アクセスFSA 第64号(2008年3月)

【国際関連】

中国・銀行業監督管理委員会とのQDII(適格国内機関投資家)制度に係る監督協力の枠組みの構築について

2月22日、金融庁は、中国・銀行業監督管理委員会との間で、QDII(適格国内機関投資家)制度に係る監督協力に関する枠組みの構築に関して書簡を交換し、合意しました。

QDII(適格国内機関投資家)制度

  • 中国においては、商業銀行による海外資産運用は、銀行業監督管理委員会から「適格国内機関投資家」(通称 QDII:Qualified Domestic Institutional Investors)に認定された国内金融機関に対して、国外への投資が許可される仕組みがあります。

    スキーム図(銀行ルートの場合)
  • 今回の合意は、中国の商業銀行によるわが国市場での資産運用を可能とするものであり、昨年末に公表した「金融・資本市場競争力強化プラン」に掲げている、わが国金融・資本市場の活性化、競争力強化にも資するものと考えています。

  • 金融庁は、同プランに基づき、1月、中国の監督当局等との第1回目の定期協議を実施するなど、成長著しいアジア市場の監督当局との連携強化を図ることとしています。今回の枠組みの構築は、日中両国の金融面での関係強化の重要性が益々高まる中で、連携強化の具体的な進展を表すものです。

  • アジア地域及び世界経済における日中両国の重要性は益々増大しており、金融分野について、より強固な関係を維持していくことは喫緊の課題です。金融庁では、今後とも、官民あらゆるレベルでの日中関係の連携・交流の強化を図って行きたいと考えております。


PCAOBによる規則4012条の実施に関する指針(案)へのコメント・レターの発出について

金融庁と公認会計士・監査審査会(以下、「審査会」といいます。)は、3月4日付けで、米国公開会社会計監督委員会(以下、「PCAOB」といいます。)による規則4012条の実施に関する指針(案)に対して、コメント・レターを発出しました。

PCAOBは、サーベンス・オックスレー法に基づき、米国市場における公開会社の監査を行う監査事務所に対する検査を実施しており、この中には外国の監査事務所も含まれています。PCAOBは、各国において監査監督機関が設立されている状況を踏まえ、外国監査事務所に対する検査について、母国当局との協力の枠組みを検討しています。

PCAOBは、規則4012条(2004年)において、外国の監査人監督当局による検査への依拠の程度を決定する際、外国当局の体制について、主に5つの要件((1)監督体制の十分性、完全性、(2)監督体制の運営の監査業界からの独立性、(3)監督体制の財源の独立性、(4)監督体制の透明性、(5)監督体制の過去の実績)を考慮することとしていますが、昨年12月5日に公表された指針案は、上記5要件を判断するに当たっての具体的な考慮事項を示すものです。

指針案では、依拠の程度を決定するに当たり、外国当局の制度の独立性及び厳格さに応じて依拠の度合いを決定するスライディング・スケール方式が採用されています。この方式は、外国当局について様々な形態が存在することを前提に、個々の事情に応じて柔軟に依拠の度合いを決定しようとするものであり、金融庁及び審査会は、コメント・レターにおいて、この方式を支持しています。

また、公的監督活動を行う際に当局間において効果的な協力関係が構築されることが不可欠であることに鑑み、必要な場合には、当局間で検査報告書を交換することが望ましいと考えている旨、及び、各国における規制の枠組みが十分と認められる場合、母国主義によることを検討すべきとの旨をコメントしています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「PCAOBによる規則4012条の実施に関する指針(案)へのコメント・レターの発出について」(平成20年3月7日)にアクセスしてください。


EUによる会計基準の同等性評価に関する欧州証券規制当局委員会(CESR)の助言案に対するコメント・レターの発出について

金融庁は、2月25日、欧州証券規制当局委員会(以下、「CESR」といいます。)が昨年12月18日公表した「中国、日本、米国の会計基準の同等性評価に関する助言案(協議文書)」に対し、コメント・レターを発出しました。

(注)EUでは、2005年より、域内国の証券発行者(公募・上場)に対して、国際会計基準(以下、「IFRSs」といいます。)の使用が義務付けられています。また、2009年以降は、EU域内で資金調達を行う、域外第三国の証券発行者(公募・上場)に対しても、IFRSs又はこれと同等の会計基準の使用を義務付けることとしています。このためECは、本年央までに第三国の会計基準とIFRSsとの同等性評価を行うこととしています。

  • 1.CESRの助言案の内容

    • (1)同等性評価のアプローチ

      助言案において、CESRは「ホーリスティック・アプローチ」を採用することを提案しています。「ホーリスティック・アプローチ」とは、仮に基準間の相違が残っていたとしても、それら差異の解消を目的とした基準設定主体者間の合理的な中長期の収れんに関する工程表が存在し、かつ、その工程表が確実に実行されていると評価できるのであれば、全体として、「同等」と評価できるとするアプローチです。

      このアプローチは、CESRがこれまで採ってきた、ある特定時点における基準間の差異に着目して同等性を判断する「スナップショット・アプローチ」と対照的なアプローチです。アプローチの変更の主な背景として、CESRは、(1)会計基準設定主体者間の収れんの進展、(2)米国証券取引委員会(SEC)における外国企業による国際会計基準の財務報告に対する数値調整措置の撤廃、等を挙げています。

    • (2)各国基準に対する評価

      日本基準については、CESRは、2008年6月時点において、日本の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」といいます。)が、2007年8月に国際会計基準審議会(以下、「IASB」といいます。)と合意した「東京合意」において示された目標に向けた予定どおりの対応をしている場合には、同等と評価すべき、としました。また、米国基準については、IFRSsとの収れんに関する作業が現に進行しており、かつ、今後とも続けられ、両基準がいずれ実質的に同等となることが見込まれることから、同等と評価すべき、とされました。一方、中国基準については、表面上はIFRSsと同等なものとなっているものの、2007年1月から適用開始となったばかりであるため、同等性評価を当面延期すべき、とされています。

  • 2.CESRの助言案に関する公聴会

    CESRによる助言案に関する公聴会が本年1月21日、フランス・パリのCESR本部において開催され、金融庁のほか、日本の関係者も出席しました。公聴会では、CESR側の説明に対し、参加者からは、ホーリスティック・アプローチを採用するとの方向性を支持する等の意見が寄せられておりました。

  • 3.当庁からのコメント・レターの内容

    金融庁がCESRに送付したコメント・レターにおいては、

    •  欧州市場が開放的な性格を維持することは、欧州と他の地域の双方にとって利益となるため、助言案の結論を支持する。
    •  ホーリスティック・アプローチは、現在世界的に進められている収れんに向けた取り組みと整合的であるとして評価する。
    •  日本基準については、収れんに向けた取り組みにおいて、IASBとの積極的に遂行された作業計画の証拠があり、米国基準同様、さらなる収れんに向けた進展の証拠なくして、IFRSsと同等と認められるべき。

    等の意見を示しております。

1. CESRは、EU加盟国の証券規制当局から成る組織で、会計基準の同等性評価に関し、欧州委員会(EC)から、助言が求められていたところです。


第4回日EU会計基準・監査の動向に関するモニタリング会合の開催について

平成20年3月3日、東京において、第4回日EU会計基準・監査の動向に関するモニタリング会合が開催されました。

モニタリング会合は、日EU相互の会計基準のコンバージェンスの状況をモニターし、また監査人監督等の監査の分野についての議論を行うため、平成18年11月より開催されており、主に会計基準と監査の2つの分野について、欧州委員会(以下、「EC」といいます。)と議論を行っています。

会計基準については、ECが予定している同等性評価の動向や、国際会計基準委員会財団(以下、「IASCF」といいます。)のガバナンス強化などについて話し合われました。

(注)EUでは、2005年より、域内国の証券発行者(公募・上場)に対して、国際会計基準(以下、「IFRSs」といいます。)の使用が義務付けられています。また、2009年以降は、EU域内で資金調達を行う、域外第三国の証券発行者(公募・上場)に対しても、IFRSs又はこれと同等の会計基準の使用を義務付けることとしています。このためECは、本年央までに第三国の会計基準とIFRSsとの同等性評価を行うこととしています。

まずECの同等性評価については、ECに対し助言を行う欧州証券規制当局委員会(以下、「CESR」といいます。)が、昨年12月に公表した、「中国、日本、米国の会計基準の同等性評価に関する助言案」において提案している「ホーリスティック・アプローチ」や、日本基準に対する評価が、いずれも建設的であるとの認識を双方が表明しました。

また両者とも、IFRSsの使用やIFRSsとのコンバージェンスの動きが世界規模で広がる中、IASBや、IASBの資金拠出・人選などを行うIASCFのガバナンス強化の重要性に関する認識を共有し、協力していくことに合意しました。なお、IASCFは、本年より定款の見直し作業を行う方針としています。

監査については、EUによる域外国の監査監督体制の同等性評価に関する経過措置や、わが国による外国監査法人等の届出制度について議論が行われました。

EUは、法定監査指令に基づき、2008年6月末以降、域内市場に上場する域外企業の監査を行う域外監査事務所に対し、各EU加盟国当局に登録して直接の監督に服するか、又は当該域外国において、EU指令で定められているものと「同等」の監督体制に服することを求めることとし、そのための同等性評価の準備を進めてきました。しかし本年1月、この同等性評価を2011年まで延期する提案を行い、2011年までEU当局への登録を免除する経過措置の適用について検討を行っており、モニタリング会合においても検討状況の説明がされました。

また、当方から、日本において、本年4月から施行予定の外国監査法人等による届出制度について説明を行いました。

次回の会合については2008年央に開催される予定です。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「第4回日EU会計基準・監査の動向に関するモニタリング会合の開催について」(平成20年3月7日)にアクセスしてください。

1. CESRは、「仮に基準間の相違が残っていたとしても、それら差異の解消を目的とした基準設定主体者間の合理的な中長期のコンバージェンス・プログラムが存在し、かつ、そのプログラムが確実に実行されていると評価できるのであれば、全体として、「同等」と評価できるとするアプローチ」としています。

2. 日本基準については、「2008年6月時点で、企業会計基準委員会(ASBJ)が2007年8月に国際会計基準審議会(IASB)と合意した「東京合意」において示された目標に向けた予定どおりの対応をしている場合、同等と評価すべき」との案を示しています。


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