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.改正の概要 |
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損害保険会社における支払備金のうち、既発生未報告損害支払備金(いわゆるIBNR備金)(注1)については、これまで大蔵省告示第234号の規定に基づき「ある年度に積み立てた支払備金を、その1年後に認識する保険金・普通支払備金の実績値と比較することによって、当初の支払備金積立時には把握できていなかった積立不足額を求め、これに発生損害増加率を考慮して、既発生未報告損害支払備金として認識する。」等の方法により算出することとされていましたが、この算出方法では、事故発生から保険金支払までに1年以上を要するいわゆる“ロングテイル”(注2)の保険商品について充分に捕捉することができない等の問題がありました。 このため、こうした保険商品の既発生未報告損害支払備金については、事故年度別の発生保険金データの統計的分析を基礎とした保険数理に基づいた、より精緻な計算方法による積立ルールを整備することとしました。 また、既発生未報告損害支払備金の計算のほか、損害保険会社における責任準備金等の適正・妥当な見積もり等が重要となってきているなど、損害保険会社においても保険数理に基づく分野が従来にも増して重要となってきている状況を踏まえ、保険計理人の選任を要する損害保険会社を拡大するとともに、保険計理人の関与・確認業務を強化する内容の内閣府令等の整備を行いました。 |
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(注1)「支払備金」、「既発生未報告損害支払備金」とは? |
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支払備金とは、保険契約に基づく保険債務の一つであり、保険業法の規定により、保険会社が、毎決算期において保険契約に基づいて支払義務が発生した保険金、返戻金等のうち、まだ支出として計上していないものについて、その金額を「支払備金」として計上することとされています。 支払備金には、決算期において、「既に報告を受けた事故につき個別に支払額を見積もる普通支払備金」と、「まだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認める保険金等について見積もりにより計算する既発生未報告損害支払備金」の二つにより構成され、既発生未報告損害支払備金は、金融庁長官の定める告示による計算方法により算出することとされています。 なお、既発生未報告損害支払備金は、英語の「Incurred But Not Reported Reserve」の頭文字をとって、IBNR備金ということもあります。 |
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“テイル”とは英語で“尻尾”の意味を持ちます。事故発生から保険金支払までの間に長期間を要することを“尻尾が長い”ということがあることから“ロングテイル”という表現をしています。 |
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.改正の内容 |
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(1) |
既発生未報告損害支払備金(IBNR備金)の新たな積立ルール |
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これまでは、既発生未報告損害支払備金の積み立てを要する保険種目を自動車保険、傷害保険等の特定の保険種類について規定し、その金額については、一定の算式により算出して積み立てることとしていましたが、積立対象の保険種類を自動車損害賠償責任保険(いわゆる自賠責保険)、地震保険を除くすべての保険契約に拡大しました。また、保険種類ごとの引受区分別(これを「計算単位」といいます。)に一定のスクリーニングを行い、その結果、ロングテイルであり、且つ、重要性があると判定されたものは、統計的見積法により既発生未報告損害支払備金を算出することとし、それ以外のものは、一定の算式を用いて算出した金額を積み立てることとしました。 スクリーニングについては、その考え方を保険会社の総合的な監督指針に盛り込む一部改正を行いました。 |
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(2) |
保険計理人関係 |
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○ |
選任を要する損害保険会社 |
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保険計理人の選任を要する損害保険会社は、これまで保険料積立金を計算する保険種類(積立保険)及び長期第三分野保険を取り扱う会社に限定されていましたが、原則としてすべての損害保険会社(自賠責保険或いは地震保険のみを取り扱う損害保険会社を除く。)に拡大しました。 |
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○ |
保険計理人の関与・確認業務の強化 |
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保険業法等において、保険計理人は、保険料の算出方法等にかかる保険数理に関する事項について関与することとされており、損害保険会社の保険計理人については、関与対象契約を積立保険及び長期第三分野保険のみとしていましたが、自賠責保険、地震保険を除くすべての保険契約に拡大しました。また、責任準備金の適正性及び十分性等の確認業務についても自賠責保険、地震保険を除くすべての保険契約について行うことと対象範囲を拡大しました。 これに加えて、損害保険会社の既発生未報告損害支払備金については、これまで確認業務の対象ではありませんでしたが、その見積もりが保険会社の健全性に影響を与えるとともに、この度の改正により保険数理に基づく統計的見積法を導入することから、既発生未報告損害支払備金の適正性も保険計理人の確認業務に追加しました。 |
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○ |
保険計理人の資格要件の強化 |
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近年、保険料の弾力化や保険商品の多様化に伴い、保険料や責任準備金の算出方法等についても、高度化・複雑化が進展している状況にあるとともに、自然災害リスクに対応した異常危険準備金や今回の既発生未報告損害支払備金の統計的見積法の導入など、保険計理人の関与・確認業務の遂行のためには、従来に増して、より高度な知識と経験が必要となっている状況に鑑み、保険計理人の資格要件については、社団法人日本アクチュアリー会の正会員であり、かつ、一定以上の実務経験を有することを要件とすることとしました。 また、保険会社の保険計理人の選任に当たっての留意事項や保険計理人の職務遂行に当たっての態勢整備等にかかる考え方や、保険計理人の職務遂行状況にかかる監督上の着眼点等を保険会社向けの総合的な監督指針に盛り込む一部改正を行いました。 |
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(3) |
その他の改正(保険会社向けの総合的な監督指針) |
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今回の損害保険会社の既発生未報告損害支払備金の積立ルール整備のほか、次の内容の改正を行いました。 |
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○ |
価格変動準備金の取崩しに関する着眼点 |
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記載の趣旨が不明瞭となっているとの指摘を受けたことから、記載内容の明確化を図るための一部改正を行いました。(記載の明確化を図るものであり、考え方を改めたものではありません。) |
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○ |
参考純率への対応について |
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損害保険料率算出団体が算出する参考純率を使用する保険商品の場合、その参考純率が改定された後1年を経過してもなおその純率を使用している場合には、その使用している純率は参考純率を基礎としておらず、自社独自の料率とみなされることから、引き続き使用する純率の合理性・妥当性について、保険業法第128条に基づく報告または資料の提出を求める旨を盛り込む一部改正を行いました。 |
3 |
.適用時期等 |
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改正内閣府令及び改正告示等については、以下のとおり公布(公表)し、それぞれ、平成18年5月1日から施行(適用)しています。 |
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「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令」(平成18年4月13日(木)公布) |
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「保険業法施行規則第73条第1項第2号の規定に基づき、支払備金として積み立てる金額を定める件を改正する告示」(平成18年4月14日(金)公布) |
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「保険会社向けの総合的な監督指針の改正」(平成18年4月14日(金)公表) |
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なお、損害保険会社の既発生未報告損害支払備金の新たな積立ルール及び保険計理人関係の規定は、平成18事業年度から適用されます。 |
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詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から『「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令等(案)」に対するパブリックコメントの結果について(損害保険会社におけるIBNR備金の積立ルール整備等)』(平成18年4月10日)にアクセスしてください。 |