4 証券会社の健全性チェックの充実

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┃  項    目    │      証券取引審議会報告書抜粋                │      法改正に当たっての考え方      │        備   考          ┃

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┃1  早期是正措│[市場仲介者WP報告書(9年5月16日)抜粋]          │○  証取法第35条第1項の処分の内容│・第35条第1項(免許の取消┃

┃  置の一層の充│                                              │  として、免許取消し又は業務停止が規│し又は6月以内の業務停止処分┃

┃  実          │○  しかしながら、このような見直し(業務方法書│  定されているが、今後、リスク管理方│)                          ┃

┃  (退出に係る│  の変更等の認可制から届出制への移行)は、ルー│  法の変更を命じる等、個別のケースに│                            ┃

┃  監督手続の明│  ルの遵守状況等についての継続的なモニタリング│  応じた対応を可能とする必要があるの│                            ┃

┃  確化)      │  が十分に行われることを前提としている。従って│  ではないか。                      │                            ┃

┃              │  、参入規制の程度にかかわらず、健全性のチェッ│                                    │                            ┃

┃              │  ク、業務改善命令、業務停止、取消し等の行政処│○  また、証取法第35条第1項第3号│                            ┃

┃              │  分、検査・監督・監視が実効的に行われなければ│  の処分事由は「業務又は財産の状況に│                            ┃

┃              │  ならない。また、証券会社の業務の多角化等に対│  照らし支払不能におちいるおそれがあ│                            ┃

┃              │  応して、証券会社の法令違反に対する証券取引法│  る場合において、投資者の損害の拡大│                            ┃

┃              │  第35条に規定する処分として、リスク管理の改│  を防止するためやむを得ないと認めら│                            ┃

┃              │  善命令等の事例に応じた処分を可能とすべきであ│  れるとき」とされているが、支払不能│                            ┃

┃              │  ると考えられる。                            │  におちいるおそれがある段階での、処│                            ┃

┃              │                                              │  分を可能とすることが適当ではないか│                            ┃

┃              │○  証券会社の健全性をチェックし、健全性が損な│  。                                │                            ┃

┃              │  われた場合には、その是正を促し、是正されない│                                    │                            ┃

┃              │  場合には、証券業から退出させることが必要であ│○  自己資本規制比率の維持(100%│・自己資本規制(法第54条第┃

┃              │  る。                                        │  又は120%)を法令上の義務とし、│2項1号)は、財産の状況等に┃

┃              │                                              │  自己資本規制比率違反に対しては、業│関する監督上の命令として規定┃

┃              │○  証券会社の健全性をチェックするための指標と│  務改善命令、業務停止、登録取消しを│されている。                ┃

┃              │  して、現在では、自己資本規制比率が中心的な役│  行う筋道を明確にする必要があるので│                            ┃

┃              │  割を果たしている。指標としての客観性・合理性│  はないか。                        │                            ┃

┃              │  から、今後も、原則として自己資本規制比率が健│                                    │                            ┃

┃              │  全性チェックのための主たる指標として用いられ│○  その場合、業務停止処分後3か月経│                            ┃

┃              │  ることが適当である。その際、証券会社が破綻す│  っても回復しないときには、登録取消│                            ┃

┃              │  る前に早期是正措置的な対応を行うルールの一層│  ができることとしてはどうか。      │                            ┃

┃              │  の明確化を検討することが必要である。        │                                    │                            ┃

┃              │                                              │○  投資家に証券会社に対する処分をデ│                            ┃

┃              │○  また、証券会社の退出については、今後、行政│  ィスクローズするため、当局が処分を│                            ┃

┃              │  の裁量権をできるかぎり少なくしていくことが必│  行った際には、その旨を公表する規定│                            ┃

┃              │  要である。一方、客観的指標のみに基づき退出を│  を設けてはどうか。                │                            ┃

┃              │  強制することが適当でない場合もあることから、│                                    │                            ┃

┃              │  退出の枠組みにはある程度の裁量の範囲も必要で│                                    │                            ┃

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┃  項    目    │      証券取引審議会報告書抜粋                │      法改正に当たっての考え方      │        備   考          ┃

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┃              │  ある。その中にあっても、基本的には、証券会社│                                    │                            ┃

┃              │  の退出は、ディスクロージャー等に基づき市場が│                                    │                            ┃

┃              │  選択することによって図られることが望ましいと│                                    │                            ┃

┃              │  考えられる。従って、そのための方策として、例│                                    │                            ┃

┃              │  えば、自己資本規制比率が一定値(是正を求める│                                    │                            ┃

┃              │  べき水準)以下となった場合には、証券会社がそ│                                    │                            ┃

┃              │  の事実を公表し、当局は改善命令を行うというこ│                                    │                            ┃

┃              │  とも検討されるべきである。                  │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │○  但し、現実に証券会社が債務超過に陥っている│                                    │                            ┃

┃              │  場合や自己資本規制比率が必要値を一定期間以上│                                    │                            ┃

┃              │  下回っている場合等、投資家に損害が及ぶ可能性│                                    │                            ┃

┃              │  が高い場合には、当局のイニシアティブにより、│                                    │                            ┃

┃              │  適切な退出を図るために制度を整備することが必│                                    │                            ┃

┃              │  要である。                                  │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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┃2  自己資本規│[市場仲介者WP報告書(9年5月16日)抜粋]          │○  自己資本規制比率が実際のリスクを│                            ┃

┃  制比率の見直│                                              │  より的確に反映するための規定の見直│                            ┃

┃  し          │○  現行の自己資本規制比率が実際のリスクをより│  し、例えば、                      │                            ┃

┃              │  的確に反映するように見直しを行うことが必要で│  ・オフバランス商品のリスク相当額の│                            ┃

┃              │  ある。金融商品のリスク評価を見直すとともに、│    見直し                          │                            ┃

┃              │  取引先リスクの算定に当たっては貸付金相当額の│  ・有価証券店頭デリバティブ取引等業│                            ┃

┃              │  リスクが適切に反映されなければならない。また│    務の多角化への対応              │                            ┃

┃              │  、ヘッジ取引によるリスクの相殺、デリバティブ│  ・関連会社への与信、債務保証に係る│                            ┃

┃              │  等のオフバランス商品のリスク算定等の見直しも│    リスク相当額の見直し            │                            ┃

┃              │  必要である。                                │  ・リスクヘッジされているものについ│                            ┃

┃              │                                              │    ての相殺規定の整備              │                            ┃

┃              │○  また、適切な業務運営のためには、証券会社自│  ・ループホールの防止              │                            ┃

┃              │  身のリスク管理も今後ますます重要となる。自己│  等の改正が必要ではないか。(自己資│                            ┃

┃              │  のリスク管理の徹底の観点から、市場リスクの算│  本省令の改正で対応)              │                            ┃

┃              │  定に関し、証券会社の自己のリスク管理モデル(│                                    │                            ┃

┃              │  内部リスク管理モデル)の利用を認めることを検│○  内部管理リスクモデルについては、│                            ┃

┃              │  討することが必要である。但し、監督当局が内部│  IOSCOにおける議論等も踏まえ、│                            ┃

┃              │  リスク管理モデルをどのように評価するのかにつ│  今後更に検討していく必要がある。  │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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┃  項    目    │      証券取引審議会報告書抜粋                │      法改正に当たっての考え方      │        備   考          ┃

┠───────┼───────────────────────┼──────────────────┼──────────────┨

┃              │  いては、IOSCO(証券監督者国際機構)でも│                                    │                            ┃

┃              │  議論が行われており、これらの議論等を踏まえ、│                                    │                            ┃

┃              │  更に検討が必要である。                      │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │○  業務範囲の拡大や持株会社の解禁については、│                                    │                            ┃

┃              │  これらが自己資本規制比率に基づく規制にどのよ│                                    │                            ┃

┃              │  うな影響を与えるか検討することが必要となる。│                                    │                            ┃

┃              │  証券会社の健全性のチェックを行うためには、証│                                    │                            ┃

┃              │  券業務だけでなく全ての業務のリスクが、自己資│                                    │                            ┃

┃              │  本規制に的確に反映されていなければならない。│                                    │                            ┃

┃              │    また、持株会社が解禁された場合でも、証券会│                                    │                            ┃

┃              │  社の健全性のチェックは証券会社本体だけに対し│                                    │                            ┃

┃              │  て行うことが適当である。そのためには、証券会│                                    │                            ┃

┃              │  社の関連会社に対する実質的な与信相当額のリス│                                    │                            ┃

┃              │  クを適切に評価すること等によって、証券会社か│                                    │                            ┃

┃              │  ら関連会社のリスクを切断することが求められる│                                    │                            ┃

┃              │  。                                          │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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┃3  自己資本規│[総合部会最終報告書(9年6月13日)抜粋]            │○  自己資本規制比率の虚偽報告等がな│・証券会社の虚偽報告や検査忌┃

┃  制に係る不正│                                              │  された場合には、投資者が想定できな│避等に対する罰則強化について┃

┃  行為の扱い  │○  健全性チェックの実効性を確保するために、各│  い損害を突然被る可能性が高く、厳格│は、今国会で改正法案が可決さ┃

┃              │  種の報告や検査における虚偽や隠蔽等に対しても│  な行政処分、罰則で担保することとし│れたところ。                ┃

┃              │  、厳格な行政処分等を行うことが必要である。  │  てはどうか。                      │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │[市場仲介者WP報告書(9年5月16日)抜粋]          │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │○  また、自己資本規制比率の算定を意図的に歪め│                                    │                            ┃

┃              │  た場合には、退出すべき証券会社が業務を続ける│                                    │                            ┃

┃              │  結果、さらに多くの投資家等に損害を及ぼすこと│                                    │                            ┃

┃              │  となる。従って、自己資本規制に関する不正行為│                                    │                            ┃

┃              │  に対して、厳格な行政処分等を行うことが必要で│                                    │                            ┃

┃              │  ある。                                      │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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┃  項    目    │      証券取引審議会報告書抜粋                │      法改正に当たっての考え方      │        備   考          ┃

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┃4  開示義務の│[市場仲介者WP報告書(9年5月16日)抜粋]          │○  顧客が自己責任原則に基づいて証券│・銀行の業務又は財産の状況に┃

┃  新設        │                                              │  会社を選択するためには、自己資本規│関する説明書類の縦覧義務(銀┃

┃              │○  証券会社のディスクロージャーの充実のため、│  制比率を含め、証券会社の業務、財務│行法第21条)              ┃

┃              │  例えば、銀行法第21条と同様に、証券会社のデ│  状況等が顧客に対しても十分にディス│                            ┃

┃              │  ィスクロージャーについての規定を設ける必要が│  クローズされることが不可欠であるこ│・自己資本規制比率は、その指┃

┃              │  ある。開示の対象となる項目については、今後、│  とから、銀行と同様に顧客に対する証│標の重要性にかんがみ、4半期┃

┃              │  証券会社として何を開示することを求められるか│  券会社の開示義務を課することが必要│に1回程度、ディスクローズし┃

┃              │  という観点から、内容を検討していくことが必要│  ではないか。                      │てはどうか。                ┃

┃              │  である。                                    │                                    │                            ┃

┃              │                                              │○  開示内容は、本来各証券会社が自主│・顧客は、開示情報が必要十分┃

┃              │○  自己資本規制比率については、数字の一人歩き│  的に決めるものであり、法令で規定し│な情報が満たされているか否か┃

┃              │  という危険もあることから、常時その変化を開示│  たものがセーフハーバーとして機能す│も含め評価し、証券会社を選別┃

┃              │  することは適当でない。しかしながら、ディスク│  ることとなっては適切でない。そのた│していくこととなるため、自ず┃

┃              │  ロージャーの充実のためには、銀行等の金融機関│  め、そのガイドラインは自主規制機関│と開示情報のクオリティが高ま┃

┃              │  と同様に、少なくとも年に1回の開示を求める必│  が定めるべきではないか。          │ってくるものと考えられる。  ┃

┃              │  要がある。                                  │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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┃5  取引損失準│[市場仲介者WP報告書(9年5月16日)抜粋]          │○  取引損失準備金及び利益準備金の積│・取引損失準備金の積立て(法┃

┃  備金等の見直│                                              │  立については、証券会社の経営の自己│第57条)                  ┃

┃  し          │○  証券会社の損益の平準化等を目的とした取引損│  責任という観点から各証券会社の判断│                            ┃

┃              │  失準備金等の準備金は、十分なリスク管理や自己│  によるべきものであると考えられ、こ│・利益準備金の積立て(法第5┃

┃              │  資本規制による健全性のチェックが行われる場合│  のような証取法上の積立て義務を撤廃│8条。商法第288条)      ┃

┃              │  には、自主的な経営方針に従った資本の利用を可│  してはどうか。                    │                            ┃

┃              │  能とするため、廃止することが適当である。    │    なお、利益準備金は、別途商法でそ│                            ┃

┃              │                                              │  の積立が求められている。          │                            ┃

┃              │○  これに対して、証券責任準備金は、証券会社の│                                    │                            ┃

┃              │  事故の場合に支払われるものである。自己資本規│                                    │                            ┃

┃              │  制では証券事故の場合の証券会社の訴訟リスク等│                                    │                            ┃

┃              │  が反映されていないため、この準備金を積むこと│                                    │                            ┃

┃              │  に意味があると考えられる。従って、本準備金に│                                    │                            ┃

┃              │  ついては、存続させていくことが適当である。  │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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[続きがあります]