【金融便利帳】
 
 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、分かりやすく解説するものです。
 今回のキーワードは「少額短期保険業」です。
 
少額短期保険業

 「少額短期保険業」とは、生命保険、損害保険、医療保険の引受けなど、通常、保険会社が行っている事業のうち、少額かつ短期の保険の引受けのみを行う事業のことを言います。
 少額短期保険業者は、保険金が少額で保険期間が短期の保険の引受けのみを行うので、保険会社のように高額・長期の保険の引受けを行うことを前提とした場合とは異なる規制を設けることが、可能かつ合理的であると考えられます。こうした観点から、小規模な事業者でも事業の遂行が可能となるよう、引き受けられる保険に制限がある一方、最低資本金等の参入規制や、商品審査に係る規制を緩和した制度が設けられました。
 具体的な内容は以下のとおりです。
 
区 分 少額短期保険業者 (参考)保険会社
参入要件
 登録制(財務局登録)
 株式会社、相互会社に限定 (ただし、法施行日に保険に該当する商品を取扱いしているNPO法人等については、当該法人形態で登録可)
 業務を円滑に行うための人的構成
 免許制
 株式会社、相互会社に限定
 収支見込みが良好
 業務を円滑に行うための人的構成
最低資本
金等
 最低資本金等は1,000万円
 年間収受保険料は50億円以下
 最低資本金等は10億円
取扱商品
 商品審査(事後変更命令権付届出)
 取扱分野の限定なし(生損両商品取扱可能)
 掛捨てに限定(満期金支払型、年金等生存保険、運用型等も不可)
 保険期間の上限は損害保険が2年、生命保険、医療保険は1年
 保険金額の総額は1,000万円以下(ただし、事故発生率の低い賠償保険は別枠で1,000万円)、個別商品区分ごとの上限は下記のとおり
 
 (1) 通常の重度障害・死亡:300万円
 (2) 疾病・傷害による入院給付金等:80万円
 (3) 傷害による重度障害・死亡:600万円
 (4) 損害保険:1,000万円
 保険契約者1人当たり被保険者総数は100人まで
 保険契約者・被保険者毎に常時保険金額等を把握するための名寄せのシステムが必要
 商品審査(認可又は事後変更命令権付届出)
 生命保険業免許取得会社は、第一分野(生命保険)と第三分野(医療、介護、傷害等保険)、損害保険業免許取得会社は第二分野(損害保険)と第三分野(医療、介護、傷害等保険)のみ取扱いできる
 金額、期間には上限なし、運用型も可
資産運用
 預金、国債等の安全資産に限定
 原則自由(株式、不動産、融資等も可)

 現在、少額短期保険業者として2件登録(平成18年11月29日現在)されています。今後、少額短期保険業者と契約する際には、上記の保険会社との違いに留意し、契約内容を十分理解したうえで契約する必要があります。
 なお、少額短期保険業者が破綻した場合には、保険会社が加入している保険契約者保護機構のようなセーフティネットはありません。但し、保険契約者等が被る損失の補填や、資金の不正利用の防止の観点を踏まえ、一定の金銭の供託を少額短期保険業者に義務付けています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「一般のみなさんへ」から、「保険を契約している方へ」内の「根拠法のない共済について」にアクセスしてください。
 また、金融庁ホームページの「所管金融機関の状況」「免許・登録を受けている業者一覧」から「少額短期保険業者(財務局登録)」を確認することができます。

【法令解説】
 
証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う証券取引法施行令等の改正について

 先の第164回通常国会において成立した「証券取引法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第65号)の段階的施行に伴い、今般、証券取引法施行令及び関係府令のうち、公開買付制度・大量保有報告制度の見直しに係る部分について所要の改正が行われました。
 主な改正点は次のとおりです。


.公開買付制度の整備
 
(1)  市場内外等の取引を組み合わせた「急速な買付け」であって公開買付けによることが求められるものに係る数値基準
 当該「急速な買付け」について、3ヶ月を超えない期間に10%超の株式を買付け等又は新規発行取得により取得する場合であって、そのうち5%超が市場外取引による買付け等である場合となるよう規定しました。

(2)

 投資者への情報提供の充実
 
 公開買付届出書における開示の充実
 公開買付けを実施した後の経営方針・株主としての行動方針等(株券等の追加取得の予定の有無、上場廃止となる見込みの有無等を含む。)について、より具体的な記載を求めることとしました。また、MBO(経営陣による株式買取り)及び親会社による子会社株式の公開買付けについては、経営陣等が買付者となり、株主との関係において経営陣等の利益相反が問題となることがあり得ることから、買付価格の算定評価書を第三者から取り、それを踏まえて実際の算定をしている場合には、公開買付届出書に当該算定評価書の写しの添付を求めることとしました。


 買付対象者による意見表明の義務化

 対象者が公開買付けに関する意見を記載する開示書類である意見表明報告書の具体的記載事項について所要の整備を行いました。また、意見表明報告書について、提出すべき期間を公開買付開始公告が行われた日から10営業日以内としました。


 買付対象者が公開買付者に対して質問を行う機会の付与

 対象者が質問を記載する開示書類である意見表明報告書及び対象者からの質問に対する公開買付者の回答を記載する開示書類である対質問回答報告書の具体的記載事項について所要の整備を行いました。また、対質問回答報告書について、提出すべき期間を意見表明報告書の送付を受けた日から5営業日以内としました。

(3)

 公開買付期間
 
 公開買付期間の範囲
 現行20暦日〜60暦日の公開買付期間の範囲について、20営業日〜60営業日へと変更することとしました。


 対象者から公開買付期間の延長の請求がなされ得る場合及び延長後の公開買付期間

 対象者が公開買付期間の延長の請求を行うことが可能である場合は、当初公開買付者が設定した公開買付期間が一定期間未満の場合とされていましたが、当該一定期間について30営業日と規定しました。また、当該延長後の公開買付期間について30営業日と規定しました。
 さらに、公開買付届出書について、「買付け等の期間」の個所に延長請求を受けた場合の延長後の買付け等の期間を記載する欄を設ける等、所要の整備を行いました。
(4)  公開買付けの条件変更及び撤回の柔軟化
 
 買付価格の引下げが認められる場合
 現行制度上は禁止されている買付価格の引下げについて、一定の場合には容認されることとされたところ、当該一定の場合として、対象者が株式等の分割を行う場合、株式等の無償割当てを行う場合を規定することとしました。


 公開買付けの撤回が認められる場合

 公開買付けの撤回が認められる場合として、従来の合併や破産等に加えていわゆる買収防衛策が発動された場合又はいわゆる買収防衛策が消却されない場合を加えることとしました。
 なお、今般追加予定の撤回事由についても、現行認められている撤回事由と同様、軽微なものについては撤回を容認しないこととしており、当該軽微基準について所要の規定の整備を行いました。

(5)

 全部買付けの一部義務化に伴う所要の整備

  対象者の株券等の全部を買い付ける義務が生じる場合として、買付後の株券等所有割合が3分の2以上となる場合と規定することとしました。
また、買付け後の株券等所有割合が3分の2以上となる場合には、原則として、議決権のあるすべての株券等に対して公開買付けを行うことを公開買付けの条件としました。
 なお、買付対象となるすべての株券等について、同一の公開買付期間を設定して行うこととしました。また、買付価格の差について、公開買付届出書の買付価格の算定の基礎欄において、その内容の具体的な記載を求めることとしました。  

(6)

 他者の公開買付期間中に行う大株主の「急速な買増し」に係る数値基準

 当該「急速な買増し」について、当該他者の公開買付期間中に5%超の株券等の買付け等を行う場合となるよう規定しました。

(7)

 子会社株式買付けに係る公開買付規制の範囲

 現行制度上、議決権の50%超を所有する子会社株式を著しく少数の者から買い付ける場合には公開買付規制の適用除外とされていますが、買付け後の所有割合が3分の2以上となる場合には、上場廃止等に至るような公開買付けの局面となり、手残り株をかかえることとなる零細な株主が著しく不安定な地位に置かれる場合が想定されることから、公開買付けを義務付けることとしました。

(8)

 その他

  株券等所有割合の計算方法、別途買付禁止の例外、特別関係者に係る軽微基準等に係る所要の規定の整備を行いました。


.大量保有報告制度の整備
 
(1)  対象有価証券及び対象有価証券に係る権利を表示する有価証券の範囲の拡大
 投資証券等を対象有価証券に追加することとしました。

(2)

 重要提案行為等

 特例報告制度の適用されない重要提案行為等として以下の事項を役員に対して、あるいは株主総会において提案する行為を規定することとしました。
  i  重要な財産の処分又は譲受け
ii  多額の借財
iii  代表取締役の選定又は解職
iv  役員の構成の重要な変更
v  支配人その他の重要な使用人の選任又は解任
vi  支店その他の重要な組織の設置、変更又は廃止
vii  会社法上の組織再編行為等
viii  配当に関する方針の重要な変更
ix  資本金の増加又は減少に関する方針の重要な変更
x  上場廃止等
x i 子会社株式の新規上場等  等

(3)

 特例報告に係る基準日

 特例報告に係る基準日の届出をしようとする機関投資家は、次に掲げる日の組み合わせのうちから選択をすることとしました。
 
i  第2月曜日と第4月曜日(第5月曜日がある場合には第2、第4及び第5月曜日。)
ii  各月の15日と月末日

(4)

 保有目的

 保有目的に係る開示内容がより具体的になるよう、所要の規定の整備を行いました。

(5)

 その他 

 ネットアウトすべき共同保有者間の重複計上、形式的共同保有者の範囲、変更報告書の提出事由、みなし共同保有者に係る軽微基準等に係る所要の規定の整備を行いました。


.施行期日
 
(1)  公開買付制度の見直し及び大量保有報告制度の見直しのうち重要提案行為等に係る部分については、平成18年12月13日に施行されました。
(2)  大量保有報告制度の見直しの上記以外については平成19年1月1日の施行を予定しています。
 なお、EDINETを通じた大量保有報告書等の電子提出の義務化については平成19年4月1日の施行を予定しています。
 


 平成18年12月に実施したパブリック・コメントの結果については、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「証券取引法等の一部改正に伴う証券取引法施行令等の改正案に対するパブリック・コメントの結果について」(平成18年12月13日)にアクセスしてください。

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