はじめに


                                                                      

    我が国証券市場を取り巻く環境は、金融の自由化・国際化の一層の進展、

  通信・情報処理技術の急速な向上、成熟化社会への移行等を背景に、著しい

  変化を示している。このような状況の中で、21世紀に向けて、中長期的視

  点から証券市場の整備を行うことが重要な課題となっている。            

    このような問題意識から、証券取引審議会は、証券市場、市場仲介者たる  

  証券業及び証券行政の将来の在り方について、総合的な審議を行うために昨

  年6月に総合部会を設置した。                                        

                                                                      

    昨年11月には、内閣総理大臣より、21世紀を迎える5年後の2001

  年までに、フリー、フェア、グローバルの理念の下に我が国市場がニュー  

  ヨーク、ロンドン並みの国際金融市場となって再生することを目指すという

  金融システム改革についての指示があり、大蔵大臣から当審議会に対し、そ

  れを達成するための証券市場において必要とされる施策についてのプランを

  策定するよう要請があった。                                          

                                                                      

    総合部会は、こうした経緯を踏まえ、合計23回の審議を行ってきた。そ

  の間、審議の節目節目において、それまでの成果を公表した。            

    まず、昨年11月には、我が国証券市場の問題点、改革に当たっての基本

  的考え方とビジョン、及び市場改革の方向性について総合部会の考え方を整

  理した「論点整理」を取りまとめ、公表した。また、1月からは、3つの  

  ワーキング・パーティ(投資対象WP、市場WP、及び市場仲介者WP)を

  設置し、論点整理によって与えられた枠組みに沿って、個別改革項目の具体

  的内容等についての審議を、延べ24回行った。それぞれのワーキング・

  パーティは、その報告を取りまとめ、5月16日に公表した。              

    さらに、デリバティブ取引については、デリバティブ特別部会において、

  合計16回にわたり審議を行い、5月20日にその報告を公表した。      

                                                                      

    今回の証券市場改革は、国民的な改革であるべきである。              

    それゆえ、「論点整理」及び各ワーキング・パーティの報告については、

  その公表後、直ちにインターネット等の情報媒体に掲載し、広く世の意見を

  求め、多くの方々からコメントを頂いた。それに加え、投資家・発行体を含

  む市場関係者や有識者から広く意見を頂く試みとして、証券取引審議会の事

  務局が中心となり、いわゆる「500人行脚」と称する聞き取りを行った。

  このように、様々なチャンネルを通し頂だいした意見については、審議に際

  し参考とさせていただくとともに、事務局において取りまとめ、公表させて

  頂いた。ご協力頂いた方々に対し、感謝申し上げる。                    

    また、国民的改革とするためには、現在、証券市場において提起されてい

  る様々な問題を克服して、国民の信頼を獲得していく必要がある。        

                                                                      

    証券取引審議会は、こうした多数の意見も踏まえ、3つのワーキング・  

  パーティの報告及びデリバティブ特別部会の報告を土台とし、証券市場改革

  パッケージの全体像を、以下の報告のとおり提示する。改革が、この報告に

  示されている具体的なスケジュールに沿って進められていくべきであると提

  言する。                                                            

                                                                      

    この改革を実施することにより、我が国市場がその魅力と競争力を高め、

  また、市場利用者にとって便利で信頼できる市場となることにより、21世

  紀に向けてますます大きくなるその役割への期待にこたえていくことを望み

  たい。                                                              

                                                                      


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