規定されている。
 
(e) 他者への委託等に関する行為義務

・ 金融サービスに係る専門化・分業体制の高度化が進展するなかで、資産の運用・管理等について、専門性等の面で比較優位を持つ他者への委託・再委託等を可能にすることが望ましいのではないか。その場合、安易ないし無責任な外部委託を制限するため、利用者への外部委託に関する開示や再委託者との間の責任関係の明確化といった一定の手続き等を義務化することが必要ではないか。(注)
 

(注)証券投資信託について、従来、運用指図の外部委託は禁止されてきたが、金融システム改革法では、特定の信託財産につき、投信委託会社が、運用の指図に係る権限の全部または一部を再委託できることとし、利用者保護の観点から、その旨を信託約款および受益証券に記載・開示するとの規定が盛り込まれている。
 
(f) 仕組み行為に関するルール

・ 集団投資スキームや証券化商品について、その仕組み(ストラクチャリング)行為は、商品開発の創意工夫が行われる部分であると同時に、(a)資産の運用・管理、(b)投資成果の利用者への配分、(c)利用者の運用者等受託者に対するガバナンス機能の発揮等に大きく影響するものであり、こうした行為について、イノベーションを阻害しない範囲で、最低限のルールが必要との意見があるがどうか。
・ 具体的には、信託等の契約型ファンドについては約款等の認可・承認により、会社型のファンドについては設立時の定款等の認可・登録により、その適格性を担保することが考えられる。一方で、自由な商品開発を阻害しない観点からは、約款等の届出といった緩やかなルールとした上で、情報開示の充実や必要な場合の差止命令等により対応することも考えられる。(注)
 

(注)
1.契約型が一般的となっている英国やドイツでは、契約・約款の認可・承認制が採用されており、会社型が一般的となっている米国、フランスでも、設立時の認可・登録が必要とされている。なお、いずれの国の場合も、取扱業者は認可・登録制となっており、各種の行為規制が課されている。
2.我が国の場合は、金融システム改革法において、契約型の証券投資信託に係る約款の承認制を届出制に改めるとともに、新たに導入された証券投資法人についても届出制とし(ただし、運用を行う要件として登録が必要)、その一方で、投資者へのディスクロージャー等の行為義務や差止命令に関する規定等を整備・拡充することで対処している。また、証券投資委託会社については、認可制が採られている。
3.商品ファンド法や特定債権法については、仕組み行為に関する規制はなく (民商法および信託法に準拠)、広告・販売等に係る行為規制により利用者保護を図る枠組みとなっている。
 
・ このほか、リスクの大きい商品の仕組み行為については、利用者保護の観点からの事前予防的な認可等が必要との意見についてはどうか。自由な商品開発という観点からは、仕組み段階の規制ではなく、説明義務や適合性原則で対処すべきとの意見もあるがどうか。

(g) 手続き面等に関する行為ルール

・[書面等の作成・交付義務] 上記の各種の行為規制に共通して関連するが、金融商品・サービスの内容に係る説明や業者との契約内容について、利用者が分かり易くかつ明確に理解するための手続き・手法についても何らかの行為ルールを義務付けることが必要ではないか。例えば、商品性や契約内容に関する、事前および事後における書面の作成・交付を業者に義務付けることについてどのように考えるか。他方、取引のチャネルが多様化するなかで、電話やインターネット等による金融取引・契約も増えてきており、書面という形態を義務付けることが適当でない場合もあるのではないか。(注)
 

(注)証券取引法、投資顧問業法、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法等に契約成立前ないし契約成立時の書面交付義務が規定されている。なお、金融先物取引法の改正(金融システム改革法の一部)では、契約締結時の書面交付義務を改め、その他の適切な措置(端末画面上での確認等)を認めている。
 
・[財産状況等に関する書類作成・縦覧・報告義務] 資産運用サービス等に関連して、利用者が運用のリスクやパフォーマンスを知り、合理的に投資判断できるようにするためには、ファンドの財産状況等についての分析・評価ができるような資料を提供することが必要と考えられ、このための書類等(その他の情報媒体を含む)の作成および利用者への報告等を業者に義務付けることが必要ではないか。なお、当該書類等の内容が、自主的な対応等を通じ、利用者にとって一層充実したものとなることが期待されるのではないか。(注)
 
(注)証券投資信託法、投資顧問業法、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法等には運用報告書の作成・交付義務等が規定されている。
 
・[取引記録等の作成・保存義務] 目に見えないリスク情報を取り扱う金融取引の特性として、事後において、民事的あるいは行政的な義務違反の立証等が困難な場合が少なくないため、必要な範囲で証拠となりうる書類等(帳簿、伝票、通信記録等)を作成・保存する義務を課す(隠匿・改ざん等については禁止する)ことについてどのように考えるか。記録の作成・保存を義務付けない場合でも、一定の場合には、私法上の立証責任を業者側が負うこととする仕組みについてはどのように考えるか。
・ 書面等の記載内容(商品性、契約内容、履行方法等)、記述方法(平易さ、見易さ等)、交付方式(差入型、双務型)といったルールの詳細については、金融商品・サービスの種類や顧客の状況等に応じて、幾つかのレベルできめ細かなルールを考えることが必要ではないか。また、ルールの詳細については、民間の自主的な対応を重視すべきではないかとの意見もあった。

(h) 業者の適格性(fit and proper)等に関するルール

・ 「金融サービス業者」に経営面ないし財務面で不健全な者が含まれると、利用者にとって業者の選別に係る不確実性が高まることとなり、ひいては市場機能の発揮にも悪影響が及ぶおそれがある。業者に係る情報コストの削減、利用者保護、悪質業者の排除といった観点から、業者の行為規制だけでなく、業者に対して一定の適格要件(fit and proper)を課すことが望ましいのではないか。なお、こうした要件を課すことが、競争制限的とならないよう十分に配慮するとともに、その運用基準を明確化していくべきではないか。

i  参入規制

・ 参入要件としては、法人に対しては、財産的基礎(最低資本額、自己資本比率等)やリスク管理体制(人的構成、知識・経験等)が考えられるか。個人事業者(販売外務員、個人ブローカー、アドバイザー等)については、一定の資格要件(実務経験、資格試験等)を設けること等が考えられるか。
・ 免許・認可・登録・届出等については、要求される業者の適格性や監督の必要性の程度等に応じて適宜使い分けることになるか。しかし、このような参入要件は、競争制限的にならないようにすべきであると思われるがどうか。
・ 業者の適格性確保について利用者に明示するため、免許・認可・登録・届出等を受けていることについての店舗等での掲示や業者リストの縦覧等を行うことや、参入後も継続的に適格性を満たしていることについて、一定のモニタリングの仕組みや資格の更新制等についても検討が必要ではないか。
・ 無免許・無登録等の業者を排除するには、何らかの制裁・是正措置が必要ではないか。また、無資格の業者が行った行為の私法上の効果については、どのように考えるべきか。
 

(注)業者の適格性確保に関しては、暴力団等の反社会的勢力が参入すること等がないよう、欠格事由、登録拒否事由等の整備、および反社会的勢力が参入した場合にこれを的確に排除しうる仕組みについて、検討すべきではないかとの指摘があった。
 
ii  財務健全性規制

・ 情報開示と分別管理が徹底しているのであれば、原則として仲介業者等に対し財務健全性規制を課す意義は低下するものと考えられるが、完全な分別管理がなされない場合や、顧客資産の流用といった事態に備えるため、上記のルールを補完するものとして、財務健全性に係る規制を課すことも必要ではないか。(注)
 

(注)財務の健全性の低い業者については、民事責任等による制裁が十分に働かない(損害賠償を支払う余力がない)おそれがあるため、最低限の健全性基準を設けることは、取引参加者の自己規律を高め、過大なリスク・テイクや不正行為を抑制するという効果も期待できると考えられるがどうか。
 
・ 財務健全性の基準としては、グローバル・スタンダードの観点からも、自己資本比率規制が中心的な役割を果たすことになろうが、どう考えるか。業務の多様化や融合化が進展しつつあるなかで、統一的な基準を適用することが可能かどうか。
・ 投資者の自己責任を重視する観点からは、業者等の財務健全性に関する開示情報等を基に、投資者が業者を選別する仕組みを整備していくことが重要ではないか。また、将来的な健全性ルールのあり方として、プリコミットメント・アプローチ (業者自身が目標値を呈示し、これを達成できない場合にはペナルティを受ける仕組み)についてどう考えるか。

iii  業務分野規制・兼業規制

・ 業務分野の多角化・融合化に伴う利益相反やリスク遮断に関する問題に関して、金融サービス業者が担っている機能の組合せや、組織の形態(ユニバーサル型、子会社型、持株会社型等)等に応じて、業務分野規制が必要となる場合があるか。
・ 他方、こうした業務分野規制は、競争制限的なものとなるおそれがあり、必要最小限とすべきではないか。また、利益相反防止やリスク遮断に係るルール(チャイニーズ・ウオール、アームズ・レングス・ルール、分別管理等)の整備・拡充、企業グループ等における支配・従属関係と責任範囲の明確化が図られれば、業務分野規制自体の必要性は後退するのではないか。(注)
 

(注)
1.今般の金融システム改革法においては、証券業、証券投資信託委託業、投資顧問業に関する兼業規制が撤廃ないし大幅緩和され、これに併せて、利益相反防止等に係る規定が拡充されている。また、銀行および保険会社等については、保有可能な子会社の範囲を明確化するとともに、株式の保有制限や連結ベースのディスクロージャー、大口信用供与規制等のルールが盛り込まれている。
2.リスク遮断の観点からは、業務分野規制と預金や保険等に関する公的セーフティネットの存在との関係についても整理が必要となるか。

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