貸金業制度等に関する懇談会「座長としての中間整理」の公表について

 金融庁では、貸金業制度等について、平成16年1月1日に施行されたいわゆるヤミ金融対策法の附則で3年を目途に見直すとされたことを踏まえ、昨年3月から「貸金業制度等に関する懇談会」を開催し、幅広い観点から勉強を行ってまいりました。
 懇談会においては、貸金業制度等をめぐる諸問題について、関係者のヒアリングや議論を通じ、検討が深められてきていますが、去る4月21日(金)に、これまでの議論の内容や方向性について、座長として、現時点において、中間的に整理しまとめられた「座長としての中間整理」が公表されました。
 貸金業制度等をめぐる諸問題については、多岐にわたる論点や多様な意見がありますが、これらについて、懇談会での様々な議論を踏まえつつ、現時点で、主要な論点、多様な意見の整理・集約、更なる検討課題等を整理していただいたことは、貸金業制度等について更なる検討を行う上で、意義があると考えています。
 金融庁としては、「座長としての中間整理」で示された御意見や提案について、しっかりと受け止めたいと考えています。今後、与野党や関係当局においても、この中間整理等を踏まえて、御検討が行われていくものと考えており、最近の最高裁の判決も十分念頭に置きながら、多重債務を防止する観点からどのような道筋をとることが適切か、検討を深めてまいりたいと考えています。
 中間整理においては、過剰貸付け・多重債務の防止、契約・取立て等にかかる行為規制、参入規制・監督手法等、金融経済教育とカウンセリング等、金利規制のあり方、グレーゾーンの取扱といった柱について、懇談会における議論がとりまとめられております。また、資料編においては、グレーゾーン金利とみなし弁済、利息制限法や出資法の上限金利の推移その他の資料が掲載されているので、あわせて御参照ください。


詳しくは、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「貸金業制度等に関する懇談会」、または「報道発表資料」から「貸金業制度等に関する懇談会「座長としての中間整理」の公表についてについて」(平成18年4月21日)にアクセスしてください。

【特集】
 
お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウム(千葉)パネルディスカッション・セッション2「市民による地域社会の活性化・地域社会に貢献する市民のお金の使い方を考える」
 
 前号に引き続き、金融庁、関東財務局、千葉県の主催により開催した「お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウム〜お金活き活き、まち活き活き〜」について掲載します。今回は、パネルディスカッション・セッション2「市民による地域社会の活性化・地域社会に貢献する市民のお金の使い方を考える」の模様及びアンケート結果についてご紹介します。

コーディネーター

藤沢ふじさわ 久美くみ

パネリスト(順不同)

神戸かんべ たかし 氏、中原なかはら 秀登ひでと 氏、板庇いたびさし あける 氏、川村かわむら たかし

(藤沢)それではセッション2を始めます。今度は少し角度を変えまして、「市民による地域社会の活性化・地域社会に貢献する市民のお金の使い方を考える」というテーマで、セッションを始めてまいりたいと思います。自分のお金を増やしたり守ったりということを学んでいくときに、やはり最初に、お金をどう使うかということを考えなければいけないと思います。第2部では、お金を増やす・守るという観点ではなく、お金を使うという観点から、お話をしていきたいと思います。

〜 川村 崇氏 (千葉銀行営業統括部業務開発グループリーダー)より「はばたけ!!元気な中小企業 千葉県版CLOの取り組みについて」と題して発表いただいた後、川村氏を交えて次のとおりパネルディスカッションが行われました。〜

(藤沢)それでは、この地域を元気にする、地域社会に貢献する市民のお金の使い方を考えるということで、パネルディスカッションを行っていきたいと思うのですが、まずは今、川村さんからすばらしいお話を伺いましたので、このお話を受けて、ご感想などを頂いていきたいなと思います。まずは神戸さんから、資産運用の商品という観点も含めてお話頂ければいいなと思います。

(神戸)色々なタイプの金融商品が出ているなかで、安心して購入できる商品が提供されたという意味はあると思います。ただし、利回りは0.4%であり、2年物の固定利付国債と比べれば高めですが、10年物の個人向け変動利付国債と比べると、残念ながら、収益性はやや見劣りします。やはり、SRI的な投資として考えるべきもので、地域経済をサポートする手段の1つとしての存在意義が大きいと思います。タンス預金や普通預金に置いておくくらいなら、こういった商品を購入してはどうですかという具体的な選択肢を提示したというところが、評価できるのではないでしょうか。

(藤沢)「収益性は?」という話もありましたが、先ほど川村さんの発表の中で、「リターンだけでない別の目的がある」ということでした。地域に役立っているというのも、違う意味のリターンということだと思います。それでは、中原先生、いかがでしたでしょうか。

(中原)プレゼンでご紹介のあった千葉県版CLOの取組みには、2つの意義があると思います。まず第1は、企業側からみて、このCLOの取組みにより、新しい資金調達の手段ができたということです。
 第2は、この証券は千葉県民を中心に売られていますので、千葉県民が中心となって地元の中小企業を支援していこうという枠組みになっています。そうした枠組みの提示は、地域経済の活性化という観点から大きな意義があると思います。

(藤沢)はい、ありがとうございます。板庇さんはいかがでしょうか。

(板庇)千葉銀行の取り組みは、県民の方々が中小企業に間接的に融資をしていることになると思います。それでは、千葉県民にとってどんなリターンがあるのでしょうか。私も0.4%という利回りは、リターンとしては非常に少ないと思います。
 そうであれば、県民が資金供給をすることによって、いわゆる元気な中小企業がもっと雇用を増やす、或いは、その資金を千葉県内に投下する、というようなことも、CLOのパンフレットに入れないといけないと思います。千葉県民がその債券を買った場合に、千葉県が豊かになり、もっと言えば税金が下がる可能性があるなど、債券購入者の個人にとって金利以外のメリットが生じてくる可能性があるということを、できるだけ示してあげたほうがいいと思います。

(藤沢)なるほど、このCLOを通じて、世の中がどう変わっていくかをもっと伝えてほしいということですね。確かにそういう遠い所まで見えるようにするのは大切かもしれません。それでは、こういうリターンとは別の意義を感じる投資というのは、人気はあるのでしょうか。それとも、余り人気はないけれどお話をすると、「それはいいね」という発想になるのでしょうか。

(神戸)そういった意義を考えられる方は多くなってきていると思います。実際投資をする際に、何%儲かる、或いは、株主資本利益率が何%といった、数字を基準に投資対象を選ぶ方は当然おられます。しかし、それとは別の観点から、つまり、世の中のためになる会社なのか、或いは世の中のためになるお金の使い方がされるのか、という観点からお金を活かそうと考えられる方も決して少なくありません。
 日本の場合、寄付はそれほど盛んではないですが、例えば今世界で一番お金持ちのビル・ゲイツさんや2番目のバフェットさんなどは、既に遺言を残されていて、自分が亡くなったときはほとんど全部の財産を寄付するというようなことを書かれておられるそうです。世の中のためにお金を活かすというところに最後にはたどり着くのかもしれません。ただ、最初から意義ばかりを振りかざしても、やっぱり金銭的なリターンとのバランスもありますから、どちらの考え方もあり得るということだと思います。
 今回のCLOというのはまだ実験段階だと思いますが、こうした取り組みに意義があると思われる方が、サポーターとしてCLO、ファンドを買っていくという流れが定着してくると素晴らしいと思います。

(藤沢)CLOの商品について、様々な提案がでてきました。このまま話を続ければ、新たな商品開発ができそうですね。ところで先程、川村さんは実際に販売されるときに、投資教育の部分も意識したというお話をされたのですが、具体的にどのような投資教育をやられましたか。

(川村)2回目のCLOの時に、近隣の皆様を募って勉強会を実施しました。その際、そもそもCLOとは何か、また、その意義・役割は何かという所から入っていきました。単に利回りだけを見て金融商品の購入を判断されるような方だと、なかなか買いにくい商品なので、そこはやはり目的や意義を分かってもらわないといけないからです。実際、目的や意義を理解していただいた方には投資してもらえたのではないかと思います。
 そういう意味で、2回目のCLOの時に堂本知事に自ら買っていただいて、投資というのはただ単にリターンを追求するものだけではないということを実践していただいたというのは大きかったと思います。

(藤沢)はい、ありがとうございます。なぜやるのかをきちんと共有しなければいけないということですが、本当に大切なことだと思います。第1部のディスカッションでも、神戸さんには、まずは何のために運用するのか、何のためにお金を管理するのかという、ゴールを考えることが大切というお話をいただいたと思います。また、板庇さんからは、お子さんに勉強を教える際に、まず、「あなたは誰?」、「何のために生きているの?」というような、人間としての根本的な目標のようなものを考えさせるというお話がありました。そして、川村さんのお話を聞いて、お金にかかわっていくうえでは目的を共有することが大切なのだということを改めて思いました。川村さんにもう少し伺いたいのですが、実際に投資信託をお買いになった個人の方というのは、融資先の企業のことは分かるのですか。それとも分からないのですか。

(川村)分かりません。融資先の中小企業はかなりの数ありますので、1社1社見るわけにはいかないと思います。従って、そこはディスクローズされません。その代わりとしましては、自己資本比率が10%以上といった融資条件をクリアしている中小企業向けの融資の集まりであるといったことをディスクローズしています。また、実際、信託受益権を購入する形で運用しているのですが、これに最上級の格付け(AAA)を取得しているということをディスクローズしています。

(藤沢)なるほど。ありがとうございます。要するに投資をする際、株であれば自分でどの企業に投資するかを考えますが、その部分に関しては金融機関にお任せをしているということですね。
 少し話の観点を変えさせていただきますが、金融に関する教育を行う場合、例えば起業家教育のように投資される側の話はするのですが、誰かを応援しようという話は意外に少なかったりします。こういう実際の例をご覧になっていて、応援される側、応援する側の両方の観点が大事だと思うのですが、板庇さんにこのあたりの整理をお願いできればと思います。

(板庇)消費者として賢くなろう、騙されないようにしようという消費者教育が盛んですが、私は前々から異なる考えを持っておりまして供給者教育が先になされるべきだと思っております。子供たちが供給する側に回り、商品がどう作られたり、仕入れられたり、どう供給されたりするのかといった供給する側の論理が分かれば、自然と賢い消費者になります。その商品の値段がどうやって付けられているのかを体感して分かるからです。
 消費者教育から入って供給者教育を行うのは非常に能率が良くないと思っています。従って、投資教育に関しましても、先に投資してもらう側の学習をしてから、投資する側の学習をすれば、必ずまともな投資家になると思います。私はいつも順番が逆になっているなと思っています。

(藤沢)確かに、相手の立場に立ってみるというのはすごく大切なことで、投資をする場合に、投資される側に立ってみると、きっと違うものが見えてくるかもしれません。
 先程の川村さんのプレゼンテーションの中で、企業の方もこのCLOの制度ができたおかげで、新しい経営目標を持つようになったという話がありました。このように融資をされる側の中小企業にとって、こういう制度ができるのは非常によいことではないかと思うのですが、中原先生、このあたりはいかがですか。

(中原)もちろん、こういった基準というのは、企業にとって具体的な数値目標となり、大きな意味があると思います。ただし、自己資本率、或いは経常利益をあげているような企業というのは、逆にいうとお金を借りないでも、自分で十分にやっていけるような体力のある、優良な中小企業ともいえます。逆に、赤字が出ているような企業こそが支援を必要としています。
 ところで、財務的に厳しい中小企業の経営者の方から、事業転換のための資金調達を図りたいというお話を聞くわけですが、事業転換というよりも、まずは財務状態を何とかしなければ駄目ではないのですかということを申し上げます。こうした中小企業は、多重債務を抱えている場合も結構ありますが、現在は信用保証協会が付いた借り換え制度もあります。多重債務となると、月々の返済がばらばらで運転資金も苦しくなりますが、借り換えると、返済がある程度均一になって事業計画が立てやすくなります。このように、中小企業といっても色々な状況にありますので、中小企業それぞれが今本当に何を必要としているのかを、県或いは支援機関を通じて、ぜひとも把握していただきたいと思います。

(藤沢)ありがとうございます。まさにコミュニケーションが重要というお話でした。このあたり、いかがですか、川村さん。実際にCLOを組まれて、もっとハードルを低くして、中小企業を支援してあげなければいけないのではないかというようなことは思われませんか。CLOというのはリスク分散もききますからね。

(川村)そこは組成する側とすれば悩ましいところです。これは証券を発行して投資家に買ってもらうスキームなので、投資家がいないと成り立ちません。従って、投資家に買ってもらうには、高いリスクをとれば高いリターンが必要となります。これは、中小企業の側からみると高い金利で資金を調達することになります。そして、資金の取り手と出し手のちょうどバランスをとったのが今回の商品ということです。
 実は、参加要件については非常に悩みました。千葉県ともご相談しましたし、保証協会ともかなり議論をしました。中小企業の方に幅広く利用していただきたいが、金利はある程度抑えていかなくてはいけないということで、実際に出せた条件というのが現在の商品となっております。本当は参加要件をもっと低く下げたいという気持ちはあるのですが、どうしてもこのスキームを作るなかでは、あれが目一杯のところだったということです。

(藤沢)ありがとうございます。融資について、リスクとの兼ね合い、金利との兼ね合いを考えながら商品化するというのは、大変難しく、様々な工夫が必要なのかもしれません。融資ではなく投資であればどうかと考えたりもします。最近、投資で地域を支援する「ご当地ファンド」が話題に上りますが、神戸さん、地域に株式投資というのはいかがですか。

(神戸)確かにご当地ファンドと呼ばれるファンドは増えてきていますが、実際に中身をみてみると、必ずしもその地域の企業にお金が回っているとは限らないようです。例えば、ある地域に工場が1つある、或いはその地域が発祥の地である、といったことで、ご当地ファンドに組み込まれているケースもあり、もう少し洗練されていかないとわかりにくいと思います。現状では、顧客にアピールしやすい金融商品はないかという金融機関側のニーズと自社商品を取扱ってもらいたいという運用会社側のニーズの方が優先しているように思います。生活者側のニーズというのは、まだ反映されていないというのが正直なところではないでしょうか。
 やはりある程度明確なビジョンが必要だと思います。CLOもそうだと思うのですが、これは何のためにやっているのかということを示さないといけないと思います。投資対象の顔が見えないならば、先ほど板庇さんが仰ったように、投資対象となる企業全体で県内の雇用が何人増えました、或いはそれらの企業からの税収がいくら増えました、というのがリターンだという考え方もあると思います。
 そうでなければ、もう少し顔が見える、或いは因果関係がはっきりするというようなものでないと、次々にご当地ファンドが生まれてきても、なかなか受け入れられにくいという気がします。

(藤沢)ありがとうございます。板庇さんが深く頷いていらっしゃいましたが、ご意見がおありですか。

(板庇)共感しました。この仕組みのビジョンは「千葉県が豊かになる」ということであるべきだと思います。今日はお金の話なので、「豊かになる」の意味は「経済的に豊かになる」という意味になります。千葉県が豊かになるということは、千葉県以外からお金が入る、若しくは優秀な人材が来て付加価値を生むということしかないわけです。従って、融資先の中小企業の評価ポイントに加えていただきたいのが、企業の従業員に占める千葉県民の割合、千葉県内からの仕入れの比率、千葉県外への販売比率といった指標です。要は千葉県以外からお金が入ってこないと、千葉県は豊かにならないわけですから、そういった評価ポイントを少し入れていただいて、それでも融資が難しければ、金利も上げていただいて、取り組んでみてはどうかと思います。

(藤沢)いいアイデアですね。川村さんいかがですか。

(川村)実務者としては、なかなか難しいと思います。1社1社、全部調べなくてはいけないわけですから、それは大変な作業が必要だと思います。

(藤沢)中原先生、いかがですか。こういうスキームができたら企業側としてはどうですか。

(中原)このCLOだけでなく、株式も同じですが、お金を出すということは必要条件なのでしょうが、お金を出した後の経営面や人材面でのフォローということも重要ではないでしょうか。お金を出した中小企業に金の卵を生むような企業へ、或いは事業へ成長させていかなければいけないわけですから。お金を出したらそれで終わり、ということではいけないのではないでしょうか。今後、資金拠出後のフォロー態勢が問われるのではないかと思っています。

(藤沢)今日のテーマの大切なポイントをお話いただきました。投資をした後に、そのお金が企業でどう使われて、成長の原動力になっているのかということが大切です。金利が返ってくるからよいということではなく、上手に使われて、千葉県の成長につながっているかという点についても知りたいことだと思います。
 さて、次に、CLOのような地域を支える金融商品というものが、金融経済教育の道具になり得るかというあたりを議論していきたいと思います。神戸さんは、いかがお考えですか。

(神戸)あるアメリカ人が、「日本のビジネスマンのモラルは非常にすばらしいが、投資家、株主のモラルは疑う。」と言ったそうです。「どうしてそう思うの?」と尋ねたところ、「アメリカ製と日本製のハンディパソコンを比較すると、アメリカ製には裏側に必ず鎖で机につないでおく部分がある。なぜならアメリカのビジネスマンは会社のものを平気で持って帰ってしまう。日本人でそんな人はいないので、オフィスに行っても鎖で結んでいない。これだけとっても日本のビジネスマンのモラルはすばらしい。一方、アメリカと日本の株主を比較すると、例えばアメリカでは、コンパックという当初はベンチャー企業であった会社がパソコンを作り続け、ついにIBMを抜いた。なぜコンパックがそこまで大きくなったかといえば、安いコンピューターを作ってくれたコンパックをアメリカ人皆が応援して、商品を買ったからだ。株主になった人も多い。一方、日本では、当時、エアドゥとスカイマークエアラインが参入して羽田―福岡、羽田―札幌便の航空運賃が安くなったが、JALやANAが対抗値下げをすると、エアドゥやスカイマークエアラインの利用者が減ってしまって経営が苦しくなった。せっかく自分たちにとって役に立つ、安い料金を実現してくれた会社を皆で応援しようとしない。日本人には、投資というものの本質を理解していない人が多いようだ。」という答えが返って来たそうです。
 私は、サポーターとして企業を買うという考え方は投資教育にそのままつながっていくと思います。国にとって或いは千葉県にとって役に立つ会社なのかというところを考えていく先に、投資があるわけです。従って、当然、因果関係があると思います。

(藤沢)そう考えると、中原先生、企業側も、県民の方や投資家の方や融資してくれる方々に、もっと自分たちがこの地域のためにこんなに役に立つ或いは役立ちたいと思っているということをアピールしなければいけないと思うのですが、このあたりは中小企業というのはどうですか。

(中原)中小企業に限らず、地域に根ざした活動への資金の拠出というのは、3つの範疇に分かれると思います。1つは、純粋な民間企業、或いは事業に対する出資です。これは、高いリターンが要求されます。次に、80年代以降だんだん根づいてきたコミュニティ・ビジネスに対する出資というものがあります。これは、まずまずの配当があればいいというものです。最後に、NPO的な、ボランティア的な活動に対する資金提供で、これは配当を求めません。
 確かに地元の民間企業への出資というのは、当然地元のための資金循環ということになるのですが、一般的な住民としては、自分や地元社会に役立つためにお金を使うという意味で、コミュニティ・ビジネスに対する関心度が高まってくるのではないかと思います。例えば、介護施設に入ろうとすれば、実際、民間で料金が高い所か、或いは安い場合には順番待ちということになります。そこで、規制以外のところまでも地元である程度ボランティア的にきめ細かいサービスを提供していくコミュニティ・ビジネスというのが当然必要になってきます。
 仮に、私がそういうサービスを必要だと思えば、コミュニティ・ビジネスへ出資します。それは出資した分の金銭的リターンを得ようということではなくて、そういうビジネスが必要だから投資するのです。従って、地域の銀行にお願いですが、そういったビジネスに対する資金的な支援というものが、リレーションシップ・バンキングの観点からも必要になってくるのではないかと考えます。

(藤沢)ありがとうございます。金融機関というのは、社会を創造するために生まれてきているわけですから、やはり我々の生活に必要な会社をどう支援していくのかということ考えていかなければいけないのではないかと思います。先程神戸さんから、役立つ会社に投資をする、役立つ会社で買い物をするということを考えていかなければいけないというお話があったのもそうですが、まさに本日のテーマであるお金の使い方ということを改めて考えさせられるご意見を頂きました。
 それでは、板庇さん、起業する側の立場で考えても、やはり社会に役立つ会社をやろう、サービスをしようという発想も必要だと思いますがいかがですか。

(板庇)そうですね。千葉県が豊かになるためには、開業率が高くならないといけないと思います。起業家が増えれば千葉県は豊かになります。起業家が出てきたとしても、その起業家が短期間で失敗して倒産したらどうするのかという人もいますが、倒産しても豊かになります。創業から何十年も経っている「守りタイプ」の中小企業のオーナーと違って、起業家は「攻めのタイプ」で短期間に大きな資金を使いますので、経済自体は良くなります。起業家の輩出が多ければ多いほど、千葉県のキャッシュフローは良くなるということにつながります。
 そのために、何かをやらなければいけないのですが、英国に行って非常に感心したのは、コミュニティ・ビジネスや起業家教育というようなことを大学が中心になってやっています。日本もそれを真似て大学でやっているわけですが、英国と決定的に違うのは、英国では、現役の大学生が起業家教育を受けた後にビジネスプラン・コンテストを行って、その中で優秀な成績を取った学生に対し、大学自身が何か仕事を発注します。例えば、キャンパスを掃除する仕事や大学のパンフレット作成の仕事を、その大学が輩出した起業家に発注します。その起業家は発注を元に会社を設立します。その会社は設立当日から売上げが上がるわけです。
 日本の大学の関係者に同様のことをやってみてはどうかと主張しましたが、答えは全部ノーでした。この学生への発注すら実行できないようでは、起業家輩出はうまく行かないでしょう。いくら机上で教えても効果は限定されると思いますので、早くそういうことをする大学が出てきてほしいと思っています。

(藤沢)お三方のお話を伺っていると、共通点は、それぞれの人が、新しいものや地域のためになるもの、社会に役立つものを応援する気持ちで、お金を使うということを考えなければいけないということではなかったでしょうか。まず私たちは金融経済教育、投資教育について考える前に、自分のお金を使うと、そのお金がどのように世の中に役立つ事業、サービス、商品につながるのかということを考えることが必要で、これがもしかしたら、新しい金融経済教育であったり、地域を元気にしていくための第一歩であったりするのかなとお話を伺いながら感じていました。
 最後にパネリストの方に一言だけお言葉を頂いて終わりにしたいと思います。一言ずつ、皆様にメッセージを頂ければと思います。

(神戸)私は民主主義の典型的な姿はスポーツの世界にあると思います。ルールというのは、時代と共に変化するのですが、与えられるものではなくて実は参加者が決めています。そのルールを守ってファインプレーをすると、拍手喝采を浴びます。その代わり、ルールに違反したらペナルティが与えられ、ひどい違反は退場です。今回のライブドア問題もその部分が問われています。ルールがきちんと守られる環境、社会であれば、いい意味の投資も、或いはお金の使い方もできるのではないかなと思います。そのルールを作っていくのは参加者、つまり皆様方なので、お一人お一人がその意識を持っていただけるとありがたいなと思います。

(中原)最後に、透明性、情報公開という話が出たわけですが、そこで注意していただきたいのは、一般に公開される情報というと、通常バランスシートを連想して、収益、売上、安全性という数値だけに目が行き、その透明性を出せばいいのではないかと考えがちです。しかし、それに加えて数値をもたらす前提となる事業計画、或いは事業目標といったものが何なのかを、しっかりと把握することが重要ではないかということを申し述べておきます。

(板庇)金融経済教育の入口として何をしたらいいかという話がありましたが、子供と遊びながらやってもいいので、1万円でも3万円でもとにかく株を買ってみる。そうすると、当事者意識が芽生え、毎日毎日新聞を読むようになります。株が上がったり下がったりするのには理由がありますが、その理由を知るために金融経済を勉強せざるを得なくなりますので、株は入口としていいと思います。
 もう1つは外国為替も面白いかなと思います。毎日、円・ドル相場は動いていますが、例えばドルを100ドル持ってみることによって、興味が湧きます。為替を理解するには、金融経済を理解しないといけないので、勉強する気になります。

(川村)色々ご意見いただいて、本当に企業の透明性というのは、とても大事だなと感じました。やるかどうか分かりませんが、次回CLOを組む時があれば、是非そういったことができるように考えていきたいと思います。そのためには、中小企業の社長さん方の積極的に情報を開示するという心掛けも、大事になってくるのかなと思います。
 もう1つ、一般の方々が、中小企業がどういう企業かを判断する材料はないと思います。先程中原先生からお話がありましたが、決算書だけでは分からないですし、事業計画も見なくてはいけませんし、それだけでは実際どういうことをやっているのか分からないと思います。本当はそういったものをトータル的に判断するような機関も必要なのかなと思います。

(藤沢)ありがとうございました。透明性は大事です。しかし、それと同時に私たちも知りたいという意欲をもつこと、そして与えられた情報を理解する知識を身につけることといった努力が必要かもしれません。本日は本当に幅広い観点からたくさんのお話をいただきました。大変貴重なお話をいただきましたパネリストの方々に拍手を頂ければと思います。どうもありがとうございました。


「お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウム」
アンケート結果のポイント

 シンポジウム当日は、参加いただいた皆様に対して、シンポジウムの感想等についてのアンケートを実施し、参加者256名のうち143名(56%)の方から回答をいただきました。その概要をご紹介します。

(回答者の属性)
   年齢別:40歳代 30%、60歳代25%、50歳代23%、30歳代12%、70歳代5%、20歳代4% その他

(回答結果概要)
   シンポジウム全体の印象は、「有意義であった」、「どちらかといえば有意義であった」が91%となっており、「今後も機会があれば参加したい」という意見も多く寄せられました。
   金融経済知識習得の必要性については、「感じた」、「どちらかといえば感じた」とする回答が95%、また、投資に対する学習意欲・投資意欲についても、「湧いた」、「どちらかといえば湧いた」とする回答が75%を占めており、金融経済知識習得、投資学習の必要性等について十分認識していただけた結果となっております。
   また、地域のコミュニティ活動につきましても、「関心をもった」、「どちらかといえば関心をもった」とする意見が84%であり、地域での取組みにも高い関心が伺えます。

(主な意見)
   知識がない人にとってとてもよい勉強になった。今後も続けて欲しい。
   リスクなどについて勉強しなければと考えさせられた。
   正しい金融経済教育が浸透すれば企業や地域社会などの持続的成長につながっていくと感じた。
   地域経済活性化と金融経済教育を組み合わせたテーマは面白い。見方、考え方が広がり参考になった。
   地域の企業に役立つ方法がわからなかったが、少しみえてきた。
  など肯定的な意見の他、
   金融セッションと地域セッションのギャップが大きい。
   シンポジウムのテーマ、対象者を絞って行うべき。
   年代別に効率的に開催してほしい。
  とのご意見もございました。

  アンケートの結果、シンポジウム全体の評価は概ね好評であったものと思いますが、運営面に関し若干ご意見をいただきました。今後、今回いただいたアンケートの結果を参考にしていきたいと考えています。

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