I .有価証券デリバティブの全面解禁について

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│  項          目  │  証取審デリバティブ特別部会(平成9年5月20日)抜粋    │    証券取引法改正に当たっての考え方    │              備            考              │

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│1.賭博罪との関係│  有価証券を原資産とする店頭デリバティブ取引のうち差金によ│○  証取法第2条第8項(証券業)に有価証│現行証取法のデリバティブ取引                │

│                  │り決済する取引については、証券取引所の相場を使った差金授受│  券関連の店頭デリバティブ取引を追加    │いずれも証券取引所で行われることを前提      │

│                  │を証券取引所の外で行うことを禁止する証券取引法第201条の│                                        │・有価証券先物取引(第2条第13項)        │

│                  │構成要件に該当するのではないかとの疑義があり、また、有価証│○  証取法第2条に有価証券関連の店頭デリ│・有価証券指数等先物取引(第2条第14項)  │

│                  │券の価格は確実に予見し得るものではないことから、刑法上の賭│  バティブ取引(店頭オプション取引、スワ│・有価証券オプション取引(第2条第15項)  │

│                  │博罪の構成要件にも該当するのではないかとの疑義があるとされ│  ップ取引など)の定義規定を追加        │                                            │

│                  │ており、これらが、我が国において、有価証券を原資産とする店│                                        │財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規│

│                  │頭デリバティブ取引を行う場合の法的制約となっている。      │○  証取法第201条につき所要の調整    │則(財務諸表等規則)                          │

│                  │                                                          │                                        │平成8年7月の改正により、第8条(定義)第6│

│                  │  デリバティブ取引の発展のためには、法的関係を明確にして、│                                        │項~第10項において、デリバティブ取引全般を│

│                  │こうしたいわゆるリーガルリスクをなくすよう、有価証券を原資│                                        │定義                                        │

│                  │産とする店頭デリバティブ取引を定義付けるとともに、これらを│                                        │                                            │

│                  │証券会社等の業務(証券取引法第2条第8項各号に列挙されてい│                                        │                                            │

│                  │る証券取引行為)として証券取引法等に規定する等の法令整備を│                                        │                                            │

│                  │行うことが必要である。                                    │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│2.リスク管理    │  デリバティブ取引は、リスクが複雑に絡み合っている面もある│○  証券業を登録制とする中で、業務の専門│                                            │

│                  │ことから、リスクに対する理解や管理方法が不十分な場合には不│  性が高く、高度なリスク管理が求められる│                                            │

│                  │測の損失を招来する可能性があり、国内外でも大きな損失事例が│  有価証券関連の店頭デリバティブ業務につ│                                            │

│                  │現実に発生している。特に、店頭デリバティブ取引は、先にも述│  いては認可制とする(証取審総合部会報告)│                                            │

│                  │べたとおり、取引所でのデリバティブ取引に比べて、信用リスク│                                        │                                            │

│                  │や流動性リスクなど、直面するリスクが大きいことから、取引当│                                        │                                            │

│                  │事者には、リスク管理体制の充実が一層求められる。          │○  具体的には以下の方向での法改正を検討│                                            │

│                  │                                                          │  ・証券会社が有価証券関連の店頭デリバテ│                                            │

│                  │                                                          │    ィブ業務を行おうとするときは、認可を│                                            │

│                  │                                                          │    受けなければならない。              │                                            │

│                  │                                                          │  ・認可申請に当たってはリスク管理の方法│                                            │

│                  │                                                          │    ・体制等を記載した書面を提出するもの│                                            │

│                  │                                                          │    とする。                            │                                            │

│                  │                                                          │  ・認可を受けた証券会社が申請に当たって│                                            │

│                  │                                                          │    提出したリスク管理の方法・体制等を遵│                                            │

│                  │                                                          │    守していないことが検査の結果判明すれ│                                            │

│                  │                                                          │    ば処分の対象となる。                │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │○  自己資本規制に関しても所要の整備    │                                            │

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│  項          目  │  証取審デリバティブ特別部会(平成9年5月20日)抜粋    │    証券取引法改正に当たっての考え方    │              備            考              │

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│3.公正な取引のた│                                                          │                                        │                                            │

│  めのルール      │                                                          │                                        │                                            │

│ (1)対顧客営業関係│  店頭デリバティブ取引は、相対取引で行われること及びリスク│○  以下に例示される証取法第3章(証券会│                                            │

│                  │が複雑な商品も多いことにかんがみ、証券会社等の対顧客営業に│  社等)の規定を中心に所要の整備        │                                            │

│                  │おけるルールの整備が不可欠である。                        │  ・適合性原則の確保(第54条第1項)    │                                            │

│                  │  具体的には、特に以下の点を中心にルールを整備すべきである。│・取引の概要等を記載した書面の交付      │                                            │

│                  │(1)適合性原則の確保                                        │                        (第47条の2)    │                                            │

│                  │     (略)                                                 │  ・取引報告書の交付(第48条)          │                                            │

│                  │(2)説明義務                                                │  ・断定的判断の提供の禁止(第50条)    │                                            │

│                  │     (略)                                                 │  ・向い呑みの禁止(第47条)      など  │                                            │

│                  │(3)タイムリーな情報提供                                    │                                        │                                            │

│                  │     (略)                                                 │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│ (2)不公正取引規制│  その他の公正な取引のためのルールについては、店頭デリバテ│○  証取法第6章(有価証券の取引等に関す│                                            │

│                  │ィブ取引についても、その特質に応じつつ、原則として少なくと│  る規制)の不公正取引規制につき、所要の │                                            │

│                  │も現行証券取引法に定められた規制と同様の規制が課されるよう│  整備                                  │                                            │

│                  │所要の整備を図る必要がある。                              │[例]                                  │                                            │

│                  │                                                          │  ・不正取引行為の禁止(第157条)       │                                            │

│                  │                                                          │  ・風説の流布(第158条)               │                                            │

│                  │                                                          │  ・相場操縦等行為の禁止(第159条)     │                                            │

│                  │                                                          │  ・インサイダー取引規制(第166条)     │                                            │

│                  │                                                          │  ・公開買付けに関するインサイダー取引規│                                            │

│                  │                                                          │    制                  (第167条)     │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │○  特に、相場操縦については、現物市場と│                                            │

│                  │                                                          │  デリバティブ市場等とをまたがる相場操縦│                                            │

│                  │                                                          │  についても適用対象となる方向で検討    │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │○  また、損失補てんの禁止規定(第50条の│                                            │

│                  │                                                          │ 3)についても所要の整備                │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

└─────────┴─────────────────────────────┴────────────────────┴──────────────────────┘  

┌─────────┬─────────────────────────────┬────────────────────┬──────────────────────┐

│  項          目  │  証取審デリバティブ特別部会(平成9年5月20日)抜粋    │     証券取引法改正に当たっての考え方   │              備            考              │

├─────────┼─────────────────────────────┼────────────────────┼──────────────────────┤

│4.ディスクロージ│  店頭デリバティブ取引は、国際的に見て、その取引規模が全体│○  平成8年7月の財務諸表等規則等の改正│財務諸表等規則等の改正の主なポイント        │

│    ャー          │として取引所でのデリバティブ取引を上回っているにもかかわら│  により、デリバティブ取引に関する取引当│(1)  開示対象を、先物取引、上場オプション取引│

│                  │ず、通例、相対取引で行われることから、取引の状況が外部から│  事者の情報開示の充実が図られたところ  │  、為替予約だけでなく、デリバティブ取引全般│

│                  │は見えにくい。また、リスクが複雑に絡み合っている取引もある│    有価証券関連の店頭デリバティブ取引も│  に拡大する。                              │

│                  │こと、システミックリスクを顕在化させる可能性も内包している│  当然にこうした開示の対象となる        │(2)  投資家への分かりやすい判断材料の提供及び│

│                  │こと、原資産取引と相互に密接な連関性を有すること等からも、│                                        │  開示企業における内部統制機能の発揮という観│

│                  │その取引実態や企業等の利用状況の透明性を高める必要がある。│○  カバード・ワラント等、当該証券の発行│  点から、デリバティブ取引について、取引の内│

│                  │                                                          │  者と原証券の発行者が異なるものについて│  容、取組方針、リスク管理体制等の定性的情報│

│                  │                                                          │  、発行者概念の整理を行う              │  の記述を導入する。                        │

│                  │                                                          │                                        │(3)  契約額・想定元本の開示を充実させるととも│

│                  │                                                          │                                        │  に、すべての取引について時価及び評価損益の│

│                  │                                                          │                                        │  開示を求める。                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│5.金融機関による│  こうした店頭デリバティブ取引の特質にかんがみれば、有価証│○  証取法の以下の規定を整備            │現行証取法第65条第2項                       │

│  取扱い          │券を原資産とする店頭デリバティブ取引については、十分なリス│  ・金融機関の証券業務の禁止(第65条)   │金融機関の証券業務                          │

│                  │ク管理能力と適正な営業遂行能力があると認められる限りは、証│  ・金融機関に係る証券業務の認可等      │1号 公共債ディーリング、窓販                │

│                  │券会社に加え、金利、為替を原資産とする店頭デリバティブ取引│                          (第65条の2)│2号 CP、海外CD                              │

│                  │を活発に行っている金融機関も、原資産の受渡しを伴わない範囲│                                        │3号 資産金融型証券                          │

│                  │であれば、営業主体になることを認めることが適当である(なお│                                        │4号 私募の取扱い                            │

│                  │、認可を受けた金融機関がその原資産を営業として取り扱うこと│                                        │5号 公共債(外国債を含む)に係る取引所デリバテ│

│                  │ができる有価証券関連の店頭デリバティブ取引については、原資│                                        │    ィブ取引                                │

│                  │産の受渡しを伴う取引まで認める。)                        │                                        │                                            │

│                  │  この場合には、有価証券関連の店頭デリバティブ取引を営業と│                                        │                                            │

│                  │して行う金融機関は、当然のこととして、証券会社と同じ公正な│                                        │                                            │

│                  │取引のためのルールに服さなければならないので、これを担保す│                                        │                                            │

│                  │るためにも、証券業務としての認可を受けて営業を行うとするこ│                                        │                                            │

│                  │とが適当である。                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │  しかしながら、有価証券関連の店頭デリバティブ取引のうち株│                                        │                                            │

│                  │式関連の取引(株式を原資産とする取引のみならず、例えば、転│                                        │                                            │

│                  │換社債を原資産とする取引等、当該デリバティブ取引の価値が株│                                        │                                            │

│                  │価に一定程度依存する取引を含む。)については、我が国の金融│                                        │                                            │

│                  │機関が大量の株式を保有している現状を勘案し、証券市場の健全│                                        │                                            │

│                  │性を確保する観点から、投資家としての立場と営業主体としての│                                        │                                            │

│                  │立場の間での利益相反が惹起する弊害を防止するため、        │                                        │                                            │

│                  │(1)  特定取引勘定(いわゆるトレーディング勘定)における株式│                                        │                                            │

│                  │  関連の店頭デリバティブ取引については、直ちに、特定取引勘│                                        │                                            │

└─────────┴─────────────────────────────┴────────────────────┴──────────────────────┘  

┌─────────┬─────────────────────────────┬────────────────────┬──────────────────────┐

│  項          目  │  証取審デリバティブ特別部会(平成9年5月20日)抜粋    │    証券取引法改正に当たっての考え方    │              備            考              │

├─────────┼─────────────────────────────┼────────────────────┼──────────────────────┤

│                  │  定において、株価リスクを有効にヘッジするための取引を行う│                                        │                                            │

│                  │  こと                                                    │                                        │                                            │

│                  │(2)  金融機関が営業として行う株式関連の店頭デリバティブ取引│                                        │                                            │

│                  │  は、特定取引勘定においてのみ行うこととし、特定取引勘定以│                                        │                                            │

│                  │  外で行う株式関連の店頭デリバティブ取引は、証券会社又は有│                                        │                                            │

│                  │  価証券関連の店頭デリバティブ取引につき認可を受けた他の金│                                        │                                            │

│                  │  融機関の特定取引勘定を相手としてのみ行うこと            │                                        │                                            │

│                  │を認可の基本的条件とすることが適当である。                │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│6.株価指数等リン│[証取審総合部会投資対象WP報告書より抜粋]              │○  株価指数等リンク債は、社債発行者と社│株価指数等リンク債                          │

│  ク債            │1.商品の自由化・多様化                                  │債購入者との間で株価指数等に関する店頭オ│  償還額、利子等が株価指数又は個別株価に連動│

│                  │(3)社債等商品の多様化                                     │プション取引を行っているとみなした場合に│する社債                                    │

│                  │  商品性の多様化を更に徹底するためには、リンク債や永久債に│計算される社債購入者の損失を社債の償還額│                                            │

│                  │ついて、刑法、商法等の考え方との整理が必要であったが、株価│から控除する特約が付された社債であると解│                                            │

│                  │指数等リンク債については、後述するデリバティブ取引に係る報│されるので、有価証券関連の店頭デリバティ│                                            │

│                  │告書に沿って、証券取引法等を改正することにより、発行が可能│ブ取引に関する賭博罪の疑義がなくなれば、│                                            │

│                  │となる。                                                  │株価指数等リンク債に関する賭博罪の疑義も│                                            │

│                  │                                                          │なくなることとなる                      │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

│                  │                                                          │                                        │                                            │

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[続きがあります]