アクセスFSA 第78号(2009年5月)

【国際関連】

日米ハイレベル証券市場対話第5回会合について

第5回日米ハイレベル証券市場対話が6月15日、当庁において開催されました。

日米ハイレベル証券市場対話は、グローバルな証券市場の共通課題について、定期的にハイレベルで議論し合う政策対話であり、平成17年から開催されて以降、日・米で交互に、年1回開催されています。

今回の「日米ハイレベル証券市場対話」においては、金融庁からは丸山総務企画局審議官(国際担当)、SEC(米国証券取引委員会)からはケーシー委員をはじめとするハイレベル職員がそれぞれ参加しました。会合では、格付会社、空売り、クレジット・デフォルト・スワップなどの規制上の課題、会計基準・ディスクロージャー、エンフォースメント上の課題など幅広い政策課題について話し合われました。

昨年の日米ハイレベル会合からのこの1年間は、グローバルな金融・資本市場に混乱が見られた期間でした。グローバルな金融危機に対応するために、各国の規制当局が真剣に議論しなければいけない時代と考えられます。

また、監督当局の協力も、ますますグローバル化しているところ、日米が以前にも増して連携していくことが重要です。さらに、世界的な金融市場の混乱が続く中、エンフォースメントの面においても、SECと金融庁が密接に連携・協力することは、極めて重要と考えられます。

このような状況下、今回の「対話」を通じて、両当局の関係者が相互理解を深め、協力関係の一層の発展が確保されました。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「国際関連情報」から「金融庁と米国証券取引委員会(SEC)との間の「日米ハイレベル証券市場対話」の開催について」(平成21年6月15日)にアクセスしてください。


【法令解説】

利益相反管理態勢の整備等に関する検査マニュアルの一部改定について

  • 1.はじめに

    金融庁では、去る5月20日、「金融検査マニュアル」、「保険検査マニュアル」及び「金融持株会社に係る検査マニュアル」について、利益相反管理態勢等の整備に関する検証ポイントを定めるなどの一部改定を行いました。

  • 2.改定の経緯

    昨年6月に成立した金融商品取引法等の一部を改正する法律において、ファイアーウォール規制の見直し及び利益相反管理態勢の構築の義務付けなどが行われました。

    本改正は、異なる業態間の相互参入に関するファイアーウォール規制を緩和するとともに、自社又はグループ会社による取引に伴って顧客の利益が不当に害されることを回避するための利益相反管理態勢整備を義務付けることによって、金融グループとしての多様で質の高いサービス提供を可能にすることに狙いを置いています。

    各検査マニュアルについても、本改正を受け、顧客保護の観点から、利益相反管理態勢の整備等に関する検証ポイントを新設するなどの改定を行うこととし、平成21年3月31日から4月30日にかけて改定案をパブリックコメントに付し、5月20日、寄せられた意見等への回答とともに、それらを踏まえた改定版を公表しました。なお、本改定については、本年6月1日に施行され、同日以降を検査実施日とする検査について適用されます。

  • 3.金融検査マニュアル

    以下、本項で、改定となった金融検査マニュアルの概要や主な検証項目について見ていきましょう。

    • (1)改定の概要

      金融商品取引法等における利益相反管理に関する規制は、「利益相反取引」そのものを禁止する行為規制ではなく、金融機関に対し、顧客の利益保護の観点から、適切な利益相反管理を行うための態勢整備などを求めています。

      そこで、今回の金融検査マニュアル改定では、利益相反管理態勢について、顧客保護等管理態勢の検証項目の一つとして、顧客説明管理態勢や顧客サポート等管理態勢などと並べて、記載することにしました。

      なお、金融検査マニュアルでは、顧客保護等管理について、金融機関が顧客の視点から自らの業務を捉えなおし、不断に検証し改善する姿勢が重要であると述べており、利益相反管理に当たってもこうした姿勢が重要ということになります。

    • (2)主な検証項目

      • 利益相反管理とは

        利益相反管理とは具体的に何を言うのでしょうか。

        この点、金融検査マニュアルには

        金融機関又はグループ関連会社による取引に伴い顧客の利益が不当に害されることのないよう行われる利益相反の管理

        と、記載されています。

        この、「金融機関又はグループ関連会社」については、銀行法第13条の3の2第1項 に規定されている当該銀行、当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者、当該銀行の親子金融機関等に加えて、

        当該金融機関が顧客保護のために利益相反の管理が必要であると判断した場合にはその会社と記載しています。

        さらに、保護対象も「顧客」としており、銀行法のように「銀行関連業務に係る顧客」との限定は付していません。

        これらにより、法令の範囲を超えて、利益相反管理を行っているかを検証するように見えるかもしれませんが、本検証項目はそのような趣旨で記載されたのではありません。

        いかなる取引によりどのような顧客の利益が害されるおそれがあるかについては、各金融機関グループにより事情が大きく異なるので、利益相反管理態勢の整備に当たって、各金融機関は、対象取引や保護対象となる顧客について、法令を基準に自らの業務の規模・特性等に応じて範囲を自ら判断すべきとの趣旨で記載しているのです。

      • 組織体制について

        金融検査マニュアルは、利益相反管理態勢について、

        適切な利益相反管理態勢を整備・確立するための利益相反管理全般を統括する責任者(利益相反管理責任者)…を設置し、その責任及び権限を明確化し適切な役割を担わせる態勢を整備しているか。

        と、利益相反管理責任者の設置を検証項目として定めています。

        なお、利益相反管理部門を設置する、といった場合の具体的な組織体制の整備については、金融機関の判断に委ねており、利益相反管理が実効的に確保されている限り、コンプライアンス統括部門など他の部門の役職員が利益相反管理等の職務を兼務することも否定されません。

        また、きめ細かい管理を行うために複数の利益相反管理責任者を置くことももちろん可能ですが、この場合においては、管理全般に係る責任を負う者を定めるなどの方法により、責任の所在を明確にしておく必要があるでしょう。

      • 営業部門からの独立性の確保

        金融検査マニュアルは、利益相反に係る態勢整備における留意点として、利益相反管理責任者が営業部門からの独立性を確保していることと、営業部門に対する牽制機能を発揮する態勢を整備していることを記載しています。

        その趣旨は、営業部門の役職員が利益相反管理の判断に干渉した結果、必要な利益相反管理の措置が取られなかったなどといったことを防止する点にあります。

        1 銀行は、当該銀行、当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者又は当該銀行の親金融機関等若しくは子金融機関等が行う取引に伴い、当該銀行、当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者又は当該銀行の子金融機関等が行う業務(銀行業、銀行代理業その他の内閣府令で定める業務に限る。)に係る顧客の利益が不当に害されることのないよう、内閣府令で定めるところにより、当該業務に関する情報を適正に管理し、かつ、当該業務の実施状況を適切に監視するための体制の整備その他必要な措置を講じなければならない。

        実際のビジネスにおいては、「あらかじめ利益相反管理責任者等が定めた業務マニュアルに従い、営業部門が定型的に判断を下す」といった場面も十分に想定されますが、ここでは営業部門の役職員が利益相反管理のプロセスに関与することを一切否定するものではありません。

        もっとも、利益相反管理は、営業上の利益を追求することとは相容れない判断を求められる性質を持つものなので、厳に利益相反管理の観点から判断するべき範囲と、営業部門が関与してよい範囲の区別を整理するように配慮する必要があります。

      • 利益相反管理の実施と評価・改善活動

        その他、金融検査マニュアルでは、

        • 利益相反のおそれがある取引を適切に特定する態勢が整備されているか

        • 適切な利益相反管理の方法を選択する態勢が整備されているか

        • 利益相反管理の記録およびその保存がなされているか

        など、各金融機関が利益相反管理のために実施する施策や、利益相反管理態勢の評価・改善活動(PDCAサイクルのCAに該当する部分)について検証する項目を置いています。

  • 4.保険検査マニュアル

    保険検査マニュアルにも、金融検査マニュアル同様、顧客保護等管理態勢チェックリストに利益相反管理の態勢に関する検証項目を新設しました。

    保険検査マニュアルは、必ずしも金融検査マニュアルのようなPDCAサイクルに基づいた記載が明確になされておらず、用語の用法も金融検査マニュアルと違う部分がありますが、基本的な考え方は、金融検査マニュアルと同じと考えて差し支えありません。

  • 5.金融持株会社に係る検査マニュアル

    金融持株会社に係る検査マニュアルでは、銀行持株会社に係るチェックリスト、保険持株会社に係るチェックリストそれぞれに、グループ経営管理(ガバナンス)態勢チェックリストの中の特に留意すべき個別の問題として、利益相反管理に関する検証項目を定めています。

    この項目では、金融持株会社の取締役が、グループ全体としての利益相反管理の必要性を十分に認識し、一元的な管理態勢を構築しているかを検証項目としています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「利益相反管理態勢の整備等に関する検査マニュアルの一部改定について」(平成21年5月20日)にアクセスしてください。


保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正について

金融庁では、「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)について、平成21年4月23日から5月25日にかけて広く意見の募集を行い、6月8日にパブリックコメントの結果を公表し、監督指針の一部改正を行いました。改正された監督指針は同日から適用を行っています。

改正の趣旨及び概要は、以下のとおりです。

  • 1.趣旨

    今回の改正は、金融安定化フォーラム(FSF)の報告書やG20の行動計画等を踏まえ、保険会社向けの監督指針のリスク管理に係る着眼点について改正を行いました。

  • 2.改正の概要

    • (1)統合リスク管理【 II-2-6-1 】

      保険会社は一般に複雑かつ大規模なリスクを抱えていることから、各種リスクを統合して管理する態勢の整備を求めることとしました。具体的には監督上の着眼点を以下のとおり規定しました。

      • 保険会社全体の経営方針に沿った統合リスク管理方針を定めているか。

      • リスクを統合的に管理する部門を明確化しているか。

      • 共通基準によるリスクの計量化を行い、その結果を業務執行へ活用しているか。 等

    • (2)ストレステスト【 II-2-6-2 】

      現行の監督指針においてもストレステストについての記載はありますが、当該テストが、市場が大きく変動している状況下においてもリスク管理に関する具体的判断に活用されるよう、ストレスシナリオの設定等に関する留意点を追加しました。具体的には以下のとおりです。

      • ヒストリカルシナリオ(過去の主な危機のケースや最大損失事例の当てはめ)のみならず、複数の要素(株価、金利、為替等)が同時に変動するような仮想のシナリオによる分析も行っているか。

      • その際には、平時において想定していた保有資産間の価格の相関が崩れるような事態も含めて検討しているか。

      • ストレスシナリオの設定に際しては、統合リスク管理の計量化手法で把握できないリスクを捉えるとの観点からの配慮がなされているか。 等

    • (3)証券化商品等のクレジット投資のリスク管理【 II-2-6-6-2(3) 】

      証券化商品等のクレジット投資に係るリスク管理に関し、以下のような監督上の着眼点を追加しました。

      • 裏付けとなる資産の内容、優先劣後構造や信用補完の状況、クレジットイベントの内容など、商品等の内容把握に努めているか。

      • 価格評価にあたり、頻繁な取引がある場合には当該取引価格、ない場合には売買頻度や売手と買手の価格差に留意して合理的な価格評価を行い、会計処理に反映しているか。

      • 市場流動性に懸念が認められた場合の適時の対応態勢が整備されているか。 等

    • (4)金融保証保険・CDS取引に係るリスク管理【 II-2-6-6-2(3)、II-2-6-7-2(2)マル7

      金融保証保険・CDS取引に係るリスク管理について、以下のような監督上の着眼点を追加しました。

      • 金融保証保険の対象となる債務あるいはCDSの参照債務の内容、クレジットイベントの内容など、商品等の内容把握に努めているか。

      • 金融保証保険に関しては、その負債価値について適切に評価を行い、必要に応じ保険契約準備金の追加積立てを行っているか。

        また、CDS取引に関しては、価格評価にあたり、頻繁な取引がある場合には当該取引価格、ない場合には売買頻度や売手と買手の価格差に留意して合理的な価格評価を行い、会計処理に反映しているか。

      • 金融保証保険やCDS取引等において、保証債務又は参照債務の信用の程度や保険会社の格付け等に基づいて担保が要求される条件となっている場合には、担保の提供を想定した流動性の管理を行っているか。

      • CDS取引を行うにあたっては、取引の安全性を向上させる観点から、取引の標準化や中央決済機関の利用などといった関係者の取組みも念頭に置きつつ、適切な取引実務を採用しているか。 等

    • (5)保険契約を再保険に付した場合の責任準備金の取扱い【 II-2-1-4(8)マル1

      保険契約を再保険に付した場合に、当該再保険を付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができるとされていますが、この取扱いの可否は、以下の点に着目して判断すべきであることを明確化しました。

      • 当該再保険契約がリスクを将来にわたって確実に移転する性質のものであるか

      • 当該再保険契約に係る再保険金等の回収の蓋然性が高いかどうか

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について」(平成21年6月8日)にアクセスしてください。


【金融ここが聞きたい!】

このコーナーは、大臣の記者会見における質疑応答などの中から、時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。

もっとたくさんご覧になりたい方は、金融庁ウェブサイトの「記者会見」のコーナーにアクセスしてください。

Q:  株価がGMの破綻を悪材料出尽くしということで今日も少し回復しています。1万円台が見えるところまで戻ってきました。株式市場をどう見ておられるのかということと、あと株式市場が金融機関の経営などに与える影響があれば教えてください。

  • A:株価は6カ月後の経済を表す先行指標であると言われていますけれども、下がるよりもこうして上がった方がはるかに元気が出る。それから、日本の銀行の自己資本の中には株ももちろん入っているわけですが、そういう意味では自己資本比率にはいい影響を与えております。ただ、これがちゃんと金融仲介機能に結びつくのかどうかというのはきちんと見ていかないと。株価が上がったから銀行が気前よく貸してくれるなんていう世界は、多分あり得ないんだろうと思っています。

平成21年6月2日(火)閣議後記者会見

Q:  FX(外国為替証拠金取引)の証拠金のレバレッジの問題でお伺いしたいんですけれども、3つお願いします。まず、大臣の口から改めてその目的についてお伺いしたいのが1点。もう1点は、来年50倍、その翌年25倍という案のようですけれども、その数字についてどういう観点から25倍、50倍という数字が出てきたと思われるかが1点。3つ目が、シンクタンクのアンケートなどを見ると、自由裁量であるべきだとか、行政がそこまでタッチするべきでない、という意見が目立つんですけれども、それについてどう思われますか。

  • A:外国為替証拠金取引の証拠金率の問題は、何百倍という世界は、常に追い証が発生する世界になるということが1つ。それから外国為替を買った人が小さい証拠金でそれほど大きな為替取引をしているという自覚が発生していないという場合があるわけです。為替取引自体は多くの方が参加して為替水準の平準化をもたらすために必要な分野ですけれども、やはり賭博的に流れないようにするには証拠金率は為替変動幅に相関したものでなければならない。100分の1というのは1円の世界ですから、500分の1というのは20銭の世界ですから、たったそれだけの変動で追い証とかそういう世界が発生する、あるいは全財産を失う、そういうことは、普通の一般の投資家というのは多分玄人ではないわけですから、やはり素人がそういうものに参加されるのでしたら、追い証の発生率とかそういうものをなるべく低くとっておいた方が投資家のためだと思っています。業者のためにやっているわけではないですから。

平成21年6月5日(金)閣議後記者会見

Q:  金融監督行政のことですけれども、アメリカ政府が大手の金融機関をFRBの下で監督するという新しい改革の方針を発表しましたけれども、これについてのご評価を聞かせてください。

  • A:銀行監督については今までずっと1920年代からやってきたわけです。ですから、ある時点までは必ずしも不十分だったということは言えないと思いますけれども、こういう金融危機になりますと2つ問題があります。大きく分けて1つは銀行経営に関する情報開示。これは銀行の多くは簿外で色々な取引をやっている。そういうことに関しては、やはり銀行の健全性全体を示す上では簿外で行っている色々な取引等についてもきちんとした開示を行うべき、そういう一群の色々な規制。もう1つは投資家、預金者をきちんと保護するという部分の改正。この二通りの大きな改正の視点を具体的な細かい規定に落としてアメリカ政府が発表されたわけで、当然銀行の健全性や預金者、投資者を保護するという意味では重要な規制改革案だと我々は評価しております。

平成21年6月19日(金)閣議後記者会見


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