アクセスFSA 第143号(2015年5月)
多重債務問題及び消費者向け金融等に 関する懇談会(第5回)にて挨拶する 赤澤副大臣(5月18日) |
(1)IFRS適用レポートの公表について
昨年6月に閣議決定された『日本再興戦略 改訂2014』においては、「IFRSの任意適用企業の拡大促進」が盛り込まれており、そのための施策の一つとして、「IFRSの任意適用企業がIFRSの移行時の課題をどのように乗り越えたのか、また、移行によるメリットにどのようなものがあったのか、等について、実態調査・ヒアリングを行い、IFRSへの移行を検討している企業の参考とするため、『IFRS適用レポート』として公表する」こととされた。
これを受けて金融庁では、公益財団法人財務会計基準機構の協力を得て、IFRSを任意適用した企業(適用予定企業を含む)を対象に実態調査・ヒアリングを行い、その結果を取りまとめ、4月15日に、『IFRS適用レポート』として公表した。
同レポートにおいては、「移行時の課題への対応」や「移行によるメリット」のほか、「移行の目的」、「移行コスト」など多岐の項目にわたり実態把握を行った。
IFRSへの移行の目的については、「経営管理の高度化」や「比較可能性の向上」、「投資家への説明の容易さ」という点が多く挙げられており、そうした目的が、IFRSへの移行によって実際に実現してきていることが認められる。また、IFRSへの移行のコストについても、システム対応のやり方によって、少額で対応できている例などが挙げられている。
我が国のIFRSの任意適用企業数は、着実に増加しており、前述の閣議決定時には44社であったが、本年4月末時点では83社となっている。このうち、上場企業である81社の時価総額は約117兆円であり、この額は全上場企業の時価総額の20%近くを占めるまでに至っている。
本レポートが今後IFRSの導入を検討している企業の参考となることを期待している。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「IFRS適用レポートの公表について」(平成27年4月15日)にアクセスしてください。
(2)企業会計審議会第2回会計部会の開催について
4月15日には、会計部会の第2回会合が開催された。同部会では、金融庁から「IFRS適用レポート」について報告を行うともに、ASBJから、今後「収益認識基準の開発」の検討を行うことについて報告が行われた。
出席委員からは、「IFRS適用レポート」に関連して、企業と監査人の双方における国際会計人材の育成や監査人との緊密なコミュニケーションの必要性等が指摘された。また、収益認識基準については、基準開発の重要性や慎重な検討の必要性等が指摘された。
金融庁としては、会計部会における今後の議論も踏まえつつ、引き続き関係者のご協力を得ながら、会計基準をめぐる諸課題について、適切な対応を行ってまいりたい。
※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「審議会・研究会等」の中の「企業会計審議会」から「会計部会」(平成27年4月15日)にアクセスしてください。
(3)「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」の中間整理について
「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」は、平成26年9月26日に開催された金融審議会総会において、金融担当大臣から「決済サービスの高度化に対する要請の高まり等を踏まえ、決済及び関連する金融業務のあり方並びにそれらを支える基盤整備のあり方等について多角的に検討すること。」との諮問を受け、金融分科会の下に設置されました。平成26年10月より、計12回にわたり審議を行い、「中間整理」が取りまとめられ、4月28日に金融庁ウェブサイトに公表いたしました。
中間整理においては、まず、利用者と関係の深いリテールや企業向けの決済サービスについて、次いで、これらのサービスを支える決済インフラ、また、横断的事項である決済システムの安定性と情報セキュリティ、イノベーションの促進と利用者保護の確保について記述されており、その上で、アクションプランの策定など今後更に検討を進めていく必要のある課題について整理が行われています。
今後は、中間整理の取りまとめを受けて、スタディ・グループをワーキング・グループに改組し、更に審議を進めます。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」中間整理の公表について」(平成27年4月28日)にアクセスしてください。
また、スタディ・グループの過去の議事録等については、金融庁ウェブサイトの「審議会・研究会等」の中の「金融審議会」から「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」にアクセスしてください。
(4)NISA口座の利用状況に関する調査結果の公表について
金融庁では、NISA(少額投資非課税制度)について、今般、「NISA口座の開設・利用状況調査」を実施し、4月24日、その結果について公表しました。
【調査結果の概要】
○総口座数(平成26年12月31日現在)は、825万3,799口座
- 制度導入時点(平成26年1月1日)から、約333万口座、67.6%増加
- 年代別の内訳の割合は、20~30歳代12.6%、60歳代以上56.7%
○総買付額(制度導入時点~平成26年12月31日)は、2兆9,769億6,913万円
- 商品別の内訳の割合は、上場株式32.6%、投資信託65.3%、ETF1.2%、REIT0.9%
- 年代別の内訳の割合は、20~30歳代10.2%、60歳代以上60.8%
NISAは、広く国民のみなさまに投資への関心を持っていただき、長期的視点からの資産形成を促進していくとともに、成長資金の供給拡大を図り、日本の経済成長につなげることを目的として、平成26年1月から導入されました。
こうした中、制度導入から1年で、NISAの総口座数は約825万件となり、総買付額は約3兆円に達するなど、NISAの普及は着実に進んでいると考えられます。
NISAの口座を開設した顧客の年齢層を見ると、依然として、60歳代以上の割合が約6割を占めていますが、制度開始後の1年間において、20~40歳代の若年層の口座数は倍増しており、徐々に若年層の比率が高まってきています。この背景には、制度導入当初にまずは既存投資家による開設が積極的に行われたところ、こうした流れが一服し、これまで投資に親しみがなかったと考えられる若年層の利用が徐々に拡大していることが考えられます。
(※制度導入時点からの口座数の増加率:20~40歳代113.4%、60歳代以上50.1%)
こうした中、3月31日に公布された「改正税法」において、未成年者にNISA口座の開設を認める「ジュニアNISA」の創設、NISAの年間投資上限額を100万円から毎月定額の積立投資に便利な120万円への引上げ等が盛り込まれており、今後、金融庁としては、こうした措置の着実な実施や広報・啓発活動等を通じ、NISAの更なる普及・定着に取り組んでまいります。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトのトップページ「NISA(少額投資非課税制度)が始まりました!」の中から「NISA口座の利用状況に関する調査結果の公表について」にアクセスしてください。
(5)「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「金融検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について
金融庁では、システムリスク及びインターネットバンキングに係る「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「金融検査マニュアル」等の一部改正(案)について、平成27年2月13日(金)から平成27年3月16日(月)にかけて広く意見の募集行い、その結果を平成27年4月21日に公表しました。改正内容は、翌日より適用しています。
また、改正は、預金取扱金融機関に加えて、保険会社、金融商品取引業者等、貸金業者、など多くの業態を対象とし、一斉に同様の改正を行いました。
今回の改正の概要と主な背景は、以下の通りです。
-
「情報セキュリティ管理」項目の統合・新設
外部委託先社員による不正出金や情報詐取等の事件が、近年複数件発生していること等を踏まえて、外部委託を含め顧客の重要情報の厳格な管理については更なる強化が必要との認識の下、既存の「安全対策」項目と「データ管理態勢」項目を「情報セキュリティ管理」項目として統合した上で、新たな着眼点や検証項目を追加しました。
-
「サイバーセキュリティ管理」項目の新設
インターネットの利用を中心にサイバー空間を活用したビジネスが広がりをみせる中で、サイバーセキュリティ基本法の公布・施行に伴う対応やサイバー攻撃の脅威の深刻化への対応が必要との認識の下、新たに着眼点や検証項目を追加しました。
-
「インターネットバンキング」項目の見直し
インターネットバンキングに係る不正送金の被害総額が平成26年には前年の2倍を超えて急増していることや、犯罪手口の高度化・巧妙化、被害を受ける金融機関の拡大等が起きている状況を踏まえて、金融機関の更なるセキュリティ対策の強化並びに顧客への注意喚起について着眼点や検証項目を見直しました。
金融庁では、今回の改正内容を踏まえながら、引き続き金融機関によるシステムリスク管理態勢の自主的、継続的な強化・改善の取組みをモニタリングしてまいります。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「金融検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」(平成27年4月21日)にアクセスしてください。
(6)「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:平成27年1月1日~同年3月31日)
金融サービス利用者相談室(以下、「相談室」という。)に寄せられた利用者からの相談件数や主な相談事例等のポイント等については、四半期毎に公表しています。平成27年1月1日から同年3月31日までの間(以下、「今期」という。)における相談等の受付状況及び特徴等は、以下のとおりです。
1.平成27年1月1日から同年3月31日までの間に、9,606件の相談等が寄せられています。1日当たりの受付件数は平均160件となっており、平成26年10月1日から同年12月31日までの間(以下、「前期」という。)の実績154件とほぼ同水準となっています。
事前相談の受付件数は、上記9,606件のうち449件となっています。
2.分野別の受付件数としては、預金・融資等に関する相談等の受付件数2,817件(構成比29%)うち事前相談33件、保険商品等に関する相談等の受付件数3,136件(同33%)うち事前相談4件、投資商品等に関する相談等の受付件数2,401件(同25%) うち事前相談353件、貸金等に関する相談等の受付件数981件(同10%)うち事前相談57件、金融行政一般・その他に対する意見・要望等の受付件数271件(同3%)うち事前相談2件となっています。
3.分野別の特徴等について
(1)預金・融資等については、金融機関の態勢・各種事務手続に関する相談等が増加したことから、前期に比べて、やや増加しています。
(2)保険商品等については、個別取引・契約の結果に関する相談等が増加したことから、前期に比べて、やや増加しています。
(3)投資商品等については、前期の実績とほぼ同水準となっています。なお、詐欺的な投資勧誘に関するものが634件あり、そのうち274件が何らかの被害があったものとなっております。年齢がわかるもの(342件)のうち、70代が134件(39%)、80代以上が66件(19%)、60代が49件(14%)と高齢者についての相談が大部分を占めております。
(4)貸金等については、行政に対する要望等が増加したことから、前期に比べて、増加しています。
4.なお、利用者の皆様から寄せられた相談等は、利用者全体の保護や利便性向上の観点から検査・監督上の参考として活用しています。
今期に受け付けた情報提供のうち、以下のものなどについて、金融機関に対する検査における検証や監督におけるヒアリング等、金融行政を行う上での貴重な情報として活用しています。
(1)預金取扱金融機関によるリスク性商品等の販売時における顧客への説明態勢に関するもの
(2)預金取扱金融機関における不適切な顧客対応に関するもの
(3)預金取扱金融機関の融資業務における担保の取扱いに関するもの
(4)いわゆる貸し渋り・貸し剥がしや貸出条件変更に関するもの
(5)預金取扱金融機関の個人情報の取扱いに関するもの
(6)保険会社の保険金等の支払いに関するもの
(7)保険募集人等の不適正な行為(重要事項の不十分な説明、手続に関する不適切な案内・対応、不告知の教唆、無断契約、名義借り、保険料の立替等)に関するもの
(8)貸金業者による法令違反のおそれのある行為に関するもの
(9)貸金業者による顧客への不適切な説明に関するもの
(10)無登録営業に関するもの
(11)金融商品取引業者の不適正な行為(ホームページを閉鎖し電話に出ない等、無断売買、口座開設拒否、高齢者に対する不適正な勧誘)に関するもの
(12)金融商品取引業者によるリスク性商品等の販売時における顧客への説明態勢に関するもの
(13)いわゆる集団投資スキームを利用した法令違反のおそれのある行為に関するもの
前期における情報の活用状況は以下のとおりです。
- 監督において行った金融機関等に対するヒアリング等に際して、198の金融機関等については相談室に寄せられた情報を参考としています。
- 金融庁が着手した金融機関等の検査等に際して、48の金融機関等については相談室に寄せられた情報を参考としています。
5.利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等
寄せられた相談等のうち利用者の皆様に注意喚起する必要がある事例等について、以下のとおり「利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等」として公表していますので、ご参照ください。
(1)預金・融資等に関する相談事例及びアドバイス等
「免許の確認、預金保険制度に関する相談等」
「本人確認に関する相談等」
「盗難・偽造キャッシュカードに関する相談等」
「振り込め詐欺救済制度に関する相談等」
「特約付定期預金等に関する相談等」
「融資に関する相談等」
(2)保険商品等に関する相談事例及びアドバイス等
「保険内容の顧客説明に関する相談等」
「告知義務に関する相談等」
「保険契約に関する相談等」
「保険金の支払に関する相談等」
「少額短期保険業者に関する相談等」
「保険契約者の保護に関する相談等」
(3)投資商品等に関する相談事例及びアドバイス等
「金融商品の購入に関する相談等」
「投資信託の購入に関する相談等」
「外国為替証拠金取引に関する相談等」
「未公開株式の取引に関する相談等」
「自社発行未公開株に関する相談等」
「ファンドに関する相談等」
「金融商品取引業者(旧証券取引法上の証券会社)との取引に関する相談等」
「金融商品取引業の登録に関する相談等」
「株券の電子化に関する相談等」
「投資者保護制度に関する相談等」
「社債に関する相談等」
(4)貸金等に関する相談事例及びアドバイス等
「違法な金融業者からの借入れに関する相談等」
「強引な取立てに関する相談等」
「取引履歴の開示に関する相談等」
「返済条件の変更に関する相談等」
「金利引下げに関する相談等」
「総量規制に関する相談等」
「都道府県登録業者に関する相談等」
「完済後の書面交付に関する相談等」
金融庁及び証券取引等監視委員会では、金融庁や証券取引等監視委員会又はこれらを連想させる組織を騙った業者等の情報収集をしています。もし、そのような業者から連絡等があった場合には、
金融庁金融サービス利用者相談室
0570-016811(ナビダイヤル)、IP 電話からは03-5251-6811
証券取引等監視委員会の情報受付窓口
0570-00-3581(ナビダイヤル)、IP 電話からは03-3581-9909
に情報提供をお願いいたします。
その他、金融庁のウェブサイト(「金融の仕組みや金融商品などの解説」)では、金融サービスを利用する皆様にご注意いただきたい情報を掲載しています。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:平成27年1月1日~同年3月31日)」(平成27年4月30日)にアクセスしてください。