7 自己信託

  • 1.自己信託とは、平成18年12月に成立した信託法第3条第3号に規定する「特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法」により行う信託である。これは、特定の者(委託者)が自己の有する一定の財産の管理・処分を(受託者として)自らすべき旨の意思表示をする方法によってする信託であることを示している。

  • 2.信託法の成立と同時に信託法整備法の中で改正された信託業法では、自己信託の受益権を多数の者が取得することができる場合には、信託業とは別の規定に服するものとして、法第50条の2が新たに設けられている。

  • 3.法第50条の2では、自己信託をしようとする者が、自己信託の受益権を多数の者が取得することができる場合には、登録を受けなければならないとされた。同条の適用にあたっては、受益者保護の観点から、以下の観点に留意する必要がある。

    • (1)受託者(委託者)の裁量により信託財産を運用することが可能な当該自己信託では、運用型信託会社に準じた体制整備が必要である。

    • (2)信託財産につき保存行為又は財産の性質を変えない範囲の利用行為若しくは改良行為のみが行われる当該自己信託では、管理型信託会社に準じた体制が必要である。

  • 4.法第50条の2第1項の登録後においても、登録時と同様、登録を受けた者の自己信託に係る事務運営の適切性、健全性と合わせて、他に営む業務(兼業業務)の健全性等も監督・検査の対象となることに留意する必要がある。

7-1 行政報告

  • (1)財務局長は、各四半期末現在における自己信託に係る法第50条の2第1項の登録の状況について、別紙様式20により各四半期末の翌月20日までに監督局長へ報告するものとする。

  • (2)財務局長は、次に掲げる委任事項について行政処理を行ったときは、その結果を遅滞なく監督局長に報告するものとする。

    • マル1法第41条第1項(第1号に係る部分に限る。)及び第4項並びに規則第48条第1項(第5号に係る部分に限る。)の規定による届出の受理

    • マル2法第50条の2第6項の規定による登録(法第50条の2第2項において準用する法第7条第3項の登録の更新を含む。)の拒否

    • マル33-1(2)マル2及びマル9からマル11に掲げる事項

    • マル45-1(2)マル3からマル5に掲げる事項

7-2 登録に際しての留意事項

7-2-1 登録の要否

自己信託に係る法第50条の2第1項の登録は、信託業を営む者であっても、当該自己信託の受益権を多数の者が取得することができる場合に必要であることに留意する。

また、当該自己信託の受益権を多数の者が取得することができる場合に該当するか否かは、1回の自己信託で多数の者(50名以上)が受益者となる場合のほか、同種内容の自己信託を繰り返すことで多数の者が受益者となる場合や、受益権の分割を禁止する旨の定めがない場合など、令第15条の2に規定する実質的に多数の者が受益権を取得することができる場合と認められるか否かにより判断する。

7-2-2 登録申請書及び添付書類の受理に当たっての留意事項

3-2-1(1)から(3)まで及び(5)から(7)までに掲げる事項に準じるほか、以下の点に留意するものとする。

  • (1)規則第51条の4第7号に掲げる「信託法第3条第3号に掲げる方法によってする信託に係る事務に関する知識及び経験を有する者の確保の状況並びに当該者の配置の状況を記載した書面」には、以下の事項を記載するものとする。

    • マル1自己信託に係る事務に関する知識を有する者並びに自己信託に係る事務及び信託関係法令に関する知識を有する者の知識を習得した方法(知識を有することを証する書面がある場合には当該書面を含む。)並びに当該者の配置予定先

      • (注)「自己信託に係る事務に関する知識」、「信託関係法令に関する知識」及び「知識を有することを証する書面」の具体的内容については、3-2-1(9)マル1(注)に準じるものとする。

    • マル2自己信託に係る事務に携わった経験を有する者並びに管理及び処分を行う財産の管理・処分業務に携わった経験を有する者の経歴及び配置予定先

7-2-3 登録の手続き(登録の更新の手続きを含む。)

5-2-3に準じるものとする。ただし、登録番号は別紙様式20により管理するものとし、自己信託登録簿に記載する登録番号は次のとおりとする。

・○○財務局長(自信○)第○○号

7-2-4 登録拒否事由の審査

法第50条の2第6項各号に掲げる事由に該当しないことを確認するものとする。その際、以下の点に留意するものとする。

  • (1)法第50条の2第6項第1号の審査

    会社とは、会社法(平成17年法律第86号)第2条第1号に規定する会社(株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社)をいう。

  • (2)法第50条の2第6項第3号の審査

    3-2-3(1)に準じるものとする。

  • (3)法第50条の2第6項第4号の審査

    法第50条の2第6項第4号に基づく定款及び法第50条の2第4項第3号に掲げる書類の審査のうち、法第50条の2第4項第3号に掲げる書類が法令に適合し、自己信託に係る事務を適正に遂行するために十分なものであるか否かの審査については、法第50条の2第5項各号及び規則第51条の5第2項各号に掲げる必要記載項目ごとに、以下の点に留意するものとする。

    • マル1信託事務の実施体制

      組織図及び各組織が担当する事務の概略等が記載されているか。また、これにより以下の事項が明らかにされているか。

      • イ.営業統括、商品開発、信託財産の運用、信託財産の管理(受益者への運用状況の通知、収益金の計算及び支払い等のバックオフィス業務を含む。)、電算システム管理、苦情・紛争処理、社内教育・研修、信託事務の委託先管理、法令等遵守の管理、内部監査、財務管理等を的確に行うことができる組織体制となっているか。

      • ロ.法令等遵守の管理、内部監査、財務管理を行う部門は、営業統括、商品開発、信託財産の運用、信託財産の管理を行う部門から独立した体制となっていることが望ましい。また、内部監査部門は、信託事務を行う全ての部門に対して十分な牽制機能が働く独立した体制となっていることが望ましい。

      • ハ.行おうとする信託事務の規模・特性に応じて、各部門に求められる役員又は従業員の能力の基準が明らかになっているか。(例えば、信託財産運用部門には、運用を行う財産の運用業務に3年以上携わった経験を有する者を配置する等)

      • ニ.信託事務を担当する役員の担当事務並びに信託事務を担当する組織及びその事務分掌について、社内規則に規定する旨が定められるとともに当該社内規則が整備されているか。

        • (注) 上記の担当部門はあくまでも例示であり、その行うべき体制整備等は、申請者が行おうとする信託事務の規模・特性により異なることに留意する。また、組織図には部署名を記載する必要はない。(「営業の本部機能を有する部門」、「信託財産運用部門」等の記載でよい。)

    • マル2上記マル1以外の必要記載項目

      3-2-2に準じるものとする。

  • (4)人的構成に照らした事務遂行能力の審査

    申請者が法第50条の2第6項第5号に掲げる事務遂行能力に関する基準を満たしているか否かについては、自己信託に係る事務の内容及び方法を記載した書類等の記載内容に照らして、以下の役員又は使用人の確保の状況により判断することとする。なお、これらはあくまでも例示であり、その行うべき体制整備等は申請者が行おうとする信託事務の規模、特性により異なることに留意し、申請者が以下の基準を満たしていない場合には、満たす必要がない合理的理由について聴取することとする。

    • マル1営業の本部機能を有する部門に、信託業務に関する知識を有する者を複数名配置することとなっているか。うち少なくとも1名は、信託業務に3年以上携った経験を有する者であるか。

    • マル2信託財産運用部門、信託財産管理部門のそれぞれに、管理又は処分を行う財産の管理・処分業務に3年以上携った経験を有する者を配置することとなっているか。

    • マル3内部監査部門、財務管理部門のそれぞれに、信託業務に関する知識を有する者を配置することとなっているか。

    • マル4法令等遵守の管理部門に、信託業務及び信託関係法令に関する知識を有する者を配置することとなっているか。

    • マル5信託業務に係る営業の担当者は、信託業務に関する知識を有する者であるか。

  • (5)法第50条の2第6項第7号の審査

    「他に営む業務を営むことがその信託に係る事務を適正かつ確実に行うことにつき支障を及ぼすおそれがあると認められる」とは、規則第51条の8の規定に基づき、法第50条の2第1項の信託に係る事務を適正かつ確実に行うことにつき支障を及ぼすおそれがあると認められるときとする。

7-2-5 登録事項の変更の届出に係る留意事項

財務局の管轄区域を越えて本店の位置を変更する場合の手続きは、次により取り扱うものとする。

  • (1)規則第23条第2項に規定する「その他の書類」とは、登録申請書又は直前の登録更新申請書及びその添付書類並びに直前に行った検査の報告書の写し等を指すものとする。

  • (2)規則第23条第2項に規定する書類の送付を受けた財務局長は、当該信託会社の登録を行った場合には、従前の登録を行った財務局長に対して登録済通知書の写しを送付するものとする。

  • (3)登録済通知書の写しの送付を受けた従前の登録を行った財務局長は、当該信託会社の登録を抹消するものとする。

7-3 経営管理の評価に関する留意事項

3-3に準じるものとする。

7-4 監督に係る事務処理上の留意事項

自己信託に係る法第50条の2第1項の登録をした会社の監督に係る事務処理については、以下に記載する事項を除いては、原則として3-4に準じて取り扱うものとする。

7-4-1 自己信託に係る事務の内容及び方法を記載した書類の変更届出

法第50条の2第12項において準用する法第13条第2項に規定する自己信託に係る事務の内容及び方法を記載した書類の変更届出の受理に当たっては、当該変更によって登録申請の際の審査基準を満たさないこととならないかどうかについて、ヒアリング等により確認するものとする。

7-4-2 信託設定時の義務

  • (1)法第50条の2第1項の登録を受けた者が自己信託(当該信託の受益権を多数の者が取得することができる場合)をしたときは、速やかに、規則第51条の7に基づき、当該登録を受けた者以外の者に、当該信託財産に属する財産の状況その他の当該財産に関する事項の調査(以下「第三者調査」という。)を行わなければならない。

  • (2)財務局長は、自己信託に係る事務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、法第50条の2第1項の登録を受けた者に対して、当該者が、第三者調査を行った者からその結果を記載した書面等(以下「第三者調査報告書」という。)を受けた場合、速やかに、第三者調査報告書の写しを提出するよう求めるとともに、その内容についての説明を求めるものとする。その際には、第三者調査報告書に不正な行為又は法令若しくは信託行為の定めに違反する重大な事実がある旨の結果が記載されていないか等を確認する。

7-5 事務運営の状況に関して報告・改善を求める場合の留意事項

自己信託に係る法第50条の2第1項の登録を受けた者の自己信託に係る事務運営の適切性、健全性、他に営む業務(兼業業務)の健全性等に疑義が生じた場合には、必要に応じ、法第42条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第43条に基づく命令を行うことが必要となる。その際の着眼点については、法令及び本監督指針に規定する登録申請の際の審査基準を満たしているか否か、3-5(3-5-1、3-5-7を除く。)に記載した事項のほか、以下の点に留意するものとする。

7-5-1 業務遂行能力に関する留意事項

  • (1)業務の執行方法を定めた社内規則の整備

    3-2-4(1)(マル2を除く。)に準じるものとする。

  • (2)業務運営体制

    3-2-4(2)マル2に準じるものとする。

  • (3)業務管理体制

    3-2-4(2)マル3に準じるものとする。

7-5-2 事務運営状況の評価に関する留意事項

受益者の保護を図るためには、自己信託に係る法第50条の2第1項の登録をした会社の事務の全てにわたり、信託業法その他の法令、定款、自己信託に係る事務の内容及び方法を記載した書類、社内規則等が遵守され、健全かつ適切に運営されていることが重要である。こうした観点から、自己信託に係る法第50条の2第1項の登録をした会社の事務運営状況の評価に当たっては、その特性に留意し、第三者調査、信託財産の管理・運用等の信託事務を適正に行うための態勢が整備され、かつ、当該信託事務に関する適切な内部管理を行うための態勢が確保されているか否かについて検証することとする。なお、自己信託に係る法第50条の2第1項の登録をした会社に求められる上記態勢は、当該会社が行う信託事務の規模、特性により異なることに留意するものとする。

(注) 検証に当たっては、必要に応じ、信託検査マニュアルに掲げられるチェック項目を参照するものとする。

7-5-3 苦情等への対処(ADR制度への対応も含む)

3-5-11に準ずるものとする。

7-6 行政処分を行う際の留意事項

3-6に準じるものとする。なお、法第48条の規定に基づき監督処分の公告を行う場合は、3-6-4に記載した事項のほか、「登録番号」を掲載するものとする。

7-7 廃業等に係る留意事項

3-7に準じるものとする。

7-8 検査部局との連携

3-8に準じるものとする。

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