市場WP報告書 (平成9年6月13日)(抜粋) 4.未上場・未登録株の取扱いの見直し (1) 現在、未上場・未登録企業の株式については、相対的にリスクが高いにもかかわらず十分なディスクロージャーが行われて いないものが多い等の事情により、証券会社の投資勧誘や公募の取扱いが日本証券業協会規則によって禁止されている。この ため、未上場・未登録株式の流通の現状としては、上場・登録廃止となった銘柄や株主優待がある地方の鉄道・バス会社等に ついて、証券会社が積極的に勧誘は行わず、気配値段の公表と受け身の取次ぎを行う形での取引が行われているにとどまって いる。 (2) しかしながら、今後、我が国証券市場が多様な資金調達・運用ニーズに対応していくためには、米国のような多重構造の市 場を確立していくことが重要である。創業段階のベンチャー企業を含む未上場・未登録企業の株式は、上場株式、店頭登録株 式に比して、相対的にリスクが高いと考えられる。他方、これら企業の資金調達ニーズに適切に対応して、円滑な資金供給を 行うとともに、資金運用者に対して当該株式の流通の場を提供し、資金回収の機会を与えていくことは、今後の証券市場に期 待される重要な機能の一つである。また、証券会社が、これらの企業の資金調達に早い段階から関与していくことは、証券会 社の業務を多様化・差別化していく観点からも意義があると考えられる。 (3) このような観点から、証券会社による未上場・未登録株式の取扱いについては、発行・流通両市場における所要の環境整備 を図った上で、これを認めていくことが適当である。具体的には、適切なディスクロージャー、取引の公正性の確保及び適切 な価格情報の提示についてのルール整備等が必要となろう。 (4) 具体的なルールについては、今後、日本証券業協会を中心に実務的な検討が進められるべきであるが、おおむね以下の点を 骨子とすることが適当である。 ○ ディスクロージャーについては、証券取引法上の継続開示会社については有価証券報告書によることとする。一方、有価 証券届出書又は有価証券報告書の提出が義務付けられていない企業については、日本証券業協会規則において、証券会社に 対し、当該企業の株式の投資勧誘を行う際には、公認会計士の監査がなされた財務諸表等の投資情報の提示を義務付けるこ ととする。また、その際は、相対的にリスクが高いと考えられるため、証券会社が適合性原則の観点から当該株式の内容を 十分理解でき、そのリスクに耐えうると認められる投資家を対象にすることとする。 ○ 不公正取引防止については、証券取引法等による現行規制で対応することとするが、協会規則について現行規定を必要に 応じて整理することとする。 ○ 価格情報の提示については、証券会社が投資勧誘に併せて気配情報(価格情報)の提示を行う際、協会規則において、証 券会社が提示する価格情報に関し、当該情報の素性(だれが提供している情報か、いつの時点の情報か、気配か成立した価 格か否か等)を明示することを新たに義務付けることとする。 (5) なお、未上場・未登録株式の5億円未満の募集等については、現行証券取引法上ディスクロージャー義務はかからないこと となっている。しかしながら、今後、インターネット等による不特定多数の者を対象とした投資勧誘が増加することが考えら れ、これらについては、相対でなく公衆縦覧を前提としたディスクロージャー制度を行政において新たに検討することが適当 である。この場合には、証券会社による5億円未満の未上場・未登録株式の投資勧誘についても、同様の取扱いを検討するこ とが適当である。 (6) 更に、このような市場の整備は、将来的には様々な証券化商品の取引も視野にいれることができよう。